特許第6514802号(P6514802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514802
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】オイルミスト除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/08 20060101AFI20190425BHJP
   B01D 45/18 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B01D45/08
   B01D45/18
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-72970(P2018-72970)
(22)【出願日】2018年4月5日
(62)【分割の表示】特願2014-144750(P2014-144750)の分割
【原出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-103186(P2018-103186A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】村松 康行
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−55839(JP,A)
【文献】 特開2010−158634(JP,A)
【文献】 特開2014−33974(JP,A)
【文献】 特開2002−219312(JP,A)
【文献】 特開2010−64162(JP,A)
【文献】 特開2007−98254(JP,A)
【文献】 実開昭58−31023(JP,U)
【文献】 特開2003−190735(JP,A)
【文献】 実開昭60−148330(JP,U)
【文献】 特開平3−133374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/00−45/18
B01D 46/00−46/54
B08B 3/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塵空気中のオイルミストを分離除去するためのオイルミスト除去装置であって、
回転可能に設けられる回転円板と、
該回転円板に設けられ、気流が衝突することでオイルミストを捕集するメッシュと、
洗浄液を噴射する洗浄動作を行うスプレー洗浄器と、を備え、
該スプレー洗浄器は、
前記メッシュに対して傾斜した一方向から洗浄液を噴射することで前記回転円板を一方向に回転させるモーメントを発生させる第1スプレーノズルと、
前記メッシュに対して傾斜した他方向から洗浄液を噴射することで前記回転円板を他方向に回転させるモーメントを発生させる第2スプレーノズルと、
を備えていることを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項2】
モータと、
該モータの駆動により気流を形成する吸引ファンと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項3】
前記モータは、上流下流方向に出力軸が形成され、
前記吸引ファンは、該モータの出力軸に固定され、該モータの駆動により下流に向かう気流を形成することを特徴とする請求項2に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項4】
前記スプレー洗浄器は、前記モータの非駆動時に洗浄液を噴射する洗浄動作を行うことを特徴とする請求項2〜3のいずれかの請求項に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項5】
前記スプレー洗浄器は、前記回転円板に離間して配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの請求項に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項6】
前記スプレー洗浄器は、前記回転円板の下流に離間して配置されていることを特徴とする請求項5に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項7】
前記メッシュは、下流に向かう気流が衝突することでオイルミストを捕集することを特徴とする請求項1〜6のいずれかの請求項に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項8】
前記第1スプレーノズルによる洗浄動作終了後に前記第2スプレーノズルによる洗浄動作が行われる洗浄サイクルが繰り返されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの請求項に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項9】
前記第2スプレーノズルによる洗浄動作は、前記第1スプレーノズルの洗浄動作によって逆方向に回転している前記回転円板が停止するまで行われることを特徴とする請求項8に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項10】
前記モータ又は前記回転円板の回転方向を検知する回転方向検知手段を備え、該モータ又は回転円板が停止したことを該回転方向検知手段が検知した時に前記第2スプレーノズルによる洗浄動作を停止することを特徴とする請求項9に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項11】
前記第2スプレーノズルによる洗浄動作は、前記第1スプレーノズルの洗浄動作によって逆方向に回転している前記回転円板が正方向に回転し始めた後も継続されることを特徴とする請求項8に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項12】
含塵空気を発生源から導く接続管と、
前記メッシュの気流方向上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段と、
前記接続管に関するデータと前記差圧検出手段の検出結果とに基づき前記回転円板の逆方向への回転回数を制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とする請求項8〜11のいずれかの請求項に記載のオイルミスト除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の加工機等から発生する含塵気流からオイルミストを分離除去するためのオイルミスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場内の加工機等から発生するオイルミストを含む含塵気流(油煙)からオイルミストを捕集して分離除去させるため、オイルミスト除去装置が使用されている。
【0003】
従来のオイルミスト除去装置としては、例えば、図9に示されているように、電動モータにより回転する回転円板1と、回転円板1の外周付近に設けられて上下に流通する気流に対して衝突作用を及ぼすメッシュ2と、回転円板1の上方の1箇所においてメッシュ2に対して所定角度θ傾斜して設けられる上側スプレー洗浄器3と、を備えたものが知られている。そして、この種のオイルミスト除去装置では、電動モータが停止している間、上側スプレー洗浄器3が、メッシュ2に対して傾斜した一方向から洗浄液を噴射することでメッシュ2に付着したオイルミストの固着成分や粉塵成分などを洗浄するようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−55839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されているオイルミスト除去装置では、1箇所に設けられた上側スプレー洗浄器3によってメッシュ2に対して傾斜した一方向から洗浄液を噴射するように構成されているため、メッシュの一部分(図9のハッチング部分)が死角となってメッシュ2の隅々まで洗浄することができず、メッシュ2の洗い残しが生じる虞がある。したがって、メッシュ2に付着した固着成分や粉塵成分等を全て取り除くことが難しく、オイルミストの安定的且つ確実な捕集及び分離除去を行うことが困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、メッシュに付着したオイルミストの固着成分や粉塵成分等を安定的且つ確実に捕集及び分離除去することのできるミスト除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1のオイルミスト除去装置は、含塵空気中のオイルミストを分離除去するためのオイルミスト除去装置であって、回転可能に設けられる回転円板と、該回転円板に設けられ、気流が衝突することでオイルミストを捕集するメッシュと、洗浄液を噴射する洗浄動作を行うスプレー洗浄器と、を備え、該スプレー洗浄器は、前記メッシュに対して傾斜した一方向から洗浄液を噴射することで前記回転円板を一方向に回転させるモーメントを発生させる第1スプレーノズルと、前記メッシュに対して傾斜した他方向から洗浄液を噴射することで前記回転円板を他方向に回転させるモーメントを発生させる第2スプレーノズルと、を備えていることを特徴とする。
本発明の第2のオイルミスト除去装置は、モータと、該モータの駆動により気流を形成する吸引ファンと、を備えていることを特徴とする。
本発明の第3のオイルミスト除去装置は、前記モータが、上流下流方向に出力軸が形成され、前記吸引ファンは、該モータの出力軸に固定され、該モータの駆動により下流に向かう気流を形成することを特徴とする。
本発明の第4のオイルミスト除去装置は、前記スプレー洗浄器が、前記モータの非駆動時に洗浄液を噴射する洗浄動作を行うことを特徴とする。
本発明の第5のオイルミスト除去装置は、前記スプレー洗浄器が、前記回転円板に離間して配置されていることを特徴とする。
本発明の第6のオイルミスト除去装置は、前記スプレー洗浄器が、前記回転円板の下流に離間して配置されていることを特徴とする。
本発明の第7のオイルミスト除去装置は、前記メッシュが、下流に向かう気流が衝突することでオイルミストを捕集することを特徴とする。
【0008】
上記した本発明の第1〜第7のオイルミスト除去装置によれば、スプレー洗浄器がメッシュに対して傾斜した一方向から洗浄液を噴射する第1スプレーノズルと他方向から洗浄液を噴射する第2スプレーノズルを備えているため、メッシュ全体を隅々まで洗浄することができる。また、メッシュの洗浄時に、洗浄液を噴射することで回転円板を回転させることができ、モータ動力を必要としないため、経済性を高めることができる。
【0009】
また、本発明の第8のオイルミスト除去装置は、前記第1スプレーノズルによる洗浄動作終了後に前記第2スプレーノズルによる洗浄動作が行われる洗浄サイクルが繰り返されることを特徴とする。
【0010】
上記した本発明の第8のオイルミスト除去装置によれば、回転円板の回転速度を変化させる動作を繰り返し行うことができるため、スプレー洗浄器の洗浄動作による洗い流し効果と共に、回転円板のイナーシャによっても汚れを洗い落とすことができ、メッシュに付着した汚れを効果的に除去することができる。
【0011】
また、本発明の第9のオイルミスト除去装置は、前記第2スプレーノズルによる洗浄動作が、前記第1スプレーノズルの洗浄動作によって逆方向に回転している前記回転円板が停止するまで行われることを特徴とする。
【0012】
上記した本発明の第9のオイルミスト除去装置によれば、スプレー洗浄器によるメッシュの洗浄時に回転円板が正方向に回転することがないので、回転円板の正方向の回転により発生する洗浄液の飛沫が開口部(排気口)からオイルミスト除去装置の外部に飛散するのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の第10のオイルミスト除去装置は、前記モータ又は前記回転円板の回転方向を検知する回転方向検知手段を備え、該モータ又は回転円板が停止したことを該回転方向検知手段が検知した時に前記第2スプレーノズルによる洗浄動作を停止することを特徴とする。
【0014】
上記した本発明の第10のオイルミスト除去装置によれば、回転方向検知手段を備えているため、モータ又は回転円板が停止した時点で正確に第2スプレーノズルによる洗浄動作を停止することができる。したがって、スプレー洗浄器によるメッシュの洗浄時に回転円板が正方向に回転することがないので、回転円板の正方向の回転により発生する洗浄液の飛沫が開口部からオイルミスト除去装置の外部に飛散するのを防止することができる。
【0015】
また、本発明の第11のオイルミスト除去装置は、前記第2スプレーノズルによる洗浄動作が、前記第1スプレーノズルの洗浄動作によって逆方向に回転している前記回転円板が正方向に回転し始めた後も継続されることを特徴とする。
【0016】
上記した本発明の第11のオイルミスト除去装置によれば、メッシュ36に付着した汚れをより効果的に除去することができる。
【0017】
また、本発明の第12のオイルミスト除去装置は、含塵空気を発生源から導く接続管と、前記メッシュの気流方向上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段と、前記接続管に関するデータと前記差圧検出手段の検出結果とに基づき前記回転円板の逆方向への回転回数を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
上記した本発明の第12のオイルミスト除去装置によれば、回転円板の逆回転により発生する洗浄液の飛沫が発生源の内部に浸入することがないので、発生源に錆が発生する等の悪影響を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、メッシュに付着したオイルミストの固着成分や粉塵成分等を安定的且つ確実に捕集及び分離除去することができ、メッシュの洗浄効果を向上させることができる等、種々の優れた効果を得ることかできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置を示す平断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置において、(A)は図2の矢視Xから見た第1スプレーノズルを示す拡大側面図、(B)は図2の矢視Yから見た第2スプレーノズルを示す拡大側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置のスプレー洗浄器を示す模式図である。
図5】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置をオイルミスト発生源に接続した状態を示す縦断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置の制御ユニットを示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置において、洗浄タイミングの一例を示すタイムチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置において、洗浄タイミングの別の例を示すタイムチャートである。
図9】従来のオイルミスト除去装置の上側スプレー洗浄器を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置について詳細に説明する。尚、以下に示す実施の形態は本発明の好適な一例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0022】
図1及び図2に示されているように、オイルミスト除去装置10は、出力軸11が上方に向かって延びる電動モータ12と、出力軸11の上部に固定される吸引ファン13と、出力軸11の下部に固定される回転円板14と、吸引ファン13と回転円板14との間に設けられる整流部15と、回転円板14の上方に設けられるスプレー洗浄器16と、吸引ファン13の上方に設けられる排気部17と、がケーシング18の内部に配置されて構成されている。ケーシング18は出力軸11を中心とした有天有底円筒形状を有しており、ケーシング18の外周壁面から接線方向に吸込口19が突出して形成されている。また、ケーシング18の外周壁面には制御回路ユニット29が固定されている。
【0023】
電動モータ12は、モータ本体20の下端が台座21に固定されている。モータ本体20の外周には、モータ本体20を囲繞するように内筒24が形成されている。内筒24は出力軸11を中心とした略円筒形状を有し、その上端部は上方に向かって細径となるように円錐状に形成されている。内筒24の下端はケーシング18の底面25に支持され、この底面25は複数の防振ダンパー26を介して台座21に支持されている。一方、内筒24の上端は、複数の整流孔27を有する円板形状の整流板28を支持しており、整流板28の外周縁はケーシング18の内面に支持されている。これにより、内筒24とケーシング18の下半部分18aとの間にサイクロン部30が形成され、このサイクロン部30の下端は底板25によって密閉されている。
【0024】
吸引ファン13は、吸気開口を有する下部円板32と、下部円板32に対向するように設けられる上部円板33と、上部円板33と下部円板32との間に設けられる複数のフィン34と、を備えて構成されている。吸引ファン13の中心には出力軸11が上下に貫通し、出力軸11の上端にフィン取付フランジ35を介して上部円板33が固定されることで吸引ファン13は出力軸11に固定される。複数のフィン34は、吸引ファン13の回転方向に応じて前記吸気開口から吸引した気流を外周方向へと案内するようにそれぞれ湾曲して形成されている。これにより、吸引ファン13は、気流を中心側から外周側へと案内することでサイクロン部30を負圧とし、吸込口19からオイルミストを含む含塵気流を吸引することができる。
【0025】
回転円板14は、円板取付フランジ35を介して出力軸11の下部に固定され、電動モータ12の駆動時に正方向(図2の時計回り方向)に回転可能となっている。回転円板14の外周部には、周方向に沿って扇形状のメッシュ36が所定間隔で複数箇所(本実施の形態では8箇所)に設けられている。メッシュ36は、例えば、細かい多数の空隙を有する網目等により形成されており、より好適には、細いワイヤ等の線材を放射状に並列に多数固定することで構成されている。これにより、電動モータ12の回転によって回転円板14に衝突するオイルミスト等を外周方向に弾き飛ばし易くすることができる。なお、メッシュ36は、回転円板14に多数の小孔を直接形成しても良く、また、メッシュ36の密度等は電動モータ12の出力、ダストの大きさ、オイルミストの種類等に応じて適宜設定することができる。
【0026】
整流部15は、中心を出力軸11が貫通する支持円板37に固定され、支持円板37は出力軸11を中心とする流通穴38を有し、支持円板37の周縁はケーシング15の内面に支持されている。整流部15は、支持円板37の下側に固定される略円筒形状の固定羽根体40と、支持円板37の上側に固定される略円筒形状の筒状体41と、を備え、固定羽根体40と筒状体41とは流通穴38を介して連通している。固定羽根体40は、支持円板37の流通穴38に対向して形成される固定円板42と、支持円板37と固定円板42との間に形成される複数の案内羽根43と、を備え、固定羽根体40の周壁には各案内羽根43に連通するように複数の吸気穴(図示せず)が形成されている。このように整流部15を構成することにより、メッシュ36を通過した気流を吸引ファン13の中心側の前記吸気開口に向けて案内することができる。
【0027】
図1図4に示されているように、スプレー洗浄器16は、回転円板14の外周部の上方において支持円板37に貫設される第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46と、第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46に対して水道水供給源47から水を供給するための給水設備48と、を備えて構成されている。
【0028】
第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46は、先端が下向きのエルボ型を有し、図2に示されているように、平面視で出力軸11に対して中心角が90度を成すように周方向に沿って交互にそれぞれ2個ずつ配設されている。また、支持円板37からは第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46の外側において回転円板14の外周縁に沿うように遮蔽板50が垂下されている。
【0029】
第1スプレーノズル45は、図3(A)に示されているように、鉛直方向に対して周方向一方側に所定角度θ1傾斜した姿勢で配置されている。これにより、第1スプレーノズル45は、メッシュ36に対して周方向に傾斜した一方向から洗浄液を噴射することで回転円板14を電動モータ12の駆動時の回転方向と逆方向(図2の反時計回り方向)に回転させるモーメントを発生させることができる。
【0030】
第2スプレーノズル46は、図3(B)に示されているように、鉛直方向に対して第1スプレーノズル45の傾斜方向とは反対側の周方向他方側に所定角度θ2傾斜した姿勢で配置されている。これにより、第2スプレーノズル46は、メッシュ36に対して前記一方向とは反対の周方向に傾斜した他方向から洗浄液を噴射することで回転円板14を電動モータ12の駆動時の回転方向と同方向(図2の時計回り方向)に回転させるモーメントを発生させることができる。
【0031】
なお、第1スプレーノズル45と第2スプレーノズル46の設置数や配置は上記した場合に限定されるものではなく、例えば、第1スプレーノズル45と第2スプレーノズル46とをそれぞれ1個ずつ出力軸11を挟んで対向する位置に中心角が180度を成すように設置したり、或いは、第1スプレーノズル45と第2スプレーノズル46の設置数を異ならせたりしてもよい。また、第1スプレーノズル45の傾斜角度θ1と第2スプレーノズル46の傾斜角度θ2とは同一角度でも異なる角度でもよい。
【0032】
給水設備48は、制御回路ユニット29に取り付けられる電磁弁51と、水道水供給源47から電磁弁51までの主給水配管52と、電磁弁51から第1スプレーノズル45までの第1分岐給水配管53と、電磁弁51から第2スプレーノズル46までの第2分岐給水配管54と、を備えている。
【0033】
電磁弁51は、図2に示すように第1分岐給水配管53と第2分岐給水配管54にそれぞれ対応して設置される二方電磁弁であってもよく、或いは、図4に示すように三方電磁弁であってもよい。なお、電磁弁51を開放した時の水圧は0.1〜0.3MPa範囲に設定されるのが好ましい。
【0034】
図4に示されているように、主給水配管52には、水道水供給源47側から順に、二方電磁弁55、濾過フィルタ56が接続されている。また、第1分岐給水配管53及び第2分岐給水配管54には、それぞれ、電磁弁51側から順に、レギュレータ57、流量計58が接続されている。レギュレータ57は給水圧力を調整する機能を有し、流量計58は給水量を測定する機能を有しており、制御回路ユニット29は流量計58の値を監視しつつ第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46からの噴射圧力が適正値となるようにレギュレータ57を制御する。なお、レギュレータ57や流量計58は水道水供給源47の水圧が安定している場合や水圧の調整が不要な場合には必ずしも設ける必要はない。
【0035】
第1分岐給水配管53及び第2分岐給水配管54は、図2に良く示されているように、それぞれ、ケーシング18の上半部分18bを貫通し、支持円板37の上方においてケーシング18の外周壁内面に沿って配設され、分岐継手60及び可撓性ホース61を介して第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46に接続される。
【0036】
再び、図1を参照すると、排気部17は、有底円筒形状の排気カバー62の内部に排気マフラー63が設けられて構成されている。排気カバー62は、円板状のベース板64と、このベース板64の外周縁に立設された円筒状の外周壁65と、を備えて構成され、外周壁65には排気取入口(図示せず)が形成されている。
【0037】
排気マフラー63は、中心部分に排気口59が形成された金網状の略円筒体により構成され、パンチングメタル等で形成された小径開口部が多数設けられている。これにより、排気の流通を分散させて整流させることができると共に、排気時の気流による風切り音は小径開口部では気流と一緒に通過するものの小径開口部以外では反射されるため、その周囲において音の打ち消し効果が発生し、減音効果を奏することができる。なお、小径開口部の開口率は50%程度と低くても良く、板厚は厚い材料を用いるのが良い。
【0038】
吸込口19は、電動モータ12の出力軸11と同軸な鉛直方向に中心軸を有する内筒24とケーシング18の下半部分18aとの間、即ち、その鉛直中心軸とは交わらないオフセットした位置に開口され、サイクロン部30に含塵空気を吸込み可能となっている。また、ケーシング18の下半部分18aの下部には排油口66が形成されており、この排油口66の一部分はケーシング18の底板25の上面より低くなっている。
【0039】
また、図5に示すように、吸込口19には、工場内の加工機等のミスト発生源67から含塵空気を導く接続管68が接続されており、この接続管68は配管又はダクト等により形成されている。なお、ミスト発生源67から発生する含塵空気中のオイルミストには、オイルミスト自体の他、オイルミストを含んだ塵埃を主とする固着成分、オイルミストが付着した微細な研磨粉や切削粉等のダストを主とする粉塵成分が含まれる。
【0040】
図4及び図6に示されているように、制御回路ユニット29には、電動モータ12、各電磁弁51,55、及びレギュレータ57等を制御するためのCPU70と、回転方向検知手段22、回転数検出手段23、流量計58、及び差圧計71からの検出値等を記憶するための記憶部72と、が設けられている。
【0041】
回転方向検知手段22は、第2スプレーノズル46による洗浄液の噴射時間を決定するために電動モータ12又は回転円板14の回転方向を検知するものであり、例えば、センサーによって検知したり、或いは、電動モータ12の逆起電力によって検知したり、或いは、回転方向を出力する機能を有する電動モータ12を使用したりするものが含まれる。また、回転数検出手段23は、エンコーダ等のセンサーによって電動モータ12又は回転円板12の回転数を検出するものが含まれる。さらに、差圧計71は、メッシュ36の気流方向上流側と下流側との差圧を検出し、メッシュ36の目詰まり状態を出力するためのものである。
【0042】
また、制御回路ユニット29には、接続管68の種類や長さL及び内径D(図5参照)、スプレー洗浄器16の洗浄時間や停止時間等のデータを入力するための設定入力手段73と、設定入力手段73に入力されたデータを表示するための表示手段74と、オイルミスト除去装置10を起動又は停止させるための運転スイッチ75と、ミスト発生源67の制御装置76と接続される外部通信部77と、が設けられている。
【0043】
上記した構成を備えたオイルミスト除去装置10において、図1中に矢印で示されているように、吸引ファン13の回転に伴う吸引作用によって吸込口19からケーシング18の内部に導かれたオイルミストを含む含塵空気は、サイクロン部30における遠心作用によって旋回し、含塵空気中の比較的大きな粒子径の切削粉等は、ケーシング18の下半部分18aの内面に沿って凝集して底板25に落下し、排油口66より外部に排出される。
【0044】
その後、サイクロン部30内の含塵空気は、ケーシング18と内筒24の間を旋回しつつ上昇し、整流板28によって整流された後、下方から回転円板14のメッシュ36に衝突する。
【0045】
これにより、含塵空気中のオイルミストは、メッシュ36に捕集されると共に外周に弾き飛ばされ、弾き飛ばされたオイルミストは底板25に落下し、排油口66より外部に排出される。
【0046】
このようにメッシュ36を通過してオイルミストを除去されて清浄化された空気は、整流部15において均一に整流されて吸引ファン13に案内され、排気マフラー63において整流、拡散されて騒音を低減された後、排気口59から外部に排出される。
【0047】
次に、主に図7のタイムチャートを参照しつつ、本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置10のスプレー洗浄器16によるメッシュ36の洗浄動作について説明する。
【0048】
制御回路ユニット29の運転スイッチ75の押下操作等によって、オイルミスト除去装置10の運転が開始されると、電動モータ12の駆動に伴って回転円板14は正方向(図2の時計回り方向)に回転する。この時、スプレー洗浄器16は停止しており、第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46から洗浄液は噴射されない。
【0049】
そして、制御回路ユニット29の運転スイッチ75の再度の押下操作等によって、オイルミスト除去装置10の運転が停止されると、電動モータ12の駆動停止に伴って回転円板14は停止する。この回転円板14の停止後、所定時間が経過すると、制御回路ユニット29からの指令により、電磁弁51,55が開閉切換制御され、水道水供給源47から主給水配管52及び第1分岐給水配管53を通って第1スプレーノズル45に給水が行われ、第1スプレーノズル45からメッシュ36に対して洗浄液である水が噴射される。この時、図3(A)に示されているように、第1スプレーノズル45は鉛直方向に対して周方向一方側に所定角度θ1傾斜した状態でメッシュ36に洗浄液を噴射するため、回転円板14に対して電動モータ12の駆動時の回転方向と逆方向の回転モーメントが作用し、回転円板14は逆方向(図2の反時計回り方向)に回転する。
【0050】
このように第1スプレーノズル45から洗浄液が噴射開始された後、予め設定された所定時間が経過すると、制御回路ユニット29からの指令により、電磁弁51が開閉切換制御され、水道水供給源47から主給水配管52及び第2分岐給水配管54を通って第2スプレーノズル46に給水が行われる。これにより、第1スプレーノズル45からメッシュ36に対する洗浄液の噴射が停止されると共に、第2スプレーノズル46からのメッシュ36に対する洗浄液の噴射が開始される。この時、図3(B)に示されているように、第2スプレーノズル46は鉛直方向に対して周方向他方側に所定角度θ2傾斜した状態でメッシュ36に洗浄液を噴射するため、回転円板14に対して電動モータ12の駆動時の回転方向と同方向の回転モーメントが作用することにより、回転円板14の逆方向(図2の反時計回り方向)の回転速度は次第に遅くなり、やがて停止する。なお、この場合、メッシュ36の洗浄効果をより高めるためには、第2スプレーノズル46の噴射圧力が第1スプレーノズル45の噴射圧力より大きくなるようにレギュレータ57を設定し、回転円板14の逆方向の回転停止時のイナーシャが大きくなるようにしておくのが好ましい。
【0051】
このように回転円板14の逆方向の回転が停止すると、制御回路ユニット29からの指令により、電磁弁51,55が開閉切換制御され、第1スプレーノズル45及び第2スプレーノズル46からメッシュ36に対する洗浄液の噴射が停止され、スプレー洗浄器16による1回目の洗浄サイクルが終了する。
【0052】
1回目の洗浄サイクル終了後、所定時間が経過すると、制御回路ユニット29からの指令により、1回目の洗浄サイクルと同様に2回目の洗浄サイクルが行われ、この洗浄サイクルが合計で3回繰り返され、スプレー洗浄器16によるメッシュ36の一連の洗浄動作が完了する。
【0053】
なお、上記したスプレー洗浄器16によるメッシュ36の一連の洗浄動作では、洗浄サイクルが3回繰り返されているが、この洗浄サイクルの最大繰り返し回数は、オイルミストの性状(油性又は水溶性)や洗浄液の噴射圧力及び噴射時間等のデフォルトデータと、入力される接続管68に関するデータ(種類、長さL、内径D等)と、差圧計71で測定される洗浄直前のメッシュ36の差圧測定値により判断されるメッシュ36の目詰まり具合に基づき、回転円板14が何回、逆回転すると回転円板14の逆回転により発生する洗浄液の飛沫がミスト発生源67に達するかを制御回路ユニット29が演算することで決定される。
【0054】
例えば、洗浄直前のメッシュ36の差圧が500Pa、接続管68の種類が塩ビ製のフレキシブルホース、接続管68の長さL(図5参照)が5mの場合には、制御回路ユニット29の演算によって、回転円板14の逆回転数が8〜10回転までは前記洗浄液の飛沫がミスト発生源67に達しないと判断される。この場合には、例えば、回転円板14が、1回目の洗浄サイクルで4回、逆回転し、2回目の洗浄サイクルで3回、逆回転し、3回目の洗浄サイクルで2回、逆回転したことを回転数検出手段23が検出すると、合計3回の洗浄サイクルにおける回転円板14の逆回転数が9回になるため、制御回路ユニット29は、3回目の洗浄サイクルが終了した時点で、スプレー洗浄器16によるメッシュ36の一連の洗浄動作を終了させる。
【0055】
このように、洗浄液の飛沫の到達距離F(図5参照)が接続管68の長さL(図5参照)より短くなるように、制御回路ユニット29が回転円板14の逆回転数を制御することにより、洗浄液の飛沫がミスト発生源67に到達するのを防止することができる。
【0056】
また、上記した実施の形態に係るオイルミスト除去装置10によれば、スプレー洗浄器16がメッシュ36に対して傾斜した一方向から洗浄液を噴射する第1スプレーノズル45と他方向から洗浄液を噴射する第2スプレーノズル46を備えているため、洗浄時にメッシュ36の一部分が死角となることがなく、メッシュ36の隅々まで洗浄することができる。したがって、メッシュ36に付着した固着成分や粉塵成分等を確実に取り除くことができ、オイルミストの安定的且つ確実な捕集及び分離除去を行うことができる。また、メッシュ36の洗浄時、洗浄液を噴射することで回転円板14を回転させることができ、モータ動力を必要としないため、経済性を高めることができる。
【0057】
また、上記した実施の形態に係るオイルミスト除去装置10は、電動モータ12又は回転円板14の回転方向を検知する回転方向検知手段22を備えているため、電動モータ12又は回転円板14が停止した時点で正確に第2スプレーノズル46による洗浄動作を停止することができる。したがって、スプレー洗浄器16によるメッシュ36の洗浄時に回転円板14が正方向に回転することがないので、汚れが混在した洗浄液の飛沫が排気口59からオイルミスト除去装置10の外部に飛散するのを防止することができる。
【0058】
なお、上記した本発明の実施の形態に係るオイルミスト除去装置10のスプレー洗浄器16によるメッシュ36の一連の洗浄動作例では、第1スプレーノズル45による洗浄液の噴射時間は、予め設定されているが、差圧計71による洗浄動作直前のメッシュ36の差圧測定値に応じて制御回路ユニット29が可変制御するようにしても良い。
【0059】
また、1回目の洗浄サイクル終了後、所定時間経過した後に2回目の洗浄サイクルが開始されるように設定されているが、1回目の洗浄サイクル終了直後に2回目の洗浄サイクルが開始されるように各洗浄サイクルが連続して行われるようにしても良い。
【0060】
さらに、例えば、排気口59に別途排気接続管を接続する場合等、回転円板14の正回転時に発生する洗浄液の飛沫が排気口59からオイルミスト除去装置10の外部に飛び散ったとしても問題ない場合には、図8に示すタイムチャートのように、第1スプレーノズル45の洗浄動作によって逆方向に回転している回転円板14が正方向に回転し始めた後も、第2スプレーノズル46による洗浄動作が継続して行われるように制御することもできる。この場合には、メッシュ36に付着した汚れをより効果的に除去することができる。
【0061】
さらにまた、上記した本発明の実施の形態では、洗浄液として水道水を使用しているが、洗浄液は水道水の他、洗剤入り湯又は水、スチーム、アルカリ性電解水等でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の技術は、工場内の加工機等から発生するオイルミストを含む含塵気流(油煙)からオイルミストを捕集して分離除去させるオイルミスト除去装置において利用可能なものである。
【符号の説明】
【0063】
10 オイルミスト除去装置
11 出力軸
12 電動モータ
14 回転円板
16 スプレー洗浄器
22 回転方向検知手段
29 制御回路ユニット(制御手段)
36 メッシュ
45 第1スプレーノズル
46 第2スプレーノズル
67 発生源
68 接続管
71 差圧計(差圧検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9