【実施例1】
【0023】
図1は、本発明による3次元画像表示装置の断面模式図である。
図1に示す装置は、液晶表示パネル3000によって形成された画像を液晶パララックスバリアパネル1000を用いて3次元画像を視認できる構成となっている。液晶パララックスバリアパネル(以後液晶パネル又はパララックスバリアパネルという)1000と液晶表示パネル3000とは透明接着材2000によって接着している。
【0024】
液晶表示パネル3000は、TFTと画素電極を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板350と対向基板400がとシール材によって貼りあわされ、内部に液晶が封止された構成である。TFT基板350には走査線が第1の方向に延在して、第2の方向に配列し、映像信号線が第2の方向に延在し、第1の方向に配列している。走査線と映像信号線に囲まれた部分が画素となっている。対向基板400には、一般には、TFT基板350の走査線あるいは映像信号線に対応した部分にブラックマトリクスが形成され、画面のコントラストの向上を図っている。
【0025】
液晶表示装置は、自分では発光しないので、液晶表示パネル3000の背面にバックライト4000が配置されている。バックライト4000は光源の他、導光板、拡散板、場合によっては、光の利用効率を向上させるためのプリズムシート等の光学部品を含んでいる。
【0026】
図2はパララックスバリア方式の3次元画像表示の原理を示す断面図である。バリアパターン600に形成されたバリア領域610と開口領域620によって、右眼は表示装置800に形成された右眼用の画像Rのみを認識し、左眼は左眼用の画像Lのみを認識することによって、人間は、3次元画像を認識することが出来る。
【0027】
図3は液晶パララックスバリアパネルの動作原理を示す断面図である。
図3(a)も
図3(b)もTN(Twisted Nematic)方式の液晶パネルである。共通基板200の外側には上偏光板2100が貼り付けられ、バリア基板100の外側には下偏光板1100が貼り付けられている。
図3(a)において、共通基板200には共通電極210が平面状に全面に形成され、バリア基板100には、所定のピッチでストライプ状のバリア電極110が座標y方向に延在している。液晶分子300はバリア基板100から共通基板200にかけ、90度ツイストしている。
図3(a)は、共通電極210とバリア電極110との間に電圧が印加されていない状態であり、液晶表示パネルからの光は変調を受けない。したがって、この場合は、2次元画素が表示される。
【0028】
図3(b)は同じパララックスバリアパネルのバリア電極110に対して1つおきに電圧を印加した場合である。バリア電極110に電圧が印加された領域は光が遮断され、バリア電極110に電圧が印加されない領域は光が透過する。これによって、パララックスバリアパネル主面から見ると、ストライプ状の遮光領域とストライプ状の開口領域が交互に形成されて見える。なお、
図3(b)において、矢印Fは電界を示している。
【0029】
パララックスバリア方式では、
図2に示すように、完全な3次元画像を表現するには、人間の眼とパララックスバリアパネルとを所定の位置に固定する必要がある。人間の眼が横方向に移動すると、本来は、左眼だけに認識されるべき画素が右眼にも認識され、あるいは、本来は、右眼だけに認識されるべき画素が左眼にも認識されるようになる。これをクロストークと呼んでおり、3次元画像の品位が低下する。
【0030】
これを防止するために、バリアの位置を人間の眼の位置に合わせて移動させる方式がある。
図4は、人間の眼の移動をカメラによって追跡し、このデータを表示装置にフィードバックするシステムを示すブロック図である。以後このシステムをアイトラッキング方式と呼ぶ。
図4において、人間の眼120の位置をカメラで測定する。このカメラは、携帯端末等における写真用カメラを使用すれば、特別に専用カメラを用いなくとも、このシステムを適用することが出来る。
【0031】
図4において、カメラで検出した人間の眼120の位置を位置検出器に入力し、位置検出器からバリア制御器にこの信号を入力する。バリア制御器は、バリア基板におけるバリアパターンの位置を制御するための信号を作り、この信号をパララックスバリアパネルを有する立体表示装置(3次元表示装置)に入力する。
【0032】
図5は、人間の眼110が移動した場合にも、右眼用の画素と左眼用の画素がクロストークしないように、人間の眼120の移動に合わせてバリアパターン600を移動することを示す模式図である。
図5において、人間の眼120はバリアパターン600を介して画素パターン800を視認するので、人間は3次元画像を認識することが出来る。
図5は、
図5(a)から(c)にかけて人間の眼が紙面に向かって左から右方向に移動していることを示している。
図5(a)から(c)の一番下の短冊パターンは、人間の眼の動きに合わせてバリアパターン600のうちの1つのバリア移動域の中で、バリア領域610が左から右方向に移動していることを示している。これによって、右眼用の画素と左眼用の画素のクロストークを防止することができる。
【0033】
図6は、パララックスバリアパネルにおいてバリアパターン600を移動させるための電極構造を示すものである。
図6において、共通基板200には共通電極210が平面状に形成されていることは従来と同じである。一方、バリア基板100におけるバリア電極110は紙面垂直方向に延在するストライプ状であるが、バリア電極のピッチpbはバリアパターンのうちの1つのバリア移動域のピッチppの1/10である。
図6の構成は10段階の視差に対応することが出来るが、もっと細かい段階に分割することも可能である。
図6においては、5本のバリア電極110をonすることによってバリア領域を形成し、off状態の5本のバリア電極110に対応して開口領域620が形成されている。onにするバリア電極の数は5本に限定されるものではない。バリア領域610の位置を移動させるには、バリア領域610における片側のバリア電極110をoffし、バリア領域610の他の側のバリア電極110をonさせればよい。
【0034】
このように、複数のバリア電極110によってバリア領域610を形成することで、バリア領域610の位置を移動させることが出来、アイトラッキングによるフィードバックを正確に行うことが出来る。なお、
図6において、バリア電極110がonになっている領域にバリア領域610が形成され、バリア電極110がoffになっている領域に透過領域620が形成されている。また、バリア電極110がonになっている状態は、バリア電極110に電圧が印加されている状態のことである。
【0035】
図7は、
図6に示すパララックスバリアパネルにおいて、バリア電極110のピッチpbがバリアパターンのピッチppの1/2の場合の平面図である。つまり、
図7のパララックスバリアパネルは、2段階の視差のアイトラッキング方式に対応することが出来る。
図7において、バリア基板100の上に共通基板200が配置し、バリア基板100と共通基板200の間に液晶が挟持されている。バリア基板100は、共通基板200よりも大きく形成されており、バリア基板100が1枚になっている部分は端子領域160になっている。端子領域160には2個のバリア電極用端子15と1個の共通電極用端子25が配置している。共通端子25は、共通配線20、共通配線接続部22を介して共通基板200に形成された共通電極210と接続する。 2個のバリア電極端子15の一方は、表示領域150の左方において縦方向に延在するバス電極30と接続し、他方は、表示領域150の右方において縦方向に延在するバス電極30と接続する。
図7において、バリア電極110は、左側のバス電極30および右側のバス電極30から交互に表示領域の横方向に延在している。表示領域150において、バリア電極110は縦方向にピッチpbで配列している。バリア基板は、第1の辺と、第2の辺とを有しており、バス電極は第1の辺と第2の辺とに沿って設けられている。
図7において、共通配線は第2の辺に沿って設けられている。また、バリア電極用端子15は、第3の辺に設けられている。
【0036】
図7のパララックスバリアパネルでは、バリア電極110が途中で断線した場合、断線部から先は、バリア機能を有さないので、そのパララックスバリパネルは不良になる。本発明では、このような問題を無くすために、後で説明するように表示領域150の両側にバス電極30を形成し、両側のバス電極30からバリア電極110にバス電圧を供給するようにする。一方、このような配線を1層で行おうとすると端子の数が多くなる。端子の数を増やさないためには、端子付近において、2層配線とする必要がある。
【0037】
また、
図7に示すパララックスバリアパネルは、2段階の視差にしか対応することが出来ない。3段階以上の視差に対応しようとすると、
図7のような配線構造では対応できず、バリア電極11,12とバス電極30の接続も多層配線にする必要がある。また、バリア電極110を構成するITOは完全な透明ではなく、所定の透過率を有しているので、ITOパターンによる明パターンと暗パターンが繰り返されるために、2次元画像表示においてもモアレが発生する。
【0038】
図6のように、バリア領域をより多数のバリア電極110で構成すれば、アイトラッキングにおける、より細かい視差に対応することが出来る。しかし、
図6の構成は、バリア電極110の間に光を透過するスリット115が存在するので、バリア領域であっても、明パターンと暗パターンが繰り返されるために、3次元画像表示において、モアレを発生する。また、バリア電極110を構成するITOは完全な透明ではなく、所定の透過率を有しているので、ITOパターンによる明パターンと暗パターンが繰り返されるために、2次元画像表示においてもモアレが発生する。
【0039】
図8はこの問題を解決するパララックスバリアパネルの断面図である。
図8が
図6と異なる点は、バリア基板100側において、バリア電極110を上層バリア電極11と下層バリア電極12で構成している点である。上層バリア電極11と下層バリア電極12の間には第1層間絶縁膜61が存在している。
図11において、1個の上層バリア電極11と平面で視て隣接する1個の下層バリア電極12には同じ電圧が印加され、この電極対で、バリア電極対を形成している。上層バリア電極11と上層バリア電極12との間には、平面で視て、下層バリア電極12が存在しているので、上層バリア電極11と上層バリア電極11の間には、スリット状の透過領域は存在しない。したがって、モアレの発生を防止することが出来る。
【0040】
図8において、下層バリア電極12の幅は、上層バリア電極11と上層バリア電極11の間隔と同一でもよいが、バリア基板100と共通基板200の合わせ精度を考慮すると、下層バリア電極12の幅は、上層バリア電極11と上層バリア電極11の間隔よりもやや大きいほうが好ましい。
図8では、上層バリア電極11と下層バリア電極12の幅は同一となっているが、異なるように形成してもよい。すなわち、上層バリア電極11のほうが下層バリア電極12よりも幅広になるように形成してもよいし、その逆でもよい。
図8は、上層バリア電極11のピッチpbがバリアパターンのピッチppの1/6の場合である。すなわち、
図8は6段階の視差に対応することが出来る。
【0041】
図9は、本発明のパララックスバリアパネルを示す平面図である。
図9は、同一のバリア電極11に対して、両側に形成されたバス電極30からバリア電位を供給している。したがって、仮に、バリア電極11が断線をしても、問題は、断線した1点のみなので、3次元画像にほとんど影響を与えない。また、表示領域におけるバリア電極11はITOで形成され、抵抗が金属配線に比べて大きいが、両側から給電することによって、応答の遅れを防止することができる。なお、第1バリア電極および第2バリア電極は透明電極であるITOで形成され、バス電極は、例えば、MoCr等の合金または金属によって形成されている。
【0042】
図9の表示領域は、
図8に示す方式において、上層バリア電極11のピッチpbがバリアパターンのピッチppの1/4の場合の平面図となっている。すなわち、
図9は、4段階の視差に対応することが出来る。
図9において、4視差に対応するために、バリア電極端子15は4個配置されている。また、
図9では、バリア電極に対して両側のバリア電極から給電しているが、
図9に示す領域Aにおいて、多層配線としているので、バリア電極端子15の数は、4個で済んでいる。
【0043】
図10は、
図9に対応する等価回路である。表1は、
図10における抵抗および容量の内容である。
図10の特徴は、バリア電極11および12に対して、両側のバス電極30からバリア信号を供給しているが、
図9の領域Aに対応する部分において、ITOによるブリッジ配線を用いることによって、端子の数を抑えていることである。
【0044】
【表1】
【0045】
図11は、
図9の領域Aに対応する平面図である。
図11において、バス電極引き出し線31をまたいでITOによるブリッジ配線35が形成されている。
図12は
図11のB−B断面図である。
図12において、基板100の上にバス電極30および、バス電極と端子とを接続するバス電極引き出し線31が形成され、その上を層間絶縁膜60が覆っている。層間絶縁膜60の上にITOによるブリッジ配線35が形成され、これを覆って保護膜61が形成されている。バス電極30とバス電極30は、層間絶縁膜に形成されたスルーホール40を介してブリッジ配線35によって接続している。層間絶縁膜60あるいは保護膜61は、例えばSiNで形成される。
【0046】
図13は、
図9あるいは
図10の端子TTから静電気が侵入した場合の等価回路である。
図13において、C1はバス電極引き出し線とコモン電極との容量であり、
図10におけるCS3Ctに対応している。
図13の左側の回路におけるR21はバス電極の抵抗で
図10のRS3Lに対応し、C21は、コモン電極とバス電極の間の容量CS3CLに対応し、R22は、バス電極とバリア電極の接続抵抗RS3LAに対応し、R23はバリア電極の抵抗RS3aに対応している。また、C22は、バリア電極とコモン電極の間の容量CS3Caに対応している。
【0047】
図13の右側の回路におけるRB1は
図10におけるブリッジ配線の抵抗RS3t3に対応している。R31はバス電極の抵抗で
図10のRS3Rに対応し、C31は、コモン電極とバス電極の間の容量CS3CRに対応し、R32は、バス電極とバリア電極の接続抵抗RS3Raに対応し、R33はバリア電極の抵抗RS3aに対応している。また、C32は、バリア電極とコモン電極の間の容量CS3Caに対応している。R23とR33は同一である。また、C22とC32は同程度の大きさである。
図13の特徴は、回路の左側には、ブリッジ配線抵抗RB1が存在しないことである。
【0048】
図13において、端子T11に静電気が侵入したとする。
図13において、C1は非常に小さいので、分岐点Pにおける静電気の電圧はほとんど減衰せず、直ちに静電気の電圧Vpになる。分岐点Pから左側には、I2が流れ、分岐点Pから右側にはI3が流れる。
図13において、左側の回路は配線抵抗RB1が無い分、抵抗が小さいので、I2>I3である。しかし、バス電極の抵抗21は広い面積に分布しているので、大きな電流I2が流れ、バス電極で静電気による電力が消費されても、バス電極が溶断することはない。
【0049】
一方、
図13の右側の回路におけるブリッジ抵抗RB1は、ITOで形成されているので、抵抗は大きく、また、極めて小さい面積で形成されている。したがって、RB1において、大きな電力が消費されると、RB1が溶断する恐れがある。しかし、
図13では、I2>I3となるので、ブリッジ抵抗RB1、RB2で消費される電力は小さく、溶断は免れる。
【0050】
なお、
図13において、バリア電極はITOで形成され、バス電極とバリア電極を接続する配線もITOで形成されることがあるが、これらの抵抗を流れる電流は、I2−I21であり、電流が小さくなっているのに加え、バリア電極に分布しているC21を通しても電流が小さくなるので、静電気による電流で溶断することはない。
【0051】
図14は
図9の構成を使用しない場合の例である。
図14が
図9と異なる点は、領域Bにおけるバス電極引き出し線31の接続方法である。
図14において、端子TTとその左側の端子の接続が
図9と異なっている。端子TTと接続するバス電極引き出し線31は、分岐点の両側において、ブリッジ配線35が存在している。その他は
図9と同じである。
【0052】
図15は
図14に対応する等価回路である。
図15が
図10と異なる点は、端子TTおよびその左側の端子の接続方法である。その他の配線は、
図10と同様である。
図15においては、端子TTに接続するバス電極引き出し線31の分岐点Pの両側にブリッジ配線抵抗が存在している。すなわち、左側の回路には、RS2t2が存在し、右側の回路には、RS2t3が存在している。
【0053】
図16は、
図14の構成において、端子TTに静電気が侵入した場合の透過回路である。
図16が
図13と異なる点は、端子TTからの分岐点Pにおいて、左側にはブリッジ配線抵抗RB1が存在し、右側の回路にはブリッジ配線抵抗RB2が存在していることである。すなわち、
図16では、分岐点Pの両側において対称の回路となっている。
【0054】
図16において、端子T11に静電気が侵入したとする。
図16において、C1は非常に小さいので、分岐点Pにおける静電気の電圧はほとんど減衰せず、直ちに静電気の電圧Vpになることは
図13と同じである。分岐点Pから左側には、I2が流れ、分岐点Pから右側にはI3が流れる。
図13において、左側の回路と右側の回路は対称なので、I2=I3である。つまり、静電気の電圧Vpが大きいと、I2およびI3は大きな電流になりうる。
【0055】
図16の左側の回路において、RB1はITOによるブリッジ配線の抵抗であるから比較的大きい抵抗であり、かつ、面積は極めて小さい。そうすると、極めて小さい面積において、静電気によって発生した電力が消費されるので、このブリッジ配線は溶断の恐れがある。
図16の右側の回路におけるブリッジ配線の抵抗RB2についても同様である。
【0056】
図9乃至
図13に示す回路は、端子から見た配線を非対称にして、静電気が発生したときの、電流の大きさを左右非対称とし、ブリッジ配線における消費電力を小さくし、ブリッジ配線における静電気による断線を防止することができるという特徴を有する。つまり、
図9乃至
図13に示す回路は、
図14乃至
図16の回路に比べて、静電気に対する耐力が高いということができる。
【0057】
以上の説明は、端子TTについて行ったが、他のバリア電極端子の場合についても同じである。つまり、
図13に示した回路構成において、一方の回路においては、バス電極においてブリッジ配線を使用しないという構成は、すべての端子と接続するバス電極において満足していることが望ましい。
【0058】
また、以上の説明では、バリアの視差を4段階であるとした場合について説明したが、この発明は、バリアの視差が2乃至3段階の場合であっても、また、5段階以上の場合であっても適用することができる。
【0059】
さらに以上の説明では、表示領域において、バリア電極として第1のバリア電極と第2のバリア電極がペアで形成されている場合について説明した。しかし、本発明は、
図6に示すように、バリア電極が第1のバリア電極のみで形成されている場合についても適用することができる。