特許第6514580号(P6514580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514580
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】保持装置および離間方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190425BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20190425BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   H01L21/68 P
   H01L21/68 B
   B25J15/06 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-124134(P2015-124134)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-11076(P2017-11076A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−241331(JP,A)
【文献】 特開2004−114234(JP,A)
【文献】 特開平08−148541(JP,A)
【文献】 特開2014−116480(JP,A)
【文献】 特開2012−191051(JP,A)
【文献】 特開2015−079853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B25J 15/06
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持体の一方の面側に面接触して当該被保持体を保持する保持面を有する保持手段と、
前記保持面に保持力を付与する保持力付与手段と、
前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給手段とを備えた保持装置において、
前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧手段と、
前記流体供給手段が供給した流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助手段とを有し、
前記離間補助手段は、前記被保持体における他方の面に弾性変形して面接触可能な当接面を有する押え部材を備え、当該押え部材は、前記流体供給手段によって供給された流体によって、前記当接面の形状を変形させてその中央部から外縁に向けて前記離間空間を順次拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
被保持体の一方の面側に面接触して当該被保持体を保持する保持面を有する保持手段と、
前記保持面に保持力を付与する保持力付与手段と、
前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給手段とを備えた保持装置において、
前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧手段と、
前記流体供給手段が供給した流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助手段とを有し、
前記離間補助手段は、前記被保持体における他方の面に弾性変形せずに面接触可能な当接面を有する押え部材を備え、当該押え部材は、前記流体供給手段によって供給された流体によって、前記当接面の形状を維持して前記離間空間を拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
被保持体の一方の面側に面接触させた保持面に保持力を付与して当該被保持体を保持した後、前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給工程を実施する離間方法において、
前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧工程と、
供給された前記流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助工程とを実施し、
前記離間補助工程では、前記被保持体における他方の面に弾性変形して面接触可能な当接面を有する押え部材を用い、前記流体供給工程によって供給された前記流体によって、前記当接面の形状を変形させてその中央部から外縁に向けて前記離間空間を順次拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする離間方法。
【請求項4】
被保持体の一方の面側に面接触させた保持面に保持力を付与して当該被保持体を保持した後、前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給工程を実施する離間方法において、
前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧工程と、
供給された前記流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助工程とを実施し、
前記離間補助工程では、前記被保持体における他方の面に弾性変形せずに面接触可能な当接面を有する押え部材を用い、前記流体供給工程によって供給された前記流体によって、前記当接面の形状を維持して前記離間空間を拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする離間方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置および離間方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸引口に被保持体が噛み込んでいたり、被保持体と保持面とが密着していたりしていても、被保持体と保持面との間に気体を供給してそれらを縁切りすることで、被保持体にストレスを与えることなく当該被保持体を保持面から取り去ることができる保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−174077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の吸着保持装置10では、ウエハ保持体H(被保持体)と吸着面28(保持面)との間における一部のみから気体が抜けてしまう場合があり、ウエハ保持体Hと吸着面28との全体的な縁切りが行えないという不都合を発生する。ここで、特許文献1の場合、ウエハ保持体Hの外縁部を吸着面28から強制的に離間させる距離を大きくすればよいが、この場合、ウエハ保持体Hの湾曲が必要以上に大きくなり、当該ウエハ保持体Hを構成する脆弱な半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する場合がある)を損傷させてしまうという別の不都合を発生する。
【0005】
本発明の目的は、被保持体を損傷させることなく、確実に被保持体と保持面との縁切りを行うことができる保持装置および離間方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、被保持体の一方の面側に面接触して当該被保持体を保持する保持面を有する保持手段と、前記保持面に保持力を付与する保持力付与手段と、前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給手段とを備えた保持装置において、前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧手段と、前記流体供給手段が供給した流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助手段とを有し、前記離間補助手段は、前記被保持体における他方の面に弾性変形して面接触可能な当接面を有する押え部材を備え、当該押え部材は、前記流体供給手段によって供給された流体によって、前記当接面の形状を変形させてその中央部から外縁に向けて前記離間空間を順次拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする保持装置である。
【0007】
本発明の他の態様は、被保持体の一方の面側に面接触して当該被保持体を保持する保持面を有する保持手段と、前記保持面に保持力を付与する保持力付与手段と、前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給手段とを備えた保持装置において、前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧手段と、前記流体供給手段が供給した流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助手段とを有し、前記離間補助手段は、前記被保持体における他方の面に弾性変形せずに面接触可能な当接面を有する押え部材を備え、当該押え部材は、前記流体供給手段によって供給された流体によって、前記当接面の形状を維持して前記離間空間を拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする保持装置である。
【0008】
本発明の他の態様は、被保持体の一方の面側に面接触させた保持面に保持力を付与して当該被保持体を保持した後、前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給工程を実施する離間方法において、前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧工程と、供給された前記流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助工程とを実施し、前記離間補助工程では、前記被保持体における他方の面に弾性変形して面接触可能な当接面を有する押え部材を用い、前記流体供給工程によって供給された前記流体によって、前記当接面の形状を変形させてその中央部から外縁に向けて前記離間空間を順次拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする離間方法である。
【0009】
本発明の他の態様は、被保持体の一方の面側に面接触させた保持面に保持力を付与して当該被保持体を保持した後、前記保持面と被保持体との間に流体を供給し、前記保持面と被保持体との間に離間空間を形成して前記保持面から前記被保持体を離間させる流体供給工程を実施する離間方法において、前記被保持体の外縁部を押圧して当該被保持体の外縁部から前記流体が流出することを防止する押圧工程と、供給された前記流体によって、前記被保持体が前記保持面から離間する離間量を制限する離間補助工程とを実施し、前記離間補助工程では、前記被保持体における他方の面に弾性変形せずに面接触可能な当接面を有する押え部材を用い、前記流体供給工程によって供給された前記流体によって、前記当接面の形状を維持して前記離間空間を拡大し、前記保持面から前記被保持体を離間させる補助を行うことを特徴とする離間方法である。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、被保持体の外縁部を押圧して保持面と被保持体との間に供給された流体が被保持体の外縁部から流出することを防止するので、被保持体を損傷させることなく、確実に被保持体と保持面との縁切りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る保持装置を示す断面図。
図2】第1実施形態に係る保持装置の動作説明図。
図3】第2実施形態に係る搬送装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態に係る保持装置を図面に基づいて説明する。
なお、各実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、当該所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」が紙面に直交する手前方向であってY軸の矢印方向で「後」がその逆方向とする。
なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態で説明した同様の構成および同様の動作は、適宜省略または簡略化する。
【0013】
[第1実施形態]
図1において、保持装置10は、被保持体WKの一方の面(下面)側に面接触して当該被保持体WKを保持する保持面21Cを有する保持手段20と、保持面21Cに保持力としての吸引力を付与する減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段からなる保持力付与手段30と、保持面21Cと被保持体WKとの間に流体としての気体を供給し、保持面21Cと被保持体WKとの間に離間空間SP(図2(C)参照)を形成して保持面21Cから被保持体WKを離間させる加圧ポンプやタービン等の加圧手段からなる流体供給手段40と、被保持体WKの外縁部を押圧して当該被保持体WKの外縁部から気体が流出することを防止する押圧手段50と、流体供給手段40が供給した気体によって、被保持体WKが保持面21Cから離間する離間量を制限する離間補助手段60とを備えている。
【0014】
保持手段20は、保持力付与手段30および流体供給手段40に連通するチャンバ21Aがその内部に形成され、吸引口21Bを介してチャンバ21Aに連通する保持面21Cが形成された保持テーブル21を備えている。
【0015】
押圧手段50は、図示しない直動モータや多関節ロボット等の駆動機器によって移動可能とされ、貫通孔51Aを有する基板51と、基板51の外縁側下方に設けられ、弾性変形可能な閉ループ状の当接体52とを備えている。
【0016】
離間補助手段60は、基板51の上面に保持された駆動機器としての直動モータ61と、基板51に形成された貫通孔51Bを貫通する直動モータ61の出力軸61Aに保持された保持プレート62と、保持プレート62に保持され、被保持体WKにおける他方の面(上面)に弾性変形して面接触可能な当接面63Aを有する押え部材63とを備えている。当接面63Aは、外縁部に対して中央部が球面形状に窪むとともに、その中央部に保持プレート62および押え部材63を貫通する貫通孔63Bが形成されている。本実施形態の場合、当接面63Aの外縁部に対する中央部の窪みの量は、1mmに設定される。
【0017】
次に、第1実施形態における保持装置10の動作について説明する。
先ず、図1中実線で示す各部材が初期位置で待機する保持装置10に対し、人手または多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段によって、被保持体WKの一方の面を保持面21C上に載置する。すると、保持力付与手段30が減圧手段を駆動し、チャンバ21A内を減圧して保持面21Cで被保持体WKを吸着保持し、当該チャンバ21A内が所定の減圧状態となったことが圧力センサやロードセル等の図示しない圧力検知手段によって検知されると、減圧手段の駆動を停止する。その後、被保持体WKに対して所定の処理を施す工程が実施される。
【0018】
被保持体WKに対する所定の処理が完了すると、押圧手段50が図示しない駆動機器を駆動し、図2(A)に示すように、被保持体WKの外縁部を当接体52で押圧した後、駆動機器の駆動を停止する。そして、離間補助手段60が直動モータ61を駆動し、図2(B)に示すように、当接面63Aを被保持体WKの他方の面に対して押し付けて密着させた後、直動モータ61の駆動を停止する。このとき、被保持体WKと当接面63Aとの間に存在する気体(大気)は、貫通孔63B、51Aから抜ける。その後、流体供給手段40が加圧手段を駆動し、チャンバ21A内に気体を供給して当該チャンバ21A内が大気圧よりも高い所定の圧力状態となったことが図示しない圧力検知手段によって検知されると、加圧手段の駆動を停止する。
【0019】
次いで、離間補助手段60が直動モータ61を駆動し、図2(C)に示すように、押え部材63を上昇させると、押え部材63は、流体供給手段40によって供給された気体によって、当接面63Aの形状を変形させてその中央部から外縁に向けて離間空間SPを順次拡大し、保持面21Cから被保持体WKを離間する補助を行う。その後も押え部材63を上昇させ続けると、図2(D)に示すように、当接体52で押圧された被保持体WKの外縁部の位置まで離間空間SPが拡大する。これにより、被保持体WKと保持面21Cとが密着していたとしても、当該被保持体WKにストレスを与えることなく当該被保持体WKを保持面21Cから離間させることができる。このとき、被保持体WKの外縁部が当接体52によって押圧されているので、被保持体WKの外縁部から気体が流出することはなく、従来のように、被保持体WKと保持面21Cとの間における一部のみから気体が抜けてしまい、被保持体WKと保持面21Cとの全体的な縁切りが行えなくなるという不都合は発生しない。さらに、押え部材63で被保持体WKの変位が規制されるので、従来のように、被保持体WKの湾曲が必要以上に大きくなることがなく、被保持体WKが脆弱なものであったり、保持シート上に脆弱なウエハが貼付されたもの等であったりしても、それらが破損することはない。
【0020】
その後、離間空間SPが当接体52で押圧された外縁部まで拡大すると、保持手段20が図示しないバルブを開いてチャンバ21Aを大気圧にし、図2(E)に示すように、被保持体WKを、再び保持面21Cで保持する。このとき、加圧ポンプやタービン等の図示しない加圧手段や流体供給手段40等の上部加圧手段で、被保持体WKと当接体52と基板51とで形成される空間に流体としての気体を供給し、当接面63Aの外縁部と被保持体WKとの縁切りを行ってもよい。この場合、押圧手段50は、貫通孔51Aを開閉可能な電磁弁やシャッタ等の遮蔽手段を備えるとよい。その後、押圧手段50および離間補助手段60が図示しない駆動機器および直動モータ61を駆動し、各部材を初期位置に復帰させる。そして、被保持体WKは、人手または図示しない搬送手段によって次工程に搬送され、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0021】
以上のような第1実施形態によれば、被保持体WKの外縁部を押圧して保持面21Cと被保持体WKとの間に供給された流体が被保持体WKの外縁部から流出することを防止するので、被保持体WKを損傷させることなく、確実に被保持体WKと保持面21Cとの縁切りを行うことができる。
【0022】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の保持装置10Aは、被保持体WKを保持して搬送する搬送装置に適用され、当該搬送装置は、被保持体WKを保持する保持装置10Aが図示しない直動モータや多関節ロボット等の駆動機器によって移動可能とされている。
【0023】
保持装置10と保持装置10Aとの相違点は、保持面21Cに代えて、外縁部に対して中央部が球面形状に窪んだ保持面21Dを有する点と、押圧手段50に代えて、被保持体WKに所定の処理を施す載置面70A、70B上で被保持体WKの外縁部を押圧する押圧手段50Aが保持面21Dに設けられている点である。本実施形態の場合、保持面21Dの外縁部に対する中央部の窪みの量は、1mmに設定される。
【0024】
押圧手段50Aは、弾性変形可能な閉ループ状の当接体52Aにより構成されている。
【0025】
次に、第2実施形態における搬送装置の動作について説明する。
先ず、図示しない駆動機器を駆動し、図3(A)に示すように、載置面70A上に位置する被保持体WKの外縁部に当接体52Aを押圧し、駆動機器の駆動を停止する。次いで、保持力付与手段30が減圧手段を駆動し、図3(B)に示すように、被保持体WKを保持面21Dで吸着保持する。その後、図示しない駆動機器を駆動し、図3(C)、(D)に示すように、被保持体WKを載置面70B上に載置した後、当該載置面70B上で被保持体WKの外縁部を当接体52Aで押圧し、駆動機器の駆動を停止する。
【0026】
次いで、保持力付与手段30が減圧手段の駆動を停止すると、被保持体WKは、その自重で載置面70B上に落下するが、被保持体WKが吸引口21Bに噛み込んでいたり、保持面21Cと密着していたりする場合があるので、流体供給手段40が加圧手段を駆動し、チャンバ21A内に気体を供給する。これにより、図3(E)に示すように、保持面21Dと被保持体WKとの間に離間空間SPが形成され、被保持体WKが保持面21Dから確実に縁切りされ、載置面70B上に載置される。なお、被保持体WKと載置面70Bとの間に存在する気体(大気)は、載置面70Bの図示しない孔等から抜ける。次いで、流体供給手段40が加圧手段の駆動を停止した後、図示しない駆動機器を駆動し、保持装置10Aを被保持体WKから離間させ、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0027】
以上のような第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、保持力付与手段は、保持面に保持力を付与することが可能なものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせてその範囲内であればなんら限定されることはない(他の手段および工程についての説明は省略する)。
【0029】
保持手段20、20Aは、それらの内部に複数の隔室に分割されたチャンバを備えてもよい。このような場合、保持面21C、21Dから被保持体WKを離間させる際に、保持面21C、21Dの中央側から外縁側の隔室に向かって、または、外縁側から中央側の隔室に向かって順番に流体を供給し、離間空間SPを順次拡大して保持面21C、21Dから被保持体WKを離間させることができる。
保持手段20、20Aは、内部にチャンバ21Aが形成されていなくてもよく、吸引口21Bそれぞれが直接保持力付与手段30および流体供給手段40に連通する構成でもよい。
保持手段20、20Aは、ポーラス体により吸引口21Bが形成された保持面21C、21Dを有していてもよい。
保持面21C、21Dは、球面形状、ドーム形状、楕円体面形状、放物面形状、トロイダル形状、ハーフパイプ形状、自由曲面形状等の曲面形状、多角形面形状、プリズム形形状等の多角柱面形状、階段面形状等に窪んでいてもよい。
保持面21Dの外縁部に対する中央部の窪みの量は、1mm以上でもよいし、1mm以下でもよい。
【0030】
保持力付与手段30は、保持手段20、20A内に複数の隔室に分割されたチャンバを備えている場合、これら複数のチャンバを独立して減圧する構成でもよい。
保持力付与手段30は、被保持体WKの吸着保持中に、図示しない圧力検知手段の検出結果によりチャンバ21A内の圧力が所定の減圧状態となるように減圧手段を駆動してもよい。
保持力付与手段は、保持力としてのクーロン力、磁力、接着力等を付与して被保持体WKを保持する静電チャック、磁石、接着剤等であってもよい。
【0031】
流体供給手段40や図示しない上部加圧手段は、窒素ガス、酸素ガス、希ガス等の単体ガス、混合ガス、大気等の気体を供給するもの、水やオイル等の液体を供給するもの、ジェルを供給するもの、粉体を供給するもの、スチームを供給するもの等を採用することができる。このような場合、保持手段20、20Aは、保持面21C、21Dや被保持体WK上に残留した液体や粉体等の流体を除去する吸引装置、送風装置、乾燥装置等の除去手段を備えていてもよい。
流体供給手段40は、保持手段20、20A内に複数の隔室に分割されたチャンバを備えている場合、これら複数のチャンバに対して独立して流体を供給する構成でもよい。
流体供給手段40は、離間空間SPを形成中に、図示しない圧力検知手段の検出結果によりチャンバ21A内の圧力が所定の圧力状態となるように加圧手段を駆動してもよい。
【0032】
当接体52、52Aは、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材で構成されていてもよいし、樹脂、金属、ガラス等の弾性変形不能な部材で構成されていてもよいし、被保持体WKに当接する面のみがゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材を備えるようにしてもよい。
当接体52、52Aは、シボ加工等で保持面に凹凸を形成していてもよいし、フッ素やシリコン等を含むコーティング層を積層していてもよし、当接体52、52A自体をフッ素樹脂やシリコン樹脂等で形成してもよい。これにより、当接体52、52Aに被保持体WKが貼り付くことを防止することができる。
当接体52、52Aは、被保持体WKの外縁部を押圧できる形状であればどんな形状でもよく、例えば円形リング状、楕円形リング状、四角形等の多角形リング状、不定形リング状等のリング状、直線と曲線とが組み合わされた枠状等でもよい。
当接体52、52Aで押圧する被保持体WKの外縁(端部)まで離間空間SPを拡大することはできないので、当接体52はできるだけ被保持体WKの外縁を押圧する構成とすることが好ましい。
当接体52、52Aで押圧する被保持体WKの外縁部の位置まで離間空間SPが拡大した後(図2(D)、図3(D)の状態の後)、流体供給手段40が加圧手段を駆動し、チャンバ21A内を一瞬でさらに加圧し、当接体52、52Aで押圧された被保持体WKの外縁部から気体を放出するようにして被保持体WKの外縁部の縁切りを行ってもよい。この場合、チャンバ21A内を一瞬でさらに加圧することで、当接体52、52Aが上方に押し上げるように変形するようにしてもよいし、図示しない移送手段が駆動機器を駆動し、当接体52、52Aによる被保持体WKへの押圧力を減じるようにしたり、当接体52、52Aを被保持体WKから若干浮き上がるようにしたりしてもよい。
当接体52、52Aで押圧する被保持体WKの外縁部の位置まで離間空間SPが拡大した後(図2(D)、図3(D)の状態の後)、図示しない移送手段が駆動機器を駆動し、押圧手段50、50Aを保持面21C、載置面70Bの面内で回転させることで、被保持体WKの外縁部の縁切りを行ってもよい。
当接体52Aは、保持面21Dから突出していてもよいし、突出していなくてもよく、その突出量は、駆動機器やねじ回し機構等の図示しない突出量調整手段で任意に決定することができる。
【0033】
離間補助手段60は、流体供給手段40によるチャンバ21Aへの流体の供給に伴って直動モータ61を駆動し、当接面63Aを上昇させる構成でもよいし、直動モータ61を駆動させることなく、または、直動モータ61を用いることなく、流体供給手段40が供給した流体によって当接面63Aを変形させ、離間空間SPを拡大してもよい。
離間補助手段は、被保持体WKにおける他方の面に弾性変形せずに面接触可能な当接面を有する押え部材を採用してもよく、この場合、当該押え部材は、流体供給手段40によって供給された流体によって、当接面の形状を維持して離間空間SPを拡大し、保持面21Cから被保持体WKを離間する補助を行う。このような押え部材を用いた場合、保持面21Cから被保持体WKを離間させる際、弾性変形可能な当接面を有する押え部材を用いた場合と違い、被保持体WKの面形状を保って保持面21Cから被保持体WKを離間することができる。
保持プレート62は、金属、ガラス、セラミックス、高分子樹脂等の弾性変形不能な部材で構成してもよいし、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材で構成してもよいしなくてもよい。
当接面63Aは、球面形状、ドーム形状、楕円体面形状、放物面形状、トロイダル形状、ハーフパイプ形状、自由曲面形状等の曲面形状、多角形面形状、プリズム形形状等の多角柱面形状、階段面形状等に窪んでいてもよい。
当接面63Aの外縁部に対する中央部の窪みの量は、1mm以上でもよいし、1mm以下でもよい。
当接面63Aは、シボ加工等で凹凸を形成していてもよいし、フッ素やシリコン等を含むコーティング層を積層していてもよいし、当接面63A自体をフッ素樹脂やシリコン樹脂で形成してもよい。これにより、当接面63Aに被保持体WKが貼り付くことを防止することができる。
離間補助手段60は、あってもよいしなくてもよい。
【0034】
保持装置10、10A、搬送装置は、天地反転して配置したり横置きにしたりして、被保持体WKを保持するように構成してもよい。
保持面21C、載置面70A、70B上で被保持体WKに対して施す所定の処理は、例えば、被保持体WKが上面に保護シートが貼付され、下面に保持シートが貼付されたウエハである場合、保持面21C、載置面70A、70Bで保持シートを吸着保持した後、図示しない剥離手段で保護シートを剥離してもよいし、被保持体WKが1枚又は複数枚積層されたウエハ、紙、樹脂等のシート状部材である場合、当該被保持体WKに文字、写真、電極や配線等の導電パターン等を印刷してもよいし、被保持体WKに紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等のエネルー線硬化型樹脂が塗布されたものである場合、当該エネルー線硬化型樹を硬化されるようにしてもよいし、被保持体WKに導電性塗料、耐電防止塗料、防汚性塗料、防錆塗料、UVカット塗料等の機能性塗料等が塗布されたものである場合、当該機能性塗料を乾燥または安定化されるようにしたりしてもよく、被保持体WKに対してどんな処理を行ってもよいし、所定の処理を行わなくてもよい。
保持装置10Aは、図3(A)の状態で、被保持体WKの上面に面接触し、保持力付与手段30や流体供給手段40の減圧力や加圧力を当該被保持体WKに付与可能な貫通孔を有するスポンジや樹脂等の弾性変形が可能な緩衝手段を設けてもよい。これにより、被保持体WKが保持面21D側や載置面70B側に移動するときに当該被保持体WKに加わる衝撃を緩和することができる。
被保持体WKは、図1中二点鎖線で示すように、接着シートASの上面(または下面)にウエハWFが貼付されているものや、接着シートASの上面(または下面)にウエハWFとフレーム部材RFが貼付されているものでもよい。
図1中二点鎖線で示すように、接着シートASの上面にフレーム部材RFが貼付されている場合、押圧手段50は、フレーム部材RFを介して被保持体WKの外縁部を押圧すればよいし、フレーム部材RFがない場合、押圧手段50は、接着シートASの外縁部を押圧すればよい。
本発明における被保持体WK、接着シートAS、フレーム部材RF等の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよい。さらに、被保持体WKとしては、例えば、接着シート、樹脂シート、ゴムシート、紙、樹脂板、木板、鉄板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板、ガラス板等の単体、またはそれらを2以上積層した複合体であってもよい。また、被保持体WKとしては、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、電極基板、光ディスク等の情報記録基板または陶器等、任意の形態の部材や物品等も対象とすることができる。なお、接着シートは、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0035】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0036】
10・・・保持装置
20・・・保持手段
21B・・・吸引口
21C・・・保持面
30・・・保持力付与手段
40・・・流体供給手段
50・・・押圧手段
60・・・離間補助手段
63・・・押え部材
63A・・・当接面
SP・・・離間空間
WK・・・被保持体
図1
図2
図3