(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、燃料ガス流路を構成する第1の貫通孔が形成されており、前記電気化学反応単セルの前記燃料極側に配置され、Crを含む金属により形成されたインターコネクタと、を備え、前記第1の方向に並べて配列された複数のインターコネクタ−電気化学反応単セル複合体と、
前記複数のインターコネクタ−電気化学反応単セル複合体の内、互いに隣り合う一方のインターコネクタ−電気化学反応単セル複合体が備えるインターコネクタと他方のインターコネクタ−電気化学反応単セル複合体との間に配置され、前記燃料ガス流路を構成するシール部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記一方のインターコネクタ−電気化学反応単セル複合体が備える前記インターコネクタは、前記インターコネクタの前記燃料極側とは反対側の第1の表面を構成するコートを含み、
前記コートは、
前記インターコネクタの前記第1の表面の一部の領域であって、前記第1の貫通孔から離間した第1の表面領域を構成し、スピネル型酸化物により形成された第1のコートと、
前記インターコネクタの前記第1の表面の一部の領域であって、前記第1の貫通孔を囲み、かつ、前記第1のコートと前記第1の貫通孔との間の第2の表面領域を構成し、前記第1のコートより耐還元性が高い第2のコートと、を備え、
前記第1の方向視で、前記第1のコートの内周側の輪郭線は、前記シール部材の内周側の輪郭線の外側に位置しており、前記第1のコートは、前記第1の貫通孔内に露出していないことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。
【0021】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0022】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、「連通孔108」という。
【0023】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、
図2および
図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0024】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162は、特許請求の範囲における酸化剤ガス流路に相当する。以下、酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162をまとめて、酸化剤ガス流路という。各インターコネクタ150に形成され、酸化剤ガス導入マニホールド161または酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108は、特許請求の範囲における第2の貫通孔(以下、「空気室連通孔108A」という)に相当する。
【0025】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス導入マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172は、特許請求の範囲における燃料ガス流路に相当する。以下、燃料ガス導入マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172をまとめて、「燃料ガス流路」という。各インターコネクタ150に形成され、燃料ガス導入マニホールド171または燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108は、特許請求の範囲における第1の貫通孔(以下、「燃料室連通孔108B」という)に相当する。
【0026】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0027】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0028】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図であり、
図6は、
図4のVI−VIの位置におけるインターコネクタ150のXY断面構成(基材156の空気極114側の表面)を示す説明図であり、
図7は、
図4のVII−VIIの位置におけるインターコネクタ150のXY断面構成を示す説明図である。
【0029】
図4および
図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。単セル110は、特許請求の範囲における燃料電池単セル、電気化学反応単セルに相当する。
【0030】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている基材156と、当該基材156の空気極114側に配置され、インターコネクタ150の空気極114側の第1の表面151を構成するコート(136、137)とを備える。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2および
図3参照)。
【0031】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0032】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0033】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110を「セパレータ付き単セル」という。
【0034】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。以下、空気極側フレーム130の孔131を構成する壁を、「内周壁130A」といい、空気極側フレーム130の外周形状を構成する壁を、「外周壁130B」という。
【0035】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0036】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0037】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形状の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形状の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。
【0038】
図4および
図5に示すように、空気極側集電体134の表面は、導電性の第1のコート136によって覆われている。第1のコート136は、例えば、スピネル型酸化物(例えば、Mn
1.5Co
1.5O
4やMnCo
2O
4、ZnCo
2O
4、ZnMnCoO
4、CuMn
2O
4、MnFe
2O
4、ZnMn
2O
4、Cu
1.4Mn
1.6O
4、CoFe
2O
4)により形成されている。なお、上述したように、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されているため、実際には、空気極側集電体134の表面の内、インターコネクタ150との境界面は第1のコート136により覆われていない。インターコネクタ150の上記第1の表面151を構成するコート(136,137)については後述する。
【0039】
空気極114と空気極側集電体134とは、導電性の接合層138により接合されている。接合層138は、例えば、スピネル型酸化物(例えば、Mn
1.5Co
1.5O
4やMnCo
2O
4、ZnCo
2O
4、ZnMn
2O
4、ZnMnCoO
4、CuMn
2O
4)により形成されている。接合層138は、例えば、接合層用のペーストが空気極114の表面の内、空気極側集電体134を構成する各集電体要素135の先端部と対向する部分に印刷され、各集電体要素135の先端部がペーストに押し付けられた状態で所定の条件で焼成されることにより形成される。接合層138により、空気極114と空気極側集電体134とが電気的に接続される。先に、空気極側集電体134は空気極114の表面と接触していると説明したが、正確には、(第1のコート136に覆われた)空気極側集電体134と空気極114との間には接合層138が介在している。なお、本実施形態では、第1のコート136と接合層138とは、主成分元素が互いに同一であるスピネル型酸化物により形成されている。ここでいう主成分元素とは、スピネル型酸化物を構成する金属元素のことをいう。また、スピネル型酸化物の同定は、X線回折と元素分析を行うことによって実現される。
【0040】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0041】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134(および第1のコート136、接合層138)を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0042】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3および
図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0043】
A−3.燃料電池スタック100におけるガスシール:
燃料電池スタック100において、各燃料ガス流路から空気室166への燃料ガスFG(または燃料オフガスFOG)のリークが発生すると、燃料電池スタック100の効率が低下するため、好ましくない。そのため、燃料電池スタック100には、高いガスシール性が求められる。以下、燃料電池スタック100におけるガスシールについて説明する。
【0044】
燃料電池スタック100における各発電単位102に含まれる空気極側フレーム130は、いわゆるコンプレッションシールとして機能する。すなわち、空気極側フレーム130は、セパレータ120とインターコネクタ150との間に挟まれて圧縮されることにより、セパレータ120およびインターコネクタ150の表面に密着し、空気極側フレーム130とセパレータ120との界面や空気極側フレーム130とインターコネクタ150との界面を介した、空気室166や酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162からの酸化剤ガスOG(または酸化剤オフガスOOG)のリークを抑制する(
図4)。
【0045】
また、
図5に示すように、セパレータ120と、空気極側フレーム130を挟んで当該セパレータ120と対向するインターコネクタ150との間において、燃料ガス導入マニホールド171と燃料ガス排出マニホールド172とのそれぞれの周りを取り囲むように環状のガラスシール240が設けられている。ガラスシール240は、空気極側フレーム130とセパレータ120との界面や空気極側フレーム130とインターコネクタ150との界面を介した、各燃料ガス流路からの燃料ガスFG(または燃料オフガスFOG)のリークを抑制する。なお、
図5の拡大図に示すように、本実施形態では、ガラスシール240の内径D1は、連通孔108(燃料室連通孔108B)の内径D0よりも大きい。具体的には、ガラスシール240は、燃料極側フレーム140の孔141の周縁部とセパレータ120とを接合する溶接部(不図示)より外側に配置されている。また、ガラスシール240は絶縁体であるため、ガラスシール240を設けることによって発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間の電気的絶縁が阻害されることはない。また、本実施形態では、ガラスシール240は、酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162の周囲には設けられていない。なお、単セル110と、セパレータ120と、燃料極側フレーム140と、単セル110の燃料極116側に位置するインターコネクタ150と、燃料極側集電体144と、スペーサー149とは、特許請求の範囲におけるインターコネクタ−電気化学反応単セル複合体(以下、単に「複合体103」という)を構成する(
図4および
図5参照)。また、2つの複合体103間に配置される空気極側フレーム130およびガラスシール240は、特許請求の範囲におけるシール部材に相当する。
【0046】
一方、燃料電池スタック100における各発電単位102に含まれる燃料極側フレーム140と隣接するセパレータ120またはインターコネクタ150との間は、溶接によりガスシールが確保されている。例えば、燃料極側フレーム140の孔141の周縁部とセパレータ120とがレーザ溶接によって接合されている。
【0047】
A−4.インターコネクタ150の第1の表面151のコート:
以下、基材156の空気極114側の表面の内、燃料室連通孔108Bの全周を囲む環状の2つの領域(
図6参照)を、「第2の基材領域158」といい、当該2つの第2の基材領域158を除く領域(
図6参照)を、「第1の基材領域157」という。第1の基材領域157と第2の基材領域158とは隣接している。また、インターコネクタ150の第1の表面151の内、燃料室連通孔108Bの全周を囲む環状の2つの表面領域(
図7参照)を、「第2の表面領域153」といい、当該2つの第2の表面領域153を除く領域(
図4から
図5、
図7参照)を、「第1の表面領域152」という。第1の表面領域152と第2の表面領域153とは隣接している。本実施形態では、第2の表面領域153の外径D2(第1の表面領域152と第2の表面領域153との境界線の径)は、ガラスシール240の内径D1より大きく、かつ、ガラスシール240の外径D3より小さい。
【0048】
基材156の第1の基材領域157は、第2のコート137によって覆われており、この第1の基材領域157を覆う第2のコート137の表面の全体は、上述の第1のコート136によって覆われている。一方、基材156の各第2の基材領域158は、第2のコート137によって覆われているが、この第2の基材領域158を覆う第2のコート137の表面は、第1のコート136に覆われておらず、全周に亘ってガラスシール240に接触している。これにより、インターコネクタ150の第1の表面領域152は、第1のコート136によって構成され、第2の表面領域153は、第2のコート137によって構成されている。また、インターコネクタ150の空気室連通孔108Aの全周を囲む表面領域154(
図7参照)も、第1のコート136によって構成されている。第2のコート137は、酸化クロムの皮膜(クロミア皮膜)であり、第1のコート136に比べて、燃料ガスFGに対して耐還元性が高い。
【0049】
以上の構成により、酸化剤ガスOGが流れる空気室166、酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162には、第1のコート136が面しており、第2のコート137は露出していない。一方、燃料ガスFGが流れる燃料ガス流路には、第2のコート137が面しており、第1のコート136は露出していない。なお、第1のコート136は、空気極側集電体134を覆うため、第2のコート137に比べて、導電性が高い材料で形成されていることが好ましい。また、第1のコート136は、空気室166に面するため、第2のコート137に比べて、酸化剤ガスOGに対して耐酸化性が高い材料で形成されていることが好ましい。さらに、本実施形態では、インターコネクタ150の基材156は、Crを含む金属により形成されるため、基材156の表面からCrが放出されて拡散する「Cr拡散」を抑制するために、第2のコート137に比べて、Cr拡散の抑制効果が高い材料で形成されていることが好ましい。
【0050】
インターコネクタ150の第1の表面151へのコートの形成方法の一例は次の通りである。まず、インターコネクタ150に対して熱処理を行うことにより、インターコネクタ150の基材156から析出したCrによって基材156の空気極114側の表面に第2のコート137(クロミア皮膜)を形成する。なお、第2のコート137の厚さは、熱処理の際の焼成温度や焼成時間によって調整することができる。次に、基材156の空気極114側の表面に形成された第2のコート137の表面の内、各第2の表面領域153に対応する領域をマスクした状態で、スプレーコート、インクジェット印刷、スピンコート、ディップコート、めっき、スパッタリング、溶射等の周知の方法で第1のコート136を形成する。その後、各第2の表面領域153のマスクを除去する。これにより、第1の表面領域152が第1のコート136によって構成され、各第2の表面領域153が第2のコート137によって構成されたインターコネクタ150を作製することができる。なお、他のコートの形成方法として、マスクをせずに、基材156の空気極114側の表面に形成された第2のコート137の表面の全体に、第1のコート136を形成し、その後、各第2の表面領域153に対応する部分を覆う第1のコート136を剥離する方法でもよい。
【0051】
A−5.燃料ガス流路から空気室166への燃料ガスFGのリーク:
図8から
図10は、比較例の複合体103Xにおけるインターコネクタ150と空気極側フレーム130およびガラスシール240との間の変化状態1〜3を示す説明図である。
図8に示すように、比較例の複合体103Xの第1の表面151Xの全体は、第1のコート136だけで構成されている。このため、比較例の複合体103Xでは、燃料ガス流路に第1のコート136が露出している。この比較例の複合体103Xを備える燃料電池スタック100Aを運転すると、燃料ガス流路に流れる燃料ガスFGと第1のコート136との還元反応により、第1のコート136が多孔質化し(
図9参照)、さらには、燃料ガス流路と空気室166とが貫通し、燃料ガスFGのリーク経路が形成されるおそれがある(
図10参照)。
【0052】
A−6.第1のコート136および第2のコート137の耐還元性の評価方法:
上述したように、第2のコート137は、第1のコート136に比べて、燃料ガスFGに対して耐還元性が高い。これらの第1のコート136および第2のコート137の耐還元性の評価方法の一例は次の通りである。まず、本実施形態の複合体103を1つ備える燃料電池スタック100と、上記比較例の複合体103Xを1つ備える燃料電池スタック100Aとを準備する。上述したように、本実施形態の複合体103では、燃料ガス流路に第2のコート137が露出しており、第1のコート136は露出していない。一方、比較例の燃料電池スタック100Aでは、燃料ガス流路に第1のコート136が露出している。
【0053】
燃料電池スタック100と燃料電池スタック100Aとをそれぞれ850度で所定時間運転して、熱処理を実施した後に、流量3L/min、圧力10kpaの燃料ガスFG雰囲気下で、空気室166と燃料ガス流路との間の燃料ガスFGのリークを検査する。その結果、先に10ml以上の燃料ガスFGのリークが検出された方を、耐還元性が低いと評価する。第2のコート137を形成するクロミア皮膜は、第1のコート136を形成する上述の材料に比べて、耐還元性が高いため、燃料電池スタック100Aが、燃料電池スタック100より先に10ml以上の燃料ガスFGのリークが検出される。なお、上記所定時間は、運転開始から、燃料電池スタック100と燃料電池スタック100Aとの燃料ガスFGのリーク量に差が生じ始めるまでの時間であり、常に一定とは限らず、運転温度や、第1のコート136および第2のコート137の形成材料の組み合わせ等によって異なる。なお、第1のコート136および第2のコート137の耐酸化性の評価方法の一例は、上述の耐還元性の評価方法に対して、酸化剤ガスOG(大気)雰囲気下で、空気室166と燃料ガス流路との間の酸化剤ガスOG(空気)のリークを検査する点で異なるが、ガスの流量、圧力や時間等に関する条件を同じとする評価方法である。
【0054】
A−7.本実施形態の効果:
本実施形態の複合体103によれば、インターコネクタ150の第1の表面領域152を構成する第1のコート136と燃料ガス流路との間に、第1のコート136より耐還元性が高い第2のコート137が各燃料室連通孔108Bの全周に亘って配置されている。これにより、第1のコート136と燃料ガスFGとの還元反応に起因して燃料ガス流路のシール性が低下することを抑制することができる。
【0055】
また、空気室連通孔108Aの全周を囲む表面領域154(
図7参照)は、第1のコート136によって構成されている。このため、第2のコート137が、第1のコート136に比べて、耐酸化性が低い材料で形成されている場合でも、この第2のコート137が酸化剤ガス流路に露出しないため、酸化剤ガス流路内の酸化反応を抑制することができる。
【0056】
また、各第2の表面領域153の外径D2は、ガラスシール240の外径D3より小さい。換言すれば、第2のコート137の外周側の輪郭線は、全周に亘って、ガラスシール240の外周側の輪郭線より内側に位置している。このため、第2のコート137が、第1のコート136に比べて、耐酸化性やCr拡散の抑制効果が低い材料で形成されている場合でも、この第2のコート137が空気室166に露出しないため、空気室166内の酸化反応やCr拡散を抑制することができる。
【0057】
また、各第2の表面領域153の外径D2は、ガラスシール240の内径D1より大きい。換言すれば、第2のコート137の外周側の輪郭線は、全周に亘って、ガラスシール240の内周側の輪郭線より外側に位置している。このため、インターコネクタ150の第1の表面151の内、燃料ガス流路を構成する領域が第2のコート137によって構成されている。これにより、第1のコート136が燃料ガス流路に露出することが回避されるため、第1のコート136と燃料ガスFGとの還元反応に起因して燃料ガス流路のシール性が低下することを、より確実に抑制することができる。
【0058】
また、第1の表面領域152の内径D2(第2の表面領域153の外径D2)は、ガラスシール240の内径D1より大きい。換言すれば、第1のコート136の内周側の輪郭線は、全周に亘って、ガラスシール240の内周側の輪郭線より外側に位置しており、インターコネクタ150とシール部材との間に挟み込まれている。このため、第1のコート136が240の内側に露出している場合に比べて、第1のコート136の端部が剥離することを抑制することができる。
【0059】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態における複合体103AのXY断面構成を示す説明図である。第2実施形態の複合体103Aの構成の内、上述した第1実施形態の複合体103と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0060】
以下、基材156の空気極114側の表面の内、燃料室連通孔108Bの全周を囲む環状の2つの領域を、「第2の基材領域158A」といい、当該2つの第2の基材領域158Aを除く領域を、「第1の基材領域157A」という。第1の基材領域157Aと第2の基材領域158Aとは隣接している。また、インターコネクタ150の第1の表面151の内、燃料室連通孔108Bの全周を囲む環状の2つの表面領域を、「第2の表面領域153A」といい、当該2つの第2の表面領域153Aを除く領域を、「第1の表面領域152A」という。第1の表面領域152Aと第2の表面領域153Aとは隣接している。本実施形態では、第2の表面領域153Aの外径D2A(第1の表面領域152Aと第2の表面領域153Aとの境界線の径)は、ガラスシール240の外径D3より大きく、かつ、空気極側フレーム130の内周壁130Aと外周壁130Bとの間の距離D4より小さい。
【0061】
基材156の第1の基材領域157Aは、上述の第1のコート136によって覆われている。一方、基材156の各第2の基材領域158Aは、第2のコート137Aによって覆われており、全周に亘って空気極側フレーム130およびガラスシール240に接触している。これにより、インターコネクタ150の第1の表面領域152Aは、第1のコート136によって構成され、第2の表面領域153Aは、第2のコート137Aによって構成されている。第2のコート137Aは、例えばNi(ニッケル)またはNi合金で形成されており、第1のコート136に比べて、燃料ガスFGに対して耐還元性が高い。なお、基材156の表面に上記第1実施形態と同様のクロミア皮膜が形成されていてもよい。このような構成でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
上記実施形態では、シール部材として、空気極側フレーム130およびガラスシール240を例示したが、シール部材は、これに限定されず、ガラスシールだけで構成されたものとしてもよいし、密閉状態に圧縮されたマイカ等で構成されたコンプレッションシールだけで構成されたものとしてもよい。また、上記実施形態において、ガラスシール240の内径D1は、連通孔108(燃料室連通孔108B)の内径D0と同じでもよい。
【0064】
上記実施形態では、インターコネクタ−電気化学反応単セル複合体として、セパレータ120を備える複合体103を例示したが、インターコネクタ−電気化学反応単セル複合体は、これに限定されず、セパレータ120を備えない構成でもよい。また、インターコネクタ−電気化学反応単セル複合体は、燃料極支持形だけでなく、空気極支持形や電解質支持形でもよい。
【0065】
上記第1実施形態において、各第2の表面領域153の外径D2は、ガラスシール240の外径D3より大きい、換言すれば、第2のコート137の外側の輪郭線は、ガラスシール240の外側の輪郭線より外側に位置していてもよい。さらに、第2のコート137の外側の輪郭線は、空気極側フレーム130の内周壁130Aより外側に位置していてもよい。但し、上記第1実施形態の構成であれば、空気室166内の酸化反応やCr拡散を抑制することができる。また、第1の表面領域152の内径D2(第2の表面領域153の外径D2)は、ガラスシール240の内径D1より小さくてもよい。但し、上記第1実施形態の構成であれば、燃料ガス流路のシール性の低下と第1のコート136の剥離とを、より確実に抑制することができる。
【0066】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0067】
また、上記実施形態では、ボルト22の両側にナット24が嵌められているとしているが、ボルト22が頭部を有し、ナット24はボルト22の頭部の反対側にのみ嵌められているとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、空気極側集電体134と、それに隣接するインターコネクタ150とが別部材であってもよい。また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態では、インターコネクタ150は、Crを含む金属により形成されているが、他の材料により形成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0074】
本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
【0075】
また、上記実施形態(または変形例、以下同様)では、燃料電池スタック100に含まれるすべての複合体103について、第1のコート136および第2のコート137によって基材156が覆われたインターコネクタ150を備える構成であるとしているが、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの複合体103について、そのような構成となっていれば、第1のコート136と燃料ガスFGとの還元反応に起因して燃料ガス流路のシール性が低下することを抑制することができるという効果を奏する。
【0076】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2014−207120号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、複合体について、第1のコート136および第2のコート137によって基材156が覆われたインターコネクタ150を備える構成を採用すれば、第1のコート136と燃料ガスFGとの還元反応に起因して燃料ガス流路のシール性が低下することを抑制することができるという効果を奏する。