(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514466
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】フィットチェッカー内蔵マスク
(51)【国際特許分類】
A62B 18/08 20060101AFI20190425BHJP
A62B 27/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
A62B18/08 Z
A62B27/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-182152(P2014-182152)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-54828(P2016-54828A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145507
【氏名又は名称】株式会社重松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100089406
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏
(72)【発明者】
【氏名】小野 研一
(72)【発明者】
【氏名】財津 修
(72)【発明者】
【氏名】高山 祐輔
【審査官】
堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−027568(JP,A)
【文献】
特開2011−125408(JP,A)
【文献】
実開昭60−099947(JP,U)
【文献】
国際公開第2013/187279(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00−33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、通気経路を経て面体内側に取り付けられた吸気弁と、面体と顔面との密着性の確認を容易に行えるようにしたフィットチェッカー機構を有するフィットチェッカー内蔵マスクであって、該フィットチェッカー機構は、前記吸気弁の外形を覆う吸気弁押さえを有し、該吸気弁押さえにより装着者側から面体側に前記吸気弁を押さえた状態で固定して通気経路を一時的に遮断することを特徴とするフィットチェッカー内蔵マスク。
【請求項2】
吸気弁押さえと、吸気弁押さえから面体の外側に伸びたレバーにより一時的に通気経路を遮断した請求項1に記載のフィットチェッカー内蔵マスク。
【請求項3】
面体外と面体内の遮断及び吸気弁押さえの固定を、伸縮性のある膜で行う請求項1または2に記載のフィットチェッカー内蔵マスク。
【請求項4】
面体と、吸気弁押さえを操作する軸にねじ加工を施すことで、吸気弁押さえを固定することが出来る請求項1ないし3の何れかの項に記載のフィットチェッカー内蔵マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,装着時にマスクと顔面との密着性を容易に確認できるフィットチェッカーを内蔵したフィットチェッカー内蔵マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
防じんマスクや防毒マスクを装着して作業を行う際は,マスク装着直後,マスクと顔面が隙間無く密着していることを確認する必要がある。そのためには,面体に取り付けられたフィルタの吸気口部を手で押さえて漏れ込みを確認する方法や,別体のフィットチェッカーを使用する方法がある。また,面体内にフィットチェッカーが内蔵されたマスクについては,その機構を用いて密着性を確認することができる。
【0003】
手でフィルタの吸気口を押さえてフィットチェックを行う場合,顔面に面体を押しつける力が働く可能性があるため,正確に密着性を確認できていない可能性がある。別体のフィットチェッカーは取り付け・取り外しが手間であり,保管時に紛失する可能性もある。
マスク内にフィットチェッカー機構を内蔵するということは,面体のフィルタコネクション部から面体内の吸気口までの限られた経路間で,吸気を遮断する機構を盛り込むということであるが,遮断する際,漏れがあってはならないため,その機構は複雑になり,かつ,必要な部品も多くなる。また複雑な機構を通気経路に設けるということは,通気面積を狭めるため,通気抵抗が高くなるなど性能の低下も懸念される。通気抵抗が高くなることへの対策としては,フィットチェッカー機構の分,通気経路を広くし,通気抵抗を下げるという方法もあるが,その場合,面体全体を外側か内側のどちらかに大きくする必要がある。外側に大きくした場合,面体の顔面からの張出量が大きくなるため,装着者の下方視野が悪くなることや作業の邪魔になることが予想できる。また,内側に大きくした場合,面体が装着者の顔面に近づくことになるため,接顔体ではない面体の一部が装着者の顔面に触れる可能性がある。特に吸気弁は吸気時に開き顔面に近づくため,装着者の口や鼻などに接触する可能性が大きい。その場合,装着者は非常に不快な思いをすることになる。
【0004】
また、面体内にフィットチェッカーが内蔵されたマスクとして特許文献1には次のようなマスクが開示されている。即ち、「吸排気可能かつ顔面に密着可能に形成された面体と、前記面体の幅を二等分する中心線の両側それぞれに設けられた一対の吸気用カップとを有し、前記カップは、前記面体寄りに位置する底部が通気孔を介して前記面体につながり、前記底部と反対側の頂部がフィルタの着脱を可能に形成されている防護マスクであって、前記カップの内部には、前記底部に臨む前記通気孔の周縁部に対して摺動して前記通気孔を開閉することが可能なシャッタープレートと、前記シャッタープレートから前記カップの周壁を気密状態下に摺動可能に貫通して前記カップの外部へ延出するスライドバーとが設けられ、前記カップの外部には、前記中心線を横切って前記幅方向へ延びて一対の前記カップそれぞれの前記外部へ延出した前記スライドバーの端部につながるクロスバーが設けられており、前記スライドバーの延出する方向において前記クロスバーが往復運動すると、前記スライドバーを介して前記シャッタープレートが前記通気孔を開閉するように往復運動し、かつ、前記シャッタープレートが前記通気孔を閉じると、前記通気孔が気密状態になることを特徴とする前記防護マスク。」この防護マスクはフィルタの着脱自在に設けられた吸気用カップの底部に面体内に通じる通気孔が有り、該通気孔に開閉可能なシャッタープレートがあって、このシャッタープレートの端部にスライドバーが設けられていて、このスライドバーを往復運動させることによってシャッタープレートで通気孔を開閉できるようになっており、これによってマスクの顔面に対する密着状態を知ることが出来るのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−181570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は,上記の問題を解決すると共に,更に面体と顔面との密着性の確認しやすさを向上させたフィットチェッカー内蔵マスクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、フィルタと、通気経路を経て面体内側に取り付けられた吸気弁と、
面体と顔面との密着性の確認を容易に行えるようにしたフィットチェッカー機構を有するフィットチェッカー内蔵マスクであって、該
フィットチェッカー機構は、前記吸気弁の外形を覆う吸気弁押さえを有し、該吸気弁押さえにより装着者側から面体側に前記吸気弁を押さえた状態で固定して通気経路を一時的に遮断することを特徴とするフィットチェッカー内蔵マスクである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィットチェッカー機構を面体内に組み込むことで,面体と顔面との密着性を正確に確認でき,別体のフィットチェッカーのように紛失することもない。また,面体内側の吸気弁を装着者側から押さえることで,フィルタコネクション部から面体内の吸気口までの経路に機構を設ける必要がないため,通気経路がシンプルになり,通気面積が小さくすることなく容易に面体と顔面との密着性を確認することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明にかかるマスクの通常装着時の横断面図(フィルタ1個付き)
【
図2】本発明にかかるマスクのフィットチェック実施時の横断面図(フィルタ1個付き)
【
図3】本発明にかかるマスクの通常装着時の横断面図(フィルタ2個付き)
【
図4】本発明にかかるマスクのフィットチェック実施時の横断面図(フィルタ2個付き)
【
図5】伸縮性のある膜を使ったレバー部の構造断面図(通常装着時)
【
図6】伸縮性のある膜を使ったレバー部の構造断面図(フィットチェック実施時)
【
図7】ネジ構造を用いたレバー部の構造断面図(通常装着時)
【
図8】ネジ構造を用いたレバー部の構造断面図(フィットチェック実施時)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について詳細に説明する。
本発明にかかるマスクの種類としては,粉じん用あるいは有毒ガス用の何れのマスクでもよく,使用するフィルタの種類や数によっても特に限定はされない。また,半面形や全面形等のマスクの形状・構造によっても限定されない。
本発明に係るマスクは面体内部に通じる吸気口を設け、該吸気口は吸気弁を有しており、該吸気弁を装着者側から押さえて吸気弁を閉じ通気経路を遮断するのである。通気経路を遮断する一例として次のような機構よりなっている。
即ち、一方にフィルタを、他方に面体内部に通じる吸気口を設けその間を通気経路で連なっている。前記吸気口には吸気弁が設けられており、吸気弁は柔らかく弾性のあるゴムなどの素材が使用されている。吸気弁には吸気弁押さえが取り付けられており、該吸気弁押さえの中心にレバーを設け、該レバーは面体外部に延びている。通常の装着時は外部からの空気はフィルタを通過し、通気経路を経由して吸気口に至る。本発明においては前記吸気弁を装着者側から押さえて閉じた状態で固定することで一時的に通気経路を遮断して面体と装着者の顔面との密着性を確認するのである。吸気弁を装着者側から押さえる手段としては、前記レバーを軸方向に引っ張ることによって一時的に吸気弁を閉ざし、通気経路を遮断して外部からの漏れをチェックするのである。
本発明においては、吸気弁押さえレバーによって漏れをチェックするのであるが、この吸気弁は、本来マスクの必須部品の一つであり、この吸気弁をフィットチェッカー機構に利用することで,部品点数を削減することができる。さらに,通常の装着時は吸気弁押さえで吸気弁の開きを抑制することができるため,吸気弁の一部が装着者に接触することも防ぐことができる。そのため,吸気弁の最大の開きを考慮することなく,装着者の顔面に面体を近づけることができるため,結果として,面体の張出量を小さくすることができる。
【実施例】
【0011】
次に実施例として図面をもって更に具体的に説明する。
図1は,本発明にかかるフィルタ2を1個付けたマスクの装着時の横断面図である。装着者から見て面体の左側にフィルタ2が取り付いており,通気経路を経て面体内側の中心部に吸気口が設けられ,吸気弁3が取り付いている。吸気口から垂直方向に吸気弁押さえ5を操作するレバー4が面体の外部まで伸びている。図は1例であり,フィルタ2の位置は左右に限らず上下及び中心のいずれの位置にも配置することができ,面体内の吸気口の位置も中心部でなくともよい。
図2は,
図1に示したマスクのフィットチェック実施時の横断面図である。レバー4を面体から離れる方向に引っ張ることで,吸気弁押さえ5が吸気口に近づき吸気弁3を閉じた状態で固定するため,通気経路が遮断されることになる。
【0012】
図3は本発明にかかるフィルタ2 を2個有するマスクの通常装着時の横断面図である。装着者から見て面体の左右にフィルタ2が取り付いており,面体内側の中心部に吸気口が設けられ,吸気弁3が取り付いている。吸気口から垂直方向に吸気弁押さえ5を操作するレバー4が面体の外部まで伸びている。図は1例であり,フィルタ2の位置は左右に限らない。また,面体内の吸気口の位置も中心部でなくともよい。また,フィルタ2の数量は2個に限らず,さらに増やすことも可能である。
図4は,
図3に示したマスクのフィットチェック実施時の横断面図である。レバー4を面体から離れる方向に引っ張ることで,吸気弁押さえ5が吸気口に近づき吸気弁3を閉じた状態で固定するため,通気経路が遮断されることになる。
【0013】
レバー4は面体の内部から外部に伸びていて,少なくとも吸気弁押さえ5の開閉のために動かせなければならない。しかし,面体の内外はフィルタ2を通して以外は完全に遮断されていなければならず,レバー4の機構部も例外ではない。また,通常の装着時において吸気弁押さえ5は開いた状態で固定されていることが好ましい。これらの条件を満たすのに有効な構造の例を
図5に示す。
伸縮性があり,粉じんやガスを通さない素材でできた膜6をレバー4の軸及び面体に面体の内外を遮断するように繋いでいる。膜6には伸縮性があるため,フィットチェック時にはレバー4を軸方向に引っ張ることができ,吸気弁3を押さえて通気経路を遮断する。フィットチェック後は,膜6の伸縮性によって,通常装着時の位置にもどるため,力を加えない限りレバー4は動くことなく固定される。
図6は,
図5に示した機構のフィットチェック実施時の断面図である。
【0014】
吸気弁押さえ5を固定する方法としてもう1つ例を示す。レバー4と面体側にねじ加工を施し,このネジを開け閉めすることで,吸気弁押さえ5の開閉が行える。
図7は吸気弁押さえ5を開いた状態を示し,閉じた状態を
図8に示す。この場合,面体内外の遮断は確実ではないため,Oリング7等で遮断する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上述べたように、本発明に係るフィットチェッカー内蔵マスクは、顔との密着性を容易に確認できるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0016】
1 接顔体 2 フィルタ 3 吸気弁 4 レバー
5 吸気弁押さえ 6 膜 7 Oリング