(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2抽出処理は、前記第2ドット群として、前記第2のインクの全てのインクドットから前記第1ドット群のインクドットを差し引いた残りのインクドットを抽出する処理である、
請求項7または8に記載のインクジェットプリンタ。
前記制御装置は、前記第1の印刷層を前記第2の印刷層よりも下に形成させる第1の印刷方法と前記第1の印刷層を前記第2の印刷層よりも上に形成させる第2の印刷方法とを含む複数の印刷方法を選択可能に構成されたモード選択部を備えている、
請求項1〜11のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方(副走査方向Xの下流X2側、
図2参照)に移動させると共に、主走査方向Yに移動するキャリッジ25に搭載された第1インクヘッド40および第2インクヘッド50(
図2参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0013】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。本実施形態にあっては、記録媒体5は透明なシートである。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、プリンタ本体10aを支持する脚11とを備えている。プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びている。プリンタ本体10aは、ガイドレール21と、ガイドレール21に係合したキャリッジ25とを備えている。ガイドレール21は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール21は、キャリッジ25の主走査方向Yへの移動をガイドする。キャリッジ25には無端状のベルト22が固定されている。ベルト22は、ガイドレール21の右側に設けられたプーリ23aおよび左側に設けられたプーリ23bに巻き掛けられている。右側のプーリ23aにはキャリッジモータ24が取り付けられている。キャリッジモータ24は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ24は、制御装置100によって制御される。キャリッジモータ24が駆動するとプーリ23aが回転し、ベルト22が走行する。それにより、キャリッジ25がガイドレール21に沿って主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ25が主走査方向Yに移動することによって、第1インクヘッド40および第2インクヘッド50も主走査方向Yに移動する。本実施形態では、ベルト22とプーリ23aとプーリ23bとキャリッジモータ24とが、キャリッジ25およびキャリッジ25に搭載された第1インクヘッド40、第2インクヘッド50を主走査方向Yに移動させるキャリッジ移動機構20の一例である。
【0015】
キャリッジ25の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12の上方には、記録媒体5を上から押下するピンチローラ31が設けられている。ピンチローラ31は、キャリッジ25より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ32が設けられている。グリットローラ32は、ピンチローラ31の下方に配置されている。グリットローラ32は、ピンチローラ31と対向する位置に設けられている。グリットローラ32は、フィードモータ33(
図3参照)に連結されている。グリットローラ32は、フィードモータ33の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ33は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ33は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ31とグリットローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ32が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、ピンチローラ31とグリットローラ32とフィードモータ33とが、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる搬送機構30の一例である。搬送機構30とキャリッジ移動機構20とは、記録媒体5とキャリッジ25とを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0016】
図2は、キャリッジ25の記録媒体5と対向する側の面(本実施形態では下面)の構成を示す模式図である。
図2に示すように、キャリッジ25は、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とを下面に保持している。第1インクヘッド40は、1つのインクヘッド40Wからなっている。第2インクヘッド50は、複数のインクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lc、および50Lmからなっている。
図2に示すように、キャリッジ25において、第1インクヘッド40Wと第2インクヘッド50C〜50Lmとは主走査方向Yに並んで配置されている。
【0017】
第1インクヘッド40は、本実施形態にあっては、カラー画像の色調や意匠性に変化を与えるための、所謂、特色インクを吐出する。特色インクは「第1のインク」の一例である。ここでは、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wは、ホワイトインクを吐出する。ただし、特色インクの色調は、白に限定されない。特色インクとは、CMYKといったプロセスカラーインク以外のインク、例えば、シルバーインクやゴールドインクなどのメタリックインクや、透明インクを含むものである。本実施形態では、第1インクヘッド40を構成するインクヘッドの数は1個であるが、これに限定されない。第1インクヘッド40を構成するインクヘッドの数は、例えば2個以上であってもよい。また、特色インクの色調は何ら限定されるわけではない。第1インクヘッド40は、例えばシルバーインクやゴールドインクなどのメタリックインクや、透明インクを吐出するように構成されていてもよい。
【0018】
図2に示すように、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wは、8個のサブインクヘッド40a〜40hを有している。8個のサブインクヘッド40a〜40hは、それぞれインクを吐出するノズル41を複数備えている。複数のノズル41は、各サブインクヘッド上で副走査方向Xに一列に並んでいる。サブインクヘッド40a〜40hが備えるノズル41の数は同数である。ただし、各サブインクヘッドにおけるノズル41の配置は上記配置に限定されず、また、各サブインクヘッドが備えるノズル41の数も同数に限定されない。なお、
図2では、サブインクヘッド40a〜40hに各2個のノズル41が図示されているが、実際のサブインクヘッド40a〜40hにはもっと多数(例えば40個)のノズル41が形成されている。サブインクヘッド40a〜40hが備えるノズル41の数は何ら限定されない。
【0019】
インクヘッド40Wにおいて、8個のサブインクヘッド40a〜40hは、いわゆる千鳥配置で配置されている。即ち、サブインクヘッド40a〜40hは、副走査方向Xの上流X1から下流X2に向かってこの順に並ぶとともに、左右に2列をなしている。8個のサブインクヘッドのうち、サブインクヘッド40a、40c、40e、40gは、副走査方向Xに一列に並んでいる。サブインクヘッド40a、40c、40e、40gの右側には、サブインクヘッド40b、40d、40f、40hが副走査方向Xに一列に並んでいる。サブインクヘッド40a〜40hは、左列と右列に交互に配置されている。サブインクヘッド40a〜40hは、上記のように断続的に配置されているが、左右両列を合わせて見ると、副走査方向Xに関して切れ目なく続くように配置されている。実際のインクヘッドにおいては、ノズルが副走査方向Xに切れ目なく続くように、サブインクヘッド同士を副走査方向Xに関して一部重ねて配置してもよい。
【0020】
第2インクヘッド50を構成する各インクヘッド50C〜50Lmは、それぞれ、カラー画像を形成するためのプロセスカラーインクを吐出する。プロセスカラーインクは、「第2のインク」の一例である。本実施形態にあっては、インクヘッド50Cは、シアンインクを吐出する。インクヘッド50Mは、マゼンタインクを吐出する。インクヘッド50Yは、イエローインクを吐出する。インクヘッド50Kは、ブラックインクを吐出する。インクヘッド50Lkは、グレーインクを吐出する。インクヘッド50Lcは、ライトシアンインクを吐出する。インクヘッド50Lmは、ライトマゼンタインクを吐出する。ただし、第2インクヘッドを構成するインクヘッドの数は7個に限定されない。また、プロセスカラーインクの色調は何ら限定されるわけではない。
【0021】
図2に示すように、第2インクヘッド50を構成する7個のインクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lc、50Lmは、それぞれ8個のサブインクヘッド50a〜50hを有している。8個のサブインクヘッド50a〜50hは、それぞれインクを吐出するノズル51を複数備えている。複数のノズル51は、各サブインクヘッド上で副走査方向Xに一列に並んでいる。インクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lcおよび50Lmのノズル51は、インクヘッド40Wのノズル41と副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。また、サブインクヘッド50a〜50hが備えるノズル51の数は、サブインクヘッド40a〜40hが備えるノズル41の数と同数である。ただし、各サブインクヘッドにおけるノズル51の配置は上記配置に限定されず、また、各サブインクヘッドが備えるノズル51の数も同数に限定されない。
【0022】
第2インクヘッド50を構成する7個のインクヘッド50C〜50Lmにおいても、サブインクヘッド50a〜50hは、第1インクヘッド40Wと同様に配置されている。即ち、サブインクヘッド50a〜50hは、副走査方向Xの上流X1から下流X2に向かってこの順に並ぶとともに、左列と右列に交互に配置されている。詳しくは、サブインクヘッド50a、50c、50e、50gは左列に、サブインクヘッド50b、50d、50f、50hは右列に配置されている。第2インクヘッド50においても、サブインクヘッド50a〜50hは、副走査方向Xに関して切れ目なく続くように設けられている。
【0023】
インクヘッド40Wおよびインクヘッド50C〜50Lmの内部には、圧電素子等を備えたアクチュエータ(図示せず)が設けられている。アクチュエータは、制御装置100と電気的に接続されている。アクチュエータは、制御装置100によって制御される。アクチュエータが駆動することによって、インクヘッド40Wのノズル41およびインクヘッド50C〜50Lmの各ノズル51から記録媒体5に向かってインクが吐出される。
【0024】
第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40W、および第2インクヘッド50を構成する各インクヘッド50C〜50Lmは、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。インクカートリッジは、例えばプリンタ本体10aの右端部に着脱可能に配置されている。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
【0025】
図1に示すように、プリンタ10は、ヒータ35を備えている。ヒータ35は、プラテン12の下方に設けられている。ヒータ35は、グリットローラ32より前方に配置されている。ヒータ35は、プラテン12を加熱する。プラテン12が加熱されることによって、プラテン12上に配置されている記録媒体5および記録媒体5に着弾したインクが加熱され、インクの乾燥が促進される。ヒータ35は、制御装置100に電気的に接続されている。ヒータ35の加熱温度は、制御装置100によって制御される。
【0026】
図1に示すように、プリンタ本体10aの右端部には、操作パネル110が設けられている。操作パネル110には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル110の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100が収容されている。
図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。
図3に示すように、制御装置100は、フィードモータ33、キャリッジモータ24、ヒータ35、第1インクヘッド40のインクヘッド40Wおよび第2インクヘッド50の各インクヘッド50C〜50Lmとそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置100は、色変換部101と、モード選択部102と、スクリーン処理部103と、印刷制御部104とを備えている。スクリーン処理部103は、さらに第1スクリーン処理部103a、第2スクリーン処理部103b、第3スクリーン処理部103c、および第4スクリーン処理部103dを備えている。印刷制御部104は、さらに第1印刷制御部104a、第2印刷制御部104b、および第3印刷制御部104cを備えている。
【0027】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ本体10aの内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体10aの外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0028】
色変換部101は、RGBの3色またはCMYKの4色で構成される入力画像をC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、Lk(グレー)、Lc(ライトシアン)、Lm(ライトマゼンタ)の7色の画像データに変換する処理を行う部位である。上記処理はICCプロファイルに基づいて行われる。ICCプロファイルにはいくつかの種類が存在する。例えば、同じ3色の入力画像に対して異なるICCプロファイルを使用して色変換を行うと、異なる色調を持つ7色画像データが作成される。上記異なるICCプロファイルは、例えば、入力画像を写真印刷に適した7色画像データに変換するICCプロファイルや、図形印刷に適した7色画像データに変換するICCプロファイルなどである。本実施形態では、色変換部101は、1つのICCプロファイルを採用している。
【0029】
モード選択部102は、印刷方法が選択される部位である。本実施形態では、印刷方法は「通常印刷」と「重ね印刷」とに区別される。さらに、「重ね印刷」は、「第1重ね印刷」と「第2重ね印刷」とに区別される。「第1重ね印刷」は、特色インクによる地色を下層に、プロセスカラーインクによる画像を上層に印刷する印刷方法である。「第2重ね印刷」は、プロセスカラーインクによる画像を下層に、特色インクによる地色を上層に印刷する印刷方法である。「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」の詳細については後述する。モード選択部102は、「第1重ね印刷」モードが選択されたとき、第1印刷制御部104aおよび第2印刷制御部104bに対して「第1重ね印刷」を実行するように指令する。また、モード選択部102は、「第2重ね印刷」モードが選択されたとき、第1印刷制御部104aおよび第2印刷制御部104bに対して「第2重ね印刷」を実行するように指令する。さらに、モード選択部102は、「通常印刷」モードが選択されたとき、第3印刷制御部104cに「通常印刷」を行うように指令する。なお、印刷方法は、印刷データに予め組み込まれ自動的に選択されるようになっていてもよいし、作業者が適宜選択できるようになっていてもよい。
【0030】
スクリーン処理部103は、画像データをインクドットのパターンに変換する、所謂スクリーン処理を行う部位である。インクジェットプリンタによる印刷画像は、各プロセスカラーインクのインクドットの集合体として構成されている。本実施形態に係るプリンタ10において、スクリーン処理の元になる画像データは、色変換部101で作成された7色の画像データである。スクリーン処理部103で、上記画像データはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、グレー、ライトシアン、ライトマゼンタの7色のインクドットのパターンに変換される。スクリーン処理部103のうち第1スクリーン処理部103aは、プロセスカラーインクの画像データに対して「第1スクリーン処理」を施し、プロセスカラーインクのインクドットからなる「第1ドット群」を生成させる。第2スクリーン処理部103bは、プロセスカラーインクの画像データに対して「第2スクリーン処理」を施し、プロセスカラーインクのインクドットからなる「第2ドット群」を生成させる。本実施形態に係るスクリーン処理部103は、1つのプロセスカラーインクの画像データから「第1ドット群」、「第2ドット群」の2つのインクドットのパターンを生成する。上記「第1ドット群」および「第2ドット群」の詳細については後述する。特色インクも、本実施形態ではホワイトインク1色であるが、同様にスクリーン処理され、インクドットのパターンに変換される。本実施形態に係るスクリーン処理部103では、特色インクは第3スクリーン処理部103cによってスクリーン処理される。また、第4スクリーン処理部103dは、「重ね印刷」を行わないとき、即ち「通常印刷」を実施するときに、プロセスカラーインクの画像データをスクリーン処理する部位である。
【0031】
印刷制御部104は、印刷動作を制御する部位である。印刷制御部104は、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40W、および第2インクヘッド50C〜50Lmに接続され、それらを制御することで印刷を行う。また、印刷制御部104は、ヒータ35の温度を制御することで、印刷後のインクの乾燥を促進する。
【0032】
印刷制御部104のうち、第1印刷制御部104aは、「第1ドット群」による画像と特色インクによる地色の同時印刷作業を制御する部位である。以下では、上記同時印刷によって印刷される印刷層を適宜、「第1印刷層」と称する。「第1印刷層」は、プロセスカラーインクによる画像が一部混入した地色層である。第1印刷制御部104aは、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40W、および第2インクヘッド50C〜50Lmを制御することで「第1ドット群」による画像と特色インクによる地色の同時印刷を行う。また、第1印刷制御部104aは、モード選択部102で「第1重ね印刷」が選択されたか「第2重ね印刷」が選択されたかによって、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40W、および第2インクヘッド50C〜50Lmに対して異なる制御を行う。詳しくは、第1印刷制御部104aは、モード選択部102で「第1重ね印刷」が選択されたとき、「第1印刷層」が下層に形成されるように各部を制御する。一方、モード選択部102で「第2重ね印刷」が選択されたとき、第1印刷制御部104aは、「第1印刷層」が上層に形成されるように各部を制御する。制御の詳細については後述する。
【0033】
印刷制御部104のうち、第2印刷制御部104bは、「第2ドット群」による画像の印刷作業を制御する部位である。以下では、上記印刷によって印刷される印刷層を適宜、「第2印刷層」と称する。「第2印刷層」は、画像層である。第2印刷制御部104bによる「第2ドット群」の画像の印刷は、「第1印刷層」の上層または下層に行われる。モード選択部102で「第2重ね印刷」が選択されたとき、第2印刷制御部104bによる印刷(「第2印刷層」の印刷)は、「第1印刷層」の上層に行われる。一方、モード選択部102で「第1重ね印刷」が選択されたとき、「第2印刷層」の印刷は「第1印刷層」の下層に行われる。第2印刷制御部104bは、キャリッジモータ24、フィードモータ33、および第2インクヘッド50C〜50Lmを制御することで「第2ドット群」による画像の印刷を行う。上記制御の詳細については後述する。
【0034】
第3印刷制御部104cは、モード選択部102で「通常印刷」が選択されたときに、キャリッジモータ24、フィードモータ33、および第2インクヘッド50C〜50Lmを制御して、記録媒体5に対して「通常印刷」を行う。
【0035】
「通常印刷」は、記録媒体5に対して一層だけの印刷を行う印刷方法である。「通常印刷」においてはプロセスカラーインクだけが用いられる。「通常印刷」で印刷されるのは、第4スクリーン処理部103dで生成されたプロセスカラーインクのインクドットである。「通常印刷」において、第3印刷制御部104cは、キャリッジモータ24を駆動してキャリッジ25を主走査方向Yに移動させるとともに、アクチュエータを駆動して第2インクヘッド50からインクを吐出させ、記録媒体5の印刷面にプロセスカラーインクを着弾させる。また、第3印刷制御部104cは、記録媒体5が順次前方F(副走査方向Xの下流X2側)に送り出されるように、フィードモータ33を制御する。フィードモータ33に送り出された記録媒体5上のインクは、順次ヒータ35によって加熱され乾燥される。第3印刷制御部104cは、例えば、記録媒体5が1回前方Fに送り出されるまでに、キャリッジ25を主走査方向Yに1回または複数回移動させる。
【0036】
「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」を含む重ね印刷モードは、地色層と画像層を記録媒体5上に重ねて形成する印刷モードである。本実施形態におけるように記録媒体5が白色でない(本実施形態の場合は透明)場合などには、しばしば記録媒体に対して重ね印刷が実施される。色が白色でない記録媒体に対しては、直接プロセスカラーインクを吐出しても多くの場合、インク本来の発色が得られないので、まずホワイトインクの層を記録媒体上に形成し、上記ホワイトインクの層の上に重ねて画像を印刷する。それにより、色が白色でない記録媒体に対してもインク本来の発色に近い発色で印刷を施すことができる。また、上記のような場合以外にも、重ね印刷は実施される。例えば、画像の上層または下層に透明インクやメタリックインクなどの特色インクの層を重ねて形成させ、特定の視覚効果を狙う場合などである。本実施形態のように記録媒体5が透明シートであるときは、主として画像に対して地色(本実施形態においてはホワイト)を付与する目的で重ね印刷が行われる。特色インクの層が下層に印刷される場合の印刷成果物は、印刷面側から見られるものとして製作される。特色インクの層が上層に印刷される場合の印刷成果物は、印刷面の裏側から見られるものとして製作される。
【0037】
ところで、上記重ね印刷においては、より高品質な印刷画像を得たいというニーズが存在する。例えば屋外広告などの用途において、より強く人目を引くために、奥行きや重厚感を強調した画像を印刷したいというニーズが存在する。しかしながら、従来の印刷方法ではその実現が十分でないことが多かった。これは画像層が薄く、地色層の特色インクの影響を完全には排除できないためである。詳しくは、記録媒体のインク受容量の限界によって画像層に印刷されるプロセスカラーインクの最大量が減少するとともに、地色層の上に印刷されることによってプロセスカラーインクの発色性能が低下してしまうためである。例えば、本実施形態のように特色インクがホワイトインクである場合、画像が白っぽく見え、奥行きや重厚感が乏しくなってしまう。
【0038】
そこで、本実施形態に係る制御装置100は、スクリーン処理部103に第1スクリーン処理部103aおよび第2スクリーン処理部103bを備え、印刷制御部104に第1印刷制御部104aと第2印刷制御部104bとを備えている。第1スクリーン処理部103aは、プロセスカラーインクの画像データに対して「第1スクリーン処理」を施して、プロセスカラーインクのインクドットからなる「第1ドット群」を生成させる。第2スクリーン処理部103bは、プロセスカラーインクの画像データに対して「第2スクリーン処理」を施して、プロセスカラーインクのインクドットからなる「第2ドット群」を生成させる。第1印刷制御部104aは、特色インクのインクドットと「第1ドット群」のインクドットとによって記録媒体5上に「第1印刷層」を形成させる。なお、「第1印刷層」が記録媒体5「上」に形成されるとは、「第1印刷層」が必ずしも記録媒体5に接して形成されることを意味せず、「第1印刷層」と記録媒体5との間に別の印刷層(例えば、「第2印刷層」)が挟まれる場合も含む。第2印刷制御部104bは、「第1印刷層」より上または下に、「第2ドット群」のインクドットによって「第2印刷層」を形成させる。「第1印刷層」が下層に、「第2印刷層」が上層に印刷される場合は、モード選択部102において「第1重ね印刷」が選択された場合である。「第2印刷層」が下層に、「第1印刷層」が上層に印刷される場合は、モード選択部102において「第2重ね印刷」が選択された場合である。
【0039】
本実施形態に係るプリンタ10によれば、上記のように、地色層と「第1ドット群」として生成されたプロセスカラーのインクドットとが「第1印刷層」に同時に印刷される。即ち、画像が地色層に混入される。さらに本実施形態に係るプリンタ10は、「第1印刷層」の上層または下層に、「第2ドット群」として生成されたプロセスカラーのインクドットを形成し、「第2印刷層」を形成する。上記によって、プロセスカラーインクの発色性能の低下が抑えられ、各プロセスカラーインク本来の発色により近い発色が得られる。そこで、本実施形態に係るプリンタ10によれば、従来のプリンタによる重ね印刷によるものよりも奥行きや重厚感のある印刷を実施することができる。
【0040】
また、記録媒体が透明である場合、本実施形態に係るプリンタ10による印刷物は、地色層側からも画像の視認が可能である。透明な記録媒体に印刷する場合、従来の重ね印刷では画像を鮮明に見せるため、地色層の遮光性を高めていた。即ち、地色層を厚く、または高密度に印刷していた。しかし、このように地色層の遮光性を高めると地色層側から画像が視認できず、貼り付け施工など複数の記録媒体を位置合わせすることが必要な施工では、位置合わせの問題が発生することがあった。本実施形態に係るプリンタ10によれば、地色層の遮光性を高く保ちつつ、地色層側から画像が確認できる印刷を施すことができる。
【0041】
以下に、本実施形態に係るプリンタ10における「第1ドット群」、「第2ドット群」の生成プロセスおよび「重ね印刷」における印刷プロセスについて説明する。まず、プロセスカラーインクの画像データから「第1ドット群」と「第2ドット群」とを生成させるプロセスについて説明する。
【0042】
図4は、本実施形態に係る画像処理のフローチャートである。
図4のフローチャートは、「重ね印刷」に関わるものであり、「通常印刷」が選択された場合は省略している。
図4に示されているように、プロセスカラーインクの入力画像Dopは、ステップS01の「色変換処理」によって7色の画像データDpに変換される。ステップS01の「色変換処理」は、色変換部101で行われる。ステップS01で変換された7色のプロセスカラーインクの画像データDpに対してステップS02、S03のスクリーン処理が行われる。ステップS02は、第1スクリーン処理部103aによる「第1スクリーン処理」である。ステップS03は、第2スクリーン処理部103bによる「第2スクリーン処理」である。ステップS02「第1スクリーン処理」によって第1ドット群P1が生成される。また、ステップS03「第2スクリーン処理」によって第2ドット群P2が生成される。本実施形態では、ステップS02「第1スクリーン処理」とステップS03「第2スクリーン処理」とは異なる処理である。詳しくは、ステップS02「第1スクリーン処理」は、ディザ法によるスクリーン処理である。一方、ステップS03「第2スクリーン処理」は、誤差拡散法によるスクリーン処理である。
【0043】
ディザ法は、疑似階調表現アルゴリズムの1つである。スクリーン処理においては、各プロセスカラーインクの画像データがインクドットのON/OFFに変換される。ディザ法によるスクリーン処理では、印刷領域が分割された微小な領域において画像データのインク値が定められた閾値を超えるとき、当該領域におけるインクドットをONにする。逆に、画像データのインク値が定められた閾値を下回るとき、インクドットをOFFにする。例えば、最も単純な2値ディザリングでは、画像データは1つの閾値を境にON領域とOFF領域に分けられ、スクリーン処理後の画像は元画像から細部が失われた粗い画像となる。ただし、ディザ法は2値ディザリングには限られない。例えば、ディザ法には、閾値が割り当てられたマトリクスを使う組織的ディザ法や、閾値が一定範囲でランダムに設定されるランダムディザ法などがある。ディザ法を使ったスクリーン処理によれば、若干ざらつきのあるインクドットのパターンができやすい代わりに、処理における計算量は少ない。つまり、スクリーン処理に掛かる制御装置100の負荷は小さい。
【0044】
誤差拡散法も疑似階調アルゴリズムの1つであるが、ディザ法に比べて画質が良く、代わりに処理の負荷は大きい。誤差拡散法は、ドットのON/OFFを決定した後、そのドット位置で発生した元画像との誤差を周辺のドットに拡散させることにより、スクリーン処理による不自然感を緩和する疑似階調アルゴリズムである。上記のような方法であるため、誤差拡散法によるスクリーン処理はディザ法よるスクリーン処理に比べて画質が良い。代わりに処理の負荷は大きい。
【0045】
上記のように、第1スクリーン処理部103aと第2スクリーン処理部103bとでは異なるスクリーン処理が行われる。第1スクリーン処理部103aにおいて「第1スクリーン処理」(ディザ法)によって生成されたプロセスカラーインクのインクドットが第1ドット群P1である。第2スクリーン処理部103bにおいて「第2スクリーン処理」(誤差拡散法)によって生成されたプロセスカラーインクのインクドットが第2ドット群P2である。
【0046】
特色インクの入力画像Dosも第3スクリーン処理部103cにおいてスクリーン処理(ステップS04)され、インクドットのパターンSpに変換される。特色インクをスクリーン処理する「第3スクリーン処理」の方法は限定されないが、例えば、ディザ法によるものである。
【0047】
ステップS05では、特色インクのインクドットSp、第1ドット群P1、および第2ドット群P2を上層、下層のどちらに形成させるかが決定される。モード選択部102で「第1重ね印刷」が選択されているとき(ステップS05において「YES」のとき)、特色インクのインクドットSpおよび第1ドット群P1は、下層に形成され、第2ドット群P2は、上層に形成される。逆に、モード選択部102で「第2重ね印刷」が選択されているとき(ステップS05において「NO」のとき)、第2ドット群P2は、下層に形成され、特色インクのインクドットSpおよび第1ドット群P1は、上層に形成される。
【0048】
上記のようにスクリーン処理部103において第1ドット群P1、第2ドット群P2、および特色インクのインクドットSpが生成され、またモード選択部102において印刷方法が設定された後、重ね印刷が実行される。以下に、「第1重ね印刷」の場合を例に印刷プロセスを説明する。
図5は、「第1重ね印刷」中のキャリッジ25を表す模式図である。
図5は、キャリッジ25を上方Uから見た図である。
図5に示された各インクヘッドにおいて、第1ドット群P1を形成するインクを吐出しているノズルは黒丸で表され、符号P1が付されている。また、第2ドット群P2のインクドットを吐出しているノズルは三角で表され、符号P2が付されている。特色インクのインクドットを吐出しているノズルは二重丸で表され、符号Spが付されている。
【0049】
図5に示されるように、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wの各ノズル41のうち、サブインクヘッド40a、40b、40c、40dに設けられたノズル41は、特色インクSpを吐出している。また、第2インクヘッド50の各インクヘッド50C〜50Lmの各ノズル51のうち、サブインクヘッド50a、50b、50c、50dに設けられたノズル51は、第1ドット群P1のインクを吐出している。第2インクヘッド50の各インクヘッド50C〜50Lmの各ノズル51のうち、サブインクヘッド50e、50f、50g、50hに設けられたノズル51は、第2ドット群P2のインクを吐出している。サブインクヘッド40a〜40dおよびサブインクヘッド50a〜50dは、サブインクヘッド50e〜50hよりも副走査方向Xの上流X1側にあるため、印刷位置において常に先んじている。つまり、サブインクヘッド40a〜40dのノズル41から吐出される特色インク、およびサブインクヘッド50a〜50dのノズル51から吐出されるプロセスカラーインクは、サブインクヘッド50e〜50hのノズル51から吐出されるプロセスカラーインクよりも下に印刷層を形成する。このようにして、本実施形態に係るプリンタ10は、「第1重ね印刷」を連続的に行うことができる。
【0050】
「第2重ね印刷」が選択されたときは、「第1重ね印刷」とサブインクヘッドの上流/下流を逆にして印刷が行われる。即ち、サブインクヘッド50a〜50dのノズル51は、第2ドット群P2のプロセスカラーインクを吐出する。サブインクヘッド40e〜40hのノズル41は、特色インクSpを吐出する。また、サブインクヘッド50e〜50hのノズル51は、第1ドット群P1のプロセスカラーインクを吐出する。
【0051】
上記のように、「第1ドット群」は特色インクのインクドットとともに「第1印刷層」を形成するインクドット群である。「第1ドット群」は、画像の厚みを増すための下地処理の役目を担うものであるから、印刷画質そのものは大きな問題にはならない。そこで、本実施形態に係るプリンタ10では、「第1ドット群」の生成をディザ法に基づいたスクリーン処理によるものとし、画像処理の負担を軽減している。一方、「第2ドット群」は、画像の表層をなすインクドット群であるから、誤差拡散法によるスクリーン処理によって高画質のインクドットを生成させている。
【0052】
このように、本実施形態に係るプリンタ10は、プロセスカラーインクの画像データから「第1スクリーン処理」によって「第1ドット群」を生成するとともに、「第2スクリーン処理」によって「第2ドット群」を生成する。本実施形態に係るプリンタ10は、「第1ドット群」のインクドットと特色インクのインクドットとで「第1印刷層」を形成する。さらに、「第1印刷層」の上または下に「第2ドット群」のインクドットによって「第2印刷層」を形成する。上記のように地色層の印刷中に画像を同時印刷し、それに重ねて画像を印刷することによって、画像の厚みが増し、重ね印刷においても奥行きと重厚感のある画質を実現することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るプリンタ10においては、「第1スクリーン処理」は、「第2スクリーン処理」よりもデータ処理量の少ないスクリーン処理方法に設定されている。「第1スクリーン処理」は「第1ドット群」を生成させる処理であり、「第2スクリーン処理」は「第2ドット群」を生成させる処理である。より具体的には、「第1スクリーン処理」はディザ法を用いたスクリーン処理であり、「第2スクリーン処理」は誤差拡散法を用いたスクリーン処理である。「第1スクリーン処理」を、「第2スクリーン処理」よりもデータ処理量の少ないスクリーン処理方法に設定することにより、制御装置100の画像処理の負荷を低減することができる。
【0054】
本実施形態に係るプリンタ10は、モード選択部102を備え、モード選択部102では、「第1重ね印刷」と「第2重ね印刷」とを選択可能である。「第1重ね印刷」は、「第1印刷層」を下層に印刷し、「第2印刷層」を上層に印刷する印刷方法である。「第2重ね印刷」は、「第2印刷層」を下層に印刷し、「第1印刷層」を上層に印刷する印刷方法である。モード選択部102を備えることにより、本実施形態に係るプリンタ10は、上記「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」のいずれの印刷方法にも対応できる。
【0055】
なお、本実施形態では、「第1ドット群」を生成させる際、色変換部101で作成されたプロセスカラーインクの画像データがそのまま元データとして利用されている。しかしながら、「第1ドット群」を生成させるための元データは、それに限られない。例えば、「第1ドット群」を生成させるための元データは、色変換部101で作成されたプロセスカラーインクの画像データのインク値から一部を抜き出したインク値であってもよい。上記抜き出しは、例えば、色変換部101で作成されたプロセスカラーインクの画像データのインク値に所定の比率を乗じることによってなされる。あるいは、上記元データは、特定のプロセスカラーインクについてだけ上記抜き出しを行ったインク値であってもよい。「第2ドット群」についても同様である。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態は、「第1ドット群」と「第2ドット群」とを異なる画像データから生成させることが可能なように構成された実施形態である。第2実施形態に係るプリンタ10は、上記構成を除き、第1実施形態に係るプリンタ10と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。
【0057】
図6は、本実施形態に係る制御装置100のブロック図である。
図6に示されるように、本実施形態に係る色変換部101は、第1色変換部101aと第2色変換部101bとを備えている。また、制御装置100は色調調整部105を備え、色調調整部105は、第1色調調整部105aと第2色調調整部105bとを備えている。
【0058】
図7は、本実施形態に係る画像処理のフローチャートである。
図7に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10は、ステップS06およびステップS07の2つの色変換処理を行っている。第1色変換部101aは、ステップS06の「第1色変換処理」を行っている。「第1色変換処理」では、第1ドット群P1の元データとなる第1画像データD1が作成される。第2色変換部101bは、ステップS07の「第2色変換処理」を行っている。「第2の色変換処理」では、第2ドット群P2の元データとなる第2画像データD2が作成される。
【0059】
「第1色変換処理」に用いるICCプロファイルは、第1色調調整部105aで選択される。上記選択は、作業者がインターフェイスで行うようになっていてもよいし、例えば、特色インクの種類によって自動選択されるようになっていてもよい。または、固定的に設定されていてもよい。同様に、「第2色変換処理」に用いるICCプロファイルも第2色調調整部105bで選択される。上記のように「第1色変換処理」に用いられるICCプロファイルと「第2色変換処理」に用いられるICCプロファイルとは独立に選択されるので、「第1色変換処理」に用いられるICCプロファイルと「第2色変換処理」に用いられるICCプロファイルが異なる場合もあり得る。これらICCプロファイルの選択は、
図7においてはステップS08、S09で示されている。
【0060】
続いて、ステップS10では、第1画像データD1を元に「第1スクリーン処理」が行われる。「第1スクリーン処理」では、第1ドット群P1が生成される。「第1スクリーン処理」は、例えば、第1実施形態と同じくディザ法によるスクリーン処理である。また、ステップS11では、第2画像データD2を元に「第2スクリーン処理」が行われ、第2ドット群P2が生成される。「第2スクリーン処理」は、例えば、第1実施形態と同じく誤差拡散法によるスクリーン処理である。
【0061】
「第1の色変換処理」と「第2の色変換処理」とが異なる種類のICCプロファイルに基づいた色変換処理である場合、「第1の色変換処理」で得られた第1画像データD1と「第2の色変換処理」で得られた第2画像データD2とは異なる色調を有するものとなる。さらに、それらを元データとして得られる第1ドット群P1と第2ドット群P2の色調も異なるものとなる。第1ドット群P1の色調と第2ドット群P2の色調が異なることで、第1ドット群P1と第2ドット群P2とは、一方において発色の弱い色を他方において強く発色するような相互補完的な関係になり得る。それにより、より高画質な画像が得られる。
【0062】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、「第1ドット群」の色調と「第2ドット群」の色調とをそれぞれ調整することができる。それにより、出来上がり画質の調整の自由度が向上している。本実施形態に係るプリンタ10によれば、例えば、「第1ドット群」の色調を特色インクの種類に合わせて調整することができる。あるいは、「第1ドット群」の色調と「第2ドット群」の色調とを異なるものにすることで、「第1ドット群」と「第2ドット群」を相互補完的な関係にすることができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態は、単一のスクリーン処理によって生成されたプロセスカラーインクのインクドットを元に「第1ドット群」および「第2ドット群」を生成させる実施形態である。従って、第3実施形態は、制御装置の構成および画像処理のフローにおいて第1実施形態および第2実施形態と異なるが、機械的な構成については第1実施形態および第2実施形態と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においても、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。
【0064】
図8は、本実施形態に係る制御装置100のブロック図である。
図8に示されるように、本実施形態に係る制御装置100は抽出部106を備え、抽出部106は、第1抽出部106aおよび第2抽出部106bを備えている。
【0065】
本実施形態に係る制御装置100のスクリーン処理部103は、プロセスカラーインクの画像データから単一のインクドットのデータを生成するように設定されている。第1実施形態および第2実施形態に係るスクリーン処理は、「第1ドット群」を生成させる「第1スクリーン処理」と「第2ドット群」を生成させる「第2スクリーン処理」とを含んでいたが、本実施形態では、プロセスカラーインクのスクリーン処理は1回である。
【0066】
第1抽出部106aは、上記プロセスカラーインクのインクドットのデータを受け、プロセスカラーインクのインクドットの一部または全部からなる「第1ドット群」を抽出する「第1抽出処理」を行う部位である。同様に、第2抽出部106bは、上記プロセスカラーインクのインクドットのデータを受け、プロセスカラーインクのインクドットの一部または全部からなる「第2ドット群」を抽出する「第2抽出処理」を行う部位である。
【0067】
図9は、本実施形態に係る画像処理のフローチャートである。
図9に示されるように、特色インクおよびプロセスカラーインクの画像データDpは、ステップS12においてスクリーン処理され、インクドットのデータPに変換される。ステップS12のスクリーン処理を行うのは、スクリーン処理部103である。ステップS12で生成されたプロセスカラーインクのインクドットPは、ステップS13において「第1抽出処理」を施される。「第1抽出処理」は、プロセスカラーインクのインクドットPの一部を特定のマスクを使って間引く処理である。本実施形態では、分散型ディザマスクによってプロセスカラーインクのインクドットを間引いている。
【0068】
分散型ディザ法は、ドットの配置を分散させるようにドットのON/OFFを決定するディザ法である。分散型ディザ法に使われる分散型ディザマスクには、ドットの分散性を考慮してドットのON/OFFを決定する閾値が設定されている。従って、分散型ディザ法を使って得られるドットパターンは、比較的均一に分散する。上記のような分散型ディザをマスクとして、第1抽出部106aは、プロセスカラーのインクドットPに対して「第1抽出処理」を行う。プロセスカラーインクのインクドットを「第1抽出処理」して得られるのが、本実施形態における第1ドット群P1である。
【0069】
さらに本実施形態では、分散型ディザマスクとしてブルーノイズマスクが用いられる。ブルーノイズマスクに設定された閾値によれば、ONになるドットパターンがブルーノイズ特性を持つようにドットのON/OFFが決定される。ブルーノイズマスクはランダムパターンと違って処理の負荷が比較的小さいにも関わらず、視覚的には自然な画像抽出が行えるディザマスクである。
【0070】
上記のように、本実施形態に係る「第1抽出処理」では、好適なマスクとして分散型ディザマスク、中でもブルーノイズマスクが用いられているが、マスクの種類はこれに限られない。例えば、分散型のランダムディザマスクや集合型ディザマスクが用いられてもよい。また、ドットを規則的に配置させるディザマスクが用いられてもよい。
【0071】
一方、第2ドット群P2も、プロセスカラーインクのインクドットPから抽出されて得られる。本実施形態では、第2ドット群は、プロセスカラーインクのインクドットPから第2抽出部106bによって抽出される。その処理が、
図9にステップS14で示された「第2抽出処理」である。本実施形態では、「第2抽出処理」は、プロセスカラーインクのインクドットPから第1ドット群P1を差し引いた残りを抽出する処理である。つまり、本実施形態においては、第1ドット群P1と第2ドット群P2を合わせたものは、プロセスカラーインクのインクドットPと一致する。
【0072】
このように、合わせるとプロセスカラーインクのインクドットと一致するように「第1ドット群」および「第2ドット群」を抽出すれば、印刷完了時にはプロセスカラーインクの全ドットが記録媒体5上に吐出されていることになる。また、「第1ドット群」の抽出に分散型ディザマスクを使うことで、計算処理の負荷を抑えつつ元画像の特徴を反映した「第1ドット群」を抽出できる。分散型ディザマスクとしてブルーノイズマスクを使用すれば、上記はより効果的である。
【0073】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態の変形例として、「第2抽出処理」においてプロセスカラーインクのインクドット全体がそのまま「第2ドット群」として抽出される変形例が可能である。つまり、プロセスカラーインクのインクドット全体を100%とした場合、「第2ドット群」を100%に設定する実施形態が可能である。当該変形例にあっては、例えば、「第1抽出処理」で、「第1ドット群」として20%のインクドットが抽出されたとした場合、「第2ドット群」は100%であるので、最終的なインクの吐出率は120%となる。本変形例に係るプリンタ10によれば、画像はより厚く印刷され、出来上がりの画像はより鮮明になることが期待できる。また、上記印刷によれば、同一インクを用いて同一のプリンタで表現することができる色の範囲(いわゆる色域)を拡張できる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0075】
例えば、第1実施形態および第2実施形態においては、「第1スクリーン処理」にはディザ法が、「第2スクリーン処理」には誤差拡散法が用いられていた。しかし、「第1スクリーン処理」および「第2スクリーン処理」におけるスクリーン処理の方法は上記に限られない。スクリーン処理の方法は多数存在するが、「第1スクリーン処理」と「第2スクリーン処理」とを異なるスクリーン処理に設定する場合、例えば、「第2スクリーン処理」を「第1スクリーン処理」よりも低い密度でインクドットが生成される処理方法に設定してもよい。インクドットの密度が低ければ、画像処理量は一般に少なくなり、プリンタ10への負荷が小さくなる。また、「第1スクリーン処理」と「第2スクリーン処理」とは、異なる手法や閾値を用いたものに限定されない。「第1スクリーン処理」と「第2スクリーン処理」とは、同じスクリーン処理であってもよい。
【0076】
上記した実施形態では、「重ね印刷」は、下層と上層の2層を重ねて印刷する印刷方法であったが、3層以上であってもよい。例えば、地色層、画像層、トップコートの3層重ね印刷であってもよい。その場合、トップコートは透明インクなどである。3層以上の重ね印刷を行う場合、「第1ドット群」「第2ドット群」だけでなく、3つ以上のドット群が生成されてもよい。そのようなプリンタ10は、例えば、スクリーン処理により「第3ドット群」を生成させる別のスクリーン処理部や、あるいは、抽出処理により「第3ドット群」等を生成させる別の抽出部を備えているとよい。
【0077】
上記した実施形態では、第1インクヘッド40および第2インクヘッド50は、それぞれ複数のサブインクヘッドを備え、サブインクヘッドはインクヘッドにおいて2列に千鳥配置されていた。しかし、インクヘッドにおけるサブインクヘッドの配置は、上記した配置に限られない。サブインクヘッドは、例えば、
図10のように配置されていてもよい。
図10に示されたキャリッジ25の下面の構成では、各インクヘッドにおいてサブインクヘッドは、副走査方向Xに一列に並んでいる。
【0078】
図10に示される実施形態では、第1インクヘッド40は、副走査方向Xに一列に並んだサブインクヘッド40a〜40hを有している。サブインクヘッド40a〜40hはそれぞれ副走査方向Xに並んだ複数のノズル41を備えているので、ノズル41は、全体として副走査方向Xに一列に延びるノズル列42を構成している。ノズル列42は、副走査方向Xの上流X1側に位置する第1上流側ノズル列42aと、副走査方向Xの下流X2側に位置する第1下流側ノズル列42bとに区分されている。第1上流側ノズル列42aは、副走査方向Xの上流X1側に位置する4個のサブインクヘッド40a、40b、40c、および40dのノズル41から構成されている。第1下流側ノズル列42bは、副走査方向Xの下流X2側に位置する4個のサブインクヘッド40e、40f、40g、および40hのノズル41から構成されている。第1上流側ノズル列42aのノズル41の数と、第1下流側ノズル列42bのノズル41の数とは同じである。なお、第1上流側ノズル列42aと第1下流側ノズル列42bの区別は、制御上のものであって機構上の差異があってのものではない。
【0079】
図10に示される実施形態では、複数のインクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lcおよび50Lmも、それぞれ、副走査方向Xに一列に並んだ複数のサブインクヘッド50a〜50hを有している。サブインクヘッド50a〜50hはそれぞれ副走査方向Xに並んだ複数のノズル51を備えているので、ノズル51は、全体として副走査方向Xに一列に延びるノズル列52を構成している。ノズル列52は、副走査方向Xの上流X1側に位置する第2上流側ノズル列52aと、副走査方向Xの下流X2側に位置する第2下流側ノズル列52bとに区分されている。第2上流側ノズル列52aは、副走査方向Xの上流X1側に位置するサブインクヘッド50a、50b、50c、および50dのノズル51から構成されている。第2下流側ノズル列52bは、副走査方向Xの下流X2側に位置するサブインクヘッド50e、50f、50g、および50hのノズル51から構成されている。第2上流側ノズル列52aのノズル51の数と、第2下流側ノズル列52bのノズル51の数とは同じである。第2上流側ノズル列52aと第2下流側ノズル列52bの区別も、制御上のものであって機構上の差異があってのものではない。第2インクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lcおよび50Lmのノズル51は、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wのノズル41と、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。
【0080】
図11は、
図10に示されるプリンタ10が「第1重ね印刷」を行っている際のインクの吐出状況を表す模式図である。
図11は、
図5と同様、キャリッジ25を上方Uから見た図である。
図11におけるインクの吐出を表す記号は、
図5におけるものと同じである。即ち、
図11では、第1ドット群P1のインクドットを吐出しているノズルは黒丸で表され、符号P1が付されている。また、第2ドット群P2のインクドットを吐出しているノズルは三角で表され、符号P2が付されている。特色インクのインクドットを吐出しているノズルは二重丸で表され、符号Spが付されている。
【0081】
図11に示されるように、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wの各ノズル41のうち第1上流側ノズル列42aのノズル41は、特色インクSpを吐出している。また、第2インクヘッド50の各インクヘッド50C〜50Lmの各ノズル51のうち第2上流側ノズル列52aのノズル51は、第1ドット群P1のインクを吐出している。第2インクヘッド50の各インクヘッド50C〜50Lmの各ノズル51のうち第2下流側ノズル列52bのノズル51は、第2ドット群P2のインクを吐出している。第1上流側ノズル列42aおよび第2上流側ノズル列52aは、第2下流側ノズル列52bよりも副走査方向Xの上流X1側にあるため、印刷位置において常に先んじている。つまり、第1上流側ノズル列42aおよび第2上流側ノズル列52aが吐出するインクは、第2下流側ノズル列52bが吐出するインクよりも下に印刷層を形成する。このようにして、
図10に係るプリンタ10は、「第1重ね印刷」を連続的に行うことができる。
【0082】
「第2重ね印刷」が選択されたときは、「第1重ね印刷」とノズル列の上流/下流を逆にして印刷が行われる。即ち、第2上流側ノズル列52aのノズル51は、第2ドット群P2のプロセスカラーインクを吐出する。第1下流側ノズル列42bのノズル41は、特色インクSpを吐出する。また、第2下流側ノズル列52bのノズル51は、第1ドット群P1のプロセスカラーインクを吐出する。
【0083】
なお、各インクヘッドにおいてサブインクヘッドの数が奇数であって2等分できない場合は、例えば、使用しないサブインクヘッドを1個設けてもよい。使用しないサブインクヘッドは、インクヘッドにおいて副走査方向Xの最も上流X1側に設定されてもよいし、最も下流X2側に設定されてもよい。あるいは、ノズル列を副走査方向Xに2等分したときに境界線が通るサブインクヘッド内のノズルを、境界線を挟んで上流X1側と下流X2側とに2分してもよい。
【0084】
キャリッジ25におけるインクヘッドは、さらに別の配置で設けられてもよい。例えば、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とは、副走査方向Xにずれた配置を取っていてもよい。第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とが副走査方向Xに完全にずれた配置を取れば、1つインクヘッドのノズル列を上流側ノズル列と下流側ノズル列に分けて使用する形態ではなくなり、1つのインクヘッドのすべてのノズルを使用することができる。また、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とが副走査方向Xに部分的にずれた配置を取れば、完全にずれた配置の場合よりも使用可能なノズルの数は減少するものの、キャリッジ25をコンパクトにすることができる。さらには、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とは、それぞれ別々のキャリッジに搭載され、別々のキャリッジモータによって移動可能なように構成されていてもよい。さらには、「第1印刷層」の印刷と、「第2印刷層」の印刷とは、完全に別工程に分けて行われてもよい。
【0085】
上記した実施形態では、インクを吐出させる方式は、圧電素子の変位によって圧力室の体積を変化させる方式、いわゆるピエゾ駆動式であった。しかしながら、本発明に係るプリンタのインク吐出方式は、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式などの各種のオンデマンド方式であってもよい。本発明に係るインク吐出方式は、限定されない。
【0086】
上記した実施形態では、キャリッジ25が主走査方向Yに移動し、記録媒体5が副走査方向Xに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ25と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動してもよい。例えば、記録媒体5は移動不能に配置され、キャリッジ25が主走査方向Yおよび副走査方向Xの両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、キャリッジ25および記録媒体5のいずれもが両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【0087】
さらに、ここに開示される技術は様々なタイプのインクジェットプリンタに適用することができる。上記実施形態で示したロール状の記録媒体5を搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えばフラットベッドタイプのインクジェットプリンタにも同様に適用することができる。また、プリンタ10は独立したプリンタとして単独で使用されるものに限定されず、他の装置と組み合わせたものであってもよい。例えば、プリンタ10は、他の装置に内蔵されていてもよい。