(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスを供給するバーナ本体と、前記バーナ本体上に載置されるバーナヘッドとを備え、複数の五徳爪を有する五徳を備えるガスコンロに設置された状態で、前記五徳の下方において前記五徳に周囲を囲まれるように配置されるガスバーナにおいて、
前記バーナヘッドは、
前記バーナヘッドの下面の外周部から下方に延びる筒状壁と、
前記筒状壁において周方向に複数設けられ、前記筒状壁の径方向内側から外側に向かって開口し、前記バーナ本体から供給されたガスを燃焼させることによって火炎が形成される主炎口と、
前記筒状壁における前記五徳爪に対応する所定部位に設けられ、隣り合う二つの前記主炎口間において火移りを生じさせる火移り部と、
前記火移り部に対して、前記径方向内側に離間する位置に設けられ、前記火移り部において前記周方向に並んで設けられた複数の保炎口と対向し、前記筒状壁の径方向に直交する方向に延びる一対の壁部と、
前記一対の壁部間に設けられ、前記径方向内側から外側に向かって流れるガスの一部を前記火移り部側に流入させる溝部と、
前記溝部と、前記複数の保炎口のうち前記溝部と対向する前記保炎口との間に設けられ、前記バーナヘッドの前記下面から下方に突出する突起部と
を備えたこと
を特徴とするガスバーナ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示す本実施形態のガスバーナ1は、コンロ用であって、例えばキッチン台等に組み込まれるビルトインコンロや、テーブル等に載置されるテーブルコンロ等のガスバーナとして使用される。
【0014】
図1を参照し、ガスバーナ1の構造について簡単に説明する。ガスバーナ1は、図示しないコンロの天板に形成されたバーナ開口から上方に露出した状態で、コンロの筐体内に設置される。天板上には、バーナ開口から露出した部分を囲むように五徳が載置される。これにより、ガスバーナ1に形成される火炎によって、五徳上に載置された鍋等の調理容器が加熱される。
【0015】
ガスバーナ1は、バーナ本体2、バーナヘッド3、バーナカバー4等を備える。バーナ本体2には、ガス供給管(図示略)が接続されている。バーナ本体2の内側には、混合室(図示略)が形成されている。ガス供給管は混合室と連通する。ガス供給管のバーナ本体2と接続する一端部とは反対側の他端部には、ガス供給管内に向けてガスを吐出するノズル(図示略)が設けられている。ノズルからガス供給管内に向けてガスが吐出されると、ガスと共にノズルの周囲空気が一次空気としてガス供給管内に吸引される。ガス及び一次空気は、ガス供給管部を介して混合室に供給され、混合室内で混合される。これにより、バーナ本体2では、ガスと一次空気を混合した混合ガスが生成される。
【0016】
ガスバーナ1の火力調節は、ノズルにガスを供給する供給路に設けた火力調節装置(図示略)を操作することにより調節される。バーナヘッド3は、バーナ本体2の上部に載置され、バーナ本体2との間に、後述する複数の炎口(主炎口、保炎口等)を形成する。バーナカバー4は、バーナヘッド3の上部に固定され、煮こぼれ汁等がバーナヘッド3の内周空間を通してコンロの筐体内に落下するのを防止する。
【0017】
図1〜
図5を参照し、バーナヘッド3の構造について説明する。
図1に示すように、バーナヘッド3は、上板11と筒部12を備える。上板11は平面視略円環状に形成され、バーナ本体2内の混合室の上部開口を閉塞する。筒部12は略円筒状に形成され、上板11の内周縁部から下方に向かって延びる。バーナヘッド3がバーナ本体2の上部に載置された状態では、上板11はバーナ本体2の上部に載置され、筒部12はバーナ本体2の内側に挿入される。筒部12の中央には、二次空気通路が形成される。
【0018】
図1〜
図3に示すように、上板11の下面における外周縁部には、下方に突出する筒状壁15が設けられている。その筒状壁を除く上板11の下面には、複数のガス供給溝50が上板11の中心部を基準とする放射状に形成されている。上板11は、径方向内側から外側にかけて斜め上方にやや傾斜している。それ故、バーナ本体2の混合室で生成された混合ガス(以下、単にガスと呼ぶ)は、複数のガス供給溝50に沿って径方向外側に流れ、筒状壁15に導かれる。なお、ガスの大部分は、複数のガス供給溝50に沿って径方向外側に流れるが、ガス供給溝50を越えて他のガス供給溝50に流れるものや、複数のガス供給溝50を縦断しながら径方向外側に流れるものもある。筒状壁15は、バーナ本体2の上部の座面2A(
図1参照)に着座される。筒状壁15の下面は、バーナ本体2の座面2Aと同様に、径方向外側に向って上方に傾斜するテーパ状に形成されている。
【0019】
図2,
図3に示すように、筒状壁15の下面には、6つの火移り部71〜76が、筒状壁15の中心部を基準として周方向に60°ピッチ毎に夫々設けられている。火移り部71〜76は、ガスバーナ1がコンロに設置されたときの五徳に設けられた6本の五徳爪(図示略)に夫々対応する所定部位である。これら火移り部71〜76の夫々には、周方向に隣接して並ぶ三つの浅凹溝が垂直に設けられ、それら三つの浅凹溝とバーナ本体2の座面2Aとによって、三つの五徳爪用保炎口23A,23B,23Cが周方向に並んで形成される。五徳爪用保炎口23Bが中央に配置され、その両側を周方向から挟み込むように、五徳爪用保炎口23A,23Cが夫々配置される。これら五徳爪用保炎口23A〜23Cから夫々噴出するガスが燃焼されることによって、3つの保炎が周方向に並んで形成される。
【0020】
また、筒状壁15の下面において、火移り部71〜76を除く各領域には、周方向に等間隔に並ぶ多数の深凹溝が垂直に設けられている。これら多数の深凹溝とバーナ本体2の座面2Aとによって、多数の主炎口21が形成される。主炎口21は、スリット状に上下方向に長く形成され、且つ径方向外側に向かって斜め上方に傾斜している。この主炎口21から噴出するガスが燃焼することによって主炎が形成される。さらに、周方向に並ぶ多数の深凹溝同士の間には、浅凹溝が垂直に設けられている。これら多数の浅凹溝とバーナ本体2の座面2Aとによって、多数の保炎口22が形成される。この保炎口22から噴出するガスが燃焼することによって保炎が形成される。また、火移り部74には、位置決め用の突起16が垂直に設けられている。突起16は、バーナ本体2の座面2Aに設けられた位置決め用の穴(図示略)に上方から嵌合させる。
【0021】
上記のように、筒状壁15の下面をバーナ本体2の座面2A上に着座させることで、筒状壁15の外周面には、上下方向に長い多数の主炎口21と、上下方向に短い多数の保炎口22とが形成され、火移り部71〜76の夫々には、三つの五徳爪用保炎口23A〜23Cが形成される。火移り部71〜76の夫々は、周方向の両側に夫々配置された一対の主炎口21間において、三つの五徳爪用保炎口23A〜23Cによって、点火時に一方の主炎口21から他方の主炎口21に火移りを生じさせる。後述するように、火移り部71〜76では、主炎に比べて小さい保炎が形成されるので、五徳爪炙りを防止できる。
【0022】
また、筒状壁15の外周面における火移り部71に対応する部分には、径方向外側に突出する点火用突起部17が設けられている。コンロに設置されたときの点火用突起部17は、イグナイタ91(
図2参照)に対向するように配置される。イグナイタ91を、点火用突起部17との間で放電させることによって、火移り部71に対応する三つの五徳爪用保炎口23A〜23Cから噴出するガスに引火され、火移り部71を起点として、底面視時計回りと反時計回りに火炎が多数の主炎口21及び多数の保炎口22に順次移る。火移り部72〜76においては、三つの五徳爪用保炎口23A〜23Cを火炎が順次移ることによって、全ての主炎口21及び保炎口22に点火される。
【0023】
また、
図2,
図3,
図5に示すように、筒状壁15の外周面において、点火検出用の熱電対92(
図2参照)に対向する位置には、バーナヘッド3の中心側に所定距離(例えば、1mm程度)凹没して形成された凹み部31が設けられ、その凹み部31を周方向の両側から挟み込むようにして、一対の検出用主炎口21A,21Bが設けられている。凹み部31の下面には一つの浅凹溝が垂直に設けられている。この浅凹溝とバーナ本体2の座面2Aとによって、一対の検出用主炎口21A,21Bの間に、一つの保炎口22が形成される。
【0024】
さらに、
図3に示すように、凹み部31の外側面の上部には、凸部32が設けられている。凸部32は、凹み部31を正面から見た場合に、凹み部31の外側面の上端部の左右方向(幅方向)の略中央位置から上下方向の略中央位置まで垂直方向に延設され、側面から見た場合に、凹み部31の外側面から筒状壁15の径方向外側に突出する略長方形状に形成されている。なお、凸部32における凹み部31の外側面と連結する基部は、テーパ状に形成されている。さらに、筒状壁15の外側面において、凹み部31の上端部の直上には、突出部35が設けられている。突出部35は、筒状壁15の外側面から径方向外側に略水平に突出する平面視細長略長方形の庇状に形成されている。突出部35は、一対の検出用主炎口21A,21Bと、凹み部31の外側面との間に囲まれる空間を上方から覆う。
【0025】
一対の検出用主炎口21A,21Bの間に凹み部31を設けることで、その両側の一対の検出用主炎口21A,21Bは、他の主炎口21よりも径方向内側に一段下がった位置に配置される。これにより、検出用主炎口21A,21Bに夫々形成される二つの火炎はバーナヘッド3の中心側に引き込まれるので、火炎のリフトを抑制できる。さらに、2つの火炎は互いに寄り添って結合するが、その結合火炎は凸部32によって頂上部が二つに分割されるので、全体の火炎長は長くならない。さらに、凹み部31の上端部の直上に設けられた突出部35によって、火炎は突出部35側に引き寄せられるので、火炎の保炎性がさらに向上する。熱電対92は、このような結合火炎に加熱されることによって、火炎を検出できる。
【0026】
図4,
図5を参照して、火移り部76周囲の構造について具体的に説明する。なお、火移り部71〜75の周囲の構造は、火移り部76のものと同様であるので説明を省略する。上記の通り、火移り部76は、三つの五徳爪用保炎口23A〜23Cを周方向に備える。五徳爪用保炎口23Bは周方向中央に配置され、その五徳爪用保炎口23Bを周方向の両側から挟み込むようにして、五徳爪用保炎口23Aと23Cが夫々配置されている。五徳爪用保炎口23Aは底面視時計回り方向上流側、五徳爪用保炎口23Cは底面視時計回り方向下流側に夫々位置する。五徳爪用保炎口23Aと、該五徳爪用保炎口23Aと隣り合う主炎口21(以下、主炎口211と呼ぶ)との間には、隔壁55が立設されている。五徳爪用保炎口23Aと23Bとの間には、隔壁56が立設されている。五徳爪用保炎口23Bと23Cとの間には、隔壁57が立設されている。五徳爪用保炎口23Cと、該五徳爪用保炎口23Cと隣り合う主炎口21(以下、主炎口212と呼ぶ)との間には、隔壁58が立設されている。
【0027】
上板11の下面において、火移り部76に対して径方向内側に離間する位置には、一対の壁部61,62が径方向に直交する方向に並んで夫々立設されている。これら壁部61,62は、上板11の下面から下方に突出する略三角柱状に夫々形成されている。壁部61は五徳爪用保炎口23Aと対向し、壁部62は五徳爪用保炎口23Cと対向している。壁部61と62の間には、径方向に延びる溝部63が設けられている。溝部63は、後述する突起部65を間に挟んで、五徳爪用保炎口23Bと対向している。壁部61は、溝部63側に対向する一端部61Aと、その反対側で主炎口211側に突出する他端部61Bを備える。一端部61Aは、溝部63の長手方向に対して略平行である。他端部61Bは、主炎口211側に向かって先細り状に突出し、その先端部は円弧状に形成されている。他方、壁部62は、溝部63側に対向する一端部62Aと、その反対側で主炎口212側に突出する他端部62Bを備える。一端部62Aは、溝部63の長手方向に対して略平行である。他端部62Bは、主炎口212側に向かって先細り状に突出し、その先端部は円弧状に形成されている。
【0028】
さらに、隔壁55と壁部61の他端部61Bとの間には、火移り部炎口通路67が形成されている。隔壁58と壁部62の他端部62Bとの間には、火移り部炎口通路68が形成されている。溝部63と五徳爪用保炎口23Bとの間には、略円柱状の突起部65が設けられている。突起部65は、上板11の下面から下方に突出している。なお、突起部65と隔壁56,57との間、突起部65と壁部61,62との間は夫々離間し、ガスが流れる通路が形成されている。
【0029】
図6,
図7を参照し、バーナ本体2から火移り部76までのガスの流れと、大火力時と小火力時におけるガスの流れの変化について具体的に説明する。
図6に示すように、バーナ本体2から供給されるガスは、筒部12側から上板11の下面に設けられた複数のガス供給溝50を径方向外側に流れ、多数の主炎口21及び保炎口22等から噴出する。以下、筒部12側から火移り部76に向かって流れるガスをA、B、Cに分けて順に説明する。
【0030】
図6に示すように、ガスAは、複数のガス供給溝50のうち主炎口211に接続するガス供給溝501(
図4,
図5参照)に沿って直進する。ガスAは、壁部61の他端部61Bを過ぎてから、その大部分は主炎口211に流れるが、一部は側方に開口する火移り部炎口通路67に流入する。火移り部炎口通路67に流入したガスは、五徳爪用保炎口23A〜23C側に流れる。ガス供給溝501を流れる方向と、火移り部炎口通路67に流れる方向が互いに異なるので、火移り部炎口通路67に流れるガスの流速は減速する。ガスCは、複数のガス供給溝50のうち主炎口212に接続するガス供給溝502に沿って直進する。ガスCは、壁部62の他端部62Bを過ぎてから、その大部分は主炎口212に流れるが、一部は側方に開口する火移り部炎口通路68に流入する。火移り部炎口通路68に流入したガスは、火移り部炎口通路67とは反対側から五徳爪用保炎口23A〜23C側に流れる。ガス供給溝502を流れる方向と、火移り部炎口通路68に流れる方向が互いに異なるので、火移り部炎口通路68に流れるガスの流速は減速する。
【0031】
ガスBは、ガス供給溝501と502の間を径方向外側に流れるが、その大部分が壁部61,62によって遮られる。よって、ガスBは、壁部61,62の各側面に沿って分散して流れ、ガス供給溝501と502に夫々流れ込む。ここで、ガス供給溝501と502に流れ込むガスBは、壁部61,62によって流れる方向が変えられることによって減速する。それ故、ガス供給溝501と502に流れ込んだガスは、その大部分が主炎口211,212に向かって直進し、一部は、上記のように、火移り部炎口通路67,68に夫々流入する。そして、本実施形態では、ガスBの一部を、壁部61,62の間に形成された溝部63を介して、五徳爪用保炎口23A〜23C側に流入させることができる。溝部63を通過したガスBの一部は、突起部65に衝突することによって周方向に拡散されるので、五徳爪用保炎口23A〜23Cにバランス良く夫々流入できる。
【0032】
このような特徴的な構造によれば、火移り部炎口通路67,68を介して五徳爪用保炎口23A〜23C側に流入するガス量は、主炎口211,212に夫々流入するガス量に比べて少ない。それ故、五徳爪用保炎口23A〜23Cに夫々形成される保炎は、主炎口211,212に夫々形成される主炎よりも小さくなる。これにより、五徳爪に対応する火移り部76においては、主炎よりも小さい3つの保炎が形成されるので、五徳爪炙りを防止できる。そして、本実施形態では、以下説明するように、大火力時、及び小火力時において、火移り部76に流入するガス量が適切に調整される。
【0033】
−大火力時(ガスの流速が速いとき)−
図6に示すように、上記の通り、ガスAは、ガス供給溝501に沿って直進するが、壁部61の他端部61Bを過ぎた直後、一部が火移り部炎口通路67を介して、五徳爪用保炎口23A〜23C側に流れ込む。他方、ガスCは、ガス供給溝502に沿って直進するが、壁部62の他端部62Bを過ぎた直後、火移り部炎口通路68を介して、五徳爪用保炎口23A〜23C側に流れ込む。ここで、大火力時においては、ガスA,Cの流速は速いので、慣性により、ガスA,Cは火移り部炎口通路67,68とは反対側に大きく導かれるので、ガスA,Cは、火移り部炎口通路67,68から大きく離間する。さらに、火移り部炎口通路67,68の夫々の通路面積は、主炎口211,212に流れるガス供給溝501,502の夫々の通路面積よりも狭いので、火移り部炎口通路67,68に夫々流れ込むガス量は自動的に抑制される。これにより、大火力の時でも、五徳爪用保炎口23A〜23Cに形成される保炎が大きくならないので、五徳爪炙りを防止できる。
【0034】
−小火力時(ガスの流速が遅いとき)−
図7に示すように、ガスの流速が遅い場合、大火力時に比べて慣性は大きく働かない。それ故、上記の通り、ガス供給溝501,502を流れるガスA,Cの一部を、火移り部炎口通路67,68に流入させることができる。また、小火力時では、火移り部76側に流入するガス量は少なくなるが、本実施形態では、壁部61,62間に設けられた溝部63から火移り部76側に向かってガスを流入させることができる。これにより、火移りや保炎性を確保できる。
【0035】
ここで、仮に、溝部63を流れるガスが五徳爪用保炎口23Bにそのまま流れてしまうと、五徳爪用保炎口23Bから噴出するガス量が、他の五徳爪用保炎口23A,23Cから噴出するガス量よりも大幅に増えてしまい、火移り部76に形成される3つの保炎の大きさが偏ってしまう。しかしながら、本実施形態では、溝部63から火移り部76側に向かって流れるガスは、突起部65によって分流して拡散されるので、五徳爪用保炎口23A〜23Cに対してバランス良くガスを供給できる。よって、小火力のときでも、火移り部76における失火を防止しつつ3つの保炎の大きさを揃えることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のガスバーナ1は、ガスを供給するバーナ本体2とバーナヘッド3を備える。バーナヘッド3はバーナ本体2上に載置される。ガスバーナ1は、複数の五徳爪を有する五徳を備えるガスコンロに設置された状態で、五徳の下方において五徳に周囲を囲まれるように配置される。バーナヘッド3は、上板11の下面の外周部から下方に延びる筒状壁15を備える。筒状壁15には、複数の主炎口21が周方向に並んで設けられている。主炎口21は、筒状壁15の径方向内側から外側に向かって開口する。主炎口21には、バーナ本体2から供給されたガスを燃焼させることによって火炎(主炎)が形成される。さらに、筒状壁15には、6つの火移り部71〜76が設けられている。火移り部71〜76は、筒状壁15における6本の五徳爪に対応する各部位であって、且つ隣り合う主炎口21同士の間に夫々設けられている。火移り部71〜76の夫々には、3つの五徳爪用保炎口23A〜23Cが周方向に並んで設けられ、該五徳爪用保炎口23A〜23Cに夫々形成される火炎(保炎)によって、隣り合う主炎口21間において火移りを生じさせる。そして、火移り部71〜76に対して、筒状壁15の径方向内側に離間する位置には、一対の壁部61,62が設けられている。壁部61,62は、筒状壁15の径方向に直交する方向に延び、3つの五徳爪用保炎口23A〜23Cと対向する。さらに、壁部61,62の間には、溝部63が設けられている。溝部63は、径方向内側から外側に向かって流れるガスの一部を火移り部76側に流入させる。そして、溝部63と、その溝部63と対向する五徳爪用保炎口23Bとの間には、上板11の下面からから下方に突出する突起部65が設けられている。
【0037】
ガスバーナ1は上記構造を備えているので、バーナ本体2から供給されたガスは、バーナヘッド3の下面に沿って径方向内側から外側に流れ、主炎口21及び保炎口22において燃焼することによって、火炎が夫々形成される。例えば、五徳爪に対向する所定部位に設けられた火移り部76では、一対の壁部61,62によって、3つの五徳爪用保炎口23A〜23Cに向かうガスの流れは遮られ、隣り合う一対の主炎口211,212に向かって流れるが、その一部は、火移り部76と一対の壁部61,62との間(火移り部炎口通路67,68)から火移り部76に側に流入する。ここで、小火力のときは、火移り部炎口通路67,68から火移り部76側に流入するガス量は少なくなる。しかしながら、本実施形態のガスバーナ1では、一対の壁部61,62間に設けられた溝部63から火移り部76側に向かってガスを流入させることができる。さらに、溝部63から火移り部76側に向かって流れるガスは、突起部65によって分流して周方向に拡散されるので、3つの五徳爪用保炎口23A〜23Cに対してバランス良くガスを供給できる。よって、小火力のときでも、火移り部76の3つの五徳爪用保炎口23A〜23Cにおける保炎性を向上できる。
【0038】
また、本実施形態はさらに、一対の壁部61,62の夫々の溝部63に対向する一端部61A,62Aとは反対側の他端部61B,62Bは、火移り部76に隣接する主炎口211,212側に突出している。これにより、例えば火移り部76に隣接する主炎口211,212に向けて流れるガスの一部は、一対の壁部61,62を過ぎてから一対の壁部61,62と火移り部76との間である火移り部炎口通路67,68を通って火移り部76側に流入する。そして、一対の壁部61,62の夫々の他端部61B,62Bは、火移り部76に隣接する主炎口211,212側に突出しているので、一対の壁部61,62を通過したガスは、一時的に火移り部76とは反対側に導かれる。即ち、通路面積が大きくても流れ難い。これにより、ガスの流速が速い場合は、慣性によって火移り部76へのガスの流量が抑制されるので、大火力時における五徳爪炙りを抑制できる。一方、ガスの流速が遅い場合は、慣性は大きく働かず、ガスは火移り部炎口通路67,68から火移り部76側に流入するので、通路面積に見合ったガス流量を確保できる。これにより、小火力のときに火移りや保炎性を確保できる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態のガスバーナ1は、コンロの筐体内に設けられるものであるが、コンロ以外のガス調理器やガス加熱器等にも適用可能である。
【0040】
また、上記実施形態のバーナヘッド3では、火移り部71〜76に対して、筒状壁15の径方向内側に離間する位置に、一対の壁部61,62(
図5参照)が設けられている。これら壁部61,62は、上板11の下面から下方に突出する略三角柱状に形成され、溝部63側とは反対側の他端部61B,62Bを主炎口211,212側に突出させている。火移り部76に対して径方向内側に離間する位置に設ける「一対の壁部」の形状は、上記実施形態以外の形状でもよい。
【0041】
例えば、
図8に示すバーナヘッド130のように、火移り部76に対して径方向内側に離間する位置に、一対の壁部161,162を設けてもよい。壁部161,162は、上板11の下面から下方に突出する略四角柱状に形成されている。これら壁部161,162において、溝部63側の一端部161A,162Aとは反対側の他端部161B,162Bは、主炎口211,212側に突出している。具体的に言うと、他端部161B,162Bは、ガス供給溝501,502の夫々の長手方向に対して略平行であり、夫々の2つの角部がガス供給溝501,502側に共に突出している。このような構造でも、上記実施形態と同様に、大火力時においては、一対の壁部161,162を通過したガスは、他端部161B,162Bによって一時的に火移り部76とは反対側に導かれるので、大火力時における五徳爪炙りを防止できる。
【0042】
また、
図9に示すバーナヘッド230のように、火移り部76に対して径方向内側に離間する位置に、一対の壁部261,262を設けてもよい。壁部261,262は、上板11の下面から下方に突出し、且つ壁部161,162(
図8参照)とは異なる形状の略四角柱状に形成されている。これら壁部261,262において、溝部63側の一端部261A,262Aとは反対側の他端部261B,262Bは、主炎口211,212側に突出している。具体的に言うと、他端部261B,262Bは、ガス供給溝501,502の夫々の長手方向に対して径方向内側から外側に向かって互いに徐々に離れる方向に傾斜している。そして、他端部261B,262Bのうち径方向外側に位置する夫々の角部のみがガス供給溝501,502側に突出している。このような構造でも、上記実施形態と同様に、大火力時においては、一対の壁部261,262を通過したガスは、他端部261B,262Bによって一時的に火移り部76とは反対側に導かれるので、大火力時における五徳爪炙りを防止できる。
【0043】
また、
図10に示すバーナヘッド330のように、火移り部76に対して径方向内側に離間する位置に、一対の壁部361,362を設けてもよい。壁部361,362は、上板11の下面から下方に突出し、且つ壁部261,262(
図9参照)とは異なる形状の略四角柱状に形成されている。これら壁部361,362において、溝部63側の一端部361A,362Aとは反対側の他端部361B,362Bは、主炎口211,212側に突出している。具体的に言うと、他端部361B,362Bは、
図8に示す壁部161,162と同様に、ガス供給溝501,502の長手方向に対して略平行である。さらに、ガス供給溝501,502において、筒部12側から壁部361,362までの部分の幅を、他端部361B,362Bの夫々の位置まで狭くし、他端部361B,362Bを過ぎた位置から火移り部76側にやや屈曲させて径方向外側に延びる形状としている。つまり、ガス供給溝501,502は、他端部361B,362Bの夫々の外側の角部において火移り部76側に屈曲している。このような構造でも、一対の壁部361,362を通過したガスは、他端部361B,362Bによって一時的に火移り部76とは反対側に導かれるので、大火力時における五徳爪炙りを防止できる。
【0044】
また、上記実施形態では、筒状壁15の下面において、火移り部71〜76に夫々対応する部分には、3つの五徳爪用保炎口23A〜23Cが夫々設けられているが、五徳爪用保炎口の数は3つ以上であってもよい。なお、五徳爪用保炎口の数は、好ましくは複数であり、五徳の五徳爪の幅や大きさ等に合わせて決めればよい。
【0045】
また、上記実施形態の凹み部31は、一対の検出用主炎口21A,21Bの間を、筒状壁15の外側面に対してバーナヘッド3の中心側に1mm程度凹没させているが、凹没させる距離は1mmに限らず、さらに凹没させてもよい。また、1mmよりも浅く凹没させてもよい。
【0046】
また、上記実施形態のバーナヘッド3の上板11の下面には、複数のガス供給溝50が放射状に形成されているが、ガス供給溝50は省略してもよい。また、上記実施形態のバーナヘッド3は、6本の五徳爪を備える五徳の専用品であるが、五徳爪の本数と位置に応じて、火移り部の数と位置を夫々変更すればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、壁部61,62の他端部61B,62Bを主炎口211,212側に夫々突出させているが、突出させなくてもよい。
図8〜
図10に示す変形例においても同様である。