特許第6514928号(P6514928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6514928発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514928
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/04CET
   C08J9/04CFH
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-64110(P2015-64110)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183255(P2016-183255A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】逸見 龍哉
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−109279(JP,A)
【文献】 特開平04−202443(JP,A)
【文献】 特開2012−214750(JP,A)
【文献】 特開平03−177438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン含有単量体とスチレン系単量体の共重合体であり、樹脂粒子の表面部にポリシロキサンが存在し、
ポリシロキサン含有単量体の粘度が、50mm/s以上1000mm/s以下であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
スチレン系単量体100重量部に対して、ポリシロキサン含有単量体1重量部以上6重量部以下を含有することを特徴とする請求項1記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
ポリシロキサンが、樹脂粒子の内部より、樹脂粒子の表面部に多く存在することを特徴とする請求項1または2記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
ポリシロキサン含有単量体が、ジアルキルポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
ポリシロキサン含有単量体が、片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる
ことを特徴とするポリスチレン系予備発泡粒子。
【請求項7】
請求項記載のポリスチレン系予備発泡粒子を成形してなることを特徴とする発泡成形
体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体が周囲と擦りあわされた際に発生する擦れ音が抑制されたものである発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子、発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系発泡成形体は、その軽量性や緩衝性能から、容器、梱包材、建築土木部材、自動車部材など多岐にわたって使用されている。
【0003】
しかし、発泡性ポリスチレン系樹脂からなる発泡成形体は、発泡成形体同士や他の樹脂部材、鋼板などと擦り合わさせた場合、キュッキュという不快な擦れ音が発生しやすいという問題点がある。特に自動車部材分野では悪路走行などで振動を伴いやすいため、擦れ音の発生が使用感を損ねる原因となる。
【0004】
このような問題を解決するため、脂肪族系化合物やシリコーン系化合物を表面に塗布または樹脂粒子に混練された発泡成形体が開示されている。例えば特許文献1には脂肪酸アマイド、及び飽和脂肪酸とグリセリンのモノエステルが表面に付着させた熱可塑性樹脂予備発泡粒子からなる発泡粒子成形体で擦れ音の発生を抑制する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2では炭化水素系ワックスとジメチルポリシロキサンを付着させた発泡粒子からなる発泡粒子成形体で擦れ音の発生を抑制する方法が記載されている。
【0006】
しかしながらこれら公報では潤滑成分を発泡粒子の表面に大量に塗布するため、これらの成分の剥離による擦れ音防止性能悪化や予備発泡機や成形金型の汚染が問題となる。
【0007】
一方、シリコーン化合物を樹脂粒子表面に存在させる例として、特許文献3で発泡性粒子の表面をジメチルポリシロキサンで被覆処理することで発泡粒子の凝集を低減する方法が記載されている。また、特許文献4ではオルガノシロキサンを発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に均一に混練することにより発泡粒子の気泡を均一化し、機械的強度や断熱性に優れた発泡成形体を得る方法が記載されている。
【0008】
しかしながら、擦れ音抑制を考える場合はこれら特許文献記載のような少量添加では効果を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−100443号公報
【特許文献2】特開2015−017155号公報
【特許文献3】特開2013−142106号公報
【特許文献4】特開2012−214750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような状況に鑑み、本発明は多量に添付剤を塗布することなく、また予備発泡機や成形金型を汚染することなく擦れ音を抑制できる発泡成形体が得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0012】
本発明の第1はポリシロキサン含有単量体とスチレン系単量体の共重合体であり、樹脂粒子の表面部にポリシロキサンが存在する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【0013】
本発明の第2はスチレン系単量体100重量部に対して、ポリシロキサン含有単量体1重量部以上6重量部以下を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【0014】
本発明の第3はポリシロキサンが、樹脂粒子の内部より、樹脂粒子の表面部に多く存在する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【0015】
本発明の第4はポリシロキサン含有単量体が、ジアルキルポリシロキサンである発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【0016】
本発明の第5はポリシロキサン含有単量体が、片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサンである発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【0017】
本発明の第6はポリシロキサン含有単量体の粘度が、50mm2/s以上1000mm2/s以下である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【0018】
本発明の第7は第1〜第6のいずれかに記載の発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなるスチレン系予備発泡粒子に関する。
【0019】
本発明の第8は第7の発明に記載のスチレン系予備発泡粒子を成形してなる発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、多量に添付剤を塗布することなく、また予備発泡機や成形金型を汚染することなく擦れ音を抑制できる発泡成形体が得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリシロキサン含有単量体とスチレン系単量体の共重合体であり、樹脂粒子の表面部にポリシロキサンが存在することを特徴とする。
【0022】
スチレン系単量体とポリシロキサン含有単量体の比率は、スチレン系単量体100重量部に対して、ポリシロキサン含有単量体1重量部以上6重量部以下が好ましく、より好ましくはポリシロキサン含有単量体2重量部以上5重量部以下である。ポリシロキサン含有単量体成分比率が多いと、発泡剤が抜けやすくなるため発泡性、成形性に劣る傾向があり、表面が美麗な発泡成形体を得づらい。ポリシロキサン含有単量体成分が少ないと擦れ音抑制性能が十分に発揮されない。
【0023】
本発明で用いられるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系誘導体を使用することができる。特に、スチレンであることが、発泡性、成形加工性が良好である点から好ましい。
【0024】
本発明で用いられるポリシロキサン含有単量体としては、スチレン系単量体と共重合可能な官能基をもっておれば特に制限はないが、片末端または両末端にビニル基を有するポリシロキサン化合物が好ましく使用できる。ポリシロキサン構造はジアルキルポリシロキサン構造が擦れ音を低減させやすいため好ましく、ジメチルポリシロキサンがより好ましい。
【0025】
ポリシロキサン含有単量体の粘度は動粘度として25℃で200mm/s以上1000mm/s以下が好ましい。粘度が高いほどシロキサン鎖が長いため擦れ音抑制性能が発現しやすいが、粘度が高すぎるとハンドリング性が悪くなり重合が難しくなる。
【0026】
末端構造はメタクリル型構造であることがラジカル重合しやすいため好ましい。擦れ音性能を発揮するためには樹脂表面部に側鎖としてポリシロキサン構造を導入できる片末端メタクリル型構造が最も好ましい。具体的には、片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサンであることが、得られる発泡成形体の平滑性に優れ、擦れ音を抑制しやすい点で特に好ましい。
【0027】
樹脂粒子の表面部とは発泡、成形した際に最表面の気泡膜となるであろう樹脂粒子最表面から10μmの深さを表し、これ以外の部分を樹脂粒子の内部とする。
【0028】
ポリシロキサン含有単量体は重合のどの段階で追加しても良いが、より表面部に存在させ、擦れ音抑制性能を得るためには、スチレン系単量体の追加後にポリシロキサン含有単量体を追加するのが好ましい。
【0029】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が、25万以上35万以下であることが好ましい。重量平均分子量が低いと部材として使用する際の圧縮強度などの機械的強度に劣る傾向にあり、高いと表面性のよい成形体が得られづらい。本発明では分子量の調整のためにジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの二官能性単量体を用いることができる。
【0030】
本発明の発泡性樹脂粒子を製造する方法としては、水性懸濁液中でスチレン系単量体を重合させ懸濁重合し続いてポリシロキサン含有単量体を追加して重合する方法、または、ポリスチレン系樹脂粒子を含む水性懸濁液に、スチレン系単量体およびポリシロキサン含有単量体を連続的または断続的に添加することにより、ポリスチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体およびポリシロキサン含有単量体を含浸させ、重合させるいわゆるシード重合法、等があげられる。
【0031】
水性懸濁液とは樹脂粒子および単量体液滴を、水または水溶液に分散させた状態を指し、水中には水溶性の界面活性剤や単量体が溶解していても良く、また、水に不溶の分散剤、開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤、難燃剤、可塑剤等が共に分散していても良い。
【0032】
樹脂と水の重量比は、得られる樹脂/水の比として、1.0/0.6〜1.0/3.0が好ましい。
【0033】
懸濁重合に使用できる分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどの難水溶性無機塩、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子などが挙げられ、難水溶性無機塩を使用する場合には、α―オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を併用することが効果的である。これらの分散剤は必要に応じて重合の途中で追加しても良い。
【0034】
分散剤の使用量は、種類によるが難水溶性無機塩としては水100重量部に対して0.1重量部以上1.5重量部以下、アニオン系界面活性剤や水溶性高分子としては30ppm以上100ppm以下が好ましい。
【0035】
本発明の懸濁重合は一段階目の重合を行い主要な反応を行った後、一段階目よりも高温で二段階目の重合反応で残存モノマーを低減させることが好ましい。
【0036】
一段階目の重合に用いられる重合開始剤としては、一般に熱可塑性重合体の製造に用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができ、代表的なものとしては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル−t−ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートなどの有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0037】
発泡剤としては、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタン等の炭素数3以上5以下の炭化水素である脂肪族炭化水素類、例えば、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等のオゾン破壊係数がゼロであるハイドロフルオロカーボン類等の揮発性発泡剤があげられる。これらの発泡剤は併用しても何ら差し支えない。また、使用量としては、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは5重量部以上10重量部以下、さらに好ましくは6重量部以上9重量部以下である。発泡剤の量が少ないと発泡倍率を得ることが難しく、発泡剤の量が多いと発泡剤含浸工程で樹脂の凝集が生じやすくなる。
【0038】
本発明において使用する添加剤としては、目的に応じて溶剤、可塑剤、気泡調整剤等が使用できる。溶剤としては沸点50℃以上のものがあげられ、トルエン、へキサン、ヘプタン等のC6以上の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロオクタン等のC6以上の脂環族炭化水素、などが挙げられる。
【0039】
可塑剤としては、沸点200℃以上の高沸点可塑剤が挙げられ、例えば、ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素等があげられる。気泡調整剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0040】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、一般的な予備発泡方法によって、予備発泡粒子とすることができる。具体的には攪拌機を具備した容器内に入れ水蒸気等の熱源により加熱することで、所望の発泡倍率までに予備発泡を行う。
【0041】
更に発泡性スチレン系予備発泡粒子は、一般的な型内成形方法によって成形し、発泡成形体にすることができる。具体的には、閉鎖し得るが密閉しえない金型内に充填し、水蒸気により加熱融着することでスチレン系発泡成形体とする。
【0042】
本発明のスチレン系発泡成形体は発泡倍率45倍に予備発泡し、成形した場合の擦れ音を評価した。
【実施例】
【0043】
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0044】
(予備発泡粒子の製造)
篩により所定の粒子径に分級した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.09〜0.10MPaの条件でかさ倍率45倍への予備発泡し、その後、常温下で1日放置して嵩倍率45倍の予備発泡粒子を得た。
【0045】
(発泡成形体の製造)
得られたスチレン系予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、KR−57」を用いて吹き込み蒸気圧0.10MPaで型内成形を行うことで、厚み50mmで長さ400mm×幅350mmの平板状の発泡成形体を得た。
【0046】
(成形体の表面性)
発泡成形体の表面の状態を目視観察にて評価した。数値が大きいほうが粒子同士の隙間が少ない美麗な表面状態であり、5点満点で表現した3以上を合格とした。
【0047】
5:隙間が見当たらない
4:部分的に隙間があるが、ほとんどわからない
3:ところどころ隙間があるが、全体としては許容できる
2:隙間が目立つ
1:隙間が多い。
【0048】
(動摩擦係数μk測定)
得られた発泡成形体を、バーチカルスライサー(桜エンジニアリング製)を用いてそこから長さ60mm幅60mm厚み4mmの片面スキンの試験片を切り出した。
【0049】
試験片を表面性試験機HEIDON Type:14FW(新東科学株式会社製)を使用し、荷重200g、往復距離50mm、摺動速度3000mm/分の条件でポリプロピレン板と10往復擦り合わせ、擦れあわせごとの動摩擦係数μの平均値を求めた。
【0050】
(擦れ音測定)
得られた発泡成形体を、バーチカルスライサー(桜エンジニアリング製)を用いてそこから長さ60mm幅60mm厚み50mmの両面スキンの試験片を切り出した。その後、長さ400mm幅350mm厚み50mmの両面スキンの成形体と切り出した試験片とを、温度23℃、湿度60%の恒温恒湿室に4時間静置した。長さ400mm幅350mm厚み50mmの両面スキンの成形体の上に長さ60mm幅60mm厚み50mmの試験片を載せ、試験片の上に1000gの荷重を載せた。その状態で試験片を幅50mmの区間を3000mm/分の速度で10往復させた。
その際に発生した擦れ音を以下の基準で評価した。
◎:擦れ音が発生しない。
○:最初は擦れ音が発生しないが途中から小さな擦れ音が発生する。
△:最初から小さな擦れ音が発生する。
×:大きな擦れ音が発生する。
【0051】
(実施例1)
撹拌機付き6Lオートクレーブに水96重量部、第3リン酸カルシウム0.17重量部、α−オレフィンスルフォン酸ソーダ0.048重量部、難燃剤として臭素化ブタジエン・スチレン共重合体(ケムチュラ社製「EMERALD 3000」臭素含有量64%)1.2重量部、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド0.2重量部、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.1重量部、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.37重量部、及び、可塑剤としてやし油1.4重量部を仕込んだ後、スチレン100重量部を仕込み、98℃まで昇温して5時間重合を行った。続いて片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012(粘度60mm/s(25℃))」(信越化学工業株式会社製)2重量部と過酸化ベンゾイル0.05重量部を追加し、更に30分重合した。更に、ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン70%、イソブタン30%)8重量部を仕込んで117℃まで昇温し4時間発泡剤の含浸と重合を行った。その後、40℃まで冷却後、洗浄・脱水・乾燥することにより発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0052】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5〜1.0mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得、更に加圧式予備発泡機「BHP−300(大開工業製)」で予備発泡し嵩倍率45倍の予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子を室温で1日養生させた後、成形機「KR−57(ダイセン製)」を用いて300×450×50(t)mmサイズの金型にて発泡成形品を得、成形体の表面性、動摩擦係数、擦れ音を評価した。評価結果は表1に示した。
【0053】
(実施例2)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」の量を5重量部とした以外は実施例1と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0054】
(実施例3)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」をより高粘度の「X−22−2426(粘度200mm/s(25℃))」(信越化学工業株式会社製)とした以外は実施例1と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0055】
(実施例4)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「X−22−2426」を5重量部とした以外は実施例3と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0056】
参考例5)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」をより低粘度の「X−22−2404(粘度5mm/s(25℃))」(信越化学工業株式会社製)とした以外は実施例1と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0057】
(実施例6)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」の量を0.8重量部とした以外は実施例1と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0058】
(実施例7)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」の量を7重量部とした以外は実施例1と同様に行った。発泡倍率が45倍に到達しなかったため、発泡倍率42倍で評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0059】
(実施例8)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」を両末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「X−22−164E(粘度190mm/s(25℃))」(信越化学工業株式会社製)とした以外は実施例1と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0060】
(実施例9)
撹拌機付属の6Lのオートクレーブに、純水重量92重量部、第3リン酸カルシウム0.38重量部、α―オレフィンスルフォン酸ソーダ0.01重量部、塩化ナトリウム0.1重量部、粒子径が0.4〜0.5mmのスチレン系樹脂種粒子20重量部を仕込んだ後、攪拌を開始した。続いて、90℃まで昇温させた後、ベンゾイルパーオキサイド30%溶液0.22重量部を5時間、スチレン単量体80重量部を5時間30分かけて反応器中に仕込みながら重合した。この際、スチレン添加4時間45分目に1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.064重量部を、5時間20分目にジビニルベンゼン0.012重量部を仕込んだ。更にスチレン単量体の追加終了後に片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」2重量部と過酸化ベンゾイル0.1重量部を仕込み、30分間90℃を保持した。その後、シクロヘキサン0.5重量部、ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン70%、イソブタン30%)8重量部を仕込み更に120℃に昇温して2時間保持した後、40℃まで冷却した。懸濁液を取り出し脱水・乾燥・分級して、粒子径が0.6〜1.15mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0061】
実施例1と同様に予備発泡、成形を行い、成形体の表面性、動摩擦係数、擦れ音を評価した。評価結果は表1に示した。
【0062】
(実施例10)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」の量を5重量部とした以外は実施例9と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0063】
(実施例11)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」2重量部を追加するスチレン80重量部とあらかじめ混合し、混合液を5時間30分かけて追加するようにした以外は実施例9と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0064】
(実施例12)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」の量を5重量部とした以外は実施例11と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0065】
(比較例1)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」を使用しなかった以外は実施例1と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0066】
(比較例2)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」を使用しなかった以外は実施例9と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0067】
(比較例3)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」をスチレン追加終了後でなく、初期(90℃への昇温の前)に追加した以外は実施例9と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0068】
(比較例4)
片末端メタクリル型ジメチルポリシロキサン「KF−2012」の量を5重量部とした以外は比較例3と同様に行った。評価結果は表1に示した。
【0069】
【表1】