特許第6514718号(P6514718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6514718ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う痛みを局所的に治療するためのデバイスおよび製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514718
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う痛みを局所的に治療するためのデバイスおよび製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20190425BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/245 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/335 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/4453 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/529 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 31/4741 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 33/14 20060101ALI20190425BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190425BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   A61K9/70
   A61P15/00
   A61K31/167
   A61K31/245
   A61K31/5375
   A61K31/335
   A61K31/416
   A61K31/4453
   A61K31/47
   A61K31/135
   A61K31/519
   A61K31/529
   A61K31/352
   A61K31/4741
   A61K33/00
   A61K33/14
   A61P43/00 121
   A61P23/02
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-567019(P2016-567019)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公表番号】特表2017-520518(P2017-520518A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2015000989
(87)【国際公開番号】WO2015172885
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年2月8日
(31)【優先権主張番号】61/993,675
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390035404
【氏名又は名称】グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(72)【発明者】
【氏名】ディミーノ・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】パッパギャロ・マルコ
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゲルストハイマー・フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ケトグラス・エミリオ・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】デルガーウ・ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ニール・ファン・ヨハンネス
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540534(JP,A)
【文献】 特表2008−507347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/70−9/72
A61K 47/00−47/69
A61L 15/00−33/18
A61F 13/15−13/84
A61K 31/135
A61K 31/167
A61K 31/245
A61K 31/335
A61K 31/352
A61K 31/416
A61K 31/4453
A61K 31/47
A61K 31/4741
A61K 31/519
A61K 31/529
A61K 31/5375
A61K 33/00
A61K 33/14
A61P 15/00
A61P 23/02
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に女性下着の内側に配置され女性外陰部領域の皮膚に少なくとも部分的に接触するように形作られた層状の物品である、ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛の局所的治療のためのデバイス(1)であって、前記物品は、長手方向(L)、横断方向(T)、前端(F)、後端(B)および2つの長手方向側部(S、S’)を有し、そして前記デバイス(1)は、少なくとも、
a)外側面(2a)および内側面(2b)を有する製剤不透過性外側層(2)と、
b)内側キャリア面(5a)および皮膚接触面(5b)を有するキャリア層(5)であって、前記内側キャリア面(5a)が、前記製剤不透過性外側層(2)の前記内側面(2a)の方向に面する、キャリア層(5)と、
c)ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛を治療するための少なくとも1種の活性薬剤を含む局所製剤と
を含む、デバイス(1)。
【請求項2】
前記キャリア層に、少なくとも部分的に前記局所製剤が含浸されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
d)製剤不透過性外側層(2)の前記内側面(2b)上に重ね合わされ、その内側セクションを覆っておらず、それによって前記物品の長手方向(L)に延びるチャネル(4)を形成する、製剤不透過性リム層(3)と、
e)内側キャリア面(5a)および皮膚接触面(5b)を有するキャリア層(5)であって、前記内側キャリア面(5a)が前記製剤不透過性リム層(3)および前記チャネル(4)の方向に面するように、前記製剤不透過性リム層(3)および前記チャネル(4)上に重ね合わせられている、キャリア層(5)と
をさらに含み、
前記キャリア層(5)に、少なくとも部分的に前記局所製剤が含浸され、および/または、少なくとも1つの投薬ユニット(6)が、前記チャネル(4)に隣接する前記製剤不透過性外側層(2)と前記製剤不透過性リム層(3)との間に介在する位置に配置され、前記投薬ユニット(6)が、前記チャネル(4)内に放出されるべき局所製剤を含む、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記チャネル(4)が、前記デバイス(1)の前記後端(B)の方に面する本質的に横断方向に延びる下端(9)を有し、前記投薬ユニット(6)が、前記チャネル(4)の前記下端(9)に隣接して配置される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記投薬ユニット(6)が、圧力で作動する、請求項3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記投薬ユニットが、破裂可能なパウチに含まれた局所製剤を含むリザーバを含む、請求項3〜5のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項7】
前記チャネル(4)が、前記デバイスの前記前端(F)に面する上端(10)を有し、前記チャネル(4)の幅が、少なくとも該チャネルの断面において、前記下端(9)におけるチャネル(4)の幅に比べて、その長さに沿って前記前端(F)の方向に増大する、請求項3〜6のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項8】
前記外側層(2)が、少なくとも1つの下着固定部(7)をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記外側層が、前記物品(1)の前記長手方向側部(S、S’)のそれぞれにウイング領域(8)を含み、前記ウイング領域(8)のそれぞれが、少なくとも1つの下着固定部(7)を含む、請求項1〜8のいずれか一つに記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記下着固定部(7)が、液体不透過性外側層(2)の前記外側面(2a)上に配置される感圧接着剤領域である、請求項8または9に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記外側層(2)の前記外側面(2a)に固定された取り外し可能な第1のリリース・ライナー(11)を含む、請求項1〜10のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1のリリース・ライナー(11)に固定され、前記キャリア層(5)の前記皮膚接触面(5b)を覆う、取り外し可能な第2のリリース・ライナー(12)を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記製剤不透過性外側層(2)が、無孔材料、液体不透過性にされた多孔質材料、微孔質材料および独立気泡フォーム材料またはそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の液体不透過性材料を含む、請求項1〜12のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項14】
前記製剤不透過性リム層(3)が、無孔材料、液体不透過性にされた多孔質材料、微孔質材料および独立気泡フォーム材料またはそれらの組み合わせからなる群からの第2の液体不透過性材料を含む、請求項1〜13のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項15】
前記キャリア層(5)が、少なくとも1つの多孔質材料または半多孔質材料を含む、請求項1〜14のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項16】
前記局所製剤中の前記活性薬剤が、局所的に使用される場合に、鎮痛除痛効果を有する薬剤である、請求項1〜15のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項17】
前記局所製剤が、
a)少なくとも1種の電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーと、
b)少なくとも1種の肥満細胞安定剤および/または皮膚脱感作性非ヒスタミン作動性アルカリもしくはアルカリ土類金属化合物と、
c)少なくとも1種の医薬担体または添加剤と
を含み、
前記局所製剤が、25℃および3.5〜4.5の範囲のpH値において、Brookfield LVT粘度計#1スピンドルによる60rpmで測定した場合に、5〜600cpsの範囲内の粘度を有する、
請求項1〜16のいずれか一つに記載のデバイス
【請求項18】
前記電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーが、リドカイン、ベンゾカイン、プラモキシン、ドキセピン、ベンジダミン、ジクロニン、ブピバカイン、プリロカイン、テトラカイン、プロカインまたはシンコカイン、アミトリプチリン、ドキセピン、GTX2、3およびGTX1、4、ネオサキシトキシンおよびテトロドキシンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載のデバイス
【請求項19】
前記電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーが、リドカイン、ベンゾカインおよびプラモキシンからなる群から選択される、請求項17または18に記載のデバイス
【請求項20】
前記肥満細胞安定剤が、クロモリンおよびネドクロミルからなる群から選択され、前記皮膚脱感作性非ヒスタミン作動性のアルカリもしくはアルカリ土類金属化合物が、カリウム塩またはストロンチウム塩であり、好ましくは、硝酸カリウムまたは塩化ストロンチウムである、請求項17〜19のいずれか一つに記載のデバイス
【請求項21】
ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛の局所的治療のためのキットであって、使用時に女性下着の内側に配置され女性外陰部領域の皮膚に少なくとも部分的に接触するように形作られた層状の物品であるデバイス(1)を含み、前記物品が、長手方向(L)、横断方向(T)、前端(F)、後端(B)および2つの長手方向側部(S、S’)を含み、前記デバイス(1)が、少なくとも、
a)外側面(2a)および内側面(2b)を有する製剤不透過性外側層(2)と、
b)内側キャリア面(5a)および皮膚接触面(5b)を有するキャリア層(5)であって、前記内側キャリア面(5a)が、前記製剤不透過性外側層(2)の前記内側面(2a)の方向に面する、キャリア層(5)と
を含み、
前記キットは、
ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛を治療するための局所製剤であって、
a)少なくとも1種の電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーと、
b)少なくとも1種の肥満細胞安定剤および/または皮膚脱感作性非ヒスタミン作動性アルカリもしくはアルカリ土類金属化合物と、
c)少なくとも1種の医薬担体または添加剤と
を含み、25℃および3.5〜4.5の範囲のpH値において、Brookfield LVT粘度計#1スピンドルによる60rpmで測定した場合に、5〜600cpsの範囲内の粘度を有し、前記デバイスの使用前に前記キャリア層の前記皮膚接触面に適用される、局所製剤
をさらに含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト女性生殖器の外陰部を襲う疼痛を局所的に治療するためのデバイス、本発明によるデバイスに使用するための製剤、および本発明によるデバイスを含むキットに関する。さらに、本発明は、本発明によるデバイスを使用する、ヒト女性生殖器の外陰部を襲う疼痛を局所的に治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヴルヴォディニア(vulvodynia)は、ヒト女性生殖器の外陰部を冒す慢性疼痛症候群である。それは主に、特定できる原因または目に見える病変がなく起こる。状態は、中程度から重度まであり、外陰部の特定領域またはその全体に現れることがある。しかし、外陰部前庭炎症候群と称される、外陰部の前庭域における状態の罹患率がより高いという報告がなされている。ヴルヴォディニアに知られた治療法はないが、局所的な治療は、多くの専門分野にわたっており、数ある治療方法および物理療法の中でも、滑らかにし、痛みを和らげる効果のために局所的に適用される軟膏、クリーム、ジェルおよびモイスチャーライザの使用、痛みを遮断、軽減またはなくすための局所的な鎮痛薬、麻酔薬、抗炎症薬、ならびにホルモン薬の使用が挙げられる。例えば、WO2008/110872(特許文献1)には、ナトリウムチャネル薬、コリン作動薬および酸化窒素供与体の組み合わせを含む、発泡性組成物が記載されている。この文献には、発泡性組成物が適当と考えられる治療についての多くの状態のうちの1つとしてヴルヴォディニアが記載されている。上述した局所製剤を治療領域に適用する現在の方法は、ある量の局所薬を手に取り、次いで、その薬を疼痛を発している外陰部の皮膚表面に塗布する。この方法は、効率的でなく、非衛生的であり、患者にとっては日常生活の中で行いにくく、適用を行うのに十分なプライバシーが保たれる場所を使用することが必要である。
【0003】
ヒト女性生殖器の皮膚表面領域に直接薬剤を適用することは、かなり以前からすでに提案されてきている。例えば、医薬物質を投与するための、生理用ナプキン、パンティーライナー、陰唇内吸収デバイスまたはタンポンなど、使い捨て吸収品を使用することが提案されている。
【0004】
WO99/47121(特許文献2)には、タンポンのような使い捨て吸収品を用いた治療薬の投与が提案されているが、そうした投与に特に適合されたデバイスについても、使用可能な医薬化合物またはそうした吸収デバイスを用いて治療可能な医学的状態についての情報も何も教示されていない。
【0005】
WO02/102424(特許文献3)には、月経前症候群の治療および/または予防に適合された、生理用ナプキン、パンティーライナーおよび陰唇間月経保護デバイスのような使い捨て吸収品が記載されている。月経前症候群の治療に適した医薬物質の全身投与を達成するために、活性薬剤を身体に送達するのに適した経皮治療システムによって少なくとも部分的に従来型の吸収品を覆うことが提案されている。
【0006】
米国特許出願第2005095232A1号(特許文献4)には、膣の粘膜を保護するための膣治療組成物が提案されている。前記組成物は、選択された生菌または死菌の細菌/微生物を含む。そうした治療組成物を投与する方法としては、治療組成物をタンポンまたはパンティーライナーに組み入れることによってそれを行うことが提案されている。同様に、米国特許第3,521,637号(特許文献5)には、膣感染症に関連する種々の疾患の治療および/または予防のためのビタミンAを含むタンポンまたは生理用ナプキンが提案されている。ビタミンAは、タンポン/生理用ナプキンの繊維性マトリックス内にマイクロカプセル化される形か、そうしたマトリックス内に1つまたは複数の破裂可能な膜もしくはカプセル内に封入されるかのいずれかで、吸収品に組み入れられる。同様に、米国特許第3,902,493号(特許文献6)には、膣炎などの膣域の障害をコントロールし治療するための薬用の生理用タンポンが記載されている。当該タンポンは、弾力のある発泡体、および、月経液体を透過することができる、薬物が担持された疎水性の不織上包を含み、膣域の障害をコントロールし治療するための薬剤の非月経時ならびに月経時の送達に適合されている。
【0007】
上述したデバイスは、ヒト女性生殖器の皮膚表面を介したまたは皮膚表面への医薬品の送達のための従来型の吸収品の使用の提案か、この目的のために特に適合されたタンポンの使用の提案のいずれかである。しかし、ヒト女性の身体の外陰部領域における疼痛の治療についてはこれらのデバイスでは提案されていない。
【0008】
特に、ヒト女性生殖器の外陰部領域における疼痛を局所的に治療するように特に設計されたデバイスが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2008/110872
【特許文献2】WO99/47121
【特許文献3】WO02/102424
【特許文献4】米国特許出願第2005095232A1号
【特許文献5】米国特許第3,521,637号
【特許文献6】米国特許第3,902,493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、女性生殖器の外陰部を襲う疼痛を局所的に治療するためのデバイスを提供することである。さらに、本発明の目的は、女性生殖器の外陰部を襲う疼痛を局所的に治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛の局所的治療のためのデバイスが提供される。該デバイスは、使用時に女性下着の内側に配置され女性外陰部の皮膚に少なくとも部分的に接触するように形作られる層状の物品である。前記物品は、長手方向、横断方向、前端、後端および2つの長手方向側部を含む。前記デバイスは、少なくとも、
a)外側面および内側面を有する製剤不透過性外側層と、
b)内側キャリア面および皮膚接触面を有するキャリア層であって、前記内側キャリア面は、製剤不透過性外側層の内側面の方向に面する、キャリア層と、
c)ヒト女性生殖器の外陰部を襲う疼痛を治療するための少なくとも1つの活性薬剤を含む流動性の局所製剤と
を含む。
【0012】
本発明によるデバイスの一実施形態では、キャリア層には、少なくとも部分的に、流動性の局所製剤が含浸される。
【0013】
本発明の第2の態様では、ヒト女性生殖器の外陰部を襲う疼痛を局所的に治療するためのデバイスが提供され、該デバイスは、使用時に女性下着の内側に配置され女性外陰部の皮膚に少なくとも部分的に接触するように形作られる層状の物品であり、前記物品は、長手方向、横断方向、前端、後端および2つの長手方向側部を有し、前記デバイスは、少なくとも、
a)外側面および内側面を有する製剤不透過性外側層と、
b)製剤不透過性外側層の内側面上に重ね合わされ、その内側セクションに及んでおらず、それによって物品の長手方向に延びるチャネルを画成する、製剤不透過性リム層と、
c)内側キャリア面および皮膚接触面を有するキャリア層であって、内側キャリア面が製剤不透過性リム層およびチャネルの方向に面するように、製剤不透過性リム層およびチャネル上に重ね合わせられる、キャリア層と
を含み、
キャリア層が、少なくとも部分的に局所製剤で含浸され、および/または、少なくとも1つの投薬ユニットが、チャネルに近接する製剤不透過性外側層と製剤不透過性リム層との間に介在する位置に置かれ、前記投薬ユニットは、チャネル内に放出されるべき局所製剤を含む。
【0014】
本発明によるデバイスによって、疼痛を緩和する活性薬剤を皮膚の患部に効果的かつ衛生的に簡単に局所適用することができるようになる。デバイスの形状は、デバイスが、患者の下着の内側に配置可能なような形であり、すなわち、デバイスは、使用中に女性生殖器領域の解剖学的構造に本質的に適合するように形作られる。したがって、物品は、外陰部を覆う本質的に細長い形状のものであってよい。そうした形状の例には、特に女性が生理中に使用する生理用ナプキンまたはパンディーライナーなどの使い捨て個人衛生品によく使用されるものがある。
【0015】
上記デバイスは、生理用ナプキンまたはパンティーライナーなど、従来の吸収品と同様に患者の下着の内側に簡単に配置され、キャリア層は患者の皮膚の方向に面する。使用中、キャリア層の皮膚接触面は、患者の皮膚患部の皮膚に接触し、それによって、キャリア層に染み込んでいるまたは投薬ユニットからチャネル、したがってキャリア層に放出された局所製剤が、患者の皮膚に投与される。投薬ユニットを含む本発明のそれらの実施形態では、チャネルは、局所製剤が投薬ユニットによってキャリア層に放出されるデバイスの領域を形成する。チャネルは、キャリア層の選択された領域に局所製剤を最大限に分配するように形作られ得る。チャネルを、疼痛状態による影響が最も深刻な患者の皮膚領域への局所薬剤の投与を可能にするような形状にすれば、製剤の局所的な適用が最も効果的になることは明らかである。
【0016】
本発明に従って物品内に投薬ユニットを設けることは、いくつか利点を持ち合わせる。1つには、物品の使用前に局所製剤を投薬ユニット内に閉じ込めることができ、それは、デバイスの製造、包装およびその後の取り扱いに関して有利である。さらに、投薬ユニットは、物品の使用の間における患者による局所製剤の容易な順次的投与を可能にするように設計され得る。これによって、要望に応じた患者への活性薬剤の提供が可能になり、それは、ヴルヴォディニアにより生じる疼痛が慢性的であり、しばしば時間と共に強さが変わる場合に特に有用である。投薬ユニットは、例えば、圧力によって作動することができ、したがって、デバイスの使用中に投薬ユニットに圧力を加える、例えば単に指でリザーバを押すだけで、追加の局所製剤がユニットからチャネル内へと放出される。これは、患者が、局所製剤の追加の用量を受容するのに彼女の下着を脱ぐ必要がなく、したがって順次的な投与がより簡単になり、日常生活における不便さが軽減されるという利点を有する。
【0017】
製剤不透過性外側層は、局所製剤に対して本質的に不透過性である、または本質的に不透過性になるように処理された任意の使用可能な材料から作られ得る。例えば、製剤不透過性外側層は、局所製剤が下着に漏れるのを防ぐように、材料が局所製剤に対する十分な不透過性をもたらすことを前提とした、生理用ナプキンまたはパンティーライナーにおいて「バック・シート」と呼ばれ、従来から使用されている材料のうちのいずれかから作られる。製剤不透過性外側層は、ポリマーフィルム、織物または不織布、ならびにそれらの組み合わせおよび複合物を含む材料から選択することができる。例えば、製剤不透過性外側層は、織物または不織布に重ね合わされるポリマーフィルムを含むことができる。適当なポリマーフィルム材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロンなど、ならびにそれらの組み合わせからなってよい。製剤不透過性外側層は、通気性の良い素材、例えば、物品の中に空気や湿気を十分に通すことができるが局所製剤は通さない微孔質材料から作られることが適している。織物または不織布またはそれらの組み合わせを製剤不透過性外側層として使用する場合、これらの層のうちの少なくとも1つは、局所製剤に対して適切に不透過性になるように処理されていなければならない。製剤不透過性外側層としてまたはそれに使用される他の適当な材料は、独立気泡ポリオレフィンフォームである。典型的には、製剤不透過性外側層は、低密度ポリエチレン(「LDPE」)または二軸延伸ポリプロピレン(「BOPP」)から作られるバック・シートであってよい。そうした液体不透過性材料は、例えば、使い捨て物品の分野で周知であり、市販されており入手しやすい。局所製剤に対する不透過性に加えて、使用される材料は、デバイスが使用者の解剖学的構造に適合することができるように十分な可撓性を有する必要がある。好ましくは、材料は、感圧接着剤の接着を可能にする表面エネルギーを有し、印刷可能であることが好ましい。したがって、本発明の実施形態では、製剤不透過性外側層は、無孔材料、液体不透過性にされた多孔質材料、微孔質材料および独立気泡フォームまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の製剤不透過性材料を含む。
【0018】
製剤不透過性外側層の外側面は、装着の心地よさを向上させるように処理され得る。そうした表面の特性を向上させるのに適した処理は、例えば、WO2013/175322に記載されている。あるいは、またはそれに加えて、製剤不透過性外側層として使用される層状複合材料の一部として、皮膚により柔らかな肌触りをもたらす材料の層が設けられてもよい。
【0019】
任意選択で、製剤不透過性外側層は、微細エンボス加工される、印刷されたデザインを有する、もしくはその外側面に印刷された消費者へのメッセージを有することができ、または、層は、少なくとも部分的に色付けされてもよい。
【0020】
製剤不透過性リム層に使用される材料は、使用中にデバイスが使用者の解剖学的構造に適合することができるように十分な可撓性である必要があり、接着剤によって近接する材料層に接着されるのに適しているべきであり、例えば、材料は、接着剤の使用に必要な適当な表面エネルギーを示すべきである。製剤不透過性リム層に使用される材料は、例えば、製剤不透過性外側層に使用可能な同じ材料から選ぶことができる。
【0021】
キャリア層は、キャリア層の材料への局所製剤の含浸および/または吸収ならびにそれにより治療領域への局所製剤の送達を可能にする多孔質または半多孔質の材料から作られる。デバイスに投薬ユニットが含まれない場合、上記材料は、使用時まで所定量の局所製剤をキャリア層内に制御された様式で貯蔵するためにそれを吸収することができなければならず、そして、デバイスが使用のために配置された後は、治療領域の皮膚表面に局所製剤の少なくとも一部を放出することができなければならない。用語「キャリア層」に関して、語句「含浸される」は、キャリア層の多孔質または半多孔質材料が、ある量の局所製剤に接触し、例えば材料の多孔質性または半多孔質性に関連する毛管力による層への吸収によって、局所製剤のその量のうちの少なくとも一部がキャリア層を形成する材料に吸収される、という意味であると理解すべきである。適当な材料には、綿、紙またセルロース系材料から作られる多孔質または半多孔質材料が含まれる。したがって、本発明のさらなる実施形態では、キャリア層は、綿、紙またはセルロース系材料の群から選択される多孔質または半多孔質材料を含む。そうした多孔質または半多孔質材料には、織物、不織布または発泡材料、例えば連続気泡フォーム材料がある。そうした材料の例としては、スパンボンドポリマー不織材料があり、例えば、DuPont社から入手可能なTyvek(著作権)などの高密度ポリエチレン、Polymer Group,Inc.から入手可能なものなどの衛生用品用ポリマー不織材料、または、例えば3mmの厚さのフルコットンバッティング不織材料である例えばコットン・バッティング不織材料から作られるスパンボンド不織布が挙げられる。キャリア層への局所製剤の吸収は、材料が持つ多孔性によるウィッキング作用によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、キャリア層を作る材料は、材料内における液体製剤の好ましい移動方向を、特にキャリア層の外側面に対して垂直な方向に有する。それによって、局所製剤の、本質的に局所的なキャリア層の所定領域内における、すなわちそれの吸収のために局所製剤に直接接触するそれらの領域内における封じ込めが容易になる。そうした材料は、例えば、おむつ、生理用ナプキンなどの衛生用品でのそれらの使用から知られている。デバイスに投薬ユニットが設けられる場合、多孔質キャリア材料は、チャネル内に分布する局所製剤をキャリア層の皮膚接触面に効果的に移すことができ、それによって局所製剤が治療領域内の皮膚表面と接触することが可能になる。ここでもやはり、液体材料に関して好ましい移動方向を示すように材料を設計すれば、チャネルのデザインによって形成されるような治療領域への局所製剤の輸送が最大になるという利点が生まれる。
【0022】
少なくとも1つの投薬ユニットを含む本発明によるデバイスの実施形態では、投薬ユニットは、局所製剤のためのリザーバを含む。このリザーバは、例えば、製剤不透過性外側層とリム層との間に形成されるチャンバとして設けられてよい。そうしたチャンバは、例えば、デバイス内に、チャンバを形成するように、製剤不透過性外側層とリム層が互いに接着されない領域をもたらすことによって形成され得る。あるいは、製剤不透過性外側層とリム層との間に別個のパウチが介在されるように設けられてもよい。そうしたパウチは、例えば、製剤と外側層およびリム層の材料との間の長期の直接的な接触を回避しなければならない場合に使用することができる。本発明によるデバイスのさらなる実施形態では、リザーバは、パウチ、アンプルまたはチューブの形をとることができる。チャンバ、パウチ、アンプルまたはチューブは全て、局所製剤のためのリザーバとして作用するので、それらは、所定量の局所製剤がそれに充填可能でありそしてそこから局所製剤をチャネルに放出可能なように形成されなければならない。これは、例えば、それを通して液体製剤が流れることができるチャネルへの開口部または出口を設けることによって達成することができる。ここでもやはり、この開口部は、チャンバ/パウチとチャネルを連結する開口部が形成されるべき領域において、製剤不透過性外側層とリム層との間で一切接着をもたらさないことによって設けられてよい。あるいは、そうした開口部または出口は、チューブ、例えばプラスチック製のチューブを、チャネルとチャンバまたはパウチとの間に連結部が形成されるように製剤不透過性外側層とリム層との間に介在させて設けることによって形成してもよい。本発明によるデバイスのさらに他の実施形態では、投薬ユニットは圧力により作動する、すなわち、リザーバに十分な圧力量が加えられると局所製剤がチャネル内に放出される。必要な圧力量は、投薬ユニットのリザーバを形成するのに使用する材料の選択によって制御することができる。一般的に、リザーバは、デバイスの使用者が、単に彼女の指でリザーバに圧力を加えることによってリザーバから局所製剤を放出できるように構成される。この目的のため、製剤不透過性外側層の外側面には、デバイス内のリザーバの位置を明確に示すようにマークが付けられる。本発明によるデバイスのさらに他の実施形態では、投薬ユニットは、局所製剤を含むリザーバとして機能する、圧力で破裂するパウチを含む。このパウチは、製剤がチャネル内に放出されるのに十分な圧力量がその上に加えられると破裂する。パウチの破裂に必要な圧力量は、ここでもやはり、パウチを形成する材料の選択によって制御することができる。例えば、局所製剤に対する不透過性を有する薄いポリマーフィルム、例えば、非常に薄い厚さ例えば約1.5ミル以下の厚さのLDPEフィルムをパウチの形成に使用することができる。
【0023】
本発明によるデバイスは、局所製剤の単回の用量をチャネルに、したがって患者に放出するように、または追加の用量の放出を可能にするように設計され得る。これは、1回分の用量よりも多い局所製剤を保持するのに十分に大きいリザーバをデバイス内に設けることによってか、デバイス内に1つ超、すなわち2つ、3つまたはより多くの投薬ユニットを設けることのいずれかによって達成され得る。
【0024】
本発明によるデバイスのさらなる実施形態では、チャネルは、デバイスの後端の方に面する下端を有し、前記下端は、本質的に横断方向に延び、そして、それに投薬ユニットがチャネルの当該下端に近接して配置される。投薬ユニットをチャネルの下端、したがってチャネルの下端と使用中に前庭域とは反対の位置であるデバイスの後端との間に配置することによって、チャネルは、ヴルヴォディニアの最も高い罹患率を示す外陰部の部分、すなわち前庭域を覆うように配置され得るようになる。
【0025】
本発明によるデバイスのさらに他の実施では、チャネルは、デバイスの前端の方に面する上端を有し、チャネルの幅は、少なくともチャネルの断面において、下端におけるチャネルの幅に比べてその長さに沿って前端の方向に増大する。チャネルの幅は、治療が必要な上記領域への局所製剤の送達を最大にするように、外陰部領域の解剖学的構造に最も良く合うように適合させることができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも1つの下着固定部を含む。下着固定部は、使用中、デバイスを所定位置に保つ。下着固定部は、例えば、製剤不透過性外側層の外側面の1つまたは複数の領域に塗布される感圧接着剤であってよい。感圧接着剤は、下着の布地の内側にデバイスを確実に接着させるように働き、使用中、デバイスがその位置から動かないようにする。感圧接着剤によって、それを下着から単に引っ張ることにより、下着からデバイスを簡単に取り外すことができるようになる。適当な感圧接着剤は、生理用ナプキンまたはパンティーライナーにおける下着固定部としてよく使用されるものである。接着剤は、製剤不透過性外側層として使用される材料の表面に適切なレベルの接着を示し、皮膚の接触にふさわしい、例えばヒトの皮膚に生体適合性があれば、その接着の性質はさほど重要ではない。
【0027】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスの外側層は、その長手方向側部のそれぞれにウイング領域を含み、前記ウイング領域のそれぞれは、少なくとも1つの固定部を含む。生理用ナプキンと同様に、使用中、ウイング領域は、下着の布地の周りに折り曲げられ、下着固定部は、下着の布地の外側に取り付けられる。それによって、使用中、所望位置でのデバイスの追加の固定が実現する。ここでもやはり、下着固定部は、デバイスの製剤不透過性外側層の外側面上における感圧接着剤領域として設けられる。
【0028】
本発明のさらに他の実施形態では、デバイスは、製剤不透過性外側層の外側面に固定される取り外し可能な第1のリリース・ライナーを含む。リリース・ライナーは、下着固定部を保護し、使用前にデバイスから取り外される。リリース・ライナーの材料は、生理用ナプキンもしくはパンティーライナーなどの使い捨て吸収品または経皮薬物送達デバイスにおいてリリース・ライナーとしてよく使用される任意の材料であってよい。そうしたリリース・ライナーの例としては、例えば、3M社によって提供される、3Mリリース・ライナー(Release Linears)4996、4997、4986、4935、4998および7526、またはFox River Associates,LLCから入手可能なFox River Linear S1S、S2Sなどのリリース・ライナーがある。
【0029】
本発明のさらに他の実施では、デバイスは、第1のリリース・ライナーに固定されキャリア層の皮膚接触面を覆う、取り外し可能な第2のリリース・ライナーを含む。第2のリリース・ライナーは、局所製剤キャリアの皮膚接触面を保護し、使用の前にデバイスから取り外される。いくつかの実施形態では、第2のリリース・ライナーは、第1のリリース・ライナーと相まって、使用前にデバイスが貯蔵されるパウチを形成することができ、すなわち、第1および第2のリリース・ライナーは、デバイスよりも寸法が大きく、保護パウチを形成するように互いに接合される。そうしたパウチを形成するために、第1および第2のリリース・ライナーは、例えば感圧接着剤または同様のものを用いることによって、互いに確実に接着するように作られる。感圧接着剤を用いれば、それらを引き離すことによって、2つのリリース・ライナーを互いに分離することができるようになる。取り外し可能な第2のリリース・ライナーを作るのに、第1のリリース・ライナーと同じ材料を使用することもできる。
【0030】
本発明によるデバイスは、ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛の治療、特にヴルヴォディニアの治療のための局所製剤を送達するように設計される。局所製剤は、デバイスの必須部分であってもよく、または、デバイスと、デバイスの使用前に組み合わされる別個の成分としての製剤とを含むキットの一部を形成することもできる。本発明に使用される局所製剤は、局所的に使用される場合に鎮痛除痛効果(analgesic desensitizing effect)を有しているべきである活性薬剤を含む。適当な活性薬剤は、例えばリドカイン、ベンゾカイン、プラモキシン、ドキセピン、ベンジダミン、ダイクロニン、ブピバカイン、プリロカイン、テトラカイン、プロカインもしくはシンコカインなどのVG−ナトリウムチャネルブロッカーまたは新VGナトリウムチャネルブロッカー;アミトリプチリン、ドキセピン、GTX2,3およびGTX1,4(ゴニオトキシン類)、ネオサキトキシンおよびテトロドキシン;例えばネドクロミルもしくはクロモリンなどの肥満細胞安定剤;例えばN−パルミトイル−バニルアミド(パルバニル)、アルバニル、オルバニルなどの非刺激性(non−pungent)TRPV−1作動薬;例えばパルミトイルエタノールアミド(PEA)、アナンダミドおよびカンナビジオールなどの内因性カンナビノイド類およびカンナビノイド類;例えばガバペンチンもしくはプレガバリンなどのガバペンチノイド類;例えばジクロフェナク、レチガビン、フルピルチンもしくはクロマカリムもしくはバクロフェンなどのカリウムチャネル開口薬およびモジュレータ;例えばクロニジンもしくはデキスメデトミジンなどのアルファ−2アドレナリン作動薬、またはケタミンなどのNMDA拮抗薬;またはそれらの組み合わせの群から選択することができる。さらに、局所製剤は、任意選択で、カリウム塩またはストロンチウム塩などの、脱感作性非ヒスタミン作動性(desensitizing, non−histaminergic)のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を含むことができる。これらの塩類の中の陰イオンは、有機または無機の陰イオンのいずれかであってよい。
【0031】
本発明のさらなる実施形態では、局所製剤は、活性薬剤として、少なくとも1つまたは複数のVGナトリウムチャネルブロッカーまたは新VGナトリウムチャネルブロッカーを含む。これらは、単独で、または他の薬物クラスからの活性薬剤、例えば肥満細胞安定剤および/もしくは脱感作性非ヒスタミン作動性アルカリ土類金属塩類などと組み合わせて使用することができる。例えば、局所製剤は、リドカイン、プラモキシン、ベンゾカイン、ダイクロニン、ドキセピン、アミトリプチリン、GTX2、3およびネオサキシトキシンからなる群から選択される1つまたは複数のVG−ナトリウムチャネルブロッカーまたは新VG−ナトリウムチャネルブロッカーを含むことができる。さらに、局所製剤は、クロモリン、ネドクロミル、パルミトイルエタノールアミド(PEA)、カンナビジオール、およびN−パルミトイル−バニルアミド(パルバニル)からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含むこともできる。さらに、局所製剤は、ストロンチウム(好ましくは塩の形態の)、ガバペンチン、ジクロフェナク、バクロフェン、クロニジンおよびケタミンからなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含むことができる。
【0032】
さらなる実施形態では、局所製剤は、少なくとも1つの電位依存性ナトリウムチャネルブロッカー、特にリドカイン、プラモキシンおよびベンゾカインを、肥満細胞安定剤、特にクロモリン、および脱感作性非ヒスタミン作動性のアルカリ化合物またはアルカリ土類金属化合物、特にカリウムまたはストロンチウム、好ましくはストロンチウム塩、例えば塩化ストロンチウムと組み合わせて含む。
【0033】
局所製剤は、意図する局所的な使用に適したレオロジー特性および粘性を有していなければならない。これらの特性は、物品の使用前に局所製剤がキャリア層に含浸としてのみ存在する場合、または、局所製剤が投薬ユニット内に追加的もしくは排他的に存在する場合に、異なってよい。好ましくは、局所製剤は、25℃(華氏77度)において、Brookfield LVT粘度計#1スピンドルによる60rpmでの測定で、5〜600cpsの範囲内の粘性を有する流体である。さらに、製剤は、分離、凝集または沈殿することなく、温度39℃で安定であるべきである。好ましくは、製剤は、患者に不快感を与えるのを防ぐために、乾燥しても硬いまたは粗い表面を残さないべきである。さらに、製剤は、膣での使用のために、好ましくはpH値3.5〜4.5である、pHバランスに保たれるべきである。
【0034】
本発明のさらなる一態様では、ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛を治療するための局所製剤が提供され、該局所製剤は、
a)少なくとも1つの電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーと、
b)少なくとも1つの肥満細胞安定剤および/または皮膚脱感作性非ヒスタミン作動性のアルカリ化合物もしくはアルカリ土類金属化合物と、
c)少なくとも1つの医薬担体または添加剤と
を含み、
25℃および3.5〜4.5の範囲のpH値において、Brookfield LVT粘度計#1スピンドルによる60rpmでの測定で、5〜600cpsの範囲内の粘性を有する。
【0035】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、局所薬剤は、リドカイン、ベンゾカイン、プラモキシン、ドキセピン、ベンジダミン、ジクロニン、ブピバカイン、プリロカイン、テトラカイン、プロカインまたはシンコカイン;アミトリプチリン、ドキセピン、GTX2、3およびGTX1、4、ネオサキシトキシンおよびテトロドキシン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーを含む。いくつかの実施形態では、電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーは、リドカイン、ベンゾカインおよびプロモキシンからなる群から選択される。
【0036】
本発明による局所製剤の実施形態では、肥満細胞安定剤は、クロモリンおよびネドクロミルからなる群から選択され、皮膚脱感作性非ヒスタミン作動性のアルカリもしくはアルカリ土類金属化合物は、カリウム塩またはストロンチウム塩であり、好ましくは、硝酸カリウムまたは塩化ストロンチウムである。
【0037】
デバイスと共に使用される局所製剤の量は、投薬ユニットによって送達されるべき投与量の数に応じて決まる。好ましくは、局所製剤の量は、0.5〜5ml、より好ましくは1.0〜3.0ml、さらにより好ましくは1.5〜2.5mlの範囲内である。
【0038】
活性薬剤に加えて、局所製剤は、溶媒、例えば、水、ベンジルアルコール、エタノール、SD−アルコール40−B USP(米国薬局方);例えばアロエ・バーバデンシス葉汁(アロエ・ベラ)、カルボマー、グリセリン、ラウリン酸グリセリルおよびホホバ油などの潤滑剤および皮膚保護薬剤;塩化ベンザルコニウムのような局所消毒剤;防腐剤および殺真菌剤、例えばカプリリルグリコール、プロピレングリコール、メチルパラベンおよびプロピルパラベン;例えばポロキサマー、EDTA二ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースおよびトリエタノールアミンである乳化剤および界面活性剤、ならびに、例えば水酸化ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムのような緩衝剤および軟化剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0039】
好ましくは、局所製剤は、製剤の0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜10wt%、好ましくは1〜8wt%の範囲内の活性薬剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、少なくとも1つの電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーを2〜8wt%、少なくとも1つの肥満細胞安定剤を1〜6wt%、および/または脱感作性非ヒスタミン作動性のアルカリもしくはアルカリ土類金属化合物を1〜6wt%含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、局所製剤は、少なくとも1つの溶媒を40〜99wt%、特に50〜90wt%、さらに特に50〜80wt%含む。本発明のいくつかの実施形態では、局所製剤は、少なくとも1つの潤滑剤および/または皮膚保護剤(skin−conditioning agent)を0.01〜30wt%、特に0.01〜25wt%含む。本発明のいくつかの実施形態では、局所製剤は、少なくとも1つの局所消毒剤を0.01〜3%、特に0.01〜1wt%含む。本発明のいくつかの実施形態では、局所製剤は、少なくとも1つの防腐剤および/または殺真菌剤を0.01〜30wt%、特に0.01〜20wt%、さらに特に0.01〜10wt%含む。本発明のいくつかの実施形態では、局所製剤は、少なくとも1つの乳化剤および/または界面活性剤を0.01〜40wt%、特に1〜30wt%、さらに特に10〜30wt%含む。本発明のいくつかの実施形態では、局所製剤は、少なくとも1つの緩衝剤および/または軟化剤を0.01〜20wt%、特に0.1〜15wt%、さらに特に1〜10wt%含む。
【0041】
本発明のさらなる一態様では、ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛を局所的に治療するためのキットが提供され、該キットは、使用時に女性下着の内側に配置され女性外陰部領域と少なくとも部分的に皮膚接触するように形作られた層状の物品であるデバイス(1)を含み、前記物品は、長手方向(L)、横断方向(T)、前端(F)、後端(B)および2つの長手方向側部(S、S’)を含み、前記デバイス(1)は、少なくとも、
a)外側面(2a)および内側面(2b)を有する製剤不透過性外側層(2)と、
b)内側キャリア面(5a)および皮膚接触面(5b)を有するキャリア層(5)であって、前記内側キャリア面(5a)は、製剤不透過性外側層(2)の内側面(2a)の方向に面する、キャリア層(5)と
を含み、
キットは、デバイスの使用前にキャリア層の皮膚接触面に適用される局所製剤をさらに含み、前記局所製剤は、ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛の治療のための少なくとも1つの活性薬剤を含む。
【0042】
キットに含まれるデバイスに使用される局所製剤および材料は、上述した本発明の他の態様のデバイスの局所製剤および材料に対応する。
【0043】
さらなる一態様では、本発明は、本発明によるデバイスのキャリア層の皮膚接触面を女性外陰部領域に皮膚接触させることによって、活性薬剤を女性外陰部領域に局所的に適用するステップを含む、ヴルヴォディニアの治療方法に関する。上記デバイスは、局所製剤がデバイスの必須部分であるすなわちデバイスのキャリア層において含浸されるおよび/もしくは投薬ユニット内にもたらされる、本発明の態様の実施形態によるデバイスであってよく、またはデバイスは、本発明によるキットの一部であってよい。
【0044】
以下において、図1から4を参照して、選ばれた例を用いて本発明をさらに説明する。これらの例および図面は、例示の目的のためだけに包含されており、特許請求の範囲に略述されるような本発明の範囲を一切限定するものではないと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明によるデバイスの第1の実施形態の分解図である。
図2図1に示されるデバイスを通して切断された縦断面図である。
図3】製剤不透過性外側層(2)の長手方向の側部のそれぞれにウイング領域がある、製剤不透過性外側層(2)の一代替設計の図である。
図4】第2のリリース・ライナーを含む本発明のデバイスの他の実施形態にわたって切断された縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明によるデバイスの第1の例を示している。デバイス(1)は、長手方向(L)および横断方向(T)を含む従来型のパンティーライナーの形態を有している。図2は、図1に示される例によるデバイスの長手方向(L)に沿って切断された断面図である。デバイス(1)は、前端(F)と、後端(B)と、長手方向側部(S、S’)とを有する。デバイスは、キャリア層(5)を含み、キャリア層(5)の外側面は、皮膚接触面(5b)を画成する。これは、使用中、使用者の皮膚に少なくとも部分的に接触することになるデバイスの面である。キャリア層(5)の内側キャリア面(5a)すなわち皮膚接触面(5b)とは反対の面上には、製剤不透過性リム層(3)が配置される。製剤不透過性リム層(3)を形成する材料の内側セクションは、チャネル(4)を形成するように切り取られている。製剤不透過性リム層(3)上には製剤不透過性外側層(2)が配置され、その外側面(2a)上には、下着固定部(7)として機能する感圧接着部のストリップが適用される。デバイスが使用ポジションにされる前は、下着固定部(7)は、リリース・ライナー(11)によって保護されており、リリース・ライナー(11)は、デバイスの使用準備が整ったときに除去される。製剤不透過性リム層(3)にあるチャネル(4)は、長手方向に延びており、デバイスの後端(B)の方向に面する下端(9)と、デバイス(1)の前端(F)の方向に面する上端(10)とを有する。チャネル(4)の幅は、本質的に円形のセクションがデバイスの前端(F)近くに形成されるように変化する。
【0047】
チャネル(4)の形状は、外陰部の前庭域がチャネル(4)に対応するキャリア層(5)の領域によって覆われるように、外陰部領域の解剖学的構造に適合される。投薬ユニット(6)は、デバイス(1)の後端(B)の方向にチャネル(4)の下端(9)に隣接するようにして、製剤不透過性リム層(3)と製剤不透過性外側層(2)との間に介在され、投薬ユニット(6)は、この例では、パウチの形態であり、パウチに圧力が加えられることによって破れる薄膜材料から作られ、やはりまた製剤不透過性である。キャリア層(5)、製剤不透過性リム層(3)、製剤不透過性外側層(2)および投薬ユニット(6)は、必要に応じて、例えば使い捨て吸収品の分野でよく使用される従来の方法を使用して互いに接着される。製剤不透過性外側層(2)およびキャリア層(5)は、リム層(3)のチャネル(4)によって画成される領域内では互いに接着されずに2つの層の間に空間が残され、それによってチャネル(4)が形成され、その中に局所製剤を放出することができ、簡単に分配することができる。投薬ユニット(6)を形成するパウチは、チャネル(4)の下端(9)に直接的に近接して配置され、十分に高い圧力が上に加えられるとこの領域内で破裂し、中に入っているある量の製剤がチャネル(4)内に放出される。というのも、そこは、上または下に置かれた材料である製剤不透過性外側層(2)およびリム層(3)による追加的な補強がなされないまたはわずかしか補強されないパウチのセクションであるからである。投薬ユニット(6)によってチャネル(4)内へと放出される製剤は、チャネル(4)内に分配され、内側キャリア面(5a)のチャネル(4)の下にある領域を介してキャリア層(5)に吸収される。局所製剤は、層(5)の皮膚接触面(5b)へと移り、それによって治療領域に投与される。チャネル(4)の形状は、外陰部領域の解剖学的構造に適合されるので、局所製剤は、治療が必要な外陰部のそれらの領域に効果的に投与される。
【0048】
製剤不透過性外側層(2)および製剤不透過性リム層(3)は、例えば、白色のLDPEホイルで作られてよく、キャリア層(5)は、厚さ3mmのフル・コットン・バッティング(full cotton batting)不織布から作ることができる。投薬ユニットには、厚さ1.5ミル以下のLDPEホイルを使用することができる。デバイスは、それぞれの材料のシートから様々な層をダイカットし、次いで、生理用ナプキンおよびパンティーライナーなどの使い捨て個人衛生用品の分野でよく使われる従来からの接着技術を用いてそれらの層を互いに接着することによって組み付けることができる。予め作製され充填されたパウチは、製剤不透過性外側層とリム層との間に接着させることができる。
【0049】
図3には、本発明によるデバイスに使用するための製剤不透過性外側層(2)の一代替設計が示してある。外側層(2)は、さらに、その長手方向側部(S、S’)のそれぞれにウイング領域(8)を含む。これらのウイング領域(8)は、その外側面に、やはりまた下着固定部(7)として機能する追加の感圧接着ストリップをそれぞれ含む。使用のために、患者は、デバイスを下着の内側に配置し、外側層(2)の外側面(2a)の中央に配置された下着固定部(7)を下着の内側に接着する。次いで、ウイング領域を下着の足を通す開口部の周りに折り曲げ、ウイング領域(8)にある下着固定部(7)によって下着の外側に接着し、それによって、使用中にデバイス(1)を下着の所定位置に保つ追加のサポートが実現する。
【0050】
図4は、本発明によるデバイスの第2の例の長手方向に沿って切断した断面図である。この例によるデバイスは、本質的に、前述の例と同じであるが、デバイスが使用されないときに、キャリア層(5)の皮膚接触面(5b)を保護する追加の第2のリリース・ライナー(12)を含む。第2のリリース・ライナーは、感圧接着剤(13)を使用して第1のリリース・ライナーに解放可能に接着され、したがって、2つのリリース・ライナー(11、12)は、デバイスの、使用中に使用者の下着の内側に配置される部分のための保護パウチを形成する。
【0051】
例1
a)28歳白人女性が過去18カ月間の外陰部の疼痛を訴えていた。彼女は、陰唇と前庭に局在する汎発性の(generalized)突き刺すような鋭い疼痛があり、通常、触ったりタイツのような下着が触れたりすると、また性交の際に疼痛が誘発されると説明した。彼女は、さらに、前位前庭への接触に対する過敏性の感覚も訴えていた。10を考えられ得る最も激しい疼痛、0を無痛とする0〜10の数字による疼痛評価で、平均して、全体的な外陰部の疼痛は6〜7と評価された。
【0052】
婦人科学的評価および骨盤のMRIを含む画像解析では、感染症、皮膚科学的炎症性疾患および構造的な骨盤内の病変など、任意の特定の病因については不明であった。彼女は、ヴルヴォディニアを有すると診断された。治療として、1)三環系抗鬱薬、ガバペンチン、プレガバリン、デュロキセチンなどの経口薬、2)種々のOTCクリーム、3)陰部神経ブロックを含む、複数の治療が試みられたが、いずれも副作用が耐え難く、および/または有意な効果がなかった。
【0053】
彼女に液体リドカインの配合製剤に浸した綿球を適用すると、短時間(約20分)の若干の軽度の緩和(約25%)が報告された。しかし、彼女は綿球を用いた治療を嫌がった。理由としては、第1に、液体リドカインを適用した後、疼痛が和らいでくる前に約3〜5分間続く局所的に焼けるような感覚を挙げた。第2に、日常生活において、綿球を複数回塗布しなければならないことの厄介さを挙げた。そして、女性の生理用パッドの形の1組のパッドが彼女に渡された。各パッドには、ジェル100mlあたり、リドカイン4g、クロモリン4g、アロエベラ0.2g、メチルパラベンNF0.05g、プロピレンパラベンNF0.253g、100mlとするのに十分な純水USPが配合されたジェルが塗布されていた。彼女はそのパッドを試し、それぞれ数時間装着した。彼女は、徐々に効果が上がったことを報告した。新しいパッドを適用すると疼痛の緩和がより顕著だった。全体として、彼女は、75%疼痛が緩和され、パッドを使用しても不快により苛立つことはなかったと報告した。
【0054】
b)32歳白人女性が過去12カ月以上にわたる外陰部の疼痛を訴えていた。彼女は、さらに、裂肛と潰瘍性結腸炎に罹患していることが分かった。彼女は、外陰部の疼痛が常にあり、焼けるような疼痛であると説明した。彼女は、前庭が局所的にヒリヒリする感覚を伴う過敏症を訴えていた。その疼痛は、性交によってひどくなった。彼女は、複数の医学的評価を受けた。しかし、彼女の前庭の疼痛の特定の原因は特定されなかった。0が無痛、10を考えられ得る最も激しい疼痛とする0〜10の数字による疼痛評価で、彼女は平均して、全体的な外陰部の疼痛は8〜9と評価された。彼女の疼痛は、抗鬱薬、抗けいれん薬、骨盤底筋治療には反応しなかった。液体リドカインを染み込ませた綿球を適用したところ、外陰部領域に耐え難い焼けるような感覚が起き、その後短時間の軽度の緩和しか得られなかった。彼女には、膣での使用に合わせてpHバランスが保たれている(pH3.5〜4.5)、ジェル100mlあたり、ベンゾカイン4g、プラモキシン1g、塩化ストロンチウム2.6g、ポロキサマー407 30g、メチルパラベン0.05g、プロピルパラベン0.253g、EDTA0.03g、および100mlとするのに十分な純水USPを含む配合ジェルと一緒に、女性の生理用パッドの形の1組のパッドが渡された。彼女は、パッドとジェルを組み合わせて使用を試み、満足できる長期にわたる効果を喜んで報告してきた。彼女は、いくらかの局所的なしびれを経験したが、パッドの適用は、焼けるような疼痛または耐え難い副作用を引き起こさなかった。彼女は、全体として、50%を超える疼痛の緩和を報告した。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.使用時に女性下着の内側に配置され女性外陰部領域の皮膚に少なくとも部分的に接触するように形作られた層状の物品である、ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛の局所的治療のためのデバイス(1)であって、前記物品は、長手方向(L)、横断方向(T)、前端(F)、後端(B)および2つの長手方向側部(S、S’)を有し、そして前記デバイス(1)は、少なくとも、
a)外側面(2a)および内側面(2b)を有する製剤不透過性外側層(2)と、
b)内側キャリア面(5a)および皮膚接触面(5b)を有するキャリア層(5)であって、前記内側キャリア面(5a)が、前記製剤不透過性外側層(2)の前記内側面(2a)の方向に面する、キャリア層(5)と、
c)ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛を治療するための少なくとも1種の活性薬剤を含む局所製剤と
を含む、デバイス(1)。
2.前記キャリア層に、少なくとも部分的に前記局所製剤が含浸されている、上記1に記載のデバイス。
3.d)製剤不透過性外側層(2)の前記内側面(2b)上に重ね合わされ、その内側セクションを覆っておらず、それによって前記物品の長手方向(L)に延びるチャネル(4)を形成する、製剤不透過性リム層(3)と、
e)内側キャリア面(5a)および皮膚接触面(5b)を有するキャリア層(5)であって、前記内側キャリア面(5a)が前記製剤不透過性リム層(3)および前記チャネル(4)の方向に面するように、前記製剤不透過性リム層(3)および前記チャネル(4)上に重ね合わせられている、キャリア層(5)と
をさらに含み、
前記キャリア層(5)に、少なくとも部分的に前記局所製剤が含浸され、および/または、少なくとも1つの投薬ユニット(6)が、前記チャネル(4)に隣接する前記製剤不透過性外側層(2)と前記製剤不透過性リム層(3)との間に介在する位置に配置され、前記投薬ユニット(6)が、前記チャネル(4)内に放出されるべき局所製剤を含む、
上記1に記載のデバイス。
4.前記チャネル(4)が、前記デバイス(1)の前記後端(B)の方に面する本質的に横断方向に延びる下端(9)を有し、前記投薬ユニット(6)が、前記チャネル(4)の前記下端(9)に隣接して配置される、上記3に記載のデバイス。
5.前記投薬ユニット(6)が、圧力で作動する、上記3または4に記載のデバイス。
6.前記投薬ユニットが、破裂可能なパウチに含まれた局所製剤を含むリザーバを含む、上記3〜5のいずれか一つに記載のデバイス。
7.前記チャネル(4)が、前記デバイスの前記前端(F)に面する上端(10)を有し、前記チャネル(4)の幅が、少なくとも該チャネルの断面において、前記下端(9)におけるチャネル(4)の幅に比べて、その長さに沿って前記前端(F)の方向に増大する、上記3〜6のいずれか一つに記載のデバイス。
8.前記外側層(2)が、少なくとも1つの下着固定部(7)をさらに含む、上記1〜7のいずれか一つに記載のデバイス(1)。
9.前記外側層が、前記物品(1)の前記長手方向側部(S、S’)のそれぞれにウイング領域(8)を含み、前記ウイング領域(8)のそれぞれが、少なくとも1つの下着固定部(7)を含む、上記1〜8のいずれか一つに記載のデバイス(1)。
10.前記下着固定部(7)が、液体不透過性外側層(2)の前記外側面(2a)上に配置される感圧接着剤領域である、上記8または9に記載のデバイス(1)。
11.前記外側層(2)の前記外側面(2a)に固定された取り外し可能な第1のリリース・ライナー(11)を含む、上記1〜10のいずれか一つに記載のデバイス。
12.前記第1のリリース・ライナー(11)に固定され、前記キャリア層(5)の前記皮膚接触面(5b)を覆う、取り外し可能な第2のリリース・ライナー(12)を含む、上記11に記載のデバイス。
13.前記製剤不透過性外側層(2)が、無孔材料、液体不透過性にされた多孔質材料、微孔質材料および独立気泡フォーム材料またはそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の液体不透過性材料を含む、上記1〜12のいずれか一つに記載のデバイス。
14.前記製剤不透過性リム層(3)が、無孔材料、液体不透過性にされた多孔質材料、微孔質材料および独立気泡フォーム材料またはそれらの組み合わせからなる群からの第2の液体不透過性材料を含む、上記1〜13のいずれか一つに記載のデバイス。
15.前記キャリア層(5)が、少なくとも1つの多孔質材料または半多孔質材料を含む、上記1〜14のいずれか一つに記載のデバイス。
16.前記局所製剤中の前記活性薬剤が、局所的に使用される場合に、鎮痛除痛効果を有する薬剤である、上記1〜15のいずれか一つに記載のデバイス。
17.前記局所製剤が、上記18〜21のいずれか一つに記載の製剤である、上記1〜16のいずれか一つに記載のデバイス。
18.ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛を治療するための局所製剤であって、
a)少なくとも1種の電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーと、
b)少なくとも1種の肥満細胞安定剤および/または皮膚脱感作性非ヒスタミン作動性アルカリもしくはアルカリ土類金属化合物と、
c)少なくとも1種の医薬担体または添加剤と
を含み、
25℃および3.5〜4.5の範囲のpH値において、Brookfield LVT粘度計#1スピンドルによる60rpmで測定した場合に、5〜600cpsの範囲内の粘度を有する、
局所製剤。
19.前記電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーが、リドカイン、ベンゾカイン、プラモキシン、ドキセピン、ベンジダミン、ジクロニン、ブピバカイン、プリロカイン、テトラカイン、プロカインまたはシンコカイン、アミトリプチリン、ドキセピン、GTX2、3およびGTX1、4、ネオサキシトキシンおよびテトロドキシンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記18に記載の局所製剤。
20.前記電位依存性ナトリウムチャネルブロッカーが、リドカイン、ベンゾカインおよびプラモキシンからなる群から選択される、上記18または19に記載の局所製剤。
21.前記肥満細胞安定剤が、クロモリンおよびネドクロミルからなる群から選択され、前記皮膚脱感作性非ヒスタミン作動性のアルカリもしくはアルカリ土類金属化合物が、カリウム塩またはストロンチウム塩であり、好ましくは、硝酸カリウムまたは塩化ストロンチウムである、上記18〜20のいずれか一つに記載の局所製剤。
22.ヒト女性生殖器の外陰部領域を襲う疼痛の局所的治療のためのキットであって、使用時に女性下着の内側に配置され女性外陰部の皮膚に少なくとも部分的に接触するように形作られた層状の物品であるデバイス(1)を含み、前記物品が、長手方向(L)、横断方向(T)、前端(F)、後端(B)および2つの長手方向側部(S、S’)を含み、前記デバイス(1)が、少なくとも、
a)外側面(2a)および内側面(2b)を有する製剤不透過性外側層(2)と、
b)内側キャリア面(5a)および皮膚接触面(5b)を有するキャリア層(5)であって、前記内側キャリア面(5a)が、前記製剤不透過性外側層(2)の前記内側面(2a)の方向に面する、キャリア層(5)と
を含み、
前記キットは、
上記18〜21のいずれか一つに記載の局所製剤であって、前記デバイスの使用前に前記キャリア層の前記皮膚接触面に適用される、局所製剤
をさらに含む、キット。
23.ヴルヴォディニアの治療方法であって、上記1〜17および上記22のいずれか一つに記載のデバイスまたはキットによって、女性外陰部領域に活性薬剤を局所的に適用するステップを含む方法。
【符号の説明】
【0055】
図面で使用される参照符号のリスト
(1) デバイス
(L) デバイス(1)の長手方向
(T) デバイス(1)の横断方向
(F) デバイス(1)の前端
(B) デバイス(1)の後端
(S、S’) デバイス(1)の長手方向側部
(2) 製剤不透過性外側層
(2a) 製剤不透過性外側層(2)の外側面
(2b) 製剤不透過性外側層(2)の内側面
(3) リム層
(4) チャネル
(5) キャリア層
(5a) キャリア層(5)の内側キャリア面
(5b) キャリア層(5)の皮膚接触面
(6) 投薬ユニット
(7) 下着固定部
(8) ウイング領域
(9) チャネル(4)の下端
(10) チャネル(4)の上端
(11) 第1のリリース・ライナー
(12) 第2のリリース・ライナー
(13) 感圧接着部
図1
図2
図3
図4