特許第6514355号(P6514355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514355
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】オイルパン及びオイルパンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20190425BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20190425BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   F02F7/00 302C
   F01M11/00 E
   F01M11/00 N
   F02B77/13 T
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-548587(P2017-548587)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(86)【国際出願番号】JP2015081258
(87)【国際公開番号】WO2017077631
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】井上 智成
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆弘
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−0780990(KR,B1)
【文献】 特開2000−157921(JP,A)
【文献】 特開2004−251109(JP,A)
【文献】 特開2008−150974(JP,A)
【文献】 特開平9−290940(JP,A)
【文献】 実開昭61−162557(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパン本体の外面がウレタン発泡体で覆われたオイルパンであって、
前記オイルパン本体の外面に、カチオン処理が施された表面処理層を有し、
前記ウレタン発泡体は、前記表面処理層を介して前記オイルパン本体の外面に隙間なく固着されていて、
前記オイルパン本体の外面に形成されて、内外方向に起伏した起伏部を有し、
前記表面処理層は、前記起伏部に形成されていて、
前記ウレタン発泡体は、前記起伏部に隙間なく固着されていて、
前記起伏部は、前記オイルパン本体の内側へ向かって椀状に凹んだ椀状凹部を含み、
前記ウレタン発泡体は、前記椀状凹部の内面全体に隙間なく固着されているオイルパン。
【請求項2】
前記起伏部は、前記オイルパン本体の内側に向かって凹んだ溝部を含み、
前記ウレタン発泡体は、前記溝部の内面全体に隙間なく固着されている請求項1に記載のオイルパン。
【請求項3】
前記オイルパン本体に設けられ、下方に突出して前記オイルパン本体の最深部を構成する下方突部を有し、
前記起伏部の少なくとも一部が前記下方突部により形成され、
前記ウレタン発泡体は、前記下方突部の外面に隙間なく固着されている請求項1又は2に記載のオイルパン。
【請求項4】
オイルパン本体の外面がウレタン発泡体で覆われたオイルパンの製造方法であって、
板金をプレス成形して前記オイルパン本体を形成することと、
前記オイルパン本体の外面にカチオン処理を施すことと、
前記カチオン処理後の前記オイルパン本体を発泡成形金型内にインサートすることと、
前記発泡成形金型内でウレタン樹脂を発泡成形することで、前記オイルパン本体の外面にウレタン発泡体を固着させることと、を含み、
前記オイルパン本体を形成するにあたり、前記オイルパン本体の外面に内外方向に起伏した起伏部を形成し、
前記起伏部の外面に前記ウレタン発泡体を固着させ、
前記起伏部を形成するにあたり、前記オイルパン本体の内側に向かって椀状に凹む椀状凹部を形成するオイルパンの製造方法。
【請求項5】
前記起伏部を形成するにあたり、前記オイルパン本体の内側に凹む溝部を形成する請求項4に記載のオイルパンの製造方法。
【請求項6】
前記オイルパン本体を形成するにあたり、下方に突出して前記オイルパン本体の最深部を構成する下方突部を設けて、前記下方突部により前記起伏部を形成する請求項4又は5に記載のオイルパンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパン本体の外面がウレタン発泡体で覆われたオイルパン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルパンに起因する振動や騒音の低減を目的として、オイルパン本体の外面に吸音シートが貼着されたオイルパンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−37250号公報(第5頁第7行目〜第11行目、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のオイルパンでは、吸音シートとの間に隙間が生じ易く、オイルパンに起因する振動及び騒音の低減効果を高めることが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、振動及び騒音の低減効果を高めることが可能なオイルパン及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、オイルパン本体の外面がウレタン発泡体で覆われたオイルパンであって、前記オイルパン本体の外面に、カチオン処理が施された表面処理層を有し、前記ウレタン発泡体は、前記表面処理層を介して前記オイルパン本体の外面に隙間なく固着されていて、前記オイルパン本体の外面に形成されて、内外方向に起伏した起伏部を有し、前記表面処理層は、前記起伏部に形成されていて、前記ウレタン発泡体は、前記起伏部に隙間なく固着されていて、前記起伏部は、前記オイルパン本体の内側へ向かって椀状に凹んだ椀状凹部を含み、前記ウレタン発泡体は、前記椀状凹部の内面全体に隙間なく固着されているオイルパンである。
【0009】
請求項の発明は、前記起伏部は、前記オイルパン本体の内側に向かって凹んだ溝部を含み、前記ウレタン発泡体は、前記溝部の内面全体に隙間なく固着されている請求項に記載のオイルパンである。
【0010】
請求項の発明は、前記オイルパン本体に設けられ、下方に突出して前記オイルパン本体の最深部を構成する下方突部を有し、前記起伏部の少なくとも一部が前記下方突部により形成され、前記ウレタン発泡体は、前記下方突部の外面に隙間なく固着されている請求項1又は2に記載のオイルパンである。
【0011】
請求項の発明は、オイルパン本体の外面がウレタン発泡体で覆われたオイルパンの製造方法であって、板金をプレス成形して前記オイルパン本体を形成することと、前記オイルパン本体の外面にカチオン処理を施すことと、前記カチオン処理後の前記オイルパン本体を発泡成形金型内にインサートすることと、前記発泡成形金型内でウレタン樹脂を発泡成形することで、前記オイルパン本体の外面にウレタン発泡体を固着させることと、を含み、前記オイルパン本体を形成するにあたり、前記オイルパン本体の外面に内外方向に起伏した起伏部を形成し、前記起伏部の外面に前記ウレタン発泡体を固着させ、前記起伏部を形成するにあたり、前記オイルパン本体の内側に向かって椀状に凹む椀状凹部を形成するオイルパンの製造方法である。
【0014】
請求項の発明は、前記起伏部を形成するにあたり、前記オイルパン本体の内側に凹む溝部を形成する請求項に記載のオイルパンの製造方法である。
【0015】
請求項の発明は、前記オイルパン本体を形成するにあたり、下方に突出して前記オイルパン本体の最深部を構成する下方突部を設けて、前記下方突部により前記起伏部を形成する請求項4又は5に記載のオイルパンの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
[請求項1〜の発明]
請求項1,の発明に係るオイルパンでは、オイルパン本体の外面を覆うウレタン発泡体にて、オイルパンに起因する振動及び騒音の低減が図られる。ここで、本発明では、オイルパン本体の外面にカチオン処理が施された表面処理層が形成されていて、ウレタン発泡体は、オイルパン本体の外面に表面処理層を介して隙間なく固着されているので、従来のオイルパンのようにオイルパン本体の外面に吸音シートを貼り付けた構成と比較して、ウレタン発泡体とオイルパン本体の外面との間に隙間が生じ難くなる。これにより、従来よりも振動及び騒音の低減効果を高めることが可能となる。また、請求項の発明に係るオイルパンの製造方法では、発泡成形金型内にカチオン処理後のオイルパン本体をインサートして、その発泡成形金型内でウレタン樹脂を発泡成形するので、オイルパン本体の外面にウレタン発泡体を隙間なく固着することが容易に行える。
【0017】
ここで、オイルパン本体の外面に起伏部が形成されていると、オイルパン本体の外面に吸音シートを貼り付けた従来のオイルパンでは、起伏部と吸音シートとの間に隙間が生じて、振動及び騒音の低減効果を高めることが困難となる。しかしながら、本発明に係るオイルパンでは、ウレタン発泡体が起伏部に隙間なく固着されるので、振動及び騒音の低減効果を高めることが可能となる。
【0018】
なお、起伏部には、オイルパン本体の内側へ向かって椀状に凹んだ椀状凹部が含まれてもよいし、オイルパン本体の内側に向かって凹んだ溝部が含まれてもよい(請求項の発明)。オイルパン本体に椀状凹部又は溝部が形成されることで、オイルパン本体の剛性を高めることが可能となり、オイルパン本体に起因する振動及び騒音を低減することが可能となる。
【0019】
また、オイルパン本体に、下方に突出してオイルパン本体の最深部を構成する下方突部が形成されている場合、その下方突部によって起伏部が構成されてもよい(請求項の発明)。この構成では、オイルパン本体の薄型化を図りつつ、オイルパン本体に起因する振動及び騒音の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るオイルパンを上方から見た斜視図
図2】オイルパンの平面図
図3】オイルパンを下方から見た斜視図
図4】オイルパンの底面図
図5図2におけるオイルパンのA−A断面図
図6図2におけるオイルパンのB−B断面図
図7図6における椀状凹部及び溝部周辺の拡大図
図8】オイルパン本体がセットされる前の発泡成形金型の断面図
図9】オイルパン本体がセットされた状態の発泡成形金型の断面図
図10】発泡成形後の発泡成形金型の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図1図10に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態に係るオイルパン10は、オイルパン本体10Hを備えている。オイルパン本体10Hは、板金のプレス成形品であって、上下方向に扁平な容器部11の開口縁からフランジ部12が張り出した構造になっている。なお、フランジ部12には、オイルパン10をエンジン(図示せず)に取り付けるためのボルト孔12Aが複数形成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、オイルパン本体10Hの容器部11は、平面視略矩形状をなす帯状中間部13と、帯状中間部13における長辺部分から外側に張り出す1対の側方張出部14,14と、で構成されている。帯状中間部13の深さは、側方張出部14の深さよりも深くなっている。そして、容器部11の底壁11Sのうち帯状中間部13と側方張出部14との境界部分には、側方張出部14に溜まったオイルを帯状中間部13側へと誘導する側方誘導傾斜部15Kが形成されている。
【0023】
また、図5に示すように、容器部11の底壁11Sのうち帯状中間部13を構成する部分には、下方へ突出して容器部11の最深部11Dを構成する下方突部21が形成されている。そして、容器11の外面には、下方突部21によって、容器部11の内外方向に起伏した第1の起伏部31が形成されている。下方突部21は、帯状中間部13の短手方向から見て、略V字状になっていて、帯状中間部13の短手方向に延びる線状頂部21Tと、線状頂部21Tに対して帯状中間部13の長手方向一方側に配置される第1中間傾斜部16Aと、線状頂部21Tに対して帯状中間部13の長手方向他方側に配置される第2中間傾斜部16Bと、を有している。下方突部21は、帯状中間部13の長手方向一方側に寄せて配置されている。
【0024】
また、図1に示すように、下方突部21の第1中間傾斜部16Aには、容器部11内のオイルを外部に排出するための排出孔18が形成されている。なお、図2では、排出孔18に、排出孔18を閉塞するキャップ(図示せず)を固定するための固定リング19が装着された状態のオイルパン本体10Hが示されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、容器部11の底壁11Sには、ドーム状に膨出するドーム状突部22が複数形成されている。ドーム状突部22は、平面視楕円形状になっていて、ドーム状突部22の長軸は、容器部11の帯状中間部13の長手方向に沿って配置されている。なお、詳細には、ドーム状突部22には、大型ドーム状突部22Aと、大型ドーム状突部22Aよりも小さい小型ドーム状突部22Bと、が設けられている。大型ドーム状突部22Aは、容器部11の1対の側方張出部14,14に1つずつ配置され、小型ドーム状突部22Bは、容器部11の帯状中間部13に複数配置されている。
【0026】
図6に示すように、ドーム状突部22は、容器部11の底壁11Sを内側に陥没させて形成されている。従って、容器部11の外面には、ドーム状突部22に対応して、容器部11の内側へ凹んだ椀状凹部23が形成されている。そして、容器部11の外面には、椀状凹部23によって、容器部11の内外方向に起伏した第2の起伏部32が形成されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、容器部11のうち帯状中間部13の内面には、帯状中間部13の長手方向に沿って延びる土手部24が複数設けられている。詳細には、複数の土手部24は、帯状中間部13の短手方向に並べて配置され、帯状中間部13の長手方向における他端側の端部から一方側へ向かって、言い換えれば、浅底側の端部から深底側へ向かって延びている。これにより、帯状中間部13に溜まったオイルが容器部11の最深部11Dへと誘導され易くなっている。
【0028】
土手部24は、ドーム状突部22と同様に、容器部11の底壁11Sを内側に陥没させて形成されている(図6参照)。従って、容器部11の外面には、土手部24に対応して、容器部11の内側に凹んだ溝部25が形成されている。そして、容器部11の外面には、溝部25によって、容器部11の内外方向に起伏した第3の起伏部33が形成されている。
【0029】
図3及び図4に示すように、オイルパン本体10Hの外面は、ウレタン発泡体41で覆われている。このウレタン発泡体41は、排出孔18を含む露出領域R1を避けて配置されている。なお、露出領域R1は、下方突部21の線状頂部21Tに対して帯状中間部13の長手方向一方側に配置され、平面視略四角形状となっている(図3図5参照)。
【0030】
図5及び図6に示すように、ウレタン発泡体41は、オイルパン本体10Hの外面に隙間なく固着されている。詳細には、図7に示すように、オイルパン本体10Hの外面には、カチオン処理が施された表面処理層42が形成されていて、ウレタン発泡体41は、表面処理層42を介してオイルパン本体10Hの外面に隙間なく固着されている。
【0031】
図5及び図6に示すように、ウレタン発泡体41は、第1の起伏部31と、第2の起伏部32と、第3の起伏部33と、を覆うように配置されている。具体的には、ウレタン発泡体41は、第2の起伏部32を構成する椀状凹部23の底面に隙間なく固着されると共に、第3の起伏部33を構成する溝部25の底面に隙間なく固着されている。また、ウレタン発泡体41は、第1の起伏部31を構成する下方突部21の一部に隙間なく固着されている。
【0032】
オイルパン10の構成に関する説明は以上である。次に、オイルパン10の製造方法について説明する。
【0033】
図8には、オイルパン10の製造に用いられる発泡成形金型50が示されている。発泡成形金型50は、上下方向に型開き可能な上側金型51と下側金型61とからなる。上側金型51は、ベース壁54の外縁部から側壁53が垂下した構造になっている。側壁53の下端面には、複数のガス抜き溝52が、側壁53の内側と外側との間を連絡するように形成されている。
【0034】
下側金型61は、ベース壁63の外縁寄り部分から上方に突出する包囲壁64を有し、ベース壁63のうち包囲壁64より外側に配置される部分が上側金型51の側壁53と対向する側部対向面63Mとなっている。包囲壁64の内側は、ウレタン樹脂を発泡成形するための成形部62となっている。包囲壁64の先端面には、複数のガス抜き溝65が、包囲壁64の内側と外側との間を連絡するように形成されている。
【0035】
オイルパン10を製造するには、まず、板金をプレス成形してオイルパン本体10Hを製造しておく。このとき、オイルパン本体10Hの容器部11に、下方突部21、ドーム状突部22及び土手部24が形成されることで、オイルパン本体10Hの外面に第1〜第3の起伏部31〜33が形成される。
【0036】
オイルパン本体10Hが得られると、次いで、オイルパン本体10Hの外面にカチオン処理が施され、オイルパン本体10Hの外面に表面処理層42(図7参照)が形成される。なお、カチオン処理は、オイルパン本体10Hの外面全体に施される。
【0037】
カチオン処理が終了すると、オイルパン本体10Hを発泡成形金型50にセットすると共に、ウレタン樹脂の発泡原液Hを下側金型61の成形部62に注入する(図9参照)。このとき、オイルパン本体10Hのフランジ部12は、上側金型51のベース壁54と下側金型61の包囲壁64とによって挟持される。また、上側金型51の側壁53における下端面と下側金型61のベース壁63における側部対向面63Mとは、隣接或いは接合した状態となる。なお、オイルパン本体10Hの外面のうち排出18を含む露出領域R1(図3図5参照)には、下側金型61のベース壁63が宛がわれ、これにより、オイルパン本体10Hの外面における露出領域R1と下側金型61のベース壁63との間に発泡原液Hが入り込むことが防がれる。
【0038】
次いで、発泡成形金型50を加熱して、所定温度で所定時間だけ保持する。すると、発泡原液Hが発泡してウレタン発泡体41が形成されると共に、そのウレタン発泡体41が、オイルパン本体10Hの外面に隙間なく固着される(図10参照)。
【0039】
次いで、オイルパン本体10H及びウレタン発泡体41を発泡成形金型50から脱型することで、オイルパン10が得られる。
【0040】
本実施形態のオイルパン10及びその製造方法に関する説明は以上である。次に、オイルパン10及びその製造方法の作用効果について説明する。
【0041】
本実施形態に係るオイルパン10では、オイルパン本体10Hの外面を覆うウレタン発泡体41にて、オイルパン10に起因する振動及び騒音の低減が図られる。ここで、本実施形態では、オイルパン本体10Hの外面にカチオン処理が施された表面処理層42が形成されていて、ウレタン発泡体41は、オイルパン本体10Hの外面に表面処理層42を介して隙間なく固着されているので、従来のオイルパンのようにオイルパン本体10Hの外面に吸音シートを貼り付けた構成と比較して、ウレタン発泡体41とオイルパン本体10Hの外面との間に隙間が生じ難くなる。これにより、従来よりも振動及び騒音の低減効果を高めることが可能となる。また、本実施形態のオイルパン10の製造方法では、発泡成形金型50内にカチオン処理後のオイルパン本体10Hをインサートして、その発泡成形金型50内でウレタン樹脂を発泡成形するので、オイルパン本体10Hの外面にウレタン発泡体41を隙間なく固着することが容易に行える。なお、カチオン処理によって、オイルパン本体10Hの錆止め効果を奏することもできる。
【0042】
ここで、本実施形態のオイルパン10では、オイルパン本体10Hの外面に第1〜第3の起伏部31〜33が形成されているため、従来のオイルパンのように、オイルパン本体10Hの外面に吸音シートを貼り付けた構成では、第1〜第3の起伏部31〜33と吸音シートとの間に隙間が生じて、振動及び騒音の低減効果を高めることが困難となる。しかしながら、本実施形態のオイルパン10では、ウレタン発泡体41が第1〜第3の起伏部31〜33に隙間なく固着されるので、振動及び騒音の低減効果を高めることが可能となる。しかも、オイルパン本体10Hに、第2の起伏部32としての椀状凹部23と第3の起伏部33としての溝部25とが形成されることで、オイルパン本体10Hの剛性を高めることが可能となり、オイルパン本体10Hに起因する振動及び騒音を低減することが可能となる。また、第1の起伏部31は、下方に突出してオイルパン本体10Hの最深部11Dを構成する下方突部21により形成されているので、オイルパン本体10Hの薄型化を図りつつ、オイルパン本体10Hに起因する振動及び騒音の低減を図ることが可能となる。
【0043】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0044】
(1)上記実施形態のオイルパン10では、オイルパン本体10Hの外面に第1〜第3の起伏部31〜33を備えて、ウレタン発泡体41が第1〜第3の起伏部31〜33に対して隙間なく固着される構成であったが、第1〜第3の起伏部31〜33のうち何れか1の起伏部を備えて、当該1の起伏部に対して隙間なく固着されてもよい。
【0045】
(2)上記実施形態では、オイルパン本体10H(容器部11)の最深部11Dを構成する下方突部21により本発明の「起伏部」が構成されていたが、例えば、オイルパンカバーとの干渉を回避するために容器部11に設けられた凹部等により構成されてもよい。
【0046】
(3)上記実施形態におけるオイルパン10の製造方法において、カチオン処理は、オイルパン本体10Hの外面と内面の両方に施されてもよい。
【0047】
(4)上記実施形態では、オイルパン本体10Hが、第1〜第3の起伏部31〜33を備える構成であったが、何れの起伏部も備えない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 オイルパン
10H オイルパン本体
11D 最深部
21 下方突部
23 椀状凹部
25 溝部
31 第1の起伏部
32 第2の起伏部
33 第3の起伏部
41 ウレタン発泡体
42 表面処理層
50 発泡成形金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10