(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6514797
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】検出機能を備えたボールねじ構造
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20190425BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
F16H25/24 B
F16H25/22 E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-38977(P2018-38977)
(22)【出願日】2018年3月5日
【審査請求日】2018年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 映汝
(72)【発明者】
【氏名】楊 家銘
(72)【発明者】
【氏名】謝 秉寰
(72)【発明者】
【氏名】呉 旻修
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0014631(US,A1)
【文献】
特開2013−200032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出機能を備えたボールねじ構造であって、
ねじ軸と、ナット部材と、ボールユニットと、還流部材と、を含み、
前記ねじ軸は外ねじ溝を有し、
前記ナット部材は前記ねじ軸の軸方向に沿って移動可能に前記ねじ軸に外嵌され、且つ、前記ナット部材は前記ねじ軸の前記外ねじ溝と対応して設けられた内ねじ溝を有し、これによって、前記ナット部材の前記内ねじ溝と前記ねじ軸の前記外ねじ溝との間で負荷路が形成され、
前記ボールユニットは前記負荷路内に転動可能に設けられ、
前記還流部材は前記ナット部材に着脱可能に設けられ、且つ、前記還流部材にマイクロコントローラとセンサとが設けられて、前記ナット部材内の前記ねじ軸の回転状態を検出でき、且つ、前記還流部材内に前記ボールユニットが還流して通過するための、前記ナット部材と連通できる還流路が設けられている
検出機能を備えたボールねじ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の検出機能を備えたボールねじ構造であって、
前記還流部材は、蓋板本体と、2つの凹溝とを含む還流蓋板であり、
2つの前記凹溝は、前記蓋板本体の前記ナット部材に面する表面に設けられ、
2つの前記凹溝のうちの一の前記凹溝に前記マイクロコントローラが収容され、他の前記凹溝に前記センサが収容されている
検出機能を備えたボールねじ構造。
【請求項3】
請求項1に記載の検出機能を備えたボールねじ構造であって、
前記ナット部材に、電池と警報ユニットをそれぞれ収容するための第1収容溝と第2収容溝が設けられ、
前記電池は前記マイクロコントローラ及び前記センサと電気的に接続されている
検出機能を備えたボールねじ構造。
【請求項4】
請求項1に記載の検出機能を備えたボールねじ構造であって、
前記還流部材は、2つの端蓋であり、
2つの前記端蓋のうちの一の前記端蓋の一端面に、2つの凹溝が設けられ、
2つの前記凹溝のうちの一の前記凹溝に前記マイクロコントローラが収容され、他の前記凹溝に前記センサが収容されている
検出機能を備えたボールねじ構造。
【請求項5】
請求項1に記載の検出機能を備えたボールねじ構造であって、
前記還流部材は、2つの端塞ぎであり、
前記ナット部材は、2つの取付溝を有し、
2つの前記端塞ぎは、2つの前記取付溝にそれぞれ設置され、
2つの前記端塞ぎのうちの一の前記端塞ぎに、前記マイクロコントローラ及び前記センサを収容できる凹溝が設けられている
検出機能を備えたボールねじ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に関し、特に検出機能を備えたボールねじ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、現在高負荷の直線伝動装置であるが、ねじの運転速度が大きすぎると、部品(例えば、還流蓋板)が鋼球の衝撃を受けやすくなって過大に振動し、部品の損傷が起こり、さらにはねじの運動が阻害されることになる。現在、ねじ軸の回転状態を検出するものとして、例えば、特許文献1ないし3が提案されているが、これらは何れも元のボールねじ構造にセンサを付け加えるものである。
【0003】
しかしながら、特許文献1では、ブロック体のセンサ部を余分に付け加える必要があるため、ナット部材の長さが長くなり、ストロークに影響を与えてしまう。また、スイッチの切り替え動作のために、コントローラをさらに付け加える必要がある。特許文献2では、ナットの一端面又はナットに凹溝を設けて、この凹溝に鋼球の変位状態を計測するためのセンサ装置を置いているため、センサ装置によってナットの長さが増加する。また、鋼球の位置を維持するための磁性機構が複雑し過ぎる。特許文献3では、センサと制御器の何れも外付けする必要があるため、ナットの構成ないし大きさを変える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−144938号公報
【特許文献2】特開2007−225024号公報
【特許文献3】特許第5722365号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、検出機能を備えたボールねじ構造を提供するものである。その一態様として、マイクロコントローラ及びセンサが還流蓋板に直接設置され、還流蓋板内にボールユニットが還流通過するための還流路が直接設けられ、還流蓋板が着脱可能にナット部材の平坦部に取り付けられる。これによって、スペースを占有せずに、ねじ軸の回転状態を直接検出し、検出されたねじ状態の信号を音(例えば、ブザー)、光(例えば、発光ダイオード)の明暗あるいは点滅で警報する、又は信号出力ユニットを用いて無線又は有線方式で受信ユニット(例えば、コンピューター、スマートフォン又はPad等の装置)に伝送することによって、ねじ軸の状態を診断し計測する効果を奏することができる。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る検出機能を備えてボールねじ構造は、ねじ軸と、ナット部材と、ボールユニットと、還流部材と、を含み、前記ねじ軸は外ねじ溝を有し、前記ナット部材は前記ねじ軸の軸方向に沿って移動可能に前記ねじ軸に外嵌され、且つ、前記ナット部材は前記ねじ軸の前記外ねじ溝と対応して設けられた内ねじ溝を有し、これによって、前記ナット部材の前記内ねじ溝と前記ねじ軸の前記外ねじ溝との間で負荷路が形成され、前記ボールユニットは前記負荷路内に転動可能に設けられ、前記還流部材は前記ナット部材に着脱可能に設けられ、且つ、前記ナット部材内の前記ねじ軸の回転状態を検出でき、且つ、前記還流部材内に前記ボールユニットが還流して通過するための、前記ナット部材と連通できる還流路が設けられている。
【0007】
一部の実施形態では、前記還流部材は、蓋板本体と、2つの凹溝とを含む還流蓋板であり、前記蓋板本体は前記ナット部材の上に被さるように設けられ、2つの前記凹溝は、前記蓋板本体の前記ナット部材に面する表面に設けられ、2つの前記凹溝のうちの一の前記凹溝に前記マイクロコントローラが収容され、他の前記凹溝に前記センサが収容されている。
【0008】
一部の実施形態では、前記還流部材は、2つの端蓋であり、2つの前記端蓋は前記ナット部材の両端に設けられ、2つの前記端蓋のうちの一の前記端蓋の、前記ナット部材に面する端面に、2つの凹溝が設けられ、2つの前記凹溝のうちの一の前記凹溝に前記マイクロコントローラが収容され、他の前記凹溝に前記センサが収容され、一の前記端蓋の、他の端面に、電池と警報ユニットをそれぞれ収容するための第1収容溝と第2収容溝が設けられ、前記電池は前記マイクロコントローラ及び前記センサと電気的に接続されている。
【0009】
一部の実施形態では、前記還流部材は、2つの端塞ぎであり、前記ナット部材は、2つの取付溝を有し、2つの前記端塞ぎは、2つの前記取付溝にそれぞれ設置され、2つの前記端塞ぎのうちの一の前記端塞ぎに、前記マイクロコントローラ及び前記センサを収容できる凹溝が設けられている。
【0010】
一部の実施形態では、前記ナット部材の、前記還流蓋板に遠い方の一端面に電池を収容するための第1収容溝が設けられ、前記電池は前記還流蓋板と電気的に接続され、前記ナット部材の、前記還流蓋板に遠い方の一端面にさらに警報ユニットを収容するための第2収容溝が設けられ、前記警報ユニットはブザー又は発光ダイオードである。
【0011】
一部の実施形態では、前記還流部材の前記ナット部材に面する表面に、接続線案内溝が穿設され、これによって、前記マイクロコントローラと前記センサ回路がそれぞれ前記接続線案内溝を通じてさらに前記電池と電気的に接続される。
【0012】
一部の実施形態では、前記センサは加速度計である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す前側分解斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態を示す後側分解斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態を示す前側分解斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態を示す後側分解斜視図である。
【
図9】本発明の第3実施形態を示す前側分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照して、本発明の目的、特徴及び効果を詳細に説明する。
【0015】
図1〜
図5に示すように、本発明の第1実施形態に係る検出機能を備えたボールねじ構造100は、ねじ軸1と、ナット部材2と、ボールユニット3と、還流部材4とを含む。
【0017】
ナット部材2は、ねじ軸1の軸方向に沿って移動可能にねじ軸1に外嵌される。ナット部材2は、内ねじ溝21を有する。内ねじ溝21はねじ軸1の外ねじ溝に対応して設けられる。これによって、ナット部材2の内ねじ溝21とねじ軸1の外ねじ溝11の間で負荷路Tが形成される。ナット部材2は、本体部22と、フランジ部23とを有する。フランジ部23は、本体部22の一端から径方向に外側に突出して環状に設けられる。内ねじ溝21は、本体部22の内径面に設けられる。本体部22の上部には、平坦部221、二つの螺子孔222及び2つの還流孔223が形成される。
【0018】
ボールユニット3は、複数のボールから構成でき、転動可能に負荷路T内に設置される。
【0019】
還流部材4は、本実施形態では還流蓋板である。還流蓋板は、ナット部材2に着脱可能に設置され、ナット部材2内のねじ軸1の回転状態を検出できる。還流蓋板内には、ボールユニット3が2つの還流孔223を経由して還流して通過するための還流路47が設けられる。すなわち、還流蓋板は、蓋板本体40、2つの穿孔41及び二つの凹溝42、43を含む。2つの穿孔41は、蓋板本体40の、ナット部材2の平坦部221に遠い方の表面に開設される。2つの螺子9が2つの穿孔41を穿通して2つの螺子孔222に螺合することで、蓋板本体40が、ナット部材2の本体部22の平坦部221の上に被さるように設けられる。2つの凹溝42、43は、蓋板本体40の、ナット部材2の平坦部221に面する表面に設けられ、そのうちの一の凹溝42にマイクロコントローラ44が収容され、他の凹溝43にセンサ45が収容される。センサ45は、加速度計とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
ナット部材2のフランジ部23には、第1収容溝24と、第2収容溝25とが設けられる。第1収容溝24は、電池5を収容するためのものである。電池5は、蓋板本体40内に設置されるマイクロコントローラ44及びセンサ45と電気的に接続される。第2収容溝25は、警報ユニット6を収容するためのものである。警報ユニット6は、ブザー又は発光ユニットとすることもできる。発光ユニットは、少なくとも1個の発光ダイオードとすることもできるが、これに限定されるものではない。
【0021】
マイクロコントローラ44は、信号出力ユニット46(例えば、
図5の図示)によって、無線又は有線方式で受信ユニットに検出されたねじ軸1の信号を出力することができる。受信ユニットは、コンピューター、スマートフォン又はPad等の装置とすることができる。検出されたねじ軸1の信号を直接警報ユニット6に伝送してもよい。
【0022】
また、還流部材4の蓋板本体40の、ナット部材2に面する表面には、さらに、接続線案内溝48が設けられる。接続線案内溝48で、電線でマイクロコントローラ44とセンサ45を接続し、さらに、回路案内溝26を通じて電池5と電気的に接続する。言及すべきは、マイクロコントローラ44とセンサ45は、電線で接続でき、有線方式で外部電源をマイクロコントローラ44及びセンサ45に供給できる。
【0023】
上記構造によって、ナットに別途センサユニットを付け加える必要がなく、直接蓋板本体40に設置し、蓋板本体40内にボールユニット3が還流して通過するための還流路47を直接設けて、ナット部材2の平坦部221に着脱可能に取り付ける。そのため、スペースを節約することができ、ねじ軸1の回転状態を直接検出し、検出されたねじ状態の信号を警報ユニット6に伝送し、音(例えば、ブザー)、光(例えば、発光ダイオード)の明暗あるいは点滅で警報でき、又は信号出力ユニット46を用いて無線又は有線方式で受信ユニット(例えば、コンピューター、スマートフォン又はPad等の装置)に伝送でき、これによって、ねじ軸の回転状態を計測する効果を奏することができる。
【0024】
図6〜
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る検出機能を備えたボールねじ構造100は、第1実施形態と同様に、ねじ軸1と、ナット部材2と、ボールユニット3と、還流部材4とを含む。第2実施形態は、第1実施形態とは主に以下の点で異なる。
【0025】
本実施形態では、還流部材4は、2つ端蓋40Aである。2つの端蓋40Aは、ナット部材2の両端に設けられる。そのうちの一の端蓋40Aは、ナット部材2に面する一端面に2つの凹溝42、43が設けられ、そのうちの一の凹溝42にマイクロコントローラ44が収容され、他の凹溝43にセンサ45が収容される。この一の端蓋の他の端面には、第1収容溝24及び第2収容溝25が設けられて、電池5及び警報ユニット6がそれぞれ収容される。
【0026】
図9及び
図10に示すように、本発明の第3実施形態に係る検出機能を備えたボールねじ構造100は、第1実施形態と同様に、ねじ軸1と、ナット部材2と、ボールユニット3と、還流部材4とを含む。第3実施形態は、第1実施形態とは主に以下の点で異なる。
【0027】
本実施形態では、還流部材4は2つの端塞ぎ40Bである。ナット部材2は2つの取付溝28を有し、2つの端塞ぎ40Bは2つの取付溝28にそれぞれ設置される。そのうちの一の端塞ぎ40Bの底面に凹溝49が設けられ、凹溝49にマイクロコントローラ44及びセンサ45を収容できる。
【0028】
以上は、本発明の好適な実施形態を開示するものであり、本発明を限定するものではない。本技術分野における通常の知識を有する者が本発明に基づいてされた均等変更は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
100 検出機能を備えたボールねじ構造
1 ねじ軸
11 外ねじ溝
2 ナット部材
21 内ねじ溝
22 本体部
221 平坦部
222 螺子孔
223 還流孔
23 フランジ部
24 第1収容溝
25 第2収容溝
26 回路案内溝
28 取付溝
3 ボールユニット
4 還流部材
40 蓋板本体
40A 端蓋
40B 端塞ぎ
41 穿孔
42 凹溝
43 凹溝
44 マイクロコントローラ
45 センサ
46 信号出力ユニット
47 還流路
48 接続線案内溝
49 凹溝
5 電池
6 警報ユニット
9 螺子
T 負荷路
【要約】 (修正有)
【課題】検出機能を備えたボールねじ装置を提供する。
【解決手段】検出機能を備えたボールねじ構造100であって、ねじ軸1と、ナット部材2と、ボールユニット3と、還流部材4と、を含み、ねじ軸は外ねじ溝11を有し、ナット部材はねじ軸の軸方向に沿って移動可能にねじ軸に外嵌され、ナット部材はねじ軸の外ねじ溝と対応して設けられた内ねじ溝21を有し、これによって、ナット部材の内ねじ溝とねじ軸の外ねじ溝との間で負荷路が形成され、ボールユニットは負荷路内に転動可能に設けられ、還流部材は直接ナット部材に設けられ、還流部材にマイクロコントローラとセンサとが設けられて、ナット部材内のねじ軸の回転状態を検出でき、還流部材内にボールユニットが還流して通過するための、ナット部材と連通できる還流路47が設けられている検出機能を備えたボールねじ構造。
【選択図】
図2