【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコン層には、第1の導電型の不純物元素がドープされた第1の導電型領域が形成されており、前記第1の導電型領域の上の一部に、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層が形成されており、
前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層の上面には、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層に第2の導電型の不純物元素がドープされた第2の導電型領域が形成されており、
前記第2の導電型領域の上に、一方の電極が形成されており、
前記ディテクタ部は、前記第1の導電型領域の一部、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層、前記第2の導電型領域により形成されており、
前記第1の導電型領域の上において、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層が形成されていない領域には、他方の電極が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光半導体素子。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
〔第1の実施の形態〕
最初に、代表的な導波路型のp−i−n型Geフォトディテクタの構造について、
図1に基づき説明する。尚、
図1(a)はフォトディテクタの上面図であり、
図1(b)は
図1(a)における一点鎖線1A−1Bにおいて切断した断面図であり、
図1(c)は
図1(a)における一点鎖線1C−1Dにおいて切断した断面図である。
【0011】
このような導波路型のp−i−n型Geフォトディテクタは、1.55μm帯の信号光に対し高い吸収係数を有することから、高感度なフォトディテクタとして期待されている。しかしながら、導波路型のフォトディテクタは、通常、信号光を十分吸収するためには、素子の長さがある程度必要となることから小型化が求められており、また、高速通信の要望等から高速応答性が求められている。
【0012】
図1に示される構造のフォトディテクタは、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて作製されている。SOI基板は、Si基板911の上に、BOX層912、p
−−Si層920が積層されている。フォトディテクタ部からp側電極942が形成される領域までのp
−−Si層920には、p型となる不純物元素をドープすることによりp−Si領域921が形成されている。p−Si領域921の上の中央部分には、i−Ge層930が形成されており、i−Ge層930の上部には、n型となる不純物元素をドープすることによりn−Ge領域931が形成されている。n−Ge領域931の上には、Alによりn側電極941が形成されており、i−Ge層930が形成されている領域の両側において露出しているp−Si領域921の上には、Alによりp側電極942が形成されている。また、n側電極941及びp側電極942が形成されている部分を除き、p−Si領域921及びi−Ge層930等の上は、SiO
2により形成されたクラッド層950により覆われている。フォトディテクタ部は、p−Si領域921、i−Ge層930、n−Ge領域931により形成されており、フォトディテクタ部には、p
−−Si層920を加工することにより形成された入力光導波路960が接続されている。入力光導波路960より入力された光は、フォトディテクタ部におけるi−Ge層930において吸収され検出される。
【0013】
フォトディテクタ部におけるi−Ge層930及びn側電極941は、長手方向の長さが約30μm、短手方向の長さが約10μmとなる略長方形となるように形成されている。入力光導波路960は、対向する短手方向の辺のうち、一方の辺の中央部分に接続されている。このような
図1に示す構造の導波路型のフォトディテクタにおいては、前述したように、小型化及び高速応答性が求められている。
【0014】
(光半導体素子)
次に、本実施の形態における光半導体素子である導波路型のフォトディテクタについて、
図2に基づき説明する。尚、
図2(a)は本実施の形態における光半導体素子の上面図であり、
図2(b)は
図2(a)における一点鎖線2A−2Bにおいて切断した断面図であり、
図2(c)は
図2(a)における一点鎖線2C−2Dにおいて切断した断面図である。
【0015】
本実施の形態における光半導体素子は、SOI基板を用いて作製されている。SOI基板は、Si(シリコン)基板11の上に、SiO
2(酸化シリコン)により形成されたBOX層12、p
−−Si層20が積層されている。フォトディテクタ部からp側電極42が形成される領域までのp
−−Si層20には、p型となる不純物元素をドープすることによりp−Si領域21が形成されている。p−Si領域21の上の中央部分には、i−Ge(ゲルマニウム)層30が形成されており、i−Ge層30の上部にはn型となる不純物元素をドープすることによりn−Ge領域31が形成されている。n−Ge領域31の上には、Alによりn側電極41が形成されており、i−Ge層30の両側において露出しているp−Si領域21の上には、Alによりp側電極42が形成されている。また、n側電極41及びp側電極42が形成されている領域を除き、p
−−Si層20及びi−Ge層30等は、SiO
2(酸化シリコン)により形成されたクラッド層50により覆われている。
【0016】
ディテクタ部におけるi−Ge層30は、幅W、長さLの略長方形の形状となるように形成されている。略長方形のi−Ge層30における幅Wの対向する2辺のうち、一方の辺に対応するディテクタ部の一方の側30aには入力光導波路60が接続されており、他方の辺に対応するディテクタ部の他方の側30bには、端面70が形成されている。また、ディテクタ部の他方の側30bの端面70には反射膜71が形成されている。
【0017】
入力光導波路60は、p
−−Si層20を加工することにより形成されており、ディテクタ部の一方の側30aの中央部分において、i−Ge層30の下のp
−−Si層20に接続されている。また、ディテクタ部の他方の側30bにおいては、n−Ge領域31、i−Ge層30、p−Si領域21、p
−−Si層20、BOX層12、Si基板11の一部をドライエッチング等により除去することにより端面70が形成されている。本実施の形態においては、ディテクタ部の他方の側30bに形成された端面70を覆うように、誘電体多層膜を成膜することにより反射膜71が形成されている。
【0018】
従って、入力光導波路60よりディテクタ部の一方の側30aに入射した光は、i−Ge層30において吸収されながら、i−Ge層30及びp
−−Si層20を伝播し、ディテクタ部の他方の側30bの端面70における反射膜71により反射される。反射膜71により反射された光は、再びi−Ge層30において吸収されながら、i−Ge層30及びp
−−Si層20を伝播した後、ディテクタ部の一方の側30aにおいて、入力光導波路60が接続されている領域とは、異なる領域において像を結像させる。具体的には、一方の側30aと他方の側30bとの間の長さLを所定の長さにすることにより、ディテクタ部の一方の側30aにおいて、入力光導波路60が接続されている領域とは異なる領域において、反射膜71により反射された光を結像させることができる。本実施の形態においては、ディテクタ部における一方の側30aと他方の側30bとの間の長さLは、反射膜71により反射された光が、一方の側30aの入力光導波路60が接続されている領域の両側の2カ所で像が結像するような長さで形成されている。
【0019】
このように、反射膜71により反射された光をディテクタ部の一方の側30aにおいて、入力光導波路60が接続されている領域とは異なる領域に像を結像させることにより、入力光導波路60に戻り光が入射することを防ぐことができる。入力光導波路60に戻り光が入射すると、入力光導波路60に接続されている光源がレーザ光源の場合には、光源におけるレーザ発振が不安定となり好ましくないからである。
【0020】
次に、ディテクタ部の一方の側30aにおいて、入力光導波路60が接続されている領域とは異なる領域において、反射膜71により反射された光により像を結像させる方法について説明する。
【0021】
図3は、上記の内容を説明するための1×2型MMI(Multi−Mode Interferometer:多モード干渉計)導波路の構造を示す。この1×2型MMI導波路110には、一方の側110aの中央部分に1つの入力光導波路120が接続されており、他方の側110bの両端近傍に2つの出力光導波路131、132が接続されている。1×2型MMI導波路110においては、入力光導波路120より入力した信号光は、複数の伝播モードに分離され、モード間干渉により特定点で結像しながら1×2型MMI導波路110内を伝播する。このため、他方の側110bにおいて2つの像の結像位置に出力光導波路131、132を形成することにより、1×2の分岐を得ることができる。即ち、2つの出力光導波路131、132は、一方の側110aに接続されている入力光導波路120より入射して、1×2型MMI導波路110内を伝播した光が、他方の側110bにおいて結像する2カ所の位置に各々形成されている。このように、1×2型MMI導波路110は、1×2型MMI導波路110の一方の側110aから他方の側110bまでを所望の長さLmとすることにより得られる。これにより、1×2型MMI導波路110の一方の側110aの入力光導波路120より入射した光は、他方の側110bにおける出力光導波路131、132において、2つに分岐して出力される。
【0022】
図4は、1×2型MMI導波路を中央部分で切断し、反射膜を形成した構造のものである。具体的には、MMI導波路部111の一方の側111aの中央部分に入力光導波路120が接続されており、他方の側111bには反射膜140が形成されている。MMI導波路部111における一方の側111aから他方の側111bまでの長さは、Lm/2となるように形成されている。これにより、MMI導波路部111の一方の側111aに接続されている入力光導波路120より入射した光は、MMI導波路部111を他方の側111bに向かって伝播し、他方の側111bに形成された反射膜140により反射される。反射膜140により反射された光は、一方の側111aに向かって伝播し、一方の側111aにおいて、入力光導波路120が接続されている領域の両側の2カ所において像が結像する。これは、MMI導波路部111における一方の側111aから他方の側111bまでの長さがLm/2となるように形成されており、入力光導波路120より入射した光が反射膜140により反射され再び一方の側111aに戻ってくるまでの光路長がLmとなるからである。このため、入力光導波路120よりMMI導波路部111に入射した光は、反射膜140により反射され、一方の側111aにおいて、入力光導波路120が接続されている領域とは異なる領域において像が結像される。
【0023】
本実施の形態における光半導体素子においては、入力光である信号光は、p
−−Si層20により形成された入力光導波路60から、ディテクタ部が形成されている領域のp
−−Si層20に入力し、複数の伝播モードに分離され、p
−−Si層20よりも屈折率の高いi−Ge層30へエヴァネッセント結合して、i−Ge層30内を減衰しながら伝播する。
【0024】
上述の通り、信号光は入力光導波路60が接続されているディテクタ部の一方の側30aとは反対側の他方の側30bに形成されている反射膜71により反射される。よって、MMI導波路においては、信号光は複数の伝播モードに分離され、互いに干渉しあい特定点で結像する。結像点は下記の数1に示す式で表される。尚、Nは結像する像の個数であり、L
πはMMI導波路のビート長である。
【0026】
また、ビート長L
πは下記の数2に示す式で表される。尚、W
eはMMI導波路の実効的な幅、n
rはMMI導波路の等価屈折率、λ
0は信号光の真空中での波長である。
【0028】
また、MMI導波路の実効的な幅W
eは下記の数3に示す式で表される。尚、W
MはMMI導波路の物理的な幅、n
cはクラッドの屈折率である。またσは信号光がTE偏波のときは1、TM偏波のときは0である。
【0030】
本実施の形態における光半導体素子は、上記のMMI導波路の考え方に基づく反射型MMIフォトディテクタである。本実施の形態における光半導体素子においては、光を検出するディテクタ部はSOI基板により形成されたp
−−Si層20及びi−Ge層30により形成されており、信号光の波長が1.55μmのときに、その等価屈折率が4.227となる。p
−−Si層20の下は、SiO
2によりBOX層12が形成されており、p
−−Si層20及びi−Ge層30等は、屈折率が1.444のSiO
2により形成されたクラッド層50により覆われている。従って、BOX層12及びクラッド層50がクラッドとなっている。ディテクタ部において光を吸収するi−Ge層30の幅Wを例えば6.0μmとすると、MMI導波路の実効幅W
eは6.01μmとなり、ビート長L
πは、数2に示される式より、131.55μmとなる。このため、結像される像が2つになる位置は、数1に示される式より、入力光導波路60から49.33μm離れた位置となる。
【0031】
よって、光が入射するディテクタ部の一方の側30aにおいて、中央部分に接続された入力光導波路60の左右に2つの像を結像させるためには、入力光導波路60から、49.33μmの半分となる24.66μm離れた位置に反射膜71を形成すればよい。即ち、ディテクタ部となるi−Ge層30の一方の側30aから他方の側30bまでの長さLが24.66μmとなるように形成すればよい。
【0032】
これにより、信号光は反射膜71において反射され、ディテクタ部内をトータル49.33μm伝播し、入力光導波路60が接続されているディテクタ部の一方の側30aにおいて、像を結像させることができる。この際、結像される像は、ディテクタ部の一方の側30aにおいて、中央から±MMI
e/6の位置に各々結像される。
【0033】
上記においては、結像される像が2つの場合について説明したが、例えば結像される像は4つとなるように形成してもよい。この場合、結像位置までの距離を短くすることができるため、光半導体素子を更に小型にできるという利点があるが、反射光による結像位置と入力光導波路60の距離が短くなるため、入力光導波路60に反射光が入射しやすくなる可能性がある。
【0034】
本実施の形態においては、ディテクタ部の一方の側30aより入力した信号光はディテクタ部の他方の側30bに形成された反射膜71により反射されるため、ディテクタ部において実効的な伝播長を稼ぐことができ、十分な光吸収を得ることができる。また、反射膜71により反射された光は、ディテクタ部の一方の側30aにおいて、入力光導波路60が形成されている領域とは、異なる領域において結像されるため、入力光導波路60に戻り光が入射することを防ぐことができる。
【0035】
また、本実施の形態における光半導体素子においては、n側電極41の大きさをi−Ge層30の大きさと略同じとした場合、幅Wが約6.0μm、長さLが約24.66μmとなり、n側電極41が形成される面積は、約148μm
2となる。これに対し、
図1に示される構造のn側電極941は、長手方向の長さが約30μm、短手方向の長さが約10μmとなるように形成されているため、n側電極941が形成される面積は、約300μm
2となる。よって、本実施の形態における光半導体素子は、
図1に示されるフォトディテクタと比較して、n側電極が形成される面積を1/2以下にすることができる。このように、n側電極が形成される面積を狭くすることにより、容量を小さくすることができるため、応答性を高めることができ、高速応答に対応させることができる。
【0036】
(光半導体素子の製造方法)
次に、本実施の形態における光半導体素子の製造方法について説明する。本実施の形態における光半導体素子は、
図5に示すSOI基板10を用いて作製する。このSOI基板10は、Si基板11の上に、厚さが3.0μmのBOX層12、厚さが0.3μmのp
−−Si層20が順に積層されている。尚、
図5(a)は、SOI基板10の上面図であり、
図5(b)は、
図5(a)における一点鎖線5A−5Bにおいて切断した断面図である。
【0037】
次に、
図6に示すように、SOI基板10におけるp
−−Si層20により入力光導波路60を形成するとともに、本実施の形態における光半導体素子が形成される領域のp
−−Si層20を残す加工を行う。具体的には、SOI基板10のp
−−Si層20の上に、フォトレジストを塗布し、EB露光装置により露光、現像を行うことにより、不図示のレジストパターンを形成する。不図示のレジストパターンは、入力光導波路60が形成される領域及び本実施の形態における光半導体素子のp
−−Si層20が形成される領域上に形成される。この後、ICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のp
−−Si層20を除去する。これにより、p
−−Si層20により入力光導波路60を形成するとともに、本実施の形態における光半導体素子のp
−−Si層20が形成される。この後、不図示のレジストパターンはO
2アッシング等により除去する。尚、
図6(a)は、この工程における上面図であり、
図6(b)は、
図6(a)における一点鎖線6A−6Bにおいて切断した断面図であり、
図6(c)は、
図6(a)における一点鎖線6C−6Dにおいて切断した断面図である。
【0038】
次に、
図7に示すように、本実施の形態における光半導体素子のp
−−Si層20の一部に、ホウ素(B:Boron)をイオン注入しp−Si領域21を形成する。p−Si領域21は、本実施の形態における光半導体素子においてi−Ge層30が形成される領域からp側電極42が形成される領域までに形成される。具体的には、p
−−Si層20の上に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、p−Si領域21が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、例えば、Bのイオン注入をドーズ量が6.0×10
14cm
−2、注入エネルギーが30keVの条件で行う。この後、O
2アッシング等により不図示のレジストパターンを除去した後、アニール装置により、約1000℃の温度で5秒間のアニール処理を行い、Bイオンを活性化させることにより、p−Si領域21を形成する。本実施の形態においては、p−Si領域21は、キャリア濃度が約1.0×10
19cm
−3となるように形成され、例えば、幅Waが約23.0μm、長さLaが約30.0μmとなるように形成されている。尚、
図7(a)は、この工程における上面図であり、
図7(b)は、
図7(a)における一点鎖線7A−7Bにおいて切断した断面図である。
【0039】
次に、
図8に示すように、i−Ge層30が形成される領域に開口部81aを有するSiO
2マスク81を形成する。具体的には、露出しているp−Si領域21、p
−−Si層20、BOX層12の上に、LP−CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)によりSiO
2膜を成膜する。この後、成膜されたSiO
2膜の上に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、i−Ge層30が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域のSiO
2膜をICPドライエッチングにより除去した後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。これより、i−Ge層30が形成される領域に開口部81aを有するSiO
2マスク81を形成する。このように形成されるSiO
2マスク81の開口部81aは、幅Wbが約6.0μm、長さLbが約30.0μmである。尚、
図8(a)は、この工程における上面図であり、
図8(b)は、
図8(a)における一点鎖線8A−8Bにおいて切断した断面図である。
【0040】
次に、
図9に示すように、SiO
2マスク81の開口部81aにおいて露出しているp−Si領域21の上に、LP−CVDによりi−Ge層30をエピタキシャル成長させる。具体的には、SiO
2マスク81が形成されたSOI基板をLP−CVD装置の成長チャンバ内に設置し、ランプヒータにより、H
2雰囲気下において900℃の温度まで加熱した後、この温度を5分間保持することにより、表面に吸着しているO
2を取り除く。この後、650℃の温度まで降温させた後、LP−CVD装置の成長チャンバ内にGeH
4を供給し、SiO
2マスク81の開口部81aにおいて露出しているp−Si領域21の上にi−Ge層30を成長させる。i−Ge層30の成長条件は、LP−CVD装置の成長チャンバ内の圧力を10Torr、GeH
4の供給量を20ccm、H
2キャリアガスの供給量を10ccm、成長時間を35分間として行う。この条件におけるi−Ge層30の成長速度は、約30nm/分であり、成膜されるi−Ge層30の膜厚は、約1000nmとなる。尚、
図9(a)は、この工程における上面図であり、
図9(b)は、
図9(a)における一点鎖線9A−9Bにおいて切断した断面図である。
【0041】
次に、
図10に示すように、i−Ge層30の上部において、リン(Phosphorus:P)をイオン注入することにより、n−Ge領域31を形成する。具体的には、i−Ge層30が形成されたSOI基板をLP−CVD装置のチャンバ内より取り出し、i−Ge層30が形成されている側に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行う。これにより、n−Ge領域31が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、例えば、Pのイオン注入をドーズ量が6.0×10
14cm
−2、注入エネルギーが30keVの条件で行う。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去した後、アニール装置に設置し、約700℃の温度で5秒間のアニール処理を行い、Pイオンを活性化させることにより、n−Ge領域31を形成する。本実施の形態においては、n−Ge領域31は、キャリア濃度が約1.0×10
19cm
−3となるように形成されており、例えば、幅Wcが約5.0μm、長さLcが約30.0μmとなるように形成されている。尚、
図10(a)は、この工程における上面図であり、
図10(b)は、
図10(a)における一点鎖線10A−10Bにおいて切断した断面図である。
【0042】
次に、
図11に示すように、ディテクタ部の反射面となる他方の側30bの端面70を形成するためのレジストパターン82を形成する。具体的には、n−Ge領域31が形成されている面に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、入力光導波路60及びディテクタ部が形成される領域の上に、不図示のレジストパターンを形成する。これにより、入力光導波路60及び入力光導波路60が接続されているディテクタ部の一方の側30aの端からの長さLdが約24.66μmまでの領域の上に、レジストパターン82が形成される。尚、
図11(a)は、この工程における上面図であり、
図11(b)は、
図11(a)における一点鎖線11A−11Bにおいて切断した断面図である。
【0043】
次に、
図12に示すように、レジストパターン82をマスクとして、n−Ge領域31、i−Ge層30、p−Si領域21、p
−−Si層20、BOX層12、Si基板11の一部をドライエッチングにより除去することにより端面70を形成する。このようにして、ディテクタ部の他方の側30bにおいて端面70が形成される。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図12(a)は、この工程における上面図であり、
図12(b)は、
図12(a)における一点鎖線12A−12Bにおいて切断した断面図である。
【0044】
次に、
図13に示すように、EB(electron beam)蒸着により誘電体多層膜を成膜することにより、反射膜71aを形成する。反射膜71aは、端面70において、膜厚が268.35nmのSiO
2膜と、膜厚が111.51nmのSi膜とを交互に4ペア成膜することにより形成する。誘電体多層膜は、光の進行方向に対して上記膜厚となるように成膜する。尚、
図13(a)は、この工程における上面図であり、
図13(b)は、
図13(a)における一点鎖線13A−13Bにおいて切断した断面図である。
【0045】
次に、
図14に示すように、端面70及び端面70の近傍以外の領域に形成されている反射膜71aを除去し、端面70及び端面70の近傍の領域にのみに反射膜71を形成する。具体的には、反射膜71aが形成されている面に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、端面70及び端面70の近傍における反射膜71が形成される領域の上に、不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域の反射膜71aをICPドライエッチングにより除去することにより、端面70及び端面70の近傍の領域にのみに反射膜71を形成する。このように形成される反射膜71は、信号光となる波長が1.55μmの光に対し高い反射率を有している。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図14(a)は、この工程における上面図であり、
図14(b)は、
図14(a)における一点鎖線14A−14Bにおいて切断した断面図である。
【0046】
次に、
図15に示すように、i−Ge層30の側面及び上面、p−Si領域21及びp
−−Si層20の上面にクラッド層50を形成し、更に、クラッド層50にn側電極41及びp側電極42を形成するためのコンタクトホール50a、50bを形成する。具体的には、クラッド層50は、プラズマCVDにより膜厚が約1000nmのSiO
2膜を成膜することにより形成する。この後、形成されたクラッド層50の上に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、コンタクトホール50a、50bが形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域におけるクラッド層50をICPドライエッチングにより除去することにより、コンタクトホール50a、50bを形成する。このように形成されるコンタクトホール50aは、幅Weが約5.0μm、長さLeが約24.0μmの略長方形の形状となるように形成されており、底面においてn−Ge領域31の表面が露出している。また、コンタクトホール50bは、コンタクトホール50aの両側に、幅Wfが約4.0μm、長さLeが約24.0μmの略長方形の形状となるように形成されており、底面において、p−Si領域21の表面が露出している。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図15(a)は、この工程における上面図であり、
図15(b)は、
図15(a)における一点鎖線15A−15Bにおいて切断した断面図である。
【0047】
次に、
図16に示すように、コンタクトホール50aにn側電極41、コンタクトホール50bにp側電極42を形成する。具体的には、コンタクトホール50a、50bが形成されているクラッド層50の上に、スパッタリングにより、膜厚が約500nmのAl膜を成膜する。この後、成膜されたAl膜の上に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、n側電極41及びp側電極42が形成される領域に不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域のAl膜をドライエッチングにより除去することにより、n側電極41及びp側電極42を形成する。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図16(a)は、この工程における上面図であり、
図16(b)は、
図16(a)における一点鎖線16A−16Bにおいて切断した断面図であり、
図16(c)は、
図16(a)における一点鎖線16C−16Dにおいて切断した断面図である。
【0048】
以上の工程により、本実施の形態における光半導体素子を作製することができる。
【0049】
尚、本実施の形態においては、基板としてSOI基板を用いた場合について説明したが、Si基板の上に窒化物膜が成膜された基板を用いてもよい。また、フォトディテクタ部がGeにより形成されている場合について説明したが、Ge以外にも、SiGe等により形成してもよい。また、反射膜71は、SiO
2とSiとにより形成される誘電体多層膜の場合について説明したが、他の誘電体材料を組み合わせた誘電体多層膜であってもよく、更には、光を反射する金属膜等であってもよい。また、基板、フォトディテクタ部、光導波路等は、InPやGaAs等の材料により形成してもよい。また、n側電極41及びp側電極42は、CuやAu等により形成してもよい。また、入力光導波路60の幅やフォトディテクタ部の幅等についても、所望の特性を得ることができれば、自由に設計することができ、また、入力光導波路60はテーパ構造となるように形成してもよい。
【0050】
また、反射膜71により反射された光による像の結像位置は、必ずしもディテクタ部の一方の側30aの端面ではなくともよく、入力光導波路60に反射膜71において反射された光が戻り光として入射しなければ、結像位置は多少ずれていてもよい。また、本実施の形態においては、ディテクタ部の一方の側30aにおいて反射光により結像される像が2つの場合について説明したが、結像される像は4つであってもよい。
【0051】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態における光半導体素子は、ディテクタ部の一方の側においても、入力光導波路の両側に反射膜を形成した構造の光半導体素子である。
【0052】
図17には、本実施の形態における光半導体素子の構造を示す。本実施の形態における光半導体素子は、ディテクタ部の一方の側30aにおいても、n−Ge領域31、i−Ge層30、p−Si領域21、p
−−Si層20、BOX層12、Si基板11の一部をドライエッチング等により除去することにより端面170が形成されている。端面170は、入力光導波路60が接続されている領域を除く領域に形成されており、形成された端面170を覆うように、誘電体多層膜を成膜することにより反射膜171が形成されている。尚、第1の実施の形態と同様に、ディテクタ部の他方の側30bには端面70が形成されており、端面70を覆うように反射膜71が形成されている。
【0053】
本実施の形態においては、入力光導波路60よりディテクタ部に一方の側30aに入射した光がディテクタ部の他方の側30bにおける反射膜71により反射され、減衰しきることなく一方の側30aに到達した場合であっても、反射膜171により反射される。このように反射膜171において反射した光はディテクタ部内に戻されるため、i−Ge層30における光の吸収を高めることができる。また、反射膜171が形成されていない場合には、反射膜71において反射された反射光はディテクタ部の一方の側30aにおいて散乱等されるため迷光が発生したり、ノイズ等の原因となる場合がある。本実施の形態における光半導体素子は、ディテクタ部の一方の側30aに反射膜171が形成されているため、迷光の発生を防ぐことができ、また、ノイズを抑制することができる。
【0054】
(光半導体素子の製造方法)
次に、本実施の形態における光半導体素子の製造方法について説明する。本実施の形態における光半導体素子の製造方法は、
図5から
図10までの工程は、第1の実施の形態と同じであり、
図10以降の工程について、
図18から
図23に基づき説明する。
【0055】
図10に示す工程の後、
図18に示すように、ディテクタ部の反射面となる他方の側30bの端面70及び一方の側30aの端面170を形成するためのレジストパターン182を形成する。具体的には、n−Ge領域31が形成されている面に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、入力光導波路60及びディテクタ部が形成される領域の上に、不図示のレジストパターンを形成する。これにより、入力光導波路60及び入力光導波路60が接続されている一方の側30aから他方の側30bまでの長さLgが約24.66μmの領域の上に、レジストパターン82が形成される。尚、
図18(a)は、この工程における上面図であり、
図18(b)は、
図18(a)における一点鎖線18A−18Bにおいて切断した断面図である。
【0056】
次に、
図19に示すように、レジストパターン182をマスクとして、n−Ge領域31、i−Ge層30、p−Si領域21、p
−−Si層20、BOX層12、Si基板11の一部をドライエッチングにより除去することにより端面70、170を形成する。これにより、ディテクタ部の他方の側30bに端面70が形成され、ディテクタ部の一方の側30aにおいて入力光導波路60が接続されている領域を除く領域に端面70が形成される。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図19(a)は、この工程における上面図であり、
図19(b)は、
図19(a)における一点鎖線19A−19Bにおいて切断した断面図である。
【0057】
次に、
図20に示すように、EB蒸着により誘電体多層膜を成膜することにより、反射膜171aを形成する。反射膜171aは、端面70及び170において、膜厚が268.35nmのSiO
2膜と、膜厚が111.51nmのSi膜とを交互に4ペア成膜することにより形成する。尚、
図20(a)は、この工程における上面図であり、
図20(b)は、
図20(a)における一点鎖線20A−20Bにおいて切断した断面図である。
【0058】
次に、
図21に示すように、端面70及び端面70の近傍と端面170及び端面170の近傍以外の領域に形成されている反射膜171aを除去する。これにより、端面70及び端面70の近傍の領域に反射膜71を形成し、端面170及び端面170の近傍の領域に反射膜171を形成する。具体的には、反射膜171aが形成されている面に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行う。これにより、端面70及び端面70の近傍における反射膜71が形成される領域と、端面170及び端面170の近傍における反射膜171が形成される領域の上に、不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域の反射膜171aをICPドライエッチングにより除去することにより、端面70及び端面70の近傍の領域に反射膜71を形成し、端面170及び端面170の近傍の領域に反射膜171を形成する。尚、反射膜171は、ディテクタ部の一方の側30aにおいて入力光導波路60が接続されている領域を除く領域に形成される。このように形成される反射膜71及び171は、信号光となる波長が1.55μmの光に対し高い反射率を有している。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図21(a)は、この工程における上面図であり、
図21(b)は、
図21(a)における一点鎖線21A−21Bにおいて切断した断面図である。
【0059】
次に、
図22に示すように、i−Ge層30の側面及び上面、p−Si領域21及びp
−−Si層20の上面にクラッド層50を形成し、更に、クラッド層50にn側電極41及びp側電極42を形成するためのコンタクトホール50a、50bを形成する。具体的には、クラッド層50は、プラズマCVDにより膜厚が約1000nmのSiO
2膜を成膜することにより形成する。この後、形成されたクラッド層50の上に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、コンタクトホール50a、50bが形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域におけるクラッド層50をICPドライエッチングにより除去することにより、コンタクトホール50a、50bを形成する。このように形成されるコンタクトホール50aは、幅Weが約5.0μm、長さLeが約24.0μmの略長方形の形状となるように形成されており、底面においてn−Ge領域31の表面が露出している。また、コンタクトホール50bは、コンタクトホール50aの両側に、幅Wfが約4.0μm、長さLeが約24.0μmの略長方形の形状となるように形成されており、底面において、p−Si領域21の表面が露出している。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図22(a)は、この工程における上面図であり、
図22(b)は、
図22(a)における一点鎖線22A−22Bにおいて切断した断面図である。
【0060】
次に、
図23に示すように、コンタクトホール50aにn側電極41、コンタクトホール50bにp側電極42を形成する。具体的には、コンタクトホール50a、50bが形成されているクラッド層50の上に、スパッタリングにより、膜厚が約500nmのAl膜を成膜する。この後、成膜されたAl膜の上に、フォトレジストを塗布し、i線露光装置により露光、現像を行うことにより、n側電極41及びp側電極42が形成される領域に不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域のAl膜をドライエッチングにより除去することにより、n側電極41及びp側電極42を形成する。この後、O
2アッシングにより不図示のレジストパターンを除去する。尚、
図23(a)は、この工程における上面図であり、
図23(b)は、
図23(a)における一点鎖線23A−23Bにおいて切断した断面図であり、
図23(c)は、
図23(a)における一点鎖線23C−23Dにおいて切断した断面図である。
【0061】
以上の工程により、本実施の形態における光半導体素子を作製することができる。
【0062】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0063】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0064】
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板の上に形成された入力光導波路と、
一方の側において前記入力光導波路が接続されているディテクタ部と、
前記ディテクタ部において、前記一方の側に対向する他方の側の端面に形成された反射膜と、
を有し、
前記ディテクタ部は、前記入力光導波路より入力された光を検出するものであって、
前記入力光導波路より前記ディテクタ部の一方の側に入力された光は、前記他方の側の端面に形成された前記反射膜により反射されることを特徴とする光半導体素子。
(付記2)
前記反射膜により反射された光は、前記一方の側において、前記入力光導波路と接続されている領域とは異なる領域に像を結像することを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
(付記3)
前記入力光導波路は、前記ディテクタ部の一方の側の中央部分に接続されており、
前記反射膜により反射された光は、前記ディテクタ部の一方の側において、前記入力光導波路が接続されている領域の両側に、各々像を結像することを特徴とする付記2に記載の光半導体素子。
(付記4)
前記ディテクタ部の一方の側において、前記入力光導波路が接続されている領域の両側には、一方の側の端面が形成されており、
前記ディテクタ部の一方の側の端面には、反射膜が形成されていることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の光半導体素子。
(付記5)
前記基板は、シリコンにより形成されており、
前記基板の上には、酸化シリコン膜が形成されており、
前記酸化シリコン膜の上に、前記入力光導波路及び前記ディテクタ部が形成されており、
前記入力光導波路は、シリコン層により形成されており、
前記ディテクタ部は、シリコン層と前記シリコン層の上にゲルマニウムを含む材料により形成された層が積層されたものにより形成されており、
前記入力光導波路は、前記ディテクタ部におけるシリコン層と接続されていることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の光半導体素子。
(付記6)
前記端面は、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層をドライエッチングにより除去することにより形成されていることを特徴とする付記5に記載の光半導体素子。
(付記7)
前記シリコン層には、第1の導電型の不純物元素がドープされた第1の導電型領域が形成されており、前記第1の導電型領域の上の一部に、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層が形成されており、
前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層の上面には、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層に第2の導電型の不純物元素がドープされた第2の導電型領域が形成されており、
前記第2の導電型領域の上に、一方の電極が形成されており、
前記ディテクタ部は、前記第1の導電型領域の一部、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層、前記第2の導電型領域により形成されており、
前記第1の導電型領域の上において、前記ゲルマニウムを含む材料により形成された層が形成されていない領域には、他方の電極が形成されていることを特徴とする付記5または6に記載の光半導体素子。
(付記8)
前記反射膜は、誘電体多層膜、金属膜、誘電体と半導体により形成される多層膜のいずれかにより形成されていることを特徴とする付記1から7のいずれかに記載の光半導体素子。