(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項10〜16のいずれか1項に記載の式(I)の配位子を、銅(II)、銅(I)、ガリウム(III)、ジルコニウム(IV)、テクネチウム(III)、インジウム(III)、レニウム(VI)、アスタチン(III)、ビスマス(III)、鉛(II)、アクチニウム(III)、イットリウム(III)、ルテチウム(III)、サマリウム(III)、テルビウム(III)およびホルミウム(III)を含む群から選択される金属カチオンと反応させる工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のキレートの製造方法。
【背景技術】
【0002】
シクラム(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン)の誘導体などのテトラアザ大環状化合物は、医学、特に核医学などの多くの分野(放射性元素または鉛などの金属で汚染された流出物の浄化、触媒、固液抽出および液液抽出、または微量の金属カチオンの検出)において重大な関心が寄せられている。本発明は、全てのこれらの適用分野、特に核医学に関する。
【0003】
核医学では、治療薬または造影剤として使用される放射性医薬品は、放射性元素のキレートを含む場合が多い。放射性医薬品の効率を高めるために、放射線の部位特異的送達を誘導するために標的生体分子をキレート部分に付加して二官能性キレート剤(BCA)を得ることがある。BCAを得るためには、金属キレート剤の構造中に適当な結合基を導入して、放射性同位体で標識する前または後に生体共役反応を可能にする必要がある。標的薬は、例えば、抗体、ハプテンまたはペプチドであってもよい。放射性核種の性質に応じて、例えばPETイメージング(陽電子放射断層撮影法)、SPECT(単一光子放射型コンピューター断層撮影法)またはRIT(放射免疫療法)を行うことができる。
【0004】
核医学での適用のために、キレートは、このように生物学的ベクターに生体共役反応で結合すると共に放射性核種を捕捉して安定な錯体を形成し、金属の生物体内への放出を防止するものでなければならない。さらに、放射性エミッタを使用する場合、放射性核種の半減期は限られているため、速度的制約を考慮しなければならない。
【0005】
dota(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)は、テトラN−官能化サイクレンである(スキーム1)。スキーム1では、dotaを「H
4dota」と称し、「dota」の前に指定されている4つの水素原子は、「COOH」の形態で4つのカルボン酸官能基を有するために大環状分子の4つのアミンをプロトン化しなければならないという事実を反映している。カルボン酸官能基を含む大環状分子についての記載に沿って同じ命名法を使用する。
【0006】
dotaは、MRIイメージングのためのガドリニウム(III)を錯化するために最も使用されている配位子である。dotaは、例えば
111In、
68Ga、
149Tb、
213Bi、
212Bi、
212Pb、
64Cuまたは
67Cuなどの核医学で一般に使用される他の金属を錯化することもできる。dotaの誘導体は今日では広く研究されている(スキーム1)。
【化1】
【0007】
核医学において潜在的に有用な金属の範囲のうち、銅は、異なる半減期時間を有する数種の放射性核種の存在および画像診断または治療適用に適した発光特性により、多くの関心が寄せられている。最も関心の高い核種は、放射線療法のための
67Cu(t
1/2=62.0時間、β
−100%、E
max=0.577MeV)、および陽電子放射断層撮影法(PET)および放射線療法の両方法ための
64Cu(t
1/2=12.7時間、β
+17.4%、E
max=0.656MeV、β
−39.6%、E
max=0.573MeV)である。銅は主に、4〜6の配位数を有する錯体を形成するためにアミンおよびアニオン性カルボン酸などの供与基を好む二価の金属カチオンとして存在する。多くの場合、金属カチオンを完全に取り囲むような四角錐形、三方両錐形または八面体型を提供する高い配位数が通常好ましい。銅錯化のための使用が成功している広範囲の非環式および環式配位子の中では、N付加された配位アームを有するテトラアザ大環状分子ファミリーが、その銅キレート化効率および汎用性により注目を集めている。
【0008】
銅のように、ガリウムは特に八面体型の形態における高い配位数を好み、N付加された配位アームを有するテトラアザ大環状分子をそのキレート化のために使用することができる。核イメージングのための最も関心の高い核種は、陽電子放射断層撮影法(PET)のための
68Ga(t
1/2=68分、β
+100%、E
max=2.921MeV)である。
【0009】
以下の要件は、核医学で使用することを目的とした最適化されたキレートのための規格として当該技術分野で一般に認められている。
a)大部分の放射性核種が生成される酸性条件に関わらない、放射性核種半減期の時間に対する速いメタル化速度
b)非常に良好な熱力学的安定性
c)生体媒質中に多量に存在するか、
64Cuなどの放射性核種生成の副生成物として存在する他の金属、特にZn
2+に対する不活性
d)速度論的不活性
e)例えば最初にキレート化された銅(II)の還元型としての銅(I)錯体の安定性などの、キレート化金属の生体媒質における還元に対する安定性
【0010】
錯体のd−d遷移帯の増加する強度を測定することにより、紫外可視分光法を用いてメタル化速度(a点)を決定してもよい。また可能であれば、すなわち金属が常磁性であるか否かに応じて、NMRによりメタル化速度を決定してもよい。好適なメタル化速度は、キレートを形成するために使用される放射性核種の半減期によって決まる。
【0011】
錯体の安定度定数、特に結合定数KおよびpK(すなわちlogK)を決定することにより、熱力学的安定性(b点)を評価してもよい。電位差測定または分光法によって安定度定数を測定してもよい。熱力学的安定性を先行技術の他の配位子の対応する値と比較するために、pKからpM値を計算してもよい。実際には、pMは配位子の塩基度を考慮したキレート化されていない配位子の量を反映している。本発明では、「非常に良好な熱力学的安定性」とは、同じ金属と共に形成されたdotaキレートの熱力学的安定性に少なくとも匹敵し、好ましくはそれよりも良好な熱力学的安定性を指す。
【0012】
pCu
2+:pZn
2+を決定して比較することにより、他の金属に対する不活性(c点)を評価してもよい。また、競合実験を行ってもよい。特に、亜鉛との競合実験において、トランスキレート化を引き起こすのに必要な過剰な亜鉛を決定してもよい。本発明では、同じ金属と共に形成されたdotaキレートの不活性に少なくとも匹敵し、好ましくはそれよりも良好な不活性を有する場合に、キレートを他の金属に対して好適な不活性を有するものとみなす。
【0013】
酸性媒体においてH
+と競合した際の金属解離を測定することにより、速度論的不活性(d点)を評価してもよい。特に、異なる濃度および温度においてH
+の存在下で錯体の半減期を決定してもよい。本発明では、同じ金属と共に形成されたdotaキレートの速度論的不活性に少なくとも匹敵し、好ましくはそれよりも良好である場合に、キレートを好適な速度論的不活性を有するものとみなす。
【0014】
還元された金属の解離を決定することにより、還元時の安定性(e点)を評価してもよい。電気化学実験においてサイクリックボルタンメトリーを用いて解離を測定してもよい。本発明では、同じ金属と共に形成されたdotaキレートの安定性に少なくとも匹敵し、好ましくはそれよりも良好である場合に、キレートを還元時の好適な安定性を有するものとしてみなす。
【0015】
良好な熱力学的安定性および速度論的不活性を有するキレートは、錯体が生物学的配位子または生体還元物質に曝露されている際に、金属の生じ得るトランスキレート化を防止する。
【0016】
キレートおよびキレート剤が良好な水溶解性を示すことも重要である。
【0017】
上述したように、市販されているdotaを使用して
64Cu(II)、
67Cu(II)および
68Ga(III)を錯化する。但し、銅とdotaとのキレートは、上記規格の要件を満たすには程遠いものである。
【0018】
それらの銅(II)との良好な親和性により、例えばtetaおよびte2a(スキーム1)などのシクラムのテトラアザシクロアルカン誘導体が、PETまたはRIT用途において
64Cuまたは
67Cuを錯化するために最近使用された。また、それらの好適なN−官能化により、重金属またはランタニドなどの他の金属に対して良好な親和性も得ることができ、かつ例えば
99mTc、
186Re、
188Re、
111In、
68Ga、
89Zr、
177Lu、
149Tb、
153Sm、
212Bi(
212Pb)、
213Biおよび
225Acを用いるこれらの用途におけるそれらの使用を拡大させることができる。しかし、シクラムのこれらの誘導体から形成されたキレートは、上記規格の全ての要件を満たすものではない。
【0019】
従って、上記規格の全ての要件を満たすキレートを形成することができる新しい配位子が必要とされている。特に、放射性医薬品にとって潜在的に有用な配位子は、錯体の高い熱力学的安定性および速度論的不活性を穏やかな条件下での素早い金属錯化と組み合わせなければならないが、それは、後者が、短い放射性同位体半減期時間を最大限活用し、かつ熱およびpHに対して感受性の高い生体分子の使用を可能にするために極めて重要だからである。
【0020】
ピコリン酸アームは、大環状配位子ならびに非大環状配位子に付加された場合に遷移金属および遷移後金属に対する強い配位能力を引き起こすことを実証している。実際には、ピコリン酸部分は二座であり、すなわちどちらも金属の配位に関与することができる窒素原子および酸素原子を有する。従って、ランタニド、鉛またはビスマスの錯化のために、ピコリン酸誘導体が最近使用された(Rodrigez-Rodrigez A. et al. Inorg. Chem. 2012, 51, 13419-13429; Rodrigez-Rodrigez A. et al. Inorg. Chem. 2012, 51, 2509-2521)。また、それらは銅錯化のためにも最近使用された。
【0021】
Orvig et coll.は、銅のキレート化のために以下のスキーム2で表される2つのピコリン酸アームがグラフトされたエチレンジアミンの誘導体H
2dedpaを開示した(Boros et al., JACS, 2010, 132, 15726-33; Boros et al. Nucl. Med. Biol. 2011, 38, 1165-1174)。
【化2】
【0022】
各種生体共役結合基を有するH
2dedpaの誘導体も提案された(Boros et al. Inorg. Chem. 2012, 51, 6279-6284; Bailey et al. Inorg. Chem. 2012, 51, 12575-12589; Boros et al. Nucl. Med. Biol. 2012, 39, 785-794)。しかし、薬への適用のための特にCu(II)配位についての結果は非常に残念なものであった。実際に、Cu(II)錯体は低い速度論的および熱力学的安定性ならびに血清安定性の低下を示し(Boros et al. Inorg. Chem. 2012, 51, 6279-6284)、従って、上記規格の要件b)、d)およびe)を満たしていない。
【0023】
準備作業では、本出願人は、1つのピコリン酸および2つのピコリルペンダントアームを有するトリアザ大環状分子Hno1pa2py(スキーム3)を提案し、これにより安定かつ不活性な銅(II)錯体も容易に形成されることが分かり、かつさらに非常に効率的な
64Cuでの放射標識が得られた(Roger et al. Inorg. Chem. 2013, 21(9), 5246-5259)。有望な特性にも関わらず、上記規格の全ての要件は完全に満たされず、特に生理学的媒質における銅(II)の銅(I)への還元の際にこの配位子と共に形成された銅キレートの安定性は改善が必要である。
【化3】
【0024】
次いで、本出願人はサイクレンおよびシクラムのピコリン酸誘導体(スキーム3)、特にシクラムの第1世代のモノピコリン酸誘導体Hte1paを開発した(Lima et al. Inorg. Chem. 2012, 51(12), 6916-6927)。対応する銅キレートにより、規格の要件a)〜c)に対して良好な結果が得られる。しかし、規格の酸性媒体における不活性(d点)および還元に関する不活性(e点)は最適化されなかった。
【0025】
従って、本出願人は、上記欠点を克服する、すなわち酸性媒体における不活性および還元媒体における不活性を改善すると共に上記規格の他の要件を満たす、ピコリン酸アームを含む新しい配位子を提供するために研究を行った。
【0026】
「架橋キレート剤」としても知られている剛体テトラアザ大環状分子は、それらの錯体の傑出した挙動、特にそれらの不活性により、非常に関心の高い対象である。
【0027】
架橋キレート剤の例は、架橋シクラム誘導体cb−te2aおよび側方架橋sb−te1a1pまたは架橋サイクレン誘導体cb−do2a(スキーム1)である。架橋キレート剤は、トランス位において大環状分子の2つの窒素原子を繋ぐエチレン(またはプロピレン)架橋単位を含むものとして定義され、それらは、これまで報告されている最も不活性な銅(II)錯体のいくつかを生み出してきた。さらに、数個の例の放射標識および生体共役反応の成功も達成されている。
【0028】
特に、架橋cb−te2aは、最も不活性な銅錯体を形成し(上記規格のd)およびe)点)、これにより、存在したとしても体内での銅の放出が制限されるため、高い関心を集めている。
【0029】
従って、本出願人は、不活性を改善するためにHte1paに架橋を導入して新しい配位子Hcb−te1paを形成することを検討した。
【化4】
【0030】
しかし、Hcb−te2aなどの当該技術分野において記載されている全ての制約された架橋キレート剤は、プロトンスポンジであるため非常に塩基性であり、すなわち、当該化合物の構造によりプロトンは大環状空洞内に閉じ込められたままであり、このプロトンを金属で容易に置換することができない。このプロトンスポンジ挙動により、メタル化速度は非常に遅くなる。このプロトンを置換するためには、目的に相応しい生物学的ベクターをキレートにグラフトして生体共役結合体(バイオコンジュゲート)を形成する際に適合しない高温などの強烈な条件が必要である。
【0031】
その結果、架橋キレート剤、特にHcb−te2aは、上記規格、特に不活性に関するd)点およびe)点を満たすが、非常に遅いメタル化速度(a点)は明らかに例外である。
【0032】
従って、Hte1paに架橋を導入して不活性を改善することによって、本出願人は、メタル化速度の急激な低下が生じ、良好な不活性と速い速度との間に妥協を与えるが上記規格の5つの要件の全てを満たさない配位子が得られると予期した。
【0033】
予期したとおり、本出願人は、他の架橋誘導体のように、本発明のHcb−te1pa配位子がプロトンスポンジであることを実証した(酸塩基研究−実施例5のパラグラフB.1を参照)。
【0034】
しかし予期せぬことに、Hte1paを架橋してHcb−te1paおよびその誘導体を形成することで、非架橋シクラムと比較してメタル化速度の低下は生じなかった。それどころか、本発明の架橋配位子Hcb−te1paは、驚くべきことに酸性条件下にも関わらず非常に速いメタル化速度を示す。準瞬時にメタル化が生じ、すなわち、例えば90%超の銅が即座にキレート化され、残っている銅は数秒以内にキレート化される(実験箇所−実施例5のパラグラフB.3を参照)。本出願人が知る限りでは、水性酸性媒体において速いメタル化速度を有する架橋シクラムまたはサイクレンに関して当該技術分野で報告されている事例は他にはなく、本発明は当業者の強い偏見を克服するものである。
【0035】
理論によって縛られたくはないが、結晶学的研究で証拠づけられている架橋配位子の事前に組織化された特徴(
図1)が、芳香族部分のカルボニル基の存在と共に、この予期せぬ挙動の発端ではないかと思われる。当該キレートの構造はその配位子の構造に近いことが観察された(
図2)。
【発明を実施するための形態】
【0075】
配位子
本発明は、式(I):
【化7】
(式中、
nは1および2から選択される整数であり、
R
1は、
水素原子、
式(II)のピコリン酸アーム:
【化8】
アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシグルタルイミドエステルまたはマレイミドエステルなど)、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば、酸無水物または酸ハロゲン化物など)、アルコール、アルキン、ハロゲン化物、アジ化物、シロキシ、ホスホン酸、チオール、テトラジン、ノルボルネン、オキソアミン、アミノオキシ、チオエーテル、ハロアセトアミド(例えば、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミドまたはヨードアセトアミドなど)、グルタメート、グルタル酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、アルデヒド、ケトン、ヒドラジド、クロロギ酸エステルおよびマレイミドを含む群から選択されるカップリング官能基、
抗体、好ましくはモノクローナル抗体、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、ナノ粒子、リポソーム、脂質、ポリアミン(スペルミンなど)を含む群から選択されるベクター化基
を表し、
R
2、R
3、R
4およびR
7はそれぞれ独立して、
水素原子、
アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシグルタルイミドエステルまたはマレイミドエステルなど)、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば、酸無水物または酸ハロゲン化物など)、アルコール、アルキン、ハロゲン化物、アジ化物、シロキシ、ホスホン酸、チオール、テトラジン、ノルボルネン、オキソアミン、アミノオキシ、チオエーテル、ハロアセトアミド(例えば、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミドまたはヨードアセトアミドなど)、グルタメート、グルタル酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、アルデヒド、ケトン、ヒドラジド、クロロギ酸エステルおよびマレイミドを含む群から選択されるカップリング官能基、
抗体、好ましくはモノクローナル抗体、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、ナノ粒子、リポソーム、脂質、ポリアミン(スペルミンなど)を含む群から選択されるベクター化基
を表し、
R
5およびR
6はそれぞれ独立して、
水素原子、
N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシグルタルイミドおよびマレイミド、ハロゲン化物、−OCOR
8(式中、R
8は、アルキル、アリールから選択される)を含む群から選択される活性化官能基、
抗体、好ましくはモノクローナル抗体、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、ナノ粒子、リポソーム、脂質、ポリアミン(スペルミンなど)を含む群から選択されるベクター化基、
を表し、
L
1、L
2、L
3、L
4およびL
7はそれぞれ独立して、
結合、
アルキル部分がO、NおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されている、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを含む群から選択されるリンカー
を表す)のピコリン酸架橋シクラム誘導体配位子に関する。
【0076】
一実施形態では、−L
1−R
1、−L
2−R
2、−L
3−R
3および−L
4−R
4のうちの少なくとも1つは、式(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v):
【化9】
(式中、m、p、qおよびrはそれぞれ独立して、0〜10の範囲、好ましくは0、1、2、3または4の整数を表し、Xは、ハロゲン、好ましくはClを表す)から選択される。
【0077】
では、−L
1−R
1、−L
2−R
2、−L
3−R
3および−L
4−R
4のうちの少なくとも1つは、式(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)および(vii):
【化10】
(式中、m、p、q、r、sおよびtはそれぞれ独立して、0〜10の範囲、好ましくは0、1、2、3または4の整数を表し、Xは、ハロゲン、好ましくはClを表す)から選択される。
【0078】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(I’)または(I’’):
【化11】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、L
1、L
2、L
3およびL
4は、式(I)の定義のとおりである)の配位子である。
【0079】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(Ia’)または(Ia’’):
【化12】
(式中、R
1およびL
1は、式(I)の定義のとおりである)の配位子である。
【0080】
一実施形態では、式(Ia’)または(Ia’’)中の−L
1−R
1は、好ましくは式(i)、(ii)、(iii)および(iv):
【化13】
(式中、m、pおよびqはそれぞれ独立して、0〜10の範囲、好ましくは0、1、2、3または4の整数を表す)から選択される。
【0081】
特定の実施形態では、本発明の配位子は、式(Ia’−1)または(Ia’’−1):
【化14】
の配位子である。
【0082】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(Ib−R
5)または(Ic−R
5):
【化15】
(式中、R
2、R
3、L
2およびL
3は式(I)の定義のとおりであり、nは1または2から選択される整数であり、好ましくは、nは1に等しい)の配位子である。
【0083】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(Ib):
【化16】
(式中、R
2およびL
2は式(I)の定義のとおりであり、nは1または2から選択される整数であり、好ましくは、nは1に等しい)の配位子である。
【0084】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(Ic):
【化17】
(式中、R
3およびL
3は式(I)の定義のとおりであり、nは1または2から選択される整数であり、好ましくは、nは1に等しい)の配位子である。
【0085】
一実施形態では、式(Ib)中の−L
2−R
2および式(Ic)中の−L
3−R
3は、好ましくは式(ii)および(v):
【化18】
(式中、mおよびrはそれぞれ独立して、0〜10の範囲、好ましくは0、1、2、3または4の整数を表し、Xは、ハロゲン、好ましくはClを表す)から選択される。特定の実施形態では、式(ii)中のmは、1に等しいことが好ましい。
【0086】
一実施形態では、式(Ib)中の−L
2−R
2および式(Ic)中の−L
3−R
3は、好ましくは式(vi)または(vii):
【化19】
(式中、sおよびtは、0〜10の範囲、好ましくは0、1、2、3または4の整数を表し、より好ましくは1または2に等しい)の配位子である。
【0087】
式(Ib)中の−L
2−R
2および式(Ic)中の−L
3−R
3の好ましい定義に関する上記実施形態を、式(Ib−R
5)中の−L
2−R
2および式(Ic−R
5)中の−L
3−R
3にも適用する。
【0088】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(Id’)または(Id’’):
【化20】
(式中、R
4およびL
4は式(I)の定義のとおりである)の配位子である。
【0089】
一実施形態では、式(Id’)または(Id’’)中の−L
4−R
4は、好ましくは式(iv):
【化21】
(式中、qは、0〜6の範囲、好ましくは0、1、2、3または4の整数を表す)である。
【0090】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(Ie’)または(Ie’’):
【化22】
(式中、R
5は式(I)の定義のとおりであり、好ましくは、R
5は、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシグルタルイミドおよびマレイミド、ハロゲン化物、−OCOR
8(式中、R
8は、アルキル、アリールから選択される)を含む群から選択される活性化官能基である)の配位子である。
【0091】
特定の実施形態では、本発明の配位子は、式「Hcb−te1pa」または「Hpcb−te1pa」:
【化23】
の配位子である。
【0092】
一実施形態では、本発明の配位子は式(If):
【化24】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、L
1、L
2、L
3、L
4およびL
7は、式(I)の定義のとおりである)の配位子である。
【0093】
一実施形態では、本発明の配位子は、式(If−1’)または(If−1’’):
【化25】
(式中、R
5およびR
6は式(I)の定義のとおりである)の配位子である。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の配位子は、式「cb−te2pa」または「pcb−te2pa」:
【化26】
の配位子である。
【0095】
特定の実施形態によれば、本発明の式(I)の配位子は、ナノ粒子上にグラフトされている。
【0096】
本発明の式(I)の特に好ましい化合物は、以下の表1に列挙されている化合物である。
【表1】
【0097】
キレート
本発明はさらに、本発明の式(I)の配位子と、銅(II)、銅(I)、ガリウム(III)、ジルコニウム(IV)、テクネチウム(III)、インジウム(III)、レニウム(VI)、アスタチン(III)、ビスマス(III)、鉛(II)、アクチニウム(III)、イットリウム(III)、ルテチウム(III)、サマリウム(III)、テルビウム(III)またはホルミウム(III)を含む群から選択される金属カチオンとの錯体形成により得られるキレートに関する。
【0098】
一実施形態では、本発明は、式(I):
【化27】
(式中、
nは1および2から選択される整数であり、
R
1は、
水素原子、
式(II)のピコリン酸アーム:
【化28】
アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシグルタルイミドエステルまたはマレイミドエステルなど)、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば、酸無水物または酸ハロゲン化物など)、アルコール、アルキン、ハロゲン化物、アジ化物、シロキシ、ホスホン酸、チオール、テトラジン、ノルボルネン、オキソアミン、アミノオキシ、チオエーテル、ハロアセトアミド(例えば、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミドまたはヨードアセトアミドなど)、グルタメート、グルタル酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、アルデヒド、ケトン、ヒドラジド、クロロギ酸エステルおよびマレイミドを含む群から選択されるカップリング官能基、
抗体、好ましくはモノクローナル抗体、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、ナノ粒子、リポソーム、脂質、ポリアミン(スペルミンなど)を含む群から選択されるベクター化基
を表し、
R
2、R
3、R
4およびR
7はそれぞれ独立して、
水素原子、
アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシグルタルイミドエステルまたはマレイミドエステルなど)、カルボン酸、活性化カルボン酸(例えば、酸無水物または酸ハロゲン化物など)、アルコール、アルキン、ハロゲン化物、アジ化物、シロキシ、ホスホン酸、チオール、テトラジン、ノルボルネン、オキソアミン、アミノオキシ、チオエーテル、ハロアセトアミド(例えば、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミドまたはヨードアセトアミドなど)、グルタメート、グルタル酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、アルデヒド、ケトン、ヒドラジド、クロロギ酸エステルおよびマレイミドを含む群から選択されるカップリング官能基、
抗体、好ましくはモノクローナル抗体、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、ナノ粒子、リポソーム、脂質、ポリアミン(スペルミンなど)を含む群から選択されるベクター化基
を表し、
R
5およびR
6はそれぞれ独立して、
水素原子、
N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシグルタルイミドおよびマレイミド、ハロゲン化物、−OCOR
8(式中、R
8は、アルキル、アリールから選択される)を含む群から選択される活性化官能基、
抗体、好ましくはモノクローナル抗体、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、ナノ粒子、リポソーム、脂質、ポリアミン(スペルミンなど)を含む群から選択されるベクター化基
を表し、
L
1、L
2、L
3、L
4およびL
7はそれぞれ独立して、
結合、
アルキル部分がO、NおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されている、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを含む群から選択されるリンカー
を表す)の配位子と、
銅(II)、銅(I)、ガリウム(III)、ジルコニウム(IV)、テクネチウム(III)、インジウム(III)、レニウム(VI)、アスタチン(III)、ビスマス(III)、鉛(II)、アクチニウム(III)、イットリウム(III)、ルテチウム(III)、サマリウム(III)、テルビウム(III)またはホルミウム(III)を含む群から選択される金属カチオンとの錯体形成により得られるキレートに関する。
【0099】
好ましい実施形態によれば、金属カチオンは、放射性同位体、好ましくは
64Cu(II)、
67Cu(II)、
68Ga(III)、
89Zr(IV)、
99mTc(III)、
111In(III)、
186Re(VI)、
188Re(VI)、
210At(III)、
212Bi(
212Pb)、
213Bi(III)、
225Ac(III)、
90Y(III)、
177Lu(III)、
153Sm(III)、
149Tb(III)または
166Ho(III)を含む群から選択される放射性同位体、より好ましくは
64Cu(II)、
67Cu(II)または
68Ga(III)である。
【0100】
金属カチオンが放射性同位体である場合、本発明のキレートは放射性医薬品である。
【0101】
上記式Iの配位子に関する好ましい実施形態を本発明のキレートに適用する。
【0102】
特に一実施形態では、本発明のキレートの配位子は、式(Ia’)または(Ia’’):
【化29】
(式中、−L
1−R
1は、式(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v):
【化30】
(式中、m、p、qおよびrはそれぞれ独立して、0〜10の範囲、好ましくは0、1、2、3または4の整数を表し、Xは、ハロゲン、好ましくはClを表す)から選択される)の配位子である。
【0103】
特定の実施形態によれば、本発明のキレートの配位子は、式Hcb−te1pa:
【化31】
の配位子である。
【0104】
特定の実施形態によれば、本発明のキレートの配位子は、式(Ia’−1):
【化32】
の配位子である。
【0105】
特定の実施形態によれば、本発明のキレートの配位子は、上記表1に列挙されている配位子である。
【0106】
本発明のキレートは、本出願の導入部分に記載されている規格の要件をすべて満たす。証拠は以下の実験箇所に示されている。
【0107】
製造方法:配位子およびキレート
当該配位子の合成
本発明はさらに、本発明の配位子の製造方法に関する。
【0108】
一実施形態によれば、本発明の式(I)の配位子の製造方法は、
式(i):
【化33】
(式中、
L
2、R
2、L
3およびR
3は、式(I)の定義のとおりであり、
M
1は、
水素原子、
例えば、カルボベンジルオキシ、p−メトキシベンジルカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンゾイル、ベンジル、カルバメート基、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、p−メトキシフェニル、トシル、アリールスルホニルなどのアミノ保護基、または当業者に知られているあらゆる他の好適なアミノ保護基、
−L
1−R
1(式中、L
1およびR
1は式(I)の定義のとおりである)
を表す)の化合物を、
式(ii):
【化34】
(式中、
L
4およびR
4は、式(I)の定義のとおりであり、
Xは、ハロゲン原子、好ましくはClを表し、かつ
M
5は、
アルキル基から選択される保護基、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはメチル、
水素原子を表さない限り、R
5(式中、R
5は式(I)の定義のとおりである)
を表す)の化合物と反応させて、式(iii):
【化35】
(式中、L
2、R
2、L
3、R
3、L
4およびR
4は式(I)の定義のとおりであり、M
1およびM
5は上に定義したとおりである)の化合物を得る工程と、
必要であれば(iii)に対して、
・M
5によって保護された酸性官能基を脱保護して式(i)の化合物(式中、R
5は水素原子を表す)を得る工程、
・酸性官能基上に活性化官能基またはベクター化基を導入して式(i)の化合物(式中、R
5は活性化官能基またはベクター化基を表す)を得る工程、
・M
1によって保護されたアミン官能基を脱保護して式(i)の化合物(式中、−L
1−R
1は−Hを表す)を得る工程、
・−L
1−R
1(式中、−L
1−R
1は式(I)において定義されているとおりである)をアミン官能基上に導入して式(i)の化合物を得る工程
から選択される1つ以上のその後の工程を行う工程と、
を含む。
【0109】
一実施形態によれば、M
1が−L
1−R1を表し、かつM
5がR
5を表す場合、式(iii)の化合物は式(i)の化合物に対応する。
【0110】
好ましい実施形態によれば、本発明のHcb−te1pa配位子の調製のために使用される合成手順はスキーム4に記載されており、先に記載した架橋シクラム(i−a)(Wong et al. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 10561-10572)および6−クロロメチルピリジンメチルエステル(ii−a)(Mato-Iglesias et al. Inorg. Chem. 2008, 47, 7840-7851)から開始する2つの工程からなる。塩基の非存在下で求電子性誘導体による制約されたシクラムのアルキル化により、化合物(iii−a)が得られる。その後、エステル誘導体(iii−a)を水性酸性溶液で加水分解して定量的にHcb−te1pa、好ましくはその塩酸塩形態を得る。
【化36】
【0111】
当該キレートの合成
本発明はさらに、本発明のキレートの製造方法に関する。
【0112】
一実施形態によれば、本発明に係るキレートの製造方法は、本発明に係る式(I)の配位子を、銅(II)、銅(I)、ガリウム(III)、ジルコニウム(IV)、テクネチウム(III)、インジウム(III)、レニウム(VI)、アスタチン(III)、ビスマス(III)、鉛(II)、アクチニウム(III)、イットリウム(III)、ルテチウム(III)、サマリウム(III)、テルビウム(III)またはホルミウム(III)を含む群から選択される金属カチオンと反応させる工程を含む。
【0113】
一実施形態では、本発明のキレートの製造方法は、好ましくはKOHでpHをほぼ中性に調整することにより水性媒体中で本発明の式(I)の配位子を金属カチオンと反応させる工程を含む。本発明の方法は、室温から還流温度までの範囲内の温度、好ましくは室温で行うことが好ましい。キレート化プロセスは一般に、数分から24時間に及ぶ期間にわたって行う。
【0114】
一実施形態では、本発明の方法で使用される金属カチオンは、塩、好ましくは過塩素酸塩、塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、トリフラート塩の形態にある。
【0115】
好ましい実施形態では、本発明に係る銅(II)キレートの製造方法は、水溶液中で本発明の式(I)の配位子を銅カチオンと反応させる工程を含む。一実施形態では、銅カチオンは、Cu(ClO
4)
2・6H
2O、Cu
2(OAc)
4、CuCl
2、Cu(NO
3)
2、Cu(OSO
2CF
3)
2を含む群から選択される。好ましい実施形態では、2〜12、好ましくは2〜7の範囲のpH、より好ましくは約7のpHで銅カチオンの錯化を行う。
【0116】
当該キレートの使用
本発明はさらに、好ましくは造影剤または薬として、好ましくは放射性医薬品としての本発明のキレートの核医学における使用に関する。
【0117】
本発明のキレートは造影剤として有用である。特に、放射性同位体のキレート、好ましくは
64Cu、
68Ga、
89Zr、
99mTc、
111In、
186Re、
177Lu、
153Smまたは
166HoのキレートをPETイメージングおよび/またはSPECTイメージングで使用することができる。ガドリニウム(III)のキレートをMRIイメージングで使用することができる。ランタニドのキレート、好ましくはEu(III)、Tb(III)またはYb(III)のキレートを発光によるイメージングのために使用することができる。
【0118】
本発明のキレートは薬としても有用である。特に、放射性同位体のキレート、好ましくは
67Cu、
89Zr、
188Re、
210At、
212Bi(
212Pb)、
213Bi、
225Ac、
90Y、
153Smまたは
149TbのキレートをRITで使用することができる。当該キレート上に存在するベクター化基に応じて、多種多様な疾患を標的にすることができる。例えば、指定されたベクター化基を用いて以下の疾患を標的にすることができる。
【表2】
【0119】
従って、本発明は、治療的有効量の本発明のキレート、好ましくは放射性同位体のキレートをそれを必要としている患者に投与することを含む、疾患の治療および/または予防方法を提供する。
【0120】
本発明は、薬、好ましくは放射性医薬品の製造のための本発明のキレート、好ましくは放射性同位体のキレートの使用をさらに提供する。
【0121】
一実施形態によれば、併用療法の一部として本発明のキレートを投与してもよい。従って、有効成分としての本発明の化合物とさらなる治療薬および/または有効成分との同時投与を含む実施形態は、本発明の範囲に含まれる。
【0122】
本発明はさらに、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に本発明のキレートを含む医薬組成物に関する。
【0123】
本発明はさらに、本発明のキレートを含む薬に関する。
【0124】
一般に医薬用途では、本発明の少なくとも1種のキレート、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントと、任意に1種以上のさらなる薬学的に活性な化合物とを含む医薬品として、本発明のキレートを製剤化してもよい。
【0125】
非限定的な例により、そのような製剤は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮内もしくは皮下注射または静脈内注入)、病巣内投与、粘膜下投与、関節内投与、腔内投与、局所投与(眼投与を含む)、動脈塞栓術、吸入投与、皮膚パッチ、埋込錠、坐薬などに適した形態であってもよい。投与様式に応じて固体、半固体または液体であってもよいそのような好適な投与形態ならびにその調製で使用される方法および担体、希釈剤および賦形剤は当業者には明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントンの製薬科学)の最新版が参照される。
【0126】
そのような製剤のいくつかの好ましいが非限定的な例としては、塩(特にNaCl)、グルコース、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース、(無菌)水、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、食用油、植物油および鉱油またはそれらの好適な混合物などの、そのような製剤に本質的に適した担体、賦形剤および希釈剤と共に製剤化することができる、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、小袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、ローション剤、軟および硬ゼラチンカプセル、坐薬、点滴剤、無菌注射溶液および、ボーラスとしての投与および/または連続投与のための無菌包装粉末(通常は使用前に再構成される)が挙げられる。これらの製剤は、医薬製剤で一般に使用される他の物質、例えば、緩衝液、抗酸化剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、崩壊剤、増量剤、充填剤、保存料、甘味料、着香料、流量調節剤、離型剤などを任意に含有することができる。また、本組成物を、そこに含まれる1種以上の活性化合物の急速、持続または遅延放出を与えるように製剤化してもよい。
【0127】
本発明の医薬品は単位剤形であることが好ましく、任意に製品情報および/または使用説明書を含む1枚以上のパンフレットと共に、例えば、箱、ブリスター、バイアル、瓶、小袋、アンプル、またはあらゆる他の好適な単一用量もしくは複数用量ホルダまたは容器(適切にラベル付けされていてもよい)に適切に包装されていてもよい。
【0128】
当該配位子の使用
一実施形態によれば、本発明に係るキレートの合成のために本発明の配位子を使用する。
【0129】
一実施形態によれば、核医学において造影剤または薬として使用することができるキレートのためのキレート剤として本発明の配位子を使用してもよい。
【0130】
一実施形態によれば、本発明の配位子を捕捉剤として使用してもよい。
【0131】
一実施形態によれば、金属カチオンの捕捉により液体媒体を浄化するために本発明の配位子を使用する。
【0132】
特定の実施形態によれば、本発明の配位子を金属で汚染された流出物の浄化において使用してもよい。特に、本発明の配位子を使用して鉛または放射性元素を捕捉してもよい。好ましい実施形態では、液体の超精製のために本発明の配位子を使用する。本発明において「超精製」とは、1ppm(100万分の1)よりも極めて少ない、一般にppb(10億分の1)、ppt(1兆分の1)以下の範囲の夾雑物レベルへの汚染された溶液の精製、すなわち超純粋な溶液への精製を指す。
【0133】
別の実施形態によれば、本発明の配位子をカチオン検出、好ましくは微量の金属カチオン検出において使用してもよい。
【0134】
一実施形態によれば、本発明の配位子および/またはキレートを、例えばナノ粒子、好ましくは金ナノ粒子または鉄ナノ粒子などの固体担体上にグラフトしてもよい。
【0135】
一実施形態によれば、本発明の配位子および/またはキレートを、例えばポリフィリン、シクロデキストリン、カリックスアレーンまたはアザシクロアルカンなどの他の配位子/キレートに結合してもよい。
【実施例】
【0137】
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに良く理解することができる。これらの実施例は、本発明の具体的な実施形態を代表するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0138】
I.材料および方法
試薬をACROS Organics社およびAldrich Chemical社から購入した。架橋シクラム(i−a)をCheMatech社(フランスのディジョン)から購入し、6−クロロメチル−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステル(ii−a)を先に記載したように合成した(Mato‐Iglesias, M. Et al. Inorg. Chem. 2008, 47, 7840-7851)。フランスの国立科学研究センター(CNRS)の「Service de Microanalyse」(69360、フランスのソレーズ)において元素分析を行った。ブレスト大学(University of Brest)の「Services communs」においてNMRおよびMALDI質量スペクトルを記録した。Bruker Avance 400(400MHz)分光計を用いて
1Hおよび
13C−NMRスペクトルを記録した。Autoflex MALDI TOF IIIスマートビーム分光計を用いてMALDI質量スペクトルを記録した。
【0139】
以下で使用される場合、「ca.」は「計算値」を表す。
【0140】
II.当該配位子の合成
II.1.Hcb−te1paの合成
【化37】
【0141】
工程i):架橋シクラム(i−a)をモノN−官能化して化合物(iii−a)を得る工程
6−クロロメチルピリジン−2−カルボン酸メチルエステル(ii−a)(0.180g、0.97mmol)の蒸留したアセトニトリル(25mL)溶液を、架橋シクラム(i−a)(0.200g、0.88mmol)の蒸留したアセトニトリル(175mL)溶液に添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒の蒸発後に、粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(CHCl
3/MeOH=8/2)で精製して化合物(iii−a)を無色の油として得た(0.305g、92%)。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): 0.95-1.06 (m, 1 H); 1.41-1.55 (m, 1 H); 1.58-1.70 (m, 1 H); 1.83-1.94 (m, 1 H); 2.33-2.64 (m, 8 H); 2.65-2.79 (m, 3 H); 2.80-2.93 (m, 4 H); 2.93-3.06 (m, 3 H); 3.12-3.22 (m; 1 H); 3.46 (d,
2J = 13.2 Hz, 1 H); 3.48-3.59 (m; 1 H); 3.92 (s, 3 H); 4.08 (d,
2J = 12.8 Hz, 1 H); 7.52 (d,
3J = 7.6 Hz, 1 H); 7.90 (dd,
3J = 8.0 Hz,
3J = 7.6 Hz, 1 H); 7.98 (d,
3J = 8.0 Hz, 1 H).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): 20.5; 25.2 ; 43.4; 45.7; 48.6; 50.6; 51.0; 52.0; 52.2; 52.3; 54.4; 54.9; 55.9; 62.7; 123.2; 127.9; 138.2; 145.5; 157.8; 164.1. MALDI-TOF (ジトラノール): m/z = 376.25 (M+1). C
20H
33N
5O
.HCl
.2.8H
2Oの元素分析計算値: C, 53.38; H, 8.96; N, 15.56%. 実測値: C, 53.62; H, 8.69; N, 15.35%.
【0142】
工程ii):化合物3を加水分解してHcb−te1paを得る工程
塩酸(20mL、6M)を化合物(iii−a)(0.610g、1.62mmol)にゆっくりと添加し、混合物を一晩還流させた。室温に冷却した後、溶媒を蒸発させてHcb−te1pa・4.5HCl・3H
2Oを定量的収率で得た。次いで、イオン交換樹脂を通してHcb−te1paをHClO
4、好ましくは0.1MのHClO
4で溶出し、その後、溶出した溶液をゆっくりと蒸発させてH
3cb−te1pa(ClO
4)
2の結晶を得た。これらの結晶はX線回折解析に適している。
1H NMR (D
2O, 400 MHz): 1.60 (d,
2J = 17.2 Hz, 1 H); 1.79 (d,
2J = 16.4 Hz, 1 H); 2.34-2.51 (m, 2 H); 2.59-2.76 (m, 4 H); 2.85-2.91 (m, 2 H); 3.10-3.70 (m, 13 H); 4.02 (dt,
3J = 7.6 Hz,
4J = 4.4 Hz, 1 H); 4.17 (d,
2J = 13.6 Hz, 1 H); 5.02 (d,
2J = 14.0 Hz, 1 H); 7.84 (d,
3J = 7.6 Hz 1 H); 8.17 (dd,
3J = 8.0 Hz,
3J = 7.6 Hz, 1 H); 8.34 (d,
3J = 8.0 Hz, 1 H).
13C NMR (CDCl
3, 100 MHz): 20.8; 21.1 ; 44.9; 49.9; 51.8; 52.2; 52.7; 56.3; 57.2; 58.1; 59.3; 60.5; 61.1; 129.5; 133.2; 143.0; 151.3; 154.0; 171.7. MALDI-TOF (ジトラノール): m/z = 362.23 (M+1). C
19H
35N
5O
2.5HCl
.4.5H
2Oの元素分析計算値: C, 39.52; H, 7.26; N, 11.21%. 実測値: C, 36.79; H, 7.22; N, 10.93%.
【0143】
H
3cb−te1pa(ClO
4)
2の構造のORTEP図は、
図1に報告されている。
【0144】
II.2.式(Ia’−1)の化合物の合成
【化38】
【0145】
工程i):架橋したモノ−メチルピコリン酸シクラム(iii−a)をトランス−ジ−N−官能化して化合物(iv−b)を得る工程
4−ニトロフェニルエチルブロミド(0.968g、4.20mmol)および炭酸カリウム(0.872g、6.31mmol)を化合物(iii−a)(0.865、2.10mmol)の蒸留したアセトニトリル(200mL)溶液に添加した。混合物を一晩還流させた。溶媒の蒸発後に、粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(CHCl
3/MeOH=8/2)で精製して化合物(iv−b)を黄色の油として得た(1.000g、85%)。
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 1.63-1.70 (m, 4 H); 2.50-3.42 (m, 23 H); 3.77-3.85 (m, 6 H); 7.41 (d, J = 9 Hz, 2 H); 7.43 (d, J = 6 Hz, 1 H); 7.72 (t, J = 6 Hz, 1 H); 7.86 (d, J = 6 Hz, 1 H); 7.86 (d, J = 9 Hz, 2 H); 10.50 (S; 1 H).
13C NMR (CDCl
3, 75 MHz): 24.1; 24.5; 30.2; 50.0; 51.6; 51.7; 52.6; 52.8; 53.0; 53.6; 53.9; 54.0; 56.3; 57.7; 58.6; 123.5; 123.8; 127.2; 129.9; 137.5; 146.2; 147.4; 147.6; 157.7; 165.2. ESI-HRMS: C
28H
41N
6O
4の計算値: m/ z = 525.31838 [M + H]
+, 実測値: 525.31838.
【0146】
工程ii):化合物(iv−b)を還元して化合物(v−b)を得る工程
塩化スズ(1.810g、9.55mmol)および化合物(iv−b)(0.500g、0.95mmol)を1:9のMeOH/HClの12M水溶液40mLに添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後、過剰なHClを炭酸カリウムで中和した。pH=14におけるクロロホルムでの抽出により、所望の化合物(v−b)を黄色の油として得た(420mg、83%)。
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 1.55 (b s, 4 H); 2.46-3.14 (m, 23 H); 3.69-3.84 (m, 8 H); 6.51 (d, J = 9 Hz, 2 H); 6.77 (d, J = 9 Hz, 2 H); 7.38 (d, J = 6 Hz, 1 H); 7.69 (t, J = 6 Hz, 1 H); 7.84 (d, J = 6 Hz, 1 H); 10.46 (S; 1 H).
13C NMR (CDCl
3, 75 MHz): 24.0; 24.5; 30.2; 51.0; 51.6; 51.8; 52.2; 52.4; 52.6; 54.0; 54.2; 55.1; 56.3; 56.8; 58.4; 115.2; 123.7; 127.1; 128.5; 129.1; 137.5; 145.1; 147.3; 157.7; 165.3. ESI-HRMS: C
28H
43N
6O
4の計算値: m/ z = 495.34475 [M + H]
+, 実測値: 495.34420.
【0147】
工程iii):化合物(v−b)を加水分解して化合物(vi−b)を得る工程
塩酸(10mL、6M)を化合物(v−b)(0.200g、0.38mmol)にゆっくりと添加し、混合物を一晩還流させた。室温に冷却した後、溶媒を蒸発させて化合物(vi−b)をオフホワイトの固体として定量的収率で得た。
1H NMR (D
2O, 300 MHz): 1.63-1.70 (m, 4 H); 2.11-3.68 (m, 28 H); 4.70 (d, J = 15 Hz, 1 H); 5.03 (d, J = 15 Hz, 1 H); 6.74 (d, J = 9 Hz, 2 H); 6.93 (d, J = 9 Hz, 2 H); 7.26-7.33 (m, 2 H); 7.56 (t, J = 6 Hz, 1 H).
13C NMR (D
2O, 75 MHz): 20.9; 21.4; 28.5; 48.4; 50.9; 60.0; 52.2; 53.2; 55.6; 55.9; 57.4; 57.8; 58.0; 59.2; 60.2; 123.5; 123.8; 127.2; 129.9; 137.5; 146.2; 147.4; 147.6; 157.7; 165.2. ESI-HRMS: C
27H
41N
6O
4の計算値: m/ z = 481.32910 [M + H]
+, 実測値: 481.32855.
【0148】
工程iv):化合物(vi−b)のイソチオシアン酸誘導体を形成してcb−te1pa−N−EtPh−NCSを得る工程
化合物(vi−b)・5HCl(100mg、0.15mmol)を塩酸(1mL、3M)に溶解した後、チオホスゲン(0.435mg、3.00mmol)のクロロホルム(1mL)溶液を反応混合物に添加した。室温で一晩撹拌した後、激しく二相撹拌することにより反応混合物をクロロホルムで洗浄し(5×1mL)、次いで有機相をデカントして過剰なチオホスゲンを除去した。一晩凍結乾燥することにより、化合物(cb−te1pa−N−EtPh−NCS)を綿毛状のオフホワイトの固体として定量的収率で得た。
1H NMR (D
2O, 300 MHz): 1.13 (t, J = 7.5 Hz, 2 H); 1.64-1.81 (m, 2 H); 2.39-4.01 (m, 26 H); 4.31 (d, J = 15 Hz, 1 H); 5.22 (d, J = 15 Hz, 1 H); 7.52 (d, J = 9 Hz, 2 H); 7.03 (d, J = 9 Hz, 2 H); 7.50-7.57 (m, 2 H); 7.82 (t, J = 6 Hz, 1 H).
13C NMR (D
2O, 75 MHz): 21.1; 21.5; 28.5; 48.5; 51.2; 52.2; 53.5; 55.7; 56.0; 57.9; 58.2; 59.3; 60.6; 128.4; 129.0; 130.2; 132.0; 132.2; 137.0. 138.1; 141.8; 149.0; 153.7; 169.5. ESI-MS: m/z = 523.30 (M+1).
【0149】
II.3.C−官能化化合物の合成
特にXVI型の化合物について国際公開第2013/072491号に記載されているとおりに、より詳細には化合物(10)の実施例3(国際公開第2013/072491号の30頁)に記載されているとおりに、C−官能化化合物、特に式(Ib−R
5−1)、(Ib−1)、(Ib−2)、(Ib−3)、(Ic−R
5−1)、(Ic−1)、(Ic−2)および(Ic−3)の化合物を調製してもよい。
【0150】
II.4.化合物(Ib−1)のトラスツズマブへの結合
トラスツズマブ(4mg)を化合物(Ib−1)(0.53mg)の0.1MのNa
2CO
3(pH9.0、100μL)溶液に添加する。得られた溶液を室温で一晩穏やかに撹拌する。次いで翌日、この溶液をCentricon YM-50(Millipore社)の上に置き、沈降させて体積を減らし、PBS(pH7.4、2mL)で3回洗浄して未処理のキレート剤(Ib−1)を除去する。精製した化合物(Ib−1)とトラスツズマブとの結合体を2mLのPBS中で細かく回収し、−20℃で保存する。
【0151】
III.当該キレートの合成
III.1.Hcb−te1paによる銅(II)の錯化
[Cu(cb−te1pa)]ClO
4の調製
Cu(ClO
4)
2・6H
2O(0.070g、0.19mmol)をHcb−te1pa・4.5HCl・3H
2O(0.100g、0.17mmol)の水(10mL)溶液に添加し、KOH水溶液でpHを約7に調製した。混合物を80℃になるまで2時間加熱し、次いで室温で一晩撹拌した。固体の不純物を濾別し、この溶液を蒸発乾固させた。アセトニトリルの添加後、灰色の粉末を濾別し、濾液を蒸発させて化合物[Cu(cb−te1pa)]ClO
4を青色の粉末として得た(0.090g、83%)。
【0152】
[Cu(cb−te1pa)](ClO
4)
2の構造のORTEP図は、
図2に示されている。
【0153】
同じ手順を用いて他の金属カチオンの錯化を行ってもよい。
【0154】
III.2.cb−te1paによる
64Cuまたは
68Gaの錯化
50μLの
64CuCl
2溶液(40〜60MBq、金属組成:60ppmの総金属に対して10ppmの銅)を、0.1M水酸化ナトリウム50μLと1mMのHcb−te1paの0.1M酢酸アンモニウム溶液500μLとの混合物に添加して、キレート
64Cu放射標識を達成した。Hcb−te1paのために反応混合物を室温で15分間撹拌した。
64CuCl
2溶液50μLを、0.1M水酸化ナトリウム50μLおよび0.1M酢酸アンモニウム500μLを含有する混合物に添加して、[
64Cu]の酢酸塩が得られた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。[
64Cu]cb−te1pa溶液の放射化学的純度を、TLCおよびHPLCの両方を用いて制御した。[
64Cu]の酢酸塩をクロマトグラフィー系において基準とみなした。
【0155】
室温で15分未満以内にHcb−te1paを
64Cuで上手く放射標識した。TLCおよびHPLCのクロマトグラムはどちらも99%超の収率の放射標識された全ての化学種を示した。これにより、天然の銅(II)のHcb−te1paとの錯体形成について得られた結果を確認する。標識化を最適化するために行われた試験により、0.01mMの配位子濃度を用いた場合であってもHcb−te1paを放射標識することができることも分かった。これは、Hcb−te1pa/総金属の比が1未満であるため、溶液中の夾雑物である二価カチオン(Fe
2+、Mg
2+、Ni
2+またはZn
2+)よりも銅(II)に対するHcb−te1paの重要な選択性を実証している。
【0156】
適当な反応物と共に同じ方法を用いて、キレート
68Ga放射標識を達成した。Hcb−te1paを
68Gaで上手く放射標識し、放射標識された化学種全体の99%超の収率が得られた。
【0157】
III.3.Ib−2による
64Cuの錯化
過剰なCs
2CO
3を含むEtOH中でIb−2(100μg)を絶えず撹拌しながら90℃で30分間予備温置することにより、
64CuのIb−2による錯化を達成することができる。遠心分離後に、
64CuCl
2を単離された上澄みに添加する。混合物をボルテックスで撹拌し、90℃で30分間温置する。混合物を遠心分離し、単離された上澄みを蒸発させる。乾燥した混合物を水に溶解し、0.2μmのNylon Acrodisc 13フィルタに通す。シリカプレート上にMeOH:10%酢酸アンモニウム(1:1)からなる移動相を用いるラジオTLCにより、
64Cu−Ib−2錯体の形成を確認することができる。Xbridge C18カラム(4.6×150mm、5μm)を用いてアイソクラティック法(0.1%TFAを含む水:MeOH(96:4)、1mL/分の流速)により、
64Cu−Ib−2のラジオHPLC分析を達成することができる。
【0158】
III.4.化合物(Ib−1)−トラスツズマブによる
64Cuの錯化
64Cu(0.5〜2mCi)を含む0.1MのNH
4OAc緩衝液(pH8.0、100μL)を、80μgの化合物(Ib−1)−トラスツズマブ(上記パラグラフII.4を参照)を含む0.1MのNH
4OAc緩衝液(pH8.0、100μL)または単純な蒸留水に添加する。反応混合物を25℃で10分間温置し、次いで、50μgのDTPAを添加し、反応混合物を30℃でさらに20分間温置する。即時の薄層クロマトグラフィ(ITLC−SG、生理食塩水)で放射化学的収率を確認することができる。
64Cuで標識された化合物(Ib−1)−トラスツズマブを、YM−50フィルタを用いる遠心分離によって精製して全ての
64Cu−DTPA錯体を取り出す。放射化学的純度を、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(Bio Silect SEC 250-5、300×7.8mm、流速1mL/分、PBSからなるアイソクラティック移動相を使用、pH7.4)により測定することができる。
【0159】
64Cu−化合物(Ib−1)−トラスツズマブの比活性測定
固定量の
64Cu(220μCi)を含む0.1MのNH
4OAc緩衝液(pH8.0、100μL)を、各種濃度(1〜80μg)の化合物(Ib−1)−トラスツズマブを含む0.1MのNH
4OAc緩衝液(pH8.0、100μL)に添加する。反応混合物を25℃で10分間温置し、次いで50μgのDTPAを添加し、反応混合物をさらに30℃で20分間温置する。即時の薄層クロマトグラフィー(ITLC−SG、生理食塩水)で放射化学的収率を確認する。40〜90%の放射標識収率を示す3種類の濃度の化合物(Ib−1)−トラスツズマブを使用して、
64Cuで標識された化合物(Ib−1)−トラスツズマブの比活性を計算することができる。
【0160】
IV.Hcb−te1paの銅(II)錯体の物理化学的特性
IV.A.方法
IV.A.1.電位差測定研究
設備および作業条件。電位差測定装備についてはRoger, M. et al. Inorg. Chem. 2013, 52, 5246-5259に記載されている。滴定液は、市販の分析用アンプルから約0.1Mで調製したKOH溶液であり、標準HNO
3溶液の滴定にグラン法を適用して、その正確な濃度を得た(Rossotti, F. J. and Rossotti, H. J. J. Chem. Educ. 1965, 42, 375-378)。配位子溶液を約2.0×10
−3Mで調製し、Cu
2+およびZn
2+溶液を分析用硝酸塩から約0.05Mで調製し、H
4edta(エチレンジアミン四酢酸)を用いる錯滴定により標準化した。滴定のための試料溶液は、バックグラウンド電解質としてKNO
3を用いてイオン強度を0.10Mに維持した30mLの体積中に約0.04mmolの配位子を含有していた。錯滴定では、金属カチオンを0.9当量の当該配位子量で添加した。従来の滴定試料の1/10の量に対応する各滴定点を用いたこと以外は同様の方法で、バッチ滴定を準備した。電位測定により完全な安定性が達成されるまで(1週間以内に起こる)、バッチ滴定点を固く閉じられたバイアル中、25℃で温置した。
【0161】
測定。不活性雰囲気下および25.0±0.1℃で全ての測定を行った。作業条件下での2.0×10
−3Mの標準HNO
3溶液の滴定による電極の較正後に、試料溶液の起電力を測定した。セルの起電力の測定により、溶液の[H
+]を決定した(E=E
o’+Qlog[H
+]+E
j)。pHという用語は、−log[H
+]として定義される。較正曲線の酸性領域からE
o’およびQを決定した。非常に低いpHの較正手順に基づき[H
+]補正を行うVLpHソフトウェア(http://www.hyperquad.co.uk/において無料で利用可能なHyperquadの製造業者の較正ソフトウェア)を用いて、非常に低いpH(pH<2.5)におけるネルンストの法則からの逸脱を補正した。そうでなく使用した実験条件下でpH>2.5の場合は、液間電位差「E
j」は無視可能であることが分かった。アルカリ性pH領域において同じイオン強度で公知の[H
+]溶液を滴定することにより、K
w=[H
+][OH
−]の値は10
−13.78に等しいことが分かり、E
o’およびQを全pH範囲に対して有効とみなした。各滴定は、pH2.5〜11.5(またはCu
2+錯化では1.5〜11.5)の範囲において80〜100の平衡点で構成されおり、各特定の系に対して少なくとも2回の反復滴定を行った。
【0162】
計算。電位差滴定データをHyperquadソフトウェアで正確にし、HySSソフトウェアを用いてスペシエーション図をプロットした。全ての平衡定数β
iHおよびβ
MmHhLlを、β
MmHhLl=[M
mH
hL
l]/[M]
m[H]
h[L]
l(β
iH=[H
hL
l]/[H]
h[L]
lおよびβ
MH−1L=β
ML(OH)×K
w)によって定める。プロトン化(または加水分解)および非プロトン化定数の値間のlog単位での差により、段階的(logK)反応定数(K
MmHhLl=[M
mH
hL
l]/[M
mH
h−1L
l][H]である)が得られる。カッコで囲まれた誤差は、各系の全ての実験データからフィッティングプログラムにより計算した標準偏差である。
【0163】
IV.A.2.速度論的研究
錯体形成。25℃の緩衝水溶液においてHcb−te1paの銅(II)錯体の形成を研究した。[Cu
2+]=[Hcb−te1pa]=0.8mMを用いて、可視域(600nm)における錯体d−d遷移帯の増加する強度を、pH=5.0(0.2Mの酢酸カリウム緩衝液)およびpH=7.4(0.2MのHEPES緩衝液)において追跡した。さらに、[Cu
2+]=10×[Hcb−te1pa]=2mMにおいてUV範囲(310nm)で増加する電荷移動帯を追跡することにより、擬一次条件下およびpH=3.0(0.2Mの(K,H)Cl)においても錯体形成を研究した。
【0164】
錯体解離。1.0×10
−3Mで錯体を含有する5MのHClまたは5MのHClO
4水溶液中、擬一次条件下で、Hcb−te1paの銅(II)錯体の酸促進解離を研究した。イオン強度を調整せずに予め形成された錯体を含有する試料溶液に濃酸を添加し、反応させた後、HCl中では20、25、37、60および90℃、HClO
4中では25℃の温度で錯体d−d遷移帯の強度が低下した。
【0165】
IV.A.3.電気化学的研究
Autolab機器を用いて室温でサイクリックボルタモグラムを測定した。三電極系、すなわち作用電極としてガラス状炭素電極、対電極として白金線、および飽和カロメル参照電極を用いて、全ての測定を行った。全ての電気化学実験を、N
2雰囲気下および支持電解質として0.1MのNaClO
4を含有する予め形成された錯体の約1mMの水溶液中で行った。100mV/sの走査速度で、電圧を分析の最初の電位(0V)から−1.3V、次いで0.2Vまで勾配させ、0Vに戻した。特に断りのない限り、全ての電位を飽和カロメル電極(SCE)に対して表す。
【0166】
IV.B.結果および考察
IV.B.1.Hcb−te1paの酸塩基特性
25.0℃の水溶液中でHcb−te1paのプロトン化定数を研究した。この化合物は、4つのアミンおよびカルボン酸官能基からなる5つの塩基性中心を有し、そのうちの2つのみを電位差滴定により正確に決定することができた(表1)。Hcb−te1paについて得られた結果を2種類の他のテトラアザシクロアルカン、すなわちte1paおよびcb−シクラムの結果と比較する。
【0167】
架橋テトラアザ大環状化合物のプロトンスポンジ挙動はよく知られており、第1のプロトン化定数の非常に高い値に対応する。Hcb−te1paでは、塩基性pH範囲におけるD
2O中での
1H−NMR分光学的滴定により、そのような挙動を確認した。化合物の第2のプロトン化定数(以下を参照)に間違いなく対応するpD=8〜12の範囲では顕著な共鳴シフトが存在するが、pD=12〜14の範囲では共鳴シフトが存在せず、pD=14を超えたときのみ小さいシフトが可視化し始める。従って、pD>14のときにのみ最後の脱プロトン化工程が生じることは明らかである。しかし、脱プロトン化プロセスの開始のみが検出されたため、最も高いpH値に対して得ることができた分光学的データでは第1のプロトン化定数を決定することができない。従って、第1のプロトン化定数については仮に15とし、その後、全ての他の熱力学的平衡の決定における定数としてそれを使用した。この特に高いプロトン化定数は大環状アミンのうちの1つのプロトン化に対応していなければならず、比較的小さい部分的に閉鎖した構造的空洞を有する関連化合物においてよく見られるように、水素結合相互作用により大きな影響を受けるものでなければならない。
【0168】
Hcb−te1paの残りのプロトン化定数を、従来の電位差滴定により水溶液中、0.10MのKNO
3イオン強度で決定した。第2の定数(logK=10.13)は第2の大環状アミンのプロトン化に対応しなければならず、第3の定数(logK=2.43)は、上記H
3cb−te1pa(ClO
4)
2の固体状態の構造において観察されるような、カルボン酸基のプロトン化に対応しなければならない。その他のプロトン化定数は計算することができず、これは、さらなるプロトン化平衡はpH<2の場合にのみ生じ得ることを意味している。
【表3】
【0169】
IV.B.2.Hcb−te1paの金属錯体の熱力学的安定性
この箇所は、上記規格のb)およびc)点に対応する。
【0170】
Cu
2+およびZn
2+と共にHcb−te1paにより形成された錯体の安定度定数を、0.10MのKNO
3イオン強度(表2)における25.0℃の水溶液中での電位差滴定により決定した。Hcb−te1paについて得られた結果を2種類の他のテトラアザシクロアルカン、すなわちte1paおよびcb−シクラムの結果と比較する。
【0171】
銅(II)および特に亜鉛(II)錯体の形成の平衡は、酸性のpH範囲においては遅い。Cu
2+の場合、その錯体形成は低いpHからほとんど完了するが、pH=4までは比較的遅い。この2つの問題を克服するために、有意な割合の遊離金属イオン(少なくとも18%)を観察するために2未満のpH値で従来の滴定を行い、このようにして対応する安定度定数の決定を可能にすると共に、滴定の開始前にその溶液に平衡に到達するのに十分な時間を与えた。滴定の間、完全に安定化された測定値を得るために、各実験点に追加の平衡時間を含めた。Zn
2+の場合、pH=4未満では本質的に錯体形成は生じず、pH=4〜6の範囲では錯体形成は広範囲であるが非常に遅く、最終平衡に到達するために1週間を要した。この理由のために、pH=4〜6の範囲ではバッチ滴定を準備し、完全に安定化するまで平衡させたままにしたが、残りのpH範囲に対しては従来の滴定を使用した。
【表4】
【0172】
Cu
2+およびZn
2+の両方を用いた場合、スペシエーションは特に単純である。すなわち、中間のpH範囲では完全な脱プロトン化錯体は単一の化学種であり、非常に塩基性のpHでは亜鉛(II)ヒドロキソ錯体のみを見つけることができる。文献からの他の配位子の対応する値とのHcb−te1paの錯体の熱力学的安定性の正しい比較のために、異なる配位子の可変的塩基度特性を考慮したpM値も計算した(表3)。得られた安定度定数および計算したpM値の両方が、Hcb−te1paの銅(II)錯体の非常に高い熱力学的安定性を実証している。重要なことに、それらから、亜鉛(II)よりも銅(II)との錯体形成に対するHcb−te1paの非常に高い選択性も分かる。比較のために選ばれた他の2種類の配位子はより大きなpCu値を示しているが、Hcb−te1paの銅(II)錯体について得られた値は、Cu
2+の非常に強い配位にとってなお十分に高く、かつ潜在的なトランスキレート化を回避するのに十分に高いものである。用途に応じて速度論的不活性または生体内安定性などの他の因子がより重要な場合もあるため、熱力学的安定性のみが金属錯化効率を決定するための重要な判断基準ではない。
【表5】
【0173】
IV.B.3.銅(II)錯体の形成および解離
この箇所は、上記規格のa)およびd)点に対応する。
【0174】
速い錯体形成速度は、銅(II)錯体の容易な形成にとって必須である。従って、放射性同位体の限られた寿命に対して妥当な時間内でほぼ定量的な金属錯化を達成するのに必要などちらかといえば苛酷な条件(典型的には非常に高い温度および/または高いpH)下では、最も不活性な架橋錯体のいくつかは医学的用途には役に立たない場合がある。
【0175】
酸性から中性のpHの異なる緩衝液中で、Hcb−te1paとの銅(II)錯体形成を分光学的に監視した。等モルの金属:配位子の比において、錯体形成は生理学的pH(7.4)では瞬時であり、pH=5では極めて速く、最初の事例では数秒以内、後者の事例では約3分以内に完了(>99%)に到達する。この反応は反応媒体の酸性度の上昇により次第に遅くなり、従来の紫外可視分光法を用いる擬一次条件での速度論的研究を可能にする。この作業では、等モルの金属:配位子の条件において平衡下にある銅(II)錯体形成がおよそ完了しているpH範囲の下限であるpH=3で、そのような速度論的研究を行った。過剰な10当量の金属カチオンを用いる擬一次条件でのこの反応に対して得られたデータから、1.7分の形成半減期(t
1/2)が得られ、形成が約10分以内で定量的(>99%)になることが分かった。
【0176】
これらの結果によれば、Hcb−te1paは、本出願人が知っている限りでは、非常に穏やかな条件において銅(II)との最も速い錯体形成能力が授けられた架橋配位子である。理論によって縛られたくはないが、この性能は、少なくとも部分的に、遊離配位子の結晶学的構造の分析によって説明することができる(
図1)。実際には、当該配位子の事前組織化は、ピコリン酸の酸官能基と大環状分子の第二級アミンとの水素結合によって支持される。ピコリン酸アームの窒素原子は、銅(II)への配位にとって好ましい位置にある大環状ポケットのちょうど外側に位置し、従って、これは当該配位子の5つのアミン官能基によって容易にキレート化されるものでなければならない。
【0177】
錯体の遅い解離は恐らく、医学的用途で使用される化合物を選択する際に考慮されるべき最も重要な特徴である。Hcb−te1paの銅(II)錯体の酸促進解離速度を、酸性水溶液中、擬一次条件下で研究した。5MのHClO
4中25℃、または5MのHCl中20、25、37、60および90℃における錯体の可視吸収帯での変化を追跡することにより、この解離を監視した。半減期値を測定し、関連化合物であるte1pa、cb−te2aおよびcb−do2aの文献値と共に、表5にまとめた。
【表6】
【0178】
特に25℃におけるHClO
4およびHCl媒体における半減期値間の有意差は、アニオンが時として解離機序に置いて担う重要な役割によって一般に説明される。
【0179】
しかし、Hcb−te1paの銅(II)錯体に対して得られる全体的に非常に良好な半減期値がより重要である。実験的な速度論的データを使用して、アレニウスの式へのフィッティングから観察された速度定数の温度依存性を決定した。速度論的不活性の重要な低下がより高い温度で認められたが、錯体半減期はなお5MのHClおよび37℃においてほぼ2時間である。
【0180】
IV.B.4.銅(II)錯体の電気化学
この箇所は、上記規格のe)点に対応する。
【0181】
生体媒質における大環状配位子の銅(II)錯体の解離に関する説明のうちの1つは、銅(I)への金属還元およびその後の錯体の脱金属である。従って、電気化学的不活性ならびにレドックス系の可逆性を保証することが重要である。Hcb−te1paの銅錯体のレドック挙動を決定するために、サイクリックボルタンメトリー実験を2.3および6.8のpH値の水溶液中で行った。この実験は、支持電解質として0.1MのNaClO
4を含有する溶液中でガラス状炭素作用電極を用いて行った。
【0182】
中性のpHでは、0V
SCEにおける遊離Cu
+イオンのCu
2+への無視可能な酸化ピークと共に、E
1/2=−0.86V
SCE(ΔE
p=160mV)において準可逆的系が観察された。この研究は、CV時間スケールにおいて錯体が安定であることを示している。さらに、Hcb−te1paの銅(II)錯体について観察された還元プロセス(変換するとNHEに対してE
pc=−0.696V)は、典型的な生体還元物質の推定される−0.400V(NHE)の閾値を十分に下回る。
【0183】
IV.C.特性の概略および比較データ
核医学での使用を目的として最適化されたキレートの規格を関連パラメータと共に想起する。
【表7】
【0184】
cb−te1paの銅(II)錯体に関する値を以下の表にまとめる。データを先行技術の配位子と共に形成された銅キレートのデータと比較する。
【0185】
特に、cb−te1paの銅キレートの特性をte1paの特性と比較する。te1paの銅キレートは、規格の要件a)〜c)に対して良好な結果を示している。しかし、規格の酸性媒体における不活性(d点)、および還元に関する不活性(e点)は、cb−te1paの銅キレートとは違って最適化されない。
【0186】
dotaおよびcb−do2aと比較したデータならびにtetaおよびcb−te2aに関するデータも提供されている。dotaおよびtetaに架橋を導入するとメタル化速度が劇的に低下したが、驚くべきことにte1paを架橋してcb−te1paを得る際には、その低下は観察されなかった。
【0187】
dotaおよびtetaの熱力学的安定性は、te1paおよびcb−te1paのものよりも非常に低い。tetaを架橋してcb−te2aを得ることにより、熱力学的安定性が高まる。
【0188】
25℃の5MのHClO
4中での速度論的不活性は、他のキレートと比較してcb−te1paの銅キレートでは劇的に高まる。
【0189】
さらに、cb−te1paの銅キレートは、以下の表で比較されているもののうち、還元に対する好適な安定性を示す唯一のキレートである。
【0190】
従って、cb−te1paは、核医学での使用を目的として最適化されたキレートのための全ての規格要件を満たすキレートを提供し、これは先行技術の配位子からのキレートでは決して達成されなかったことである。
【表8】
【0191】
V.生物学的研究
V.1.
64Cu−Ib−2の生体外での血清安定性
50μLの
64Cu−Ib−2(1〜2mCi)を500μLのFBS(ウシ胎児血清)に添加することにより、
64Cu−Ib−2(上記III.3の箇所を参照)の生体外での血清安定性試験を行うことができる。次いで、この溶液を37℃で温置し、FBSへの投与から0、10、30、60分後および2、4、10、24、48および72時間後にラジオTLCにより試料を分析する。
【0192】
V.2.
64Cu−化合物(Ib−1)−トラスツズマブの生体内試験
動物モデル
6週齢のBALB/cのnu/nu雌ヌードマウスを用いて、NIH3T6.7細胞株の異種移植片腫瘍モデルを準備することができる。5×10
6個のNIH3T6.7細胞をマウスのに左肩および右脇腹に皮下接種した。適当な大きさの腫瘍は、通常移植後15日以内に増殖する。
【0193】
体内分布
NIH3T6.7腫瘍を有するBALB/cヌードマウス(n=4)に
64Cu−化合物(Ib−1)−トラスツズマブ(1匹のマウスにつき200μLの生理食塩水中に約20μCi)を尾静脈注射する。注射から1日および2日後に動物を屠殺する。次いで、対象の臓器および組織(血液、筋肉、骨、脾臓、腎臓、腸、肝臓および腫瘍)を取り出し、重量を測り、ガンマカウンターで計数する。重量を測って計数した標準と比較することにより、1g当たりの注射した用量の割合(%ID/g)を計算することができる。
【0194】
NIH3T6.7腫瘍を有するヌードマウスにおける極小PETイメージング
極小PET−R4齧歯モデルスキャナーを用いて、小さい動物のPETスキャンおよび画像分析を行うことができる。NIH3T6.7腫瘍を有する雌のヌードマウスに対して画像診断を行う。このマウスに
64Cu−TE2A−Bn−NCS−トラスツズマブ(200μCi)を尾静脈注射する。注射から1日、2日および3日後に、このマウスを1%〜2%のイソフルランで麻酔し、腹臥位にし、画像撮影した。2次元オーダーサブセット期待最大化(OSEM:ordered-subsets expectation maximum)アルゴリズムにより画像を再構築することができる。