特許第6514910号(P6514910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

特許6514910絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器
<>
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000002
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000003
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000004
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000005
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000006
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000007
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000008
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000009
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000010
  • 特許6514910-絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514910
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】絶縁同期整流型DC/DCコンバータ、同期整流コントローラ、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   H02M3/28 C
   H02M3/28 B
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-34282(P2015-34282)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-158387(P2016-158387A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 弘基
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−312122(JP,A)
【文献】 特開2004−320929(JP,A)
【文献】 特開2010−166729(JP,A)
【文献】 特開2006−158163(JP,A)
【文献】 特開2001−025243(JP,A)
【文献】 特開2008−306804(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0110122(US,A1)
【文献】 "SMARTRECTIFIER CONTROL IC IR1167ASPBF DATA SHEET", [online],International Rectifier,2013年11月 6日,pp.1-25,[2018年11月15日検索],インターネット<https://www.infineon.com/dgdl/ir1167aspbf.pdf?field=5546d462533600a4015355c45d9c1655>,URL,https://www.infineon.com/dgdl/ir1167aspbf.pdf?field=5546d462533600a4015355c45d9c1655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁同期整流型のDC/DCコンバータの2次側に配置され、同期整流トランジスタを制御する同期整流コントローラであって、
前記DC/DCコンバータの2次側において生成される直流電圧を受ける電源端子と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記同期整流トランジスタの両端間電圧にもとづいてパルス信号を生成するパルス発生器と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記パルス信号に応じて前記同期整流トランジスタをスイッチングするドライバと、
前記同期整流トランジスタのドレイン電圧にもとづき、補助電源電圧を生成する補助電源回路と、
前記補助電源電圧を受けて動作し、前記同期整流トランジスタをオフに固定するオフ固定回路と、
を備え、
前記オフ固定回路は、前記直流電圧が所定電圧を超えると、前記同期整流トランジスタのオフでの固定を解除することを特徴とする同期整流コントローラ。
【請求項2】
前記補助電源回路は、ピークホールド回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の同期整流コントローラ。
【請求項3】
前記ピークホールド回路は、
キャパシタと、
前記同期整流トランジスタのドレインと前記キャパシタの間に設けられ、カソードがキャパシタ側となる向きで設けられたダイオードと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の同期整流コントローラ。
【請求項4】
前記補助電源回路は、フィルタ回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の同期整流コントローラ。
【請求項5】
前記オフ固定回路は、前記同期整流トランジスタのゲートソース間に設けられたオフ用トランジスタを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の同期整流コントローラ。
【請求項6】
前記オフ用トランジスタの制御端子には、前記補助電源電圧が入力されることを特徴とする請求項5に記載の同期整流コントローラ。
【請求項7】
前記補助電源回路は、前記オフ用トランジスタの制御端子と前記同期整流トランジスタのドレインの間に、カソードがオフ用トランジスタの制御端子側となる向きで設けられたダイオードを含むことを特徴とする請求項5に記載の同期整流コントローラ。
【請求項8】
絶縁同期整流型のDC/DCコンバータの2次側に配置され、同期整流トランジスタを制御する同期整流コントローラであって、
前記DC/DCコンバータの2次側において生成される直流電圧を受ける電源端子と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記同期整流トランジスタの両端間電圧にもとづいてパルス信号を生成するパルス発生器と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記パルス信号に応じて前記同期整流トランジスタをスイッチングするドライバと、
前記同期整流トランジスタのドレイン電圧にもとづき、補助電源電圧を生成する補助電源回路と、
前記補助電源電圧を受けて動作し、前記同期整流トランジスタをオフに固定するオフ固定回路と、
を備え、
前記オフ固定回路は、
前記同期整流トランジスタのゲートソース間に設けられたオフ用トランジスタと、
前記直流電圧が所定電圧を超えると、前記オフ用トランジスタをオフする解除回路と、 を含むことを特徴とする同期整流コントローラ。
【請求項9】
前記解除回路は、前記オフ用トランジスタのゲートソース間に設けられ、その制御端子に、前記直流電圧が所定電圧を超えるとアサートされる解除信号が入力される解除用トランジスタを含むことを特徴とする請求項に記載の同期整流コントローラ。
【請求項10】
前記直流電圧に応じた電圧が所定のしきい値電圧を超えると、前記解除信号をアサートする低電圧ロックアウト回路をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の同期整流コントローラ。
【請求項11】
前記オフ用トランジスタの制御端子には、前記補助電源電圧が入力されることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の同期整流コントローラ。
【請求項12】
前記補助電源回路は、前記オフ用トランジスタの制御端子と前記同期整流トランジスタのドレインの間に、カソードがオフ用トランジスタの制御端子側となる向きで設けられたダイオードを含むことを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の同期整流コントローラ。
【請求項13】
絶縁同期整流型のDC/DCコンバータの2次側に配置され、同期整流トランジスタを制御する同期整流コントローラであって、
前記DC/DCコンバータの2次側において生成される直流電圧を受ける電源端子と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記同期整流トランジスタの両端間電圧にもとづいてパルス信号を生成するパルス発生器と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記パルス信号に応じて前記同期整流トランジスタをスイッチングするドライバと、
前記同期整流トランジスタのドレイン電圧にもとづき、補助電源電圧を生成する補助電源回路と、
前記補助電源電圧を受けて動作し、前記同期整流トランジスタをオフに固定するオフ固定回路と、
を備え、
前記オフ固定回路は、前記ドライバの出力段のローサイドトランジスタを強制的にオンすることにより、前記同期整流トランジスタをオフに固定することを特徴とする同期整流コントローラ。
【請求項14】
絶縁同期整流型のDC/DCコンバータの2次側に配置され、同期整流トランジスタを制御する同期整流コントローラであって、
前記DC/DCコンバータの2次側において生成される直流電圧を受ける電源端子と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記同期整流トランジスタの両端間電圧にもとづいてパルス信号を生成するパルス発生器と、
前記直流電圧を電源として動作し、前記パルス信号に応じて前記同期整流トランジスタをスイッチングするドライバと、
前記同期整流トランジスタのゲートソース間に設けられたオフ用トランジスタと、
前記オフ用トランジスタの制御端子と前記同期整流トランジスタのドレイン端子の間に、カソードが前記オフ用トランジスタの制御端子側となる向きで設けられたダイオードと、
前記オフ用トランジスタの前記制御端子と接地ラインの間に設けられ、前記直流電圧が所定電圧を超えるとオン状態となる解除用トランジスタと、
を備えることを特徴とする同期整流コントローラ。
【請求項15】
前記オフ用トランジスタの前記制御端子と接続されたキャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の同期整流コントローラ。
【請求項16】
前記オフ用トランジスタの前記制御端子と前記ドレイン端子の間に設けられた抵抗さらに備えることを特徴とする請求項14または15に記載の同期整流コントローラ。
【請求項17】
前記直流電圧に応じた電圧を所定のしきい値電圧と比較し、前記直流電圧が前記しきい値を超えると、解除信号をアサートする低電圧ロックアウト回路をさらに備え、前記解除用トランジスタは、前記解除信号がアサートされるとターンオンすることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載の同期整流コントローラ。
【請求項18】
前記電源端子の電圧にもとづき内部電源電圧を生成する内部電源回路をさらに備え、前記パルス発生器および前記ドライバは、前記内部電源電圧を電源として動作することを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の同期整流コントローラ。
【請求項19】
ひとつの半導体基板に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の同期整流コントローラ。
【請求項20】
絶縁同期整流型のDC/DCコンバータであって、
1次巻線および2次巻線を有するトランスと、
前記トランスの1次巻線と接続されるスイッチングトランジスタと、
前記トランスの2次巻線と接続される同期整流トランジスタと、
フォトカプラと、
前記フォトカプラの出力側と接続され、前記フォトカプラからのフィードバック信号に応じて前記スイッチングトランジスタをスイッチングする1次側コントローラと、
前記同期整流トランジスタを制御する請求項1から19のいずれかに記載の同期整流コントローラと、
前記フォトカプラの入力側と接続され、前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じた誤差電流を発生するシャントレギュレータと、
を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項21】
商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、
前記ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、
前記直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する請求項20に記載のDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項22】
負荷と、
商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、
前記ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、
前記直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する請求項20に記載のDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項23】
商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、
前記ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、
前記直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する請求項20に記載のDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電源アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁同期整流型DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビや冷蔵庫をはじめとするさまざまな家電製品は、外部からの商用交流電力を受けて動作する。ラップトップ型コンピュータ、携帯電話端末やタブレット端末をはじめとする電子機器も、商用交流電力によって動作可能であり、あるいは商用交流電力によって、機器に内蔵の電池を充電可能となっている。こうした家電製品や電子機器(以下、電子機器と総称する)には、商用交流電圧をAC/DC(交流/直流)変換する電源装置(AC/DCコンバータ)が内蔵される。あるいはAC/DCコンバータが、電子機器の外部の電源アダプタ(ACアダプタ)に内蔵される場合もある。
【0003】
図1は、本発明者が検討したAC/DCコンバータ100rの基本構成を示すブロック図である。AC/DCコンバータ100rは主としてフィルタ102、整流回路104、平滑キャパシタ106およびDC/DCコンバータ200rを備える。
【0004】
商用交流電圧VACは、ヒューズおよび入力キャパシタ(不図示)を介してフィルタ102に入力される。フィルタ102は、商用交流電圧VACのノイズを除去する。整流回路104は、商用交流電圧VACを全波整流するダイオードブリッジ回路である。整流回路104の出力電圧は、平滑キャパシタ106によって平滑化され、直流電圧VINに変換される。
【0005】
絶縁型のDC/DCコンバータ200rは、入力端子P1に直流電圧VINを受け、それを降圧して、目標値に安定化された出力電圧VOUTを生成し、出力端子P2と接地端子P3の間に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0006】
DC/DCコンバータ200rは、1次側コントローラ202、フォトカプラ204、シャントレギュレータ206、出力回路210、同期整流コントローラ300r、およびその他の回路部品を備える。出力回路210は、トランスT1、ダイオードD1、出力キャパシタC1、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2を含む。出力回路210のトポロジーは、一般的な同期整流型のフライバックコンバータのそれであるため、説明を省略する。
【0007】
トランスT1の1次巻線W1と接続されるスイッチングトランジスタM1がスイッチングすることにより、入力電圧VINが降圧され、出力電圧VOUTが生成される。そして1次側コントローラ202は、スイッチングトランジスタM1のスイッチングのデューティ比を調節する。
【0008】
DC/DCコンバータ200rの出力電圧VOUTは、抵抗R1、R2により分圧される。シャントレギュレータ206のカソード(K)端子は、フォトカプラ204の入力側の発光素子(発光ダイオード)と接続され、アノード(A)端子は接地される。シャントレギュレータ206の基準(REF)端子には、分圧された電圧(電圧検出信号)VOUT_Sが入力される。シャントレギュレータ206は誤差増幅器を含み、電圧検出信号VOUT_Sと所定の基準電圧VREF(不図示)の誤差を増幅し、誤差に応じた誤差電流IERRを生成し、フォトカプラ204の入力側の発光素子(発光ダイオード)から引き込む(シンク)。
【0009】
フォトカプラ204の出力側の受光素子(フォトトランジスタ)には、2次側の誤差電流IERRに応じたフィードバック電流IFBが流れる。このフィードバック電流IFBが、抵抗およびキャパシタにより平滑化され、1次側コントローラ202のフィードバック(FB)端子に入力される。1次側コントローラ202は、FB端子の電圧(フィードバック電圧)VFBにもとづいてスイッチングトランジスタM1のデューティ比を調節する。
【0010】
同期整流コントローラ300rは、スイッチングトランジスタM1のスイッチングと同期して、同期整流トランジスタM2をスイッチングする。同期整流コントローラ300rは、内部電源回路302、パルス発生器304、ドライバ306を備える。
【0011】
同期整流コントローラ300rは、DC/DCコンバータ200rの出力電圧VOUTを電源として動作する。具体的には同期整流コントローラ300rには、出力電圧VOUTもしくはそれに比例した直流電圧を受ける電源(VCC)端子が設けられる。内部電源回路302は、VCC端子の電圧を降圧し、所定の電圧レベルに安定化された内部電源電圧VREGを生成する。内部電源電圧VREGは、パルス発生器304、ドライバ306に供給される。
【0012】
パルス発生器304は、スイッチングトランジスタM1のスイッチングと同期したパルス信号S1を生成する。たとえばパルス発生器304は、スイッチングトランジスタM1がターンオフすると、パルス信号S1を、同期整流トランジスタM2のオンを指示する第1状態(たとえばハイレベル)とする。またパルス発生器304は、同期整流トランジスタM2のオン期間に2次巻線W2に流れる2次電流Iが実質的にゼロになると、パルス信号S1を同期整流トランジスタM2のオフを指示する第2状態(ローレベル)とする。
【0013】
ドライバ306はパルス信号S1に応じて同期整流トランジスタM2をスイッチングする。以上がAC/DCコンバータ100rの全体構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−074959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、DC/DCコンバータ200rの起動時の動作について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0016】
図2は、DC/DCコンバータ200rの起動時の動作波形図である。VG_PはスイッチングトランジスタM1のゲート電圧、VD_PはスイッチングトランジスタM1のドレイン電圧、VD_Sは同期整流トランジスタM2のドレイン電圧、VGSは同期整流トランジスタM2のゲート電圧、VOUTは出力電圧を示す。
【0017】
時刻t0にスタート信号STARTがアサート(ハイレベル)され、DC/DCコンバータ200rの起動が指示されると、1次側コントローラ202は、スイッチングトランジスタM1のゲート電圧VG_Pをスイッチングし始める。スイッチングトランジスタM1のスイッチングに応じて、そのドレイン電圧VD_Pもスイッチングする。
【0018】
1次巻線W1の電圧VW1は、VIN−VD_Pである。1次巻線W1、2次巻線W2の巻線をN,Nとするとき、2次巻線W2の電圧VW2は、−VW1×N/Nである。したがって一次側ドレイン電圧VD_Pのスイッチングに応じて、2次側のドレイン電圧VD_Sもスイッチングする。
【0019】
ここで、起動直後において出力電圧VOUTは実質的にゼロであり、したがって同期整流コントローラ300rのVCC端子の電圧もゼロとなり、内部電源回路302が生成する内部電源電圧VREGもゼロである。ここで内部電源電圧VREGが、ゼロもしくは規定電圧以下であると、ドライバ306の駆動能力が不足し、OUT端子の電位を0V(接地電位)に固定することができなくなる。起動直後においてOUT端子の電位は不定であるとも言える。
【0020】
同期整流トランジスタM2のゲートドレイン間には、無視できない寄生容量(ドレイン容量)CDSが存在する。スイッチングトランジスタM1がターンオンし、2次側のドレイン電圧VD_Sが立ち上がると、寄生容量CDSにより、本来ローレベル(接地電圧)に固定されるべき2次側のゲート電圧VGSが跳ね上がる。その結果、ゲート電圧VGSが同期整流トランジスタM2のしきい値電圧VGS(TH)を超えると、意図せずに同期整流トランジスタM2がターンオンしてしまう。
【0021】
2次側のドレイン電圧VD_Sがハイレベルの区間において、同期整流トランジスタM2がオンすると、同期整流トランジスタM2には、ドレイン電流IM2=VD_S/RONが流れる。RON2は、同期整流トランジスタM2のオン抵抗である。VD_S=50V、RON2=10mΩとすれば、ドレイン電流IM2は、同期整流トランジスタM2やトランスT1の信頼性を低下させる程度の大電流となる。
【0022】
なお以上の課題を当業者の共通の技術認識として捉えてはならず、本発明者らが独自に認識したものである。
【0023】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、DC/DCコンバータの起動時において、スイッチングトランジスタのオン期間に、同期整流トランジスタが誤ってオンするのを防止可能な同期整流コントローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明のある態様は、絶縁同期整流型のDC/DCコンバータの2次側に配置され、同期整流トランジスタを制御する同期整流コントローラに関する。同期整流コントローラは、DC/DCコンバータの2次側において生成される直流電圧を受ける電源端子と、直流電圧を電源として動作し、同期整流トランジスタの両端間電圧にもとづいてパルス信号を生成するパルス発生器と、直流電圧を電源として動作し、パルス信号に応じて同期整流トランジスタをスイッチングするドライバと、同期整流トランジスタのドレイン電圧にもとづき、補助電源電圧を生成する補助電源回路と、補助電源電圧を受けて動作し、同期整流トランジスタをオフに固定するオフ固定回路と、を備える。
【0025】
この態様では、起動直後において、DC/DCコンバータの2次側に十分に高い直流電圧が生じていなくても、同期整流トランジスタのドレイン電圧にもとづいて補助電源電圧を生成し、補助電源電圧を受けて動作するオフ固定回路により同期整流トランジスタのゲート電圧をローレベルに固定することとした。これにより、同期整流トランジスタのドレイン電圧の変動にともないゲート電圧が跳ね上がるのを防止し、同期整流トランジスタが誤ってオンするのを防止できる。
【0026】
補助電源回路は、ピークホールド回路を含んでもよい。ピークホールド回路は、キャパシタと、同期整流トランジスタのドレインとキャパシタの間に設けられ、カソードがキャパシタ側となる向きで設けられたダイオードと、を含んでもよい。
補助電源回路は、フィルタ回路を含んでもよい。フィルタ回路は、キャパシタと抵抗を含んでもよい。
【0027】
オフ固定回路は、同期整流トランジスタのゲートソース間に設けられたオフ用トランジスタを含んでもよい。
【0028】
オフ用トランジスタの制御端子には、補助電源電圧が入力されてもよい。
【0029】
補助電源回路は、オフ用トランジスタの制御端子と同期整流トランジスタのドレインの間に、カソードがオフ用トランジスタの制御端子側となる向きで設けられたダイオードを含んでもよい。
この構成によれば、ダイオードおよびオフ用トランジスタのゲート容量がピークホールド回路を構成し、したがって同期整流トランジスタのドレイン電圧が跳ね上がると、オフ用トランジスタのゲート電圧が高い電圧レベルに維持され、オフ用トランジスタをオンに固定できる。
【0030】
オフ固定回路は、直流電圧が所定電圧を超えると、同期整流トランジスタのオフでの固定を解除してもよい。
同期整流コントローラの電源端子に十分な直流電圧が供給されると、パルス発生器およびドライバが動作可能となるため、同期整流トランジスタのオフ固定を解除してパルス信号に応じて同期整流トランジスタをスイッチングすることで、DC/DCコンバータを同期整流モードで動作させることができる。
【0031】
オフ固定回路は、直流電圧が所定電圧を超えると、オフ用トランジスタをオフする解除回路をさらに含んでもよい。
オフ用トランジスタをオフすることで、同期整流トランジスタのゲート電圧の固定を解除できる。
【0032】
解除回路は、オフ用トランジスタのゲートソース間に設けられ、その制御端子に、直流電圧が所定電圧を超えるとアサートされる解除信号が入力される解除用トランジスタを含んでもよい。
【0033】
ある態様の同期整流コントローラは、直流電圧に応じた電圧が所定のしきい値電圧を超えると、解除信号をアサートする低電圧ロックアウト回路をさらに備えてもよい。
【0034】
オフ固定回路は、ドライバの出力段のローサイドトランジスタを強制的にオンすることにより、同期整流トランジスタをオフに固定してもよい。
【0035】
本発明の別の態様もまた、同期整流コントローラである。同期整流コントローラは、DC/DCコンバータの2次側において生成される直流電圧を受ける電源端子と、直流電圧を電源として動作し、同期整流トランジスタの両端間電圧にもとづいてパルス信号を生成するパルス発生器と、直流電圧を電源として動作し、パルス信号に応じて同期整流トランジスタをスイッチングするドライバと、同期整流トランジスタのゲートソース間に設けられたオフ用トランジスタと、オフ用トランジスタの制御端子と同期整流トランジスタのドレイン端子の間に、カソードがオフ用トランジスタの制御端子側となる向きで設けられたダイオードと、を備える。
【0036】
オフ用トランジスタのゲート容量とダイオードとは、ピークホールド回路を形成する。したがってスイッチングトランジスタのオフに応答して同期整流トランジスタのドレイン電圧が跳ね上がると、オフ用トランジスタのゲート電圧がハイレベルとなり、オフ用トランジスタがオンし、同期整流用トランジスタのゲートソース間電圧が実質的にゼロとなって同期整流トランジスタをオフに固定することができる。
【0037】
同期整流コントローラは、オフ用トランジスタの制御端子と接続されたキャパシタをさらに備えてもよい。
【0038】
同期整流コントローラは、オフ用トランジスタの制御端子とドレイン端子の間に設けられた抵抗さらに備えてもよい。
【0039】
同期整流コントローラは、オフ用トランジスタの制御端子と接地ラインの間に設けられ、直流電圧が所定電圧を超えるとオン状態となる解除用トランジスタをさらに備えてもよい。
【0040】
同期整流コントローラは、直流電圧に応じた電圧を所定のしきい値電圧と比較し、直流電圧がしきい値を超えると、解除信号をアサートする低電圧ロックアウト回路をさらに備え、解除用トランジスタは、解除信号がアサートされるとターンオンしてもよい。
【0041】
同期整流コントローラは、電源端子の電圧にもとづき内部電源電圧を生成する内部電源回路をさらに備え、パルス発生器およびドライバは、内部電源電圧を電源として動作してもよい。
【0042】
同期整流コントローラは、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0043】
本発明の別の態様は、絶縁同期整流型のDC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは、1次巻線および2次巻線を有するトランスと、トランスの1次巻線と接続されるスイッチングトランジスタと、トランスの2次巻線と接続される同期整流トランジスタと、フォトカプラと、フォトカプラの出力側と接続され、フォトカプラからのフィードバック信号に応じてスイッチングトランジスタをスイッチングする1次側コントローラと、同期整流トランジスタを制御する上述のいずれかの同期整流コントローラと、フォトカプラの入力側と接続され、DC/DCコンバータの出力電圧に応じた誤差電流を発生するシャントレギュレータと、を備える。
【0044】
DC/DCコンバータは、フライバック型であってもよいし、フォワード型であってもよい。
【0045】
本発明の別の態様は、電源装置(AC/DCコンバータ)に関する。電源装置は、商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する上述のDC/DCコンバータと、を備える。
【0046】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、負荷と、商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する上述のDC/DCコンバータと、を備える。
【0047】
本発明の別の態様は、ACアダプタに関する。ACアダプタは、商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、直流入力電圧を降圧し、直流出力電圧を生成する上述のDC/DCコンバータと、を備える。
【0048】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0049】
本発明のある態様によれば、DC/DCコンバータの起動時において、スイッチングトランジスタのオン期間に、同期整流トランジスタが誤ってオンするのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明者が検討したAC/DCコンバータの基本構成を示すブロック図である。
図2】DC/DCコンバータの起動時の動作波形図である。
図3】実施の形態に係る同期整流コントローラを備えるDC/DCコンバータの回路図である。
図4図3のDC/DCコンバータの動作波形図である。
図5】同期整流コントローラの構成例を示す回路図である。
図6図5の同期整流コントローラの動作波形図である。
図7】AC/DCコンバータを備えるACアダプタを示す図である。
図8図8(a)、(b)は、AC/DCコンバータを備える電子機器を示す図である。
図9】第1変形例に係るDC/DCコンバータの回路図である。
図10図10(a)、(b)は、第3変形例に係る同期整流コントローラの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0052】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0053】
図3は、実施の形態に係る同期整流コントローラ300を備えるDC/DCコンバータ200の回路図である。このDC/DCコンバータ200は、図1のDC/DCコンバータ200rと同様に、AC/DCコンバータに使用可能である。またDC/DCコンバータ200の基本構成は図1のDC/DCコンバータ200rの構成と同様である。
【0054】
同期整流コントローラ300は、電源(VCC)端子、スイッチング出力(OUT)端子、ドレイン電圧(VD)端子、接地(GND)端子を有し、ひとつの半導体基板に集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。同期整流コントローラ300は、同期整流トランジスタM2と同一のパッケージに収容され、一体不可分な単一のモジュールを構成してもよい。
【0055】
同期整流コントローラ300のVCC端子には、DC/DCコンバータ200の2次側において生成される直流電圧(ここでは出力電圧VOUT)が供給される。同期整流コントローラ300は、VCC端子の電圧を主たる電源として動作する。VD端子は、同期整流トランジスタM2のドレインと接続される。OUT端子は、同期整流トランジスタM2のゲートと接続される。GND端子は、同期整流コントローラ300が基準とすべき電位と接続され、図3のトポロジーでは、2次側の基準電位、すなわち接地電圧VGNDが供給される。
【0056】
同期整流コントローラ300は、内部電源回路302、パルス発生器304、ドライバ306、補助電源回路310、オフ固定回路320を備える。
【0057】
内部電源回路302は、VCC端子の直流電圧VOUTを降圧し、所定の電圧レベルに安定化された内部電源電圧VREGを生成する。パルス発生器304、ドライバ306それぞれの電源端子には内部電源電圧VREGが供給され、したがってパルス発生器304、ドライバ306は、VCC端子の直流電圧VOUTを電源として動作すると言える。
【0058】
パルス発生器304は、同期整流トランジスタM2のドレイン電圧VD_Sにもとづいてパルス信号S1を生成する。同期整流コントローラ300は、そのGND端子が同期整流トランジスタM2のソースと共通の接地ラインに接続され、ソース電圧VGNDを基準として動作することから、VD端子のドレイン電圧VD_Sは、同期整流トランジスタM2の両端間電圧(ドレインソース間電圧VDS)に他ならない。
【0059】
パルス発生器304の構成、動作は特に限定されず、公知の、あるいは将来利用可能な技術を用いればよい。たとえばパルス発生器304は、DC/DCコンバータ200の1次側のスイッチングトランジスタM1のターンオフを検出するとパルス信号S1を同期整流トランジスタM2のオンを指示するオンレベル(たとえばハイレベル)とし、トランスT1の2次巻線W2の電流Iが実質的にゼロになったことを検出すると、パルス信号S1を同期整流トランジスタM2のオフを指示するオフレベル(たとえばローレベル)とする。ドライバ306は、パルス信号S1に応じて同期整流トランジスタM2をスイッチングする。
【0060】
スイッチングトランジスタM1のオン期間において、2次巻線W2の両端間電圧は、−VIN×N/Nであるから、同期整流トランジスタM2のドレイン電圧VD_S(つまりドレインソース間電圧VDS)は、VD_S=VOUT+VIN×N/Nとなる。N,Nは、1次巻線W1、2次巻線W2の巻数である。
【0061】
スイッチングトランジスタM1がオフすると、同期整流トランジスタM2のソースからドレインに向かって2次電流Iが流れるため、ドレインソース間電圧は負電圧となる。連続モードでは、スイッチングトランジスタM1がターンオンすることにより、2次電流Iがゼロとなり、ドレイン電圧が再びV=VOUT+VIN×N/Nに跳ね上がる。不連続モードでは、同期整流トランジスタM2のオン状態においてトランスT1に蓄えられたエネルギーの減少にともない2次電流Iが減少していくと、ドレインソース間電圧VDSの絶対値は小さくなり、やがて2次電流Iが実質的にゼロになると、ドレインソース間電圧VDSも実質的にゼロとなり、ドレイン電圧VD_Sはリンギングする。
【0062】
これらの性質を利用してパルス発生器304は、同期整流トランジスタM2のドレイン電圧(ドレインソース間電圧)にもとづいて、パルス信号S1を生成してもよい。
【0063】
ドライバ306は、パルス信号S1に応じて同期整流トランジスタM2をスイッチングする。
【0064】
補助電源回路310は、VD端子に入力される同期整流トランジスタM2のドレイン電圧Vにもとづき、補助電源電圧VAUXを生成する。後述のように補助電源回路310は、ピークホールド回路、あるいはフィルタ回路、それらの組み合わせなどによって構成できる。
【0065】
オフ固定回路320は、補助電源電圧VAUXを受けて動作し、同期整流トランジスタM2のOUT端子の電位をローレベルに固定し、つまり同期整流トランジスタM2のゲートソース間電圧VGSを実質的にゼロとして、同期整流トランジスタM2をオフに固定する。
【0066】
またオフ固定回路320は、直流電圧VOUTが所定電圧を超えると、言い換えれば内部電源電圧VREGが、パルス発生器304、ドライバ306の最低動作電圧を超えると、同期整流トランジスタM2のオフでの固定を解除する。
【0067】
以上が同期整流コントローラ300の基本構成である。続いてその動作を説明する。
図4は、図3のDC/DCコンバータ200の動作波形図である。時刻t0にスタート信号STARTがアサート(ハイレベル)され、DC/DCコンバータ200の起動が指示されると、1次側コントローラ202は、スイッチングトランジスタM1のゲート電圧VG_Pをスイッチングし始める。スイッチングトランジスタM1のスイッチングに応じて、1次側のドレイン電圧VD_Pおよび2次側のドレイン電圧VD_Sがスイッチングする。
【0068】
2次側のドレイン電圧VD_Sが跳ね上がると、補助電源回路310が生成する補助電源電圧VAUXが上昇する。これによりオフ固定回路320が動作可能となり、同期整流トランジスタM2をオフ状態に固定する。その結果、図2に示すような同期整流トランジスタM2のターンオンが防止される。
【0069】
時刻t2に、出力電圧VOUTがあるしきい値電圧VUVLOを超えると、オフ固定回路320によるオフ固定が解除される。そしてパルス発生器304、ドライバ306が動作可能となり、パルス信号S1に応じて同期整流トランジスタM2がスイッチングされ、同期整流モードに移行する。
【0070】
つまり、起動直後において、DC/DCコンバータ200の2次側に十分に高い直流電圧VOUTが生じていなくても、同期整流トランジスタM2のドレイン電圧VD_Sにもとづいて補助電源電圧VAUXが生成される。そして補助電源電圧VAUXを受けて動作するオフ固定回路320によって同期整流トランジスタM2のゲート電圧VG_Sがローレベルに固定される。
【0071】
以上がDC/DCコンバータ200の動作である。このDC/DCコンバータ200によれば、同期整流トランジスタM2のドレイン電圧VD_Sの変動にともないゲート電圧VG_Sが跳ね上がるのを防止し、同期整流トランジスタM2が誤ってオンするのを防止できる。
【0072】
続いて同期整流コントローラ300の具体的な構成例を説明する。なお本発明は、図3の回路図、ブロック図ならびに上述の説明から把握されるさまざまな形態に及ぶものであり、以下で説明する具体的な構成には限定されない。
【0073】
図5は、同期整流コントローラ300の構成例を示す回路図である。オフ固定回路320は、オフ用トランジスタM3および解除回路322を含む。オフ用トランジスタM3は、同期整流トランジスタM2のゲートソース間に設けられる。オフ用トランジスタM3がオンすると、同期整流トランジスタM2のゲートソース間電圧VGSがゼロとなり、オフに固定される。
【0074】
オフ用トランジスタM3の制御端子(ゲート)には、補助電源回路310からの補助電源電圧VAUXが入力される。補助電源電圧VAUXが、オフ用トランジスタM3のゲートソース間しきい値電圧VGS(TH)を超えると、オフ用トランジスタM3がターンオンし、同期整流トランジスタM2がオフに固定される。
【0075】
解除回路322は、直流電圧VOUTが所定電圧を超えると、言い換えればパルス発生器304、ドライバ306が動作可能となると、オフ用トランジスタM3をオフし、オフ固定回路320による同期整流トランジスタM2のオフ固定を解除する。
【0076】
たとえば解除回路322は、オフ用トランジスタM3のゲートソース間に設けられた解除用トランジスタM4を含む。解除用トランジスタM4の制御端子(ゲート)には、直流電圧VOUTが所定電圧を超えるとアサートされる解除信号UVLOが入力される。たとえば解除信号UVLOは、UVLO(低電圧ロックアウト回路:Under Voltage Lock Out)回路330により生成される。解除信号UVLOは、直流電圧VOUTに応じた電圧が所定のしきい値電圧VUVLOを超えるとアサート(たとえばハイレベル)される。解除信号UVLOがアサートされると、解除用トランジスタM4がオン、オフ用トランジスタM3がオフとなり、同期整流トランジスタM2のオフ固定が解除される。
【0077】
補助電源回路310は、キャパシタC11、ダイオードD11、抵抗R11を含む。
キャパシタC11は、オフ用トランジスタM3の制御端子(ゲート)に接続される。ダイオードD11は、オフ用トランジスタM3の制御端子(ゲート)とVD端子の間に、カソードがゲート側となる向きで設けられる。
【0078】
キャパシタC11およびダイオードD11は、ピークホールド回路と把握することができる。VD端子のドレイン電圧VD_Sが跳ね上がると、ダイオードD11が順方向にオンし、キャパシタC11は、(VD_S−V)に充電される。Vは、ダイオードD11の順方向電圧である。キャパシタC11の電圧が、補助電源電圧VAUXとしてオフ固定回路320に供給される。
【0079】
なお、オフ用トランジスタM3のゲート容量がある程度大きい場合、キャパシタC11は省略して、ゲート容量とダイオードD11とでピークホールド回路を構成することができる。
【0080】
抵抗R11は、ダイオードD11と直列に設けられる。抵抗R11は過電流保護、過電圧保護のために設けられている。あるいは、抵抗R11とキャパシタC11(もしくはオフ用トランジスタM3のゲート容量)は、ローパスフィルタを構成すると把握することもできる。
【0081】
以上が同期整流コントローラ300の構成例である。続いてその動作を説明する。
図6は、図5の同期整流コントローラ300の動作波形図である。
【0082】
時刻t0にスタート信号STARTがアサート(ハイレベル)されると、スイッチングトランジスタM1のスイッチングが開始する。スイッチングトランジスタM1のターンオンに応答して2次側のドレイン電圧VD_Sが跳ね上がると、補助電源電圧VAUXは、VD_S−V付近まで上昇し、ピークホールドされる。
【0083】
補助電源電圧VAUXがオフ用トランジスタM3のしきい値電圧VGS(TH)を超えると、オフ用トランジスタM3がターンオンし、同期整流トランジスタM2のゲート電圧VG_Sが0Vに固定され、同期整流トランジスタM2がオフに固定される。
【0084】
このように図5の同期整流コントローラ300によれば、DC/DCコンバータ200の起動直後において同期整流トランジスタM2を好適にオフに固定できる。
【0085】
また時刻t1に出力電圧VOUTがしきい値電圧VUVLOを超えると、解除用トランジスタM4がターンオン、オフ用トランジスタM3がターンオフし、同期整流トランジスタM2のオフ固定が解除される。そしてオフ用トランジスタM3がパルス信号S1に応じてスイッチング可能となり、DC/DCコンバータ200を同期整流モードに移行させることができる。
【0086】
(用途)
続いて、実施の形態で説明したDC/DCコンバータ200の用途を説明する。
図7は、AC/DCコンバータ100を備えるACアダプタ800を示す図である。ACアダプタ800は、プラグ802、筐体804、コネクタ806を備える。プラグ802は、図示しないコンセントから商用交流電圧VACを受ける。AC/DCコンバータ100は、筐体804内に実装される。AC/DCコンバータ100により生成された直流出力電圧VOUTは、コネクタ806から電子機器810に供給される。電子機器810は、ノートPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、携帯オーディオプレイヤなどが例示される。
【0087】
図8(a)、(b)は、AC/DCコンバータ100を備える電子機器900を示す図である。図8(a)、(b)の電子機器900はディスプレイ装置であるが、電子機器900の種類は特に限定されず、オーディオ機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、電源装置を内蔵する機器であればよい。
プラグ902は、図示しないコンセントから商用交流電圧VACを受ける。AC/DCコンバータ100は、筐体804内に実装される。AC/DCコンバータ100により生成された直流出力電圧VOUTは、同じ筐体904内に搭載される、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)、電源回路、照明機器、アナログ回路、デジタル回路などの負荷に供給される。
【0088】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0089】
(第1変形例)
実施の形態では、同期整流コントローラ300を、同期整流トランジスタM2が2次巻線W2より低電位側に配置されるプラットフォームで使用したが本発明はそれには限定されない。同期整流コントローラ300は、同期整流トランジスタM2が2次巻線W2より高電位側、すなわち出力端子P2側に配置されるプラットフォームにも使用可能である。
【0090】
図9は、第1変形例に係るDC/DCコンバータ200cの回路図である。トランスT1の補助巻線W4、ダイオードD4およびキャパシタC4は、補助コンバータを形成しており、出力電圧VOUTよりも高い直流電圧VCC1を発生する。この直流電圧VCC1はVCC端子に供給される。同期整流コントローラ300のGND端子は、同期整流トランジスタM2のソースと接続され、VD端子は、同期整流トランジスタM2のドレインと接続される。同期整流コントローラ300の構成は、実施の形態と同様である。この変形例においても、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(第2変形例)
出力電圧VOUTの電圧レベルが、パルス発生器304、ドライバ306の動作電圧に近い場合、同期整流コントローラ300の内部電源回路302は省略してもよい。
【0092】
(第3変形例)
図10(a)、(b)は、第3変形例に係る同期整流コントローラ300aの回路図である。ドライバ306は、ハイサイドトランジスタM21およびローサイドトランジスタM22を含む出力段307と、パルス信号S1に応じてハイサイドトランジスタM21、ローサイドトランジスタM22を駆動するプリドライバ308を含む。この変形例において、オフ固定回路320aは、ドライバ306の出力段307のローサイドトランジスタM22を強制的にオンすることにより、同期整流トランジスタM2をオフに固定する。
【0093】
図10(b)には、オフ固定回路320aの構成例が示される。オフ固定回路320aは、ローサイドトランジスタM22の制御端子と補助電源回路310の出力ライン312の間に設けられ、補助電源電圧VAUXが上昇すると、ターンオンするトランジスタM31を含む。たとえばトランジスタM31は、PチャンネルMOSFETであり、そのゲートには、接地電圧を入力してもよい。なおオフ固定回路320aの構成はこれには限定されない。
【0094】
(第4変形例)
実施の形態では、フライバックコンバータを説明したが、本発明はフォワードコンバータにも適用可能である。この場合にはトランスT1の2次側に、複数の同期整流用のトランジスタが配置されることとなる。同期整流コントローラは、複数の同期整流トランジスタをスイッチングするよう構成されてもよい。またコンバータは疑似共振型であってもよい。
【0095】
(第5変形例)
スイッチングトランジスタや同期整流トランジスタの少なくとも一方は、バイポーラトランジスタやIGBTであってもよい。
【0096】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0097】
P1…入力端子、P2…出力端子、M1…スイッチングトランジスタ、M2…同期整流トランジスタ、C1…出力キャパシタ、T1…トランス、W1…1次巻線、W2…2次巻線、S1…パルス信号、M3…オフ用トランジスタ、M4…解除用トランジスタ、100…AC/DCコンバータ、102…フィルタ、104…整流回路、106…平滑キャパシタ、200…DC/DCコンバータ、202…1次側コントローラ、204…フォトカプラ、206…シャントレギュレータ、210…出力回路、300…同期整流コントローラ、302…内部電源回路、304…パルス発生器、306…ドライバ、310…補助電源回路、320…オフ固定回路、322…解除回路、800…ACアダプタ、802…プラグ、804…筐体、806…コネクタ、810,900…電子機器、902…プラグ、904…筐体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10