特許第6514978号(P6514978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6514978ステータ、モータおよびステータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514978
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】ステータ、モータおよびステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   H02K3/34 B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-140963(P2015-140963)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-22947(P2017-22947A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】大坪 京史
(72)【発明者】
【氏名】内海 信一
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−089128(JP,A)
【文献】 特開2002−291191(JP,A)
【文献】 特開平11−055883(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0015349(US,A1)
【文献】 特開2002−125354(JP,A)
【文献】 特開2004−064931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されるとともに、コイルと、絶縁部材と、前記絶縁部材を介して前記コイルが巻回される複数の突極部を有するステータコアとを備えるステータであって、
前記ステータコアは、環状に形成される外周環部と、前記外周環部から前記ステータの径方向の内側に向かって突出するとともに前記ステータの周方向において一定の間隔で配置される複数の前記突極部とを備え、
前記外周環部は、複数の前記突極部と同じ数の外周部によって構成され、
前記ステータの周方向における前記外周部の中心に前記突極部が形成され、
前記絶縁部材は、前記ステータの軸方向における前記外周部の端面の少なくとも一部を覆う複数の外周側覆部と、前記ステータの周方向において前記外周側覆部の間に配置されるとともに前記ステータの径方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部を介して前記外周側覆部に繋がる突起部とを備えることを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記外周環部の内周面は、前記ステータの軸方向から見たときの形状が多角形状となるように形成され、
前記突起部は、前記ステータの軸方向から見たときに、多角形状をなす前記外周環部の内周面の頂点部分と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1記載のステータ。
【請求項3】
前記ステータの径方向における前記突起部の外側端には、前記コイルの一部を構成する渡り線が接触していることを特徴とする請求項1または2記載のステータ。
【請求項4】
前記ステータの径方向における前記突起部の外側端は、前記外周環部の外周面よりも前記ステータの径方向の外側へ突出していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のステータ。
【請求項5】
前記絶縁部材は、前記外周側覆部として、前記ステータの軸方向における前記外周部の一方の端面の少なくとも一部を覆う第1外周側覆部と、前記ステータの軸方向における前記外周部の他方の端面の少なくとも一部を覆う第2外周側覆部とを備えるとともに、前記突起部として、前記腕部を介して前記第1外周側覆部に繋がる第1突起部と、前記腕部を介して前記第2外周側覆部に繋がる第2突起部とを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のステータ。
【請求項6】
前記突起部は、前記ステータの軸方向から見たときの形状が略三角形状となるように形成され、
略三角形状をなす前記突起部の1つの頂点が、前記ステータの径方向における前記突起部の外側端となっていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のステータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のステータと、駆動用磁石を有し前記ステータの内周側に配置されるロータとを備えることを特徴とするモータ。
【請求項8】
折り曲げ部を介して繋がる複数の外周部によって構成される直線状の帯状部と複数の前記外周部のそれぞれから前記帯状部の長手方向に直交する方向へ突出する突極部とを有するコア原体に、前記コア原体の厚さ方向における前記外周部の端面の少なくとも一部を覆う複数の外周側覆部と前記外周側覆部の間に配置されるとともに前記突極部の突出方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部を介して前記外周側覆部に繋がる突起部と前記突極部を覆う突極覆部とを有する絶縁部材を取り付ける絶縁部材取付工程と、
前記絶縁部材取付工程後に、前記突極覆部を介して複数の前記突極部にコイルを巻回するコイル巻回工程と、
前記コイル巻回工程後に、前記帯状部が環状をなす外周環部または弧状をなす外周弧部となるようにかつ前記外周環部または前記外周弧部の径方向の内側へ前記突極部が突出するように前記帯状部を前記折り曲げ部で折り曲げる帯状部折曲工程とを備え、
前記突極部の突出方向の逆方向を第1方向とすると、
前記コイル巻回工程では、前記外周側覆部よりも前記第1方向側へ突出する前記突起部の前記第1方向側の端面に前記コイルの一部を構成する渡り線が接触するように複数の前記突極部に前記コイルを巻回し、
前記帯状部折曲工程では、円環状をなす前記外周環部または弧状をなす前記外周弧部の径方向の内側へ前記渡り線によって前記突起部が押されて前記腕部が変形し、前記外周環部または前記外周弧部の径方向の内側へ前記突起部が移動すること、または、前記外周環部または前記外周弧部の径方向の内側へ前記渡り線によって前記突起部が押されて前記腕部が折れること、あるいは、前記腕部を折り取ることを特徴とするステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等で使用されるステータ、および、このステータを備えるモータに関する。また、本発明は、モータ等で使用されるステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータと、ロータの外周側に配置される円筒状のステータとを備えるモータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータでは、ステータは、ステータコアと、ステータコアのティース部にインシュレータを介して巻回される駆動用コイルとを備えている。ステータコアは、ステータの周方向に分割される複数の分割コアを組み合わせることで形成されており、分割コアは、ステータの径方向におけるティース部の外側端に繋がる外ヨーク部を備えている。また、特許文献1には、ステータコアは、外ヨーク部が一体で連なった帯状のコアを円環状に折り曲げてその端部同士を繋ぐことで形成されるいわゆるカーリングコアでも良い旨が記載されている。
【0003】
カーリングコアは、たとえば、図8(A)に示すように、折り曲げ部101を介して繋がる複数の外ヨーク部102によって構成される直線状の帯状部分103と、複数の外ヨーク部102のそれぞれから帯状部分103の長手方向に直交する方向へ突出するティース部104とを有するコア原体105を用いて形成される。また、カーリングコアは、たとえば、図8(B)に示すように、帯状部分103が円環状となるようにかつ径方向の内側へティース部104が突出するように帯状部分103を折り曲げ部101で折り曲げて帯状部分103の両端同士を接続することで形成される。
【0004】
帯状部分103を折り曲げて図8(B)に示すカーリングコア(ステータコア106)を形成する前には、インシュレータを介してティース部104に駆動用コイルが巻回される。すなわち、コア原体105のティース部104に駆動用コイルが巻回される。また、図8(B)に示すステータコア106は、たとえば、三相モータで使用されており、ティース部104a、104dには、U相の駆動用コイルが巻回され、ティース部104b、104eには、V相の駆動用コイルが巻回され、ティース部104c、104fには、W相の駆動用コイルが巻回されている。なお、ティース部104a〜104fは、帯状部分103の長手方向においてこの順番で配置されている。また、ティース部104a〜104fのそれぞれが繋がる外ヨーク部102のそれぞれを外ヨーク部102a〜102fとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−57211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、モータ等のステータで使用されるステータコアとして、図8に示すステータコア106のようなカーリングコアの採用を検討している。また、本願発明者は、駆動用コイルの端部の処理を簡素化するとともに、駆動用コイルの端部が接続される端子ピンの数を減らしてステータの構成を簡素化するため、インシュレータ107(図9参照)を介して1本の導線をティース部104a、104dに順次巻回することでU相の駆動用コイルを形成し、インシュレータ107を介して1本の導線をティース部104b、104eに順次巻回することでV相の駆動用コイルを形成し、インシュレータ107を介して1本の導線をティース部104c、104fに順次巻回することでW相の駆動用コイルを形成することを検討している。
【0007】
ティース部104b、104cを間に挟んで配置されるティース部104a、104dに1本の導線を順次巻回してU相の駆動用コイルを形成し、ティース部104c、104dを間に挟んで配置されるティース部104b、104eに1本の導線を順次巻回してV相の駆動用コイルを形成し、ティース部104d、104eを間に挟んで配置されるティース部104c、104fに1本の導線を順次巻回してW相の駆動用コイルを形成する場合、U相の駆動用コイルの一部を構成する渡り線108(図9参照)と、V相の駆動用コイルの一部を構成する渡り線と、W相の駆動用コイルの一部を構成する渡り線とが接触しないように、渡り線が引き回されることが好ましい。また、製品の安全規格において各相の駆動用コイルが接触しないように定められている場合がある。
【0008】
したがって、この場合には、帯状部分103が折り曲げられる前の状態におけるティース部104の突出方向の反対方向を反突出方向とすると、図9(A)に示すように、U相の駆動用コイルの渡り線108は外ヨーク部102b、102cを覆うインシュレータ107の反突出方向側を通過するように配置されることが好ましい。また、V相の駆動用コイルの渡り線は外ヨーク部102c、102dを覆うインシュレータ107の反突出方向側を通過するように配置され、W相の駆動用コイルの渡り線は外ヨーク部102d、102eを覆うインシュレータ107の反突出方向側を通過するように配置されることが好ましい。
【0009】
しかしながら、U相の駆動用コイルの渡り線108が外ヨーク部102b、102cを覆うインシュレータ107の反突出方向側を通過するように配置されていると、帯状部分103を折り曲げ部101で折り曲げたときに、渡り線108に大きな張力が発生して、渡り線108が、たとえば、図9(B)のK部で断線するおそれがある。同様に、V相の駆動用コイルの渡り線が外ヨーク部102c、102dを覆うインシュレータ107の反突出方向側を通過するように配置されていると、帯状部分103を折り曲げたときに、この渡り線が断線するおそれがある。また、W相の駆動用コイルの渡り線が外ヨーク部102d、102eを覆うインシュレータ107の反突出方向側を通過するように配置されていると、帯状部分103を折り曲げたときに、この渡り線が断線するおそれがある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、カーリングコアであるステータコアを有するステータにおいて、ステータの軸方向から見たときにステータコアの外周側にコイルの一部を構成する渡り線が配置されていても渡り線の断線を防止することが可能なステータを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるステータを備えるモータを提供することにある。さらに、本発明の課題は、カーリングコアであるステータコアを有するステータの製造方法であって、ステータの軸方向から見たときにステータコアの外周側にコイルの一部を構成する渡り線が配置されていても渡り線の断線を防止することが可能となるステータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のステータは、筒状に形成されるとともに、コイルと、絶縁部材と、絶縁部材を介してコイルが巻回される複数の突極部を有するステータコアとを備えるステータであって、ステータコアは、環状に形成される外周環部と、外周環部からステータの径方向の内側に向かって突出するとともにステータの周方向において一定の間隔で配置される複数の突極部とを備え、外周環部は、複数の突極部と同じ数の外周部によって構成され、ステータの周方向における外周部の中心に突極部が形成され、絶縁部材は、ステータの軸方向における外周部の端面の少なくとも一部を覆う複数の外周側覆部と、ステータの周方向において外周側覆部の間に配置されるとともにステータの径方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部を介して外周側覆部に繋がる突起部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のステータでは、絶縁部材は、ステータの軸方向における外周部の端面を覆う複数の外周側覆部と、ステータの周方向において外周側覆部の間に配置されるとともにステータの径方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部を介して外周側覆部に繋がる突起部とを備えている。そのため、本発明では、複数の外周部が直線状に繋がっている状態のコア原体の突極部に絶縁部材を介してコイルを巻回するときに、コイルの一部を構成する渡り線がステータの径方向における突起部の外側端に接触するようにコイルを巻回すれば、外周部と外周部との境界部分でコア原体を折り曲げてステータコアを形成する際に、ステータの径方向の内側へ突起部を移動させて渡り線に作用する張力を低減することが可能になる。したがって、本発明では、ステータの軸方向から見たときに、カーリングコアであるステータコアの外周側に渡り線が配置されていても渡り線の断線を防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、外周環部の内周面は、ステータの軸方向から見たときの形状が多角形状となるように形成され、突起部は、ステータの軸方向から見たときに、多角形状をなす外周環部の内周面の頂点部分と重なるように配置されている。また、本発明において、たとえば、ステータの径方向における突起部の外側端には、コイルの一部を構成する渡り線が接触している。また、本発明において、たとえば、ステータの径方向における突起部の外側端は、外周環部の外周面よりもステータの径方向の外側へ突出している。
【0014】
本発明において、絶縁部材は、外周側覆部として、ステータの軸方向における外周部の一方の端面の少なくとも一部を覆う第1外周側覆部と、ステータの軸方向における外周部の他方の端面の少なくとも一部を覆う第2外周側覆部とを備えるとともに、突起部として、腕部を介して第1外周側覆部に繋がる第1突起部と、腕部を介して第2外周側覆部に繋がる第2突起部とを備えることが好ましい。このように構成すると、たとえば、第1突起部および第2突起部を利用して、U相の駆動用コイルの渡り線、V相の駆動用コイルの渡り線およびW相の駆動用コイルの渡り線の断線を防止しつつ、ステータの軸方向における外周部の一端側でU相の駆動用コイルの渡り線およびW相の駆動用コイルの渡り線を引き回すとともに、ステータの軸方向における外周部の他端側でV相の駆動用コイルの渡り線を引き回すことが可能になる。したがって、各相の駆動用コイルの渡り線の断線を防止しつつ、各相の駆動用コイル同士の接触を防止して各相の駆動用コイル間の短絡を防止することが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、突起部は、ステータの軸方向から見たときの形状が略三角形状となるように形成され、略三角形状をなす突起部の1つの頂点が、ステータの径方向における突起部の外側端となっている。
【0016】
本発明のステータは、駆動用磁石を有しステータの内周側に配置されるロータを備えるモータに用いることができる。このモータでは、ステータの軸方向から見たときに、カーリングコアであるステータコアの外周側に渡り線が配置されていても渡り線の断線を防止することが可能になる。
【0017】
また、上記の課題を解決するため、本発明のステータの製造方法は、折り曲げ部を介して繋がる複数の外周部によって構成される直線状の帯状部と複数の外周部のそれぞれから帯状部の長手方向に直交する方向へ突出する突極部とを有するコア原体に、コア原体の厚さ方向における外周部の端面の少なくとも一部を覆う複数の外周側覆部と外周側覆部の間に配置されるとともに突極部の突出方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部を介して外周側覆部に繋がる突起部と突極部を覆う突極覆部とを有する絶縁部材を取り付ける絶縁部材取付工程と、絶縁部材取付工程後に、突極覆部を介して複数の突極部にコイルを巻回するコイル巻回工程と、コイル巻回工程後に、帯状部が環状をなす外周環部または弧状をなす外周弧部となるようにかつ外周環部または外周弧部の径方向の内側へ突極部が突出するように帯状部を折り曲げ部で折り曲げる帯状部折曲工程とを備え、突極部の突出方向の逆方向を第1方向とすると、コイル巻回工程では、外周側覆部よりも第1方向側へ突出する突起部の第1方向側の端面にコイルの一部を構成する渡り線が接触するように複数の突極部にコイルを巻回し、帯状部折曲工程では、円環状をなす外周環部または弧状をなす外周弧部の径方向の内側へ渡り線によって突起部が押されて腕部が変形し、外周環部または外周弧部の径方向の内側へ突起部が移動すること、または、外周環部または外周弧部の径方向の内側へ渡り線によって突起部が押されて腕部が折れること、あるいは、腕部を折り取ることを特徴とする。
【0018】
本発明のステータの製造方法では、突極部の突出方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部を介して外周側覆部に繋がるとともに突極部の突出方向の逆方向である第1方向側へ外周側覆部よりも突出する突起部が絶縁部材に形成されている。また、本発明では、コイル巻回工程において、突起部の第1方向側の端面に渡り線が接触するように複数の突極部にコイルを巻回するとともに、帯状部折曲工程において、径方向の内側へ渡り線によって突起部が押されて腕部が変形し、径方向の内側へ突起部が移動するか、または、径方向の内側へ渡り線によって突起部が押されて腕部が折れるか、あるいは、腕部を折り取っている。そのため、本発明では、帯状部折曲工程において渡り線に作用する張力を低減することが可能になる。したがって、本発明では、ステータの軸方向から見たときに、カーリングコアであるステータコアの外周側に渡り線が配置されていても渡り線の断線を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、ステータの軸方向から見たときに、カーリングコアであるステータコアの外周側に渡り線が配置されていても渡り線の断線を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかるポンプ装置の断面図である。
図2図1に示すステータコア、インシュレータおよび端子ピンの平面図である。
図3図2に示すステータコアの平面図である。
図4図2のE部の拡大図である。
図5図1に示すステータの製造方法を説明するための図であり、(A)はステータコアとなるコア原体の平面図、(B)は(A)に示すコア原体にインシュレータおよび端子ピンが取り付けられた状態の平面図である。
図6図5(B)に示すコア原体にインシュレータおよび端子ピンが取り付けられた状態の斜視図である。
図7図5のF部の拡大図である。
図8】従来技術にかかるステータコアの構成を説明するための図である。
図9】従来技術の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(ポンプ装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるステータ6が使用されるポンプ装置1の断面図である。なお、以下の説明では、図1の上側(Z1方向側)を「上」側とし、図1の下側(Z2方向側)を「下」側とする。
【0023】
本形態のステータ6が使用されるポンプ装置1は、キャンドポンプと呼ばれるタイプのポンプであり、羽根車2と、羽根車2を回転させるモータ3と、回路基板4とを備えている。モータ3は、三相モータである。このモータ3は、ロータ5とステータ6とによって構成されている。羽根車2、モータ3および回路基板4は、ハウジング7と、ハウジング7の上部を覆う上ケース8とによって構成されるケース体の内部に配置されている。ハウジング7と上ケース8とは、図示を省略するネジによって互いに固定されている。
【0024】
上ケース8には、流体の吸入部8aと、流体の吐出部8bとが形成されている。ハウジング7と上ケース8との間には、吸入部8aから吸入された流体が吐出部8bに向かって通過するポンプ室9が形成されている。また、ハウジング7と上ケース8との接合部分には、ポンプ室9の密閉性を確保するためのシール部材(Oリング)10が配置されている。ハウジング7は、ポンプ室9とステータ6とを隔てるようにポンプ室9とステータ6との間に配置される隔壁11aを有する隔壁部材11と、隔壁部材11の下面および側面を覆う樹脂製の樹脂封止部材12とを備えている。
【0025】
ロータ5は、駆動用磁石14と、円筒状のスリーブ15と、駆動用磁石14およびスリーブ15を保持する保持部材16とを備えている。保持部材16は、鍔付きの略円筒状に形成されている。駆動用磁石14は、保持部材16の外周側に固定され、スリーブ15は、保持部材16の内周側に固定されている。上側に配置される保持部材16の鍔部16aには、羽根車2が固定されている。羽根車2およびロータ5は、ポンプ室9の内部に配置されている。
【0026】
ロータ5は、固定軸17に回転可能に支持されている。固定軸17は、固定軸17の軸方向と上下方向とが一致するように配置されており、上下方向は、ロータ5の軸方向となっている。固定軸17の上端は、上ケース8に保持され、固定軸17の下端は、ハウジング7に保持されている。固定軸17は、スリーブ15の内周側に挿通されている。また、固定軸17には、スリーブ15の上端面に当接するスラスト軸受部材18が取り付けられている。本形態では、スリーブ15がロータ5のラジアル軸受として機能し、スリーブ15およびスラスト軸受部材18がロータ5のスラスト軸受として機能している。
【0027】
ステータ6は、コイルとしての駆動用コイル23と、ステータコア24と、絶縁部材としてのインシュレータ25とを備えており、全体として筒状に形成されている。具体的には、ステータ6は、略円筒状に形成されている。ステータ6は、隔壁11aを介して、ロータ5の外周側に配置されており(すなわち、ロータ5は、ステータ6の内周側に配置されており)、ステータ6は、ステータ6の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、ステータ6の軸方向である。また、ステータ6は、駆動用コイル23の端部が絡げられて電気的に接続される端子ピン26を備えている。ステータ6の具体的な構成については後述する。なお、以下の説明では、ロータ5およびステータ6の径方向を「径方向」とし、ロータ5およびステータ6の周方向(円周方向)を「周方向」とする。
【0028】
上述のように、隔壁部材11は、隔壁11aを備えている。隔壁11aは、鍔付きの略有底円筒状に形成されており、円筒部11bと底部11cと鍔部11dとを備えている。円筒部11bは、円筒状に形成されており、駆動用磁石14の外周面を覆うように配置されている。底部11cは、円筒部11bの下端を塞ぐ円板状に形成されている。鍔部11dは、円筒部11bの上端から径方向の外側へ広がるように形成されている。
【0029】
底部11cの上面には、固定軸17の下端側を保持する軸保持部11hが形成されている。底部11cの下面には、回路基板4を隔壁部材11に固定するための固定用突起11jと、回路基板4を位置決めするための位置決め用突起11kとが形成されている。図1に示すように、隔壁11aの内側および上側がポンプ室9となっており、羽根車2およびロータ5は、隔壁11aの内側および上側に配置されている。隔壁11aは、ステータ6の配置箇所へのポンプ室9内の流体の流入を防止する機能を果たしている。
【0030】
回路基板4は、回路基板4の厚さ方向と上下方向とが一致するように、底部11cの下面側に固定されている。また、回路基板4は、固定用突起11jと位置決め用突起11kとによって位置決めされた状態で、固定用突起11jにねじ込まれるネジ34によって、底部11cの下面側に固定されている。回路基板4には、端子ピン26の下端側部分が半田付けされて固定されている。
【0031】
樹脂封止部材12は、回路基板4および駆動用コイル23等を完全に覆って、回路基板4および駆動用コイル23等を流体から保護するために設けられている。この樹脂封止部材12は、回路基板4およびステータ6が固定された状態の隔壁部材11に対して、樹脂材料を射出することで形成されている。具体的には、回路基板4およびステータ6が固定された隔壁部材11を金型内に配置し、この金型内に樹脂材料を注入して硬化させることで樹脂封止部材12が形成されている。樹脂封止部材12は、全体として略有底円筒状に形成されており、回路基板4、ステータ6、円筒部11bおよび底部11cを完全に覆っている。また、樹脂封止部材12は、鍔部11dの下面を覆っている。
【0032】
(ステータの構成)
図2は、図1に示すステータコア24、インシュレータ25および端子ピン26の平面図である。図3は、図2に示すステータコア24の平面図である。図4は、図2のE部の拡大図である。
【0033】
上述のように、ステータ6は、駆動用コイル23とステータコア24とインシュレータ25と端子ピン26とを備えている。ステータコア24は、磁性材料からなる薄い磁性板が積層されて形成された積層コアである。このステータコア24は、図3に示すように、環状に形成される外周環部24aと、外周環部24aから径方向の内側に向かって突出する複数の突極部24b〜24gとを備えている。本形態のステータコア24は、6個の突極部24b〜24gを備えている。6個の突極部24b〜24gは、等角度ピッチで形成されており、周方向において一定の間隔で配置されている。また、突極部24b〜24gは、周方向においてこの順番に配置されている。なお、ステータコア24は積層コアでなくても良い。
【0034】
外周環部24aは、上下方向から見たときの外周面の形状が略円形状となり、上下方向から見たときの内周面の形状が略六角形状となる環状に形成されている。外周環部24aの外周面は、ステータコア24の外周面を構成している。また、外周環部24aは、6個の外周部24hによって構成されている。すなわち、外周環部24aは、突極部24b〜24gと同じ数の外周部24hによって構成されている。周方向における外周環部24aの一部分であって、上下方向から見たときに略六角形状をなす外周環部24aの内周面の1つの頂点とその頂点に隣り合う頂点との間の部分が1つの外周部24hとなっている。すなわち、周方向における外周環部24aの一部分であって、上下方向から見たときに略六角形状をなす外周環部24aの内周面の一辺に対応する部分が1つの外周部24hとなっている。
【0035】
突極部24b〜24gは、周方向における外周部24hの中心に形成されている。突極部24b〜24gの先端部(径方向の内側端部)は、周方向の両側に向かって広がる略円弧状に形成されている。突極部24b〜24gの先端部の内周面は、円筒部11bを介して駆動用磁石14の外周面と対向している。
【0036】
また、ステータコア24は、直線状に繋がっていた6個の外周部24h(図5(A)参照)を、外周部24hと外周部24hとの境界部分で折り曲げてその端部同士を繋ぐことで形成されるカーリングコアである。そのため、図3に示すように、周方向における外周環部24aの間の1箇所には、つなぎ目24jが形成されている。本形態では、突極部24bが繋がる外周部24hと突極部24gが繋がる外周部24hとの間の1箇所につなぎ目24jが形成されている。
【0037】
インシュレータ25は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。このインシュレータ25は、上下方向に2分割される2つの上インシュレータと下インシュレータとによって構成されている。あるいは、インシュレータ25は、インサート成形によってステータコア24と一体で形成されている。インシュレータ25は、突極部24b〜24gを覆う突極覆部としての第1覆部25aを備えている。
【0038】
また、インシュレータ25は、外周部24hを覆う第2覆部を備えている。この第2覆部は、外周部24hの下端面(すなわち、ステータ6の軸方向における外周部24hの一方の端面)の一部を覆う6個の外周側覆部25b〜25gと、外周部24hの上端面(すなわち、ステータ6の軸方向における外周部24hの他方の端面)の一部を覆う6個の外周側覆部25h〜25m(図6参照)とを備えている。本形態の外周側覆部25b〜25gは、第1外周側覆部であり、外周側覆部25h〜25mは、第2外周側覆部である。なお、外周側覆部25b〜25gは、外周部24hの下端面の全体を覆っても良い。また、外周側覆部25h〜25mは、外周部24hの上端面の全体を覆っても良い。
【0039】
外周側覆部25b、25hは、突極部24bが繋がる外周部24hの一部を上下の両側から覆っている。外周側覆部25c、25iは、突極部24cが繋がる外周部24hの一部を上下の両側から覆っている。外周側覆部25d、25jは、突極部24dが繋がる外周部24hの一部を上下の両側から覆っている。外周側覆部25e、25kは、突極部24eが繋がる外周部24hの一部を上下の両側から覆っている。外周側覆部25f、25lは、突極部24fが繋がる外周部24hの一部を上下の両側から覆っている。外周側覆部25g、25mは、突極部24gが繋がる外周部24hの一部を上下の両側から覆っている。外周側覆部25b〜25gには、端子ピン26が固定されている。端子ピン26は、外周側覆部25b〜25gから下側へ突出するように固定されている。また、1個の外周側覆部25b〜25gに対して1本の端子ピン26が固定されている。
【0040】
また、インシュレータ25は、周方向において外周側覆部25b〜25mの間に配置される突起部25pを備えている。図2に示すように、外周環部24aの下側では、外周側覆部25bと外周側覆部25gとの間を除く外周側覆部25b〜25gの間の5箇所に突起部25pが配置されている。すなわち、外周環部24aの下側では、周方向における外周側覆部25bと外周側覆部25cとの間、外周側覆部25cと外周側覆部25dとの間、外周側覆部25dと外周側覆部25eとの間、外周側覆部25eと外周側覆部25fとの間および外周側覆部25fと外周側覆部25gとの間の5箇所に突起部25pが配置されている。同様に、外周環部24aの上側では、外周側覆部25hと外周側覆部25mとの間を除く外周側覆部25h〜25mの間の5箇所に突起部25pが配置されている。
【0041】
図4に示すように、突起部25pは、外周側覆部25b〜25mに対して径方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部25rを介して外周側覆部25b〜25mに繋がっている。すなわち、外周環部24aの下側では、周方向において、1個の突起部25pおよび2本の腕部25rを介して、外周側覆部25bと外周側覆部25cとが繋がり、外周側覆部25cと外周側覆部25dとが繋がり、外周側覆部25dと外周側覆部25eとが繋がり、外周側覆部25eと外周側覆部25fとが繋がり、外周側覆部25fと外周側覆部25gとが繋がっている。
【0042】
また、外周環部24aの上側では、周方向において、1個の突起部25pおよび2本の腕部25rを介して、外周側覆部25hと外周側覆部25iとが繋がり、外周側覆部25iと外周側覆部25jとが繋がり、外周側覆部25jと外周側覆部25kとが繋がり、外周側覆部25kと外周側覆部25lとが繋がり、外周側覆部25lと外周側覆部25mとが繋がっている。なお、周方向において外周側覆部25bと外周側覆部25gは繋がっておらず、外周側覆部25hと外周側覆部25mとは繋がっていない。
【0043】
突起部25pは、上下方向から見たときの形状が略三角形状となるように形成されており、略三角形状をなす突起部25pの1つの頂点が径方向における突起部25pの外側端となっている。具体的には、突起部25pは、上下方向から見たときの形状が略二等辺三角形状となるように形成されている。また、略二等辺三角形の頂角に対応する突起部25pの1つの頂点が径方向における突起部25pの外側端となっている。なお、径方向における突起部25pの外側端となる突起部25pの1つの頂点は曲面状(R形状)に形成されている。そのため、後述するステータ6の製造工程において、駆動用コイル23の一部を構成する後述の渡り線23aが突起部25pに接触したときの渡り線23aの断線を防止することが可能になっている。
【0044】
図2に示すように、径方向における突起部25pの外側端は、ステータコア24の外周環部24aの外周面よりも径方向の外側へ突出している。また、径方向における突起部25pの外側端は、曲面状に形成されている。突起部25pは、上下方向から見たときに、略六角形状をなす外周環部24aの内周面の頂点部分と重なるように配置されている。本形態では、腕部25rを介して外周側覆部25b〜25gに繋がる突起部25pは、第1突起部であり、腕部25rを介して外周側覆部25h〜25mに繋がる突起部25pは、第2突起部である。
【0045】
腕部25rは、上述のように、弾性変形可能となっている。すなわち、腕部25rは、バネ性(可撓性)を有している。この腕部25rは、上下方向から見たときの形状が略U形状をなす細い帯状となるように形成されている。腕部25rは、周方向における突起部25pの両端側に配置されている。また、腕部25rは、上下方向から見たときの形状が略二等辺三角形状となる突起部25pの3つの頂点のうちの、底角に対応する2つの頂点のそれぞれの近傍に繋がっている。
【0046】
駆動用コイル23は、アルミニウム合金または銅合金からなる導線によって構成されている。この駆動用コイル23は、インシュレータ25の第1覆部25aを介して突極部24b〜24gに巻回されている。上述のように、モータ3は、三相モータであり、ステータ6は、U相の駆動用コイル23と、V相の駆動用コイル23と、W相の駆動用コイル23とを備えている。本形態では、U相の駆動用コイル23は、突極部24b、24eに巻回され、V相の駆動用コイル23は、突極部24c、24fに巻回され、W相の駆動用コイル23は、突極部24d、24gに巻回されている。
【0047】
また、本形態では、U相の駆動用コイル23は、1本の導線が突極部24b、24eに順次巻回されることで形成されている。図4に示すように、U相の駆動用コイル23の一部を構成する渡り線23aは、外周側覆部25c、25dの外周側を通過するように引き回されている。すなわち、U相の駆動用コイル23の渡り線23aは、ステータコア6の下端側で引き回されている。U相の駆動用コイル23の一端側は、径方向において突極部24bの外側に配置される端子ピン26に絡げられて固定され、U相の駆動用コイル23の他端側は、径方向において突極部24eの外側に配置される端子ピン26に絡げられて固定されている。
【0048】
また、U相の駆動用コイル23の渡り線23aは、径方向における突起部25pの外側端に接触している。具体的には、U相の駆動用コイル23の渡り線23aは、外周側覆部25bと外周側覆部25cとの間に配置される突起部25pの径方向外側端、外周側覆部25cと外周側覆部25dとの間に配置される突起部25pの径方向外側端、および、外周側覆部25dと外周側覆部25eとの間に配置される突起部25pの径方向外側端に接触している。なお、U相の駆動用コイル23の渡り線23aは、外周側覆部25bと外周側覆部25cとの間に配置される突起部25p、外周側覆部25cと外周側覆部25dとの間に配置される突起部25p、および、外周側覆部25dと外周側覆部25eとの間に配置される突起部25pの少なくともいずれか1つの径方向外側端に接触していなくても良い。
【0049】
同様に、V相の駆動用コイル23は、1本の導線が突極部24c、24fに順次巻回されることで形成されており、V相の駆動用コイル23の一部を構成する渡り線23aは、外周側覆部25j、25kの外周側を通過するように引き回されている。すなわち、V相の駆動用コイル23の渡り線23aは、ステータコア6の上端側で引き回されている。V相の駆動用コイル23の一端側は、径方向において突極部24cの外側に配置される端子ピン26に絡げられて固定され、V相の駆動用コイル23の他端側は、径方向において突極部24fの外側に配置される端子ピン26に絡げられて固定されている。
【0050】
また、V相の駆動用コイル23の渡り線23aは、外周側覆部25iと外周側覆部25jとの間に配置される突起部25pの径方向外側端、外周側覆部25jと外周側覆部25kとの間に配置される突起部25pの径方向外側端、および、外周側覆部25kと外周側覆部25lとの間に配置される突起部25pの径方向外側端に接触している。なお、V相の駆動用コイル23の渡り線23aは、外周側覆部25iと外周側覆部25jとの間に配置される突起部25p、外周側覆部25jと外周側覆部25kとの間に配置される突起部25p、および、外周側覆部25kと外周側覆部25lとの間に配置される突起部25pの少なくともいずれか1つの径方向外側端に接触していなくても良い。
【0051】
また、W相の駆動用コイル23は、1本の導線が突極部24d、24gに順次巻回されることで形成されており、W相の駆動用コイル23の一部を構成する渡り線23aは、外周側覆部25e、25fの外周側を通過するように引き回されている。すなわち、W相の駆動用コイル23の渡り線23aは、ステータコア6の下端側で引き回されている。W相の駆動用コイル23の一端側は、径方向において突極部24dの外側に配置される端子ピン26に絡げられて固定され、W相の駆動用コイル23の他端側は、径方向において突極部24gの外側に配置される端子ピン26に絡げられて固定されている。
【0052】
また、W相の駆動用コイル23の渡り線23aは、外周側覆部25dと外周側覆部25eとの間に配置される突起部25pの径方向外側端、外周側覆部25eと外周側覆部25fとの間に配置される突起部25pの径方向外側端、および、外周側覆部25fと外周側覆部25gとの間に配置される突起部25pの径方向外側端に接触している。なお、W相の駆動用コイル23の渡り線23aは、外周側覆部25dと外周側覆部25eとの間に配置される突起部25p、外周側覆部25eと外周側覆部25fとの間に配置される突起部25p、および、外周側覆部25fと外周側覆部25gとの間に配置される突起部25pの少なくともいずれか1つの径方向外側端に接触していなくても良い。
【0053】
(ステータの製造方法)
図5は、図1に示すステータ6の製造方法を説明するための図であり、(A)はステータコア24となるコア原体54の平面図、(B)は(A)に示すコア原体54にインシュレータ24および端子ピン26が取り付けられた状態の平面図である。図6は、図5(B)に示すコア原体54にインシュレータ24および端子ピン26が取り付けられた状態の斜視図である。図7は、図5のF部の拡大図である。
【0054】
ステータ6は、以下のように製造される。すなわち、まず、図5(B)に示すように、ステータコア24となるコア原体54に、絶縁部材であるインシュレータ25を取り付ける(絶縁部材取付工程)。コア原体54は、図5(A)に示すように、折り曲げ部54aを介して繋がる6個の外周部24hによって構成される直線状の帯状部54bと、6個の外周部24hのそれぞれから帯状部54bの長手方向に直交するX1方向へ突出する6個の突極部24b〜24gとを備えている。
【0055】
インシュレータ25は、上述のように、突極部24b〜24gを覆う第1覆部25aと、外周部24hを覆う第2覆部とを備えている。第2覆部は、外周側覆部25b〜25mを備えている。すなわち、第2覆部は、コア原体54の厚さ方向(図5の紙面垂直方向)における外周部24hの両端面の一部を覆う外周側覆部25b〜25mを備えている。また、インシュレータ25は、突起部25pと腕部25rとを備えている。
【0056】
上述のように、インシュレータ25は、上下方向に2分割される2つの上インシュレータと下インシュレータとによって構成されているか、あるいは、インサート成形によってステータコア24と一体で形成されている。そのため、絶縁部材取付工程では、上インシュレータと下インシュレータとの間にコア原体54を挟み込んだ状態で上インシュレータと下インシュレータとを互いに固定することで、コア原体54にインシュレータ25を取り付ける。あるいは、絶縁部材取付工程では、インサート成形によって、コア原体54にインシュレータ25を取り付ける。また、絶縁部材取付工程では、外周側覆部25b〜25gに端子ピン26を固定する。
【0057】
帯状部54bに対する突極部24b〜24gの突出方向であるX1方向の逆方向をX2方向とすると、コア原体54にインシュレータ25が取り付けられた状態では、図7に示すように、インシュレータ25の突起部25pのX2方向側の端面は、外周側覆部25b〜25mよりもX2方向側へ突出している。また、突起部25pのX2方向側の端面は、帯状部54bよりもX2方向側へ突出しており、突起部25pのX2方向側の端面は、外周側覆部25b〜25mよりもX2方向側へ大きく突出している。本形態のX2方向は、第1方向である。
【0058】
その後、第1覆部25aを介して突極部24b〜24gに駆動用コイル23を巻回する(コイル巻回工程)。具体的には、U相の駆動用コイル23を構成する導線の一端側を突極部24bのX2方向側に配置される端子ピン26に絡げて固定した後、この導線を突極部24b、24eに順次巻回してから、この導線の他端側を突極部24eのX2方向側に配置される端子ピン26に絡げて固定する。このときには、外周側覆部25bと外周側覆部25cとの間に配置される突起部25pのX2方向側端、外周側覆部25cと外周側覆部25dとの間に配置される突起部25pのX2方向側端、および、外周側覆部25dと外周側覆部25eとの間に配置される突起部25pのX2方向側端に、U相の駆動用コイル23の渡り線23aが所定の接触圧で接触するように導線を引き回す。
【0059】
また、コイル巻回工程では、V相の駆動用コイル23を構成する導線の一端側を突極部24cのX2方向側に配置される端子ピン26に絡げて固定した後、この導線を突極部24c、24fに順次巻回してから、この導線の他端側を突極部24fのX2方向側に配置される端子ピン26に絡げて固定する。このときには、外周側覆部25iと外周側覆部25jとの間に配置される突起部25pのX2方向側端、外周側覆部25jと外周側覆部25kとの間に配置される突起部25pのX2方向側端、および、外周側覆部25kと外周側覆部25lとの間に配置される突起部25pのX2方向側端に、V相の駆動用コイル23の渡り線23aが所定の接触圧で接触するように導線を引き回す。
【0060】
また、コイル巻回工程では、W相の駆動用コイル23を構成する導線の一端側を突極部24dのX2方向側に配置される端子ピン26に絡げて固定した後、この導線を突極部24d、24gに順次巻回してから、この導線の他端側を突極部24gのX2方向側に配置される端子ピン26に絡げて固定する。このときには、外周側覆部25dと外周側覆部25eとの間に配置される突起部25pのX2方向側端、外周側覆部25eと外周側覆部25fとの間に配置される突起部25pのX2方向側端、および、外周側覆部25fと外周側覆部25gとの間に配置される突起部25pのX2方向側端に、W相の駆動用コイル23の渡り線23aが所定の接触圧で接触するように導線を引き回す。
【0061】
その後、直線状の帯状部54bが環状をなす外周環部24aとなるように、かつ、径方向における外周環部24aの内側へ突極部24b〜24gが突出するように、帯状部54bを折り曲げ部54aで折り曲げる(帯状部折曲工程)。帯状部折曲工程では、渡り線23aが引っ張られるため、渡り線23aによって突起部25pが径方向の内側に押されて腕部25rが変形し、図7に示すようにX2方向側へ突出していた突起部25pが図4に示すように径方向の内側へ移動する。すなわち、突起部25pおよび腕部25rは、ステータ6の製造時に、渡り線23aの張力を緩和する機能を果たしている。また、帯状部折曲工程では、帯状部54bの端部同士を溶接等によって繋ぐ。帯状部54bの端部同士が繋がれた部分は、つなぎ目24jとなる。なお、帯状部折曲工程後に、渡り線23aの張力が大きくなった場合には、突起部25pがさらに径方向の内側へ移動して、渡り線23aの張力が緩和される。
【0062】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、インシュレータ25は、周方向において外周側覆部25b〜25mの間に配置される突起部25pを備えており、突起部25pは、外周側覆部25b〜25mに対して径方向への移動が可能となるように弾性変形可能な腕部25rを介して外周側覆部25b〜25mに繋がっている。また、本形態では、ステータ6を製造する際のコイル巻回工程において、外周側覆部25b〜25mよりもX2方向側へ大きく突出している突起部25pのX2方向側の端面に、駆動用コイル23の渡り線23aが所定の接触圧で接触するように駆動用コイル23を突極部24b〜24gに巻回するとともに、帯状部折曲工程では、渡り線23aによって突起部25pが径方向の内側に押されて腕部25rが変形し、突起部25pが径方向の内側へ移動している。そのため、本形態では、帯状部折曲工程において渡り線23aに作用する張力を低減することが可能になる。したがって、本形態では、上下方向から見たときに、カーリングコアであるステータコア24の外周側に渡り線23aが配置されていても渡り線23aの断線を防止することが可能になる。
【0063】
本形態では、外周環部24aの上下の両側で、外周側覆部25b〜25mの間に突起部25pが配置されている。また、本形態では、U相の駆動用コイル23の渡り線23aおよびW相の駆動用コイル23の渡り線23aは、ステータコア6の下端側で引き回され、V相の駆動用コイル23の渡り線23aは、ステータコア6の上端側で引き回されている。そのため、本形態では、外周側覆部25b〜25gの間に配置される突起部25pを利用して、U相の駆動用コイル23の渡り線23aおよびW相の駆動用コイル23の渡り線23aの断線を防止するとともに、外周側覆部25h〜25mの間に配置される突起部25pを利用して、V相の駆動用コイル23の渡り線23aの断線を防止しながら、U相の駆動用コイル23の渡り線23aおよびW相の駆動用コイル23の渡り線23aをステータコア6の下端側で引き回し、V相の駆動用コイル23の渡り線23aをステータコア6の上端側で引き回すことが可能になる。したがって、本形態では、各相の駆動用コイル23の渡り線23aの断線を防止しつつ、各相の駆動用コイル23同士の接触を防止して各相の駆動用コイル23間の短絡を防止することが可能になる。
【0064】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0065】
上述した形態では、ステータコア24は、6個の突極部24b〜24gを備えているが、ステータコア24は、6個以上の突極部24b〜24gを備えていても良い。この場合には、たとえば、上下方向から見たときのステータコア24の内周面は、突極部24b〜24gの数に応じた多角形状に形成される。また、この場合には、たとえば、帯状部54bと複数の突極部24b〜24gとを有する2個以上のコア原体54を用いてステータ6を製造しても良い。この場合には、帯状部折曲工程において、帯状部54bが円弧状等の弧状をなす外周弧部となるように帯状部54bを折り曲げ部54aで折り曲げるとともに、その後、帯状部折曲工程で折り曲げられたインシュレータ25付きの2個以上のコア原体54を周方向で組み合わせることでステータ6を製造しても良い。すなわち、ステータコア24は、カーリングコアからなる複数の分割コアによって構成されても良い。
【0066】
上述した形態では、帯状部折曲工程において、渡り線23aによって突起部25pが径方向の内側に押されて腕部25rが変形し、突起部25pが径方向の内側へ移動している。この他にもたとえば、帯状部折曲工程において、渡り線23aによって突起部25pが径方向の内側に押されて、突起部25pに繋がる2本の腕部25rのうちの一方または両方が折れても良い。また、帯状部折曲工程において、突起部25pに繋がる2本の腕部25rのうちの一方または両方を強制的に折り取っても良い。この場合には、腕部25rに切欠きが形成されていることが好ましい。この場合であっても、帯状部折曲工程において渡り線23aに作用する張力を低減することが可能になるため、上下方向から見たときに、カーリングコアであるステータコア24の外周側に渡り線23aが配置されていても渡り線23aの断線を防止することが可能になる。
【0067】
上述した形態では、突起部25pは、上下方向から見たときの形状が略三角形状となるように形成されているが、突起部25pは、たとえば、上下方向から見たときの形状が半円形状や半楕円形状となるように形成されても良い。また、上述した形態では、径方向における突起部25pの外側端は、ステータコア24の外周環部24aの外周面よりも径方向の外側へ突出しているが、径方向における突起部25pの外側端は、外周環部24aの外周面より径方向の内側に配置されていても良い。
【0068】
上述した形態では、外周部24hの上下の両側に突起部25pおよび腕部25rが配置されているが、外周部24hの上側または下側のみに突起部25pおよび腕部25rが配置されても良い。また、上述した形態では、突起部25pおよび腕部25rは、外周側覆部25b〜25mと一体で形成されているが、外周側覆部25b〜25mと別体で形成された突起部25pおよび腕部25rが外周側覆部25b〜25mに固定されても良い。
【0069】
上述した形態では、モータ3は、ポンプ装置1で使用されているが、モータ3は、ポンプ装置1以外の装置で使用されても良い。また、上述した形態では、ステータ6は、モータ3で使用されているが、ステータ6は、発電機で使用されても良い。
【符号の説明】
【0070】
3 モータ
5 ロータ
6 ステータ
14 駆動用磁石
23 駆動用コイル(コイル)
23a 渡り線
24 ステータコア
24a 外周環部
24b〜24g 突極部
24h 外周部
25 インシュレータ(絶縁部材)
25a 第1覆部(突極覆部)
25b〜25g 外周側覆部(第1外周側覆部)
25h〜25m 外周側覆部(第2外周側覆)
25p 突起部(第1突起部、第2突起部)
25r 腕部
54 コア原体
54a 折り曲げ部
54b 帯状部
X1 突極部の突出方向
X2 第1方向
図1
図2
図3
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図5
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図9