(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化珪素からなる中間層を介して、シリコンからなる支持層とシリコンからなるデバイス層とが積層された積層基板の前記デバイス層に、酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜形成工程において形成された酸化膜の表側面に、時計の駆動機構を構成する時計部品の形状に基づく第1のパタンの第1のレジストパタンを形成する第1のパタン形成工程と、
前記酸化膜および前記デバイス層に対して、前記第1のパタン形成工程において形成された第1のレジストパタン部分を残して残余を除去するエッチング加工をおこなう第1のエッチング工程と、
前記支持層の裏側面に、当該支持層の厚さ方向において前記第1のパタンと一部が重複し当該第1のパタンを含む所定領域の内側に配置され、当該支持層の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔または溝を含む第2のパタンの第2のレジストパタンを形成する第2のパタン形成工程と、
前記支持層に対して、前記第2のパタン形成工程において形成された第2のレジストパタン部分を残して残余を除去するエッチング加工をおこなう第2のエッチング工程と、
前記所定領域の内側における前記中間層および前記酸化膜を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする時計部品の製造方法。
前記第2のレジストパタンは、前記所定領域の外側の部分を覆う外枠部と、前記複数の貫通孔または溝の位置を避けて前記所定領域の内側を覆うパタン部と、前記外枠部と前記パタン部との境界位置を開放する開放部と、からなることを特徴とする請求項1に記載の時計部品の製造方法。
前記第1のレジストパタンは、前記所定領域の外側の部分を覆う部品外枠部と、前記時計部品の形状をなす部品形状部と、当該部品形状部と前記部品外枠部とを接続する部品接続部と、からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の時計部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる時計部品の製造方法および当該製造方法によって製造される時計部品の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
まず、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される、この発明にかかる実施の形態の時計部品が組み込まれる時計の駆動機構として、機械式時計の駆動機構について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される、この発明にかかる実施の形態の時計部品が組み込まれる機械式時計の駆動機構を示す説明図である。
【0015】
図1において、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される時計部品が組み込まれる機械式時計の駆動機構101は、香箱102、脱進機103、調速機構(てんぷ)104、輪列105などを備えている。香箱102は、薄い円筒形状をなす箱の内側に、図示を省略する動力ぜんまいを収容している。香箱102の外周部には香箱車と呼ばれる歯車が設けてあり、香箱車は輪列105を構成する番車と噛み合っている。
【0016】
動力ぜんまいは、巻回された状態の長尺状の金属薄板であって、香箱102の中に収容されている。動力ぜんまいの中心の端部(巻回された状態において内周側に位置する端部)は、香箱102の中心軸(香箱真)に取り付けられている。動力ぜんまいの外側の端部(巻回された状態において外周側に位置する端部)は、香箱102の内面に取り付けられている。
【0017】
脱進機103は、がんぎ車106およびアンクル107によって構成される。がんぎ車106は、カギ型の歯を備えた歯車であって、がんぎ車106の歯はアンクル107に噛み合う。アンクル107は、がんぎ車106の歯に噛み合うことによってがんぎ車106の回転運動を往復運動に変換する。
【0018】
てんぷ104は、ひげぜんまい108やてん輪109などによって構成される。ひげぜんまい108は、巻回された状態の長尺状の部材であって、渦巻き形状をなしている。ひげぜんまい108は、機械式時計に組み込まれて駆動機構101を構成した状態において、優れた等時性を示すように設計されている。
【0019】
てんぷ104は、ひげぜんまい108のバネ力による伸縮によって、規則正しく往復運動をおこなうことができる。てん輪109は、リング形状をなし、アンクル107からの反復運動を調節・制御して、一定速度の振動を保つ。てん輪109は、てん輪109がなすリング形状の内側に、てん輪109の中心(てん真)109aから放射状に延設するアームを備えている。
【0020】
輪列105は、香箱102からがんぎ車106の間に設けられて、それぞれが噛み合わされた複数の歯車によって構成される。具体的には、輪列105は、二番車110、三番車111、四番車112などによって構成される。香箱102の香箱車は、二番車110と噛み合っている。四番車112には秒針113が装着され、二番車110には分針114が装着されている。
図1においては、時針や各歯車を支持する地板などは図示を省略する。
【0021】
駆動機構101においては、動力ぜんまいの中心は逆回転できないように香箱102の中心(香箱真)に固定されており、動力ぜんまいの外側の端部は香箱の内周面に固定されているため、香箱102の中心(香箱真)に巻き付けられた動力ぜんまいが元に戻ろうとすると、巻き上げられた方向と同じ方向にほどけようとする動力ぜんまいの外側の端部に付勢されて、香箱102が巻き上げられたぜんまいがほどける方向と同じ方向に回転する。香箱102の回転は、二番車110、三番車111、四番車112に順次伝達され、四番車112からがんぎ車106に伝達される。
【0022】
がんぎ車106にはアンクル107が噛み合っているため、がんぎ車106が回転すると、がんぎ車106の歯(衝撃面)がアンクル107の入り爪を押し上げ、これによってアンクル107におけるてんぷ104側の先端がてんぷ104を回転させる。てんぷ104が回転すると、アンクル107の出爪が即座にがんぎ車106を停止させる。てんぷ104がひげぜんまい108の力で逆回転すると、アンクル107の入り爪が解除され、がんぎ車106が再び回転する。
【0023】
このように、調速機構は、等時性のあるひげぜんまい108の伸縮によっててんぷ104に規則正しい往復回転運動を繰り返させ、脱進機103は、てんぷ104に対して往復運動するための力を与え続けるとともに、てんぷ104からの規則正しい振動によって輪列105における各歯車を一定速度で回転させる。がんぎ車106、アンクル107、てんぷ104は、てんぷ104の往復運動を回転運動に変換する調速機構を構成する。
【0024】
(ひげぜんまい108の構造)
図2は、ひげぜんまい108の構造を示す説明図である。
図2においては、ひげぜんまい108を
図1における矢印X方向から見た平面図と、当該平面図におけるA−A断面と、を示している。
図2において、ひげぜんまい108は、細いコイル形状のぜんまい部201を備えている。また、ひげぜんまい108は、細いコイル形状のぜんまい部201における、内周側の端部に設けられたひげ玉202を備えている。
【0025】
ぜんまい部201とひげ玉202とは、接続部202aによって接続されている。ぜんまい部201は、接続部202aを介して、ひげ玉202を中心にひげ玉202を巻回するコイル形状をなす。さらに、ひげぜんまい108は、細いコイル形状のぜんまい部201における、外周側の端部に設けられたひげ持203を備えている。ひげ持203は、てんぷ104を支持するてんぷ受(図示を省略する)に固定される。
【0026】
図2において、符号tは、ひげぜんまい108の厚さ寸法を示している。ひげぜんまい108の厚さ寸法は、後述する積層基板(SOI基板)におけるSi層の板厚寸法または、シリコン単結晶基板から形成される厚さ方向の寸法に応じて定められる。
図2において、符号wは、ひげぜんまい108の平面視における幅寸法を示している。
【0027】
ひげぜんまい108の幅寸法は、ひげぜんまい108における位置に応じて異ならせてもよい。すなわち、ひげぜんまい108におけるぜんまい部201の一部の幅寸法をwとし、別の一部の幅寸法をwよりも大きい寸法としてもよい。具体的には、たとえば、ひげぜんまい108の長さ方向(ひげ玉202から渦巻きに沿って外周側のひげ持203までの方向)において、特定の位置の幅寸法を選択的に異ならせてもよい。これにより、ひげぜんまい108の柔軟性あるいは伸縮性を低下させることなく、強度を効果的に高めることができる。
【0028】
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態においては、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品として、ひげぜんまい108の製造方法について説明する。
図3〜
図8および
図10〜
図13は、この発明にかかる実施の形態の、機械式時計の駆動機構101を構成するひげぜんまい108の製造方法を示す説明図である。
【0029】
この発明にかかる実施の形態の製造方法によるひげぜんまい108の製造に際しては、まず、
図3に示す積層基板(SOI基板)314を形成する。積層基板314は、
図3に示すように、支持層311、中間層(Box層)312およびデバイス層313の3つの層を備えている。積層基板314において、支持層311、中間層312およびデバイス層313は、厚さ方向に沿って順次積層されている。積層基板314において、中間層312は、支持層311とデバイス層313との間に挟まれている。
【0030】
積層基板314の形成に際しては、まず、支持層311の一方の面に、中間層312を形成する。支持層311は、シリコン(Si)からなる。中間層312は、二酸化ケイ素(SiO
2)からなる。中間層312は、以降の工程において、深掘りRIE技術によるエッチング加工をおこなう際のストッパとして機能する。中間層312は、公知の各種の成膜技術や公知の各種の酸化技術を用いて形成することができる。中間層312の形成方法については説明を省略する。
【0031】
この実施の形態においては、以降、支持層311における中間層312が形成される側の面を支持層311の「表側面」として説明し、支持層311における表側面とは反対側の面を支持層311の「裏側面」として説明する。また、この実施の形態においては、以降、中間層312における支持層311とは反対側の面を中間層312の「表側面」として説明し、中間層312における支持層311側の面を中間層312の「裏側面」として説明する。
【0032】
積層基板314の形成方法については、図示を省略するが、積層基板314の形成に際しては、まず、支持層311の表側面に中間層312を形成し、その後、当該中間層312の表側面にデバイス層313を形成する。デバイス層313は、支持層311と同様にシリコン(Si)からなる。これにより、支持層311、中間層312およびデバイス層313が厚さ方向に沿って順次積層され、支持層311とデバイス層313との間に中間層312が挟まれた状態の積層基板(SOI基板)314が形成される。この実施の形態においては、以降、デバイス層313における中間層312とは反対側の面をデバイス層313の「表側面」として説明し、デバイス層313における中間層312側の面をデバイス層313の「裏側面」として説明する。
【0033】
デバイス層313は、公知の各種の成膜技術を用いて形成することができる。デバイス層313の形成方法については説明を省略する。この発明にかかる製造方法により、積層基板314を用いて製造される時計部品は、デバイス層313に形成される。すなわち、この発明にかかる実施の形態のひげぜんまい108は、後述する製造方法によって製造することによりデバイス層313の一部によって実現される。
【0034】
つぎに、
図4に示すように、デバイス層313の表側面に酸化膜401を成膜する。酸化膜401は、デバイス層313の表側面の全面にわたって成膜する。酸化膜401は、たとえば、上記の中間層312と同様に、二酸化ケイ素(SiO
2)によって形成することができる。ここに、デバイス層313の表側面に酸化膜401を成膜する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における酸化膜形成工程を実現することができる。
【0035】
つぎに、酸化膜401の表側面(すなわち、酸化膜401におけるデバイス層313とは反対側の面)に、レジストパタニングをおこなう。レジストパタニングに際しては、まず、酸化膜401の表側面に、フォトレジストを塗布する。フォトレジストは、たとえば、酸化膜401の表側面の全面にわたって塗布する。つぎに、酸化膜401を、当該酸化膜401の表側面から、ひげぜんまい108の形状に基づいたパタン状に露光する。そして、露光をおこなった後の積層基板314を現像液によって処理して、不要なフォトレジストを除去する。
【0036】
これによって、
図5に示すように、デバイス層313の表側面に、ひげぜんまい108の形状に基づいた第1のレジストパタン501を形成することができる。第1のレジストパタン501は、
図5において符号500で示す領域に形成される。ここに、酸化膜401の表側面に第1のレジストパタン501を形成するレジストパタニングによって、この発明にかかる時計部品の製造方法における第1のパタン形成工程を実現することができる。
【0037】
レジストパタニングに際して用いるフォトレジストは、光(あるいは電子線など)に露光されることによって現像液に対する溶解性などの物性が変化する感光性の物質であって、たとえば、露光されることによって現像液に対して溶解性が増大するポジ型のフォトレジストを用いることができる。あるいは、レジストパタニングに際しては、ポジ型のフォトレジストに代えて、たとえば、露光されることによって現像液に対して溶解性が低下するネガ型のフォトレジストを用いてもよい。
【0038】
露光パタンは、ポジ型のフォトレジストを用いるか、ネガ型のフォトレジストを用いるかによって異なる。ポジ型のフォトレジストを用いる場合の露光パタンと、ネガ型のフォトレジストを用いる場合の露光パタンとは、露光位置が反転した関係にある。レジストパタニングにかかる一連の処理については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。上記のようにフォトリソグラフィ技術を用いることにより、第1のレジストパタン501を高精度に形成することができる。
【0039】
つぎに、酸化膜エッチングをおこなう。酸化膜エッチングは、第1のレジストパタン501を用いた、酸化膜401に対するエッチング加工によって実現される。この酸化膜エッチングにより、
図6に示すように、酸化膜401のうち第1のレジストパタン501によって覆われていない部分が除去され、酸化膜401の一部が第1のレジストパタン501の形状に応じた形状に加工される。
【0040】
つぎに、デバイスエッチングをおこなう。デバイスエッチングは、第1のレジストパタン501の形状に応じた形状に加工された酸化膜401および当該酸化膜401に積層された第1のレジストパタン501を用いた、デバイス層313に対するエッチング加工によって実現される。このデバイスエッチングにより、
図7に示すように、デバイス層313のうち酸化膜401および第1のレジストパタン501によって覆われていない部分が除去され、デバイス層313の一部が酸化膜401および第1のレジストパタン501の形状に応じた形状に加工される。ここに、酸化膜エッチングおよびデバイスエッチングをおこなう工程によって、第1のエッチング工程を実現することができる。
【0041】
デバイスエッチングは、エッチングガスなどの反応性の気体、イオン、ラジカルなどによって材料をエッチングするドライエッチング加工によって実現することができる。上記のように、フォトリソグラフィ技術を用いて高精度に形成された第1のレジストパタン501および当該第1のレジストパタン501によって加工された酸化膜401を用いてデバイスエッチングをおこなうことにより、デバイス層313を、ひげぜんまい108の形状にしたがって高精度に加工することができる。
【0042】
デバイスエッチングは、ドライエッチング加工の一つである反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)が好ましく、深掘りRIE技術によるドライエッチング加工によって実現することがより好ましい。デバイス層313に対するエッチング加工を、深掘りRIE技術によるドライエッチング加工によって実現することにより、高い精度での微細加工をおこなうことができる。具体的には、この実施の形態の時計部品の製造方法においては、たとえば、SF
6(六フッ化硫黄)とC
4F
8(八フッ化シクロブタン)との混合ガス(SF
6+C
4F
8)を用いて、デバイス層313を深掘りRIE技術でドライエッチングする。
【0043】
反応性イオンエッチングは、ドライエッチングに分類される微細加工技術の一つであり、反応室内でエッチングガスに電磁波などを与えプラズマ化するとともに、試料が載置される陰極に高周波電圧を印加することにより試料とプラズマの間に自己バイアス電位を生じさせ、この自己バイアス電位によってプラズマ中のイオン種やラジカル種を試料方向に加速して衝突させ、イオンによるスパッタリングと、エッチングガスの化学反応とを同時に生じさせることによって試料の加工をおこなう。深掘りRIE(Deep Reactive Ion Etching)は、反応性イオンエッチング(RIE)の一つであり、狭く深い範囲のエッチング加工、すなわち、アスペクト比の高いエッチング加工をおこなうことができる。
【0044】
デバイスエッチングをおこなった後、
図8に示すように、デバイス層313に形成した第1のレジストパタン501を除去(剥離)する。第1のレジストパタン501は公知の各種の方法によって容易に除去可能であるため、第1のレジストパタン501の除去方法や除去手順などについては説明を省略する。
【0045】
図9は、第1のレジストパタン501を除去した状態の積層基板314を、表側面から見た状態を示す説明図である。
図9に示すように、ひげぜんまい108の形状に成形された部分のデバイス層313(以下、「部品部901」という)は、接続部902部分のみを介して、積層基板314と接続されている。上述した
図3〜
図8および後述する
図10〜13は、積層基板314を、
図9におけるB−B線で切断した断面の一部を模式的に示している。
【0046】
上述したように、部品部901は、第1のレジストパタン501の形状にエッチングされている。第1のレジストパタン501は、領域500の外側の部分を覆う部品外枠部と、ひげぜんまい108の形状をなす部品形状部と、当該部品形状部と部品外枠部とを接続する部品接続部と、からなる。このような第1のパタンをなす第1のレジストパタン501を用いてデバイスエッチングをおこなうことにより、
図9に示すように、部品外枠部に応じた部品外枠部903と、部品形状部に応じた部品部901と、当該部品部901と部品外枠部903とを接続する接続部902と、が形成される。
【0047】
図8や
図9に示すように、デバイスエッチングにより第1のレジストパタン501を除去した状態の積層基板314において、部品部901の周囲の部分は、デバイス層313が除去されているため、積層基板314の表側面から裏側面に向かって凹んでいる。凹みの深さは、デバイス層313の板厚方向の寸法であって、凹みの底部分には中間層312が露出している。接続部902は、後述するひげぜんまい108の製造工程における最後の工程において、部品部901を積層基板314からもぎ取る作業に支障がない程度の細さになるように形成されている。部品外枠部903においては、デバイス層313が露出している。
【0048】
つぎに、支持層311の裏側面に、支持層側レジストパタニングをおこなう。支持層側レジストパタニングは、上記の第1のレジストパタン501にかかるレジストパタニングと同様にしておこなうことができる。支持層レジストパタニングにかかる一連の処理については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
【0049】
支持層レジストパタニングにより、
図10に示すように、支持層311の裏側面に、第2のレジストパタン1001を形成することができる。ここに、第2のレジストパタン1001を形成する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における第2のパタン形成工程を実現することができる。上記のようにフォトリソグラフィ技術を用いることにより、第2のレジストパタン1001を高精度に形成することができる。
【0050】
第2のレジストパタン1001は、積層基板314の板厚方向において、ひげぜんまい108の形状に成形された部分のデバイス層313と重なる位置を覆い、かつ、
図10において符号1000で示す所定領域の内側において第2のパタンをなすように形成する。所定領域1000は、積層基板314の板厚方向において、
図5における領域500の全部と重なっており、かつ、領域500よりも大きいことが好ましい。
【0051】
第2のレジストパタン1001がなす第2のパタンは、一部に、積層基板314の板厚方向に貫通する貫通孔または溝を備える。第2のレジストパタン1001がなす第2のパタンについては、後述する(
図14〜
図23を参照)。これにより、
図10に示すように、所定領域1000に含まれる位置における支持層311は、第2のレジストパタン1001によって一部が覆われ、残余の一部が外部に露出された状態とされている。
【0052】
つぎに、支持層エッチングをおこなう。支持層エッチングは、第2のレジストパタン1001を用いた、支持層311に対するエッチング加工によって実現される。上記のように、支持層311はデバイス層313と同様にシリコンからなるため、支持層エッチングは、デバイスエッチングと同様に、SF
6(六フッ化硫黄)とC
4F
8(八フッ化シクロブタン)との混合ガス(SF
6+C
4F
8)を用いた深掘りRIE技術によるドライエッチングによって実現することができる。
【0053】
この支持層エッチングにより、支持層311は、
図11に示すように、第2のレジストパタン1001の形状に応じた形状に加工される。支持層エッチングは、支持層311のうち第2のレジストパタン1001によって覆われていない部分が板厚方向に貫通し、中間層312が露出するまでおこなう。ここに、支持層エッチングをおこなう工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における第2のエッチング工程を実現することができる。
【0054】
上記のように、第2のレジストパタン1001は所定領域1000において一部に、積層基板314の板厚方向に貫通する貫通孔または溝を備えた形状であるため、支持層エッチングにより、支持層311のうち第2のレジストパタン1001によって覆われていない部分が除去され、支持層311のうち第2のレジストパタン1001によって覆われていた部分(以下、「支持部1002」という)が中間層312に接合した状態で残る。
【0055】
このように、所定領域1000において支持層311の一部を残して支持層エッチングをおこなうことにより、
図11に示すように、部品部901を、デバイス層313の裏側面から、中間層312および支持部1002によって支えることができる。これにより、支持層エッチングをおこなった後も、部品部901が積層基板314から脱落してしまうことを防止できる。
【0056】
仮に、支持層エッチングに際して所定領域1000における支持層311をすべてエッチングすると、支持層エッチング後の部品部901の裏側面は、積層基板314を支持する台などから浮き上がった状態となる。部品部901は、接続部902のみを介して積層基板314と接続されているため、浮き上がった状態では、接続部902を支点として部品部901が板厚方向に揺動しやすくなる。そして、接続部902を支点として部品部901が揺動すると接続部902に負荷がかかり、接続部902が破損して部品部901が積層基板314から脱落しやすくなる。
【0057】
ひげぜんまい108などの時計部品はサイズが小さく、また、量産性の向上を図るため、レジストパタニングに際しては、1枚の積層基板314に複数の時計部品が配列した第1のレジストパタン501を形成する。また、ひげぜんまい108などの時計部品の製造工程において、各工程の間には、前の工程にかかる処理がおこなわれた積層基板314をつぎの工程をおこなう場所に移動あるいは運搬する。このため、接続部902の破損による、積層基板314からの部品部901の脱落が起こり易いと、量産性の向上を図ることが難しい。
【0058】
実際の製造に用いる中間層312は極めて薄く、中間層312のみでは、積層基板314の板厚方向において浮き上がった状態の部品部901を、上記のような移動や運搬による部品部901の脱落を十分に防止することは難しい。このため、仮に、支持層エッチングに際して所定領域1000における支持層311をすべてエッチングすると、支持層エッチング以降の工程における部品部901の脱落が発生しやすくなることが懸念される。
【0059】
これに対し、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、デバイス層313の裏側面から、中間層312により部品部901の全体を支え、この中間層312すなわち部品部901が過剰に積層基板314の裏側面に向かって弛まない(垂れ下がらない)ように、当該部品部901を支持することができる。これにより、支持層エッチング以降の工程における部品部901の脱落を防止できる。
【0060】
つぎに、支持層エッチングをおこなった積層基板314から、
図12に示すように、第2のレジストパタン1001を除去(剥離)する。第2のレジストパタン1001は、上記のデバイス層313に形成した第1のレジストパタン501の除去と同様にしておこなうことができる。第2のレジストパタン1001は公知の各種の方法によって容易に除去可能であるため、第1のレジストパタン501の除去方法や除去手順などについては説明を省略する。
【0061】
つぎに、
図13に示すように、中間層312および酸化膜401を除去する。中間層312および酸化膜401は、ウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。中間層312および酸化膜401は、具体的には、たとえば、フッ酸を用いて、支持層311およびデバイス層313をレジストパタンとしたウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。ここに、中間層312および酸化膜401を除去する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における除去工程を実現することができる。
【0062】
上述したように、支持層エッチングは、支持層311のうち第2のレジストパタン1001によって覆われていない部分が、板厚方向に貫通し、中間層312が露出するまでおこなっている。また、上述したように、デバイスエッチングは、デバイス層313のうち第1のレジストパタン501によって覆われていない部分が、板厚方向に貫通し、中間層312が露出するまでおこなっている。
【0063】
このため、ウエットエッチングに際しては、所定領域1000の部分において中間層312の一部が、中間層312に接合した支持部1002と部品部901との間に残っているものの、この部分にエッチング液を確実に回り込ませ、所定領域1000の部分における中間層312を確実に除去することができる。これにより、
図13に示すように、所定領域1000において、接続部902のみを介して積層基板314に接合されたメンブレン構造の部品部901を形成することができる。
【0064】
最後に、積層基板314から、部品部901をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。部品部901は、たとえば、ピンセット(図示を省略する)などの器具を用いて、接続部902の位置で折ってから部品部901を引っ張ることによってもぎ取ることができる。部品部901は、積層基板314に対して、ひげ持203の先端部分に相当する接続部902のみで接続しているため、部品部901をピンセットによって把持して引っ張るだけの作業で、容易にもぎ取ることができる。上述したような一連の製造工程を経ることによって、ひげぜんまい108を製造することができる。
【0065】
(エッチングパタンの一例)
図14は、第2のレジストパタン1001の形状の一例を示す説明図である。
図14において、第2のレジストパタン1001は、外枠部1401と、外枠部1401内に設けられたパタン部1402と、からなる。外枠部1401とパタン部1402との間には、外枠部1401とパタン部1402との境界位置を開放する開放部1403が設けられている。開放部1403は、外枠部1401とパタン部1402との間に設けられたスリット状の隙間であり、第2のレジストパタン1001の膜厚方向に当該第2のレジストパタン1001を貫通している。
【0066】
外枠部1401は、積層基板314を板厚方向に沿って見た場合に、部品部901の最外周縁よりも外側に位置する。これにより、積層基板314を板厚方向に沿って見た場合に、部品部901は、外枠部1401の内側に位置する。上述した所定領域1000は、外枠部1401によって規定される。
【0067】
パタン部1402は、外枠部1401の形状と略同一の形状をなし、パタン部1402の外周縁が外枠部1401の内周縁から離間するように外枠部1401の内周縁よりも小さい。パタン部1402は、第2のレジストパタン1001の膜厚方向すなわち積層基板314の板厚方向にパタン部1402を貫通する複数の貫通孔1402aを備えている。貫通孔1402aは、方形(四角形)状をなしている。貫通孔1402aは、正方形であってもよく、長方形であってもよい。
【0068】
外枠部1401とパタン部1402とは、接続部1404を介して接続されている。接続部1404は、1箇所に設けられていてもよく、複数箇所に設けられていてもよい。また、接続部1404は、あってもよくなくてもよい。すなわち、外枠部1401とパタン部1402とは、接続部1404を介して1箇所あるいは複数箇所で接続されていてもよく、分離していてもよい。接続部1404を設けない場合は、先に説明した除去工程で、中間層をウエットエッチングによって除去する際に、支持層で形成された支持部も同時に除去される。
【0069】
図15は、
図14に示す第2のレジストパタン1001が設けられた積層基板314を、支持層311側から見た状態を示す説明図である。
図15においては、デバイス層313に設けられる部品部901の位置を点線で示している。
図15に示すように、第2のレジストパタン1001と部品部901とは、積層基板314の板厚方向において一部重なり、別の一部が重なっていない。
【0070】
このため、第2のレジストパタン1001を用いた支持層エッチングをおこなうと、貫通孔1402aを介してレジスト液が入り込み、支持層311を第2のレジストパタン1001の形状にエッチングすることができる。これにより、パタン部1402において貫通孔1402aが設けられていない部分に支持層311を残し、部品部901(デバイス層313の裏側面)を支持することができる。
【0071】
また、第2のレジストパタン1001において、外枠部1401とパタン部1402との間の隙間である開放部1403を設けることにより、支持層エッチングをおこなうと、この開放部1403を介してレジスト液が入り込み、支持層311における所定領域1000の内側と外側とを確実に切り離しておくことができる。
【0072】
そして、支持層311における所定領域1000の内側と外側とを確実に切り離しておくことにより、ウエットエッチングに際して、所定領域1000における支持層311を、部品部901から確実に除去することができる。これにより、部品部901の裏側に支持層311を残しておいても、製造対象とするひげぜんまい108に悪影響を与えることなく、ひげぜんまい108を高精度に製造することができる。
【0073】
図16は、第2のレジストパタン1001の形状の別の一例を示す説明図であり、
図17は、
図16に示す第2のレジストパタン1001が設けられた積層基板314を、支持層311側から見た状態を示す説明図である。
図16に示すように、パタン部1402が備える複数の貫通孔1402aは、
図14に示す第2のレジストパタン1001における方形状の貫通孔1402aに代えて、円形状をなしている。
【0074】
円形状の貫通孔1402aを備えた第2のレジストパタン1001においても、
図17に示すように、第2のレジストパタン1001と部品部901とが積層基板314の板厚方向において一部重なりあうため、第2のレジストパタン1001を用いた支持層エッチングをおこなうと、外枠部1401とパタン部1402との間の隙間である開放部1403、および、貫通孔1402aを介してレジスト液が入り込み、支持層311を第2のレジストパタン1001の形状にエッチングすることができる。
【0075】
図14や
図16に示す第2のレジストパタン1001は、細かい貫通孔1402aがパタン部1402全体にわたって均一に配置されている。このため、支持層エッチングに際して、支持層311を均一にエッチングすることができ、この支持層エッチングにより支持層311に形成された貫通部分を介してウエットエッチングのエッチング液を中間層312に均一に作用させることができる。これにより、部品部901の裏側面全体にわたって、中間層312を確実に除去することができる。
【0076】
図18は、第2のレジストパタン1001の形状の別の一例を示す説明図であり、
図19は、
図18に示す第2のレジストパタン1001が設けられた積層基板314を、支持層311側から見た状態を示す説明図である。
図18に示した第2のレジストパタン1001は、外枠部1401の内側に、第2のレジストパタン1001の膜厚方向すなわち積層基板314の板厚方向にパタン部1402を貫通する複数の溝1802aを備えている。
【0077】
複数の溝1802aどうしは、外枠部1401の略中心位置から放射状に延びる枠部材1802bと、外枠部1401の略中心位置を中心とする同心円上に設けられた半径の異なる複数の円弧状の枠部材1802cと、によって区切られている。
図18に示す第2のレジストパタン1001におけるパタン部1402は、溝1802aと枠部材1802bと枠部材1802cとによって構成されている。複数の溝1802aは、略円弧状をなし、外枠部1401の略中心位置から離れるほど(外枠部1401に近づくほど)、大きく開口している。
図18に示す第2のレジストパタン1001は、
図14や
図16に示した接続部1404を備えていない。
【0078】
図18に示す第2のレジストパタン1001を用いる場合も、
図19に示すように、第2のレジストパタン1001と部品部901とが、積層基板314の板厚方向において一部重なりあっている。このため、
図18に示す第2のレジストパタン1001を、
図19に示すように積層基板314に重ねて支持層エッチングをおこなうと、外枠部1401とパタン部1402との間の隙間である開放部1403、および、溝1802aを介してレジスト液が入り込み、支持層311を第2のレジストパタン1001の形状にエッチングすることができる。これにより、パタン部1402において溝1802aが設けられていない部分に支持層311を残し、部品部901におけるデバイス層313の裏側面を支持することができる。
【0079】
図18に示すような円弧状の溝1802aを備えた第2のレジストパタン1001は、円弧状の溝1802aにより、ひげぜんまい108がなす渦巻きに沿ってエッチング液を浸透させることができる。ウエットエッチングに際して、中間層312に接合した支持部1002と部品部901との間に残っている中間層312を除去することが必要であり、ひげぜんまい108がなす渦巻きに沿ってエッチング液を浸透させることにより、ひげぜんまい108となる部品部901の裏側面全体にわたって、中間層312を確実に除去することができる。
【0080】
このように、パタン部1402は、方形の貫通孔1402aや円形状の貫通孔1402aに代えて、略円弧状の溝をなす貫通孔を備えていてもよい。また、パタン部1402は、略円弧状の溝1802aに代えて、直線状の溝を備えていてもよい。第2のレジストパタン1001においては、たとえば、製造対象とする時計部品の大きさや形状などに応じて、パタン部1402における貫通孔や溝の形状を異ならせることができる。
【0081】
具体的には、たとえば、がんぎ車106を製造する際に、ひげぜんまい108の製造に際して用いた第2のレジストパタン1001とは異なるパタン形状をなす第2のレジストパタン1001を用いることができる。あるいは、具体的には、たとえば、アンクル107を製造する際に、ひげぜんまい108の製造に際して用いた第2のレジストパタン1001とは異なるパタン形状をなす第2のレジストパタン1001を用いることができる。
【0082】
図20は、がんぎ車106の製造に際して用いる第2のレジストパタン1001の一例を示す説明図である。
図20に示す第2のレジストパタン1001は、ハニカム形状をなす貫通孔2001aを備えている。貫通孔2001aは、枠部材2001bによって形成されている。
図21は、
図20に示す第2のレジストパタン1001が設けられた積層基板314を、支持層311側から見た状態を示す説明図である。
【0083】
ハニカム形状の構造物は同材料で他の形状の構造物より強度が高いことが知られている。このため、パタン部1402における貫通孔2001aをハニカム形状とすることにより、支持層エッチング後に外枠部1401内に残る枠部材2001bの太さを細くしても、デバイス層313の裏側面から、部品部901を確実に支持することができる。また、枠部材2001bの太さを細くすることにより、貫通孔2001a全体の面積を大きく確保することができるので、ウエットエッチングに際して、中間層312に接合した支持部1002と部品部901との間に残っている中間層312を確実に除去することができる。
【0084】
図22は、アンクル107の製造に際して用いる第2のレジストパタン1001の一例を示す説明図である。
図22に示す第2のレジストパタン1001は、直線状の溝2301aを備えている。直線状の溝2301aは、枠部材2301bによって形成されている。
図23は、
図22に示す第2のレジストパタン1001が設けられた積層基板314を、支持層311側から見た状態を示す説明図である。
図22に示す第2のレジストパタン1001とすることにより、パタン形状を簡略化することができる。
【0085】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、積層基板314のデバイス層313に酸化膜401を形成し、当該酸化膜401の表側面に第1のレジストパタン501を形成した後、酸化膜401およびデバイス層313に対して、第1のレジストパタン501部分を残して残余を除去する第1のエッチング工程をおこなう。つぎに、支持層311の裏側面に、第2のレジストパタン1001を形成し、この支持層311に対して第2のレジストパタン1001部分を残して残余を除去する支持層エッチングをおこない、その後、所定領域1000内における中間層312および酸化膜401を除去するようにしたことを特徴としている。
【0086】
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、中間層312を除去するまでの間、デバイス層313に形成された部品部901を、中間層312と、所定領域1000内に残された支持層311とによって支持することができる。これにより、製造対象とする時計部品となる部品部901が、製造中に積層基板314から脱落することを防止できる。
【0087】
従来、支持層エッチングに際して、所定領域1000内の支持層311をすべて除去する時計部品の製造方法があった。この製造方法では、支持層エッチング後の部品部901の裏側面は、積層基板314を支持する台などから浮き上がった状態となっており、支持層エッチング以降の工程においては、極めて薄い中間層312のみによって部品部901を支持していた。そして、このために、接続部902を支点として部品部901が板厚方向に揺動しやすくなり、部品部901が揺動することによる負荷によって接続部902が破損して部品部901が積層基板314から脱落しやすくなっていた。
【0088】
これに対し、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、従来の時計部品の製造方法と比較して、保護層を形成したり、当該保護層を除去したりする工程を増やすことなく、支持層エッチングに用いる第2のレジストパタン1001のパタン形状を調整するだけで、上記のように、製造中に積層基板314から脱落することを防止できる。
【0089】
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、製造途中で時計部品が積層基板314から脱落してしまうことを防止できるので、製造に対する信頼性の向上を図るとともに、量産性を確保することができる。さらに、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、第1のレジストパタン501や第2のレジストパタン1001を用いることにより、ひげぜんまい108などの時計部品を、高精度に製造することができる。
【0090】
このように、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、製造工程を増やすことなく、時計部品を高精度かつ高い信頼性をもって製造することができる。
【0091】
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、第2のレジストパタン1001が、所定領域1000外の部分を覆う外枠部1401と、複数の貫通孔1402a、2001aまたは溝1802a、2301aの位置を避けて所定領域の内側を覆うパタン部1402と、外枠部1401とパタン部1402との境界位置を開放する開放部1403と、からなることを特徴としている。
【0092】
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、開放部1403を設けることにより、支持層エッチングに際して部品部901の裏側に支持層311を残しておいても、製造対象とするひげぜんまい108に悪影響を与えることなく、ひげぜんまい108を高精度に製造することができる。
【0093】
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、開放部1403が、外枠部1401とパタン部1402とを接続する接続部1404を含むことを特徴としている。
【0094】
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、ウエットエッチングをおこなうまでの間、所定領域1000の内側の中間層312および支持層311と、所定領域1000の外側の中間層312および支持層311とを接続しておくことができる。これにより、デバイス層313の裏側面から部品部901の全体を支え、部品部901が積層基板314の裏側面に向かって弛まないように当該部品部901を支持することができる。
【0095】
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、第1のレジストパタン501が、所定領域1000外の部分を覆う部品外枠部(
図9における部品外枠部903を参照)と、ひげぜんまい108の形状をなす部品形状部(
図9における部品部901を参照)と、当該部品形状部と部品外枠部とを接続する部品接続部(
図9における接続部902を参照)と、からなることを特徴としている。
【0096】
上述した実施の形態においては、部品外枠部903との境界位置近傍に接続部902が位置するような第1のパタンをなす第1のレジストパタン501を用いたが、第1のレジストパタン501における部品接続部は、部品外枠部との境界位置において細くなる(折りやすくなる)形状に限らない。第1のレジストパタン501は、たとえば、
図24や
図25に示すように、部品形状部との境界位置において細くなる(折りやすくなる)形状であってもよい。
【0097】
具体的に、
図24は、がんぎ車106の製造に際して用いる第1のレジストパタン501の一例を示す説明図である。
図24において、符号2401は、がんぎ車106の製造に際して用いる第1のレジストパタン501のうち、領域500の外側の部分を覆う部品外枠部を示している。また、
図24において、符号2402は、がんぎ車106の製造に際して用いる第1のレジストパタン501のうち、がんぎ車106の形状をなす部品形状部を示している。
【0098】
また、
図24において、符号2403は、がんぎ車106の製造に際して用いる第1のレジストパタン501のうち、部品形状部2402と部品外枠部2401とを接続する部品接続部を示している。部品接続部2403は、部品形状部2402との境界位置においてもっとも細くなる(折りやすくなる)ような形状とされている。これにより、デバイス層313に形成されたがんぎ車106を、積層基板314から容易にもぎ取ることができる。また、もぎ取った後のがんぎ車106に、極力バリを残さないようにすることができる。
【0099】
具体的に、
図25は、アンクル107の製造に際して用いる第1のレジストパタン501の一例を示す説明図である。
図25において、符号2501は、アンクル107の製造に際して用いる第1のレジストパタン501のうち、領域500の外側の部分を覆う部品外枠部を示している。また、
図25において、符号2502は、アンクル107の製造に際して用いる第1のレジストパタン501のうち、アンクル107の形状をなす部品形状部を示している。
【0100】
また、
図25において、符号2503は、アンクル107の製造に際して用いる第1のレジストパタン501のうち、部品形状部2502と部品外枠部2501とを接続する部品接続部を示している。部品接続部2503は、部品形状部2502との境界位置において細くなる(折りやすくなる)ような形状とされている。これにより、デバイス層313に形成されたアンクル107を、積層基板314から容易にもぎ取ることができる。また、もぎ取った後のアンクル107に、極力バリを残さないようにすることができる。
【0101】
図24および
図25に示すように、部品接続部2403、2503は、製造対象とする部品の形状に応じて、任意の位置に設計することができる。また、第1のレジストパタン501は、フォトレジストを露光する露光パタンを変更するだけで、各種の形状に変更することができる。これにより、複数種類の時計部品のうちいずれの時計部品を製造するかや、複数種類の時計部品をおなじ積層基板314内で複数製造する際の各時計部品のレイアウトなどを適宜柔軟に決定することができる。
【0102】
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、ひげぜんまい108の製造工程における最後の工程において、積層基板314から部品部901をもぎ取るまでの間、積層基板314と部品部901とを接続しておき、部品部901が積層基板314から脱落してしまうことを防止できる。第1のレジストパタン501における部品接続部の形状を調整することにより、接続部902を設けても、部品部901を積層基板314からもぎ取る作業に支障を来すことはない。