(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6514311
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】伝送管理装置、伝送管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20190425BHJP
H04B 3/32 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
H04L27/26 113
H04B3/32
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-245186(P2017-245186)
(22)【出願日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】光藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】瀬島 孝太
【審査官】
原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−086419(JP,A)
【文献】
特表2011−512711(JP,A)
【文献】
特開2000−184061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブチャンネルを有する第一帯域を用いたVDSL2である第一通信と、前記第一帯域を含み前記第一帯域よりも高周波数の帯域を含む第二帯域とを用いたG.fastである第二通信とを利用可能であり、
金属線で接続された複数の宅内装置に対して、第一通信と第二通信とのいずれかの規格によって通信できる集合装置であって、
前記第一通信と前記第二通信とが干渉する際に、前記第二通信は前記第一帯域以外の帯域を用いて通信する制限付第二通信として通信し、
前記第一通信の速度が第一閾値を上回り、かつ、前記第二通信の速度が第二閾値を下回る場合、
前記サブチャンネルのうち、高周波数帯域側から順に選択した一つ又は複数のサブチャンネルを、前記制限付第二通信に割り当てる集合装置。
【請求項2】
複数のサブチャンネルを有する第一帯域を用いたVDSL2である第一通信と、前記第一帯域を含み前記第一帯域よりも高周波数の帯域を含む第二帯域とを用いたG.fastである第二通信とを利用可能であり、
金属線で接続された複数の装置に対して、第一通信と第二通信とのいずれかの規格によって通信できる集合装置の管理方法であって、
前記第一通信と前記第二通信とが干渉する際に、前記第二通信は前記第一帯域以外の帯域を用いて通信する制限付第二通信として通信し、
前記第一通信の速度が第一閾値を上回り、かつ、前記第二通信の速度が第二閾値を下回る場合、
前記サブチャンネルのうち、高周波数帯域側から順に選択した一つ又は複数のサブチャンネルを、前記制限付第二通信に割り当てる管理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の集合装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用する周波数帯域が重なる異種の伝送方式が併存する環境での、通信の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの利用拡大とともに、高速通信環境を求める傾向が続いている。固定回線においては光ファイバの普及が進んでいる。しかし、主要幹線は光ファイバ化が進んでいるものの、古い集合住宅や遠隔地など、光ファイバのみで接続することが困難な状況が存在している。いわゆるラストワンマイルにおいては、既設のメタル線である電話回線を用いたデジタル加入者線(DSL)の利用も未だ多く、DSLで高速通信を実現するための技術開発が進んでいる。
【0003】
このようなDSLの規格として、VDSLが挙げられる。VDSL1は12MHz以下の帯域を用い、ダウンストリームに用いる帯域(DS1)とアップストリームに用いる帯域(US1)とを分けて定義しており、高速通信を実現している。これを周波数分割デュプレクス(FDD)と呼ぶ。VDSL1を拡張したVDSL2では、VDSL1の帯域に加えて、さらに高周波数帯域である30MHz以下の帯域を利用する。VDSL1の帯域と同様に、拡張された帯域はダウンストリームに用いる帯域(DS2,DS3)とアップストリームに用いる帯域(US2,US3)が分けられている。これらのサブチャンネルの順序は低周波数側から、DS1,US1,DS2,US2,DS3,US3となる。
【0004】
さらに高速なDSLの規格として、G.fastがITU-Tにおいて勧告化され、実用化が進められている(非特許文献1、2)。G.fastはVDSL2の帯域に加えて、さらに高周波数帯域である212MHzまでの帯域を用いる。G.fastではこの拡張された帯域を周波数帯域で分けて利用するのではなく、時分割デュプレクス(TDD)方式を採用している。
【0005】
ただし、一つの集合住宅内においてVDSL2とG.fastが混在する場合、
図2(a)に示すように、使用帯域が重なるため互いに干渉してしまう。この場合、
図2(b)のようにG.fastの使用帯域を制限させて干渉を回避する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ITU、"G.9700 : Fast access to subscriber terminals (G.fast) - Power spectral density specification"、[online]、2017年8月16日、ITU-T Publications、[2017年10月20日検索]、インターネット<URL:https://www.itu.int/rec/T-REC-G.9700>
【非特許文献2】ITU、" G.9701 : Fast access to subscriber terminals (G.fast) - Physical layer specification"、[online]、2017年10月18日、ITU-T Publications、[2017年10月20日検索]、インターネット<URL:https://www.itu.int/rec/T-REC-G.9701>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、VDSL2が使用する帯域はG.fastが使用する帯域の中でも雑音に強い帯域である。このため、
図2(b)に示すように干渉を回避してG.fastを高周波数帯域側でのみサービス提供しようとすると、ノイズに強い低周波数帯域側を占有するVDSL2でサービスを受ける契約者の方が、ノイズに弱い高周波数帯域側のみを利用する限定的なG.fastでサービスを受ける契約者よりも、実際の通信速度が上回ってしまうことがある。すなわち、ベストエフォートでの関係と実際の通信速度での関係が逆転してしまい、本来ならばより高速な通信規格であるはずのG.fastで契約している契約者の方が低速でのサービスを受けることになってしまうおそれがある。
【0008】
そこでこの発明は、本来は比較的低速な通信規格と、本来は比較的高速な通信規格とが、互いに干渉する帯域を使用する場合において、干渉を避けつつ、不公平感を解消して、比較的高速な通信規格でのユーザエクスペリエンスを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数のサブチャンネルを有する第一帯域を用いた第一通信と、前記第一帯域を含み前記第一帯域よりも高周波数の帯域を含む第二帯域とを用いた第二通信とを利用可能であり、
金属線で接続された複数の宅内装置に対して、第一通信と第二通信とのいずれかの規格によって通信できる集合装置を管理するにあたり、
前記第一通信と前記第二通信とが干渉する際に、前記第二通信は前記第一帯域以外の帯域を用いて通信する制限付第二通信として通信し、
前記第一通信の速度が第一閾値を上回り、かつ、前記第二通信の速度が第二閾値を下回る場合、
前記サブチャンネルのうち、高周波数帯域側から順に選択した一つ又は複数のサブチャンネルを、前記制限付第二通信に割り当てる管理方法を採用した集合装置とすることにより、上記の課題を解決したのである。
【0010】
ここで、前記制限付第二通信に割り当てる前記サブチャンネルの選択にあたっては、当該サブチャンネルを前記第一通信から前記第二通信に割り当てることで、前記第二通信の実効速度が前記第一通信の実効速度を上回るようにするとよい。
【0011】
具体例として、前記第一通信がVDSL2であり、前記第二通信がG.fastであるケースで、この発明に係る管理方法、プログラム及びそれらを用いた集合装置は好適に利用できる。この場合、VDSL2が有する高周波数側から二つのサブチャンネルUS3及びDS3を、G.fastに割り当てるとバランス上都合がよくなる場合が多い。さらに二つのサブチャンネルUS2及びDS2までG.fastに割り当てねばならないケースも起こり得るが、VDSL2がVDSL1になってしまうため、サービスの提供としては問題となりうる。
【発明の効果】
【0012】
この発明により、一つの集合住宅においてVDSL2とG.fastとの両方の契約者が混在して、使用する周波数帯域を住み分けた場合に、VDSL2の契約者の方が実効速度が高まってしまった場合でも、G.fastの契約者にとって不利にならないように、適切に調整することができる。これにより、G.fastの実効速度に対して新たに契約しようとする者が不利にならなくなるため、VDSL2からG.fastへの乗り換えを契約者が進めやすくなる。これはG.fastへの世代交代を進めやすくなることを意味し、VDSL2とG.fastとの干渉が起こる状況を早期に解消しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明にかかる集合装置を用いる環境を示す例図
【
図2】(a)VDSL2とG.fastとの使用する周波数帯域が干渉する際の概念図、(b)干渉を避けるようにG.fastを制限付帯域とした際の概念図
【
図3】制限付帯域のみにノイズが生じる状況の概念図
【
図4】この発明にかかる管理方法の実施形態例を示すフロー例及び概念例図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明について具体的な実施形態とともに詳細に説明する。この発明は、複数の宅内装置と通信できる集合装置、その管理方法、及びその集合装置をこの発明として動作させるためのプログラムである。
【0015】
この発明にかかる集合装置は、複数のサブチャンネルを有する第一帯域を用いた第一通信と、前記第一帯域を含み前記第一帯域よりも高周波数の帯域を含む第二帯域とを用いた第二通信とを利用可能であり、金属線で接続された複数の宅内装置に対して、第一通信と第二通信とのいずれかの規格によって通信できる集合装置11である。
【0016】
前記第一帯域が有するサブチャンネルとは、前記第一帯域を複数の帯域に区切ったものである。すなわち、前記第一通信は周波数分割復信(FDD:Frequency Division Duplex)方式である。一方、前記第二通信は時分割復信(TDD:Time Division Duplex)方式でもよいし、周波数分割復信でもよいし、これらの複合であってもよい。
【0017】
前記第一通信と前記第二通信とは、前記第二通信の方が利用する周波数帯域が高周波数帯域側に広くなる。ただし、基本的に低周波数側の方がノイズに強いため、前記第一帯域を利用できると前記第二通信を行うにあたって品質の向上に繋がる。しかし、前記第二通信は高周波数側も利用できるのに対して、前記第一通信は前記第一帯域しか利用できない。このため、一つの集合装置と通信する宅内装置の契約者が、前記第一通信と前記第二通信との両方の利用者が混在して、前記第一通信と前記第二通信とが干渉する際には、前記第二通信のサービス提供は前記第一帯域以外の帯域を用いて通信する制限付第二通信として通信することで、前記第一通信との間で両立を図る。
【0018】
この発明の主な特徴はこのように干渉が起きる状況下において、前記第二通信を制限付第二通信として通信する際の処理にある。制限付第二通信の周波数帯域は高周波数であるため、必然的にノイズの影響を受けやすく、通信速度が低下しやすい傾向にある。この傾向が過度に進行し、前記第一通信の速度が第一閾値を上回り、かつ、前記第二通信の速度が第二閾値を下回る場合、前記サブチャンネルのうち、高周波数帯域側から順に選択した一つ又は複数のサブチャンネルを、前記制限付第二通信に割り当てる。
【0019】
なお、元の第二通信がTDD方式である場合に、前記制限付第二通信に割り当てられたサブチャンネルについては、そのサブチャンネルも含めた前記制限付第二通信の周波数帯域全体をTDD方式で用いてもよいし、割り当てられたサブチャンネルについてはFDD方式のままで取り扱っても良い。
【0020】
上記の第一閾値及び第二閾値は事前に設定した値を、集合装置11を設置する際に直接入力可能でもよいし、通信事業者が遠隔で設定可能でもよい。また、通信履歴に応じて集合装置11が自動的に最適値を求めて設定できるようにしてもよい。第一閾値と第二閾値とはイコールであってもよい。しかし、第一閾値>第二閾値となってしまうと、この発明が実施されていても第二通信側が低速になってしまうことがあるため、第一閾値≦第二閾値であると好ましい。
【0021】
この発明にかかる集合装置11を用いる環境の例を
図1に示す。集合装置11は通信事業者網に光ファイバなどの高速通信規格で接続され、これに中継する形でインターネット接続環境を各々の宅内装置12に対して提供する。集合装置11と宅内装置12の間は既存の電話回線のようなメタル線で接続されており、100kHz程度から1GHz程度に亘る周波数で多数の通信が併存できる環境にある。
【0022】
ここで、集合装置11と宅内装置12が設置されている環境としては、複数の部屋を有し、それぞれの部屋に異なる契約者が入居しており、各契約者宅2(2a,2b)が通信事業者と契約している集合住宅1を例にとって説明する。ただし、この発明の実施環境はこのようなケースに限定されるものではなく、例えば複数のテナントが入ってそれぞれのテナントが宅内装置を設置して異なる契約を行うオフィスビルなど、ビジネス向けの環境でも同様に実施可能である。
【0023】
ここで、宅内装置12aを設置した契約者宅2aはG.fastで契約しており、宅内装置12aはG.fastで集合装置11との間の通信を行う。このG.fastが上記の第二通信にあたる。宅内装置12bを設置した契約者宅2bは、VDSL2で契約しており、宅内装置12bはVDSL2で集合装置11との間の通信を行う。このVDSL2が上記の第一通信にあたる。他にも契約者宅は存在してよいが、同様にG.fast又はVDSL2で契約しているものとし、まとめて契約者宅2a、2bとして記載する。
【0024】
上記のVDSL2はVDSL1(〜12MHz)を拡張した規格であり、30MHzまでの周波数帯域(上記の第一帯域21)に、ダウンストリーム(DS)用のサブチャンネルと、アップストリーム(US)用のサブチャンネルとを交互にそれぞれ3つずつ有する。すなわち、低周波数側から、DS1、US1,DS2、US2、DS3、US3の合計6つのサブチャンネルを有し、これらをFDD方式で利用する。ただし、ノイズが多くなりやすい高周波数帯域側から、必要に応じて一つ又は複数のサブチャンネルを使用しないで通信することもできる。
【0025】
上記のG.fastは規格上VDSL2の帯域(〜30MHz)を使用可能であり、さらにVDSL2の帯域よりも高周波数側の帯域を利用可能である。合わせて上記の第二帯域22にあたる。G.fastは特に規定しない場合、上記第二帯域22全体をTDD方式で利用する。
【0026】
従って、
図2(a)に示すように、上記第一帯域をFDD方式で用いる上記第一通信であるVDSL2と、上記第二帯域をTDD方式で用いる上記第二通信であるG.fastとが、この集合住宅1内のメタル線において干渉する。これに対して、一旦
図2(b)に示すように、G.fastで用いる周波数帯域からVDSL2が使用する上記第一帯域を除外した上記の制限付第二帯域23のみを用いて契約者宅2a向けのG.fastの通信サービス提供を行う。
【0027】
この環境で起こり得る事態を
図3に示す。制限付第二帯域23のみを利用するG.fastでは、高周波数帯域であるためノイズの影響を受けやすい。これに比べて、低周波数帯域を用いるVDSL2ではノイズの影響を受けにくく、比較的通信品質が安定する傾向にある。この状態を
図3に示す。
【0028】
上記のような環境で、集合装置11は定期的に次のような判断を行い、集合住宅全体での実効速度の最適化を図る。設置された集合装置11は、集合住宅内に設置された宅内装置12が、VDSL2で通信するか、G.fastで通信するか判別する通信規格判別手段を実行し、契約された範囲でより高速な通信規格での通信を行う。従って、この発明にかかる集合装置11が設置されていても、集合住宅1内の全ての契約者宅2がVDSL2での契約となっている場合は、全体がVDSL2で通信され、特段の調整処理を行わない。また、全ての契約者宅2がG.fastでの契約となっている場合も、全体がG.fastで通信されるため、特段の調整処理を行わない。なお、この発明にかかるプログラムはこの集合装置11の基本的な機能を利用し、下記のような判断と割り当てを行うファームウェアとして実装できる。
【0029】
まず判断フローの前に、集合装置11に接続される宅内装置12の中に、G.fastの宅内装置12aが接続されたら、VDSL2(上記の第一通信)とG.fast(上記の第二通信)との干渉の有無を確認する。干渉が確認されたら、G.fastの宅内装置12aは、30MHz以上の帯域のみを用いた制限付第二通信として通信する。G.fastの宅内装置12aはVDSL2の帯域を一切使用せず、VDSL2の宅内装置12bはVDSL2の帯域を全て使用する、周波数上は完全に住み分ける運用となる。
【0030】
その上で、集合装置11は宅内装置12a及び12bとの間の通信速度を常に監視し続ける。なお、宅内装置12a及び12bは複数あることが多く、通信速度はそれぞれの宅内装置12a、12bについての平均値や中央値など、状況に応じて最適な値を判断に用いる。
【0031】
常時監視した第一通信及び第二通信の速度について、
図4のフロー例のように判断する(S101)。まず、第二通信であるG.fastを利用する宅内装置12aの通信速度が、上記の第二閾値を下回るか否かを判断する(S102)。通信速度が上記の第二閾値以上であるならば(S102→NO)、周波数の割り当てはそのままとする(S103)。これは、G.fastを利用する契約者の通信品質がそれほど低下していない場合である。
【0032】
一方、G.fastを利用する契約者の通信速度が上記の第二閾値を下回る場合(S102→YES)、すなわちG.fastの通信品質が許容範囲を超えて低下している場合、次の判断に移る。第一通信であるVDSL2を利用する宅内装置12bの通信速度が、上記の第一閾値を上回るか否かを判断する(S111)。通信速度が上記の第一閾値以下であるならば(S111→NO)、周波数の割り当てはそのままとする(S112)。これは、G.fastだけでなく、VDSL2を利用する契約者の通信品質も大きく低下しているため、周波数の割り当てを変更するとVDSL2を利用する契約者の品質がさらに低下しすぎてしまうので、そのままとする方が望ましい場合である。
【0033】
一方、VDSL2の通信速度が上記の第一閾値を上回るのであれば(S111→YES)、VDSL2側に余裕があり、G.fast側に余裕がない状態であると判断できるため、VDSL2が利用するサブチャンネルの一部をG.fastの制限付第二通信に割り当てる。
【0034】
VDSL2からG.fastに割り当てるサブチャンネルは、高周波数側から順に選択した一つ又は複数のサブチャンネルとする。ここで、VDSL2は通信規格上、アップストリーム(US)用とダウンストリーム(DS)用のそれぞれ3つのサブチャンネルを有しており、高周波数側から順にUS3,DS3,US2、DS2、US1,DS1となっている。割り当てるサブチャンネルはこのうち、US3のみ、又はUS3とDS3を適用すると特に好ましい。多くの契約者はダウンストリーム側を利用することが多く、アップストリーム側は比較的余裕があることが多い。このため、US3のみをG.fastに割り当てても、VDSL2側の実効速度の低下は最小限に留まることが多い。一方で、US3のみを割り当ててもG.fastの実効速度が改善しきらない場合もある。そのような場合はUS3とDS3との両方を割り当てるとよい。
【0035】
いずれの判断であっても、引き続いて集合装置11は宅内装置12a及び12bとの間の通信速度を常に監視し続ける。その監視に応じて、さらにVDSL2からG.fastへの割り当てを行ってもよい。ただし、US1とDS1のサブチャンネルはVDSL2が維持しておかなければ通信を継続できない。従って、G.fastに割り当てることができるサブチャンネルは最大でもUS3,DS3,US2,DS2の四つまでとするとよい。
【0036】
また、その後の監視に応じて、ノイズが改善された場合、適宜G.fastに割り当てられた一部のサブチャンネルを、VDSL2に割り当て直してもよい。さらにその後、ノイズの増加に伴って、G.fastへの再割り当てを行っても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 集合住宅
2,2a,2b,2c 契約者宅
11 集合装置
12 宅内装置
12a (G.fastの)宅内装置
12b (VDSL2の)宅内装置
21 第一帯域
22 第二帯域
23 制限付第二帯域
【要約】
【課題】比較的低速な通信規格と、比較的高速な通信規格とが、互いに干渉する帯域を使用する場合において、高速な通信規格側が低速になる不公平感を解消する。
【解決手段】複数のサブチャンネルを有する第一帯域を用いた第一通信であるVDSL2と、前記第一帯域を含み前記第一帯域よりも高周波数の帯域を含む第二帯域とを用いた第二通信であるG.fastとを利用可能であり、金属線で接続された複数の宅内装置に対して、VDSL2とG.fastとのいずれかの規格によって通信できる集合装置を管理するにあたり、VDSL2とG.fastとが干渉する際に、G.fastは前記第一帯域以外の帯域を用いて通信する制限付として通信し、前記第一通信の速度が第一閾値を上回り、かつ、前記第二通信の速度が第二閾値を下回る場合、前記サブチャンネルのうち、高周波数帯域側から順に選択した一つ又は複数のサブチャンネルを、制限付のG.fastに割り当てる。
【選択図】
図4