特許第6514882号(P6514882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ピーエス三菱の特許一覧

<>
  • 特許6514882-橋桁の架設工法 図000002
  • 特許6514882-橋桁の架設工法 図000003
  • 特許6514882-橋桁の架設工法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514882
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】橋桁の架設工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/06 20060101AFI20190425BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   E01D21/06
   E01D21/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-245108(P2014-245108)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-108771(P2016-108771A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木戸 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】殿内 秀希
(72)【発明者】
【氏名】西濱 智博
(72)【発明者】
【氏名】堀内 達斗
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−089281(JP,A)
【文献】 特開2003−138522(JP,A)
【文献】 特開昭53−000645(JP,A)
【文献】 特開平01−142109(JP,A)
【文献】 特開2005−097865(JP,A)
【文献】 米国特許第04228114(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造同士の間に本設桁を架設する橋桁の架設工法であって、
高架橋の既設部分上で手延べ桁を組み立てる手延べ桁組立工程と、
前記高架橋の既設部分上で複数のプレキャスト桁部材を連結して前記下部構造同士の支間と同等の長さの前記本設桁を形成するとともに当該本設桁を前記手延べ桁に連結する本設桁組立工程と、
前記高架橋の既設部分上の前記本設桁の後端に押出装置を設置する装置設置工程と、
前記高架橋の既設部分上にある前記手延べ桁および前記本設桁を、前記押出装置を利用して押し出して、前記本設桁を前記下部構造同士の間に架設する架設工程と、を備えていることを特徴とする、橋桁の架設工法。
【請求項2】
前記下部構造にはすべり支承が配設されているとともに、前記下部構造に隣接してジャッキが配設されており、
前記架設工程では、前記すべり支承に支持された前記手延べ桁および前記本設桁を摺動させた後、前記本設桁を前記ジャッキによりジャッキアップするとともに滑り支承を撤去し、その後前記ジャッキを利用して前記本設桁を下降させて当該本設桁を設置することを特徴とする、請求項1に記載の橋桁の架設工法。
【請求項3】
前記押出装置が、前記本設桁の後端に固定された引き出しジャッキと、一端が前記下部構造に固定され、他端側に前記引き出しジャッキが取り付けられたPC鋼材と、を備えており、
前記架設工程では、前記引き出しジャッキが前記PC鋼材を引き込むことで前記手延べ桁および前記本設桁を押し出すことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の橋桁の架設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁の架設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋桁の架設工法には、クレーン架設工法や架設桁工法等のプレキャスト部材架設工法や、固定式支保工架設工法や押出工法等の場所打ち架設工法等がある。
【0003】
クレーン架設工法は、クレーンを利用してプレキャスト桁を架設する工法であるが、大型クレーンを配置するためのスペースを確保することができない場合には採用することができない。
架設桁工法は、予め橋台や橋脚等に架設された架設桁を利用してプレキャスト桁を架設する工法であるが、架設桁の架設にクレーンを利用するため、クレーンを据え付けるスペースを確保する必要がある。
【0004】
また、固定式支保工架設工法は、支保工により支持した状態で橋桁を製作する工法であるため、供用中の道路や線路等の上方を横断する橋梁には採用することはできない。
【0005】
一方、押出工法は、橋桁を橋梁の軸方向に沿って押し出すことで架設する工法であって、橋梁の周囲にクレーンや支保工を設置するスペースを確保することができない場合であっても採用することができる。
押出工法では、まず、手延べ桁を組み立て、次に手延べ桁の後方の桁製作ヤードにおいて製作された桁ブロックを接続した後、橋脚または橋台に設置された押出装置を利用して手延べ桁および桁ブロックを逐次押し出して架設する。そして、桁ブロックの製作と押し出しを繰り返すことにより、所定延長の橋桁を架設する。
【0006】
ところが、桁ブロックを逐次押し出す工法では、橋梁の軸方向の延長線上に、桁製作ヤードを設置するためのスペースを確保する必要がある。また、高架橋の延長作業をする場合には、高架橋の既設部分が桁製作ヤードを支持し得る強度を有している必要がある。さらに、現場打ちコンクリートによる桁ブロックの製作に時間がかかる。
【0007】
そのため、特許文献1に示すように、プレキャスト部材を使用することで、桁製作ヤードの省略または縮小化を図るとともに工期短縮化を図る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4355240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来の押出工法は、桁ブロックの設置と、桁ブロックの押し出しとを繰り返し行うため、押出装置を盛り替える必要があり、この盛り替え作業に手間と時間がかかる。
【0010】
このような観点から、本発明は、現場周囲の環境に限定されることなく採用することが可能で、かつ、橋桁の架設工事を簡易に行うことを可能とした、橋桁の架設工法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の橋桁の架設工法は、下部構造同士の間に本設桁を架設する橋桁の架設工法であって、高架橋の既設部分上で手延べ桁を組み立てる手延べ桁組立工程と、前記高架橋の既設部分上で複数のプレキャスト桁部材を連結して前記下部構造同士の支間と同等の長さの前記本設桁を形成するとともに当該本設桁を前記手延べ桁に連結する本設桁組立工程と、前記高架橋の既設部分上の前記本設桁の後端に押出装置を設置する装置設置工程と、前記高架橋の既設部分上にある前記手延べ桁および前記本設桁を前記押出装置を利用して押し出して前記本設桁を前記下部構造同士の間に架設する架設工程とを備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明の架設工法は手延べ桁と本設桁を一気に架設する工法であり、短時間で橋脚間に橋桁を設置することができる。かかる橋桁の架設工法によれば、押出工法を採用しているため、橋梁の周囲に大型クレーンや支保工を設置するスペースを確保する必要がない。
また、比較的軽量なプレキャスト部材を組み立てることにより本設桁を形成するため、本設桁を形成するヤードは、道路や線路として使用することが可能な強度を有していればよい。
【0013】
プレキャスト部材を組み合わせて本設桁を形成するため、施工性に優れている。また、本設桁の後端に押出装置を設置することが可能なため、桁ブロックの押し出しと押出装置の盛り替えとを繰り返す従来の桁ブロックを逐次押し出す工法に比べて、盛替えが不要な点で施工性が向上している。
【0014】
前記橋桁の架設工法において、前記下部構造にすべり支承を配設するとともに、前記下部構造に隣接してジャッキを配設してもよい。この場合には、前記架設工程において、前記すべり支承に支持された前記手延べ桁および前記本設桁を摺動させた後、前記本設桁を前記ジャッキによりジャッキアップするとともに滑り支承を撤去し、その後前記ジャッキを利用して前記本設桁を下降させて当該本設桁を設置するとよい。
【0015】
さらに、前記押出装置が、前記本設桁の後端に固定された引き出しジャッキと、一端が前記下部構造に固定され、他端側に前記引き出しジャッキが取り付けられたPC鋼材(例えば、PC鋼棒、PC鋼より線等)とを備えている場合には、前記架設工程では、前記引き出しジャッキにより前記PC鋼材を引き込むことで前記手延べ桁および前記本設桁を押し出すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の橋桁の架設工法によれば、手延べ桁と本設桁を予め組み付けておき、その状態で橋脚間に橋桁を短時間で設置することができる。橋桁下部を道路や鉄道に使用している場合でも通行制限の時間を短くすることができ、公益性の高い架設方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る高架橋の概要を示す側面図、(b)は同平面図である。
図2】(a)は本実施形態の橋桁の架設工法の延べ桁組立工程を示す側面図、(b)は同本設桁組立工程を示す側面図、(c)は同装置設置工程を示す拡大側面図である。
図3】(a)〜(c)は本実施形態の橋桁の架設工法の架設工程の各作業状況を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態では、図1の(a)および(b)に示すように、供用中の道路(以下、「既設道路2」という。)を横断する高架橋1を構築する場合について説明する。
本実施形態の橋桁の架設工法は、既設道路2の前後に配設された一対の橋脚11,12に、橋桁13(本設桁3)を横架させるものである。
【0019】
本実施形態の橋桁の架設工法は、一方の橋脚11側から他方の橋脚12に向けて橋桁13(本設桁3)を押し出すことにより、両橋脚11,12間に橋桁13を架設するいわゆる押出工法であって、手延べ桁組立工程と、本設桁組立工程と、装置設置工程と、架設工程とを備えている。
【0020】
手延べ桁組立工程は、図2の(a)に示すように、手延べ桁4を組み立てる工程である。
手延べ桁4は、本設桁3よりも先行して押し出される仮設の桁であって、一方の橋脚11側から張り出した際に、自重により屈することがない強度を有している。
【0021】
本実施形態の手延べ桁4は、鋼製部材を組み合わせることにより形成されていて、所定の長さおよび所定の強度を有している。
なお、手延べ桁4の組み立ては、高架橋1の既設部分14上に設けられたすべり支承61により支持した状態で行う。
【0022】
本実施形態では、両橋脚11,12の間に仮設支持脚6が形成されている。
仮設支持脚6は、既設道路2の中央分離帯21に形成する。
なお、仮設支持脚6は、必要に応じて形成すればよく、必ずしも形成する必要はない。また、仮設支持脚6は、必ずしも中央分離帯に形成する必要はなく、その設置個所は限定されない。
【0023】
手延べ桁4は、一方の橋脚11と仮設支持脚6との間隔および仮設支持脚6と他方の橋脚12との間隔よりも大きな長さを有している。
なお、仮設支持脚6を設けない場合には、手延べ桁4は、橋脚11,12同士の間隔よりも大きな長さを有するように形成する。
【0024】
本設桁組立工程は、図2の(b)に示すように、複数のプレキャスト箱桁(プレキャスト桁部材)31を連結して本設桁3を形成する工程である。
本設桁3の組み立ては、高架橋1の既設部分14上であって、手延べ桁4の後方(他方の橋脚12の反対側)において行う。
【0025】
本設桁3は、両橋脚11,12の支間と同等の長さとなるように形成する。
また、本設桁3は、既設部分14の上面に設置されたすべり支承61により支持することで、既設部分14との間に隙間を有した状態で形成する。
【0026】
まず、最先端に設けられるプレキャスト箱桁31を手延べ桁4に連結する。続いて、この最先端のプレキャスト箱桁31の後端に、2番目のプレキャスト箱桁31を連結する。同様に、複数のプレキャスト箱桁31を連結することで、本設桁3の全長(全体)を形成する。
【0027】
なお、プレキャスト箱桁31同士の連結方法は限定されるものではないが、本実施形態では、ボルトを介して隣り合うプレキャスト箱桁31同士を連結する。
また、本設桁3には、複数のプレキャスト箱桁31に跨って配設された図示しないPC部材(例えば、PC鋼棒やPCより線など)を介してプレストレスを導入しておく。
【0028】
装置設置工程は、図2の(c)に示すように、本設桁3の後端に押出装置5を設置する工程である。
押出装置5は、引き出しジャッキ51、PC鋼材52、第一取付板53および第二取付板54を備えている。第一取付板53は本設桁3の後端に固定され、第二取付板54はアンカーボルト55を介して橋脚11に固定されている。
【0029】
引き出しジャッキ51は、PC鋼材52を引き込むことが可能なセンターホールジャッキであり、本設桁3の後端に固定されている。
引き出しジャッキ51は、第一取付板53を介して本設桁3に固定されている。
【0030】
第一取付板53の下端部は、本設桁3の下面よりも下方に突出している。引き出しジャッキ51は、取付板53の突出部分に設置されている。
【0031】
PC鋼材52は、一端が第二取付板54に固定されていて、他端側に引き出しジャッキ51が取り付けられている。
【0032】
第二取付板54の上端部は、橋脚11(既設部分14)の上面よりも上方に突出している。PC鋼材52は、第二取付板54の突出部分に固定治具56を介して固定されている。
すなわち、PC鋼材52は、本設桁3と既設部分14との隙間に配設されている。
【0033】
なお、PC鋼材52を構成する材料は限定されないが、例えばPC鋼棒やPCより線等を使用すればよい。また、PC鋼材52の橋脚11への固定方法は限定されるものではない。
【0034】
架設工程は、一対の橋脚11,12間に本設桁3を架設する工程である。
架設工程では、図3の(a)に示すように、押出装置5を利用して手延べ桁4および本設桁3を押し出す。そして、図3の(b)および(c)に示すように、本設桁3を両橋脚11,12の上方に配設させた後、本設桁3を両橋脚11,12に架設する。
【0035】
本実施形態では、橋脚11,12、既設部分14および仮設支持脚6にすべり支承61を設置しておく。引き出しジャッキ51を作動させてPC鋼材52を引き込むと、手延べ桁4および本設桁3は、すべり支承61に支持された状態ですべり支承61を摺動する。
手延べ桁4および本設桁3は、すべり支承61を摺動することで一方の橋桁11から他方の橋桁12に向けて押し出される。
【0036】
本実施形態では、橋脚11,12の間に、一対のジャッキ62,62が配設されている。一方のジャッキ62は一方の橋脚11に隣接しており、他方のジャッキ62は他方の橋脚12に隣接している。
なお、ジャッキ62の設置方法は限定されるものではなく、例えば、仮設の架台等を介して設置してもよい。
【0037】
図3の(b)に示すように、本設桁3が所定位置(両橋脚11,12間)に配設されたら、本設桁3の先端から手延べ桁4を取り外す。続いて、ジャッキ62,62を伸長させて、本設桁3をジャッキ62,62により支持する。
【0038】
本設桁3をすべり支承61からジャッキ62に受け替えたら、すべり支承61を撤去する。
そして、図3の(c)に示すように、ジャッキ62を収縮させることで本設桁3を下降させて、両橋脚11,12間に本設桁3を架設する。
【0039】
以上、本実施形態の橋桁の架設工法によれば、手延べ桁と本設桁を一気に橋脚間に引き出す押出工法を採用しているため、橋梁の周囲に大型クレーや支保工を設置するスペースを確保する必要がない。
そのため、供用中の既設道路2上を横架する高架橋(橋梁)1であっても、通行止め等の制限を短くして施工することができる。
【0040】
また、比較的軽量なプレキャスト部材(プレキャスト箱桁31)を組み立てることにより本設桁3を形成するため、本設桁3を形成するヤードは、道路や線路として使用することが可能な強度を有していればよい。すなわち、高架橋の既設部分を本設桁3の組立ヤードとして使用することができるため、経済的である。
【0041】
プレキャスト箱桁31を組み合わせて本設桁3を形成するため、短時間で施工することができ、施工性に優れているとともに、品質の優れた工場製品を使用することで高精度に施工を行うことができる。
また、本設桁3の後端に押出装置5を設置することが可能なため、桁ブロックの押し出しと押出装置5の盛り替えとを繰り返す従来の押出工法に比べて、盛替えを繰り返す必要がないため施工性が向上している。
【0042】
短時間で橋桁13(本設桁3)を架設することができるため、供用中の既設道路等の上方を横断する場合であっても、既設道路等の通行止めする時間を短時間に抑えることができる。
【0043】
引き出しジャッキ51が本設桁3の後端に設置されているため、本設桁3を押し出す際に引き出したPC鋼材52は、高架橋1の既設部分上で束ねることやまとめて収納することができ、作業性に優れている。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0045】
例えば、前記実施形態では、高架橋の施工に本発明の橋桁の架設方法を採用する場合について説明したが、本発明の橋桁の架設方法が適用可能な構造物は例えば河川や海に構築する橋梁でもよく、高架橋に限定されるものではない。
【0046】
また、本発明の橋桁の架設方法は、橋脚同士の間に橋桁(本設桁)を架設する場合に限定されるものではなく、例えば、橋梁端部の橋台と橋脚との間や橋脚がない短い橋梁の橋台同士の間に橋桁を架設する場合に採用してもよい。
【0047】
すべり支承の設置個所は、橋脚の上に限定されるものではなく、例えば、仮設架台上に設置してもよい。
また、ジャッキおよびすべり支承は必要に応じて設置すればよい。
押出装置の構成は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 高架橋
2 既設道路
3 本設桁
31 プレキャスト箱桁(プレキャスト桁部材)
4 手延べ桁
5 押出装置
51 引き出しジャッキ
52 PC鋼材
6 仮設支持脚
61 すべり支承
62 ジャッキ
図1
図2
図3