(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
<太陽光発電システムの構成>
実施例1について、
図1〜3、11を用いて説明する。
図1は本実施例における太陽光発電システムの構成図である。
図1において、1はパワーコンディショナ、10、11は一つないし複数の太陽電池モジュールから成る太陽電池列、70、71はDC−DCコンバータ、80は系統連系インバータ、81は商用系統、100は制御手段である。ここでは、太陽電池列とDC−DCコンバータはそれぞれ2系統を図示しているが、それに限定するものではなく、1系統ないし複数系統に拡張可能である。
【0014】
DC−DCコンバータ70において、20はスイッチング素子、21はダイオード、30は平滑コンデンサ、40はインダクタ、50は入力フィルタ、60は電流センサである。なお本実施例では、スイッチング素子20にMOSFETを用いているが、それに限定するものではない。
【0015】
このDC−DCコンバータ70の入力は太陽電池列10と接続される側であり、出力は平滑コンデンサ30の両端である。太陽電池列10の電圧V
PV10は入力フィルタ50を介して、太陽電池列10の電流量の情報は電流センサ60によって制御手段100に伝達される。またスイッチング素子20のゲート端子とソース端子には制御手段100からそれをオンまたはオフすなわちスイッチングさせるための信号が伝達される。
【0016】
DC−DCコンバータ70、71の出力側に系統連系インバータ80の入力が接続される。ここでDC−DCコンバータ70、71の出力電圧すなわち系統連系インバータ80の入力電圧をDCリンク電圧V
PNと定義する。このV
PNは制御回路100に伝達される。系統連系インバータ80の出力には、商用系統81が接続される。なお図表は省略するが、DC−DCコンバータ71の内部もコンバータ70と同様の構成であり、太陽電池列11の電圧V
PV11や内部にある電流センサの情報は制御手段100に伝達される。また、系統連系インバータ80は内部にセンサやスイッチング素子を持ち、それらの各端子は制御手段100に接続されている。
【0017】
図2は、入力フィルタ50の構成例である。52、56はコモンモードチョーク、51、53、54、55、58はフィルタコンデンサ、57はノーマルモードチョークである。
図2において、フィルタコンデンサ51の両端が太陽電列側の端子であり、フィルタコンデンサ58の両端がコンバータ側の端子である。
<パワーコンディショナの動作について>
先ず、制御手段100が系統連系インバータ80、コンバータ70(71も同様)を駆動して得られる基本的な機能を説明してから、両者の機能および動作を協調させたパワーコンディショナ1の動作を説明する。
【0018】
制御手段100は、系統連系インバータ80を駆動し、太陽電池列10、11で発電してDC−DCコンバータ70、71を介して伝達された直流電力を交流電力に変換する。そして制御手段100は、その交流電力を商用系統81に逆潮流させるとともに、DCリンク電圧V
PNを所定の電圧になるように、逆潮流させる電力量を調整する。
【0019】
ところで、系統連系インバータ80が直流から交流に変換する動作を行うために必要な入力の電圧がある。ここではその電圧値を最低入力動作電圧V
INVLOWと定義する。一般的な系統連系インバータの場合は、V
INVLOWは商用系統81のピーク電圧よりも高い電圧となる。例えば、商用系統81の電圧が202Vrmsのときのピーク電圧は286Vであるから、それよりも高い300Vかそれ以上の電圧がV
INVLOWとなる。系統連系インバータ80の入力側のDCリンク電圧V
PNがV
INVLOWを下回る状態で系統連系インバータ80を動作させると、電圧不足で商用系統81に電力を逆潮流できなかったり、交流電力の電流に高調波歪みを生じたりするなどの問題が発生する場合がある。なお、制御手段100は、商用系統11の電圧を監視して系統連系インバータ80の正常動作可能な最低入力動作電圧V
INVLOWを逐次決定している。
【0020】
DC−DCコンバータ70の機能を説明する。制御手段100はDC−DCコンバータ70を制御して、太陽電池列10の電圧を変換するとともに、太陽電池例の電圧V
PV10を所定の電圧に設定する。本実施例のコンバータ70は昇圧コンバータを構成しており、コンバータ70のスイッチング素子20をスイッチング動作させることにより、太陽電池列10の直流電力の電圧を昇圧することが可能である。この機能により、朝や夕方などの日射量の低い条件において、太陽電池列10の電圧V
PV10がインバータ80の最低入力動作電圧V
INVLOWを下回った場合に、V
PV10をV
INVLOW以上に昇圧できる。そして、太陽電池列10の直流電力をインバータ80を介して逆潮流させることが可能となり、太陽光発電システムの出力電力すなわち効率を向上した効果を奏する。
【0021】
さらに、系統連系インバータ80、コンバータ70、71において、それぞれが個別に最大電力追従制御を行うことが可能である。ここで最大電力追従制御の一例である山登り法について簡単に触れる。
図12は、パワーコンディショナ1が山登り法を行った場合の動作例である。本図において、太陽電池列10の電圧をV、電流をI、電力をP、V−I特性とV−P特性をそれぞれ図中の破線と上の凸の実線になっていると仮定する。なお一般に太陽電池列は電流がゼロの点で最も高い電圧となり、この電圧を開放電圧という。この状況下で、例えば制御手段100がDC−DCコンバータ70を制御して、太陽電池列10の動作点を微小電圧分あるいは微小電流分移動させ、その移動前後における電力値同士を比較して電力値が最大化する方向に動作点を移動させるのが山登り法である。この動作により、太陽電池列の動作点を最大電力点G1の付近に留めることができる。なお、コンバータ70を介した直流電力に対しても、系統連系インバータ80を駆動してDCリンク電圧V
PNを変化させて同様の動作が可能である。
【0022】
次に、本実施例において、太陽光発電システムの効率向上に寄与するパワーコンディショナ1の動作を説明していく。その作用をわかりやすく説明するため、比較対象となるパワーコンディショナ201を用いる。
【0023】
パワーコンディショナ201の構成は、
図1と同様であり、図表は省略するが制御手段100の代わりに制御手段101を所持している。他の構成要素であるDC−DCコンバータ70、71、系統連系インバータ80の基本的な機能は前述の通りである。パワーコンディショナ201の動作を
図11を使って説明する。
【0024】
図11は、パワーコンディショナ201の動作を説明する図であり、太陽電池列10、11の最大電力点の近傍を拡大した図である。なお説明の便宜上、本図の縦軸を電圧、横軸を電力とする。本図には、太陽電池列11よりも太陽電池列10の電圧の高い条件における太陽電池列10、11の電力特性、DC−DCコンバータ70、71の出力状態が示されている。なお、このような条件は、太陽電池列を構成する太陽電池モジュールの数が太陽電池列11よりも太陽電池列10の方が多かったり、あるいは両者の太陽電池モジュールは同数だがそれぞれの日射量が異なったり、あるいは両者間で異なる種類の太陽電池モジュールが使用されていた場合に起こり得る。本図において、太陽電池列10の最大電力点をMP10a、動作点をOP10a、太陽電池列11の最大電力点をMP11a、動作点をOP11a、DC−DCコンバータ70の出力動作点をCOP1、DC−DCコンバータ71の出力動作点をCOP2とする。
【0025】
制御手段101は、DC−DCコンバータ70、71を駆動し、太陽電池列10、11の直流電力を昇圧して系統連系インバータ80に出力するとともに前述の山登り法による最大電力追従制御を行っている。これにより、太陽電池列10、11の動作点はそれぞれの最大電力点と一致する。そして、DC−DCコンバータ70、71は駆動されることによって、それぞれに駆動による損失W70a、W71aが発生する。一方、制御手段101は系統連系インバータ80を駆動し、DCリンク電圧V
PNを太陽電池列10、11の開放電圧よりも高い電圧としている。
【0026】
次に、
図1と3を用いて本実施によるパワーコンディショナ1の動作を説明する。
図3は、太陽電池列10、11の電圧−電力特性が
図11と同条件のときのパワーコンディショナ1の動作を示している。なお、前述の比較対象となるパワーコンディショナ201の説明と重複する部分については、説明を省略する。
【0027】
図3において、パワーコンディショナ1の制御手段100は、太陽電池列11よりも電圧の高い太陽電池列10に接続されたDC−DCコンバータ70の駆動を停止している。これにより、太陽電池列10の直流電力はDC−DCコンバータ70を通過し、DC−DCコンバータ70の出力動作点COP1は、太陽電池列10の動作点OP10aと同一となる。なおコンバータ70を通過する際にダイオード21にはその順方向電圧によってわずかな損失が発生するが、説明の便宜上、その損失を無視する。一方、制御手段100は、DC−DCコンバータ71を駆動し、太陽電池列11の直流電力を昇圧して系統連系インバータ80に出力するとともに山登り法による最大電力追従制御を行っている。その結果、系統連系インバータ80には、コンバータ70を通過した太陽電池列10の直流電力とDC−DCコンバータ71で昇圧された太陽電池列11の直流電力の加算電力が入力される。また一方で、制御手段100は、系統連系インバータ80を駆動しかつ山登り法の最大電力追従制御を行っている。ここで、図表は省略するが、前述の加算された電力における最大電力点の電圧値は、太陽電池列10の最大電力点MP10aと同様となる。このため、DCリンク電圧V
PNは、最大電力点電圧MP10aに収束する。つまり、パワーコンディショナ1では、電圧の高い太陽電池列側に接続されたDC−DCコンバータ70の駆動を停止して、系統連系インバータ80で最大電力追従制御を行うことで、DC−DCコンバータ70の駆動による損失を低減している。この動作により、太陽光発電システムの効率を向上する効果を奏する。
【0028】
ここで、系統連系インバータ80における最大電力追従制御の実施方法について触れる。
図3の状況下では、DC−DCコンバータ71で最大電力追従制御を行っているため、太陽電池列11の動作点電圧MP11aは周期的に微小な電圧幅で変動し、DC−DCコンバータ71の出力電力が周期的に微小に変動している。これを受け、系統連系インバータ80に入力される直流電力もDC−DCコンバータ71の最大電力追従制御にともなう微小な電圧幅で周期的に変動している。これより、制御手段100が系統連系インバータ80で最大電力追従制御して太陽電池列10の最大電力点と動作点を一致させるには、直流電力の変動に影響されずに最大電力追従制御を行う必要がある。そこで、制御手段100は、DC−DCコンバータ71の最大電力追従制御の微小電圧変動の周期が無視できるように、例えば、系統連系インバータ80の最大電力追従制御における微小電圧幅の変動周期をDC−DCコンバータ71の数倍〜10倍程度に設定している。また制御手段100は、例えば、DC−DCコンバータ71の最大電力追従制御と系統連系インバータ80の最大電力追従制御のそれぞれを同時にではなく、時系列的に交互に行うなどして、お互いの最大電力追従制御が干渉しないように動作させている。この作用により、パワーコンディショナ1では、DC−DCコンバータ70の駆動を停止して、系統連系インバータ80で最大電力追従制御を行えるようになり、DC−DCコンバータ70の駆動による損失を低減し、太陽光発電システムの効率を向上する効果を奏する。
【0029】
なお本実施例では、DC−DCコンバータを2系統搭載した状態にある太陽光発電システムについて説明を行ったが、それに限定するものではない。DC−DCコンバータが3系統以上あるシステムの場合は、最も電圧の高い太陽電池列に接続されたDC−DCコンバータの駆動を停止することで、同様の効果を得ることが可能である。
【実施例2】
【0030】
次に、効率をさらに向上させた実施例2の太陽光発電システムを、
図1、4〜6を使って説明する。なお、実施例1の説明と重複する部分については説明を省略する。
【0031】
図4は、太陽電池列への日射が
図3の条件から変動して、太陽電池列11の電圧対電力特性が変化した直後の状態の一例である。本図において、日射変動直後の太陽電池列11の最大電力点と動作点をそれぞれMP11b、OP11bとする。
【0032】
日射変動の直後は、DC−DCコンバータ71は実施例1の
図3で説明した状況と同様であり、制御手段100が、DCーDCコンバータ70、71の駆動をそれぞれ停止、継続しているので、DC−DCコンバータ71で損失W71cが発生している。
【0033】
一方、制御手段100は、駆動されているDC−DCコンバータ71の入力と出力との間の電圧差V
Cを計測している。これは、すなわち太陽電池列11の最大電力点MP11bとDCリンク電圧V
PNとの間の電圧差を計測することと等価である。そして制御手段100は、V
Cと所定の電圧差V
Tとを比較し、V
CがV
T以内である場合は、DC−DCコンバータ71の駆動を停止する。なお、電圧差V
Cは、DC−DCコンバータ71の入力と出力の電圧を計測する方法以外に、入力または出力の電圧のどちらか一方とコンバータ71内のスイッチング素子におけるオンとオフの時比率からも算出することが可能である。また、所定の電圧差V
Tの詳細については後述する。
【0034】
DC−DCコンバータ71の駆動を停止した後のパワーコーコンディショナ1の動作状態を
図5に示す。コンバータ70、71の駆動は停止しているので、太陽電池列10、11の直流電力はコンバータ70、71内のダイオードを介して合成され、コンバータ70、71の出力電圧はそれぞれ太陽電池列10、11の電圧とほぼ同じ電圧となる。そして、その合成された直流電力の最大電力点の電圧は、
図5に表記する電圧V
MP1となった。
【0035】
一方、制御手段100は系統連系インバータ80を駆動して最大電力追従制御を行っているため、DCリンク電圧V
PNは前述の太陽電池列10、太陽電池列11を合成した直流電力の最大電力点の電圧V
MP1と等しくなる。これより、太陽電池列10、太陽電池列11の動作点の電圧がV
MP1に変化し、それぞれの最大電力点との間に差分の電力が生じる。この差分の電力値を一般にMPPT(Maximum Power Point Tracking)ミスマッチ損失と呼び、
図5にW10a、W11aとして記す。ここで、MPPTミスマッチ損失W10aとW11aとの損失和と、
図4で説明したDC−DCコンバータ損失W71を比較すると、W10aとW11aとの損失和の方が小さいことがわかる。これは、太陽光発電システムの発電量を増加する効果が得られたことに等しい。
【0036】
上記の効果を確認するために、DC−DCコンバータの入力と出力の電圧差が前述の所定の電圧差以内ではない場合に、DC−DCコンバータを停止したときのパワーコンディショナ1の動作状態を説明する。先に説明した
図4の日射変動前の太陽電池列11とDCリンク電圧V
PNとの間の電圧差はV
C2であり、所定の電圧差V
Tよりも大きな電圧差である。この条件でDC−DCコンバータ71の駆動を停止した状態を表しているのが
図6である。本図において、太陽電池列10と日射変動前の太陽電池列11とを合成した直流電力の最大電力点の電圧はV
MP1'となった。その結果、太陽電池列10、太陽電池列11にそれぞれW10b、W11bのMPPTミスマッチ損失が発生した。このMPPTミスマッチ損失の和は
図4のDC−DCコンバータ71の損失W71cを上回る結果となり、すなわち太陽光発電システムの効率が低下してしまった。
【0037】
以上に説明した通り、駆動されているDC−DCコンバータにおいて、その入力と出力との間の電圧差が所定の電圧差以内の場合に駆動を停止することで、太陽光発電システムの発電量を増加すなわち効率を向上する効果を奏する。
【0038】
ここで前述の所定の電圧差について補足する。前述の所定の電圧差とは、該当するDC−DCコンバータの駆動の停止によって、太陽光発電システムにおける太陽電池列およびDC−DCコンバータの部位で発生する損失の総和を低減可能な電圧差である。この電圧差は、太陽電池列の電圧対電力の特性、DC−DCコンバータの電力対損失の特性などの要因によって決まるため、例えば、制御手段100が前述の決定要因の情報を基に演算などして設定することが望ましい。しかし、小規模なシステムでは演算に使用するマイクロコンピュータや電子メモリなどにコストをかけられない場合もある。そのような場合は、前述の所定の電圧差を固定の値としてもよい。例えば、DC−DCコンバータの最大入力電圧を基準にして、その電圧に固定の割合をかけたものでもよい。具体例をあげると、例えば、DC−DCコンバータの入力電圧が450Vの場合、その1%〜5%にあたる4.5V〜22.5Vの電圧値を、前述の所定の電圧差としても十分に太陽光発電システムの効率を向上する効果が得られる。
【0039】
なお、本実施例では2系統の太陽電池列およびDC−DCコンバータを搭載する太陽光発電システムについて説明したが、それに限定するものではない。駆動されているDC−DCコンバータの入力と出力との電圧差が前述の所定の電圧差以内か否かを判断されればよく、複数の太陽電池列およびDC−DCコンバータを搭載するシステムにおいても有効である。
【実施例3】
【0040】
1系統の太陽電池列とDC−DCコンバータとの構成を持つ太陽光発電システムにおける作用と効果を本実施例で説明する。なお、先の実施例の説明と重複する部分については説明を省略する。
【0041】
本実施例では、
図1のパワーコンディショナ1が、太陽電池列10、DC−DCコンバータ70、系統連系インバータ80、制御手段100で構成され、太陽電池例10の電圧対電力特性が
図7の破線に示した条件下における動作を説明する。
図7において、太陽電池列10の最大電力点と動作点はそれぞれMP10bとOP10bであり、最大電力点MP10bの電圧は系統連系インバータ80の最低入力動作電圧V
INVLOWを下回った状態である。
【0042】
この場合に制御手段100は、DC−DCコンバータ70を駆動し、太陽電池列11の直流電力を昇圧して系統連系インバータ80に出力するとともに山登り法による最大電力追従を行う。また制御手段100は系統連系インバータ80を駆動して、DCリンク電圧V
PNがV
INVLOWになるように、逆潮流させる電力を調整する。
図7の条件では、DC−DCコンバータの入力と出力との電圧差V
C3は、実施例2で説明した所定の電圧差V
T2よりも大きい状態にある。
【0043】
次に、太陽電池列10への日射が変動して電圧対電力特性が変化した直後の状態を
図8に示す。本図において、日射変動直後の太陽電池列10の最大電力点と動作点をそれぞれMP10c、OP10cとする。MP10cはV
INVLOWよりも低い状態にある。
【0044】
日射変動の直後は、コンバータ70は
図7で説明した状況と同様に、制御手段100が、DCーDCコンバータ70を駆動しており、DC−DCコンバータ70で損失W70cが発生している。一方、DC−DCコンバータ70の入力と出力との間の電圧差V
C4は前述の電圧差V
T2以内となった。この状態を検知して制御手段100は、DC−DCコンバータ70の駆動を停止した。
【0045】
DC−DCコンバータ70の駆動を停止した後のパワーコンディショナ1の動作状態を
図9に示す。DC−DCコンバータ70の駆動を停止すると、太陽電池列11の直流電力はコンバータ70内のダイオードを介して系統連系インバータ80に出力される。一方、制御手段100は、系統連系インバータ80を駆動してDCリンク電圧V
PNをV
INVLOWになるように制御しているため、太陽電池列10の動作点OP10cの電圧は、V
INVLOWと等しくなる。このため、太陽電池列10の動作点OP10cは最大電力点MP10cから外れてMPPTミスマッチ損失W10cが発生する。しかし、損失W10cと
図8で説明したDC−DCコンバータの損失W70cを比較すると、W10cの方が小さいことがわかる。これは、太陽光発電システムの発電量を増加する効果が得られたことに等しい。
【0046】
本実施例では、1系統の太陽電池列とDC−DCコンバータとの構成を持つ太陽光発電システムの動作を説明した。本実施例に関しても、駆動されているDC−DCコンバータにおいて、その入力と出力との間の電圧差が所定の電圧差以内の場合に駆動を停止することで、太陽光発電システムの発電量を増加すなわち効率を向上する効果を得た。
【実施例4】
【0047】
これまで述べた太陽光発電システムの効果をさらに高めた実施例について,
図1と10を使って説明する。本実施例は,前述の
図1と同様の構成であり,制御手段100におけるDC−DCコンバータ70の駆動条件に改良を施したものである。なお、先の実施例の説明と重複する部分については説明を省略する。
【0048】
図1において,DC−DCコンバータ70からは直流電力が出力される。一方,系統連系インバータ80は商用系統81に交流電力を逆潮流するため,系統連系インバータ80の入力電力は商用系統81の電圧に同期して脈動する。ここで平滑コンデンサ30は,DC−DCコンバータと系統連系インバータとの間の差分の電力を充放電し,DCリンク電圧V
PNを安定化する役割を果たす。この平滑コンデンサ30の静電容量が充放電する電力に対して小容量であるとき,DCリンク電圧V
PNの変動が大きくなり,本発明による制御に悪影響を与える場合がある。
【0049】
図10の上部の波形は,DC−DCコンバータの入力電圧と出力電圧すなわちDCリンク電圧V
PNとの関係を示した一例である。V
PNには前段落で述べた電圧変動が生じている。一方,DC−DCコンバータ70の入力電圧は一定であるため,DC−DCコンバータ70の入力と出力との電圧差V
Cにも,同図の下部の波形に示すような電圧変動が生じている。ここで,DC−DCコンバータ70における駆動と停止の判定に用いる所定の電圧差V
TがV
Cの最大値と最小値との間に位置した場合の動作を考える。実施例1〜3ではV
T>V
Cとなる区間でDC−DCコンバータ70の駆動が停止されることから,同図の条件下において,DC−DCコンバータ70の駆動と停止が周期的に繰り返されて太陽発電システムの動作が不安定になるおそれがあった。
【0050】
そこで本実施例の制御手段100は,
図10に示すように変動している電圧差V
Cの最小値を記憶する手段を備え,V
Cの最小値が所定の電圧差V
T以内となった場合にDC−DCコンバータの駆動を停止する。なお,前述の電圧差V
Cの最小値は,平滑コンデンサ30の静電容量値と,DC−DCコンバータと系統連系インバータとの間の差分の電力値を基にマイクロコンピュータ等で演算してもよい。この作用により,DC−DCコンバータ70の駆動と停止が周期的に繰り返されることを防止し,太陽光発電システムを安定に動作させ,発電量を増加すなわち効率を向上する効果を奏する。