(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514688
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】デュアルモード化学ロケットエンジンのための酸化剤リッチ液体単元推進薬
(51)【国際特許分類】
F02K 9/44 20060101AFI20190425BHJP
C06B 43/00 20060101ALI20190425BHJP
C06D 5/00 20060101ALI20190425BHJP
C06B 47/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
F02K9/44
C06B43/00
C06D5/00 A
C06B47/00
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-515315(P2016-515315)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公表番号】特表2016-524672(P2016-524672A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】SE2014050617
(87)【国際公開番号】WO2014189450
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】1350612-6
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】509086095
【氏名又は名称】イーシーエイピーエス・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】アンフロ,キイェル
(72)【発明者】
【氏名】トルマーレン,ペーター
【審査官】
金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−537218(JP,A)
【文献】
特開2004−340148(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0266049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/42− 9/68
C06B 43/00,47/00−47/14
C06D 5/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADNおよびHANから選択される酸化剤を重量で70〜90%と、アンモニアを重量で0〜8%と、残部の水から成る、デュアルモード化学ロケットエンジンにおいて燃料リッチ液体単元推進薬とともに用いるための酸化剤リッチ液体単元推進薬。
【請求項2】
アンモニアを重量で1〜8%含む、請求項1に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
【請求項3】
アンモニアを重量で5〜8%含む、請求項2に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
【請求項4】
前記酸化剤を重量で70〜80%含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
【請求項5】
前記酸化剤がADNである、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
【請求項6】
ADNを約77%と、水を約17%と、アンモニアを約6%とを含む、請求項5に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
【請求項7】
前記酸化剤がHANである、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
【請求項8】
分離して貯蔵された、請求項1から7のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬と、燃料リッチ液体単元推進薬とを含む二元推進薬組み合わせ。
【請求項9】
前記燃料リッチ液体単元推進薬が、ADNに基づく、または、HANに基づく、請求項8に記載の二元推進薬組み合わせ。
【請求項10】
ADNまたはHANに基づく燃料リッチ液体単元推進薬と一緒の、二元推進薬運転でのロケットエンジンにおける、請求項1から7のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬の使用。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬が、燃料リッチ液体単元推進薬の分解から得られる高温の燃料リッチガスの流れへと注入され、それによって、前記酸化剤リッチ液体単元推進薬が分解され、前記燃料リッチガスと共に燃焼される、推力の発生のために前記酸化剤リッチ液体単元推進薬を分解する方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬が、燃料リッチ液体単元推進薬の分解から得られる高温の燃料リッチガスの流れへと注入され、それによって、酸化剤リッチ液体単元推進薬が分解され、前記燃料リッチガスと共に燃焼される、推力を発生する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主題の発明は、デュアルモード二元推進薬化学ロケットエンジンのためADNまたはHANに基づいた酸化剤リッチ液体単元推進薬に関する。このようなエンジンは、1)宇宙船の軌道上昇、軌道の操作と維持、姿勢制御、および軌道離脱、ならびに/または、2)ミサイル、打上げロケット、および宇宙往還機の推進安定、姿勢制御、およびロール制御のための航空宇宙用途で用いられる推進システムの一部であり得る。
【背景技術】
【0002】
デュアルモードロケット推進システムおよびデュアルモードロケットエンジン(スラスタとも称される)が、当分野で知られている。現在、多くの宇宙船が、より大きな推進運転のための二元推進薬エンジンと、およびより小さい推力のための、または最小のインパルスビットが重要であるときの単元推進薬エンジンとによるデュアルモード推進システムを用いている。当分野では、二元推進薬エンジンと単元推進薬エンジンとの両方に適した推進薬の選択は、非常に有毒性のあるいくつかの推進薬に限られている。このような二元推進薬は、モノメチルヒドラジン(MMH)および非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)など、ヒドラジンまたはその派生物を含んでいる。デュアルモードスラスタの例は、二次燃焼増幅スラスタ(SCAT:Secondary Combustion Augmented Thruster)と称されるスラスタである。デュアルモード能力(つまり、単元推進薬モードまたは二元推進薬モードのいずれかで運転する能力)を有する二元推進薬スラスタを備える二元推進薬デュアルモードロケット推進システムは、例えば米国特許第6,135,393号に記載されており、そこではヒドラジンが燃料として用いられ、好ましくは、四酸化窒素(NTO)が酸化剤として用いられる。
【0003】
高い性能を必要とする特定の推進システムについてのミッション要求は、一式の長所の形態によって定められる。最も重要な長所の形態のうちの1つは比推力(I
sp)であり、これは、このような推進システムのまさに目的である、宇宙船が達成できる最大の速度変化を表している。比推力は、推進薬質量流量の単位当たり、エンジンによって発生される推力として定義される。推力がニュートン(N)で測定されるとき、流量は1秒(s)当たりのキログラム(kg)で測定され、そして、比推力の測定の単位はNs/kgである。かなりの速度変化の要件のある中形から大形の宇宙船については、これは最も重要なパラメータである。寸法が限られる可能性のある小形の宇宙船については、推力密度、つまり、推進薬体積当たりのNsが、有力な長所の形態であり得る。別の長所の形態はロケットエンジンの推力であり、これは、操作がどのくらいの期間を要するのか、および、どのくらいの加速を提供するのかを決定する。さらに別のパラメータは、エンジンが発生できる最小または最小限のインパルスビット(Ns)であり、これは、操作がどれだけ正確に実施できるかを決定する。
【0004】
ヒドラジン(燃料)と四酸化窒素(酸化剤)との両方、およびそれらの派生物は、毒性、発癌性、および腐食性などが非常にあり、また、漏洩および排出の場合に引き起こし得る環境への深刻な影響に関する重大な懸念と関連付けられるため、人間にとって極めて有害である。そのため、それらの取り扱いおよび安全要件は、非常に厳しく、時間を取られ、費用が掛かる。
【0005】
ECHA(欧州化学機関:European Chemicals Agency)は、化学品およびその安全な使用についての欧州共同体規則であるREACH(化学品の登録、評価、認可および制限に関する規則:Registration,Evaluation,Authorisation and restriction of Chemicals)内で、ヒドラジンが新規の開発での使用について禁止され得ることを導く可能性のある非常に高い懸念の物質として、ヒドラジンを特定している。欧州宇宙機関(ESA:European Space Agency)による構想である、きれいな宇宙(Clean Space)は、従来の有害な推進薬の代用も求めている。
【0006】
フランスでは、宇宙船がもはや使われなくなったときに軌道から離脱されることを求める、宇宙デブリに関する宇宙活動法(Space Operation Act)という新しい法律もある。
【0007】
技術上の重大な成果は、多くの宇宙用途に対して単元推進薬としてヒドラジンを代用することが実現可能であることである。これは、LMP−103S単元推進薬混合物を含むHPGP(登録商標)技術(WO2012/166046に記載されている)と、典型的には0.5Nから200Nまでの範囲である対応するスラスタ(例えば、WO02/095207に開示されている)とを用いて成功裏に実施されている。A 1 N HPGP(登録商標)推進システムが、主要なPRISMA人工衛星において宇宙における地球軌道で数年にわたって運用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ヒドラジン、四酸化窒素、およびそれらの派生物の使用を回避するデュアルモード推進システムを可能にする推進薬を提供することが望ましい。しかしながら、これまで、実行可能なロケット推進システム、ロケットエンジン、および、先行技術の有害なヒドラジン推進薬と匹敵する性能のある対応する代替の推進薬は、実現されてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ADNおよびHANから選択される酸化剤を70〜90%と、アンモニアを0〜10%と、残部の水とを含む、危険有害性の低い酸化剤リッチ単元推進薬を開発し、この単元推進薬は、危険有害性の低い燃料リッチ液体単元推進薬との組み合わせで化学ロケットエンジンにおいて二元推進薬モード運転で用いられ得る。
【0010】
その結果、第1の態様では、本発明は、ADNまたはHANに基づく酸化剤リッチ液体単元推進薬に関する。
【0011】
適切なエンジンが、出願者の同時継続中の出願SE1350612−6、および、「Dual mode chemical rocket engine and dual mode propulsion system comprising the rocket engine」という名称の国際特許出願で開示されている。
【0012】
別の態様では、本発明は、ADNまたはHANに基づく燃料リッチ液体単元推進薬と一緒の、二元推進薬運転でのロケットエンジンにおける、本発明の酸化剤リッチ液体単元推進薬の使用に関する。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、本発明の酸化剤リッチ液体単元推進薬が、燃料リッチ液体単元推進薬の分解から得られる高温の燃料リッチガスの流れへと注入され、それによって、推力を増加するために、酸化剤リッチ液体単元推進薬が分解され、燃料リッチガスと共に燃焼される、推力の発生のために酸化剤リッチ液体単元推進薬を分解する方法に関する。
【0014】
関連する態様では、本発明は、本発明の酸化剤リッチ液体単元推進薬が、燃料リッチ液体単元推進薬の分解から得られる高温の燃料リッチガスの流れへと注入され、それによって、酸化剤リッチ液体単元推進薬が分解され、燃料リッチガスと共に燃焼される、推力を発生する方法に関する。
【0015】
本発明の酸化剤リッチ液体単元推進薬は、二元推進薬運転モードにおいて、LMP−103、LMP−103S、およびFLP−106(重量で64.6%のADN、重量で23.9%の水、および、重量で11.5%のMMF(N−メチルホルムアミド、モノ−メチル−ホルムアミドとも称される)の組成を有する)など、既存の燃料リッチ液体のADNに基づく単元推進薬の性能と、既存の燃料リッチ液体のHANに基づく単元推進薬の性能とを向上するために使用され得る。
【0016】
本発明の貯蔵可能な危険有害性の低い酸化剤リッチ液体単元推進薬を燃料リッチ液体単元推進薬と共に、適切なデュアルモード化学ロケットエンジンで二元推進薬モード運転において使用するとき、先行技術のデュアルモード化学推進システムと匹敵する性能(つまり、所与のシステム質量についての全力積の観点で)を持った推進システムが、先行技術の有害な推進薬の使用を回避しつつ実現できる。
【0017】
本発明の酸化剤リッチ液体単元推進薬の主な利点は、酸化剤リッチ液体単元推進薬の分解に対して触媒床を必要としないことである。燃料リッチ単元推進薬の分解について、燃料リッチ単元推進薬に対して現在使用されている既存の優れた実績のある触媒および触媒床が、本発明と共に使用できる。
【0018】
本発明は、非常に有害な貯蔵可能な液体推進薬を用いる従来のデュアルモード二元推進薬ロケット推進システムを、匹敵する性能を持つと共に大幅に低減された危険有害性と環境に優しい代替の推進薬システムで代用するための可能な技術を提供し、推進薬の取り扱いと燃料搭載作業とを大幅に軽減および容易化もする。
【0019】
本発明では、用語「単元推進薬」は、LMP−103Sなどの2つ以上の化合物を含み、したがって単元推進薬混合物と考えることができる単元推進薬を意味するために用いられている。
【0020】
さらなる利点および実施形態は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の酸化剤が使用され得る適切なデュアルモード化学ロケットエンジンを示す図である。
【
図2】本発明の酸化剤リッチ単元推進薬を注入するための手段125の部分的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の酸化剤リッチ単元推進薬は、ADNまたはHANを70〜90%と、アンモニアを0〜10%と、残部の水とを含む。
【0023】
本発明によれば、本発明の酸化剤リッチ単元推進薬は、第2の反応段階において、従来のADNまたはHANに基づいた液体単元推進薬など、燃料リッチ単元推進薬の燃焼から得られた燃料リッチガスを、さらに燃焼するために使用される。したがって、本発明の液体の酸化剤リッチ単元推進薬は、燃料リッチ液体単元推進薬と共に化学ロケットエンジンでの二元推進薬運転での使用のために意図されている。
【0024】
図1に示しているように、二元推進薬モードで運転できる適切なエンジンは、燃料リッチ単元推進薬のための一次反応室130と、本発明の酸化剤リッチ推進薬の分解のための二次反応室150とを備えることができ、一次反応室は、一次反応室の燃料リッチ酸化剤の分解からの燃料リッチガスが二次反応室へと流れることができるように、二次反応室へと連結されている。
【0025】
本発明の酸化剤リッチ単元推進薬は、例えば注入器といった、注入のための手段125を介して二次反応室150へと注入される。
【0026】
このようなエンジンでは、一次反応室における触媒は、反応性分解および燃焼化学種に曝され、現在の設計限界より高い温度で運転されるとき、スラスタの寿命を限定する要素となる。酸化剤リッチ単元推進薬を二次反応室へと注入することで、第1の反応室を出て行く燃料リッチガスは、酸化剤リッチ単元推進薬の存在によってさらに燃焼され、二次反応室における温度が大幅に上昇させられ得、一方、一次反応器における触媒の温度は、本質的に影響されないままとすることができる。したがって、特定の燃料リッチ単元推進薬のために現在使用されている既存の優れた実績のある触媒および触媒床が、このようなエンジンの一次反応器で使用できる。一次反応器は、ADNに基づいた液体単元推進薬のための、対応する液体ADN単元推進薬スラスタで現在使用されている従来の反応器、および、HANに基づいた液体単元推進薬のための、対応する液体HAN単元推進薬スラスタで現在使用されている従来の反応器と同様の反応器設計に基づくことができる。
【0027】
したがって、本発明の酸化剤リッチ単元推進薬があれば、既存の技術、特にはADN単元推進薬およびHAN単元推進薬のそれぞれの技術が、対応する燃料リッチ単元推進薬の燃焼のために使用できる。
【0028】
燃料リッチ単元推進薬混合物と酸化剤リッチ単元推進薬混合物とがそれぞれADNに基づいていることが、概して好ましい。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明の酸化剤リッチ単元推進薬は、例えばLMP−103、LMP−103S、およびFLP−106、特にはLMP−103Sなどの、燃料リッチ液体の水性ADNに基づく単元推進薬と共に使用されるものである。
【0030】
本発明の酸化剤リッチ単元推進薬は、二元推進薬モードで、第1の反応器を出て行く燃料リッチガスの達成可能な燃焼を最大化するために調合されている。原理上は、これは、燃料リッチ単元推進薬と酸化剤リッチ単元推進薬との全体の組成が、その全体の組成の最大で獲得可能なI
spに対応するように、本発明の酸化剤リッチ単元推進薬が調合されることになることを意味する。
【0031】
NASA−Glenn化学平衡計算プログラムCEA2で実施された計算によれば、二元推進薬モードにおける本発明の酸化剤リッチ単元推進薬を用いた化学ロケットエンジンの運転は、単元推進薬として使用されるだけのときのLMP−103Sに対して10%までの比推力の追加的な向上をもたらし、これは、非常に有害な従来の貯蔵可能な推進薬、つまり、MMHおよびNTOで運転される先行技術の二元推進薬エンジンの比推力より約10%小さい。さらに、LMP−103Sおよび本発明の酸化剤リッチADN混合物の組み合わせの推力密度は、従来の貯蔵可能な推進薬で運転される先行技術の二元推進薬エンジンの推力密度の94%までとなる。
【0032】
好ましくは、酸化剤リッチ単元推進薬混合物は、ADNまたはHANを重量で70〜80%含んでいる。アンモニアは、重量で1〜10%、より好ましくは重量で5〜10%、特に好ましくは重量で5〜8%の量で好ましくは含まれている。100%までの残部は水である。
【0033】
デュアルモード化学ロケットエンジンでの使用のための酸化剤リッチADNに基づく特に好ましい単元推進薬は、ADNを重量で約77%と、水を重量で約17%と、アンモニアを重量で約6%とを含む。
【0034】
図1に示したエンジン200を参照しつつ、本発明の酸化剤の運用および使用を、例としてより詳細にここで説明する。
【0035】
ロケットエンジン200は、一連の冗長な流れ制御弁111、および、推進薬供給管121が続く、燃料リッチ単元推進薬のための1つの入口ポート101と、一連の冗長な流れ制御弁112、および、推進薬供給管122が続く、酸化剤リッチ推進薬のための1つの入口ポート102とを備えている。
【0036】
二元推進薬モードでは、燃料リッチ単元推進薬LMP−103Sが、注入器110を介して一次反応室130へと注入され、そこで推進薬は熱/触媒的に分解され(ADNに基づいた単元推進薬の分解は、WO02/095207に開示されている)、約1,600℃までの熱を生成する発熱反応と、二次反応室150へと流れる燃料リッチガスとを引き起こす。本発明の酸化剤リッチ単元推進薬(約77%のADN、約17%の水、約6%のアンモニアの組成)は、第2の注入器125を用いて、一次反応室130の下流で二次反応室150へと注入される。注入の手段125の部分的な拡大を
図2に示す。二次反応室150では、本発明の酸化剤リッチ単元推進薬が霧化および分解され、それによって、二次反応室150で、一次反応室130からの燃料リッチガスと混合する酸素の余剰を発生する。二次発熱燃焼が二次反応室で起こり、滞留ガス温度は、排気ガスがノズル170を通じて加速されることで推力を発生する前に、燃料効率、つまり、比推力の観点において、エンジンの性能を高める約2,300℃まで、大幅にさらに上昇させられる。
【0037】
本明細書ではデュアルモード化学ロケットエンジンを参照して主に説明したが、本発明の酸化剤リッチ単元推進薬は、二元推進薬モードのみの運転のために設計された同様の化学ロケットエンジンでも使用できる。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
ADNおよびHANから選択される酸化剤を重量で70〜90%と、アンモニアを重量で0〜10%と、残部の水とを含む、デュアルモード化学ロケットエンジンにおいて用いるための酸化剤リッチ液体単元推進薬。
[形態2]
アンモニアを重量で1〜10%、より好ましくは5〜10%、より好ましくはアンモニアを重量で5〜8%含む、形態1に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
[形態3]
前記酸化剤を重量で70〜80%含む、形態1または2に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
[形態4]
前記酸化剤がADNである、形態1から3のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
[形態5]
ADNを約77%と、水を約17%と、アンモニアを約6%とを含む、形態4に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
[形態6]
前記酸化剤がHANである、形態1から3のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬。
[形態7]
分離して貯蔵された、形態1から6のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬と、燃料リッチ液体単元推進薬とを含む二元推進薬組み合わせ。
[形態8]
前記燃料リッチ液体単元推進薬が、ADNに基づく、または、HANに基づく、形態7に記載の二元推進薬組み合わせ。
[形態9]
ADNまたはHANに基づく燃料リッチ液体単元推進薬と一緒の、二元推進薬運転でのロケットエンジンにおける、形態1から6のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬の使用。
[形態10]
形態1から6のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬が、燃料リッチ液体単元推進薬の分解から得られる高温の燃料リッチガスの流れへと注入され、それによって、前記酸化剤リッチ液体単元推進薬が分解され、前記燃料リッチガスと共に燃焼される、推力の発生のために前記酸化剤リッチ液体単元推進薬を分解する方法。
[形態11]
形態1から6のいずれか一項に記載の酸化剤リッチ液体単元推進薬が、燃料リッチ液体単元推進薬の分解から得られる高温の燃料リッチガスの流れへと注入され、それによって、酸化剤リッチ液体単元推進薬が分解され、前記燃料リッチガスと共に燃焼される、推力を発生する方法。