(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強部材(107.7)の少なくとも一つは、ブタ心膜の折り畳み片からなり、縫合糸(101.1)によって前記人工心臓弁(100)およびステント(10)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の体内プロテーゼ(1)。
自然組織および/または合成材料からなり、心腔を開く第1の開位置と心腔を閉じる第2の閉位置とを有する少なくとも二つの弁尖(102)であって、心臓を通る血流に応じて前記第1の開位置と前記第2の閉位置の間を行き来する、弁尖(102)と、
前記人工心臓弁(100)をステント(10)に取り付けるための自然組織および/または合成材料からなるスカート部(103)と、
前記弁尖(102)と前記スカート部(103)の間の接合部を形成する屈曲可能な移行領域(104)であって、生体大動脈弁または肺動脈弁の弁尖形状と同様にU字形に進み、前記弁尖(102)の開閉動作中の組織応力を低減する、屈曲可能な移行領域(104)と、
を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
前記屈曲可能な移行領域(104)が、該屈曲可能な移行領域(104)の下部に高い縫合保持力を与えるように機械的特性の異なる様々な材料のレイヤリングを含む一方、
前記屈曲可能な移行領域(104)の上部は、前記人工心臓弁(100)の耐久性を高めるために柔軟に設計されることを特徴とする請求項7または8に記載の体内プロテーゼ(1)。
前記弁尖(102)と前記スカート部(103)が、様々な架橋結合過程を通して異なる安定性を備えることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
前記補強部材(107.1−107.7)は、少なくとも一つの内部クッション(107.1、107.2)を含み、該内部クッション(107.1、107.2)は、前記ステント(10)の保持アーチ(16a〜16c)および/または交連取付領域(11b)とは反対側である前記人工心臓弁(100)の屈曲可能な移行領域(104)の内面に取り付けられ、前記内部クッションが、ポリエステルベロア、PTFE、または心膜組織からなる一層または多層の材料で作成される
ことを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
前記補強部材(107.1−107.7)はワイヤレール(107.3)を含み、該ワイヤレールは、前記ステント(10)の保持アーチ(16a〜16c)とは反対側である前記人工心臓弁(100)の屈曲可能な移行領域(104)の内面に取り付けられる
ことを特徴とする請求項7ないし11のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
前記補強部材(107.1−107.7)は内部取付レール(107.4)を含み、該内部取付レールは、前記ステント(10)の保持アーチ(16a、16b、16c)の構造と同一であるとともに、前記ステント(10)の保持アーチ(16a、16b、16c)とは反対側である前記人工心臓弁(100)の屈曲可能な移行領域(104)の内面に取り付けられる
ことを特徴とする請求項7ないし12のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
前記補強部材(107.1−107.7)は外側包装部材(107.5)を含み、該外側包装部材は、前記ステント(10)の交連取付領域(11b)で、前記人工心臓弁(100)の屈曲可能な移行領域(104)の外面に取り付けられる
ことを特徴とする請求項7ないし13のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
前記補強部材(107.1−107.7)が、前記人工心臓弁(100)の屈曲可能な移行領域(104)の内外面に取り付けられることを特徴とする請求項7ないし14のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
前記屈曲可能な移行領域(104)の外面に取り付けられる前記補強部材(107.6)が、前記保持アーチ(16a、16b、16c)および前記交連取付領域(11b)に沿って延び、それぞれ前記保持アーチ(16a、16b、16c)の表面または前記交連取付領域(11b)の表面よりも広い表面を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の体内プロテーゼ(1)。
前記屈曲可能な移行領域(104)の外面に取り付けられる前記補強部材(107.6)が、巻き付けおよび縫い付けによって前記保持アーチ(16a、16b、16c)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項15または16に記載の体内プロテーゼ(1)。
前記ステント(10)の複数の位置決めアーチ(15a、15b、15c)がそれぞれ、互いに結合される第1および第2アーム(15a’、15a”;15b’、15b”;15c’、15c”)を備え、
前記ステント(10)が、複数の位置決めアーチ(15a、15b、15c)のうちの一つの二本のアーム(15a’、15a”;15b’、15b”;15c’、15c”)の間の空間をそれぞれ占めるとともに、第1および第2アームを備える複数の弁尖保護アーチ(50a、50b、50c)をさらに備え、
前記複数の弁尖保護アーチ(50a、50b、50c)のそれぞれの第1および第2アームが、ヘッド部を画成する接続部で互いに接続され、
前記複数の弁尖保護アーチ(50a、50b、50c)がそれぞれ、対応する弁尖保護アーチ(50a、50b、50c)が間に設けられた前記位置決めアーチ(15a、15b、15c)と同一方向に延出する
ことを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の体内プロテーゼ(1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上に概説した問題および現在の経カテーテル技術の他の問題に基づいて、本開示の特定の実施形態は、最適な長期間の耐久性、優れた血行動態(例えば、圧力勾配が小さく逆流が最小)、弁傍(paravalvular)漏れの最小化、正確なデバイスの配置および位置決め、冠動脈閉塞なし、デバイスの移動の防止、および心ブロックの回避を実現する、心臓弁狭窄または心臓弁不全症の治療用の人工心臓弁並びに自己拡張式体内プロテーゼを提供するという問題を解決する。加えて、本開示は、対応する折り畳み式ステント構造への人工心臓弁の取付を改良する。これによって、より広い表面積にわたり応力負荷を分配して、人工心臓弁のあらゆる場所で応力集中点が生じる可能性を減らし、結果として耐久性が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この点において、詳細は後述するが、本開示は、心臓弁狭窄および/または心臓弁不全症の治療に用いられる経カテーテル搬送体内プロテーゼ用の人工心臓弁を提供する。人工心臓弁は、少なくとも二つの弁尖と、スカート部と、弁尖とスカート部の間の接合部となる移行領域と、を備える。人工心臓弁の少なくとも二つの弁尖はそれぞれ、自然組織または合成材料で構成され、患者の心腔を開く第1の開位置と患者の心腔を閉じる第2の閉位置とを有する。少なくとも二つの弁尖は、患者の心臓を通る血流に応じて、第1の位置と第2の位置の間を行き来することができる。スカート部は、自然組織または合成材料で構成され、人工心臓弁をステントに取り付けるために使用される。移行領域は、人工心臓弁の少なくとも二つの弁尖とスカート部との間の接合部となり、生体大動脈弁または肺動脈弁のカスプ形状と同様にほぼU字形に進む。これによって、少なくとも二つの弁尖の開閉動作中の心臓弁材料内の応力を低減する。
【0014】
本明細書で使用する「自然組織」という表現は、自然発生的な組織、すなわち患者、別のヒトドナー、または非ヒト動物から取得される生物組織を意味している。他方、本明細書で使用する「自然組織」は、研究室で作成される組織、例えば、細胞外基質(スカフォールド)、細胞および生物活性分子の組み合わせから製造された組織も当然対照にしている。
【0015】
詳細は後述するが、本開示の一部の実施形態では、人工心臓弁は、異種移植片/同種移植片、または合成の非生物学的な抗血栓性材料のいずれかを含む。同種移植片は、ヒトドナーの弁(例えば心臓弁)またはヒト組織(例えば心膜組織)で作成される代替物のいずれかである。対照的に、異種移植片は、典型的にウシまたはブタである動物の弁(例えば心臓弁)または動物組織(例えば心膜組織)から作成された弁である。これらの自然組織は、支持枠組みとして機能し組織の柔軟性および堅さを決定する組織蛋白質(すなわち、コラーゲンおよびエラスチン)を通常は備えている。
【0016】
化学的固定を適用することで、上記生体組織の安定性を高めることが考えられる。すなわち、生体組織材料の蛋白質構造内のポリペプチド鎖の間に架橋を形成する一つまたは複数の化学的固定剤に生体組織をさらしてもよい。これらの化学的固定剤の例には、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ヘキサメチレン・ジイソシアネート、および特定のポリエポキシ化合物が含まれる。
【0017】
これまでのところ、従来の生物学的人工心臓弁の移植に伴う主要な問題は、生体組織材料が石灰化し、その結果、望ましくないことに人工心臓弁の硬化または劣化が起きることである。
【0018】
石灰化しない場合でさえ、弁応力が高いと心臓弁の部品の機械的故障につながることがある。弁の耐久性を制限する機械的故障および潜在的な応力誘導石灰化を克服するため、本開示の一部の実施形態は、人工心臓弁の構造の改良について記載する。開示される人工心臓弁の設計は、応力を低減しかつ石灰化の可能性を低減して、心臓弁の耐久性を向上するのに適している。
【0019】
加えて本開示は、対応する折り畳み式ステント構造への人工心臓弁の取付を改善する。これによって、応力負荷をより広い表面積にわたり分配し、また心臓弁のあらゆる所で応力集中点が生じる可能性を低減し、その結果、耐久性が改善される。
【0020】
本開示の一部の実施形態では、人工心臓弁が一片の平坦な心膜組織で作成されてもよい。この心膜組織は、動物の心臓(異種移植片)またはヒトの心臓(同種移植片)から摘出することができる。その後、少なくとも二つの弁尖のそれぞれ、または別の実施形態では個々の弁尖を示すパターンを形成するために、レーザ切断システム、ダイプレス、ウォータージェット切断システムによって、または様々な切断器具を用いて手動で、摘出された組織が切断される。一部の実施形態では、このパターンはスカート部を備える。スカート部は、例えば縫合糸を用いてステントに人工心臓弁を接続するために使用される、人工心臓弁の領域となる。現在の人工心臓弁は、分離した弁尖とスカート部とで構成される。生物学的心臓弁をステントに接続するときまでに、分離した弁尖とスカート部とが縫い合わされる。しかしながら、本明細書に記載の「一片」実施形態によると、弁尖は弁尖支持部と一体的に形成される。すなわち、人工心臓弁が一片の平坦な心膜組織で形成される。
【0021】
少なくとも二つ、好ましくは三つの弁線とスカート部とを有する人工心臓弁のパターンは、生体大動脈弁または肺動脈弁と同様に実質的に構成されるべきである。この目的のために、大動脈弁または肺動脈弁と同様の三つの半月形の弁尖を有する、上述のカスプ状に弁尖を形成するように、パターンが設計されることが好ましい。弁尖は、長円形、U字形、または略楕円形などの様々な形状に設計することができる。この点において、弁尖の全てが同一規模となるように、三つの異なる弁尖がそれぞれ形成されると好ましい。しかしながら、弁尖を異なるサイズに設計することも考えられる。
【0022】
人工心臓弁の閉位置における応力を最小化するための、上記のパターンへの弁尖の成形は、いくつかの方法で実現することができる。最も重要なことは、人工心臓弁の弁尖の機械的特性は、自由縁および支持されるエッジの形状による影響を受けることである。この目的のために、本明細書に開示する有利な実施形態では、マンドレル上での平坦な組織の架橋を用いて、弁尖が所定の3D形状に形成される。その後、潜在的に生じる余分な材料がレーザ、ナイフまたはウォータージェットを用いて切り取られ、3D形状のエッジを形成する。弁尖とスカート部の間では、弁のパターンは、生体の大動脈弁または肺動脈弁のカスプ形状と同様の略U字形状に進行する(progress)移行領域を示す。
【0023】
本開示の別の実施形態では、人工心臓弁の下端部がテーパー形状またはフレア形状をなしている。このようなテーパー形状またはフレア形状は、対応するステントへの人工心臓弁の取付に関して有利なことがある。以下でより詳細に説明するように、対応するステントは、移植部位におけるステントの固定を改善するために、テーパー状またはフレア状の下端部を備えてもよい。結果として、人工心臓弁の下端部をテーパー形状またはフレア形状に構成して、ステントと血管の間の弁傍漏れを防止すると有利なことがある。
【0024】
本開示の別の実施形態によると、弁尖は、楕円形、U字形または長円形に形成されるカスピダル(cuspidal)形状を有してもよい。このようなカスピダル形状は応力集中が生じる可能性を低減し、したがって摩耗およびカルシウム沈着する領域ができる可能性を最小化する。本開示の別の実施形態では、三つの弁尖の全て同一規模に形成され、心周期中に負荷を等しく吸収する。しかしながら、設計が異なる弁尖を有するデバイスを組み立てることも考えられる。
【0025】
本開示の別の実施形態を参照すると、人工心臓弁の弁尖部は、潜在的な環状のたわみ(annular distortion)に対する冗長なコアプテーションを提供するように設計される。より詳細には、冗長なコアプテーションとは、弁の閉じた位置で、弁尖のそれぞれがステントの内径の1/3よりも多くを覆うことを意味する。冗長なコアプテーションにより、弁尖上の応力が軽減し、また、環状のたわみがある場合でも弁尖の第2の閉位置で心腔を確実に閉鎖することができる。すなわち、本開示の人工心臓弁は、心臓弁輪が変化(環状たわみ)した場合でも、血液の逆流を防止することが可能である。
【0026】
本開示の別の実施形態では、人工心臓弁は、屈曲可能な移行領域の進行(progression)に沿って設けられた複数の締結穴を備える。これらの締結穴は、対応するステントに人工心臓弁を取り付ける前に、人工心臓弁の組織内に導入されることが好ましい。この複数の締結穴は、対応するステントの保持アーチに人工心臓弁を取り付けるのに要する時間を削減することができる。
【0027】
本開示の別の態様によると、人工心臓弁は、折り畳まれカテーテル内で搬送されるように設計される。この目的のために、対応するステント構造の内部に適合するように人工心臓弁を設計することができる。さらに、人工心臓弁の設計が、非常に小さな直径となるように折り畳むことができるような特定の折り目を備えることも考えられる。
【0028】
本開示の別の実施形態では、人工心臓弁の組織材料の厚さは、160μm〜300μm、好ましくは220μm〜260μmである。しかしながら、人工心臓弁の組織材料に応じて厚さが決められてよいことに注意すべきである。一般に、ウシ組織の厚さはブタ組織よりも厚い。
【0029】
個々の患者の血管および心臓弁オリフィスは、著しく異なる直径を有している。したがって、人工心臓弁の直径は19mm〜28mmの範囲であってもよい。このように、本開示の人工心臓弁は、個々の患者の心臓の解剖特性に合わせて構成される。
【0030】
本開示の別の実施形態では、人工心臓弁をステントの環状カラーに取り付けるために使用される縫合糸よりも大きな直径を有する縫合糸を用いて、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域がステントの保持アーチに取り付けられる。このため、体内プロテーゼを小径に折り畳めるようにステントに大き過ぎる体積を付与することなく、人工心臓弁をステントに確実に取り付けることができる。
【0031】
本開示はまた、ステントに人工心臓弁が取り付けられた経カテーテル搬送体内プロテーゼを提供する。ステントは、拡張状態で次第に一様なU字形になるように構成された保持アーチを提供する。複数の取り得る実施形態では、ステントの保持アーチに組織の意向領域が取り付けられる。保持アーチの目的は、周期運動に関連する応力を最小化するように、弁の開閉フェーズ中の弁尖の運動を制御することである。
【0032】
一般に、現在の経カテーテル人工心臓弁は、別々の弁尖と、スカート部とで構成される。人工心臓弁をステントに接続するときまでに、別々の弁尖とスカート部とが縫い合わされる。したがって、従来の人工心臓弁を用いると追加の縫合線が必要になり、心臓弁の応力集中を引き起こすとともに柔軟性が低下する。このため、人工心臓弁が早期に硬化する。
【0033】
心臓弁の応力集中を最小化するとともに柔軟性を高めるために、本明細書に開示する一部の実施形態では、弁尖がスカート部と一体的に形成される。例えば、心膜の単一片を使用して人工心臓弁を形成してもよい。代替として、生物心臓弁をステントに接続するときまでに縫い合わされる複数の組織片、例えば三枚の組織片でスカート部が構成されてもよい。弁尖は、スカート部をともに形成する組織材料片と一体的に形成される。例えば、三つの別個の組織パネルを利用して人工心臓弁の弁部を構成してもよい。単一片の心膜または三つのパネルのいずれを使用する場合も、組織構造をステント構造に縫合して所望のU字形の弁尖を形成する。このU字形は、心周期の間中、しかし特に閉位置にあるときに、弁尖に負荷を分配するのに役立つ。
【0034】
弁尖をスカート部に縫い付ける必要性をなくすために、より強度が高く耐久性の高い心臓弁アセンブリを設けてもよい。一様な組織片の強度および完全性は、縫い合わされた別個の組織片よりも改善される。加えて、縫い目を持たないことの利点には、組み立て時間が短縮する(縫合が少ない)、小さなカテーテルによる搬送のためにプロテーゼを折り畳むときに全体の体積が小さくなる、移行領域において弁尖がより柔軟になり、弁尖運動および血行動態を改善することが含まれる。
【0035】
人工心臓弁の製造に用いられる自然組織材料は、典型的に、組織材料の支持枠組みとして機能する結合組織蛋白質(すなわち、コラーゲンおよびエラスチン)を含んでいる。この組織蛋白質の合成物を強化するために、蛋白質同士を結合する化学的固定プロセスを実行してもよい。この技術は、コラーゲン分子のポリペプチド鎖間の架橋を形成する一つまたは複数の化学固定剤に自然組織材料をさらすことを通常は伴う。この点において、人工心臓弁組織の異なる部分に異なる架橋技術を適用することも考えられる。例えば、人工心臓弁内で様々な剛性を得るために、スカート部とは異なる化学固定剤で人工心臓弁の弁尖を処理してもよい。
【0036】
加えて、弁尖とスカート部とが一体でないことも考えられる。この場合、弁尖とスカート部に異なる架橋技術を適用してもよい。
【0037】
本開示に係る、人工心臓弁の架橋に使用することが想定される化学固定剤の例には、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、パラホルムアルデヒド、グリセルアルデヒド 、グリオキサール・アセトアルデヒド 、アクロレイン)、ジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレン・ジイソシアネート)、カルボジイミド、光酸化、および特定のポリエポキシ化合物(例えば、デナコール−810、−512)が含まれる。
【0038】
開示される実施形態の一部によると、人工心臓弁が支持ステントの内面に取り付けられる。この構成は、折り畳みおよび展開中の人工心臓弁材料の保護を容易にする。これは、移植カテーテルの内壁に人工心臓弁が接触せず、カテーテルの内面に引っかかることがないためである。この理由により、人工心臓弁の損傷が回避される。また、このような体内プロテーゼは、ステントの外面に取り付けられる人工心臓弁と比べてより小さな直径に折り畳むことができるので、より小さなカテーテルを使用する可能性が生まれる。
【0039】
他方、支持ステントの外面に人工心臓弁を取り付けることも考えられる。すなわち、スカート部が病変生体心臓弁と直接接触し、また縫合糸を用いてステントに取り付けられてもよい。ステントの外面に人工心臓弁を取り付けると、弁尖からステントへの荷重伝達が支持される。これは、閉鎖中の弁尖上の応力を大きく低減し、その結果、弁尖の耐久性が改善される。また、スカート部および交連(commissure)をステントの外面に取り付ける場合、血行動態を改善するように人工心臓弁を設計することが可能になる。加えて、病変した心臓弁と直接接触する心臓弁材料は、漏れ(すなわち、弁傍漏れ)、組織の増殖、および取付に対する良好な封止界面を提供する。この体内プロテーゼ用のステント設計は、この弁実施形態および利点を受け入れるが、かご型の経カテーテル搬送ステント設計では、これは不可能である。
【0040】
例えばヒトの心膜組織、好ましくは動物の心膜組織(ウシまたはブタの心膜組織が好ましい)である心膜組織から人工心臓弁を作成することができる。しかしながら、カンガルー、ダチョウ、クジラ、または適切な寸法である任意の他の異種組織または同種組織を採用することも考えられる。
【0041】
好ましくは、固定後に220〜260μm厚のブタの組織を用いて生物学的人工心臓弁が製造される。当然、この例は、使用可能な組織の種類およびその寸法を制限するものではない。むしろ、カンガルー、ダチョウ、クジラ、または適切な寸法である任意の他の異種組織または同種組織を採用することも考えられる。
【0042】
心臓弁狭窄および/または心臓弁不全症の治療に用いられる経カテーテル搬送体内プロテーゼを形成するために人工心臓弁が取り付けられる対応するステントの構造を考慮すると、開示した人工心臓弁実施形態の多くの態様が明らかになるだろう。
【0043】
本開示の一態様によると、上述した人工心臓弁の移植に適したステントは、患者の生体心臓弁の嚢内に配置されるように構成された位置決めアーチを備えてもよい。さらに、ステントは保持アーチを備えてもよい。詳細には、各位置決めアーチに対して一つの保持アーチが設けられてもよい。ステントの移植状態で、複数の生体弁尖の第1側に位置決めアーチが位置するように、患者の生体心臓弁の嚢内に位置決めアーチのヘッド部が配置される。他方、ステントの移植状態で、ステントの保持アーチは、第1側と反対の、生体心臓弁尖の第2側に位置する。この点で、位置決めアーチと保持アーチが、ペーパークリップのように生体心臓弁尖をクランプする。
【0044】
したがって、ステントの位置決めアーチは、生体(病変)心臓弁の嚢内に係合して、ステントとこれに取り付けられた人工心臓弁の正確な位置決めが可能になるように設計される。さらに、移植状態で位置決めアーチが対応する保持アーチと協動して、二つのアーチの間に生体弁尖をクリップする。このように、位置決めアーチと保持アーチがステントを適所に保持して、ステントの軸回転を実質的になくす。
【0045】
好適な実施形態では、位置決めアーチを略凸形になるように形成してもよい。こうすると、各位置決めアーチの形状が、生体心臓弁尖に対して追加のクリップ力を低供する。
【0046】
ステントの少なくとも一つの保持アーチが、接続ウェブによって対応する位置決めアーチに接続されてもよい。保持アーチが位置決めアーチと略平行に延出し、本質的に同一の形状を有してもよい。保持アーチの形状は、基本的に、その下端に小さな隙間を持つU字形をなす。この隙間は、位置決めアーチの先端の製造中に生じる接続部によって囲まれる。接続部は同様にU字形またはV字形であってもよく、保持アーチの二つの側面を連結する。
【0047】
ステントの保持アーチに沿って、複数の締結穴と、選択的に一つまたは複数の切欠とが設けられてもよい。好ましくは、これらの締結穴と切欠が保持アーチに沿って所与の位置に長手方向に配置され、人工心臓弁の組織部分をステントに締結する少なくとも一本のスレッドまたは細いワイヤを案内する。これによって、ステント上に組織部分を正確に配置することが可能になる。生物学的人工心臓弁の組織部分をステントの保持アーチに締結するために設けられる手段(スレッドまたは細いワイヤ)は、締結穴および切欠によって案内され、生体人工心臓弁をステント構造内に正確に繰り返し可能に固定する。この生体人工プロテーゼの正確な固定により、生物学的人工心臓弁がステントに対して軸方向に変位する可能性が大きく低下する。
【0048】
本開示の別の実施形態によると、上述した複数の保持アーチには、屈曲可能な移行領域をステントに固定するために使用可能な一つまたは複数の締結用切欠が設けられる。この目的のために、保持アーチは、上記締結用切欠を形成し保持アーチの屈曲点を画成する複数の曲げエッジによって分割されてもよい。締結用切欠は、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域のステントへの取付を簡便にする。
【0049】
本明細書に開示する生物学的人工心臓弁の移植に適したステントの別の態様では、保持アーチが、金属小管の金属部分から、拡張時に上述した移行領域の進行に対応するU字形構造を本質的に形成する形状に切り出される。
【0050】
ステントの下端に環状カラーが設けられてもよい。環状カラーは、自己拡張により生じる径方向の力を血管壁に伝達する支持体との役割を有してもよい。環状カラーには、生物学的人工心臓弁のスカート部が取り付けられる。典型的に、この取付は縫合によって行われる。
【0051】
人工心臓弁の取り付けられたスカート領域と組み合わされる自己拡張式の環状カラーの意図するところは、十分な径方向の力を与えて弁傍の漏れを防止することである。加えて、環状カラーは体環内での人工心臓弁の固定を助け移動を防止する。このカラーは、固定を強化するためにフレア状またはテーパー状の構造を備えてもよい。
【0052】
上述したように、対応するステントに人工心臓弁を取り付けて、心臓弁狭窄および/または心臓弁不全症の治療に使用可能である経カテーテル搬送体内プロテーゼを提供することができる。
【0053】
心膜組織材料から作成される人工心臓弁を、編組マルチフィラメントポリエステル製縫合糸を用いて、上述したステントの保持アーチおよび環状カラーに取り付けることができる。これらの縫合糸は任意の適切な直径を有することができ、典型的には約0.07mmである。
【0054】
しかしながら、生物学的人工心臓弁のステントへの接続強度を高めるために、マルチフィラメント縫合糸のサイズを例えば最大で0.2mmまで太くすることも考えられる。こうすると、人工心臓弁の移行領域とステントの保持アーチとの間の基本的な接合をさらに安定させることが可能になる。他方、体内プロテーゼを小径に折り畳むことができるように、残りの縫合糸はできるだけ細いままにするべきである。
【0055】
上記接合をするために、普通のランニング・ステッチ・パターンを使用してもよい。本開示によると、ステッチパターンは、ロッキング・ステッチまたはブランケット・ステッチであると好ましい。任意の他のステッチパターン(すなわち、オーバーロッキング・ステッチ、スリップステッチまたはトップステッチ)とすることも当然可能である。
【0056】
心臓弁材料内に直接ステッチすることによる応力集中を考慮して、本開示の別の態様では、人工心臓弁の材料を補強して縫合保持力を改善してもよい。この目的のために、人工心臓弁組織内にレーザ切断された縫合穴が導入されてもよい。レーザ切断プロセスは、切断された穴の周りの組織領域を強化する。予め定められたレーザ切断穴は、縫合プロセスそのものを容易にするとともに、ステッチング中の針の穿刺による人工心臓弁材料の応力を軽減する。
【0057】
本開示の別の実施形態では、ステントへの人工心臓弁材料の接続が、補強部材を用いて補強されてもよい。このような補強部材は、人工心臓弁材料の直接ステッチにより生じうる心臓弁材料内の応力集中を軽減するよう意図されている。より詳細には、補強部材は、屈曲可能な移行領域とステントの保持アーチとの接続部における、人工心臓弁の組織材料内の応力集中を軽減する。補強部材は、内側の縫合糸と人工心臓弁材料との間に配置されてもよい。こうすると、縫合により生じる上述の応力が、心臓弁材料のより広範囲に分配される。これらの補強部材を、ステッチの経路に沿って分散してまたは連続的に使用することができる。例えば、人工心臓弁材料の他の側のステントの保持アーチと反対側に補強部材を配置してもよい。
【0058】
縫合糸の結び目と人工心臓弁の組織との直接接触を避けるために、補強部材を適用してもよい。これにより、上記縫合糸に対する摩擦による人工心臓弁の摩耗が軽減する。人工心臓弁組織とステント構造または体内プロテーゼの任意の他の金属部品との直接接触を減らすために、補強部材を使用して、人工心臓弁の組織がステント構造または任意の他の金属部品と直接接触するのを防止することができる。
【0059】
この点において、人工心臓弁の表面全体に沿って補強部材を配置することも考えられる。好ましくは、弁尖の上縁またはその近傍にこのような補強部材を配置してもよい。体内プロテーゼの接合面を構成するこれらの上縁は、増加した張力を受ける。これは、人工心臓弁の運動中に破れる可能性がある。
【0060】
さらに、人工心臓弁の表面に単に取り付ける代わりに、人工心臓弁の組織の内側に上記補強部材を配置することも実現可能である。この点において、上記人工心臓弁の内側に、機械的特性の異なる組織または合成材料のレイヤを有すると有利である場合がある。この代替的な実施形態は、人工心臓弁の弁尖を補強して、体内プロテーゼの運動中に生じる機械的応力に応じる能力を高めるために、特に有用である。
【0061】
ステッチの経路に沿って分散してまたは連続的に補強部材を使用することができる。例えば、人工心臓弁材料の他の側のステントの保持アーチと反対側に補強部材を配置することができる。
【0062】
丸い縁が形成されるように、補強部材を折り畳むか形成してもよい。これらの丸い縁は、人工心臓弁の開閉中の心臓弁材料の摩耗を軽減または回避するように設計される。
【0063】
本開示のさらなる実施形態に関し、補強部材は、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域の内面に取り付けられる少なくとも一つの内部クッションを含む。この内部クッションは、ステントの保持アーチおよび/または交連取付領域(commissure attachment region)とは本質的に反対に配置される。この文脈における反対とは、人工心臓弁の反対側に内部クッションが取り付けられることを意味する。内部クッションは、組織内の直接ステッチにより生じる組織内の応力集中を軽減するように設計される。より詳細には、内部クッションは、人工心臓弁組織が縫合糸の結び目と直接接触することを防止する。これにより、心臓弁の開閉中に上記結び目が組織の表面を擦らないので、心臓弁組織の摩耗が軽減される。
【0064】
さらなる実施形態では、少なくとも一つの内部クッションが、一層または多層材料で作られたプレジェットであってもよい。内部クッションは、例えばポリエステルベロア、PTFE、心膜組織などの材料、または、丸いエッジを形成し縫合糸による心臓弁材料内の応力を分配または緩衝するのに適した任意の他の材料で構成されてもよい。この理由により、内部クッションの材料を、ニットあるいは織物構造などの平坦なシートまたはファブリックで作成することができる。ステント支柱間に広がるように補強部材を適用することができる。詳細には、保持アーチの下端に隙間を横切るようにして、隙間の心臓弁材料の支持を助けるように、補強部材を適用することができることに注意すべきである。
【0065】
代替的な実装では、ステントの保持アーチと本質的に反対の、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域の内面に配置されたワイヤレールで補強部材が構成されてもよい。ワイヤレールおよび心臓弁材料をステントに収容するよう意図されたステッチパターンを用いて、ワイヤレールを適所に固定してもよい。上述した内部クッションとは対照的に、このようなワイヤレールは、人工心臓弁の材料への取付がより容易である。さらに、ワイヤレールは既に丸まった形状をしているので、心臓弁材料の摩耗を防止するための丸いエッジを得るためにワイヤレールを折り畳む必要がない。
【0066】
補強部材をステント構造と同時に折り畳むことができるように、上記ワイヤレールをニチノールで作成すると好ましい。
【0067】
さらに、別の具現化では、補強部材をステントの保持アーチと本質的に同一のサイズとして形成し、これにより内部取付レールを形成してもよい。しかしながら、補強部材は、保持アーチよりも薄い材料であるべきである。これは、材料を厚くすると、体内プロテーゼを小さなサイズに折り畳む能力が制限されることがあるという事実による。
【0068】
詳細には、内部取付レールは、ステントの保持アーチと同じ、長手方向の所与の位置に分配された締結穴および締結用切欠を有していてもよい。また、取付レールは、ステントの保持アーチとは反対の、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域の内面に配置されてもよい。こうして、縫合糸によって接続されたステントと補強部材との間に、人工心臓弁の材料をクランプすることができる。したがって、補強部材は、人工心臓弁の弁尖用の内部取付レールとして機能し、個々の縫合点ではなく大きな取付レールにわたり屈曲し、心臓弁材料に影響を与える応力負荷を分配することができる。
【0069】
本開示の実施形態の大半は、補強部材または心臓弁材料をステントに固定するために縫合糸を使用するが、溶接、はんだ付け、係止固定具、リベットなどの異なる取付方法を使用することも考えられる。例えば、これらの方法を用いて、上述した内部取付レールをステントの保持アーチに取り付けてもよい。この結果、心臓弁材料を縫合糸の針で穿刺することなく、ステントの内面と補強部材の外面の間に人工心臓弁材料がクランプされる。
【0070】
別の代替的な取付概念は、人工心臓弁材料の裏側に取り付けられる補強部材を含む。この概念は、保持アーチ上部の交連取付領域の高応力範囲での取付に適しているが、これについてはより詳細に後述する。この概念は、人工心臓弁材料を折り畳みこれを補強部材で包み込むことによる強化領域を形成することを含む。こうして、補強部材は、ステントの交連取付領域において人工心臓弁の屈曲可能な移行領域の外面に取り付けられた外側包装部材を形成する。補強された人工心臓弁の屈曲可能な移行領域は、ステントの保持アーチまたはステントの交連取付領域にしっかりと取り付けることができる。
【0071】
補強部材の上述した外側包装部材は、PTFEまたはPETファブリックまたはシートなどの高分子材料で作成されることが好ましい。しかしながら、折り畳まれた心臓弁材料を挟むことができる、より固いU字形クリップまたは屈曲可能な材料であってもよい。この概念が他の補強部材に対して有利であることの一つは、補強部材が人工心臓弁の内面上に配置されず、したがって血流を妨げることがなく、血栓を形成する部位にならないということである。
【0072】
補強部材の外側包装部材は、弁尖材料が開き過ぎて、心臓弁材料の摩耗を引き起こすステントとの衝突が生じないようにする開弁緩衝部を提供してもよい。他の補強部材の丸みのあるエッジと同様に、これらの緩衝部は丸く、滑らかであるか柔らかく、開いた弁材料が衝突するときの摩耗を回避するべきである。この緩衝器は、弁尖材料の開きを大きく制限しないように十分小さくなければならない。
【0073】
本発明の特に有益な実施形態は、人工心臓弁の移行領域の内面および外面に補強部材が取り付けられる取付概念を含む。この構造は、最も有利には、応力集中を防止して人工心臓弁の摩耗を防止する。
【0074】
詳細には、人工心臓弁の屈曲可能領域の外面に補強部材が接続され、好ましくは保持アーチおよび交連取付領域をその全長にわたり補強する。人工心臓弁の外面に接続される上記補強部材は、人工心臓弁そのものに使用したものなどの、動物の心膜組織で作成することができる。合成材料または同種(ヒト)の組織などの任意の他の補強部材に適した材料を使用することも当然考えられる。人工心臓弁の外面に接続される補強部材には、保持アーチまたは交連取付領域における弁尖とステントの間の擦れおよび摩耗を防止するなどのいくつかの利点がある。たとえ取付が堅く縫合されていても、弁尖の開閉運動中に組織は表面にひずみサイクルを有し、微小な運動からステントに対して摩耗しうる。さらに、補強部材により、さらなるばね状の圧縮力を与えてステントへの弁尖の取付をきつくして、固い表面への弁尖の縫合によって実現される場合よりも耐久性のある取付を提供することが可能になる。また、補強部材は、開弁中に緩衝部として機能して完全な開放を制限し、開弁時に人工心臓弁に影響を与える付随する衝撃を軽減する。
【0075】
別の実施形態では、人工心臓弁の外面に接続された補強部材が保持アーチおよび交連取付領域に沿って延び、保持アーチの表面または交連取付領域の表面よりも広い表面を有している。この理由のため、補強部材は、保持アーチおよび交連取付領域を完全に覆うのに十分な表面を提供する。したがって、保持アーチまたは交連取付領域における組織の摩耗および摩擦が確実に回避される。
【0076】
上記補強部材の取付に関して、別の有利な実施形態は、保持アーチおよび交連取付領域の周りを補強部材で包み、包装またはステッチを用いてこの接続部を固定することを含む。すなわち、保持アーチまたは交連取付領域に補強部材がしっかりと固定され、人工心臓弁の取付部に安定的な表面を与える。
【0077】
人工心臓弁の移行領域の内面に接続される補強部材に関して、別の具現化では、ブタの心膜の折り畳み片で補強部材が構成され、縫合糸を用いて移行領域およびステントに補強部材が取り付けられる。このブタの心膜の折り畳み片により、弁尖組織を固定する圧縮力を縫合糸が広げることが可能になる。生理学的負荷下でのあらゆる移動または滑りを避けるために、しっかりとした縫合取付が必要である。しっかりと取り付けた場合、弁尖からの負荷が摩擦を通してステントに少なくとも部分的に伝達され、針の穴の縫合糸には直接伝達されない。これは、応力を広めることによる、特に交連取付領域における応力集中を最小化する。また、ブタ心膜片は、閉弁中の組織の衝撃を吸収し縫合糸に伝達される動的応力を軽減する緩衝器として機能する。ワイヤ、ブラケット、合成材料、または同種(ヒト)の組織などの異なる材料を使用して、人工心臓弁の内面に接続される補強部材を実装することも当然考えられる。しかしながら、人工心臓弁が閉じている間の漏れを軽減または防止するために、上述の補強部材を最小サイズで構成して、閉じられた弁尖の間に隙間が形成されることを避けなければならない。
【0078】
本発明の別の実施形態によると、補強部材を組織で包んで、手術中の人工心臓弁組織の摩擦を防止する。ワイヤまたはブラケットなどの固い補強部材を移植する場合、これは特に有利である。補強部材も周りを組織で包むことで、人工心臓弁組織に柔らかな接触表面が与えられ、擦れを防止し摩擦が減少する。
【0079】
補強部材に加えて、他のステント構造も、組織または任意の他の適切な合成カバーで包まれてもよい。すなわち、ステント構造(例えば保持アーチ)に対する人工心臓弁の摩耗を避けるために、組織または任意の他の適切な材料でステントが包まれてもよい。本開示の特定の実施形態によると、心臓弁組織が金属のステント構造に直接縫合されず、それを覆う組織または合成材料に縫合されてもよい。これは、人工心臓弁とステントの接触をより緊密にし、弁傍漏れを確実に防止することができる。
【0080】
本開示のさらに別の修正形態は、人工心臓弁材料面および構造を高分子材料にさらしこれを強化することを含む。この実施形態に係る材料は、本体組織の優れた接合を伴い縫合糸なしの手術にも使用可能なシアノアクリレートまたはポリエポキシドであってもよい。
【0081】
同様の具現化では、人工心臓弁材料の屈曲可能な移行部が、人工心臓弁の耐久性改善のために使用される機械的特性の異なる様々な材料のレイヤリングを含む。この目的のために、非常に応力負荷の高い領域において弁材料に重なりあう縫合保持強度が非常に高いレイヤ材料を提供してもよい。これに関し、人工心臓弁の移行領域の下部に、縫合保持力の高い材料レイヤを設けてもよい。心臓弁の耐久性を高めるために、移行領域の上部は柔軟に設計されるべきである。このようなレイヤ材料の例については、「補強部材」を参照してより詳細に後述する。
【0082】
本開示の別の実施形態に関し、屈曲可能な移行部における応力集中を低減する人工心臓弁材料の取付を開示する。この実施形態では、保持アーチに沿って設けられたスロットを通してステントの外側から弁材料を折り畳むことによって、ステントの保持アーチに人工心臓弁の屈曲可能な移行部が取り付けられる。上述したように、スロットの付いた保持アーチのエッジに丸みをつけて滑らかにして、弁材料の摩耗および摩擦を回避してもよい。この設計では、ステントの外側にいくらかの材料の厚みがあり、病変した生体心臓弁の位置でのステントの固定に影響する可能性がある。
【0083】
この問題に対応するために、ステント構造の残りの部分と比較して保持アーチを細くしてもよい。これは、折り畳まれたプロテーゼがより大きな搬送カテーテルを必要としないようにする凹部をステントの圧縮時に提供する。
【0084】
本開示の代替的な実施形態によると、人工心臓弁は、三枚の心膜組織の個別片を用いて組み立てられる。これによると、三枚の心膜組織の個別片は、人工心臓弁組織の厚さの点で有利である。人工心臓弁を形成するために一片の平坦な組織を使用すると、弁尖の厚さが異なることがあり、耐久性の低下や不十分な弁の閉鎖など、弁性能が望ましいものではなくなり、弁の開閉が非対称になり、または血行動態が望ましいものではなくなる。したがって、三枚の心膜組織の個別片は、厚さおよび機械的特性がより一様である人工心臓弁を形成する可能性を提供する。
【0085】
この目的のために、本開示の別の実施形態は、三つの個別片がそれぞれ、隣合う片と接続するためのスリーブを持つ本質的にTシャツ形状の平坦な組織パターンを有することを含む。上述したように、隣合う片の隣接エッジを補強するように、隣合う片を作成することができる。これを達成するために、隣合う片のスリーブを外側に折り畳み、接続部を補強するように互いに縫合される。この補強領域をステントの交連取付領域に取り付けることで、交連取付部により支持される弁尖応力をより一様に分配するのに役立つ。
【0086】
本発明の別の実施形態では、個別片の隣接エッジの補強をさらに改良するために、補強部材は、三つの個別片のスリーブの周りに巻かれた外側包装部材からなり、人工心臓弁を補強するとともに、人工心臓弁をステントの交連取付領域に取り付ける。すなわち、人工心臓弁の耐久性をさらに改善するために、外側包装部材を使用することができる。この点において、外側包装部材が一片の心膜組織または合成材料で構成されてもよい。また、補強された人工心臓弁をステントの交連取付領域に縫合糸を用いて取り付けるために外側補強部材が使用される。したがって、ステントと人工心臓弁の縫合により生じる応力が、主に補強部材の材料の中に導かれるので、人工心臓弁での高い応力集中が回避される。
【0087】
本開示に係る人工心臓弁、対応するステント、および経カテーテル搬送体内プロテーゼの好適な実施形態をさらに詳細に説明する添付の図面を以下で参照する。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1は、例示的な開示実施形態に係る人工心臓弁100の平坦な組織パターンを示す図である。人工心臓弁100は、少なくとも二枚の弁尖(leaflet)を備えてもよく、
図1の人工心臓弁100の平坦組織パターンの例示的な実施形態では、三枚の弁尖102を備える。弁尖102はそれぞれ、自然組織および/または合成材料を含む。弁尖102はスカート部103に取り付けられる。後で詳細に説明するように、スカート部103は、人工心臓弁100をステント10に取り付けるために使用される。
【0090】
人工心臓弁100の弁尖102は、心腔を開く第1の開位置と、心腔を閉じる第2の閉位置との間を移動できるように構成される。より詳細には、人工心臓弁100の移植状態において、弁尖102は、患者の心臓を通る血流に応じて、第1の位置と第2の位置とを行き来することができる。心室収縮の間、患者の心臓の左心室内で圧力が上昇する。患者の心臓の左心室内の圧力が大動脈内の圧力を上回ると、人工心臓弁100の弁尖102が開き、左心室から大動脈内に血液が流れる。心室収縮が終わると、左心室内の圧力が急速に低下する。左心室内の圧力が減少すると、大動脈の圧力により人工心臓弁100の弁尖102が閉じる。
【0091】
図2aおよび
図2bは、それぞれ人工心臓弁100の閉じた状態および開いた状態における上端の平面図を示す。人工心臓弁100の閉位置(
図2a参照)では、三枚の弁尖102が人工心臓弁100の中心に集まり、封止領域を形成する。
【0092】
開弁フェーズの間、弁尖は、
図1に示すように、屈曲可能な移行領域104の周りを旋回する。屈曲移行領域104は、弁尖102とスカート部103の接点を形成し、生体大動脈弁または肺動脈弁のカスプ(cusp)形状と同様に、略U字形に進行する。開弁フェーズ内では、圧力差の増大に応じて交連領域105および弁尖102が径方向外側に移動して弁を開き、プロテーゼを通して血液が流れるようにする。
【0093】
図1の例示的な実施形態では、人工心臓弁100は、一体的な平坦な心膜組織で作られている。この心膜組織は、動物の心臓(異種移植片)またはヒトの心臓(同種移植片)のいずれからも摘出することができる。摘出された組織をレーザまたはナイフで切断するかあるいは圧縮して、弁尖102およびスカート部103のそれぞれになる平坦な組織パターンを形成することができる。平坦な組織パターンの形成後、そのように作成された心臓弁組織を、対応するステント構造10に取り付けることができる円筒形または円錐形になるよう縫い合わせることができる。
図6a、6bに関して詳細に説明するように、スカート部103は、例えば縫合糸101を用いて人工心臓弁100をステント10に接続するために使用される、人工心臓弁100の領域となる。
【0094】
図1および
図2から分かるように、人工心臓弁100のパターンは、意図通りの人工心臓弁100の弁尖102、交連領域105、およびスカート部103のそれぞれになる。したがって、大動脈弁または肺動脈弁に似た三枚の半月形弁尖を持つ弁尖102を形成するように、平坦な組織パターンが設計される。長円形、U字形、または略楕円形などの様々な形状に弁尖102を設計することができる。好ましくは、全てが同一の全体形状となるように、三枚の弁尖102が形成される。
【0095】
図1に示す別の態様は、人工心臓弁100のフレア(裾広がり)状の下端部である。より詳細に後述するように、それぞれの心臓弁ステント10の環状カラー40に人工心臓弁100を取り付けるのに、このようなフレア状の下端部が有利となる。代替的に、テーパー状の下端部を有する人工心臓弁100を製造することも考えられる。人工心臓弁100のフレア状またはテーパー状の下端部を、プロテーゼの移植部位における血管の形状に適合させて、プロテーゼの血管への固定の信頼性を最大にすることができる。
【0096】
弁尖102とスカート部103の間で、弁のパターンは、生体大動脈弁または肺動脈弁のカスプ形状と同様に略U字形に前進する屈曲可能な移行領域104を見せる。
【0097】
図2aから導き出せるように、人工心臓弁100の弁尖部は、起こり得る環状のねじれに対して冗長なコアプテーション(coaptation)を与えるように設計される。結果として、冗長なコアプテーションにより弁尖102にかかる応力が減少し、弁尖102の第2の閉位置における心腔の確実な閉鎖が保証される。この冗長なコアプテーションは弁尖間の面接触を増やすので、十分なコアプテーションを維持しつつ、本開示の人工心臓弁をねじれた弁輪内に移植することが可能になる。
【0098】
図1には示していないが、人工心臓弁100は、移行領域104の進行に沿って設けられた複数の締結穴106を備えることができる。締結穴106の周りの組織領域を強化するために、レーザ切断を用いて人工心臓弁100の組織材料にこれらの締結穴106を導入する。しかしながら、代替的に、縫い付け過程中に針を用いて締結穴106を導入することも考えられる。
【0099】
図1に示す屈曲可能な移行領域104は、機械的特性の異なる様々な材料のレイヤリングを含んでもよい。その結果、心臓弁ステントの保持アーチに特に関連する下部がより強固になり縫合保持力が高くなる一方で、ステントの交連取付領域11bに特に関連する上部を、弁尖102の移動を支持するようにさらに柔軟に設計することができる。同様に、弁尖102および弁尖支持部103が異なる安定特性を有していてもよい。これは、弁尖102または弁尖支持部103のそれぞれに対して異なる架橋過程を用いることで達成される。代替的に、機械的安定性を高めるために組織または合成材料の小シートを取り付けることによって、弁尖102または弁尖支持部103を補強してもよい。
【0100】
様々な患者の様々な血管の大きさおよび直径はある程度異なるため、デザインの異なる人工心臓弁100を準備しておくと有利なことがある。より詳細には、人工心臓弁の製造に使用される特定の組織材料に応じて、厚さ160μm〜300μm、より好ましくは厚さ220μm〜260μmの組織材料を使用してもよい。さらに、本開示によると、人工心臓弁100の直径が19mm〜28mmの範囲であってもよい。
【0101】
以下では、心臓弁狭窄または心臓弁不全を治療するための体内プロテーゼ1の第1および第2側面斜視図をそれぞれ示す、
図6a、6bを参照する。ここでは、体内プロテーゼ1が、人工心臓弁100を保持する心臓弁ステント10の例示的な実施形態を備えている。
図6a、6bでは、体内プロテーゼ1が拡張した状態を示す。
【0102】
図6a、6bから分かるように、人工心臓弁100が固定された状態で、人工心臓弁100の移行領域104は、保持アーチ16a、16b、16cに沿って広がる。より詳細には、ステント10の保持アーチ16a、16b、16cの下部弁尖取付領域11cと交連取付領域11bとに沿って広がる。人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104は、ステント10の保持アーチ16a、16b、16cに取り付けられる。そのため、人工心臓弁100の弁尖102を制御された状態でステント10の中心に向けて内側に曲げて、弁尖102を形成することができる。
【0103】
弁尖102が適切に形成されかつ人工心臓弁がステント構造に適切に取り付けられるように、対応するステント10に人工心臓弁100を適合させるために、人工心臓弁100の平坦な組織材料のパターンは、弁尖構造、環状スカート部103、および両者の間の移行領域104を包含するように切断されるべきである。言い換えると、人工心臓弁を円筒形または円錐形に縫い合わせた後、弁は下端にフレア部を有する。このフレア形状がステント10の構造に適合し、病変した心臓弁の移植部位における血管壁に最適に適合するように構成される。
【0104】
図6a、6bに示す経カテーテル搬送体内プロテーゼ1の例示的な実施形態では、ステント10に固定される人工心臓弁100は、動物またはヒトの心膜サックから摘出され三つの弁尖102とスカート部103のそれぞれを有するパターンに切断された、一体的な平坦な心膜組織材料からなる。パターンは、ステント10への取付前に円筒形に縫い合わされる。加えて、人工心臓弁100は、ステントの保持アーチ16a、16b、16cおよび交連取付領域11bに接続される移行領域104を備える。移行領域104は、弁尖102をスカート部103に接続する。より詳細には、移行領域104は、生体大動脈弁または肺動脈弁のカスプ形状と同様に、本質的にU字形である。このため、移行領域104により弁尖102の開閉動作が可能になり、生体人工心臓弁組織内の応力が最小になる。
【0105】
ステント10にこの組織パターン(
図1参照)の組み付けると、保持アーチ間の組織領域が弁尖102になる。三つの本質的に閉鎖した弁尖を形成するように、これらの弁尖を内側に折り畳むことができる。(心腔内の血圧上昇に応じて)下流方向の圧力勾配がある場合、ステント10の方向に弁尖102が離され、心腔から血液が出られるようになる。他方、反対の上流方向の圧力勾配(心腔内の吸気圧に応じた逆行勾配)がある場合、血液が弁尖102になだれ込む。これによって、ステント10の中心で弁尖102が圧力を受けて、経カテーテル搬送体内プロテーゼ1を閉じる。
【0106】
図5a〜5e、
図8〜10を参照してより詳細に説明するように、体内プロテーゼ1を形成すべく人工心臓弁100が取り付けられる適切なステント10は、ステント10の下部に配置された環状カラー40を備えてもよい。ステント10の環状カラー40は、病変した心臓弁の部位で所望の位置に経カテーテル搬送体内プロテーゼ1を保持する、追加の固定手段としての役割を果たす。
図6a、6b、7a、7b、11a〜11cに示す経カテーテル搬送体内プロテーゼ1の例示的な実施形態では、ステント10の環状カラー40がフレア形状を有する。したがって、ステント10に固定された人工心臓弁100の弁尖支持部103の下部も、環状カラー40のフレア形状を収容すべく広がった直径を有している。
【0107】
人工心臓弁100のスカート部103および/または移行領域104に取り付けられた縫合糸、スレッドまたはワイヤ101を用いて、人工心臓弁100がステント10に固定される。スカート部103は、ステント10に対して予め定められた位置に人工心臓弁100を保持する役割を果たす。
【0108】
より詳細に後述するように、体内プロテーゼ1を形成すべく人工心臓弁100が取り付けられる適切なステント10は、ステント10の下部に配置された環状カラー40を備えてもよい。ステント10の環状カラー40は、病変した心臓弁の部位で所望の位置に経カテーテル搬送体内プロテーゼ1を保持する、追加の固定手段としての役割を果たす。
【0109】
図6a、6bから分かるように、縫合糸、スレッドまたはワイヤ101を用いて、ステント10の環状カラー40に人工心臓弁100のスカート部103を取り付けてもよい。この目的のため、直径が最大0.2mm、好ましくは0.1mm〜0.2mmのマルチフィラメントの縫合糸101を使用してもよい。
【0110】
さらに、上記の結合を得るために、共通のランニング・ステッチ・パターンを使用してもよい。本開示によると、ステッチパターンは、ロッキング・ステッチ(locking stitch)またはブランケット・ステッチであると好ましい。もちろん、任意の他の適切なステッチパターン(すなわち、オーバーロッキング・ステッチ、スリップ・ステッチ、トップステッチ)も使用可能である。
【0111】
図6a、6bに示すように、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域104を、縫合糸101を用いてステント10の保持アーチ16a、16b、16cに取り付けることができる。この縫合糸は、ステント10の環状カラー40に人工心臓弁を取り付けるのに使用する縫合糸101よりも直径が大きい。このため、体内プロテーゼを小径に折り畳めるようにステント10に大き過ぎる体積を付与することなく、人工心臓弁100をステントに確実に取り付けることができる。
【0112】
図6a、6bに示す経カテーテル搬送体内プロテーゼ1の例示的な実施形態では、ステント10の環状カラー40がフレア形状を有する。したがって、ステント10に固定された人工心臓弁100のスカート部103の下部も、環状カラー40のフレア形状を収容すべく広がった直径を有している。
【0113】
人工心臓弁100が取り付けられて体内プロテーゼ1を形成するステント10の取り得る実施形態のうちのいくつかを考慮することで、本開示の範囲がより明確になるだろう。したがって、以下では、人工心臓弁100が固定されて、
図6a、6bに示す経カテーテル搬送体内プロテーゼ1を形成するステント10の例示的な実施形態について説明する
図5a〜5eを参照する。
【0114】
より詳細には、
図5bは、心臓弁ステント10の拡張状態を示す心臓弁ステント10の第1側面斜視図である。拡張状態の心臓弁ステント10の第2、第3側面図が、
図5c、
図5dに示されている。
【0115】
他方、
図5eは、本開示の例示的な実施形態に係る拡張状態の心臓弁ステント10の下端の平面図であり、例示的な実施形態に係るステント10の平面展開図が
図5aに示されている。
【0116】
図5a−5eに示すステント10にも、ステント本体の下端部に配置された環状カラー40が設けられている。少なくとも一つの環状カラー40は、ステント10の追加係留手段として機能する。
【0117】
加えて、例示的な実施形態に係るステント10は、全部で三つの位置決めアーチ15a、15b、15cを有しており、これらはステント10を自動的に位置決めする機能を引き受ける。位置決めアーチ15a、15b、15cはそれぞれ丸いヘッド部20を有している。ヘッド部20は、心臓の移植部位におけるステント10の位置決め中に、治療される生体心臓弁の嚢内に係合する。
【0118】
ステント10の例示的な実施形態は、放射アーチ32a、32b、32cも備えている。より詳細には、ステント10は三つの放射アーチ32a、32b、32cを有しており、各アーチ32a、32b、32cは、各位置決めアーチ15a、15b、15cの二つのアーム15a、15a’、15b、15b’、15c、15c’の間に配置される。各放射アーチ32a、32b、32cは、各位置決めアーチ15a、15b、15cとはおおよそ逆の形状をしており、位置決めアーチ15a、15b、15cのそれぞれ一つと反対の方向に延出する。
【0119】
加えて、
図5a〜5eに示す例示的な実施形態に係るステント10には、対応する。保持アーチ16a、16b、16cが設けられている。保持アーチ16a、16b、16cのそれぞれに、位置決めアーチ15a、15b、15cの一つが割り当てられる。また、ステント10の例示的な実施形態によると、保持アーチ16a、16b、16cの各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の一端に、複数の追加締結穴12cを持つ複数の交連取付領域11bが構成される。
【0120】
交連取付領域11bに加えて、ステント10は、人工心臓弁100の組織部分をさらに固定するための第2の下部弁尖取付領域11cを備える(
図6a、6b参照)。この点において、
図5a〜5eに示す例示的な実施形態に係るステント10は、素材を人工心臓弁100に取り付けるための複数の取付領域11b、11cを持つ構成を有している。
【0121】
ステント10には弁尖保護アーチも設けられる。各位置決めアーチ15a、15b、15cの間に一つの弁尖保護アーチが設けられてもよい。弁尖保護アーチの構造および機能については、
図7a、7bを参照して後述する。したがって、明確さの理由は明示されていないが、
図5a〜5eに示す例示的な実施形態に係るステント設計では、各位置決めアーチ15a、15b、15cに一つの弁尖保護アーチが割り当てられてもよい。
【0122】
ステント10の例示的な実施形態は、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の特有の構造によって特徴づけられる。詳細には、ステント10の拡張状態において、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、人工心臓弁100と同様の形状を有している。さらに、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”には、複数の下部弁尖取付領域11cが設けられている。これらはそれぞれ、人工心臓弁100の組織部分を締結するために設けられた複数の締結穴12aまたは小穴(eyelet)を有する。これらの追加締結穴12aまたは小穴が、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104に対する取付点を提供する。
【0123】
より詳細に後述するように、代替的な実施形態では、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に、屈曲可能な移行領域104をステント10に固定するために使用可能である複数の締結用切欠が設けられてもよい。このため、代替的な実施形態では、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に沿って、追加締結穴12aを設ける必要がない。
【0124】
図5a〜5e、8〜10に示す実施形態のステント設計によると、ステント10の拡張した状態で、保持アーチ16a、16b、16cの各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、ステント10に取り付けられた人工心臓弁100の移行領域104と実質的に一致する形状を有している(
図6a、6bまたは
図11a、11b参照)。
【0125】
保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”のこの特有の設計は、弁の耐久性という利点がある。このように形成された保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、ステント10に取り付けられた人工心臓弁100のスカート部103と弁尖102のエッジとを支持する役割を有する。
【0126】
例えば
図6a、6bおよび
図11a、11bに示すように、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、拡張状態のステント10に固定された人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の形状をたどる。さらに、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、位置決めアーチ15a−cの背後の場所で、保持アーチ16a、16b、16cの一方のアームから他方のアームまで支持されない最小のギャップを有するように設計される。
【0127】
詳細には、
図5aの切断パターンに示すように、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”には、複数の曲げエッジ33が設けられる。これらの曲げエッジ33は、各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”を複数のアーム区画に分割する。保持アーチ16a、16b、16cの単一のアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”のアーム区画が相互に接続され、これによって、ステント10の非拡張状態において本質的に直線をなす保持アーチアームを構成する。この点において、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の非曲線構造を示す、
図5aの切断パターンを参照する。
【0128】
ステント10の製造時、ステント構造および特に保持アーチ16a、16b、16cの構造は、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”がステント10の拡張状態で曲線形状を有するようにプログラムされる。保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状は、ステント10に取り付けられた人工心臓弁100の移行領域104の形状をアームがたどるように画成される(
図6a、6b参照)。
【0129】
したがって、その上に人工心臓弁100の移行領域104が縫い付けられるまたは縫い付け可能である、ステント10の保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、ステント10の拡張時に自身の形状を変化させる。ステント10の拡張状態では保持アーチ16a、16b、16cは曲がっているが、ステント10が折り畳まれているときは相対的に直線である。
【0130】
例えば
図5b〜5dから分かるように、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の湾曲は、アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の分割によって達成される。詳細には、アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は複数の曲げエッジ33を設けることによって分割される。ステント10の拡張状態では、二つの隣合うアーム区画が互いに対して角度を持ち、これら二つの隣合うアーム区画の屈曲点が、両方の隣合うアーム区画の間に設けられた曲げエッジ33によって画成される。したがって、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に設けられる曲げエッジ33の数が多くなるほど、ステント10の拡張状態で異なる方向に延出可能であるアーム区画の数が多くなる。この点において、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状を、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の移行領域104の形状に正確に適合させることができる。また、
図8〜10に示す実施形態が、複数のアーム区画を提供するさらに多数の曲げエッジ33を示していることに注意すべきである。これに加えて、保持アーチ16a、16b、16cに沿って複数の締結用切欠を設けるように、
図8〜10に示す曲げエッジ33が形成されるが、これについてはより詳細に後述する。
【0131】
図5a〜5eに示すステント10には、ステント本体の下端部に配置された環状カラー40も設けられている。少なくとも一つの環状カラー40がステントの追加係留手段として機能してもよい。
【0132】
図6a、6bに示す実施形態では、ステント10は、
図5a〜5eに関して上述した例示的な実施形態にしたがったステントに対応する。他方、ステント10に取り付けられた人工心臓弁100は、
図1、2a、2bに関して上述した人工心臓弁100の例示的な実施形態に対応する。
【0133】
したがって、
図6a、6bに示す経カテーテル搬送体内プロテーゼ1の例示的な実施形態に示すように、ステント10に取り付けられた人工心臓弁100は、生体材料または合成材料で作成された三つの弁尖102を備える。
【0134】
ステント10に対する人工心臓弁100の長手方向のずれを減らすために、ステント10は、本質的にステント10の長手方向Lに延びる、下部弁尖取付領域11cの形態の複数の締結部を備える。加えて、ステント10には、交連取付領域11bが設けられる。下部弁尖取付領域11cおよび交連取付領域11b(両方とも締結部として機能する)を用いて、人工心臓弁100の組織部分がステント10に取り付けられる。
【0135】
詳細には、下部弁尖取付領域11cおよび交連取付領域11bのそれぞれの締結穴12a、12cを通して案内される縫合糸101、スレッドまたは細いワイヤによって、人工心臓弁100がステント10に締結される。これにより、ステント10に対する所定の位置で、ステント10に人工心臓弁100の組織部分を取り付けることが可能になる。
【0136】
代替的に、
図8〜10に関して説明するように、縫合糸101、スレッドまたはワイヤが、上述した締結穴12aの代わりに、保持アーチ16a、16b、16cに沿って設けられる締結用切欠によって案内されてもよい。したがって、
図8〜10に係る代替的な実施形態では、下部弁尖取付領域11cの締結穴12aが(曲げエッジ33により設けられる)ノッチで置き換えられる一方、交連取付領域11bには依然として締結穴12cが設けられてもよい。
【0137】
縫合糸101を用いてステント10に人工心臓弁100を取り付ける方法が、
図6aまたは
図6bから分かる。図示の実施形態では、保持アーチ16a、16b、16cの締結部、すなわち下部弁尖取付領域11cおよび交連取付領域11bに設けられた締結穴12a、12cに縫い付けられた、心膜人工心臓弁100が使用される。ステント10への人工心臓弁100の取付を改善するために、環状カラー40に加えステント構造の他の部分にもスカート部103を縫い付けてもよい。人工心臓弁100は、略円形断面のチューブ状であってもよい。
【0138】
他方、支持ステント10の外面に人工心臓弁100を取り付けることも考えられる。すなわち、病変した生体心臓弁にスカート部103が直接接触してもよいし、縫合糸を用いてスカート部103がステント10に取り付けられてもよい。ステント10の外面に人工心臓弁100を取り付けると、弁尖102からステント10への荷重伝達が支持される。これは、閉鎖中の弁尖102にかかる応力を大きく削減し、その結果、弁尖の耐久性が高まる。また、ステントの外面にスカート部および交連部を取り付ける場合、血行動態を改善するように心臓弁を設計することが可能になる。さらに、病変した心臓弁と直接接触する心臓弁材料は、漏れ(すなわち、弁傍漏れ)、組織の増殖、および取付に対する良好な封止界面を提供する。
【0139】
人工心臓弁100の材料、特に人工心臓弁の弁尖102の材料は、合成物、動物の弁または心膜などの他の動物組織から作ることができる。動物の組織は、複数の種類の動物からであってもよい。人工心臓弁100の弁尖材料はウシまたはブタの心膜から作られることが好ましいが、例えばウマ、カンガルーなどの他の動物も考慮することができる。
【0140】
以下では、本開示に係る体内プロテーゼ1で利用される例示的な実施形態に係る補強部材107.1〜107.8の説明する
図12〜17を参照する。補強部材107.1〜107.8は、屈曲可能な移行領域104と、ステント10の下部弁尖取付領域11c(
図12〜14参照)および/または交連取付領域11b(
図15〜17参照)との間の接続部における、人工心臓弁100の組織材料の応力集中を軽減することができる。
【0141】
補強部材107.1〜107.8は、縫い目の経路に沿って離散的にまたは連続的に配置することができる。例えば、人工心臓弁材料の他方の側にあるステントの保持アーチとは反対側に、補強部材を配置することができる。ステントへの取付を補強するとともに、屈曲可能な移行部104または弁尖支持部103への直接縫合によって生じる弁尖材料内の応力集中を低減するために、図示の補強部材107.1〜107.8が適用される。これに加えて、補強部材107.1〜107.8により、縫合糸の結び目と人工心臓弁の組織とが直接接触するのを避けることができる。また、心臓弁組織と、ステントまたは体内プロテーゼの任意の他の金属部品との直接的な接触を、補強部材によって避けることができる。
【0142】
人工心臓弁100の開閉中に弁組織が摩耗するのを避けるために、補強部材107.1〜107.8が丸みのあるエッジを持つように設計されると好ましい。
【0143】
詳細には、
図12は、
図6bまたは
図11b内のA−A線に沿った断面図、すなわち、本開示の体内プロテーゼ1で利用されるステント10の一つの保持アーチ16a、16b、16cの断面図である。
図12に示すように、補強部材107.1の第1の例示的な実施形態を利用して、人工心臓弁100をステントに取り付けることができる。
【0144】
この例示的な実施形態によると、人工心臓弁100の組織材料における応力集中を軽減するように意図された内部クッション107.1の形態である少なくとも一つの補強部材を用いて、人工心臓弁組織とステント10との接続が補強される。上記の応力集中は、人工心臓弁100の組織材料を直接縫い付けると生じることがある。内部クッション107.1の形態である少なくとも一つの補強部材は、縫合糸101.1と、人工心臓弁100の組織材料との間に配置される。この点において、縫合糸101.1により生じる応力が、人工心臓弁100の組織材料のより広範な領域にわたり分配される。内部クッション107.1の形態である少なくとも一つの補強部材は、人工心臓弁100の組織材料の他方の側にある、ステント10の対応する保持アーチ16a、16b、16cとは反対側に配置される。すなわち、内部クッション107.1の形態である少なくとも一つの補強部材は、人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の内面に取り付けられる。補強部材の第1実施形態である少なくとも一つの内部クッション107.1は、少なくとも一つの丸みのあるエッジ108が形成されるように折り畳むことができる。この少なくとも一つの丸みのあるエッジ108は、人工心臓弁100の開閉中に弁尖102の組織材料が摩耗するのを避けるように設計される。
【0145】
内部クッション107.1の形態である補強部材は、ポリエステルベロア、PTFE、心膜組織などの材料、または、丸みのあるエッジを形成し人工心臓弁100の組織材料内の応力を分配または緩衝するのに適した任意の他の材料からなる、一層または多層の材料で作成されてもよい。内部クッション107.1の形態の補強部材を、一つの保持アーチ16a、16b、16cの二つの隣接するアーム16a’、16a”;16b’、16b”;16c’、16c”(
図6a参照)の下端の間に形成される隙間に渡して、人工心臓弁100の組織材料を隙間の全域で支持するように、適用することができる。
【0146】
人工心臓弁100を心臓弁ステント10に固定するために本開示の経カテーテル搬送体内プロテーゼ1で利用される補強部材の第2の例示的な実施形態を説明する、
図6bまたは
図11bに示すB−B線(交連取付領域11b)に沿った断面図である
図15をさらに参照する。
【0147】
補強部材は、ポリエステルベロア、PTFE、心膜組織などの材料、または、丸みのあるエッジを形成するのに適した任意の他の材料からなる、一層または多層の材料で作成されてもよい。
図15に示すように、人工心臓弁100の上端部において、心臓弁の閉鎖中に、弁尖102が折り畳まれて小さな空洞109が形成されるように、人工心臓弁100の組織材料を交連取付領域11bに取り付けることができる。内部クッション107.2の形態である補強部材が、この空洞109内に挿入される。心臓弁プロテーゼ1の閉鎖フェーズ中の漏れを回避するために、できるだけ小さな空洞109を形成することに注意すべきである。
【0148】
図13は、本開示に係る体内プロテーゼ1で利用される補強部材の第3の例示的な実施形態を説明する、
図6bまたは
図11bに示すA−A線に沿った断面図である。この例示的な実施形態によると、補強部材は、
図12に示した内部クッション107.1からなる補強部材と実質的に同じ場所に置かれたワイヤレール107.3であってもよい。この場合、人工心臓弁100の内面では、ワイヤレール107.3の周りに縫合糸101.1が巻かれ、生体人工心臓弁の外面では、適切なステッチパターンを用いて保持アーチ16a、16b、16cに縫合糸101.1が取り付けられる。すなわち、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域104の内面に、ワイヤレール107.3が取り付けられる。ワイヤレール107.3はニチノールで作成されることが好ましい。これにより、ワイヤレール107.3をステント10とともに折り畳むことが可能になる。第3実施形態の補強部材も、人工心臓弁100の開閉中に弁組織が摩耗するのを避けるために、丸みのあるエッジを持つように設計される。
【0149】
図14は、本開示に係る体内プロテーゼ1で利用される補強部材の第4の例示的な実施形態を説明する、
図6bまたは
図11bに示すA−A線に沿った断面図である。したがって、ポリエステルベロアまたはPTFEなどの材料で構成される内部クッション107.1、107.2を用いる代わりに、第4の例示的な実施形態に係る補強部材を、保持アーチ16a、16b、16cの本質的なコピーとして配置することができる。しかしながら、この実施形態では、材料の厚みがあると体内プロテーゼ1を小さく折り畳むことが妨げられるので、補強部材は、対応する保持アーチ16a、16b、16cよりも細い内部取付レール107.4である。より詳細には、内部取付レール107.4は、長手方向の所与の位置に分配された、対応する保持アーチ16a、16b、16cと同じ締結穴12aとノッチとを有している。
【0150】
さらに、保持アーチ16a、16b、16cとは反対側の、人工心臓弁100の組織材料の内面に、内部取付レール107.4が配置される。このため、保持アーチ16a、16b、16cと内部取付レール107.4との間に人工心臓弁100がクランプされる。保持アーチ16a、16b、16cと内部取付レール107.4とは、縫合糸101.1により接続される。
【0151】
しかしながら、代替的な実施形態では、保持アーチ16a、16b、16cと内部取付レール107.4の間の接続は、針または縫合糸を用いて貫通することなく生体人工心臓弁組織をクランプするように、リベット、溶接またははんだ付けを利用してもよい。ステント10と同時に折り畳むことができるように、内部取付レール107.4がニチノールで作成されると好ましい。
【0152】
当然、弁尖102の摩耗を防止するために、内部取付レール107.4のエッジを丸くしてもよい。加えて、内部取付レール107.4を組織材料または合成材料で包んで、人工心臓弁の作動時の弁尖材料との接触中に生じうる摩耗をさらに低減することができる。
【0153】
図16は、本開示に係る体内プロテーゼ1で利用される補強部材の第5の例示的な実施形態を説明する、
図6bまたは
図11bに示すA−A線に沿った断面図である。
【0154】
図16に示すように、この例示的な実施形態に係る補強部材は、ステント10の交連取付領域11bで人工心臓弁組織の裏側に取り付けられる外側包装部材107.5である。弁尖102が空洞を形成しないように折り畳まれる。むしろ、外側包装部材107.5は、生体人工心臓弁100の外面にクランプされる。より詳細には、屈曲可能な移行領域104の外面にクランプされ、弁尖102をともに押し付ける。このように、人工心臓弁組織を折り畳み外側包装部材107.5を用いて包むことによって、補強領域が形成される。
【0155】
外側包装部材107.5は、縫合糸101.1を用いて交連取付領域11bに取り付けられる。人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の外面上に外側包装部材107.5を押し付けるための追加の横方向縫合糸101.2が設けられる。
【0156】
PTFE、PETファブリックまたはシートなどの高分子材料、あるいは一片の弁膜組織で外側包装部材107.5が作成されると好ましい。しかしながら、追加の横方向縫合糸101.2を用いずに人工心臓弁100の折り畳まれた組織材料を挟むことができる、より固いU字形のクリップまたは屈曲可能な材料であってもよい。加えて、この外側包装部材107.5は、弁尖102の開きを制限して弁尖102がステント10に衝突するのを防止するバンパーとして機能する。
【0157】
図16内の点線は、弁尖102の閉位置を表している。
【0158】
図18は、人工心臓弁100が外側からステント10に取り付けられる代替的な取付手法を示す。このために、人工心臓弁100の組織材料を折り畳み、保持アーチ16a、16b、16cに設けられたスロット110の中に通す。スロット110のエッジに丸みを付けて滑らかにし、人工心臓弁100の組織材料の摩耗または摩擦を避けることが好ましい。さらに、組織の摩耗をさらに低減するために、スロット110を薄い弁膜組織で包んでもよい。この設計では、ステント10の外側にいくらかの厚い材料が置かれるので、病変した生体心臓弁の位置におけるステント10の固定に影響が及ぶことがある。
【0159】
一実施形態は、ステント構造の残りの部分に比べて薄い保持アーチ16a、16b、16cを外面に備え、外面で組織材料を受け入れてもよい。ステント10の折り畳み時にこれが凹みを提供するので、折り畳まれたプロテーゼがより大きな搬送カテーテルを必要とすることがない。
【0160】
図17は、本開示に係る体内プロテーゼ1で利用される第6の例示的な実施形態に係る補強部材107.6、107.7を説明する、
図6bまたは
図11bに示すB−B線に沿った断面図である。
【0161】
詳細には、
図17は、人工心臓弁100の移行領域104の内外面に補強部材107.6、107.7が取り付けられる実施形態を示す。
図17は、B−B線に沿った断面図のみを示すが、図示の補強部材の第6実施形態は、ステントの保持アーチ16a、16b、16c(A−A線)に沿っても適用できることに注意すべきである。この点において、外側補強部材107.6は、保持アーチ16a、16b、16c(下部弁尖取付領域11c)および交連取付領域11bの全長を覆うのに十分な長さである、200μm厚のブタの心膜の幅広片200からなる。外側補強部材107.6を形成するこの心膜片を、交連取付領域11bの長さに一致するそれぞれ約5mmの三枚の短切片と、一つの交連取付領域11bから隣接する領域までの保持アーチ16a、16b、16c(下部弁尖取付領域11c)に沿った長さに一致するそれぞれ約45mmの三枚の長切片と、に切断することができる。
【0162】
4mm幅のブタ心膜外側補強部材107.6を半分に折り畳まれ、自由縁に非常に近いランニングステッチの微細な密着(clinging)縫合糸101.4(例えば8−0縫合糸)を用いて縫合される。続いて、縫合された外側補強部材107.6が、ステント表面に沿って配置された8−0ランニングステッチを用いて、保持アーチ16a、16b、16cおよび/または交連取付領域11bの内面に沿って配置される。外側補強部材107.6は、6−0包囲(surrounding)縫合糸101.3を用いて、交連取付領域11bおよび/または保持アーチ16a、16b、16cの周りを包むジグザグ・クロッシング・ステッチで(小穴を通さずに)、ステントに縫合され内面を補強する。
【0163】
内側補強部材107.7に関して、その材料は、200μmのブタの心膜片であると好ましく、約3.5mmの幅であり切断され三層に重ねられるか丸められる。組織片の長さは、交連取付領域11bまたは保持アーチ16a、16b、16cのみを補強するか否かによって決まる。交連取付領域11bのみを補強する場合、約5mmの三枚の短片が必要である。短片は、8−0ランニングステッチの密着縫合糸101.4によって、重ねられるか丸められた形状で保持される。内側補強部材107.7は、人工心臓弁100の閉鎖中に、弁尖102の間に大き過ぎる空洞109が生じないような最小の大きさとなるように、構成されてもよい。内側補強部材107.7は、人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の内面およびステント10に小穴12aを通して固定される。この目的のために、外面にロッキング・ステッチを持つ4−0縫合糸101.1を使用すると好ましい。これらの縫合糸101.1は、アセンブリにおいて最も重要であり、緩みのないように非常にしっかりと固定される必要がある。単一の4−0縫合糸101.1の代わりに、冗長性および同様の全体強度のために、二本の6−0縫合糸を使用することが考えられる。さらに、4−0縫合糸101.1が外側補強部材107.6を適所に保持する。
【0164】
人工心臓弁100の弁尖102を開閉するとき、外側補強部材107.6は、開く間に弁尖102に影響を与える衝撃を吸収するバンパーとして機能する。内側補強部材107.7は、縫合糸101.1により誘発される圧縮力を分散し、人工心臓弁100の移行領域104における応力集中を回避する。
【0165】
以下では、人工心臓弁の支持および固定が可能である心臓弁ステントのさらなる例示的な実施形態を説明する
図7a、7bを参照する。詳細には、
図7aは、心臓弁狭窄または心臓弁不全を治療する経カテーテル搬送体内プロテーゼ1の第1側面斜視図である。体内プロテーゼ1は、人工心臓弁を保持するステントの第1の例示的な実施形態(
図5a〜5e)に係る心臓弁ステント10を備える。
図7bは、
図7aに示す体内プロテーゼ1の第2側面斜視図である。
【0166】
図6a、6bに示す例示的な実施形態とは対照的に、
図7a、7bに示す体内プロテーゼ1は、第2の弁実施形態に係る人工心臓弁100を示している。すなわち、
図7a、7bのステント10に取り付けられた人工心臓弁100は、隣接エッジ112に沿って縫い付けられた三つの個別片120からなる。これらの三つの個別片120は、単一の心膜サック(異種移植片または同種移植片)から切り出されてもよいし、複数の心膜サックから切り出されてもよい。
【0167】
図7a、7bに示す例示的な実施形態に係る体内プロテーゼ1は、
図5a〜5eに示す第1のステント実施形態に係るステント10を備えている。このステント10は、患者の生体心臓弁の複数の嚢内に配置され、複数の生体心臓弁尖の第1側面に配置されるように構成された複数の位置決めアーチ15a、15b、15cと、第1側面とは反対側の複数の生体心臓弁尖の第2側面に配置されるように構成された複数の保持アーチ16a、16b、16cとを備える。さらに、複数の弁尖保護アーチ50a、50b、50cが設けられる。各弁尖保護アーチは、複数の位置決めアーチ15a、15b、15cのうち一つの二本のアーム15a’、15a”、15b’、15b”、15c’、15c”の間の空間を占める。加えて、保持アーチ16a、16b、16cの各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”には、各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”を複数のアーム区画に分割するために複数の曲げエッジ33が設けられることが好ましい。ステント10の構造は、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”が、少なくともステント10の拡張状態で曲線形状を有するようにプログラムされる。特に、保持アーチ16a、16b、16cの各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状は、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の弁尖102の形状をアームがなぞるように画成される。
【0168】
図7a、7bに示す実施形態に係るステント10の構造では、各位置決めアーチ15a、15b、15cの間に一つの弁尖保護アーチ50a、50b、50cが設けられる。したがって、各位置決めアーチ15a、15b、15cに対して一つの弁尖保護アーチ50a、50b、50cが割り当てられる。
【0169】
弁尖保護アーチ50a、50b、50cはそれぞれ、ステント10の下端2で閉じた略U字形または略V字形の構造を有する。より詳細には、弁尖保護アーチ50a、50b、50cはそれぞれ、位置決めアーチ15a、15b、15cの形状とほぼ同様の形状を有しており、各弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、対応する位置決めアーチ15a、15b、15cのアームの内部に配置される。さらに、各弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、位置決めアーチ15a、15b、15cと同じ方向に延び出している。
【0170】
弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、ステント10が拡張状態にあるとき、ステント10の円周外側で径方向に延びるようにプログラムされるとが好ましい。こうすると、ステント10が拡張し移植された状態のとき、生体(病変)心臓弁の弁尖に加わる接触力を増加することができる。これにより、ステント10が原位置に固定される保障が高くなる。
【0171】
ステント10が拡張し移植された状態で、弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、位置決めアーチ15a、15b、15cが生体弁尖の外側に配置されたときに、病変した弁尖、すなわち生体心臓弁の弁尖を、ステント10に取り付けられた人工心臓弁100の弁尖102に影響しないように積極的に保持する。加えて、弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、移動に抗する追加の係留および固定を提供してもよい。
【0172】
ステント10の代替的な実施形態を
図8a〜8dに示す(以下「第2ステント実施形態」と称する)。
図8a〜8dに示す実施形態に係るステント10は、
図5a〜5eに関して説明したステントと同一の特徴を本質的に備えている。より詳細には、ステント10は、位置決めアーチ15a、15b、15cの他、保持アーチ16a、16b、16cと環状カラー40とを備えている。
【0173】
図5a〜5eに示したステント10の第1実施形態とは対照的に、第2ステント実施形態のステント10は、人工心臓弁100の組織部分を固定するために設けられる複数の追加締結穴12aまたは小穴を有する複数の下部弁尖取付領域11cが設けられていない保持アーチ16a、16b、16cを備える。代わりに、第2ステント実施形態のステントには、複数の曲げエッジ33によりそのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”が分割されている保持アーチ16a、16b、16cが設けられている。曲げエッジ33は、二つの隣接するアーム区画の屈曲点を画成するだけでなく、ステント10に人工心臓弁100を固定するために使用可能な締結用切欠としても使用される。締結用切欠を縫合糸、スレッドまたはワイヤの太さに適合させることも当然考えられる。詳細には、縫合糸、スレッドまたはワイヤに与える損傷を最小にするために追加ノッチが丸められていてもよい。保持アーチ16a、16b、16cに沿って締結用切欠を提供する曲げエッジ33の数を増やすことで、保持アーチ16a、16b、16cがそれぞれのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の全長に沿ってより連続的に屈曲することが可能になり、人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104への保持アーチ16a、16b、16cの取付が簡単になる。
【0174】
より詳細には、
図8aは、第2実施形態に係るステント10の非拡張状態の平面展開図である。この平面展開図は、第2実施形態に従ったステント10の製造で使用可能である切断パターンの二次元投影図に対応する。これにより、チューブの一部、特に金属管から一体的なステント10を切り出すことが可能になる。
【0175】
図8bは、第2ステント実施形態に係る心臓弁ステント10の拡張状態の第1側面斜視図である。
図8cは、第2ステント実施形態に係る心臓弁ステント10の同じく拡張状態の第2側面斜視図である。
【0176】
図8dは、ステントの第2実施形態に係る心臓弁ステント10の平面展開図である。
図8aの平面展開図とは異なり、
図8dの平面展開図は、心臓弁ステント10の拡張状態を示している。
【0177】
このため、第2ステント実施形態に係るステント10は、複数の位置決めアーチ15a、15b、15cと、複数の保持アーチ16a、16b、16cとを備える。複数の位置決めアーチ15a、15b、15cはそれぞれ、患者の生体心臓弁の複数の嚢内に配置され、複数の生体心臓弁尖の第1側に配置されるように構成される。他方、複数の保持アーチ16a、16b、16cはそれぞれ、第1側とは反対の複数の生体心臓弁尖の第2側に配置されるように構成される。
【0178】
さらに、複数の位置決めアーチ15a、15b、15cのうち一つの二本のアーム15a’、15a”、15b’、15b”、15c’、15c”の間にそれぞれ配置された、複数の弁尖保護アーチ50a、50b、50cが設けられている。加えて、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”には複数の曲げエッジ33が好ましくは設けられ、各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”を複数のアーム区画に分割している。保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”が少なくともステント10の拡張時に曲線形状を有するように、ステント10の構造がプログラムされる。特に、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状は、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の形状をアームがたどるように画成される。
【0179】
詳細には、
図8aの平面展開図に示されるように、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”には、複数の曲げエッジ33が設けられている。これらの曲げエッジ33は、各保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の全長に沿って一様に分布しており、これによって各アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”を複数のアーム区画に分割する。対応する保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”のアーム区画は相互に接続しており、これによってステント10の非拡張時に本質的に直線をなす保持アーチアームを構成する。この点において、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の非曲線構造を示す、
図8aの平面展開図を参照する。
【0180】
ステント10の製造時、ステント構造および特に保持アーチ16a、16b、16cの構造は、保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”がステント10の拡張時に曲線形状を有するようにプログラムされる。保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状は、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の弁尖の形状をアームがたどるように画成される(
図8d参照)。
【0181】
したがって、その上に人工心臓弁100が縫い付けられるかまたは縫い付け可能である保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、ステント10の拡張時に自身の形状を変化させる。この場合、ステント10の拡張状態では保持アーチ16a、16b、16cは曲がっているが、ステント10が折り畳まれているときは相対的に直線である。このため、拡張状態において、ステント10の保持アーチ16a、16b、16cは、人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の形状に合うように構成される。詳細には、拡張状態において、保持アーチ16a、16b、16cは、生体の大動脈弁または肺動脈弁の形状と同様に、本質的にU字形に前進するように構成される。これは、弁尖102の開閉運動中の組織の応力を低減するためである。
【0182】
例えば
図8dから分かるように、保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の本質的にU字形の湾曲は、アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の分割によって達成される。詳細には、複数の曲げエッジ33を設けることによってアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”が分割される。ステント10の拡張状態では、二つの隣合うアーム区画が互いに対して角度を持つ。これら二つの隣合うアーム区画の屈曲点は、隣合うアーム区画の間に設けられた曲げエッジ33によって画成される。したがって、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に設けられる曲げエッジ33の数が多くなるほど、ステント10の拡張状態で異なる方向に延出可能であるアーム区画の数が多くなる。この点において、保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状を、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の弁尖102の形状に適合させることができる。
【0183】
第2ステント実施形態の設計によると、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”には、例えばステントの第1実施形態(
図5a〜5e)にあるような締結穴12aが設けられていない。代わりに、第2ステント実施形態では、保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に設けられた曲げエッジ33が、二本の隣合うアーム区画の屈曲点を画成するのみならず、人工心臓弁100をステント10に固定するために使用可能な締結用切欠としても使用される。
【0184】
例えば
図5aの平面展開図(第1ステント実施形態)との比較から、第2ステント実施形態に係るステント設計の保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”は、締結穴12aを有する下部弁尖取付領域が設けられた第1ステント実施形態の保持アーチアームと比較すると、少なくとも部分的に非常に薄いことが分かる。保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の幅を小さくすることによって、アームの柔軟性が向上し、各保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状を、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の形状により正確に適合させることが可能になる。
【0185】
さらに、心臓弁プロテーゼをステント10に固定する締結用切欠として保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に設けられた曲げエッジ33を使用することによって、締結穴12aの数と比較してより多数の取付点を作成することができる。この点において、単一の取付点における高い応力集中を効果的に回避することができる。さらに、締結用切欠は空間を提供し、弁100のカテーテル内への折り畳み中に縫合糸101を保護することができる。したがって、人工心臓弁100の折り畳みおよび配置中に、人工心臓弁100を保持アーチ16a、16b、16cに取り付けるために使用する縫合糸101に、ステント10の隣接部材が影響を与えたり損傷したりすることがない。
【0186】
加えて、ステントの第2ステント実施形態では、ステント10の保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に人工心臓弁を固定するために使用される取付点(曲げエッジ33)が、各保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に沿ってより一様に分布している。これによって、人工心臓弁がステントにより一様に固定される。したがって、ステントに対して人工心臓弁が軸方向にずれるリスクをさらに低下することができる。各保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に設けられた個々の曲げエッジ33は、ステント10の対応する保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に人工心臓弁の組織部分を固定または縫い付けるのに用いられるスレッドまたは細いワイヤを案内する役割をする。詳細には、保持アーチアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に人工心臓弁の組織部分を締結するための上記手段(スレッドまたは細いワイヤ)が、締結用切欠として機能する曲げエッジ33によって案内されるので、ステント10に対する人工心臓弁の長手方向のずれが実質的に最小化される。これにより、ステント10に対する人工心臓弁の正確な位置決めも可能になる。
【0187】
加えて、第2ステント実施形態に係るステント10は、二つの隣合う保持アーチ16a、16b、16cの間を埋める少なくとも一つの補助アーチ18a、18b、18cをさらに備えてもよい。少なくとも一つの補助アーチ18a、18b、18cは、その第1端部で第1保持アーチ16a、16b、16cと接続される第1アーム18a’、18b’、18c’と、その第1端部で第2保持アーチ16a、16b、16cと接続される第2アーム18a”、18b”、18c”とを備える。少なくとも一つの補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”はそれぞれ、ステント本体の下端部に配置される環状カラー40に接続された第2端部を有している。上述のステント設計(第1ステント実施形態)と同様に、この少なくとも一つのカラー40は、
図8aに示す切断パターンを使用することで、チューブの一部からステントを切り出すための追加の固定手段として機能する。
【0188】
詳細には、少なくとも一つの補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”は、二つの隣合う補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”の間に設けられる支柱(strut)またはウェブ構造の一部であり、ステント10に固定される人工心臓弁100を支持する(例えば、
図11aおよび11bを参照)。例えば
図8dから分かるように、支柱またはウェブ構造は、強化構造を形成するように相互に接続される複数の支柱または支柱状部材によって構成されてもよい。強化構造の各支柱または支柱状部材は、二つの隣合う補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”の間の領域の強度または耐変形性を向上するための補強部材として機能する。これによって、強化構造はステント10を機械的に強化する。さらに、二つの隣合う補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”の間の強化構造の補強部材は、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100のスカート部103の追加支持部を提供する。実際には、縫合糸、スレッドまたは細いワイヤを用いて、人工心臓弁100のスカート部103を補助アーチ18a、18b、18cに直接取り付けることも考えられる。これについては、
図11a、11bを参照してより詳細に後述する。
【0189】
本明細書で使用される「強度」または「耐変形性」という用語は、補強部材に関連する複数の様々な特性のうち任意のものを意味するように使用されることがある。例えば、補強部材を作成する材料の特性、例えば降伏強度、弾性係数、剛性係数、または伸び率を指すのに上記用語を使用してもよい。同様に、補強部材の硬度を指すのに上記用語を使用してもよい。硬度は、材料の硬度測定に使用される装置に関連して、材料の「デュロメータ」として特徴づけられてもよい。補強部材の厚さなどの、補強部材の幾何的な特徴を意味するのに上記用語を使用してもよい。「強度」または「耐変形性」という用語は、上記の特性の任意の組み合わせ、並びに追加の特性および/または特徴を指すのに使用されてもよい。
【0190】
二つの隣合う補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”の間の領域の強度または耐変形性を、様々な方法で高めることができる。
図8dから分かるように、例えば、少なくとも一つの補強部材、好ましくは互いに接続された複数の補強部材(例えば支柱または支柱状部材)で形成された強化構造を設けることによって、二つの隣合う補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”の間の領域の強度または耐変形性を高めることができる。
【0191】
二つの隣合う補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”の間の領域の強度または耐変形性を高めるために、補強ウェブを設けることも考えられる。この補強ウェブは、互いに接続されることによって菱形パターンを形成する複数の補強部材(例えば支柱または支柱状部材)で構成されてもよい。
【0192】
補強部材の厚さを増加することによって、またはステント10の設計から応力集中を高めるものを排除することによって、または補強部材の形状の他の特徴を変更することによって、二つの隣合う補助アーチ18a、18b、18cの第1および第2アーム18a’、18b’、18c’、18a”、18b”、18c”の間の領域の強度または耐変形性を高めることができる。ステント10および/または補強部材の機械的特性を変更することによっても、強度を高めることができる。例えば、それぞれ異なるレベルの硬度を有する多数の様々な材料、好ましくは形状記憶材料で補強部材を作成することができる。この点において、ステント10および/または補強部材の機械的特性をステントの各用途での特定のニーズに適合させるように、ステントおよび補強部材の形成に使用する材料の化学量論的組成を変更することも想定される。また、ステントおよび補強部材を形成するのに、例えばニチノールおよび形状記憶ポリマーなどの異なる材料を使用することも想定される。このように、ステントの各用途の特定のニーズに合わせて補強部材の選択を調整することができる。例えば、大きな外力が予想される領域では、高硬度を有する補強部材が好ましい場合がある。形状を変えた材料特性を組み合わせることによって強度を高めてもよい。
【0193】
図8dから分かるように、第2ステント実施形態に係るステント10には、二つの隣合う(隣接する)保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の間の領域に複数の支柱によって形成された複数の格子セル70で構成される補強構造が設けられており、これによって、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の追加支持部を提供している。
【0194】
加えて、二つの隣合う保持アーチ16a、16b、16cの隣接アーム間の領域に複数の支柱によって形成された格子セル70のこの構造は、一様なステント構造を提供することができる。これは、人工心臓弁が取り付けられたステント10が移植された段階での血液漏出を最小化することができる。
【0195】
格子セル70の構造を形成する各支柱の上端部は、保持アーチ16a、16b、16cの各アームに接続される。好ましくは、該支柱の上端部と保持アーチ16a、16b、16cのアームとの間の接続を強化するために、支柱の上端部の直径が拡大されている。
【0196】
ステント本体の上端部に設けられる上述した環状カラー40は、保持アーチ16a、16b、16cを介してステント本体に接続される一方、少なくとも一つの補助アーチ18a、18b、18cのアーム18a’、18a”、18b’、18b”、18c’、18c”の第2端部を介してステント本体に接続される。少なくとも一つの補助アーチ18a、18b、18cのこれらのアーム18a’、18a”、18b’、18b”、18c’、18c”は、格子セル70の構造の一部である。特に、第2実施形態に係るステント10には、単一列のセルのみを有することで全長が短縮された環状カラー40が設けられている。
【0197】
図8aの平面展開図から分かるように、ステント本体の下端部にある環状カラー40は、ステント10の非拡張時にステント10の長手軸と平行に走り、横方向ウェブ42により相互接続される複数の支持ウェブ41を有する。しかしながら、
図8cの二次元展開図から分かるように、ステント10の拡張時には、支持ウェブ41と横方向ウェブ42とが菱形状、または蛇紋状(serpentine)の環状カラー40を形成し、ステント10が移植された状態で血管壁と接触する。
【0198】
移植され拡張された体内プロテーゼ1の位置固定をさらに改善し順行性移動を防止するために、第2ステント実施形態に係るステント10には、下端部2に放射形状のフレア(広がり)区画またはテーパー区画が設けられる。詳細には、
図8bおよび8cに示すように、ステント10の拡張した状態で、環状カラー40の下端部がステント10のフレア区画またはテーパー区画を構成する。上述したように、本開示に係る人工心臓弁100は、上述のステント形状に適合するようなフレア状またはテーパー状の下端部を備えてもよい。
【0199】
図8bおよび8cに示すステント10は、その下端部2に、放射形状のフレア区画またはテーパー区画を有する。しかしながら、このフレア区画またはテーパー区画をステント10の周囲に均一に配置しないことも考えられる。例えば、ステント10は、位置決めアーチ15a、15b、15cの場所の近くにのみフレアを有してもよいし、継ぎ目領域、すなわち二つの隣合う位置決めアーチ15a、15b、15cの二本のアーム15a’、15a”、15b’、15b”、15c’、15c”の間の領域の近傍にはフレアを設けなくてもよい。
【0200】
図8bおよび8cに示すように、第2ステント実施形態に係るステント10は、下端部2の連続設計を有する。この連続設計のために、ステント10が移植され拡張された状態では、ステント10が内部に展開された血管壁に、ステント10の下端部2を介して一様な径方向の力が与えられる。
【0201】
人工心臓弁が取り付けられた、移植され拡張した状態のステントが、心臓弁輪のはるか下方で広がることができない場合、ステント10と人工心臓弁100とからなる移植された体内プロテーゼが神経束と接触し心ブロックを起こすリスクがある。神経束は、心臓弁輪の下方約6〜10mmの場所で進入することがある。
【0202】
ステント10の下端部2が房室結節と接触することを避けるために、第2ステント実施形態に係るステント10には、単一列のセルのみを有することでその全長が短縮された環状カラー40が設けられている。この点において、ステント10の全高を短縮して患者の体内に移植される体内プロテーゼ1の全高が短縮される。
【0203】
さらに、所望の(拡張された)ステント構造の形状が固定されるプログラミング過程において、第2ステント実施形態のステント10が拡張された状態のときに、環状カラー40の上部のみがステント10の外周の外側で半径方向に延び、環状カラー40の下端部は、ステント10の外周の内側で半径方向に環状カラー40の上部に対して屈曲するように、環状カラー40の支持ウェブ41がプログラムされてもよい。環状カラー40の下端部は、例えば、ステント10の長手方向Lと略平行に延びるように屈曲してもよい。こうして、ステント10が内部に展開された血管の壁に対して、環状カラー40の上部によって与えられる接触力(径方向の力)が増加する一方、環状カラー40の下端部が房室結節と接触するリスクが軽減される。
【0204】
第2ステント実施形態に係るステント10が、環状カラー40の下端部周囲に一様に分配された複数の切欠12eを備えていることに注意することが大切である。これらの切欠12eを使用して、ステント10に人工心臓弁(
図8bおよび8cには示されていない)固定することができ、ステント10に対して人工心臓弁100が軸方向に移動するリスクが軽減される。複数の切欠12eを追加固定手段として使用するため、環状カラー40の全支持ウェブ41の下端部を利用して、人工心臓弁をステント10にさらに締結することができる。これは、
図8aの平面展開図に直接表れている。
【0205】
例えば
図5aの平面展開図(第1ステント実施形態)との比較から、環状カラー40のあらゆる支持ウェブ41の下端部に小穴12fを設けるためには、各切欠12eを形成するのに必要な材料の量よりも多くの材料が各小穴12fについて必要であることが分かる。ステント10の全ての構造部分、特に位置決めアーチ15a、15b、15c、保持アーチ16a、16b、16c、およびその下端部に追加締結手段が画成された環状カラー40を備えるステント10が、チューブの一部、特に金属管から切り出した一体構造を有することも考えられるので、元のチューブ部からステント10の設計を形成するための精巧な切断パターンが重要である。特に、全ての構造的なステント部分を有するステント10の構造を、元のチューブ部の限られた側面積から切り出さなければならないことを考慮に入れる必要がある。
【0206】
したがって、小穴12fの代わりに、環状カラー40の下端部に追加締結手段として切欠12eを設けることによって、小穴12fの数よりも多数の切欠12eを作成することができる。詳細には、第2ステント実施形態によると、環状カラー40の全ての支持ウェブ41の下端部に、追加締結手段として機能する対応する切欠12eが設けられる。対照的に、ステントの第1実施形態(
図5a〜5e)では、環状カラー40の全ての支持ウェブ41の下端部のみに、追加締結手段として機能する対応する小穴12fを設けることができる。
【0207】
この点において、第2ステント実施形態に係るステント設計は、環状カラー40の全ての支持ウェブ41の下端部に追加締結手段が設けられる点で、第1ステント設計とは異なる。これは、ステント10の第2ステント実施形態では、追加締結手段として切欠12eが使用されているという事実による。
【0208】
したがって、第2ステント実施形態では、ステント10に人工心臓弁を固定するために使用される追加締結手段が、環状カラー40の下端部周囲により一様に分布している。これによって、人工心臓弁がステントにより一様に固定される。したがって、ステントに対して人工心臓弁が軸方向にずれるリスクをさらに低下することができる。環状カラー40の下端部に設けられた個々の切欠12eは、ステント10の環状カラー40の下端部に人工心臓弁100の組織部分を固定または縫い付けるのに用いられるスレッドまたは細いワイヤを案内する役割をする。詳細には、環状カラー40の下端部に人工心臓弁の組織部分を締結するための上記手段(スレッドまたは細いワイヤ)が切欠12eによって案内されるので、ステント10に対する人工心臓弁の軸方向変位が実質的に最小化される。これにより、ステント10に対する人工心臓弁の位置決めも可能になる。この目的のために、
図1から分かるように、人工心臓弁100が下端部に本質的にジグザグ形のパターンを備えていてもよい。
【0209】
さらに、ステント10の環状カラー40の下端部に人工心臓弁の組織部分をしっかりと規定のかたちで固定するために対応する切欠12eを用いることによって、人工心臓弁が固定されたステント10、すなわち体内プロテーゼ1を圧縮して、体内プロテーゼ1の移植に使用されるカテーテルシステム内への挿入の準備ができた折り畳み状態にするときに、組織部分をステント10に締結するのに使用される手段(スレッドまたは細いワイヤ)が押しつぶされて品質が低下することを効果的に防止する。この点において、人工心臓弁100の組織部分をステント10に締結するために使用されるスレッドまたは細いワイヤが構造的に劣化するリスクが軽減される。
【0210】
切欠12eの断面形状は、人工心臓弁100の組織部分を締結するために使用されるスレッドまたは細いワイヤの断面形状に適合されてもよい。これにより、人工心臓弁100の組織部分を、予め定義された正確な位置でステント10に固定することが可能になる。締結穴12は、人工心臓弁100をステント10に締結するために使用されるスレッドまたは細いワイヤの太さおよび/または断面形状に適合されているので、体内プロテーゼ1が移植されるとき、心臓の蠕動運動に起因するステント10と人工心臓弁100の組織部分との間の相対移動を効果的に防ぐことができる。体内プロテーゼ1が完全に拡張して移植された状態にあるとき、人工心臓弁100の組織部分は、人工心臓弁の固定に使用されるスレッドまたは細いワイヤの摩擦で引き起こされる摩耗が最小化されるような、最小限の遊びでステント10に締結される。例えば
図8aに示すように、切欠12eは半円形の断面形状を有している。
【0211】
特に
図8b〜8dから分かるように、本発明の第2ステント実施形態に係るステント10は、少なくとも一つの放射アーチ32a、32b、32cを備える。放射アーチは、心臓の移植部位でステント10の特にしっかりとした固定を可能にし、複数の位置決めアーチ15a、15b、15cの少なくとも一つの実質的に円周方向で位置合わせされている。放射アーチ32a、32b、32cに加えて、ステント10には、それぞれ二つの弁尖保護アームを備える全部で三つの弁尖保護アーチ50a、50b、50cが設けられている。
図8aの平面展開図から分かるように、第2ステント実施形態に係るステント構造では、各位置決めアーチ15a、15b、15cの間に弁尖保護アーチ50a、50b、50cが設けられる。したがって、第2ステント実施形態に係るステントでは、一つの弁尖保護アーチ50a、50b、50cが各位置決めアーチ15a、15b、15cに割り当てられている。
【0212】
図8aに示す平面展開図を参照すると、第2ステント実施形態に係るステント10の放射アーチ32a、32b、32cは、弁尖保護アーチ50a、50b、50cからステント10の上端3に向けて延びる。
図8aに最も明瞭に示されているように、ステント10は三つの放射アーチ32a、32b、32cを有し、各アーチ32a、32b、32cは各弁尖保護アーチ50a、50b、50cの二本のアームの間に位置している。各放射アーチ32a、32b、32cは、各位置決めアーチ15a、15b、15cとはおおよそ逆の形状を有しており、位置決めアーチ15a、15b、15cのそれぞれ一つと反対の方向に延出する。
【0213】
他方、各弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、ステントの下端2で閉鎖する実質的にU字形またはV字形の構造を有する。各弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、対応する弁尖保護アーチ50a、50b、50cが間に配置される位置決めアーチ15a、15b、15cの形状とほぼ同様の形状を有している。さらに、各弁尖保護アーチ50a、50b、50cは位置決めアーチ15a、15b、15cと同じ方向に延出する。
【0214】
第2ステント実施形態のステント設計では、弁尖保護アーチ50a、50b、50cの各アームは、放射アーチ32a、32b、32cのアーム全長の略中点で、反対側の放射アーチ32a、32b、32cのアームと融合する。第2ステント実施形態のステント設計によると、弁尖保護アーチ50a、50b、50cはステントの長手方向Lに突出し、ステント10の拡張中に位置決めアーチ15a、15b、15cが展開可能であり弁尖保護アーチ50a、50b、50cが展開中に干渉しないような短縮された全長を有する。
【0215】
ステント10に配置された位置決めアーチ15a、15b、15cと保持アーチ16a、16b、16cは、ステントの下端部の方向に、すなわちステントの下端2に向けて、凸状でアーチ形に曲がっていてもよい。このような丸みのある形態は、動脈の損傷を軽減するとともに、自己拡大中の展開を容易にすることができる。このような設計によって、近隣の組織または血管壁を相応に傷つけることなく、生体心臓弁の嚢内への位置決めアーチ15a、15b、15cの挿入を容易にすることができる。
【0216】
図8aに係る平面展開図には明示されていないが、所望の(拡張した)ステント構造の形状が固定されるプログラミング過程中、第2ステント実施形態に係るステント10が拡張した状態にあるとき、ステント10の外周外側に径方向に延出するように弁尖保護アーチ50a、50b、50cがプログラムされていることが好ましい。こうすると、第2ステント実施形態のステントが拡張され移植された状態のとき、生体(病変した)心臓弁の弁尖に対する接触力を増大することができる。これによって、ステント10が原位置に固定される保障が高くなる。
【0217】
ステントが拡張され移植された状態のとき、位置決めアーチ15a、15b、15cが生体弁尖の外側に置かれる場合に、弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、病変した弁尖H、すなわち生体心臓弁の弁尖が、ステント10に固定された人工心臓弁100の弁尖組織に影響を与えないようにする。加えて、弁尖保護アーチ50a、50b、50cは、移動に対抗する追加の固定および保持を提供してもよい。この特徴は、病変した弁尖を邪魔にならないように押し出す位置決めアーチが設けられていない従来のステント設計で知られるケージと比較して特有のものである。
【0218】
図8aに示す展開図から分かるように、第2ステント実施形態のステント設計によると、各放射アーチ32a、32b、32cの二つのアーム32’、32”は、丸い接続部またはヘッド部によってステント10の上端3で互いに接続される。このヘッド部は丸いだけでなく、ステント10が拡張され移植された状態のとき、血管の内壁に対して可能な限り大きな接触面積で接触するように先端が広がっている。各放射アーチ32a、32b、32cのヘッド部は、移植前および移植中にステント10をカテーテル内に保持し、および/または移植後にステントを取り戻すことのできる追加手段としても機能する。
【0219】
所望の(拡張された)ステント構造の形状が固定されるプログラミング過程において、ステント10が拡張された状態のときにステント10の外周外側に径方向に放射アーチ32a、32b、32cが延出するように、放射アーチ32a、32b、32cがプログラムされる。こうすると、ステント10の上端領域によって血管壁に与えられる接触力を増大することができる。したがって、ステント10が原位置に固定される保障が高くなり、ステントが移動する可能性が低下する。したがって、拡張状態では、位置決めアーチ15a、15b、15cのクランプ効果に加えて、並びに弁尖保護アーチ50a、50b、50cにより得られる追加の固定に加えて、全てがステント10の外周から径方向外方に突出する保持アーチ16a、16b、16c、補助アーチ18a、18b、18c、放射アーチ32a、32b、32c、および環状カラー40によって及ぼされる半径方向の力によって、第2ステント実施形態のステント10が移植の適切な位置に固定される。
【0220】
カテーテル保持手段23または締結小穴24を有する締結手段が位置する平面を越えて、放射アーチ32a、32b、32cがステント10の長手方向Lに突出しないことが、
図8aの平面展開図から分かる。これは、放射アーチ32a、32b、32cのヘッド部と干渉することなく、カテーテル保持手段23が適切な移植カテーテル内の対応手段と協働できることを保証している。実際、上述したように、ステント10の外植を遂行するための追加のカテーテル保持手段または追加手段として、ヘッド部自体を使用することができる。
【0221】
原理上、径方向の接触力をさらに増大するために、ステント10が三つより多い数の放射アーチ32を備えてもよい。例えば、移植部位においてステント10をさらに良好に固定するために、放射アーチ32a、32b、32cの一部または全てに鉤状(barb)要素を設けることも可能である。
【0222】
さらに、ステント10が展開される血管壁にステント10の上部領域3を固定することに関して、ステント10が、例えば小穴24に配置される、鉤の先端がステント10の下端部2の方向を向いた鉤状部材を備えることも考えられる。
【0223】
加えて、ステント10の外側表面の全てまたは大半を覆うために、ステント10の外側の少なくとも一部の上に、ステントの下端部近傍の位置からステントの上端部近傍の位置に広がる、典型的に繊維、高分子また心膜のシート、薄膜等である、ライナーまたはさや(sheath)を設けてもよい。ライナーは、ステント10の少なくとも一端に取り付けられるとともに、両端の間の複数位置に取り付けられて外部被覆を形成してもよい。このような外部被覆は、ステント10と内腔壁の間の血流の漏れを阻止するための血管内腔の内壁に対する周縁シールを提供し、これによって血流が体内プロテーゼ1をバイパスすることを防止する。
【0224】
例えば、ライナーは、円周方向に間隔を空けた複数の軸線に沿ってステント10に縫い付けられるか他の方法で固定されてもよい。このような取付は、ステント10が半径方向に圧縮されたときに、複数の軸方向の折り目に沿ってライナーを折り畳むことを可能にする。ライナーは、フレームが広がるとき管状フレームの内腔壁に開いて一致することが可能である。代替的に、ライナーは、ステント10に熱溶接されるか超音波溶接されてもよい。ライナーは、好ましくは軸線に沿って、複数の個々のアーチ(位置決めアーチ15a、15b、15c、保持アーチ16a、16b、16c、補助アーチ18a、18b、18c、弁尖保護アーチ50a、50b、50c)に固定されてもよい。加えて、ライナーは、ステント10の下端部2に設けられた環状カラー40に固定されてもよい。
【0225】
ステント10の外表面の少なくとも一部をライナーまたはさやでカバーすることによって、露出したステント部材から生じる体内プロテーゼ1の血栓形成が大きく低減されるかまたは排除される。このような血栓形成の低減は、人工心臓弁100の展開および人工心臓弁100の適切な位置への固定に使用されるステント構造を有する利点を維持しつつ達成される。
【0226】
上述したように、挿入を容易にするために、弛緩した大きな直径の構成から小さな直径の構成にステント10を圧縮することができる。当然ながら、半径方向に圧縮された構成および拡張され弛緩した構成の両方で、外側ライナーはステント10に取り付いた状態を維持する必要がある。
【0227】
ライナーは、通常は織物、不織繊維、ポリマーシート、薄膜等の形態である、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン等の心膜材料または従来の生体移植材料で構成される。好適な繊維ライナー材料は、ダクロン(登録商標)糸(デュポン、ウィルミントン、デラウェア)などの平織りのポリエステルである。
【0228】
本発明に係るステント10の第3実施形態を、
図9を参照して以下で説明する。
図9は、心臓弁ステント10が拡張した状態の、この実施形態の平面展開図である。
【0229】
ステント10の第3実施形態は、第2ステント実施形態と構造および機能の点で類似する。繰り返しを避けるために、第2ステント実施形態の上記説明を参照する。特に、ステント10の下端部は、追加締結手段として機能する切欠12eが同様に設けられた環状カラー40によって構成されている。
【0230】
加えて、第3実施形態に係るステント10には、複数の曲げエッジ33によってアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”が分割されている保持アーチ16a、16b、16cが設けられている。複数の曲げエッジ33は、二本の隣合うアーム区画の屈曲点を画成するのみならず、人工心臓弁をステント10に固定するために使用可能な締結用切欠としても使用される。第3実施形態の保持アーチ16a、16b、16cは、体内プロテーゼの組み立て時に、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域104に沿って延びるように構成される。
【0231】
第3実施形態に係るステント10は、位置決めアーチ15a、15b、15cからステント10の上端3に向けて延びる放射アーチ32a、32b、32cも備える。
図9に示すように、ステント10は三つの放射アーチ32a、32b、32cを有し、各アーチ32a、32b、32cは各位置決めアーチ15a、15b、15cの二本のアーム15a’、15a”、15b’、15b”、15c’、15c”の間に位置している。各放射アーチ32a、32b、32cは、各位置決めアーチ15a、15b、15cとはおおよそ逆の形状を有しており、位置決めアーチ15a、15b、15cのそれぞれ一つと反対の方向に延出する。
【0232】
しかしながら、第2ステント実施形態のステント設計とは異なり、第3実施形態のステント設計には弁尖保護アーチ50a、50b、50cが設けられていない。さらに、放射アーチ32a、32b、32cの各アームは、ステント10の全長の略中点で、反対側の位置決めアーチ15a、15b、15cのアーム15a’、15a”、15b’、15b”、15c’、15c”と融合する。
【0233】
本発明に係るステント10の第4実施形態を、
図10を参照して以下で説明する。詳細には、
図10は、心臓弁ステント10が拡張した状態の、第4ステント実施形態の平面展開図である。
【0234】
図10を
図8dと比較すると、ステント10の第4実施形態は、第2ステント実施形態と構造および機能の点で類似する。繰り返しを避けるために、第2ステント実施形態の上記説明を参照する。
【0235】
ステント10の第4実施形態は、弁尖保護アーチ50a、50b、50cの各下端部が取り除かれている点で、第2ステント実施形態と異なるに過ぎない。特に、放射アーチ32a、32b、32cの各アームが融合する点の間の弁尖保護アーチ50a、50b、50cの各下端部が取り除かれている。
【0236】
本開示に係る体内プロテーゼ1の別の実施形態を
図11a〜11cに示す。詳細には、体内プロテーゼ1の第3実施形態は、第2ステント実施形態(
図8a〜8d)に係るステント10と、これに取り付けられた第2心臓弁実施形態(
図3、4)に係る人工心臓弁100と、を備える。
【0237】
より詳細には、
図11aは、体内プロテーゼ1の第3実施形態の第1側面図である。この第1側面図から、特徴的なU字形の保持アーチ16a、16b、16cが容易に明らかになる。
【0238】
上述したように、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”のU字形状は、アーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”を分割することによって実現される。詳細には、複数の曲げエッジ33を設けることでアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”が分割される。ステント10の図示の拡張状態では、二本の隣合うアーム区画が互いに対して角度を持ち、これら二つの隣合うアーム区画の屈曲点が、両方の隣合うアーム区画の間に設けられた曲げエッジ33によって画成される。したがって、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に設けられる曲げエッジ33の数が多くなるほど、ステント10の拡張状態で異なる方向に延出可能であるアーム区画の数が多くなる。この点において、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の形状を、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の移行領域104の形状に正確に適合させて、人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の進行に保持アーチ16a、16b、16cを合わせることができる。
【0239】
これに加えて、
図11aは、屈曲可能な移行領域104をステント10に取り付けるために使用される複数の締結用切欠を提供する屈曲エッジを示している。このため、この第3の体内プロテーゼ実施形態では、保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”に沿って、追加締結穴12aを設ける必要がない。代わりに、保持アーチ16a、16b、16cの周りに縫合糸101が巻かれ、屈曲可能な移行領域104に縫い付けられる一方、人工心臓弁の屈曲可能な移行領域104と同じ方向に本質的に延びる締結用切欠によって適所に保持される。すなわち、本開示の
図6a、6bに係る実施形態で使用された複数の締結穴12aと比較して、締結用切欠がより多数の取付点を提供するので、体内プロテーゼ1の第3実施形態の人工心臓弁100がステント10によりしっかりと取り付けられる。この点において、各取付点における高い応力集中を効果的に避けることができる。
【0240】
図7a、7bに示す体内プロテーゼ1の第2実施形態を参照して上述した別の特徴は、弁尖保護アーチ50a、50b、50cを設けることである。繰り返しを避けるために、
図7a、7bに示した第2体内プロテーゼ実施形態の上記説明を参照する。
【0241】
図11bは、スカート部103と上述した複数の格子セル30との接続を示している。二つの隣合う(隣接する)保持アーチ16a、16b、16cのアーム16a’、16a”、16b’、16b”、16c’、16c”の間の領域に複数の支柱によって形成された複数の格子セル70は、ステント10に取り付けられる人工心臓弁100の屈曲可能な移行領域104の追加支持部を提供する。
図11bに示すように、人工心臓弁100は、縫合糸101、スレッドまたは細いワイヤを用いて格子セル70に直接縫い付けられてもよい。
【0242】
図11bから導出できるように、体内プロテーゼ1の第3実施形態に係る人工心臓弁100は、隣接エッジ112に縫い付けられた三つの個別片120を備える。
図11cは、体内プロテーゼの第3実施形態の上面斜視図である。詳細には、
図11cは、隣接エッジ112に沿って円筒形状に縫い付けられた三つの個別片120の取付を図解している。個別片120の隣接エッジ112を位置合わせし互いに縫い付けた後、個別片120のスリーブ111を外側に向け、ステント10の交連取付領域11bに取り付ける。この特定の取付方法については、
図19a〜19c、20を参照してより詳細に説明する。
【0243】
この第3体内プロテーゼ実施形態は、限定を意味するものではないことに注意すべきである。本開示の第1弁実施形態(
図1)に係る一体の人工心臓弁を、
図8a〜8dに示すステント10に取り付けることも当然考えられる。
【0244】
本明細書の図面では、一般にステント10の内面に人工心臓弁100が取り付けられる。支持ステント10の外面に人工心臓弁100を取り付けることも当然考えられる。すなわち、スカート部103を、病変した生体心臓弁と直接接触させてもよいし、縫合糸を用いてステント10に取り付けてもよい。ステント10の外面に人工心臓弁100を取り付けることで、弁尖102からステント10への荷重伝達が支持され、取付領域11b、11cの近傍での応力集中が低減される。これは、閉鎖中の弁尖102の応力を大きく低減し、その結果、弁尖の耐久性が向上する。また、ステントの外面にスケート部を取り付ける場合、血行動態を改善するように心臓弁を設計することが可能になる。さらに、病変した心臓弁と直接接触する心臓弁材料は、漏れ(すなわち、弁傍漏れ)、組織の増殖、および取付に対する良好な封止界面を提供する。
【0245】
人工心臓弁100の第2の代替的な実施形態を、
図3、4並びに
図19a〜19c、20に示す。
【0246】
より詳細には、
図3、4は、本質的にTシャツ形状を有する人工心臓弁材料のフラットパターンを示す。この具現化によると、図示のTシャツ形状を有する三枚の個別片120で人工心臓弁100が作成される。三枚の個別片120は、縫合により隣接エッジ112で互いに接続され、人工心臓弁100の円筒形または円錐形を形成する。例えば組織厚さおよび特性などの特徴が一致する三枚の個別片120を得るために、二以上の心膜サックから三枚の個別片120が切り出されてもよい。加えて、屈曲可能な移行領域104が
図3に暗示されている。すなわち、個別片120のそれぞれが、移行領域104およびスカート部103に加えて、人工心臓弁100の三つの弁尖102のうちの一つとなるように意図されている。
図4は、本開示のさらなる例示的な実施形態に係る、縫い合わされ、ステントの交連取付領域11bに取り付けられた三枚の個別片120の上面図である。
【0247】
三枚の個別片120のうち二枚を隣接エッジ112で接続するステップを、
図19a〜19cに示す。
【0248】
第1ステップでは、
図19aに示すように、隣接エッジ112を組み合わせ、個別片120のスリーブ111を外側に向ける。
【0249】
続いて、縫合糸101.1を用いて、好ましくはブランケット・ステッチを適用して、スリーブ111の正面に補強部材107.8を取り付ける。同時に、同一の縫合糸101.1を用いて、同じく好ましくはブランケット・ステッチを適用して、隣接エッジ112を縫い合わせる。
【0250】
第3ステップでは、補強されたスリーブ111をさらに外側に曲げて、最終的に弁尖102の表面に後ろ向きに折り畳まれるようにする。続いて、この後ろ向きに折り畳まれた位置を、補強部材107.8の外面にステッチされた横方向縫合糸101.2を用いて固定する。
【0251】
縫い合わされ、ステント10の交連取付領域11bに取り付けられた三枚の個別片120の上面図を、
図4に示す。上述のように、三枚の個別片120はそれぞれ、人工心臓弁100の三つの弁尖102のうちの一つになる。
【0252】
本開示の交連取付領域11bへの人工心臓弁100の取付の詳細斜視図を
図20に示す。後ろ向きに折り畳まれたスリーブ111の周りに、補強部材107.8が巻かれている。この後ろ向きに折り畳まれた位置が、補強部材107.8の両端を接続する横方向縫合糸101.2によって保持される。補強部材107.8の材料は、三枚の個別片120の心臓弁材料よりもはるかに高い縫合保持強度を有することが好ましい。
【0253】
この理由のために、縫合糸101.1を用いてステント10の交連取付領域11bに人工心臓弁100を取り付けるために、補強部材107.8が使用される。こうすると、ステント10と人工心臓弁100の間の縫合101.1による応力が、主に補強部材107.8の材料へと導かれるので、人工心臓弁100の高い応力集中が回避される。加えて、この設計意図は、交連領域を挟むことで開放過程中の弁尖の移動を制限して、弁尖102がステント10に衝突するのを防止することである。また、この組み立て方法は、ステントポストから径方向内側に弁の交連部を配置して、弁尖とステントの衝突をさらに制限する。
【0254】
図21は、本開示の
図3および4に係る人工心臓弁100の取付の代替的な方法を示す。詳細には、隣接する個別片120のスリーブ111が内部クッション107.2を包囲するように形成される。したがって、交連取付領域11bから離して弁尖102が配置され、弁尖102とステントの衝突が制限される。さらに、スリーブ111と内部クッション107.2を貫通する縫合糸101.1がさらに隠れており、スリーブ111のエッジが内部クッション107.2の下方に押し込まれている。したがって、この実施形態では、人工心臓弁の弁尖102が縫合糸101.1の結び目またはスリーブ111のエッジと直接接触しないので、人工心臓弁100の摩耗が大きく低減される。当然ながら、摩耗を減らすために、補強部材107.1−107.8を用いて縫合糸101と人工心臓弁材料との直接接触を避けることは、上述の実施形態のいずれにとっても通常は有利である。
【0255】
上記の開示は例示を意図しており包括的なものではない。この説明は、当業者に対して多くの変形例および代替例を提案する。これらの変形例および代替例の全ては、「含む」の用語が「備えるが限定されない」を意味する特許請求の範囲内に含まれるように意図されている。当業者は、本明細書に記載された特定の実施形態の他の等価物も請求項によって包含されるように意図されていることを認めるであろう。
【0256】
さらに、従属項に提示された特定の特徴は、本発明の範囲内の他の態様と互いに組み合わせることができるので、従属項の特徴の他の任意の取り得る組み合わせを有する他の実施形態を特に指し示すものとして本発明を認識するべきである。例えば、クレームの公開を目的として、裁判管轄内で複数従属項形式が受け入れられる場合、後に続く任意の従属項は、従属項で参照される全ての先行詞を有する全ての従前の請求項に複数従属するように代替的に記載されるものとして解釈されるべきである(例えば、請求項1に直接従属する各請求項は、全ての従前の請求項に従属するものとして代替的に解釈されるべきである)。複数従属項形式が制限される裁判管轄では、以下の従属項はそれぞれ、従属項に記載の特定の請求項以外の先行詞を有する従前の請求項に従属する、単一従属項形式で代替的に記載されるものとして解釈されるべきである。