特許第6514251号(P6514251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514251
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】木材印字システム
(51)【国際特許分類】
   B27C 9/00 20060101AFI20190425BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B27C9/00
   B41J2/01 305
   B41J2/01 401
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-33814(P2017-33814)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138372(P2018-138372A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390017385
【氏名又は名称】宮川工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】林 弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢治
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−194895(JP,A)
【文献】 特開2015−189079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27C 9/00
B41J 2/01
B25H 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を移送方向に移送して加工位置または印字位置などの任意の位置である位置決め位置に位置決めする移送位置決め体と、木材に対して画像を印字する印字装置とを備えた木材加工装置とを備える木材印字システムにおいて、以下の構成を備えたことを特徴とする木材印字システム。
(1−1)前記移送位置決め体には、連続送りのための移送量に対応する移送信号が入力された場合に、当該連続送りに対応する移送量分、木材を移送方向に移送するための駆動力を発生させる駆動装置を備えていること。
(1−2)木材の移送・停止を実行させるために、前記連続送りのための移送信号を、前記駆動装置に対して出力する指令装置を備えていること。
(1−3)前記指令装置が出力する前記連続送りのための移送信号が前記印字装置に対しても入力される様に構成し、前記印字装置には、印字の開始・停止・再開のタイミングを前記入力される前記連続送りのための移送信号から推定した送り量に基づいて決定する吐出タイミング決定手段を備えさせたこと。
(1−4)前記吐出タイミング決定手段は、印字データに基づいて展開した画像情報に対し、前記推定した送り量が、連続的に描画すべき画像情報の途中までの送り量となっている場合は、連続的に描画すべき画像の途中までのインクを吐出して待機し、次の移送信号が入力されたときにインクの吐出を再開する手段として構成されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材同士を交差させて組付ける場合の組付け位置を示す墨線を、精度良く印字可能な木材印字システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、木造住宅を建てる場合、それに必要な木材は、予めプレカット工場で加工している。その場合、在来工法を用いた住宅であれば、羽柄材等に、垂木等の取り合いの基準線となる墨線等の組立情報を印字した状態で出荷されることがプレカット工場に望まれている。また、2×4工法を用いた住宅であれば、工場内において基準線となる墨線等の組立情報に基づいて、組み立てた状態でパネルとして出荷することがプレカット工場に求められている。
【0003】
本願出願人は、こうした要望に応えるものとして、木材に対して文字・記号も墨線も印字でき、しかも、加工機による加工位置へ搬送する際に印字を行うことによって、処理全体に要する時間も短縮する装置が提案している(特許文献1)。特許文献1で提案した装置は、加工材移送位置決め移動体の駆動軸の端部に取り付けたエンコーダの信号を印字機コントローラに直接入力し、木材の移動と停止とを印字機コントローラで検知して印字を行うことにより、素材を比較的速い速度で移送しながらであっても正確な位置に墨線を記入することができる様にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−194895号公報(0038,0059〜0062,0077)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、加工する製品は、住宅毎に異なるため、形状や、製品長や、墨線の印字位置などは多種多様であると共に、プレカット加工装置で加工する木材は大きいため、木材の切削や切断を行う場合には、大きな振動が伴う。このため、特許文献1に記載の装置においても、木材に対する加工等の影響により、墨線の印字開始後や、印字中に大きな振動が発生すると、その影響を受けてエンコーダ信号に乱れが生じ、墨線が間違った位置に印字される場合があった。
【0006】
そこで、本願は、加工機による加工時などの振動等が有っても、墨線を精度良く印字可能な木材印字システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の印字システムは、木材を移送方向に移送して加工位置または印字位置などの任意の位置である位置決め位置に位置決めする移送位置決め体と、木材に対して画像を印字する印字装置とを備えた木材加工装置とを備える木材印字システムにおいて、以下の構成を備えたことを特徴とする。
(1−1)前記移送位置決め体には、連続送りのための移送量に対応する移送信号が入力された場合に、当該連続送りに対応する移送量分、木材を移送方向に移送するための駆動力を発生させる駆動装置を備えていること。
(1−2)木材の移送・停止を実行させるために、前記連続送りのための移送信号を、前記駆動装置に対して出力する指令装置を備えていること。
(1−3)前記指令装置が出力する前記連続送りのための移送信号が前記印字装置に対しても入力される様に構成し、前記印字装置には、印字の開始・停止・再開のタイミングを前記入力される前記連続送りのための移送信号から推定した送り量に基づいて決定する吐出タイミング決定手段を備えさせたこと。
(1−4)前記吐出タイミング決定手段は、印字データに基づいて展開した画像情報に対し、前記推定した送り量が、連続的に描画すべき画像情報の途中までの送り量となっている場合は、連続的に描画すべき画像の途中までのインクを吐出して待機し、次の移送信号が入力されたときにインクの吐出を再開する手段として構成されていること。
【0008】
本発明の印字システムによれば、移送位置決め体も、印字装置も、互いに移送信号に基づいて動作するので、仮に、振動等の外乱により移送信号が変化しても、互いにその変化に追従し、位置決め位置の誤差を少なくできる。また、移送信号は、駆動指示のための信号であり、信号発生源に近いため、実際の木材の移送量をセンサ等を使って検出する場合よりも、振動等の外乱の影響が少なく有利である。よって、加工時などの振動等が有っても、墨線を精度良く印字できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工機による加工時などの振動等が有っても、墨線を精度良く印字することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の羽柄材加工機の概略図である。
図2】実施形態の制御系統を示すブロック図である。
図3】実施形態における制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を適用した羽柄材加工機の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、実施の形態としての羽柄材加工機において、正確な位置に墨線を精度良く印字することができる印字システムについて実施例で説明する。まず、機械装置としての構成について説明する。図1に示す様に、この羽柄材加工機1は、投入コンベア100と、加工機本体200と、取出しコンベア300とを備えている。
【0013】
投入コンベア100には、加工材の長手方向に移動可能な位置決め移送体110が備えられている。なお、位置決め移送体110の先端が加工材後端を押し当て、取出しコンベア300方向へ移送することで加工材の移送位置決めを行う。また、位置決め移送体110は、左右方向へ駆動するためのサーボモータ112が備えられている。サーボモータ112によって、位置決め移送体110の移送位置決めを駆動制御される。この、位置決め移送体110の移送方向移動量は、加工材の移送方向移動量に相当する。なお、サーボモータ112にはエンコーダが内蔵されている。
【0014】
印字装置120は、加工機本体200の投入コンベア側に設置され、センサ113は、印字装置120の右側直近に設置されている。このセンサ113は、位置決め移送体110によって移送されてきた加工材の取り出しコンベア300側先端を検出し、その信号をシーケンサに送る。
【0015】
本実施形態の羽柄材加工機1は、上述の様な構成を備えたことにより、位置決め移送体110によって加工材を取出しコンベア300方向へ移送している最中に印字装置120を駆動して加工材に対する印字及び墨線の記入を実行することができる。なお、位置決め移送体110は、丸鋸210による切断加工の処理のための移送位置決めをも実行する様に構成されている。
【0016】
次に、本実施形態の羽柄材加工機1の制御系統の構成について説明する。本実施形態の制御系統は、図2に示す様に、制御コンピュータ410と、シーケンサ420と、加工機430と印字機コントローラ440とによって構成されている。
【0017】
制御コンピュータ410は、シーケンサ420へ加工のための加工データを送信し、印字機コントローラ440へ文字・記号等や墨線を印字するための印字データを送信する。さらに、シーケンサ420から加工機430へ加工データに基づいて加工指令が出される。また、シーケンサ420から加工機430へ加工指令が出されたら、シーケンサ420からサーボモータ112へ駆動指示指令が出され、加工材の投入を開始する。投入された加工材の取出しコンベア300側先端をセンサ113で検知し、シーケンサ420へ信号が送られる。
【0018】
シーケンサ420は、センサ113から材検知の信号を入力したときに、印字機コントローラ440に対して印字許可信号を出力する。印字許可信号の出力と同時に、シーケンサ420からサーボモータ112及び印字機コントローラ440へと、1パルス当たりの送り量を例えば0.3mmとする駆動指令に相当する移送信号を出力する。シーケンサ420は、木材を送りの途中で加工位置に停止させる場合は、加工位置までの送りのための移送信号と、加工終了後に再開する送りのための移送信号とを、それぞれ出力する。
【0019】
サーボモータ112は、シーケンサ420から入力される移送信号に従って、位置決め移送体110による木材の移送・停止・移送再開を実行する。この際、サーボモータ112は、内蔵エンコーダ450による検出信号を参照し、シーケンサ420からの移送信号に対応するパルス分だけ位置決め移送体110を移動させて停止し、その後の送りのための移送信号が入力されたら、当該移送信号に対応するパルス分だけ位置決め移送体110を移動させる、といった制御を実行する。
【0020】
印字機コントローラ440は、制御コンピュータ410からの印字データを入力すると、当該印字データを位置決め移送体110による送り速度を考慮したインク吐出タイミングで印字ヘッドを制御するための印字機駆動データに展開する。そして、印字機コントローラ440は、シーケンサ420から印字許可信号が入力されることによって、印字機駆動データに基づく印字制御を開始する。この際、印字機コントローラ440は、シーケンサ420から入力される移送信号に基づいて送り速度を考慮したインク吐出タイミングで印字ヘッドを駆動制御する。この印字ヘッドの駆動制御に当たり、印字機コントローラ440は、移送信号に対応する移送量を推定し、印字ヘッドの吐出・吐出停止・吐出再開といった駆動制御の実行タイミングを決定する。より具体的には、印字機コントローラ440は、移送信号に基づいてインクの吐出を開始した後、加工位置に木材が停止している間はインクの吐出を行わず、移送再開に対応する移送信号が入力されて加工位置から再び木材の移送が再開されたらインクの吐出を再開する、といった具合に、移送信号に基づいて木材の移送・停止・移送再開を推定しつつ印字ヘッドの駆動制御を実行する。
【0021】
次に、制御処理の内容について説明する。図3(A)に示す様に、制御コンピュータ410はシーケンサ420に加工データを、印字機コントローラ440に印字データを送信する(S110)。制御コンピュータ410は、シーケンサ420から加工完了信号が入力されたら(S120:YES)、次の加工材の有無を判定する(S130)。制御コンピュータ410は、次の加工材がある場合はS110へと戻り(S130:YES)、次の加工材がなくなったら(S130:NO)、処理を終了する。
【0022】
シーケンサ420は、図3(B)に示す様に、制御コンピュータ410から加工データを受信したら(S210:YES)、サーボモータ112を駆動して加工材を加工機本体200方向へと移送開始する(S220)。そして、センサ113からの先端検出信号がシーケンサ420に入力されたら(S230:YES)、印字機コントローラ440に対して印字許可信号を出力すると共に(S240)、サーボモータ112に対して、移送信号を出力する(S250)。移送信号は、所定の送り量分だけ連続的に木材を送るための信号であって、印字機コントローラ440に対しても入力される。サーボモータ112は、当該移送信号に対応する送り量の移送を完了したら、シーケンサ420に対して完了信号を戻す。シーケンサ420は、この移送完了信号の到着を受けて、今回受信した加工データに対応する加工が完了したか否かを判定する(S260)。そして、加工が完了しない間は(S260:NO)、次の連続送りによる移送再開のタイミングか否かを判定し(S270)、移送再開のタイミングとなった場合は(S270:YES)、次の連続送りのための移送信号を出力する(S280)。この移送信号も、印字機コントローラ440に入力される。なお、シーケンサ420は、S250で出力した移送信号に対応する送りが完了した後、S280で次の移送信号を出力する間に、加工機本体200に対してクランプ・切断・アンクランプ等の動作を指令して木材に対する加工を実行させ、加工が完了して木材の移送を終えるときは(S260:YES)、加工完了信号を制御コンピュータ410に対して出力して処理を終了する(S300)。
【0023】
印字機コントローラ440は、図3(C)に示す様に、制御コンピュータから印字データを受信したら(S410:YES)、当該印字データを印字機駆動データに展開する(S420)。そして、シーケンサ420から印字許可信号が入力されるのを待つ(S430)。印字許可信号が入力され(S430:YES)、移送信号が入力されたら(S440:YES)、当該移送信号から木材の移送状況を推定し、印字機駆動データに基づいて印字ヘッドによるインク吐出タイミングを決定する(S450)。そして、決定した吐出タイミングになったときに印字ヘッドを駆動する制御を実行する(S460,S470)。ここで、移送状況の推定は、移送信号によって定まる送り量とサーボモータ112による送り速度(1パルス当たり0.3mm)とに基づいた演算による。また、インク吐出タイミングは、印字機駆動データによる画像情報と移送状況とから演算により決定する。なお、今回の移送状況の推定結果が連続的に描画すべき画像情報の途中までの送り量となっている場合は、連続的に描画すべき画像の途中までのインク吐出タイミングとなる様に決定される。この様な場合は、印字完了か否かの判定が「NO」となり、S450で決定したインク吐出タイミングまでの駆動制御を完了した時点でインクの吐出を中断し、次の移送信号が入力されるまで待機する(S480→S440)。次の移送信号が入力されたら(S440:YES)、S450以下の処理を実行する。こうして、連続的に描画すべき画像は、移送が中断されたときはインクの吐出を中断して途中まで描画し、移送が再開されると同時に続きが描画されることとなる。こうして、S420で生成した印字機駆動データは、入力された移送信号に基づいて推定される木材の移送状況に対応して印字され、印字機駆動データに基づく印字が完了したら(S460:YES)、本処理を終了する。
【0024】
以上の様に構成したので、本実施形態によれば、加工時における機械全体の振動、移送時におけるギア同士のバックラッシュによる搬送装置の振動、移送の中断時・再開時の搬送装置の振動等が生じても、印字機コントローラ440の吐出タイミングの制御に対して影響を与えることがなく、正確な位置に精度良く墨線を印字することができる。
【0025】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の態様にて実施することができる。
【0026】
例えば、羽柄材加工機に限らず、各種のプレカット加工装置に本発明を適用することができることはもちろんである。さらには、シーケンサ420から直接ではなく、サーボモータ112への信号ラインを分岐させ、あるいは、サーボモータ112のコントローラを経由して印字機コントローラ440へと移送信号を入力する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
木造住宅用の木材プレカット工場において利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・羽柄材加工機
100・・・投入コンベア
110・・・位置決め移送体
112・・・サーボモータ
113・・・センサ
120・・・印字装置
200・・・加工機本体
210・・・丸鋸
300・・・取出しコンベア
410・・・制御コンピュータ
420・・・シーケンサ
430・・・加工機
440・・・印字機コントローラ
450・・・内蔵エンコーダ
図1
図2
図3