(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般家庭の住宅においては、シックハウス症候群の対策のため、換気が義務付けられている。住宅の換気には、換気と共に、除湿を行うデシカント換気扇を用いることができ、その具体例が、特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載のデシカント換気扇は、供給路(第一の風路)に設けられた送風機の作動によって、屋外から供給路に外気を取り込んで屋内に供給し、排気路(第二の風路)に設けられた送風機の作動によって、屋内の内気を、排気路を経由して、屋外へ排出する。
【0003】
屋外から取り込まれた外気は、デシカントロータ(回転型デシカント式除湿器)によって除湿され、冷却手段(回転型顕熱交換器)を通過して温度が低下した後、屋内へ送られるので、夏季の高温、多湿の環境下で、居住スペースを、快適な状態に保つことができる。
そして、特許文献1には記載されていないが、給気路の冷却手段の下流側に配されたデシカントロータから外気に水分を与えるように設計して、冷却手段によって低下した外気の温度を、更に、低下させ、屋内に供給することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るデシカント換気扇10は、屋内に外気(屋外の空気)11を送る給気路12及び屋内の内気(空気)13を排出する排気路14を有して、屋内を換気する。以下、詳細に説明する。
【0014】
デシカント換気扇10は、
図1に示すように、箱状の筺体15内に給気路12及び排気路14が形成され、給気路12内には、送風機16が設けられ、排気路14内には送風機17が設けられている。送風機16、17は、通電されて作動する電動式の送風機である。
給気路12の両端には、外気11を筺体15内に取り込む外気取込み口18、及び、外気11を筺体15から屋内に送る外気吹出し口19がそれぞれ形成されている。屋外の外気11は、送風機16の作動により、外気取込み口18から給気路12内に流入し、給気路12を外気吹出し口19に向かって進んで、外気吹出し口19から屋内へ放出される。即ち、送風機16は、給気路12内に外気11を取込み、屋内へ送る。
【0015】
排気路14の両端には、屋内から内気13を筺体15内に取り込む内気取込み口20、及び、内気13を筺体15から屋外に送り出す内気吹出し口21がそれぞれ形成されている。送風機17の作動により、屋内の内気13は、内気取込み口20から排気路14に流入し、排気路14を内気吹出し口21に向かって進行して、内気吹出し口21から屋外へ排出される。外気取込み口18、及び、内気取込み口20には、図示しないフィルタが装着されている。
【0016】
なお、本実施の形態では、デシカント換気扇10が屋内に据え置く据え置き式であるが、デシカント換気扇10は、据え置き式である必要はなく、例えば、吊り下げ式であってもよい。また、外気取込み口18、外気吹出し口19、及び、内気吹出し口21には、それぞれダクトが連結されているのに対し、内気取込み口20にはダクトが連結されておらず、屋内の内気13は、直接、内気取込み口20から排気路14内に取り込まれるが、これに限定されない。例えば、内気取込み口20にもダクトを連結し、ダクトを経由して、内気取込み口20から排気路14内に内気13を取り込むようにしてもよい。
【0017】
筺体15内には、給気路12内の外気11及び排気路14内の内気13が共に通過する顕熱交換器(冷却手段の一例)22、排気路14内に配された加熱手段23、及び、給気路12と排気路14の相対湿度が高い側から低い側に水分(湿気)を移動させるデシカントロータ24(デシカントロータA)が設けられている。
顕熱交換器22、加熱手段23、デシカントロータ24、及び、送風機17は、排気路14内の内気13の流れに沿って、上流から順に配されている。
【0018】
顕熱交換器22は、給気路12を進行する外気11と排気路14を進行する内気13を熱交換し、温度の高い方から低い方に熱を移動させる。本実施の形態では、顕熱交換器22を配した位置において、給気路12を進む外気11が、排気路14を進む内気13に比べて高温であることから、顕熱交換器22は、給気路12内の熱を、排気路14内に移動して、給気路12内の外気11の温度を低下させる。
【0019】
加熱手段23は、排気路14を顕熱交換器22からデシカントロータ24に向かって流れる内気13の温度を上昇させて相対湿度を低下させる。加熱手段23を通過して相対湿度が低下した内気13は、デシカントロータ24を通過の際に、デシカントロータ24に吸収されている水分を蒸発させ、蒸発させた水分と共に、内気吹出し口21に送られる。
本実施の形態では、加熱手段23が、加熱された湯を供給されて得た熱を利用して、内気13を加熱するように設計されているが、これに限定されない。例えば、加熱手段23に、ヒートポンプサイクルを利用して、内気13を加熱する熱交換器を採用してもよい。
【0020】
デシカントロータ24は、回転可能に設計され、回転することによって、排気路14内に配されていた部分が、給気路12内に移動し、給気路12内に配されていた部分が、排気路14内に移動する。デシカントロータ24は、給気路12内に配された部分が、給気路12内の外気11から水分を吸収した後、排気路14内に移動し、吸収していた水分を蒸発された後、再び、給気路12内に移動して、水分を吸収する。これを繰り返すことによって、デシカントロータ24は、給気路12内から排気路14内に水分を移動する。
【0021】
また、筺体15内には、給気路12のデシカントロータ24より上流側で給気路12から分岐したバイパス路25が形成されている。バイパス路25は、一端が給気路12に連結され、他端が排気路14の顕熱交換器22と加熱手段23の間に連結され、給気路12に取り込まれた外気11の一部を、排気路14に送る。バイパス路25には、バイパス路25を流れる外気11の量を調整する流量調整部26が設けられている。
【0022】
更に、筺体15内には、給気路12とバイパス路25の相対湿度が高い側から低い側に水分(湿気)を移動させるデシカントロータ27(デシカントロータB)が設けられている。デシカントロータ27も、デシカントロータ24と同様に、回転可能に設計され、回転することによって、バイパス路25内に配されていた部分が、給気路12内に移動し、給気路12内に配されていた部分が、バイパス路25内に移動する。
デシカントロータ27は、バイパス路25内に配された部分が、バイパス路25を流れる外気11から水分を吸収した後、給気路12内に移動し、給気路12を流れる外気11に吸収していた水分を与えて、外気11の温度を低下させ、再び、バイパス路25内で水分を吸収する。
【0023】
デシカントロータ24、顕熱交換器22、送風機16、及び、デシカントロータ27は、給気路12内の外気11の流れに沿って、上流から順に配されている。即ち、給気路12内の外気11の流れに沿って、顕熱交換器22は、デシカントロータ24の下流側に設けられ、デシカントロータ27は、顕熱交換器22の下流側に設けられている。送風機16は、給気路12内において、顕熱交換器22とデシカントロータ27の間に配されていることになる。
【0024】
次に、排気路14に流入した内気13の温度変化、及び、給気路12に流入した外気11の温度変化について説明する。
内気取込み口20から排気路14に流入した内気13は、顕熱交換器22を通過する際に、給気路12内の外気11と熱交換されて温度が上昇し、加熱手段23を通過して、更に、温度が上昇した後、デシカントロータ24を通過中に、デシカントロータ24に含まれていた水分を蒸発させて温度が降下し、内気吹出し口21から排出される。
【0025】
一方、外気取込み口18から給気路12に流入した外気11は、デシカントロータ24に水分を与えて、温度が上昇した後、顕熱交換器22を通過の際に、排気路14内の内気13と熱交換されて温度が降下し、デシカントロータ27を通過して、更に温度が降下した後、外気吹出し口19から放出される。
よって、給気路12において、デシカントロータ27の下流側の外気11は、デシカントロータ24と顕熱交換器22の間の外気11、及び、顕熱交換器22とデシカントロータ27の間の外気11より温度が低い。
【0026】
ここで、給気路12内に配された送風機16は、作動により発熱するため、送風機16を通過する外気11と送風機16自体の温度関係によっては、外気11の温度を上昇させることになる。そして、送風機16の通過による外気11の温度上昇を抑制するという観点においては、送風機16を通過する外気11の送風機16の温度に対する相対的な温度は、高いほどよいと言える。
なお、ここで言う「温度上昇を抑制する」は、温度上昇を忌避することも含む概念であり、これは、以下も同じである。
【0027】
この点、給気路12内において、顕熱交換器22とデシカントロータ27の間の外気11は、デシカントロータ27より下流側の外気11と比べて、温度が高く、本実施の形態では、送風機16の温度と同レベルで、外気11の温度が、送風機16の熱により上昇することはない。これに対し、デシカントロータ27より下流側の外気11の温度は、送風機16の温度より低く、仮に、送風機16を、供給路12のデシカントロータ27より下流側に配置した場合、デシカントロータ27を通過して温度が下がった外気11は、送風機16の熱を吸収して上昇することになる。
よって、本実施の形態では、送風機16が、顕熱交換器22とデシカントロータ27の間に配されているので、デシカントロータ27より下流側に配されている場合に比べ、送風機16を通過する際の外気11の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
そして、デシカントロータ24と顕熱交換器22の間も、デシカントロータ27の下流側より、外気11の温度が高いため、送風機16を、デシカントロータ24と顕熱交換器22の間に配することによって、送風機16をデシカントロータ27より下流側に配する場合に比べ、送風機16の通過による外気11の温度上昇を抑制可能である。本実施の形態では、給気路12において、デシカントロータ24と顕熱交換器22の間の外気11は、送風機16より温度が高く、送風機16の熱により温度が上昇することはない。
従って、送風機16を給気路12内のデシカントロータ24とデシカントロータ27の間に配することで、外気11を、温度上昇を抑制した状態で、室内に送ることができる。
【0029】
但し、デシカントロータ24と顕熱交換器22の間は、顕熱交換器22とデシカントロータ27の間より、外気11の温度が高く、例えば、60℃以上になることもある。従って、送風機の機種ごとに許容される使用環境の上限温度が異なることを考慮すると、顕熱交換器22とデシカントロータ27の間に送風機16を配置する場合は、デシカントロータ24と顕熱交換器22の間に送風機16を配置する場合と比較して、送風機16に採用できる送風機の機種の幅が広がる点で好ましい。
【0030】
また、本実施の形態では、送風機16に、送風機16(送風機16が備える羽根の付いた回転体)の遠心方向に外気11を吹き出す遠心送風機を採用している。遠心送風機は、羽根の付いた回転体の軸方向に空気を吹き出す軸流送風機や、羽根の付いた回転体の軸方向に対し斜めに空気を吹き出す斜流送風機等に比べ、空気を吹き出す空間の静圧を高めることができる。
【0031】
給気路12において、送風機16が外気11を吹き出す空間の静圧が高くなると、送風機16から吹き出された外気11は、給気路12の断面の各領域に、万遍なく供給されることとなり、結果として、デシカントロータ27の通過による外気11の温度降下を大きくすることができる。
本実施の形態では、送風機16に、遠心送風機の中でも、静圧効果が高いターボファンを用いているので、デシカントロータ27を通過して屋内に供給される外気11の温度を、シロッコファン等を用いるのに比べ、安定的に低くすることが可能である。
【0032】
しかも、送風機16は、外気11を給気路12の内壁に向かって放射状に吹き出すので、送風機16から吐き出された外気11は、内壁に衝突する向きに進んだ後、進行方向を変えて、デシカントロータ27に向かうこととなる。よって、外気11をデシカントロータ27に向かって吹き出す場合と比較して、送風機16の外気11の吹出し側において、給気路12の断面の各領域に対し、外気11を均一的に供給可能である。
ここで、給気路12の断面の各領域に対して外気11を均一的に供給するという点では、送風機16とデシカントロータ27の間に整流部材を設けるのも有効である。
【0033】
また、本実施の形態では、送風機16の配置位置に設けられた遮蔽部材28と、送風機16とによって、給気路12の顕熱交換器22とデシカントロータ27の間の領域を、2つの空間(以下、顕熱交換器22側を空間29とし、デシカントロータ27側を空間30とする)に分割している。
送風機16は、外気11の吸込み部31が空間29内に配され、外気11の吹出し部32が、空間30内に配されているので、空間30内の静圧を、安定的に高めることが可能である。本実施の形態では、吹出し部32が、送風機16の外周全体に設けられている。
【0034】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、冷却手段は、供給路内の外気と排気路内の内気を熱交換する顕熱交換器である必要はなく、冷水や冷気によって供給路内の外気を冷却するものであってもよい。
また、筺体は箱状に限定されず、他の形状であってもよい。
そして、デシカントロータA、B、冷却手段、加熱手段及び2つの送風機は、1つの筺体内に収容されている必要はなく、例えば、それらを分散して、複数の筺体に収めるようにしてもよい。
更に、バイパス路は必ずしも必要ではなく、バイパス路を設けない場合、外気を取り込んでデシカントロータに供給する独立した別の流路を設ければよい。