特許第6514798号(P6514798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホヴァル・アクティエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6514798伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ
<>
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000002
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000003
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000004
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000005
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000006
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000007
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000008
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000009
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000010
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000011
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000012
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000013
  • 特許6514798-伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514798
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】伝熱器パイプ及び該伝熱器パイプを有する加熱ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/06 20060101AFI20190425BHJP
   F22B 9/02 20060101ALI20190425BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20190425BHJP
   F28F 1/40 20060101ALI20190425BHJP
   F28F 13/08 20060101ALI20190425BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   F22B37/06
   F22B9/02 A
   F24H9/00 A
   F28F1/40 G
   F28F1/40 J
   F28F13/08
   F28F21/08 F
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-39460(P2018-39460)
(22)【出願日】2018年3月6日
(62)【分割の表示】特願2016-125408(P2016-125408)の分割
【原出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2018-119781(P2018-119781A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】15178123.4
(32)【優先日】2015年7月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516190677
【氏名又は名称】ホヴァル・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ヴァルター・テリアン
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−071840(JP,A)
【文献】 特表平09−507708(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/050441(WO,A1)
【文献】 実開昭61−170803(JP,U)
【文献】 特開平11−351696(JP,A)
【文献】 特開昭59−100397(JP,A)
【文献】 特開昭60−162103(JP,A)
【文献】 特開2011−191049(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0005275(US,A1)
【文献】 米国特許第03724523(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 9/02
F22B 37/06
F24H 1/28
F24H 9/00
F28F 1/40
F28F 13/08
F28F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ炉の排ガスが貫流でき、かつ外側を加熱水で取り囲むことができるアウターパイプ(10)と、
前記アウターパイプ(10)の内側表面積を大きくするために前記アウターパイプ(10)の長手方向(12)に延在するリブ(14)を備え、かつ前記アウターパイプ(10)と導熱接触している、前記アウターパイプ(10)内に挿入されたプロフィルインサート(11)と
を備える、加熱ボイラ(2)、特にコンデンシングボイラの伝熱器パイプ(5)であって、
前記アウターパイプ(10)の第1長手部分(22)は、平滑な壁で円筒状に形成され、
前記アウターパイプ(10)の第2長手部分(23)は、貫流断面を狭める少なくとも1つの断面狭窄要素(24)を備え、
前記プロフィルインサート(11)は、前記アウターパイプ(10)の第1長手部分(22)のみにわたって延在し、
前記少なくとも1つの断面狭窄要素(24)は、前記アウターパイプ(10)の前記第2長手部分(23)内に挿入される、ノズル状に形成されたパイプインサートとして成形され
前記第2長手部分(23)は燃焼室(4)と前記第1長手部分(22)との間に配置されるとともに該第1長手部分(22)は前記第2長手部分(23)の軸方向長さの少なくとも2倍に相当する軸方向長さを有す
ことを特徴とする、伝熱器パイプ(5)。
【請求項2】
前記プロフィルインサート(11)は、それぞれ1つの扇形の断面を備える少なくとも2つのシェル要素(15、16)から形成されたパイプ体を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の伝熱器パイプ(5)。
【請求項3】
前記パイプ体は、2つの前記シェル要素(15、16)を含み、前記2つのシェル要素(15、16)は、互いに接する長手縁辺部(17)に、溝状の窪み(18)及びリブ状の突起(19)を有して形成され、前記窪み(18)及び前記突起(19)を用いてシール状に係合され、
前記2つのシェル要素(15、16)はその内側に、前記パイプ体の内法断面に突出しかつ前記アウターパイプ(10)の前記長手方向(12)に延在する前記リブ(14)を有して形成され、各前記シェル要素(15、16)は、前記リブ(14)が片側に開いたプロフィルを形成する
ことを特徴とする、請求項2に記載の伝熱器パイプ(5)。
【請求項4】
前記2つのシェル要素(15、16)はそれぞれ、一方の前記長手縁辺部(17)を密封溝(18)で、かつ別の前記長手縁辺部(17)を、前記密封溝(18)の形状に適合する密封リブ(19)で形成される
ことを特徴とする、請求項3に記載の伝熱器パイプ(5)。
【請求項5】
前記アウターパイプ(10)は、金属の合金、好適には鋼から形成され、前記プロフィルインサート(11)はアルミニウムから形成される
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の伝熱器パイプ(5)。
【請求項6】
加熱水室(3)を画定し、かつ前記加熱水室(3)に前置された燃焼室(4)を備えるハウジング(1)を備える、加熱循環の加熱水を温めるための加熱ボイラ(2)、特にコンデンシングボイラであって、
前記燃焼室(4)から出て前記加熱水室(3)を通って延在する、請求項1に記載の少なくとも1つの伝熱器パイプ(5)が、前記ハウジング(1)内部に配設される
ことを特徴とする、加熱ボイラ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ炉の排ガスが貫流でき、かつ外側を加熱水で取り囲むことができるアウターパイプと、アウターパイプの内側表面積を大きくするためにアウターパイプの長手方向に延在するリブを備え、かつアウターパイプと導熱接触している、アウターパイプ内に挿入されたプロフィルインサートとを備える、加熱ボイラ、特にコンデンシングボイラの伝熱器パイプに関する。
【0002】
同様に本発明は、加熱水室を画定して、かつ該加熱水室に前置された燃焼室を備えるハウジングを備える、加熱循環の加熱水を温めるための加熱ボイラ、特にコンデンシングボイラに関する。
【背景技術】
【0003】
出願人が販売しているような、上述のタイプの加熱ボイラは、ガス又は液体(加熱用オイル、灯油など)を燃焼させるコンデンシングボイラとして運転され得る。そのようなコンデンシングボイラでは、凝縮熱も利用するために、燃焼ガスは排ガスの水分が凝縮するまで冷却される。そのための前提は、加熱ボイラ又はコンデンシングボイラが、加熱ボイラを通る燃焼ガス路の終点部で燃焼ガスの露点温度よりも低い加熱水温度で運転されることである。加熱ボイラの水冷伝熱器パイプを通る燃焼ガスの経路をできる限り短い状態で、燃焼ガスを高温の流入温度から、露点温度と加熱ボイラの加熱水再循環を占める最低温の加熱水温度との間の温度まで冷却できるよう努力されている。そのために伝熱パイプが知られており、上述のタイプの伝熱器パイプは、例えば特許文献1から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0752088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、構造的に簡単な方法でかつコストをかけずに、燃焼ガスから加熱ボイラ内の加熱水への伝熱性能をより高くすることができる伝熱器パイプ及び加熱ボイラを提供する解決法を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のタイプの伝熱器パイプでは、本課題は本発明に従って、アウターパイプの第1長手部分が平滑な壁で円筒状に形成され、アウターパイプの第2長手部分が貫流断面を狭める少なくとも1つの断面狭窄要素を備え、プロフィルインサートがアウターパイプの第1長手部分のみにわたって延在することによって解決される。言い換えれば、プロフィルインサートは、第1長手部分の内部のみに配設される。
【0007】
同様に、上述のタイプの加熱ボイラでは、本課題は本発明に従って、燃焼室から出て加熱水室を通って延在する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの伝熱器パイプが、ハウジング内部に配設されることによって解決される。その際、約10kWの非常に低い性能用の少なくとも1つの伝熱パイプが考えられるが、それに対して多くの使用時には複数の伝熱パイプが設けられる。少なくとも1つの伝熱器パイプは、加熱水室を通って例えば垂直に又は水平にも延在してよく、90度(垂直)〜0度(水平)の他のいかなる角度も考えられる。
【0008】
本発明の有利かつ合理的な実施形態及び発展形態は、従属請求項から得られる。
【0009】
本発明によって、それぞれ機能に応じた構成で優れておりかつ単純でコストのかからない構造を備える伝熱器パイプ及び複数のそのような伝熱器パイプを有する加熱ボイラが利用可能である。従来技術から公知の伝熱器パイプで問題となったのは、高温の燃焼ガスが伝熱器パイプを通ってその入口からその出口まで流れ、その際に冷却されるということであった。その際に伴う著しい燃焼ガスの容積の減少によって、流速と乱流とが伝熱器パイプの出口に至るまでに大きく低下し、伝熱の効率に不利な影響を及ぼすことになった。これに対して本願発明では、アウターパイプの貫流断面を狭める少なくとも1つの断面狭窄要素によって、断面狭窄要素上流の、つまり燃焼室と断面狭窄要素との間の圧力損失が増え、これにより、本発明によると、明らかにより大きなエネルギを、燃焼室と断面狭窄要素手前の伝熱器パイプの第2長手部分とにおいて伝達できる。断面狭窄要素手前の長手部分において、貫流断面が小さくなったことによって、排ガスの流速は非常に高まり、それによって付加的に、伝熱とひいては排ガスのエネルギ利用とが向上する。貫流断面の狭窄部下流つまり断面狭窄要素下流の長手部分において、排ガスが再び膨張し、プロフィルインサートを有するアウターパイプの長手部分に運ばれる。伝熱器パイプの長手方向に延在するプロフィルインサートのリブによって非常に大きくなった表面積により、アウターパイプの第1長手部分において、排ガスは露点より低く冷却され、それによってコンデンシングボイラ技術とひいては加熱ボイラの効率とに有利な影響を及ぼす。伝熱器パイプによる本発明の利点、及び該伝熱器パイプが装備された加熱ボイラの利点は、以下のように記述できる。狭窄部がない伝熱器パイプと比べると、狭窄部上流の圧力損失の増大は、燃焼室と伝熱器パイプの流入口とにおいて伝熱の改善を引き起こす。更に狭窄部の領域及び特に狭窄部下流での流速の上昇によって、伝熱が改善する。なぜなら、断面狭窄要素によって、狭窄部手前での層流が狭窄部下流で乱流に転換されるからである。最終的に、伝熱器パイプの第1長手部分のプロフィルインサートのリブによる伝熱面積の拡大によって、狭窄部下流の流速が低くなり、これは排ガス温度の低下を招くことになり、それによって付加的に、加熱水への伝熱の改善に寄与する。
【0010】
本発明に係る伝熱器パイプの実施形態において、本発明は、少なくとも1つの断面狭窄要素が少なくとも1つの陥没部として、アウターパイプの第2長手部分の壁に形成されることを意図している。これにより、断面変化の有利な作用様式を得るために、付加的な部材を製造して取り付ける必要がなくなる。
【0011】
本発明に係る伝熱器パイプの実施形態において、少なくとも1つの断面狭窄要素が、アウターパイプの第2長手部分の壁に形成された少なくとも2つの第1陥没部を含んでおり、ここで上記2つの第1陥没部が、直径上で互いに対向して配設され、第1パイプ平面に関して鏡面対称に形成されていれば、特に効果的であることが、明らかとなった。
【0012】
陥没部下流の流速を上げるために、更なる実施形態に従って意図されているのは、少なくとも2つの第1陥没部の間に、アウターパイプの直径の2%〜3%の少なくとも1つの第1貫流間隙を形成することである。
【0013】
本発明によって意図されている断面狭窄部の効果を更に向上させるために、伝熱器パイプの実施形態において意図されているのは、断面狭窄要素が、少なくとも2つの第1陥没部に加えて、アウターパイプの第2長手部分の壁から形成された少なくとも2つの第2陥没部を含み、2つの第2陥没部は、直径上で互いに対向して配設され、第1パイプ平面に対して垂直に延在する第2パイプ平面に関して鏡面対称に形成されることである。
【0014】
更に本発明が、断面狭窄要素の第2陥没部の実施形態において意図しているのは、少なくとも2つの第2陥没部の間に、アウターパイプの直径の18%〜22%の少なくとも1つの第2貫流間隙を形成することである。
【0015】
断面狭窄要素下流での流速及び乱流の上昇を考慮して、本発明が更なる実施形態において意図しているのは、第1及び第2隆起部が、アウターパイプの第2長手部分の同一の軸方向位置に形成され、第1及び第2隆起部によって形成された、アウターパイプの第2長手部分の貫流断面が、H字型の断面を備えることである。当然ながら、第1及び第2隆起部は、アウターパイプの第2長手部分の異なる軸方向位置に、軸方向にずれて形成されることも考えられる。
【0016】
本発明の実施形態によると、第1長手部分の軸方向長さが、第2長手部分の軸方向長さの少なくとも2倍に相当すれば、本発明に係る伝熱器パイプにとって最適であることが明らかとなった。代替実施形態では、第2長手部分の軸方向長さは、第1長手部分の軸方向長さよりも長くてよい。
【0017】
本発明が有利な実施形態において意図しているのは、プロフィルインサートが、それぞれ1つの扇形の断面を備える少なくとも2つのシェル要素から形成されたパイプ体を含むことである。この実施形態によって、伝熱器パイプは簡単な生産法を用いて有利に製造可能である。
【0018】
本発明に係る伝熱器パイプの実施形態において、パイプ体が2つのシェル要素を含み、これら2つのシェル要素が、互いに接する長手縁辺部に溝状の窪み及びリブ状の突起を有して形成され、これらを用いてシール状に係合されると、特に有利であり、ここで2つのシェル要素はその内側に、パイプ体の内法断面に突出しかつアウターパイプの長手方向に延在するリブを有して形成され、各シェル要素が、リブが片側に開いたプロフィルを形成する。リブが片側に開いたプロフィルの2つのハーフシェルとしての、シェル要素のこのような形状は、例えば押出成型によって、容易かつ低価格で製造可能である。
【0019】
本発明が、本発明に係る伝熱器パイプの実施形態において意図しているのは、2つのシェル要素がそれぞれ、一方の長手縁辺部を密封溝で、かつ別の長手縁辺部を、密封溝の形状に適合する密封リブで形成されることである。ラビリンスシール状のこの実施形態によって、アウターパイプの第1長手部分において、排ガス又は凝集物をプロフィルインサートとアウターパイプとの間に流入させて腐食を引き起こしかねない間隙形成が防止される。
【0020】
本発明に係る伝熱器パイプを製造するのに容易かつコストのかからない一手段は、本発明の実施形態において、少なくとも1つの断面狭窄要素が、アウターパイプの第2長手部分内に挿入された、ノズル状に形成されたパイプインサートとして成形されることからなる。これにより、断面狭窄部のための凹入部又は陥没部を考慮して、アウターパイプを後加工する必要がなくなる。むしろ、アウターパイプの内径に適合した直径を有し、従って伝熱器パイプの取り付け時又は提供時にプロフィルインサートと一緒にアウターパイプ内にはめ込むことができる、別個の断面狭窄要素が製造されれば充分である。
【0021】
本発明は更なる実施形態において、アウターパイプが金属の合金、好適には鋼から形成され、プロフィルインサートがアルミニウムから形成されることを意図している。アウターパイプは、材料選択によって、排ガス凝集物に対して耐酸腐食性と耐アルカリ腐食性とを有し、またその端部において、伝熱器パイプを取り巻く加熱水室を燃焼室から、及び加熱水室の下部に設けられた加熱ボイラの排ガス集積部から分離するパイプ底面又はパイププレートに溶接できる。
【0022】
最後に本発明は、伝熱の効率を向上させるために、少なくとも1つの断面狭窄要素を備えるアウターパイプの第2長手部分が、燃焼室とアウターパイプの第1長手部分との間に配設されることを意図している。これにより、伝熱器パイプの断面狭窄要素は、パイプの入口の領域において、燃焼ガスの流れに影響を及ぼし、伝熱器パイプ内の流速及び乱流を増大させる。
【0023】
当然ながら、上述の及び以下で更に説明されることになる特徴は、本願発明の範囲を逸脱することなく、それぞれ記載された組み合わせのみならず、別の組み合わせ又は単独でも使用可能である。本発明の範囲は、請求項によってのみ定義される。
【0024】
本発明の対象の更なる詳細、特徴及び利点は、本発明の好ましい実施例を例示的に示す図に関連した以下の記載から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明に係る加熱ボイラの斜視図である。
図2図2は、ハウジングが部分的に切断された加熱ボイラの更なる斜視図である。
図3図3は、加熱ボイラの本発明に係る伝熱器パイプの個別部材を表す斜視図である。
図4図4は、本発明に係る伝熱器パイプの断面図である。
図5図5は、本発明に係る伝熱器パイプの斜視図である。
図6図6は、パイプ平面に沿った本発明に係る伝熱器パイプの側面断面図である。
図7図7は、別のパイプ平面に沿った本発明に係る伝熱器パイプの更なる側面断面図である。
図8図8は、図6の伝熱器パイプの長手部分の拡大図である。
図9図9は、図7の伝熱器パイプの長手部分の別の拡大図である。
図10図10は、本発明に係る伝熱器パイプの軸方向位置の横断面図である。
図11図11は、本発明に係る伝熱器パイプの別の軸方向位置の更なる横断面図である。
図12図12は、図10に示された位置に対応する伝熱器パイプの横断面図であって、貫流断面が分かりやすくなっている。
図13図13は、本発明に係る伝熱器パイプの斜視図であって、断面狭窄要素の領域が断面図として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1では、加熱ボイラ2のハウジング1が斜視図で示されており、図2では、ハウジング1の内部をより良好に視認できるよう、ハウジング1は部分的に消されている。加熱ボイラ2は、詳細には図示されていない加熱循環の加熱水を温めるために使用され、コンデンシングボイラとして実施されていてよい。ハウジング1は加熱水室3を取り巻いており、更に加熱水室3の上部に設けられかつ図示されていないバーナが配設された、深鍋状に又は円錐形に形成された燃焼室4を含む。燃焼室4の底面には伝熱器が配設され、該伝熱器は、加熱水室3を通って詳細には図示されていない排ガス集積室に合流する複数の伝熱器パイプ5を備える。それゆえ伝熱器パイプ5は、燃焼室4の底面から出て、示された実施例においてはほぼ垂直に加熱水室3を通って延在しているが、代替的には、加熱水室内において伝熱器パイプ5が水平に延びる0度から垂直に延びる90度までの間の任意の角度も考えられる。ここで加熱水が環流する伝熱器パイプ5の外面は、その熱を加熱水室3内の加熱水に放熱し、上部領域における温度が下部領域における温度を実質的に超えるように、伝熱器パイプ5において温度勾配が起こる。様々な加熱循環の冷却された再循環水が加熱水室3に再び供給される際に通る再循環連結部6、7が加熱水室に合流する。再循環連結部6と接続された加熱循環は、例えば工業用水を温めるのに使われ、つまり再循環温度が比較的高いが、他方で下の再循環連結部7は例えば床暖房用の加熱循環と接続され、つまり再循環温度が比較的低い。加熱循環用に温められた加熱水は、上部の前循環連結部8を介して取り出される。
【0027】
図2は、上部領域において本発明に従って、陥没部又は周回する凹入部9をそれぞれ有して形成された伝熱器パイプ5を示している。本願発明に係る個々の伝熱器パイプ5は、図3において個別部材の斜視図に見られる。視認できるように、伝熱器パイプ5は、加熱ボイラ2の運転時にボイラ炉の排ガスが貫流し、かつ外面を加熱水に取り囲まれているアウターパイプ10と、組み立てられた状態でアウターパイプ10内に挿入されるプロフィルインサート11とを備える。図示されている実施例では、アウターパイプ10は金属の合金好適には鋼から形成される。プロフィルインサート11は、アウターパイプ10の内側表面積を大きくするために、その長手方向12に延在するリブ14を備え、アウターパイプ10と導熱接触しており、ここでプロフィルインサート11は、伝熱を向上させるためにアルミニウムから形成される。
【0028】
図示されている実施例では、プロフィルインサート11は、2つのシェル要素15、16から形成されたパイプ体を含む。2つのシェル要素15、16は、それぞれ1つの半円形の断面を備える。一体型のプロフィルインサート11ももちろん考えられるが、そのようなプロフィルインサート11はコストをかけずに製造できない。従って、少なくとも二分割されたプロフィルインサート11を考えるべきであり、上記プロフィルインサート11のシェル要素は扇形に形成され、これによって閉鎖されたプロフィルインサート11が形成される。例示的実施形態によると、パイプ体は2つのシェル要素15、16を含み、該シェル要素15、16は、互いに接する長手縁辺部17に溝状の窪み18及びリブ状の突起19を有して形成され、図4において拡大図で示されているように、これらを用いてシール状に係合される。2つのシェル要素15、16はその内側に、パイプ体の内法断面に突出しかつアウターパイプ10の長手方向12に延在するリブ14を有して形成され、各シェル要素15、16が、リブ14が片側に開いたプロフィルを形成する。特に、2つのシェル要素15、16はそれぞれ、一方の長手縁辺部12を密封溝として機能する窪み18で、別の長手縁辺部12を、密封溝の形状に適合する突起19である密封リブで形成される。両シェル要素15、16から組み立てられたプロフィルインサート11は、その周面全体でアウターパイプ10に直接接しており、プロフィルインサート11を問題なくアウターパイプ10内に挿入できるようにするために、アウターパイプ10の内径よりもごく僅かに小さい外径を有して製造されている。
【0029】
既に図3において確認できるように、アウターパイプ10とプロフィルインサート11の軸方向長さは異なっており、それは本発明に係る伝熱器パイプ5の様々な側面図を示す図6、7に図示されているが、それに対して図5は、プロフィルインサート11がアウターパイプ10内に挿入されており外部からは視認できない、個別の伝熱器パイプ5を示している。
【0030】
図6から分かるのは、アウターパイプ10の軸方向長さ20は理想的にはプロフィルインサート11の軸方向長さ21の1.5倍に相当することであり、アウターパイプの軸方向長さ20はプロフィルインサート11の軸方向長さ21の1.3倍又は1.7倍に相当することも考えられる。アウターパイプ10の軸方向長さ20とプロフィルインサート11の軸方向長さ21とが異なることによって、アウターパイプ10は2つの長手部分に分割され得ることになる。ここでアウターパイプ10の第1長手部分22は、平滑な壁で円筒状に形成される。アウターパイプ10の第2長手部分23は、貫流断面を狭める少なくとも1つの断面狭窄要素24を備える。ここでプロフィルインサート11は、アウターパイプ10の第1長手部分22のみにわたって延在する。これによって、図示されている実施例では、第1長手部分22の軸方向長さ25が、第2長手部分23の軸方向長さ26の少なくとも2倍に相当することになる。代替的な長さの比率として、非常に特殊な使用の場合には、第2長手部分23の軸方向長さ26が、第1長手部分22の軸方向長さ25よりも長いということも可能である。
【0031】
プロフィルインサート11はアウターパイプ10と同一平面上で終端するのではなく、小さな部品がアウターパイプ10内に挿入されているため、プロフィルインサート11は完全にアウターパイプ10と特に第1長手部分22とによって受承されていることが、図6に関連して示される。更に図2との関連で図6から分かるのは、それぞれのアウターパイプ10の断面狭窄要素24を備える第2長手部分23が、燃焼室4と、対応するアウターパイプ10のそれぞれの第1長手部分22との間に配設されることである。その結果、それぞれの断面狭窄要素24は、燃焼室4のすぐ下流に配設される。
【0032】
ここで断面狭窄要素24は、アウターパイプ10の第2長手部分23内に挿入された、ノズル状に形成されたパイプインサートとして成形されていてよい。これによりアウターパイプ10は、第1長手部分22も第2長手部分23も通り抜けることができるように、平滑な壁で形成されることになる。それに対して、図示されている実施例においては、アウターパイプ10の第2長手部分23は凹入部又は陥没部9を備える。
【0033】
図6図13を概観して、以下において断面狭窄要素24の形状をより正確に記載する。この目的のために、図6、7、10に記載のアウターパイプ10の断面は、第1パイプ平面27と、第1パイプ平面27に垂直に延在する第2パイプ平面28とによって、分割される。ここで図6は、第1パイプ平面27に沿った断面図を示しており、それに対して図7は、第2パイプ平面28に沿った断面図を示している。図6図13において明らかなように、断面狭窄要素24は、アウターパイプ10の第2長手部分23の壁に形成された2つの第1陥没部又は凹入部29、30を含む。特に第1陥没部29、30は、第2長手部分23の壁に押し込まれているため、第1陥没部29、30は、凹面に形成された又は内側に向かって湾曲した凹入部となっている。2つの第1陥没部29、30は、直径上で互いに対向して配設され、第1パイプ平面27に関して鏡面対称に形成される。図8に示された図6の部分図Aの拡大図が示すように、2つの第1陥没部29、30の間に、アウターパイプ10の直径32(図6参照)の2%〜3%の第1貫流間隙31(図8参照)が形成される。第1陥没部29、30を形成するために、アウターパイプ10の壁は、パイプの両側から点で凹入されるため、距離が最も狭い点で第1貫流間隙31を形成する、内側に向かって湾曲した凹入部が生じる。ここで壁は、陥没部29、30のために、第2長手部分23の軸方向長さ26の0.4倍に相当する軸方向長さ33(図9参照)にわたって変形するが、軸方向長さ33が軸方向長さ26の0.3倍〜0.5倍に相当することも可能である。ここで壁は、変形部のこの軸方向長さ33全体で、第1陥没部29、30のために押し込まれて、壁は軸方向長さ33にわたって第1陥没部29、30のために、平滑な壁のアウターパイプ10の直径32の0.6倍に相当する最大直径34を備えるが、最大直径34が平滑な壁のアウターパイプ10の直径32の0.5倍〜0.7倍に相当することも可能である。
【0034】
図7、9は、第2隆起部35、36のための更なる図を示しており、第1隆起部29、30と第2隆起部35、36の変形部の軸方向長さ33は理想的には同一であり、それゆえ図9においてのみ示されている。しかし変形部の軸方向長さは、第1隆起部と第2隆起部とで異なっていてもよい。図7において、プロフィルインサート11のほかに更に軸方向断面F−Fが記入されており、該軸方向断面F−Fは図11に図示されており、アウターパイプ10とプロフィルインサート11を形成する両シェル要素15、16とを示している。両第2隆起部35、36は、両第1隆起部29、30と共に断面狭窄要素24を形成し、第1隆起部29、30は、第2隆起部35、36とは異なって形成される。2つの第2陥没部35、36も、直径上で互いに対向して設けられ、第2パイプ平面28に関して鏡面対称に形成される。第2陥没部35、36も、第2長手部分23の壁に押し込まれているため、第2陥没部35、36は、凹面に形成された又は内側に向かって湾曲した凹入部となっている。図9に示された図7の部分図Bの拡大図が示すように、2つの第2陥没部35、36の間に、第1貫流間隙31よりも大きい、アウターパイプ10の直径32(図6参照)の18%〜22%の第2貫流間隙37が形成される。ここでも、第2陥没部35、36を形成するために、アウターパイプ10の壁は、パイプの両側から点で凹入されるため、距離が最も狭い点で第2貫流間隙37を形成する、内側に向かって湾曲した凹入部が生じる。壁は、陥没部35、36のために、同様に第2長手部分23の軸方向長さ26の0.4倍に相当する軸方向長さ33(図9参照)にわたって変形するが、軸方向長さ33が軸方向長さ26の0.3倍〜0.5倍に相当することも可能である。壁は、第2凹入部又は陥没部35、36を形成するために、この軸方向長さ33全体で押し込まれ、壁は軸方向長さ33にわたって、第2陥没部35、36のために、平滑な壁のアウターパイプ10の直径32の0.55倍に相当する最大直径38を備えるが、最大直径38が平滑な壁のアウターパイプ10の直径32の0.45倍〜0.65倍に相当することも可能である。
【0035】
第1陥没部29、30と第2陥没部35、36とを前述のように形成することで、図10においてシェル要素15、16から形成されるプロフィルインサート11を明示する線の入った面と、図12において黒く塗られた領域とで示されている貫流断面39ができる。第1隆起部29、30と第2隆起部35、36は、アウターパイプ10の第2長手部分23の同一の軸方向位置に形成される、つまり第1隆起部29、30と第2隆起部35、36は両方とも、同じ軸方向長さ33にわたって延在しているため、第1隆起部29、30と第2隆起部35、36で形成される、アウターパイプ10の第2長手部分23の貫流断面39は、H字型の断面を備える。図13は、H字型の断面で始まるパイプ部分が省略されたアウターパイプ10を示しているため、H字型に形成された貫流断面39を良好に視認できる。
【0036】
本発明に係る伝熱器パイプ5では、アウターパイプ10の断面狭窄要素24は、二重対称に形成された狭窄部であり、この狭窄部によって、従来技術から公知の欠点が回避される。なぜなら、従来技術の伝熱器パイプで問題となるのは、高温の燃焼ガスが伝熱器パイプを通ってその入口からその出口まで流れ、その際に冷却されることだからである。その際に伴う著しい燃焼ガスの容積の減少によって、流速と乱流とが伝熱器パイプの出口に至るまでに大きく低下し、伝熱の効率に不利な影響を及ぼすことになる。本発明によって伝熱は改善される。なぜなら、本発明に係る伝熱器パイプ5内の流速及び乱流は、断面狭窄要素24によって増大するからである。凹入部又は陥没部29、30、35、36は、凹入部又は陥没部29、30、35、36手前の上流にある領域において圧力損失を増大させる。それによって、明らかにより大きなエネルギを、燃焼室4と陥没部29、30、35、36手前の伝熱器パイプ5のパイプ部分とにおいて伝達できる。陥没部29、30、35、36の領域において、流速は狭窄部によって非常に高まり、それによって同様に、伝熱とひいてはエネルギ利用とが向上する。陥没部29、30、35、36の後方の領域、つまり狭窄部の下流で、排ガスが再び膨張し、プロフィルインサート11を有する部分に運ばれる。プロフィルインサート11のリブ14の表面積は非常に大きくなっており、ここで排ガスが露点より低く冷却されることによって、コンデンシングボイラ技術の利点が促進される。
【0037】
本発明の実質的な利点は、以下のように要約できる。
‐圧力損失の増大により、燃焼室4及び伝熱器パイプ5の流入口での伝熱の改善が得られる。
‐狭窄部24又は陥没部29、30、35、36の領域における流速の増大により、伝熱の改善が得られる(層流対乱流)。
‐プロフィルインサート11のリブ14を用いた伝熱面積の拡大による、狭窄部24の後方又は下流の伝熱器パイプ5の第1長手部分22における低流速化、及び排ガス温度の低下によって、伝熱の改善が得られる。
【0038】
加熱ボイラ2における本発明に係る伝熱器パイプ5によって、周知技術よりも85%〜90%多いエネルギを伝達できる。
【0039】
前述の発明は、当然ながら、記載され図示されている実施形態に限定されていない。図示されている実施例では、意図された使用法に応じて当業者が想到する数多くの変更が、それによって本発明の領域を出なければ、行われてよいことは明らかである。例えば、断面狭窄要素24は、(4つの凹入部の代わりに)唯一の陥没部9として、アウターパイプ10の第2長手部分23の壁に形成されていてよく、又は複数の断面狭窄部が、対応する陥没部9によって、軸方向12に若しくは軸方向の様々なパイプ位置に互いに前後して形成されていてよい。本発明に属するのは、以上の記載に含まれている及び/又は図示されている全てであり、具体的な実施例と相違して当業者が想到するものを含む。
【符号の説明】
【0040】
1 ハウジング
2 加熱ボイラ
3 加熱水室
4 燃焼室
5 伝熱器パイプ
9 陥没部
10 アウターパイプ
11 プロフィルインサート
12 長手方向
14 リブ
15、16 シェル要素
17 長手縁辺部
18 窪み、密封溝
19 突起、密封リブ
22 第1長手部分
23 第2長手部分
24 断面狭窄要素
25 第1長手部分の軸方向長さ
26 第2長手部分の軸方向長さ
27 第1パイプ平面
28 第2パイプ平面
29、30 第1陥没部、第1隆起部
31 第1貫流間隙
32 アウターパイプの直径
35、36 第2陥没部、第2隆起部
37 第2貫流間隙
39 貫流断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13