(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素数18以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル30〜70重量部と、炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル30〜70重量部と、極性モノマー0〜10重量部とを重合させて得られる、重量平均分子量が400,000〜800,000で、融点が35℃以上である側鎖結晶性ポリマーを含有する感温性粘着剤層を基材フィルムの少なくとも片面に設けた感温性粘着シートであって、
前記感温性粘着剤層は、JIS Z0237に準拠して測定したポリエチレンテレフタレートに対する23℃での粘着強度が0.6N/25mm以上であり、前記側鎖結晶性ポリマーの融点を超える温度での粘着強度が0.4N/25mm以下であることを特徴とする、セラミック電子部品のダイシング用感温性粘着シート。
【背景技術】
【0002】
セラミックコンデンサは、通常、セラミックの粉末とバインダーと溶剤の混合物を成形して得たセラミックグリーンシート(セラミック成形シート)に所定の内部電極を印刷し、これを台座上に積層・圧着し(積層工程)、ついで得られた積層体をダイシングソーにてチップ状に切断し(ダイシング工程)、この切断片を剥離させて(剥離工程)、焼成し、最後に切断片の端面に外部電極を形成して製造されている。
【0003】
上記積層工程後のダイシング工程では、切断された切断片が飛散しないように積層体が台座にしっかりと固定されていることが必要である。このため切断工程では、粘着シートを用いて積層体を台座上に固定している。一方、切断片をシートから剥離させる剥離工程では、粘着シートの粘着力を低下させる必要がある。
【0004】
特に、近時は、電子部品の小型化、高性能化に伴い、セラミック電子部品等の被加工物のダイシング工程においても、ダイシング精度の向上が求められている。すなわち、ダイシング時の精度向上のために強固定であり、その後、被加工物へのダメージ防止のため易剥離が可能な粘着テープが求められている。
【0005】
従来、粘着シートとしては、発泡テープ、UVテープ等の再剥離テープが使用されているが、室温での粘着剤の硬さの不足、すなわち貯蔵弾性率G´が低いことにより、ダイシング時に被加工物にズレが生じ、電子部品の形状精度が低下し、不良の原因となっている。
【0006】
このような問題を解決するために、融点以下で結晶化する側鎖結晶性ポリマーを含有する感温性粘着剤層に発泡剤を含有させた感温性粘着シートを使用することが提案されている(特許文献1)。すなわち、粘着剤層が側鎖結晶化可能ポリマーを含有しているため、積層工程では側鎖結晶性ポリマーが結晶状態で、粘着シート上にセラミックグリーンシートを積層することができ、切断工程では粘着シートを加熱して粘着性を高めてグリーンシートの積層体を粘着シート上に固定することができる。一方、ダイシング後の剥離工程では、粘着シートをさらに加熱して発泡剤を発泡させ、この状態で融点以下に冷却させることにより、粘着シートのアンカー効果が低減して切断片を剥離することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の感温性粘着テープは、発泡剤を含有しているために、ダイシング時に被加工物の浮きや、ズレ不良が発生しやすい。すなわち、発泡剤添加により、表面に凹凸が発生することにより密着性が低下し、ダイシング時に被加工物の浮きが発生する。また、発泡剤添加により23℃での弾性力が低下し、ダイシング時にズレが発生し、チップの形状不良、電極のズレの不良が発生する。浮きは、ダイシング時またはダイシング直後に、目視にて確認する。ズレは、チップ剥離後、そのチップを顕微鏡にて観察し、形状の変形や電極のズレがないかを目視確認する。
【0008】
また、側鎖結晶化可能ポリマーを含有した粘着剤層を有する通常の粘着テープにおいては、融点以上での粘着剤層が硬いと、貼付け時のアンカー効果が低く、しかも室温時の粘着剤層も硬いと、室温での粘着力が不足し、ダイシング時に被加工物の浮きが発生しやすい。また、融点以上でも粘着剤層が硬いままで粘着力を発現するので、剥離時に電子部品にダメージを与えるおそれがある。
【0009】
【特許文献1】特開2006−241387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、室温でのセラミック電子部品のダイシング時には被加工物を浮きやズレなく強固に固定でき、剥離時には易剥離が可能なダイシング用感温性粘着シートおよびセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)炭素数18以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル30〜70重量部と、炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル30〜70重量部と、極性モノマー0〜10重量部とを重合させて得られる、分子量が400,000〜800,000で、融点が40℃以上である側鎖結晶性ポリマーを含有する感温性粘着剤層を基材フィルムの少なくとも片面に設けたことを特徴とする、セラミック電子部品のダイシング用感温性粘着シート。
(2)前記感温性粘着剤層の厚さが1〜100μmである(1)に記載の感温性粘着シート。
(3)前記感温性粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率が1×10
6〜1×10
9Paである(1)または(2)に記載の感温性粘着シート。
(4)前記感温性粘着剤層は、JIS Z0237に準拠して測定したポリエチレンテレフタレート(PET)に対する23℃での粘着強度が0.6N/mm以上であり、前記側鎖結晶性ポリマーの融点を超える温度での粘着強度が0.4N/mm以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の感温性粘着シート。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の感温性粘着シートにおける前記感温性粘着剤層の表面に、前記側鎖結晶性ポリマーが結晶化状態で
複数のセラミック成形シートを積層して積層体を得る工程と、前記側鎖結晶性ポリマーの融点以上
の温度に前記感温性粘着シートを加熱して、前記感温性粘着剤層の粘着力を発現させ、
ついで融点以下の温度に冷却して、前記積層体を前記感温性粘着シートに固定した状態で前記積層体をダイシングする工程と、ダイシング後、前記感温性粘着シートを
再び融点以上の温度に加熱して、ダイシングした切断片を前記感温性粘着剤層の表面から剥離させる工程と、を含むことを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイシング用感温性粘着シートは、室温でのダイシング時には被加工物を浮きやズレなく強固に固定でき、剥離時には易剥離が可能であるという効果がある。
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法によれば、高い形状精度でダイシングおよび剥離が可能であるので、セラミック電子部品の製造効率が向上するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、セラミック電子部品の製造に適用する本発明のダイシング用感温性粘着シートを詳細に説明する。この粘着シートは、融点以下で結晶化する側鎖結晶性ポリマーを含有する感温性粘着剤層を、基材フィルムの片面または両面に設けたものである。
なお、本発明において、セラミック電子部品とは、セラミックコンデンサ、セラミックインダクター等のように、セラミック成形シート(以下、グリーンシートということがある。)の積層体をダイシングする工程を経て製造される電子部品をいう。
【0014】
上記基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムの単層体またはこれらの複層体からなる厚さが5〜500μmのシートなどがあげられる。
【0015】
基材フィルムの表面には、粘着剤層に対する密着性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理等を施してもよい。
【0016】
この基材フィルムの少なくとも片面に感温性粘着剤層が塗布される。本発明における感温性粘着剤層とは、温度変化に対応して流動状態と結晶状態を可逆的に起こす粘着剤層をいう。本発明の場合、前記感温性粘着剤層に含有される側鎖結晶性ポリマーが融点以下では結晶化して、高弾性率になり、融点を超えると流動性を示し粘着性を発現するようになる性質を有する。
【0017】
すなわち、側鎖結晶性ポリマーが結晶化状態でセラミックグリーンシートを積層して積層体を得た後、側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度にして、側鎖結晶性ポリマーを流動させれば、感温性粘着剤層が粘着力を発現して、積層体を貼付することが可能になる。また、上記温度で側鎖結晶性ポリマーを流動させると、感温性粘着剤層が積層体の表面に存在する微細な凹凸形状によく追従するようになる。
この状態から感温性粘着剤層を融点未満の温度に冷却すると、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって、いわゆるアンカー効果が発現し、その結果、積層体を感温性粘着剤層の表面に固定することが可能になる。
【0018】
具体的には、前記側鎖結晶性ポリマーは融点が35℃〜70℃、好ましくは40〜60℃であるのがよい。融点が35℃以上であると、室温下で結晶化しているので、ダイシング時に強固な固定が可能となる。
【0019】
感温性粘着剤層を結晶状態または流動状態に切り換える設定温度は、グリーンシート積層体の切断時の温度等によって変更することができる。例えば、40℃未満の温度ではほぼ結晶状態にまたそれより上の温度では流動状態になるように、あるいは50℃未満の温度ではほぼ結晶状態に、またそれより上の温度では流動状態になるようにしてもよい。これら温度の変更は、以下に示すようにポリマー構造、接着剤層の処方等を変えることによって任意に行うことができる。
【0020】
本発明において「融点」とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていたポリマーの特定部分が無秩序状態となる温度をいう。本発明における融点は、示差熱走査熱量計(DSC)で、10℃/分の測定条件で測定される。
【0021】
側鎖結晶性ポリマーの具体例としては、炭素数18以上、好ましくは炭素数18〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル30〜70重量部と、炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル30〜70重量部と、極性モノマー0〜10重量部とを重合させて得られる重合体であるのがよい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。
【0022】
炭素数18以上の直鎖状アルキル基を側鎖とする(メタ)アクリル酸エステルとしては、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数18〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく用いられる。
炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートがあげられる。
極性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有エチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体などが用いられる。
【0023】
前記重合体の重量平均分子量は40万〜80万であるのがよい。重合体の重量平均分子量が40万未満であると、凝集力不足により積層体の切断工程においてカット精度が悪くなるおそれがある。また、重合体の重量平均分子量が80万を超えると、溶液粘度が高くなり塗工が困難になるおそれがある。なお、前記重量平均分子量は、前記重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0024】
また、上記感温性粘着剤層の凝集力を上げるために、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としてはイソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物等が挙げられる。また、感温性粘着剤層には、必要に応じて可塑剤、タッキファイヤー、フィラー等のような任意の成分を添加することができる。タッキファイヤーとしては、特殊ロジンエステル系、テルペンフェノール系、石油樹脂系、高水酸基価ロジンエステル系、水素添加ロジンエステル系等があげられる。
さらに融点以下の結晶状態で、積層体の最下層がよりよく密着するためにアクリル系、ゴム系の一般的な感圧性粘着剤を少量添加しても良い。
【0025】
感温性粘着剤層を基材フィルムに設けるには、一般的にはナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーターなどが多く用いられる。また、塗工厚みや材料の粘度によっては、グラビアコーター、ロッドコーターにより行うことができる。感温性粘着剤層の厚さは、1〜100μm、好ましくは5〜50μmであるのがよい。
【0026】
感温性粘着剤層は、側鎖結晶性ポリマーの融点以下である23℃における貯蔵弾性率が1×10
6〜1×10
9Paであるのが好ましい。弾性率が1×10
6Pa未満の場合には、凝集力が劣るため、グリーンシート積層体のダイシング時にズレが生じ、形状不良、電極のズレなどが発生しやすくなる。一方、弾性率が1×10
9Paを超えることは本発明ではあり得ない。
【0027】
また、感温性粘着剤層は、JIS Z0237に準拠して測定したポリエチレンテレフタレート(PET)に対する粘着強度を測定したとき、側鎖結晶性ポリマーの融点以下である23℃での粘着強度が0.6N/25mm以上であり、側鎖結晶性ポリマーの融点を超える温度で、同様にして測定した粘着強度が0.4N/25mm以下である。
23℃での粘着強度が0.6N/25mm以上であると、積層体のダイシング時において強い固定力により積層体の浮きやズレが発生する防止することができる。一方、側鎖結晶性ポリマーの融点を超える温度で粘着強度が0.4N/25mm以下であると、易剥離が可能となり、電子部品にダメージを与えるのを抑止することができる。
【0028】
次に、本発明の粘着シートを用いて積層セラミックコンデンサを製造する方法を説明する。
【0029】
まず、セラミック粉末のスラリーをドクターブレードで薄く延ばしてセラミックのグリーンシートを形成し、該グリーンシートの表面に電極を印刷する。次に、台座上に本発明の感温性粘着シートを介して複数のグリーンシートを積層してグリーンシートの積層体を形成する。このとき、粘着シートの温度は、前記側鎖結晶性ポリマーが融点以下の結晶化状態であるのがよい。
【0030】
次に、感温性粘着シートを融点以上に加熱して積層体を台座上に接着固定する。加熱は、例えば積層体に熱源(ヒータ板)を密着させて加熱するか、あるいは台座ごと熱雰囲気中に置くなどして行なう。加熱温度は、融点以上の比較的高い温度(例えば50〜80℃)であるのがよく、これにより側鎖結晶性ポリマーの流動性が高くなり、被加工物の凸凹に入り込み、積層体は感温性粘着シートの感温性粘着剤層に良好に粘着する。
【0031】
その後、融点以下に冷却することで側鎖結晶性ポリマーが結晶化し、感温性粘着剤層の硬さ(貯蔵弾性率)が大きく上昇し、強固に固定する。固定後、積層体を熱圧着し、ダイシングソー(切断刃)でダイシング(切断)する。ダイシングの際に、生シートがダイシングソーに押されて横方向へ移動するのを、感温性粘着シートによって抑えることができる。このようにして複数の切断片(チップ)を形成する。
このとき、本発明では、前記した特許文献1に記載のような発泡剤を含有していないので、融点以下の温度(室温等)での硬さ不足によるダイシング時のズレを解消することができる。すなわち、本発明における感温性粘着剤層は、発泡剤を含有しないことにより、融点以下の温度での粘着力および硬さが向上し、ダイシング時の積層体の浮きや、ズレを抑制することができる。すなわち、発泡剤は、結晶化した側鎖結晶性ポリマーより弾性率が低いため、融点以下の温度での硬さが低下し、また、表面に発泡剤による凹凸が発生することより、密着性を損ね、融点以下の温度での粘着強度が充分発現できなくなる。
【0032】
次に、感温性粘着シートを再び融点以上に加熱することで、粘着剤が大きく軟化し、易剥離となる。このとき、本発明における感温性粘着剤層は、発泡剤を含有していなくても、融点以上の弾性率の低下が大きいことより、ダメージなく剥離できる程度まで粘着強度が低下する。このようにして粘着シートの感温性粘着剤層を非粘着性にする。この状態で切断片を粘着シートから取り出し、その後、切断片を仮焼成工程、本焼成工程へ送って焼成し、端面に外部電極を形成してチップ形のセラミック電子部品が得られる。粘着シートを冷却する際には例えば自然放冷で剥離可能である。
【0033】
なお、上記では基材フィルムの片面に感温性粘着剤層を設けて粘着シートを構成したが、基材フィルムの他方の面にも粘着剤層を設けて両面粘着シートとして使用してもよい。この場合、基材フィルムの他方の面に積層される第2の粘着剤層としては、(1)市販の感圧接着剤層、(2)市販の感圧接着剤と本発明で使用する側鎖結晶性ポリマーおよび発泡剤との混合物からなる粘着剤層、あるいは(3)本発明で使用する感温性粘着剤層などを使用することができる。
【0034】
感圧接着剤としては、例えば天然ゴム接着剤;合成ゴム接着剤;スチレン/ブタジエンラテックスベース接着剤;ブロック共重合体型の熱可塑性ゴム;ブチルゴム;ポリイソブチレン;アクリル接着剤;ビニルエーテルの共重合体などがあげられる。
【0035】
上記ではセラミック電子部品として積層セラミックコンデンサの製造について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セラミックコンデンサ、セラミックインダクター、抵抗器、フェライト、センサー素子、サーミスタ、バリスタ、圧電セラミック等のセラミック電子部品の製造にも同様にして適用可能である。
【0036】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の感温性粘着シートを詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で「部」は重量部を意味する。
【0037】
下記の実施例および比較例で使用した共重合体は、以下の合成例1〜3で得た3種類である。
【0038】
(合成例1)
ベヘニルアクリレート(日本油脂社製)を45部、アクリル酸ブチル(日本触媒社製)を50部、アクリル酸を5部、およびパーブチルND(日本油脂社製)を0.5部の割合で酢酸エチル230部に混合し、55℃で4時間撹拌後、80℃に昇温し、ついで、パーへキシルPV(日本油脂社製)を0.5部添加し、2時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は65万、融点は43℃であった。
【0039】
(合成例2)
ベヘニルアクリレート(日本油脂社製)を45部、アクリル酸ブチル(日本触媒社製)を50部、アクリル酸2−エチルへキシル(2HEA,日本触媒社製)を5部、およびパーブチルND(日本油脂社製)を0.5部の割合で酢酸エチル230部に混合し、55℃で4時間撹拌後、80℃に昇温し、ついで、パーへキシルPV(日本油脂社製)を0.5部添加し、2時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は65万、融点は42℃であった。
【0040】
(合成例3)
ベヘニルアクリレート(日本油脂社製)を45部、アクリル酸メチル(日本触媒社製)を50部、アクリル酸を5部、およびパーブチルND(日本油脂社製)を0.5部の割合で酢酸エチル230部に混合し、55℃で4時間撹拌後、80℃に昇温し、ついで、パーへキシルPV(日本油脂社製)を0.5部添加し、2時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は65万、融点は54℃であった。
合成例1〜4の共重合体を表1に示す。
【実施例1】
【0042】
合成例1で得られた共重合体を、酢酸エチルを用いて固形分が30%になるように共重合体溶液を調製した。ついで、この共重合体溶液に、架橋剤としてアジリジン化合物(日本触媒社製のPZ-33)を前記共重合体100部に対して0.7部添加して感温性粘着剤組成物を得た。この感温性粘着剤組成物を基材フィルム(厚さ100μmのPETフィルム)の片面に塗布、乾燥させて厚さ40μmの感温性粘着剤層を形成した。
【実施例2】
【0043】
合成例1で得られた共重合体に代えて、合成例2で得られた共重合体を用い、架橋剤としてアジリジン化合物に代えてイソシアネート系化合物(日本ポリウレタン社製のL45)を前記共重合体100部に対して2.5部添加した以外は、実施例1と同様にして、基材フィルムの片面に厚さ40μmの感温性粘着剤層を形成した。
[比較例1]
【0044】
市販の発泡テープ(粘着剤層の厚さ:45μm)を使用した。この発泡テープの粘着剤層は、厚さ100μmの基材フィルム(PETフィルム)の表面に厚さ45μmの粘着剤層を設けたものである。
【0045】
[比較例2]
前記合成例1で得られた共重合体を、酢酸エチルを用いて固形分が30%になるように共重合体溶液を調製し、この共重合体溶液に、架橋剤としてアジリジン化合物(日本触媒社製のPZ-33)を前記共重合体100部に対して0.5部添加し、さらに発泡剤として熱膨張性マイクロスフェアー(EXPANCEL社製の「551DU40」、発泡温度:130℃、平均粒径:13μm)を固形分総量に対して40重量%となるように添加して感温性粘着剤組成物を得た。その他は実施例1と同様にして、基材フィルムの片面に厚さ40μmの感温性粘着剤層を形成した。
【0046】
[比較例3]
合成例1で得られた共重合体に代えて、前記合成例3で得られた共重合体を用い、架橋剤量を0.5重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、基材フィルムの片面に厚さ40μmの感温性粘着剤層を形成した。
【0047】
実施例および比較例で得られた各感温性粘着シートを以下の評価方法にて評価した。
(i)粘着強度
感温性粘着シートを23℃および60℃に加熱したときのPETフィルムに対する粘着強度をJIS Z0237に準じて測定した。すなわち、まず、60℃の雰囲気温度において、感温性粘着シートを、セパレータを上面にして、ステンレス鋼板に市販両面テープを介して固定した。次に、セパレータを取り外し、露出した感温性粘着剤層の表面に厚さ25μmのPETフィルムを貼着した。そして、ロードセルを用いて300mm/分の速度でPETフィルムを180°剥離して、60℃における180°剥離強度を評価した。次に、23℃の雰囲気温度に冷却し、同様にして180°剥離して、23℃における180°剥離強度を評価した。
(ii) 貯蔵弾性率
23℃および60℃における貯蔵弾性率(G’)をそれぞれ以下のようにして測定した。
装置名:Thermo SCIENTIFIC HAAKE MARS III、荷重:1.00N、周波数:1.00Hz、加熱速度:5℃/min、温度プロセス:0℃→150℃、測定厚み:800μm
(iii)ダイシング浮き
セラミックチップコンデンサー製造工程において、グリーンシートの積層体をダイシング後に、感温性粘着剤層の表面に貼り付けたグリーンシートの積層体に浮きがないか目視にて確認した。その結果、積層体に浮きがなかったものを○、一部浮きが発生したものを△、全面に浮きが発生したものを×とした。
(iv)ダイシングズレ
セラミックチップコンデンサー製造工程において、積層体をダイシング後、加温してチップを剥離し、そのチップを顕微鏡にて観察し、形状の変形や電極のズレがないかを目視確認した。その結果、形状の変形、電極のズレがなかったものを〇、形状の変形、電極のズレがあったものを×とした。
(v) 剥離性
セラミックチップコンデンサー製造における剥離工程において、全て剥がれたものを○、一部剥がれなかったものを△、全く剥がれなかったものを×とした。なお、ダイシングしたチップの剥離は、実施例1,2、比較例3では、感温性粘着剤層を60℃に加熱して行ったが、比較例1,2では、発泡剤を発泡させるために、さらに130℃まで加熱して行った。これらの試験結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から、以下の点が明らかになる。
比較例1は、融点以下(23℃)での貯蔵弾性率が不足しているために、ダイシング時にズレの問題がある。
比較例2は、融点以下(23℃)での粘着強度および貯蔵弾性率が不足しいるために、ダイシング時の浮き、ズレの問題がある。(23℃粘着力、弾性率不足)
比較例3は、融点以下(23℃)での粘着強度が不足しいるために、ダイシング時の浮きの問題があり、さらに剥離性にも問題がある。
これに対して、実施例1、2の感温性粘着シートは、ダイシング浮きや、ズレがなく、剥離性も良好であった。