(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514998
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】管洗浄用ノズル装置及び管洗浄用ノズル装置を備えた排水縦管洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 9/049 20060101AFI20190425BHJP
E03C 1/304 20060101ALI20190425BHJP
B08B 9/051 20060101ALI20190425BHJP
B05B 3/02 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
B08B9/049 497
E03C1/304
B08B9/051
B05B3/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-178008(P2015-178008)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-51909(P2017-51909A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】514234333
【氏名又は名称】河原田 祥正
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(72)【発明者】
【氏名】河原田 祥正
【審査官】
高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−151265(JP,A)
【文献】
特開昭54−073471(JP,A)
【文献】
米国特許第05379476(US,A)
【文献】
特許第5748255(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00−1/04
5/00−13/00
B05B 3/02
E03C 1/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水を供給する耐圧ホースの先端部に接続されて、高圧水を噴射することにより管内を進行しながら管内壁に付着したスラッジを除去するための管洗浄用ノズル装置であって、
耐圧ホースを経て供給される高圧水を軸線方向の後方に噴射する高圧水噴出ノズルと、
前記高圧水噴出ノズルの軸線方向の前方に配置され、前記軸線方向に回転軸を有する回転するスクレイパ部材と、
前記スクレイパ部材を回転させる駆動部材と、
前記高圧水の噴出を確保する開口部を有する、前記高圧水噴出ノズルを前記軸線方向に収容する円筒状筐体と、を備え、
前記円筒状筐体が、外周面に少なくとも一つのそり状ガイド部材をさらに備えることを特徴とする管洗浄用ノズル装置。
【請求項2】
前記駆動部材は、電力を供給されて回転駆動するモータである請求項1に記載の管洗浄用ノズル装置。
【請求項3】
前記駆動部材は、供給される前記高圧水の経路に配設されて水圧で回転駆動する水車である請求項1に記載の管洗浄用ノズル装置。
【請求項4】
前記スクレイパ部材は、複数の硬質部材を直線状に連結させてなる数珠状部材または鎖状部材を表面に接続した回転部材である請求項1〜3の何れか1項に記載の管洗浄用ノズル装置。
【請求項5】
前記スクレイパ部材は、表面に刃または歯を備えたブロック状回転部材である請求項1〜3の何れか1項に記載の管洗浄用ノズル装置。
【請求項6】
高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、
請求項1〜5の何れか1項に記載の管洗浄用ノズル装置を先端に備える耐圧ホースと、
前記耐圧ホースを直立に保持する可撓性直立支持材と、
前記耐圧ホースに接続されて、前記管洗浄用ノズル装置に高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備えることを特徴とする排水縦管洗浄装置。
【請求項7】
前記可撓性支持材は、直立時に少なくとも1mの直立姿勢を保ちうる剛性を有する請求項6に記載の排水縦管洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の高層建物に設置されている排水縦管を洗浄するため等に用いられる管洗浄用ノズル装置、及びそれを用いた排水縦管洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の高層建物の流し台、洗面所、浴室、トイレ等の設備から発生する排水は、各設備の配された室内から通じる横枝管を経て、各階を貫通する共用の排水縦管から汚水槽等に流される。
【0003】
排水には多量の残渣や油脂等が含まれている。排水縦管の内壁には、排水の通過する時間の経過に伴い、排水中の残渣や油脂等が凝集して形成された固形物であるスラッジ(固形物)が徐々に固着し、管径を徐々に減少させる。スラッジをそのまま放置した場合にはスラッジが成長して排水縦管を閉塞させることもある。このような排水縦管の閉塞を防ぐために、高層建物に設置されている排水縦管は一定期間ごとに清掃される必要がある。
【0004】
排水縦管を清掃する方法として、高圧水噴出ノズルを先端に取り付けた耐圧ホースを排水縦管内に挿入し、ノズルから噴射される高圧水を排水縦管の内壁に固着したスラッジに当てることにより、スラッジを崩すようにして清掃する方法(以下、単に、高圧洗浄方法とも称する)が広く用いられている。
【0005】
高圧洗浄方法としては、高層階の排水縦管の開口から高圧水噴出ノズルを挿入し、耐圧ホースをホースリールから徐々に繰り出して、高圧水噴出ノズルから高圧水を噴出させてスラッジを崩しながら低層階に向けて進行させて、高層階側から低層階側に向かって洗浄していく方法が広く用いられている。
【0006】
図9は、高層階側から低層階側に向かって洗浄していく方法の様子を示す説明図である。高層階側から低層階側に向かって高圧水噴出ノズル201を排水縦管L内で進行させる方法によれば、高層階側で破壊されたスラッジSは、洗浄水Wとともに、排水縦管Lで下向きに落下する。高層階側から低層階側に向かって高圧水噴出ノズル201を排水縦管L内で進行させる方法の場合、高層階側からスラッジSを崩していくために、低層階側に成長したスラッジSが存在するときには、上から落下してきたスラッジSがその部分に堆積し、閉塞部Aを形成することがあった。そして、閉塞部Aが形成された場合、排水縦管L内から低層階側に水が抜けなくなり、流し台,トイレ,浴室等の部屋に配された排水口Rに通じる横枝管Bに水が逆流し、排水口Rから水があふれ出し、その部屋を汚水で水浸しにする等の被害を発生させることがあった。
【0007】
上述した方法とは逆に、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄する方法も提案されている。例えば、下記特許文献1は、次のような方法を開示する。まず、高圧水噴出ノズルが先端に取り付けられたホースをビルの屋上から排水管内に挿入し、排水管の最下部まで降ろし、高圧水噴出ノズルから高圧の水を噴射しながらホースを引き上げる方法を開示する。
【0008】
また、下記特許文献2は、高圧水噴出ノズルを備えたホースを排水管に屋上側から、高圧水噴出ノズルをワイヤーに係止した状態で地面に向かって降ろした後、ワイヤーで上方に引上げながら高圧水を噴射して排水管内を洗浄する洗浄方法において、固形物を除去すると共に、その除去状況をCCDカメラで撮影し、その映像によって確認する排水管の洗浄方法を開示する。
【0009】
特許文献1や特許文献2に開示されたような、高層階側から高圧水噴出ノズルを一旦低層階側まで降ろした後、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄する方法においては、次のような問題があった。
【0010】
通常の高層建物は、上述したように排水縦管の閉塞を防ぐために、一定期間ごとに清掃されている。このように、一定期間ごとに清掃されている比較的メンテナンスの行き届いた排水縦管の場合には、排水縦管に付着したスラッジは一定期間ごとに除去されているために、高層階側から高圧水噴出ノズルを一旦低層階側まで降ろすことができる程度の内径を排水縦管は保持している。しかしながら、例えば、築年数が30年を超えるような老朽化した高層建物において、種々の事情から一定期間ごとに排水縦管が清掃されておらず、メンテナンスの不充分な建物もある。例えば、排水縦管の清掃には、居住している住民宅への立ち入り等の協力が欠かせないが、住民の協力が得られなかった場合には、長期間清掃されていないまま排水縦管の内壁に大量のスラッジが固着している場合があった。このような長期間清掃されずに放置された排水縦管の場合、その内径はスラッジの固着により小さくなっていたり、殆ど閉塞している部分が形成されていたりすることがあった。このような場合、高層階側から高圧水噴出ノズルを低層階側まで降ろすことができなかった。そのために、特許文献1や特許文献2に開示されたような方法は、排水縦管の内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっていたり、殆ど閉塞している部分が形成されていたりする排水縦管の清掃には適用することができなかった。
【0011】
本発明者は、上述したような、高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっているような排水縦管でも洗浄することができる排水縦管洗浄装置を提案している(下記特許文献3及び特許文献4参照)。
【0012】
特許文献3及び特許文献4は、高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、先端に高圧水噴出ノズルを備える耐圧ホースと、耐圧ホースを直立に保持する可撓性直立支持材と、耐圧ホースに接続されて、管洗浄用ノズル装置に高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−342661号公報
【特許文献2】特開2002−275984号公報
【特許文献3】特許5748255号公報
【特許文献4】特許5748251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献3及び特許文献4に開示された排水縦管洗浄装置によれば、高層建物の排水縦管内を低層階側からの作業だけで、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄することができる。しかしながら、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄する場合においては、高圧水噴出ノズルを管の上方に進行させていったときに、高圧水噴出ノズルからの噴射水は前方には充分に届かないために管内で強固に固まったスラッジによる閉塞部分が存在する場合には、高圧水噴出ノズルをその先まで送ることができず、または、高圧水だけでスラッジを崩すには時間がかかりすぎることがあった。
【0015】
本発明は、高圧水噴出ノズルから噴出される高圧水の管内清浄化に加えて、回転する部材でスラッジを崩壊させることにより、管内で強固に固まったスラッジをより効果的に除去するための管洗浄用ノズル装置及び排水縦管洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一局面は、高圧水を供給する耐圧ホースの先端部に接続されて、高圧水を噴射することにより管内を進行しながら管内壁に付着したスラッジを除去するための管洗浄用ノズル装置であって、耐圧ホースを経て供給される高圧水を軸線方向の後方に噴射する高圧水噴出ノズルと、高圧水噴出ノズルの軸線方向の前方に配置され、軸線方向に回転軸を有する回転するスクレイパ部材と、スクレイパ部材を回転させる駆動部材と
、高圧水の噴出を確保する開口部を有する、高圧水噴出ノズルを軸線方向に収容する円筒状筐体と、を備
え、円筒状筐体が、外周面に少なくとも一つのそり状ガイド部材をさらに備える、管洗浄用ノズル装置である。
【0017】
また、本発明の他の一局面は、高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、上記管洗浄用ノズル装置を先端に備える耐圧ホースと、耐圧ホースを直立に保持する可撓性直立支持材と、耐圧ホースに接続されて、管洗浄用ノズル装置に高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の管洗浄用ノズル装置によれば、高圧水噴出ノズルから噴出される高圧水による管内清浄化に加えて、回転する部材でスラッジを崩壊させることにより、管内で強固に固まったスラッジをより効果的に除去することができる。また、本発明の排水縦管洗浄装置によれば、高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっているような排水縦管でも効果的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態の管洗浄用ノズル装置100の構成を示す模式説明図であり、(a)は正面図、(b)は断面構造を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の管洗浄用ノズル装置110の構成を示す正面模式図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の管洗浄用ノズル装置200の構成を示す模式説明図であり、(a)は正面図、(b)は断面構造を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態の排水縦管Lを洗浄するための、排水縦管洗浄装置20の全体構成を説明する模式説明図である。
【
図5】
図5は、管洗浄用ノズル装置100を先端に装着した耐圧ホース1と、管洗浄用ノズル装置のモータ103に電力を供給する配線103a,103bを管状の可撓性直立支持材6に収容した状態の先端付近を長手方向に断面視した模式断面図である
【
図6】
図6は、排水縦管洗浄装置20の送りローラ7付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。
【
図7】
図7は、排水縦管洗浄装置20の分岐管8、ブロアー9及び固液分離装置10付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。
【
図8】
図8は、排水縦管洗浄方法の一実施形態を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、従来の、高層階側から低層階側に向かって洗浄していく方法の様子を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る一実施形態の、管洗浄用ノズル装置100の全体構成を説明する模式図であり、(a)は正面図、(b)は断面構造を示す模式図である。
図1中、101は噴射口hを備えたノズルヘッド101a及び軸体101bを備えた高圧水噴出ノズル、102は回転する数珠状のスクレイパ部材、103はスクレイパ部材を回転させるモータ、104は高圧水噴出ノズル100を軸線方向に収容する円筒状筐体、105はそり状ガイド部材である。モータ103は図略の電源から電力を供給される配線103a,103bに接続されている。また、円筒状筐体104には噴射口hから噴出される高圧水の噴出を確保する開口部104aが形成されている。また、高圧水噴出ノズル101は図略の耐圧ジョイントにより耐圧ホース1に接続されており、後述する高圧水を供給する高圧水洗浄機から高圧水が供給される。
【0021】
管洗浄用ノズル装置100は、高圧水を供給する耐圧ホース1の先端に接続されて供給される高圧水を噴射することにより、排水管内を進行しながら管内壁に付着したスラッジを除去するための装置である。高圧水噴出ノズル101のノズルヘッド101aは、軸体101bの軸線方向Aを中心として回転自在に接続されており、耐圧ホース1を経て供給される高圧水を噴射口hから軸線方向Aの後方、好ましくは斜め後方に噴射することにより回転しながら高圧水を噴射する。管内においては、高圧水が管内壁に噴射されることにより、管内壁に付着したスラッジ等を剥離させる。
【0022】
数珠状のスクレイパ部材102は、金属やセラミックスのような硬質の球を数珠状に直線状に連結させてなり、円柱状または筒状の支持材の外周に一端が結合されてなる部材である。回転する数珠状のスクレイパ部材102の回転軸102aはモータ103のシャフト103cに連結されている。また、モータ103は、配線103a,103bを介して図略の電源から通電されることにより、シャフト103cを回転駆動させる。そして、シャフト103cに連結された数珠状のスクレイパ部材102が高速回転する。管内においては、数珠状のスクレイパ部材102は、回転軸102aを中心として高速回転して、管内壁に付着したスラッジ、とくに進行方向の先端に固着したスラッジにぶつけられてスラッジを崩壊させる。とくに、数珠状のスクレイパ部材102はモータ103の回転による遠心力により、鞭のようにしなりながらスラッジにぶつけられることにより、高圧水の噴射では崩しにくいような肥大化したスラッジにも機械的な衝撃を与えて崩すことができる。
【0023】
なお、本発明におけるスクレイパ部材とは、回転しながらスラッジに接触することにより、掻きとり、粉砕、研磨、研削等の効果により、スラッジを崩すような金属製やセラミックス製の硬質の部材であれば特に限定されない。具体的には、数珠状のスクレイパ部材の代わりに、硬質のリングを鎖状に連結させた鎖状のスクレイパ部材や、後述するような刃または歯を備えたブロック状回転部材等であってもよい。
【0024】
管洗浄用ノズル装置100においては、高圧水噴出ノズル101は円筒状筐体104に軸線方向に配されて収容されている。円筒状筐体104は、高圧水噴出ノズル101を収容し、軸線方向Aにモータ103及びスクレイパ部材102を配置して固定するための支持部材である。また、管洗浄用ノズル装置100においては、円筒状筐体104の外周面に少なくとも一つのそり状ガイド部材105を固定するための支持部材でもある。
【0025】
そり状ガイド部材105は、排水縦管を洗浄する場合において、排水縦管の内部で、管洗浄用ノズル装置100の軸線方向Aに垂直な方向の直径を拡幅することにより、排水縦管内で高圧水の噴射による衝撃により管洗浄用ノズル装置が排水縦管内で暴れることを防止する。また、そり状に形成されていることにより、排水縦管から分岐する横管の開口に引っかかることを回避して、管洗浄用ノズル装置100を直線状に進行させることを補助する。
【0026】
図2は、
図1の管洗浄用ノズル装置100の変形例の管洗浄用ノズル装置110の構成を示す正面模式図である。管洗浄用ノズル装置110は、管洗浄用ノズル装置100の数珠状のスクレイパ部材102に代えて、研削のための刃または歯を備えた円柱状のブロック状回転部材112を装着した形態である。刃または歯を備えたブロック状回転部材112の回転軸はモータ103のシャフト103aに連結されている。そして、配線103a,103bを介して図略の電源からモータ103に通電されることにより、シャフト103aに連結された研削のための刃または歯を備えたブロック状回転部材112が回転する。管内においては、研削刃を備えたブロック状回転部材112は、回転軸102aを中心として高速回転することにより、管内壁に付着したスラッジ、とくに進行方向の先端に固着したスラッジに接触してスラッジを研削して崩壊させる。このような研削刃を備えたブロック状回転部材を装着することにより、高圧水の噴射では崩しにくいような肥大化したスラッジを研削して崩すことができる。
【0027】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の、管洗浄用ノズル装置200の全体構成を説明する模式図であり、(a)は正面図、(b)は断面構造を示す。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ符号を付した要素は、同じ要素を示すために、説明を省略する。
【0028】
図3中、203はスクレイパ部材102を回転させる水車である。水車203はシャフト203aを外部に導出した状態で、密閉型の分岐部材205中に回転可能に収納されている。そして、密閉分岐部材205は高圧水供給路204a及び高圧水排水路204bに接続されている。
【0029】
耐圧ホース1は、後述する高圧水を供給する高圧水洗浄機に接続されている。そして、耐圧ホース1は高圧水供給路204aに接続されており、高圧水を高圧水供給路204aに通過させる。そして、高圧水供給路204aに接続された密閉型の分岐部材205に高圧水が送られることにより、水車203が軸線方向Aを中心として高速回転する。そして、水車203のシャフト203aに連結された数珠状のスクレイパ部材102が回転する。そして、高圧水供給路204aから密閉分岐部材205に送られた高圧水は、密閉分岐部材205を通過して密閉分岐部材205に接続された高圧水排水路204bに送られる。
【0030】
高圧水排水路204bは、高圧水噴出ノズル101に接続されている。高圧水噴出ノズル101には、高圧水排水路204bを通過した高圧水が供給される。そして、高圧水排水路204bを通過した高圧水を高圧水噴出ノズル101のノズルヘッド101aの噴射口hから、軸線方向Aの後方、好ましくは斜め後方に噴射することにより回転しながら高圧水を噴射する。管内においては、高圧水が管内壁に噴射されることにより、管内壁に付着したスラッジ等を剥離させる。
【0031】
このような管洗浄用ノズル装置200によれば、管内において、数珠状のスクレイパ部材102が回転軸102aを中心として高速回転することにより、管内壁に付着したスラッジ、とくに進行方向の先端に固着したスラッジにぶつけられてスラッジを崩壊させる。また、高圧水噴出ノズル101の噴射口101aから噴射される高圧水により、排水縦管内においては、高圧水が管内壁に噴射されることにより、管内壁に付着したスラッジ等を剥離させる。
【0032】
第2実施形態の、管洗浄用ノズル装置200においては、高圧水噴出ノズル101に高圧水を供給する経路に、スクレイパ部材102を回転させる水車203を配置し、スクレイパ部材102を水車の回転駆動により回転させる。第1実施形態の管洗浄用ノズル装置100においては、スクレイパ部材102をモータ103で回転させていたが、モータ103で回転させる場合には、モータが焼きついて損傷することがあり、その場合にはモータを交換する等の処置が必要である。第2実施形態の、管洗浄用ノズル装置200においては、スクレイパ部材102を水車203で回転駆動させるために焼き付き等を発生させないために、耐久性に優れる。
【0033】
[第3実施形態]
次に、第1実施形態及び第2実施形態で説明した管洗浄用ノズル装置を用いた排水縦管洗浄装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、代表的に第1実施形態の管洗浄用ノズル装置100を用いる場合について例示して説明する。
【0034】
図4は、本発明に係る一実施形態の、排水横管Bを接続する排水縦管Lを洗浄するための排水縦管洗浄装置20の全体構成を示す模式説明図である。
図4中、1は耐圧ホースであり、100は耐圧ホース1の先端に装着された管洗浄用ノズル装置であり、2は管洗浄用ノズル装置のモータ102に電力を供給する電源装置であり、3は耐圧ホース1に接続されて管洗浄用ノズル装置100の高圧水噴出ノズル101から高圧水を噴射させるための高圧水洗浄機であり、6は耐圧ホース1を直立に保持する可撓性直立支持材である。また、7は耐圧ホース1及び可撓性直立支持材6を直立状態で送り上げる送りローラである。また、8は分岐管であり、分岐管8は排水縦管Lに一端が接続される主路8a,主路8aから分岐する分岐路8b及び分岐路8bへ向かって送風するための送風口8c,止水シール材8dを備える。9は、送風口8cに接続され、分岐路8bに向けて送風するためのブロアーである。また、10は、分岐管8から排出されるスラッジS及び水Wを固液分離する固液分離装置である。固液分離装置10は、剥離させたスラッジを捕捉する網10aと排水ポンプ10bとを備える。13は、可撓性直立支持材6と耐圧ホース1とを巻回させてまとめるためのホースリールである。
【0035】
図5は、管洗浄用ノズル装置100を先端に装着した耐圧ホース1と、管洗浄用ノズル装置のモータ103に電力を供給する配線103a,103bを管状の可撓性直立支持材6に収容した状態の先端付近を長手方向に断面視した模式断面図である。
【0036】
図5に示すように、耐圧ホース1及び配線103a,103bは可撓性直立支持材6に収容されている。本実施形態における可撓性直立支持材6は管状である。
図5に示すように、可撓性直立支持材6の先端は耐圧ホース1と配線103a,103bとを外部に導出させるようにして封止蓋14で閉じることにより、管状の可撓性直立支持材6の内部に水や崩したスラッジの破片が侵入することを防いでいる。
【0037】
可撓性直立支持材とは、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放して直線状に賦形したときに直立性を保持する線状または管状の部材である。このような可撓性直立支持材は、可撓性を有するために作業現場へ巻回した状態で運搬することができるとともに、排水縦管内においては直立性を維持することができる。
【0038】
管状の可撓性直立支持材としては、例えば、アルミニウム管の内層と外層をポリエチレン等の樹脂で被覆したアルミニウム三層管やフレキシブル金属チューブ(パイプ)のような直立性フレキシブルチューブ等のような、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放したときに直進性を有する管状の部材等が挙げられる。また、線状の直進性支持材としては、例えば、建築物の配線のための入線ロッドとして広く用いられているような弾性ロッドが特に好ましく用いられる。このような弾性ロッドの具体例としては、例えば、グラスファイバー,カーボンファイバー,スチールファイバー,セラミックファイバー等で補強された繊維強化プラスチックを主体とし、1〜15mm、さらには3〜10mm程度の直径を有するようなロッドが好ましく用いられる。このような弾性ロッドの市販品としては、例えば、株式会社マーベル性のスーパーイエロー、スーパースネーク等が挙げられる。
【0039】
可撓性直立支持材は、具体的には、例えば、直立時に少なくとも1m、好ましくは2m、さらに好ましくは3m、特に好ましくは5mの直立姿勢を保ちうる剛性を有することが好ましい。このような可撓性直立支持材に耐圧ホースを収容することにより、縦排水管内で耐圧ホースを直立状態を保持させることができ、先端に備えられた管洗浄用ノズル装置を高層階にまで送り上げることができる。
【0040】
図6は、排水縦管洗浄装置20の、耐圧ホース1と配線103a,103bとを収容した管状の可撓性直立支持材6を送り上げる送りローラ7付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。
図6に示すように、排水縦管洗浄装置20には、4組の送りローラ7が配設されている。各組の送りローラ7を形成するローラは、可撓性直立支持材6に収容された耐圧ホース1と配線103a,103bとを上方に送り出すように、一方が時計回り、他方が反時計回りに回転している。送りローラ7は、排水縦管Lに予め形成された開口部の下方に配置されて、低層階側の開口部から高層階側に向かって、耐圧ホース1と配線103a,103bを収容する管状の可撓性直立支持材6を挟持しながら送り上げる。送りローラ7の駆動機構は特に限定されない。例えば、送りローラ7に駆動力を与えるための、人がハンドルを回すことにより回転力を与えるハンドルを有する巻き上げギア機構や、電動モータで回転力を与える等、駆動力が供給されるものであれば、特に限定されない。
【0041】
図7は、排水縦管洗浄装置20の分岐管8、ブロアー9及び固液分離装置10付近の部分構成を拡大して示す模式説明図である。また、
図7中の破線の円で囲った部分は管洗浄用ノズル装置100を送り込む部分を止水シール材8dでシールしている様子を示す説明図である。
図7に示すように、排水縦管洗浄装置10は、排水縦管Lに一端が接続される主路8a,主路8aから分岐する分岐路8b及び分岐路8bへ向かって送風するための送風口8cを備える分岐管8が配置されている。また、分岐管8の送風口8cには、分岐路8bに向かって送風するためのブロアー9が接続されている。また、分岐管8の分岐路8bには、網10a及び排水ポンプ10bを備えた固液分離装置10が接続されている。
図7に示す構造は、以下に説明するような、低層階側から高層階側に向かって洗浄していくときに生じる問題点を解決するために任意に設けられる。
【0042】
例えば、低層階側から高層階側に管洗浄用ノズル装置を排水縦管を進行させる方法によれば、低層階側で破壊されたスラッジは、洗浄水とともに、排水縦管L内で下向きに落下する。このような場合、低層階側からスラッジを崩していくために、上から落下してきたスラッジが排水縦管L内の管洗浄用ノズル装置を送り込む部分に堆積することがあった。そして、スラッジが堆積した場合、管洗浄用ノズル装置をさらに送り込むことが困難になる。また、排水縦管L内から水が排水されない場合には、低層階の各設備の配された室内へ通じる横枝管に逆流して部屋の配管から水をあふれ出すおそれがある。
【0043】
図7に示す構造は、上述した問題を解決するために用いられる。このような構造を設けることにより、次のような効果が奏される。すなわち、管洗浄用ノズル装置100が排水縦管L内のスラッジSを破壊したとき、排水縦管L内をスラッジS及び水Wが落下してくる。このとき、止水シール材8dにより管洗浄用ノズル装置100を送り込む部分をシールすることにより、落下してきたスラッジS及び水Wが分岐管8の直下に漏出することを抑制できる。さらに、ブロアー9を用いて、分岐管8の送風口8cから分岐路8bへ向けて風の流れを作ることにより、落下してきたスラッジS及び水Wは分岐管8側に吹き飛ばされる。従って、排水縦管Lの管内からスラッジS及び水Wを外部に排出できる。
【0044】
また、
図7に示すような構造においては、分岐路8bの一端には、網10a及び排水ポンプ10bを備えた固液分離装置10が接続されている。このような固液分離装置10を配設することにより、分岐路8bから排出されたスラッジSと水Wを分離することができる。そして、固液分離装置10で分離された水Wはそのまま既設の排水縦管や排水横管12等に排出することができる。また、固液分離装置10で分離されたスラッジSは回収した後、産業廃棄物として簡単に処理することができる。
【0045】
次に、上述したような排水縦管洗浄装置20を用いた排水縦管洗浄方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
図8は、本発明に係る排水縦管洗浄方法の一実施形態を説明するための説明図である。本実施形態の排水縦管洗浄方法においては、はじめに、排水縦管Lの開口部に排水縦管洗浄装置20を接続する。具体的には、排水縦管の低層階、好ましくは1階で排水縦管Lを切断する。そして、排水縦管Lの切断により形成された開口部と、排水縦管洗浄装置20の分岐管8とをカップリング継手8e等を用いて接続する。そして、耐圧ホース1の先端に装着された管洗浄用ノズル装置100を排水縦管Lの開口部から侵入させる。
【0047】
そして、
図6を参照して説明したように、送りローラ7に可撓性直立支持材6に収容された耐圧ホース1を挟持させ、送りローラ7を回転させることにより、排水縦管L内において、それらを低層階側から高層階側に向かって送り上げる。ホースリール13から、可撓性直立支持材6に収容された耐圧ホース1と配線103a,103bが順次繰り出される。
【0048】
このとき、可撓性直立支持材6に収容された耐圧ホース1と配線103a,103bを送り出す際に、高圧水洗浄機3から高圧水を送ることにより、管洗浄用ノズル装置100の高圧水噴出ノズル101から高圧水を噴射させる。なお、高圧水噴出ノズル101が、
図8の管洗浄用ノズル装置100付近の拡大図に示すように、進行方向に対して斜め後方に高圧水を噴射することにより、管内で逆噴射による進行方向への推進力が発生するために、低層階側から高層階側に向かって送りやすくなる。
【0049】
そして、
図8に示すように、1階(1F)から、2F、3F・・・と、排水縦管L内において、耐圧ホース1と配線103a,103bを収容する可撓性直立支持材6を送りローラ7に挟持させた後、可撓性直立支持材6を直線状に賦形しながら、直立させた状態で低層階側から高層階側に向かって送り上げる。そのために、耐圧ホース1は撓まずに、直立姿勢を維持したまま低層階側から高層階側に向かって送り出される。
【0050】
図8の管洗浄用ノズル装置100付近の拡大図に示すように、排水縦管Lの内壁面に固着したスラッジSは、管洗浄用ノズル装置100の先端のスクレイパ部材102及び高圧水噴出ノズル101から噴射される高圧の水Wにより破壊される。管洗浄用ノズル装置100は、排水縦管L内の低層階側から高層階側に送り出されながら、排水縦管L内を低層階側から高層階側に向かって清浄化していく。このように、排水縦管LのスラッジSを低層階側から高層階側に向かって崩していくことにより、落下するスラッジSが落下途上の固着したスラッジSにせき止められ、その部分を閉塞させるような問題が生じなくなる。
【0051】
ここで、管洗浄用ノズル装置100は、高圧水を噴射する衝撃により暴れやすい。
図8の管洗浄用ノズル装置100付近の拡大図に示すように、排水縦管Lが分岐する横管Bに接続されている場合、管洗浄用ノズル装置100が暴れることにより、管洗浄用ノズル装置100の先端部が横管Bの開口に引っかかることがある。このような場合において、管洗浄用ノズル装置100は、円筒状筐体104の外周面に少なくとも一つのそり状ガイド部材105を備えるために、排水縦管から分岐する横管の開口に引っかかることを回避して、管洗浄用ノズル装置100を直線状に進行させることができる。
【0052】
そして、
図8の管洗浄用ノズル装置100付近の拡大図に示すように、排水縦管Lの内壁面に固着したスラッジSは、スクレイパ部材102及び高圧水噴出ノズル101から噴射される高圧の水の噴射により崩されて排水縦管Lを水Wとともに落下する。そして、落下するスラッジSと水Wとは、
図8に示すように、分岐管8の主路8aと分岐路8bとの分岐点に達したときに、ブロアー9からの風により分岐路8bへ吹き飛ばされる。そして、分岐路8bから排出されたスラッジS及び水Wは、固液分離装置10へ送られ、固液分離された後、処理される。
【0053】
以上、本発明に係る排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法の実施形態を詳しく説明したが、本発明に係る排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の管洗浄用ノズル装置及び管洗浄用ノズル装置を備えた排水縦管洗浄装置は、高層建物に設置されている排水縦管等において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっているような排水縦管を効率的に洗浄することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 耐圧ホース
3 高圧洗浄機
6 可撓性管
20 排水縦管洗浄装置
100,110,200 管洗浄用ノズル装置
101 高圧水噴出ノズル
101a ノズルヘッド
101b 軸体
102,202 スクレイパ部材
103 モータ
103a,103b 配線
104 円筒状筐体
105 そり状ガイド部材
L 排水縦管
W 水
S スラッジ