特許第6514971号(P6514971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514971
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】空転抑制装置及び空転抑制方法
(51)【国際特許分類】
   B61K 3/02 20060101AFI20190425BHJP
   B61F 19/10 20060101ALI20190425BHJP
   E01H 8/10 20060101ALI20190425BHJP
   B61C 15/10 20060101ALI20190425BHJP
   B60T 1/14 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B61K3/02
   B61F19/10
   E01H8/10
   B61C15/10
   B60T1/14
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-130182(P2015-130182)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-13562(P2017-13562A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】丸山 玲
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−017167(JP,A)
【文献】 特開2011−063175(JP,A)
【文献】 特開2009−040372(JP,A)
【文献】 特開平08−189018(JP,A)
【文献】 特開平11−036256(JP,A)
【文献】 特開2010−241312(JP,A)
【文献】 米国特許第03850691(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103625479(CN,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011115380(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0151460(US,A1)
【文献】 特開2012−121452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/14
B61C 15/10
B61C 15/08
B61F 19/10
B61F 19/06
B61K 3/02
B61K 3/00
E01H 8/10
E01H 8/00
B61H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保線車両に取り付けられる空転抑制装置であって、
前記保線車両の車輪よりも当該保線車両の進行方向前側に設けられ、レール上の落葉を除去する排障機構と、
前記車輪よりも前記保線車両の進行方向前側、且つ、前記排障機構よりも前記保線車両の進行方向後側に設けられ、液体を噴射してレールの頭頂面の樹脂を洗い流す液体噴射機構と、
前記車輪よりも前記保線車両の進行方向後側に設けられ、レールの頭頂面に増粘着剤を撒く増粘着剤撒き機構と、を備え、
前記増粘着剤撒き機構は、増粘着剤が貯留された貯留容器と、前記貯留容器に振動を付与する振動部とを有し、前記振動部により前記貯留容器内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くことを特徴とする空転抑制装置。
【請求項2】
前記増粘着剤撒き機構は、増粘着剤が吐出される増粘着剤ノズルを有し、
前記増粘着剤ノズルは、レールの頭頂面に対して斜め上方向から増粘着剤を吐出することを特徴とする請求項1に記載の空転抑制装置。
【請求項3】
前記増粘着剤撒き機構は、前記増粘着剤ノズルから吐出される増粘着剤の飛散を抑制する飛散抑制部を有し、
前記飛散抑制部は、レールの側方に配置されてレールの頭頂面から増粘着剤がこぼれ落ちるのを抑制することを特徴とする請求項2に記載の空転抑制装置。
【請求項4】
前記増粘着剤撒き機構は、前記貯留容器内部の増粘着剤を前記増粘着剤ノズル側に送り出す送出部を有し、
前記増粘着剤ノズルは、前記送出部の稼働により所定量ずつ送り出された増粘着剤を吐出することを特徴とする請求項2又は3に記載の空転抑制装置。
【請求項5】
前記排障機構は、レールの頭頂面に接触して、この頭頂面上の落葉を除去する接触板部を有し、
前記接触板部は、レールと交わるように配置されるとともに、レールよりも外側となる端部がレールよりも内側となる端部に対して前記保線車両の進行方向後側に、且つ、レールの頭頂面に接触する下端部が上端部に対して前記保線車両の進行方向後側に位置するように傾斜していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の空転抑制装置。
【請求項6】
前記液体噴射機構は、液体を噴射する液体ノズルを有し、
前記液体ノズルは、レールの頭頂面及び内側面に向けて液体を放射状に拡散させて噴射することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の空転抑制装置。
【請求項7】
鉄道車両の車輪の空転を抑制するための空転抑制方法であって、
レール上の落葉を排障機構により除去する落葉除去工程と、
前記落葉除去工程後に、液体噴射機構を用いて液体を噴射してレールの頭頂面の樹脂を洗い流す樹脂洗浄工程と、
前記樹脂洗浄工程後に、増粘着剤撒き機構を用いてレールの頭頂面に増粘着剤を撒く増粘着剤撒き工程と、
を行い、
前記増粘着剤撒き工程にて、前記増粘着剤撒き機構は、振動部により増粘着剤が貯留された貯留容器内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くことを特徴とする空転抑制方法。
【請求項8】
前記排障機構、前記液体噴射機構及び前記増粘着剤撒き機構は、保線車両に取り付けられ、
前記保線車両の走行中に、前記落葉除去工程、前記樹脂洗浄工程及び前記増粘着剤撒き工程が行われることを特徴とする請求項7に記載の空転抑制方法。
【請求項9】
前記保線車両が軌道を一方向に走行中に、前記落葉除去工程及び前記樹脂洗浄工程が行われ、
前記保線車両が軌道を一方向と反対の他方向に走行中に、前記増粘着剤撒き工程が行われることを特徴とする請求項8に記載の空転抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車輪の空転を抑制するための空転抑制装置及び空転抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レール上の落葉が鉄道車両の車輪で踏みつけられると、落葉の樹脂成分が車輪及びレールに付着して車輪の空転を生じさせ、ひいては輸送障害を引き起こす虞がある。
そこで、レール上の落葉を手作業で除去したり、レールの頭頂面に砂などの増粘着剤を撒き、レールに対する車輪の粘着力を向上させる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−65065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レール上の落葉の除去作業は、始発前の限られた時間内に行わなければならない。また、一般的に、落葉がレールに付着し易い箇所は山間線区が多くなっている。このため、勾配の大きい山間線区での落葉の除去作業を効率良く行うためには、手作業では限界がある。
また、保線車両を用いてレールの頭頂面に砂を撒く場合、当該保線車両の車輪に対しての砂を吐出するノズルの配置によっては、レールの頭頂面に撒かれた砂が当該保線車両自身の車輪により踏まれてしまうといった問題も生じてしまう。さらに、湿気等により増粘着剤が貯留容器内で固まってしまうと、レールの頭頂面に増粘着剤を適正に撒くことができないといった問題も生じる。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、落葉が付着したレールの清掃及びレールに対する車輪の粘着力の向上を効率良く行うことができ、これにより、鉄道車両の車輪の空転を適正に抑制することができる空転抑制装置及び空転抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
保線車両に取り付けられる空転抑制装置であって、
前記保線車両の車輪よりも当該保線車両の進行方向前側に設けられ、レール上の落葉を除去する排障機構と、
前記車輪よりも前記保線車両の進行方向前側、且つ、前記排障機構よりも前記保線車両の進行方向後側に設けられ、液体を噴射してレールの頭頂面の樹脂を洗い流す液体噴射機構と、
前記車輪よりも前記保線車両の進行方向後側に設けられ、レールの頭頂面に増粘着剤を撒く増粘着剤撒き機構と、を備え、
前記増粘着剤撒き機構は、増粘着剤が貯留された貯留容器と、前記貯留容器に振動を付与する振動部とを有し、前記振動部により前記貯留容器内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くようにした。
【0007】
かかる構成の空転抑制装置によれば、レール上の落葉を除去してからレールに付着した落葉の樹脂を洗浄することができ、その後、レールの頭頂面に増粘着剤を撒くことでレールに対する鉄道車両の車輪の粘着力を向上させることができる。このとき、貯留容器内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くので、貯留容器内部の増粘着剤が固まってしまうことを抑制することができる。特に、例えば、液体を噴射する液体噴射機構から生じた湿気が貯留容器内部で結露して増粘着剤が固化してしまうことを適正に抑制することができ、増粘着剤を安定して撒くことができる。
したがって、落葉が付着したレールの清掃及びレールに対する車輪の粘着力の向上を効率良く行うことができ、これにより、鉄道車両の車輪の空転を適正に抑制することができる。
【0008】
また、好ましくは、前記増粘着剤撒き機構は、増粘着剤が吐出される増粘着剤ノズルを有し、
前記増粘着剤ノズルは、レールの頭頂面に対して斜め上方向から増粘着剤を吐出するようにした。
このようにすることで、増粘着剤ノズルからレールの頭頂面に吐出された増粘着剤がレールの頭頂面から当該レールの内側や外側にこぼれ落ちることを抑制することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記増粘着剤撒き機構は、前記増粘着剤ノズルから吐出される増粘着剤の飛散を抑制する飛散抑制部を有し、
前記飛散抑制部は、レールの側方に配置されてレールの頭頂面から増粘着剤がこぼれ落ちるのを抑制するようにした。
このようにすることで、飛散抑制部を用いてレールの頭頂面の増粘着剤がレールの内側や外側にこぼれ落ちることを適正に抑制することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記増粘着剤撒き機構は、前記貯留容器内部の増粘着剤を前記増粘着剤ノズル側に送り出す送出部を有し、
前記増粘着剤ノズルは、前記送出部の稼働により所定量ずつ送り出された増粘着剤を吐出するようにした。
このようにすることで、増粘着剤ノズルから増粘着剤を所定量ずつ吐出して、レールの頭頂面に増粘着剤を均等に撒くことができる。
【0011】
また、好ましくは、前記排障機構は、レールの頭頂面に接触して、この頭頂面上の落葉を除去する接触板部を有し、
前記接触板部は、レールと交わるように配置されるとともに、レールよりも外側となる端部がレールよりも内側となる端部に対して前記保線車両の進行方向後側に、且つ、レールの頭頂面に接触する下端部が上端部に対して前記保線車両の進行方向後側に位置するように傾斜しているようにした。
このようにすることで、レール上の落葉は接触板部によりレールの外側に落とされることとなり、レール上の落葉の除去を適正に行うことができる。
【0012】
また、好ましくは、前記液体噴射機構は、液体を噴射する液体ノズルを有し、
前記液体ノズルは、レールの頭頂面及び内側面に向けて液体を放射状に拡散させて噴射するようにした。
このようにすることで、鉄道車両の車輪が接触するレールの頭頂面及び内側面に付着した落葉の樹脂を適正に洗い流すことができる。
【0013】
また、この発明は、
鉄道車両の車輪の空転を抑制するための空転抑制方法であって、
レール上の落葉を排障機構により除去する落葉除去工程と、
前記落葉除去工程後に、液体噴射機構を用いて液体を噴射してレールの頭頂面の樹脂を洗い流す樹脂洗浄工程と、
前記樹脂洗浄工程後に、増粘着剤撒き機構を用いてレールの頭頂面に増粘着剤を撒く増粘着剤撒き工程と、
を行い、
前記増粘着剤撒き工程にて、前記増粘着剤撒き機構は、振動部により増粘着剤が貯留された貯留容器内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くようにした。
【0014】
かかる構成の空転抑制方法によれば、レール上の落葉を除去してからレールに付着した落葉の樹脂を洗浄することができ、その後、レールの頭頂面に増粘着剤を撒くことでレールに対する鉄道車両の車輪の粘着力を向上させることができる。このとき、貯留容器内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くので、貯留容器内部の増粘着剤が固まってしまうことを抑制することができる。特に、例えば、液体を噴射する液体噴射機構から生じた湿気が貯留容器内部で結露して増粘着剤が固化してしまうことを適正に抑制することができ、増粘着剤を安定して撒くことができる。
したがって、落葉が付着したレールの清掃及びレールに対する車輪の粘着力の向上を効率良く行うことができ、これにより、鉄道車両の車輪の空転を適正に抑制することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記排障機構、前記液体噴射機構及び前記増粘着剤撒き機構は、保線車両に取り付けられ、
前記保線車両の走行中に、前記落葉除去工程、前記樹脂洗浄工程及び前記増粘着剤撒き工程が行われるようにした。
このようにすることで、保線車両の走行中に、レール上の落葉の除去、レールに付着した落葉の樹脂の洗浄、レールの頭頂面に増粘着剤を撒くことを効率良く行うことができる。
【0016】
また、好ましくは、前記保線車両が軌道を一方向に走行中に、前記落葉除去工程及び前記樹脂洗浄工程が行われ、
前記保線車両が軌道を一方向と反対の他方向に走行中に、前記増粘着剤撒き工程が行われるようにした。
このようにすることで、保線車両の軌道の往復走行における往路と復路とに、落葉除去工程及び樹脂洗浄工程と増粘着剤撒き工程とを分けて効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、落葉が付着したレールの清掃及びレールに対する車輪の粘着力の向上を効率良く行うことができ、これにより、鉄道車両の車輪の空転を適正に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の空転抑制装置が搭載された投排雪保守用車を模式的に示す側面図である。
図2図1の空転抑制装置の排障機構を説明するための図である。
図3図1の空転抑制装置の液体噴射機構を説明するための図である。
図4図1の空転抑制装置の増粘着剤撒き機構の貯留容器、振動部及び送出部を説明するための図である。
図5図4の送出部の計量シャフトを説明するための図である。
図6図1の空転抑制装置の増粘着剤撒き機構の増粘着剤ノズル及び飛散抑制部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る空転抑制装置100の実施形態について詳細に説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
図1は、空転抑制装置100が搭載された投排雪保守用車200を模式的に示す側面図である。
本実施形態の空転抑制装置100は、例えば、電車や気動車等の鉄道車両(図示略)の車輪の空転を抑制するための空転抑制方法を実現するために用いられる。
図1に示すように、空転抑制装置100は、投排雪保守用車(保線車両)200の前後方向(図1における左右方向)の両端にそれぞれ搭載され、具体的には、レールR上の落葉を除去する排障機構1と、液体(例えば、水等)を噴射してレールRの頭頂面の樹脂を洗い流す液体噴射機構2と、レールRの頭頂面に増粘着剤(例えば、焼砂等)を撒く増粘着剤撒き機構3とを備えている。
なお、以下の説明では、投排雪保守用車200の進行方向を前後方向とし、二本のレールR、Rの並び方向を左右方向とし、前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向とする。
【0021】
先ず、投排雪保守用車200について説明する。
図1に示す投排雪保守用車200は、例えば、車両本体210の当該投排雪保守用車200の進行方向前側及び後側に、ラッセル装置及びロータリー装置の両方が装備された併用翼部220をそれぞれ備えている。すなわち、併用翼部220、220は、車両本体210の車輪よりも当該投排雪保守用車200の進行方向前側及び後側に設けられている。
そして、例えば、投排雪保守用車200が一方向(例えば、図1における左方向等)を進行方向として軌道を走行する場合には、この走行時に進行方向前側となる一端側(例えば、左側等)の併用翼部220を用いて保線作業が行われる一方で、他方向(例えば、図1における右方向等)を進行方向として軌道を走行する場合には、この走行時に進行方向前側となる他端側(例えば、右側等)の併用翼部220を用いて保線作業が行われる。
【0022】
併用翼部220の各々には、排障機構1及び液体噴射機構2がそれぞれ搭載され、また、車両本体210の各併用翼部220側の端部(例えば、図1における左右両端部)に増粘着剤撒き機構3がそれぞれ搭載されている。
【0023】
なお、投排雪保守用車200は、本実施形態の空転抑制装置100を搭載している以外の点で公知のものと同様であり、当該投排雪保守用車200の詳細な構成についての説明は省略する。
また、保線車両として、投排雪保守用車200を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、投排雪保守用車200以外の保線車両であっても良い。
【0024】
次に、排障機構1について図2(a)及び図2(b)を参照して説明する。
図2(a)は、排障機構1を側方から視て示した図であり、図2(b)は、排障機構1を上方から視て示した図である。
【0025】
排障機構1は、投排雪保守用車200の進行方向前側及び後側に位置する二つの併用翼部220、220の各々の前後方向の略中央部にそれぞれ配設されている(図1参照)。
すなわち、各排障機構1は、投排雪保守用車200の車輪よりも当該投排雪保守用車200の進行方向前側に設けられている。例えば、投排雪保守用車200が軌道を一方向(例えば、図1における左方向等)に走行する場合には、この走行時に進行方向前側となる一端側(例えば、左側等)の排障機構1を用いてレールR上の落葉を除去する作業(落葉除去工程)が行われる。一方、投排雪保守用車200が軌道を他方向(例えば、図1における右方向等)に走行する場合には、この走行時に進行方向前側となる他端側(例えば、右側等)の排障機構1を用いてレールR上の落葉を除去する作業が行われる。
【0026】
また、図2(a)及び図2(b)に示すように、排障機構1は、レールRの頭頂面に接触して、この頭頂面上の落葉を除去する接触板部11を有している。この接触板部11は、二本のレールR、Rの各々に対応するように左右方向に所定間隔を空けて配設されている。
【0027】
また、接触板11は、例えば、全域に亘って略等しい厚さを有し、外形が略矩形状に形成された板状の部材である。この接触板11は、例えば、レールRとの間に落葉を巻き込み難くするように硬質のウレタンからなる部材であるが、一例であってこれに限られるものではなく、当該接触板11の材料は適宜任意に変更可能である。
【0028】
また、接触板11は、レールRと交わるように配置される。この接触板11のレールRと交わる方向の幅は、例えば、急曲線区間であっても当該接触板11がレールRの頭頂面から外れてレールRとの接触が解除されない程度の幅(例えば、500mm等)を有している。
また、接触板11は、レールRよりも外側に位置する外側端部11oがレールRよりも内側に位置する内側端部11iに対して投排雪保守用車200の進行方向後側に位置するように傾斜して配置されている(図2(b)参照)。さらに、接触板11は、レールRの頭頂面に接触する下端部11bが上端部11uに対して投排雪保守用車200の進行方向後側に位置するように傾斜して配置されている(図2(a)参照)。
これにより、投排雪保守用車200がレールR上を一方向に走行すると、排障機構1の接触板11がレールRの頭頂面を摺動し、レールR上の落葉をかき集めたりレールRの頭頂面に付着している落葉を削りとったりする。そして、レールR上の落葉は、傾斜している接触板11に沿って移動してレールRの外側に落とされ、除去される。
【0029】
なお、図示は省略するが、接触板部11は上下動可能となっており、例えば、レールR上の落葉を除去する作業(落葉除去工程)や後述するレールRの頭頂面の樹脂を洗い流す作業(樹脂洗浄工程)の終了後、増粘着剤を撒く作業の際にはレールRとの接触が解除されるように、当該接触板11は上側に退避される。
【0030】
次に、液体噴射機構2について図3を参照して説明する。
図3は、液体噴射機構2の液体ノズル21を斜め上方から視て示した図である。
【0031】
液体噴射機構2は、投排雪保守用車200の進行方向前側及び後側に位置する二つの併用翼部220、220の各々の基端部側(車両本体210側)にそれぞれ配設されている。
すなわち、各液体噴射機構2は、投排雪保守用車200の車輪よりも当該投排雪保守用車200の進行方向前側、且つ、排障機構1よりも投排雪保守用車200の進行方向後側に設けられている。そして、各液体噴射機構2は、落葉除去工程にて排障機構1により落葉が除去されたレールRに液体を噴射してレールRの頭頂面の樹脂を洗い流す作業(樹脂洗浄工程)を行う。
例えば、投排雪保守用車200が軌道を一方向(例えば、図1における左方向等)に走行する場合には、この走行時に進行方向前側となる一端側(例えば、左側等)の液体噴射機構2を用いて、落葉除去工程により落葉が除去されたレールRの頭頂面の樹脂を洗い流す作業が行われる。一方、投排雪保守用車200が軌道を他方向(例えば、図1における右方向等)に走行する場合には、この走行時に進行方向前側となる他端側(例えば、右側等)の液体噴射機構2を用いて、落葉除去工程により落葉が除去されたレールRの頭頂面の樹脂を洗い流す作業が行われる。
【0032】
また、液体噴射機構2は、図3に示すように、液体(例えば、水等)を放射状に拡散させて噴射する液体ノズル21を有している。
液体ノズル21は、二本のレールR、Rの各々に対応するように左右方向に所定間隔を空けて配設されている。
ここで、液体ノズル21の配置は、例えば、液体を拡散させる角度やレールRとの距離等に応じて調整されるようになっているが、一例であってこれに限られるものではなく、液体ノズル21の配置を固定した上で、液体を拡散させる角度を調整するようにしても良い。
【0033】
そして、ポンプ(図示略)が稼働することにより、所定位置(例えば、併用翼部220の基端部等)に配設されている液体タンク(図示略)に貯留されている液体をパイプ22を介して液体ノズル21に供給する。液体ノズル21は、投排雪保守用車200や鉄道車両の車輪が接触するレールRの頭頂面及び内側面に向けて所定の圧力で液体を放射状に拡散させて噴射する。これにより、レールRの頭頂面に付着している落葉の樹脂を洗い流したり、排障機構1の接触板11により除去されずに残っているレールR上の落葉をレールRの外側にはじき飛ばしたりする。
ここで、液体としては、水が挙げられるが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、所定の濃度で洗浄作用を有する成分が溶解した溶液等であっても良い。また、液体を噴射する圧力は、例えば、レールRに付着した落葉の樹脂の付着度合や当該樹脂洗浄工程を行う頻度等を考慮して適宜任意に変更可能である。
【0034】
なお、図示は省略するが、液体噴射機構2は、噴射される液体を所定の温度で保温するための保温手段(例えば、ヒーター等)を具備していても良い。
【0035】
次に、増粘着剤撒き機構3について図4図6を参照して説明する。
図4は、増粘着剤撒き機構3の貯留容器31、振動部32及び送出部33を前後方向に視て模式的に示す図である。また、図5は、送出部33の計量シャフト331を示す斜視図である。また、図6は、増粘着剤撒き機構3の増粘着剤ノズル34及び飛散抑制部35を側方から視て示す図である。
【0036】
増粘着剤撒き機構3は、車両本体210の投排雪保守用車200の進行方向前側及び後側の車輪よりも併用翼部220側にそれぞれ配設されている。すなわち、増粘着剤撒き機構3は、車両本体210の車輪よりも投排雪保守用車200の進行方向後側に設けられ、樹脂洗浄工程にて液体噴射機構2により落葉の樹脂が洗い流されたレールRの頭頂面に増粘着剤を撒く作業(増粘着剤撒き工程)を行う。
具体的には、例えば、投排雪保守用車200が軌道を一方向(例えば、図1における左方向等)に走行する際に落葉除去工程及び樹脂洗浄工程を行い、折り返して同一の軌道を他方向(例えば、図1における右方向等)に走行する際に増粘着剤撒き工程を行う場合には、この他方向への走行時に進行方向後側となる一端側(例えば、左側等)の増粘着剤撒き機構3を用いて、樹脂洗浄工程により落葉の樹脂が洗い流されたレールRの頭頂面に増粘着剤を撒く作業が行われる。
一方、例えば、投排雪保守用車200が軌道を一方向(例えば、図1における左方向等)に走行する際に落葉除去工程及び樹脂洗浄工程に加えて増粘着剤撒き工程を行う場合には、この一方向への走行時に進行方向後側となる他端側(例えば、右側等)の増粘着剤撒き機構3を用いて、樹脂洗浄工程により落葉の樹脂が洗い流されたレールRの頭頂面に増粘着剤を撒く作業が行われる。
【0037】
また、増粘着剤撒き機構3は、図4図6に示すように、増粘着剤が貯留された貯留容器31と、貯留容器31に振動を付与する振動部32と、貯留容器31内の増粘着剤を所定量ずつ送り出す送出部33と、送出部33の稼働により所定量ずつ送り出された増粘着剤(例えば、焼砂等)を吐出する増粘着剤ノズル34と、増粘着剤ノズル34から吐出される増粘着剤の飛散を抑制する飛散抑制部35とを備えている。
【0038】
貯留容器31、送出部33、増粘着剤ノズル34及び飛散抑制部35は、二本のレールR、Rの各々に対応させるように二つずつ設けられている。
二つの貯留容器31、31は、車両本体210の所定位置(例えば、運転室の床下部等)に左右方向に所定間隔を空けて配設されている。また、各貯留容器31は、例えば、上端及び下端が開口するとともに上端に対して下端の開口面積が小さくされた略漏斗状に形成されている。
また、図4に示すように、各貯留容器31の外面には、貯留容器31を振動させるための振動部32が接続されている。
【0039】
振動部32は、振動を発生する振動モータ321と、この振動モータ321により発生された振動を二つの貯留容器31、31に伝達する伝達フレーム322とを具備している。
振動モータ321は、二つの貯留容器31、31どうしの間に配設されている。伝達フレーム322は、左右方向に長尺な部材であり、その略中央部に振動モータ321が取付け固定されているとともに、左右両端側が各貯留容器31の外面に締結されている。
これにより、振動モータ321の駆動により発生した振動が伝達フレーム322を介して二つの貯留容器31、31に伝達されるようになっている。
【0040】
また、各貯留容器31の下側には、送出部33がそれぞれ設けられている。具体的には、例えば、各貯留容器31の下端部にはパイプ36が接続され、このパイプ36との継ぎ目部分に、送出部33が設けられている。
二つの送出部33、33は、二つの貯留容器31、31の各々の位置に対応させるように左右方向に所定間隔を空けて配設されている。また、各送出部33は、増粘着剤を計量するための計量シャフト331と、この計量シャフト331を長手方向の軸周り回転させる回転モータ332とを具備している。
【0041】
計量シャフト331は、図5に示すように、左右方向に長尺に形成された軸部331aを有している。
軸部331aは、例えば、円柱状の金属(例えば、ステンレス等)を成形してなり、一端部に回転モータ332が接続される接続部331bが設けられている。また、軸部331aの長手方向の略中央部が他の部分に対して小径となるように成形され、この小径軸部分331cに複数の板状部331d、…が接続固定されている。
【0042】
板状部331dは、例えば、左右方向に長尺で略等しい厚さを有する樹脂製の部材である。また、複数の板状部331d、…は、小径軸部分331cに放射状に配置されている。具体的には、複数の板状部331d、…は、各板状部331dの短辺が小径軸部分331cの径方向に延在し、且つ、小径軸部分331cの周方向に所定間隔(例えば、90°等)を空けて配置されている。これにより、複数の板状部331d、…のうち、隣り合う二つの板状部331d、331dにより仕切られた溝部331eが形成され、この溝部331eにより増粘着剤が所定量ずつ計量される。
すなわち、回転モータ332の駆動により計量シャフト331が回転すると、貯留容器31内から自由落下された増粘着剤が、計量シャフト331の貯留容器31の下端開口と対向する溝部331eにより所定量ずつ計量される。そして、所定量の増粘着剤を計量した溝部331eをさらに所定の角度(例えば、180°)回転させるように計量シャフト331が回転することで、溝部331e内の所定量の増粘着剤が増粘着剤ノズル34と接続されたパイプ36側に自由落下により送り出される。このとき、樹脂製の板状部331dは、可撓性を有するので、計量シャフト331と貯留容器31との間の部分に存する増粘着剤が詰まってしまい当該計量シャフト331の回転停止等が生じることを抑制することができる。
ここで、増粘着剤としては、焼砂が挙げられるが、一例であってこれに限られるものではなく、レールRと車輪との間に介在してレールRに対する車輪の粘着力を向上させるための粉状物や粒状物等であれば如何なるものであっても良い。
【0043】
なお、計量シャフト331の寸法は、略直上に配置される貯留容器31の下端開口の寸法に対応している。
例えば、小径軸部分331c及び板状部331dの左右方向の長さは、貯留容器31の下端開口の左右方向の長さと等しいか、或いは、その長さよりも長くなっている。また、計量シャフト331の小径軸部分331c及び板状部331dの部分の前後方向の長さは、貯留容器31の下端開口の前後方向の長さと等しいか、或いは、その長さよりも長くなっている。
【0044】
増粘着剤ノズル34は、二本のレールR、Rの各々に対応するように左右方向に所定間隔を空けて配設されている。
各増粘着剤ノズル34は、各レールRの頭頂面の略直上に配置され、レールRの頭頂面に対して斜め上方向から増粘着剤を吐出するように傾斜している。具体的には、増粘着剤ノズル34は、送出部33側となる上端部に対して吐出口を形成する下端部が投排雪保守用車200の進行方向後側に位置するように傾斜して配置されている(図6参照)。
これにより、送出部33からパイプ36を介して送り出された増粘着剤が増粘着剤ノズル34の下端部からレールRの頭頂面に対して斜め上方向から吐出されて、レールRの頭頂面に撒かれる。
【0045】
飛散抑制部35は、二本のレールR、Rの各々に対応する二つの増粘着剤ノズル34、34に対応させて配設されている。具体的には、各飛散抑制部35は、増粘着剤ノズル34よりも投排雪保守用車200の進行方向後側に位置するように配設されている。
また、飛散抑制部35は、例えば、レールRの内側及び外側の各々に配置されるゴム製の内側板部351及び外側板部352を有している。内側板部351及び外側板部352は、レールRの頭頂面の左右方向の幅に対応させて所定間隔を空けて配置されている。具体的には、内側板部351のレールR側の面がレールRの頭部の内側面に接触するとともに、外側板部352のレールR側の面がレールRの頭部の外側面に接触する程度の間隔となっている。
つまり、増粘着剤ノズル34から増粘着剤が吐出される際に、レールRの頭部の内側及び外側には飛散抑制部35の内側板部351及び外側板部352が配置されることで、レールRの頭頂面に撒かれた増粘着剤が内側及び外側にこぼれ落ちるのを抑制することができる。
【0046】
なお、図示は省略するが、飛散抑制部35は上下動可能となっており、例えば、レールR上の落葉を除去する作業(落葉除去工程)やレールRの頭頂面の樹脂を洗い流す作業(樹脂洗浄工程)の際には、内側板部351及び外側板部352がレールRと接触しないように、当該飛散抑制部35は上側に退避される。
【0047】
また、図示は省略するが、空転抑制装置100は、上記した接触板部11の上下動、液体噴射機構2のポンプの稼働、振動モータ321や回転モータ332の駆動、飛散抑制部35の上下動等を制御するコントロールボックスを備えていても良い。なお、これらの電気的に制御される構成については、例えば、投排雪保守用車200自身の制御手段(図示略)により統合して制御されても良い。
【0048】
次に、本発明に係る空転抑制装置100を用いた空転抑制方法について説明する。
本発明に係る空転抑制方法では、排障機構1を用いてレールR上の落葉を除去する落葉除去工程と、この落葉除去工程後に、液体噴射機構2を用いて液体(例えば、水等)を噴射してレールRの頭頂面の樹脂を洗い流す樹脂洗浄工程と、この樹脂洗浄工程後に、増粘着剤撒き機構3を用いてレールRの頭頂面に増粘着剤(例えば、焼砂等)を撒く増粘着剤撒き工程とが行われる。
【0049】
また、落葉除去工程、樹脂洗浄工程及び増粘着剤撒き工程は、投排雪保守用車100の走行中に行われるようになっている。具体的には、投排雪保守用車200が軌道を一方向(例えば、図1における左方向等)に走行中に、落葉除去工程及び樹脂洗浄工程を行い、折り返して同一の軌道を他方向(例えば、図1における右方向等)に走行中に、増粘着剤撒き工程を行う。つまり、投排雪保守用車100の前後方向の一端側(例えば、左側等)に搭載された空転抑制装置100が用いられ、投排雪保守用車200の保守対象となる軌道の往復走行における、その往路にて落葉除去工程及び樹脂洗浄工程を行い、復路にて増粘着剤撒き工程を行う。
【0050】
例えば、投排雪保守用車100の保守対象の軌道の往路にて落葉除去工程及び樹脂洗浄工程を行う場合、増粘着剤撒き機構3の飛散抑制部35がレールRと接触しないように上側に退避させた状態とする。
投排雪保守用車200の一方向への走行が開始されると、先ず、排障機構1の接触板11がレールRの頭頂面を摺動してレールR上の落葉を除去していく(落葉除去工程)。そして、液体噴射機構2の液体ノズル21からレールRの頭頂面及び内側面に向けて所定の圧力で液体を噴射して、レールRの頭頂面に付着している落葉の樹脂を洗い流していく(樹脂洗浄工程)。
この落葉除去工程及び樹脂洗浄工程は、投排雪保守用車200が保守対象の軌道を一方向に走行中に継続して行われる。そして、投排雪保守用車200が保守対象となる軌道の終点まで走行すると、液体ノズル21からの液体の噴射を停止する。
【0051】
投排雪保守用車100が折り返して保守対象の軌道の復路にて増粘着剤撒き工程を行う場合、排障機構1の接触板11がレールRと接触しないように上側に退避させた状態とする。また、増粘着剤撒き機構3の振動部32の振動モータ321を駆動して伝達フレーム322を介して貯留容器31を振動させた状態とする。
投排雪保守用車200の他方向への走行が開始されると、増粘着剤撒き機構3の送出部33の回転モータ332を駆動して計量シャフト331を所定の速度で回転させることで、貯留容器31内の増粘着剤を所定量ずつ増粘着剤ノズル34側へと送り出し、増粘着剤ノズル34からレールRの頭頂面に対して増粘着剤を吐出していく(増粘着剤撒き工程)。このとき、振動部32から貯留容器31に振動が付与されているので、貯留容器31内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くことができる。また、増粘着剤ノズル34よりも投排雪保守用車200の進行方向後側に配置された飛散抑制部35によって、増粘着剤がレールRの頭頂面から当該レールRの内側及び外側にこぼれ落ちるのが抑制される。
この増粘着剤撒き工程は、投排雪保守用車200が保守対象の軌道を他方向に走行中に継続して行われる。そして、投排雪保守用車200が保守対象となる軌道の終点まで走行すると、増粘着剤ノズル34からの増粘着剤の吐出を停止する。
【0052】
以上のように、本実施形態の空転抑制装置100によれば、レールR上の落葉を除去してからレールRに付着した落葉の樹脂を洗浄することができ、その後、レールRの頭頂面に増粘着剤を撒くことでレールRに対する鉄道車両の車輪の粘着力を向上させることができる。このとき、貯留容器31内部の増粘着剤が固まらないように振動させながら増粘着剤を撒くので、貯留容器31内部の増粘着剤が固まってしまうことを抑制することができる。特に、例えば、液体を噴射する液体噴射機構2から生じた湿気が貯留容器31内部で結露して増粘着剤が固化してしまうことを適正に抑制することができ、増粘着剤ノズル34から増粘着剤を安定して吐出することができる。
したがって、落葉が付着したレールRの清掃及びレールRに対する車輪の粘着力の向上を効率良く行うことができ、これにより、鉄道車両の車輪の空転を適正に抑制することができる。
【0053】
また、増粘着剤ノズル34は、レールRの頭頂面に対して斜め上方向から増粘着剤を吐出するので、増粘着剤ノズル34からレールRの頭頂面に吐出された増粘着剤がレールRの頭頂面から当該レールRの内側や外側にこぼれ落ちることを抑制することができる。
さらに、レールRの側方に配置された飛散抑制部35を用いてレールRの頭頂面の増粘着剤がレールRの内側や外側にこぼれ落ちることを適正に抑制することができる。
【0054】
また、増粘着剤撒き機構3は、貯留容器31内の増粘着剤を増粘着剤ノズル34側に送り出す送出部33を有しているので、増粘着剤ノズル34は送出部33の稼働により所定量ずつ送り出された増粘着剤を吐出することができ、レールRの頭頂面に増粘着剤を均等に撒くことができる。
【0055】
また、レールRの頭頂面に接触して、この頭頂面上の落葉を除去する接触板部11は、レールRと交わるように配置されるとともに、レールRよりも外側となる外側端部11oがレールRよりも内側となる内側端部11iに対して投排雪保守用車200の進行方向後側に、且つ、レールRの頭頂面に接触する下端部11bが上端部11uに対して投排雪保守用車200の進行方向後側に位置するように傾斜しているので、レールR上の落葉は接触板部11によりレールRの外側に落とされることとなり、レールR上の落葉の除去を適正に行うことができる。
【0056】
また、液体ノズル21はレールRの頭頂面及び内側面に向けて液体を放射状に拡散させて噴射するので、鉄道車両の車輪が接触するレールRの頭頂面及び内側面に付着した落葉の樹脂を適正に洗い流すことができる。
【0057】
また、投排雪保守用車200の走行中に、落葉除去工程、樹脂洗浄工程及び増粘着剤撒き工程が行われるので、投排雪保守用車200の走行中に、レールR上の落葉の除去、レールRに付着した落葉の樹脂の洗浄、レールRの頭頂面に増粘着剤を撒くことを効率良く行うことができる。特に、投排雪保守用車200の軌道の往復走行における往路と復路とに、落葉除去工程及び樹脂洗浄工程と増粘着剤撒き工程とを分けて効率良く行うことができる。
【0058】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、図示は省略するが、増粘着剤撒き機構3の貯留容器31等に湿気が侵入することを抑制するために、貯留容器31や送出部33を被覆部材(例えば、防水シート等)で被覆するようにしても良い。
【符号の説明】
【0059】
100 空転抑制装置
1 排障機構
11 接触板部
2 液体噴射機構
21 液体ノズル
3 増粘着剤撒き機構
31 貯留容器
32 振動部
33 送出部
34 増粘着剤ノズル
35 飛散抑制部
200 投排雪保守用車
R レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6