特許第6514510号(P6514510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許6514510-車両用灯具 図000002
  • 特許6514510-車両用灯具 図000003
  • 特許6514510-車両用灯具 図000004
  • 特許6514510-車両用灯具 図000005
  • 特許6514510-車両用灯具 図000006
  • 特許6514510-車両用灯具 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514510
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20190425BHJP
   B60Q 1/12 20060101ALI20190425BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20190425BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20190425BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190425BHJP
【FI】
   B60Q1/14 A
   B60Q1/12 100
   F21S41/148
   F21W102:14
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-5406(P2015-5406)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2016-130109(P2016-130109A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】望月 光之
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−078476(JP,A)
【文献】 特開2013−047091(JP,A)
【文献】 特開2014−034360(JP,A)
【文献】 特開2012−243727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/12
F21S 41/148
F21W 102/14
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の灯具モジュールからの照射光によって左右1対の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記各灯具モジュールは、第1および第2灯具ユニットを備え、これら第1および第2灯具ユニットからの照射光によって形成される第1および第2配光パターンの合成配光パターンとして上記各配光パターンを形成するように構成されており、
上記第1灯具ユニットは、上記第1配光パターンとして、上記左右1対の配光パターンの中心側に上下方向に延びるカットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成されており、
上記第2灯具ユニットは、上記第2配光パターンとして、上記第1配光パターンよりも小さくて明るい配光パターンを、上記カットオフライン寄りの位置に形成するように構成されており、
上記各灯具モジュールからの照射光によって形成される配光パターンは、上記第2配光パターンにおける最大光度の位置が上記第1配光パターンにおける最大光度の位置よりも上記カットオフライン側に位置するように形成されており、
上記各灯具モジュールは、左右方向に回動し得るように構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記第1灯具ユニットは、上記第1配光パターンを、上記カットオフライン寄りの位置に最大光度を有する配光パターンとして形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記第2灯具ユニットは、上記第2配光パターンを上記第1配光パターンの下端縁寄りの位置に形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記第1灯具ユニットの光源として発光ダイオードが用いられるとともに、上記第2灯具ユニットの光源としてレーザダイオードが用いられている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記各灯具モジュールは、上記第1灯具ユニットと上記第2灯具ユニットとが個別に点灯し得るように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、1対の灯具モジュールからの照射光によって左右1対の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、1対の灯具モジュールからの照射光によって左右1対の配光パターンを形成するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具として、各灯具モジュールが左右方向に回動し得るように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−140661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具を採用することにより、左右1対の配光パターンを一体的にあるいは分離して形成することが可能となる。
【0006】
このような車両用灯具によって左右1対の配光パターンを一体的に形成する際、両者を部分的に重複させるようにすれば、その重複部分の明るさを増大させることが可能となるが、その最大光度を十分に高めることはできない。また、左右1対の配光パターンを分離して形成した場合には、各配光パターンにおける両配光パターンの中心寄りの側端部の明るさを十分に確保することができない。したがって、自車ドライバの前方視認性を十分に高める上で改善の余地がある。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、左右方向に回動可能な1対の灯具モジュールからの照射光によって左右1対の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、各灯具モジュールとして2つの灯具ユニットを備えた構成とした上で、両灯具ユニットの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
1対の灯具モジュールからの照射光によって左右1対の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記各灯具モジュールは、第1および第2灯具ユニットを備え、これら第1および第2灯具ユニットからの照射光によって形成される第1および第2配光パターンの合成配光パターンとして上記各配光パターンを形成するように構成されており、
上記第1灯具ユニットは、上記第1配光パターンとして、上記左右1対の配光パターンの中心側に上下方向に延びるカットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成されており、
上記第2灯具ユニットは、上記第2配光パターンとして、上記第1配光パターンよりも小さくて明るい配光パターンを、上記カットオフライン寄りの位置に形成するように構成されており、
上記各灯具モジュールからの照射光によって形成される配光パターンは、上記第2配光パターンにおける最大光度の位置が上記第1配光パターンにおける最大光度の位置よりも上記カットオフライン側に位置するように形成されており、
上記各灯具モジュールは、左右方向に回動し得るように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「左右1対の配光パターン」は、それ自体でハイビーム用配光パターンを形成可能なものであってもよいし、ハイビーム用配光パターンを形成する際にロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成可能なものであってもよい。
【0011】
上記「1対の灯具ユニット」相互間の位置関係は特に限定されるものではなく、例えば、上下2段で配置された構成や左右方向に並列で配置された構成等が採用可能である。
【0012】
上記「上下方向に延びるカットオフライン」は、必ずしも鉛直方向に延びている必要はなく、鉛直方向に対して傾斜した方向に延びていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、左右1対の配光パターンを形成するための1対の灯具モジュールを備えており、これら各灯具モジュールは左右方向に回動し得る構成となっているので、左右1対の配光パターンを一体的にあるいは分離して形成することが可能となる。その際、左右1対の配光パターンを分離した状態で、前走車や対向車の位置に合わせて左右方向に移動させることにより、前走車や対向車のドライバ等にグレアを与えてしまうことなく自車ドライバの前方視認性を確保することが可能となる。また、左右1対の配光パターンを一体的に形成する際、両者を部分的に重複させるようにすれば、その重複部分の明るさを増大させることができる。
【0014】
その上で、各灯具モジュールは第1および第2灯具ユニットを備えており、第1灯具ユニットからの照射光によって、左右1対の配光パターンの中心側に上下方向に延びるカットオフラインを有する第1配光パターンを形成するとともに、第2灯具ユニットからの照射光によって、第1配光パターンよりも小さくて明るい第2配光パターンをカットオフライン寄りの位置に形成するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、上記各配光パターンを、第1配光パターンとそのカットオフライン寄りに位置する小さくて明るい第2配光パターンとの合成配光パターンとして形成することができ、これによりカットオフライン寄りの位置に高光度領域を形成することができる。
【0016】
したがって、左右1対の配光パターンを一体的に形成する際、両者を部分的に重複させるようにすれば、その重複部分の明るさを大幅に増大させることができ、その最大光度を十分に高めることができる。また、左右1対の配光パターンを分離して形成した場合においても、各配光パターンにおける両配光パターンの中心寄りの側端部の明るさを十分に確保することができる。そしてこれにより自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる。
【0017】
このように本願発明によれば、左右方向に回動可能な1対の灯具モジュールからの照射光によって左右1対の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる。
【0018】
上記構成において、第1灯具ユニットの構成として、第1配光パターンをそのカットオフライン寄りの位置に最大光度を有する配光パターンとして形成する構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0019】
すなわち、左右1対の配光パターンを部分的に重複させた状態で一体的に形成したとき、その重複部分の明るさをさらに増大させることができる。また、左右1対の配光パターンを分離して形成したとき、各配光パターンにおける両配光パターンの中心寄りの側端部の明るさをさらに増大させることができる。
【0020】
上記構成において、第2灯具ユニットの構成として、第2配光パターンを第1配光パターンの下端縁寄りの位置に形成する構成とすれば、車両前方走行路の近距離領域が明るくなりすぎてしまわないようにした上で、自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる。
【0021】
上記構成において、第1灯具ユニットの光源として発光ダイオードが用いられるとともに、第2灯具ユニットの光源としてレーザダイオードが用いられた構成とすれば、第2配光パターンを第1配光パターンよりも小さくて明るい配光パターンとして形成することが容易に可能となる。
【0022】
上記構成において、各灯具モジュールの構成として、第1灯具ユニットと第2灯具ユニットとが個別に点灯し得る構成とすれば、左右1対の配光パターンの形状を車両走行状況に応じて適宜変化させることができ、これにより自車ドライバの前方視認性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
図2】(a)は図1のIIa−IIa線断面図、(b)は図1のIIb−IIb線断面図
図3】上記車両用灯具からの照射光によって形成される左右1対の配光パターンを透視的に示す図(その1)
図4】上記左右1対の配光パターンの各々を、該配光パターンを構成する第1および第2配光パターンに分解して示す図
図5】上記配光パターンを透視的に示す図(その2)
図6】上記配光パターンを透視的に示す図(その3)
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。
【0025】
同図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、左右1対の灯具モジュール20L、20Rと、コントロールユニット50と、車両前方の光景を撮像するための車載カメラ52と、車速センサ54とを備えた構成となっている。
【0026】
左右1対の灯具モジュール20L、20Rは、車両前端部の左右両側に配置される灯具モジュールであって、左右対称の構成を有している。各灯具モジュール20L、20Rは、図示しないランプボディおよび透光カバーによって形成される灯室内に収容されている。
【0027】
各灯具モジュール20L、20Rは、左右に並んで配置された第1および第2灯具ユニット22A、22Bと、これらを支持する支持フレーム24と、この支持フレーム24と共に第1および第2灯具ユニット22A、22Bを鉛直軸線Axまわりに左右方向に回動させる回動機構26とを備えた構成となっている。
【0028】
コントロールユニット50には、車載カメラ52で撮像された画像データの信号と、車速センサ54からの車速信号とが入力されるようになっている。そして、コントロールユニット50は、これらの入力信号に基づいて、回動機構26の駆動制御を行うとともに、各灯具モジュール20L、20Rの第1および第2灯具ユニット22A、22Bの点消灯制御を個別に行うようになっている。
【0029】
上述したように左右1対の灯具モジュール20L、20Rは左右対称の構成を有しているので、以下においては左側(灯具正面視では右側)の灯具モジュール20Lの第1および第2灯具ユニット22A、22Bの構成について説明する。
【0030】
図2(a)は、図1のIIa−IIa線断面図であり、図2(b)は、図1のIIb−IIb線断面図である。
【0031】
同図にも示すように、第1および第2灯具ユニット22A、22Bは、いずれもパラボラ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0032】
すなわち、第1灯具ユニット22Aは、光源32Aと、この光源32Aからの出射光を前方へ向けて反射させるリフレクタ34Aと、これらを支持するベース部材36Aとを備えた構成となっている。
【0033】
この第1灯具ユニット22Aにおいては、その光源32Aとして白色発光ダイオードが用いられている。すなわち、この光源32Aは、白色発光ダイオードの発光チップによって構成されており、その発光面32Aaは上向きに配置されている。
【0034】
リフレクタ34Aは、光源32Aを上方側から覆うように配置されており、その反射面34Aaは複数の反射素子34Asで構成されている。そして、これら各反射素子34Asによって光源32Aからの光を反射制御するようになっている。
【0035】
ベース部材36Aは、水平面に沿って延びる板状の部材として構成されている。
【0036】
一方、第2灯具ユニット22Bは、光源32Bと、この光源32Bからの出射光を前方へ向けて反射させるリフレクタ34Bと、これらを支持するベース部材36Bとを備えた構成となっている。
【0037】
この第2灯具ユニット22Bにおいては、その光源32Bとしてレーザダイオードが用いられている。すなわち、この光源32Bは、レーザダイオード32B1から照射されるレーザ光によって白色光を発光する蛍光体で構成されており、その発光面32Baは上向きに配置されている。
【0038】
リフレクタ34Bは、光源32Bを上方側から覆うように配置されており、その反射面34Baは複数の反射素子34Bsで構成されている。そして、これら各反射素子34Bsによって光源32Bからの光を反射制御するようになっている。
【0039】
ベース部材36Bは、水平面に沿って延びる板状の部材として構成されている。このベース部材36Bには、レーザダイオード32B1からのレーザ光を光源32Bに照射するための開口部36Baが形成されている。
【0040】
図3、5および6は、本実施形態に係る車両用灯具10から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される左右1対の配光パターンPL、PRを透視的に示す図である。
【0041】
図3(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、各灯具モジュール20L、20Rが車両前方を向いた状態(すなわち回動機構26を駆動させていない状態)(以下「基準状態」という)で、かつ各灯具モジュール20L、20Rの第1および第2灯具ユニット22A、22Bがすべて点灯している状態で形成される配光パターンであって、ハイビーム用配光パターンとして機能するようになっている。
【0042】
左側の配光パターンPLは、左側の灯具モジュール20Lからの照射光によって形成される配光パターンであって、その第1灯具ユニット22Aからの照射光によって形成される第1配光パターンPL1と、その第2灯具ユニット22Bからの照射光によって形成される第2配光パターンPL2との合成配光パターンとして形成されている。
【0043】
一方、右側の配光パターンPRは、右側の灯具モジュール20Rからの照射光によって形成される配光パターンであって、その第1灯具ユニット22Aからの照射光によって形成される第1配光パターンPR1と、その第2灯具ユニット22Bからの照射光によって形成される第2配光パターンPR2との合成配光パターンとして形成されている。
【0044】
図4は、図3(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRの各々を、該配光パターンPL、PRを構成する第1配光パターンPL1、PR1および第2配光パターンPL2、PR2に分解して示す図である。
【0045】
図4(a)に示す第1配光パターンPL1は、灯具正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線に対して右側に小さく拡がるとともに左側に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0046】
この第1配光パターンPL1の右端縁(すなわち左右1対の配光パターンPL、PRの中心側の端縁)は、上下方向に延びるカットオフラインCLLとして形成されている。その際、このカットオフラインCLLは鉛直方向に延びるように形成されている。
【0047】
この第1配光パターンPL1は、上下方向に関してはH−Vを通る水平線であるH−H線に対して下方側よりも上方側に大きく拡がるように形成されている。
【0048】
この第1配光パターンPL1は、そのカットオフラインCLL寄りの位置に最大光度ML1を有している。具体的には、この最大光度ML1の位置は、H−Vに対して僅かに右側でかつやや上方側の位置に設定されている。
【0049】
図4(b)に示す第2配光パターンPL2は、第1配光パターンPL1よりも小さくて明るい配光パターンとして、カットオフラインCLL寄りの位置に形成されている。
【0050】
その際、この第2配光パターンPL2は、やや横長のスポット状の配光パターンとして、第1配光パターンPL1の内部に含まれる位置関係で、該第1配光パターンPL1の下端縁寄りの位置に形成されている。
【0051】
具体的には、この第2配光パターンPL2は、その中心位置がH−Vに対して僅かに左側の位置に設定されており、その最大光度ML2の位置がH−Vに対してやや右側の位置に設定されている。
【0052】
この第2配光パターンPL2は、第2灯具ユニット22Bの光源32Bとしてレーザダイオードが用いられているため、極めて明るい配光パターンとして形成されている。
【0053】
図4(c)に示す第1配光パターンPR1は、V−V線に関して第1配光パターンPL1と左右対称の形状および光度分布で形成されている。
【0054】
すなわち、この第1配光パターンPR1は、その左端縁が上下方向に延びるカットオフラインCLRとして形成されており、このカットオフラインCLR寄りの位置に最大光度MR1を有している。
【0055】
図4(d)に示す第2配光パターンPR2は、V−V線に関して第2配光パターンPL2と左右対称の形状および光度分布で形成されている。
【0056】
すなわち、この第2配光パターンPR2は、第1配光パターンPR1よりも小さくて明るい配光パターンとして、第1配光パターンPR1の下端縁寄りでかつカットオフラインCLR寄りの位置に形成されており、最大光度MR2の位置がH−Vに対してやや左側の位置に設定されている。
【0057】
図3(a)に示すように、左右1対の配光パターンPL、PRは、基準状態では、その一部がある程度重複した状態で形成されている。
【0058】
これら左右1対の配光パターンPL、PRは、全体としてV−V線を中心にして左右両側に拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0059】
その際、左右1対の配光パターンPL、PRは、上下方向に関してはH−H線の下方側よりも上方側に大きく拡がるように形成されるが、そのホットゾーン(すなわち高光度領域)HZはH−Vを中心とする極めて高光度なものとして形成されている。これは、各第1配光パターンPL1、PR1の最大光度ML1、MR1がV−V線の付近に位置しており、さらに、小さくて明るい各第2配光パターンPL2、PR2がH−V付近に位置していることによるものである。
【0060】
図3(a)に示すような左右1対の配光パターンPL、PRを形成することにより、高速での直線走行時に自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる。
【0061】
図3(b)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、各灯具モジュール20L、20Rを基準状態から左右両側に互いに離れる方向に所定量回動させたときに形成される配光パターンであって、図3(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRに対して、左側の配光パターンPLを左方向に移動させるとともに右側の配光パターンPRを右方向に移動させたものとなっている。その際、左側の配光パターンPLは、そのカットオフラインCLLがV−V線よりも左側に位置しており、右側の配光パターンPRは、そのカットオフラインCLRがV−V線よりも右側に位置している。
【0062】
図3(b)に示すような左右1対の配光パターンPL、PRを形成することにより、前走車2が存在する場合であっても、その左右両側に1対のカットオフラインCLL、CLRを位置させることにより、前走車2のドライバにグレアを与えてしまうことなく、その左右両側の領域を照射することができ、これにより自車ドライバの前方視認性を高めることができる。その際、各配光パターンPL、PRは、そのカットオフラインCLL、CLR寄りの位置にホットゾーンHZL、HZRを有しているので、1対のカットオフラインCLL、CLRの左右両側の領域を明るく照射することができる。
【0063】
また、自車と前走車2との車間距離に応じて、両カットオフラインCLL、CLRの間隔を変化させることにより、前走車2のドライバにグレアを与えてしまうことなく、自車ドライバの前方視認性を最大限に高めることができる。
【0064】
なお、前走車2の位置検出は、コントロールユニット50において、車載カメラ52から入力される前走車2の画像データに基づいて前走車2の幅およびその中心位置等を算出することにより行われるようになっている。そして、コントロールユニット50は、この位置検出の結果に基づいて各灯具モジュール20L、20Rの回動機構26を駆動して、前走車2の両側近傍に両カットオフラインCLL、CLRを位置させるようになっている。なお、対向車が存在する場合にも同様の制御が行われるようになっている。
【0065】
図5(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、各灯具モジュール20L、20Rを基準状態から左右両側に互いに離れる方向に僅かに回動させたときに形成される配光パターンであって、図3(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRに対して、左側の配光パターンPLを左方向に僅かに移動させるとともに右側の配光パターンPRを右方向に僅かに移動させたものとなっている。その際、左側の配光パターンPLは、そのカットオフラインCLLがV−V線よりも僅かに右側に位置しており、右側の配光パターンPRは、そのカットオフラインCLRがV−V線よりも僅かに左側に位置している。これにより、左右1対の配光パターンPL、PRは、その一部が僅かに重複した状態で形成されている。
【0066】
図5(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRにおいては、その重複範囲が狭いので、そのホットゾーンHZの明るさは減少するがその横幅を大きくすることができ、また、左右1対の配光パターンPL、PR全体の左右方向の拡がりも大きくすることができる。
【0067】
図5(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、郊外の道路を低速で走行するような場合に特に適したものとなっている。
【0068】
図5(b)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、図5(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRに対して第2配光パターンPL2、PR2を欠落させた配光パターンであって、各灯具モジュール20L、20Rの第2灯具ユニット22Bを消灯することによって形成される配光パターンである。
【0069】
図5(b)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、図5(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRに対してそのホットゾーンの明るさがさらに減少するが、左右1対の配光パターンPL、PR全体の左右方向の拡がりは大きい状態に維持される。
【0070】
図5(b)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、市街地の道路を低速で走行する場合等に特に適したものとなっている。
【0071】
図6(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、各灯具モジュール20L、20Rを基準状態からいずれも右方向に僅かに回動させたときに形成される配光パターンであって、図3(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRを右方向に僅かに平行移動させたものとなっている。
【0072】
図6(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、緩いカーブを高速で走行する場合等に特に適したものとなっている。
【0073】
図6(b)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、図6(a)に示す左右1対の配光パターンPL、PRを右方向にさらに平行移動させた上で第2配光パターンPL2、PR2を欠落させることによって形成される配光パターンであって、各灯具モジュール20L、20Rを右方向にさらに回動させた上で各灯具モジュール20L、20Rの第2灯具ユニット22Bを消灯することによって形成される配光パターンである。
【0074】
図6(b)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、比較的急なカーブを低速で走行する場合等に特に適したものとなっている。
【0075】
図6(c)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、図6(b)に示す左右1対の配光パターンPL、PRに対して、右側の配光パターンPRを左側の配光パターンPLから離れてしまわない範囲内で右方向にさらに移動させることによって形成される配光パターンであって、右側の灯具モジュール20Rを右方向にさらに回動させることによって形成される配光パターンである。
【0076】
図6(c)に示す左右1対の配光パターンPL、PRは、急カーブを低速で走行する場合等に特に適したものとなっている。
【0077】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0078】
本実施形態に係る車両用灯具10は、左右1対の配光パターンPL、PRを形成するための1対の灯具モジュール20L、20Rを備えており、これら各灯具モジュール20L、20Rは左右方向に回動し得る構成となっているので、左右1対の配光パターンPL、PRを一体的にあるいは分離して形成することが可能となる。その際、左右1対の配光パターンPL、PRを分離した状態で、前走車2や対向車の位置に合わせて左右方向に移動させることにより、前走車2や対向車のドライバ等にグレアを与えてしまうことなく自車ドライバの前方視認性を確保することが可能となる。また、左右1対の配光パターンPL、PRを一体的に形成する際、両者を部分的に重複させるようにすれば、その重複部分の明るさを増大させることができる。
【0079】
その上で、各灯具モジュール20L、20Rは第1および第2灯具ユニット22A、22Bを備えており、第1灯具ユニット22Aからの照射光によって、左右1対の配光パターンPL、PRの中心側に上下方向に延びるカットオフラインCLL、CLRを有する第1配光パターンPL1、PR1を形成するとともに、第2灯具ユニット22Bからの照射光によって、第1配光パターンPL1、PR1よりも小さくて明るい第2配光パターンPL2、PR2をカットオフラインCLL、CLR寄りの位置に形成するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0080】
すなわち、各配光パターンPL、PRを、第1配光パターンPL1、PR1とそのカットオフラインCLL、CLR寄りに位置する小さくて明るい第2配光パターンPL2、PR2との合成配光パターンとして形成することができ、これによりカットオフラインCLL、CLR寄りの位置に高光度領域を形成することができる。
【0081】
したがって、左右1対の配光パターンPL、PRを一体的に形成する際、両者を部分的に重複させるようにすれば、その重複部分の明るさを大幅に増大させることができ、その最大光度を十分に高めることができる。また、左右1対の配光パターンPL、PRを分離して形成した場合においても、各配光パターンPL、PRにおける両配光パターンPL、PRの中心寄りの側端部の明るさを十分に確保することができる。そしてこれにより自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる。
【0082】
このように本実施形態によれば、左右方向に回動可能な1対の灯具モジュール20L、20Rからの照射光によって左右1対の配光パターンPL、PRを形成するように構成された車両用灯具10において、自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる。
【0083】
しかも本実施形態においては、各灯具モジュール20L、20Rの第1灯具ユニット22Aが、第1配光パターンPL1、PR1をそのカットオフラインCLL、CLR寄りの位置に最大光度ML1、MR1を有する配光パターンとして形成するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0084】
すなわち、左右1対の配光パターンPL、PRを部分的に重複させた状態で一体的に形成したとき、その重複部分の明るさをさらに増大させることができる。また、左右1対の配光パターンPL、PRを分離して形成したとき、各配光パターンPL、PRにおける両配光パターンPL、PRの中心寄りの側端部の明るさをさらに増大させることができる。
【0085】
また本実施形態においては、各灯具モジュール20L、20Rの第2灯具ユニット22Bが、第2配光パターンPL2、PR2を第1配光パターンPL1、PR1の下端縁寄りの位置に形成するように構成されているので、車両前方走行路の近距離領域が明るくなりすぎてしまわないようにした上で、自車ドライバの前方視認性を十分に高めることができる。
【0086】
さらに本実施形態においては、第1灯具ユニット22Aの光源32Aとして発光ダイオードが用いられるとともに、第2灯具ユニット22Bの光源32Bとしてレーザダイオードが用いられているので、第2配光パターンPL2、PR2を第1配光パターンPL1、PR1よりも小さくて明るい配光パターンとして形成することが容易に可能となる。
【0087】
また本実施形態においては、各灯具モジュール20L、20Rが、第1灯具ユニット22A、22Bと第2灯具ユニット22A、22Bとが個別に点灯し得るように構成されているので、左右1対の配光パターンPL、PRの形状を車両走行状況に応じて適宜変化させることができ、これにより自車ドライバの前方視認性を一層高めることができる。
【0088】
上記実施形態においては、各灯具モジュール20L、20Rの第1および第2灯具ユニット22A、22Bがいずれもパラボラ型の灯具ユニットとして構成されているものとして説明したが、そのうちの一方または双方を他の種類の灯具ユニット(例えばプロジェクタ型の灯具ユニットや直射型の灯具ユニット)で構成することも可能である。
【0089】
上記実施形態においては、第1灯具ユニット22Aの光源32Aとして発光ダイオードが用いられるとともに、第2灯具ユニット22Bの光源32Bとしてレーザダイオードが用いられているものとして説明したが、これ以外の種類の光源を採用することも可能である。
【0090】
上記実施形態においては、1対の灯具モジュール20L、20Rが車両前端部の左右両側に配置されているものとして説明したが、これ以外の配置を採用することも可能である。
【0091】
上記実施形態においては、車載カメラ52および車速センサ54がコントロールユニット50に接続されているものとして説明したが、さらにナビゲーション装置が接続された構成とし、そのナビゲーションデータも利用して回動機構26の駆動制御および第1および第2灯具ユニット22A、22Bの点消灯制御を行うようにすることも可能である。
【0092】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0093】
2 前走車
10 車両用灯具
20L、20R 灯具モジュール
22A 第1灯具ユニット
22B 第2灯具ユニット
24 支持フレーム
26 回動機構
32A 発光ダイオードを用いた光源
32Aa、32Ba 発光面
34A、34B リフレクタ
34Aa、34Ba 反射面
34As、34Bs 反射素子
36A、36B ベース部材
32B レーザダイオードを用いた光源
32B1 レーザダイオード
36Ba 開口部
50 コントロールユニット
52 車載カメラ
54 車速センサ
Ax 鉛直軸線
CLL、CLR カットオフライン
HZ、HZL、HZR ホットゾーン
ML1、ML2、MR1、MR2 最大光度
PL、PR 配光パターン
PL1、PR1 第1配光パターン
PL2、PR2 第2配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6