(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、自律走行型掃除機1(
図2、
図3参照)が主に進行する向きを前方、鉛直上向きを上方とし、
図2、
図3に示すように前後・上下・左右を定義する。
【0013】
図2は、本実施形態に係る自律走行型掃除機1を左前方から見下ろした斜視図である。
図3は、自律走行型掃除機1を左前方から見上げた斜視図である。
図4は、自律走行型掃除機の制御装置、及び制御装置に接続される機器を示す構成図である。
【0014】
自律走行型掃除機1は、所定の掃除領域(例えば、部屋)を自律的に移動しながら掃除する掃除機である。自律走行型掃除機1は、主に、本体2と、駆動輪3R,3L(
図3参照)と、走行モータ4R,4L(
図4参照)と、補助輪5(
図3参照)と、送風機6と、センサ類(測距センサ7等:
図3参照)と、サイドブラシ8R,8Lと、制御装置9(
図4参照)と、を備えている。
【0015】
本体2は、各種モータや制御装置9等を収容する筐体であり、その外形は薄型の円柱状を呈している。本体2は、上壁である上ケース10と、底壁(及び一部の側壁)である下ケース11と、前部に設置されるバンパ12と、を備えている。上ケース10には、後記する集塵ケース13(
図3参照)を出し入れするための蓋10aが設けられている。
【0016】
下ケース11には、駆動輪3R,3Lをそれぞれ露出させる穴部H1と、補助輪5を露出させる穴部H2と、集塵ケース13に塵埃を取り込むための吸口H3と、が形成されている。平面視で円形を呈する下ケース11の中心付近に吸口H3が形成され、この吸口H3の左右方向両側に、前記した穴部H1が形成されている。また、下ケース11の前部には、サイドブラシ8R,8Lを露出させる二つの切欠V1が形成されている。
【0017】
バンパ12は、外部から作用する押圧力に応じて内外方向(平面視で本体2の中心側を内側とする。)で移動可能に設置されている。バンパ12は、左右一対のバンパばね(図示せず)によって外方向に付勢されている。
【0018】
駆動輪3R,3Lは、自身が回転することで本体2を前進・後退・旋回させるための車輪である。駆動輪3R,3Lは、左右方向において吸口H3の両側に配置されている。右側の駆動輪3Rは、複数段の歯車で構成された減速機(図示せず)を介し、走行モータ4Rの駆動力が作用するように設置されている。左側の駆動輪3Lについても同様である。
【0019】
走行モータ4Rは、右側の駆動輪3Rを回転させるためのモータであり、その回転軸が減速機に接続されている。他方の走行モータ4Lは、左側の駆動輪3Lを回転させるためのモータであり、その回転軸が左側の減速機を介して接続されている。これらの走行モータ4R,4Lは、制御装置9からの指令に応じて、同一の又は異なる回転速度で駆動可能になっている。つまり、走行モータ4R,4Lの回転速度をそれぞれ制御することで、自律走行型掃除機1を前進・後退・旋回させることができる。
【0020】
補助輪5は、本体2を所定高さで保ちつつ自律走行型掃除機1をスムーズに移動させるための車輪である。補助輪5は、本体2の移動に伴い床面との間で生じる摩擦力によって回転するように軸支されている。
【0021】
本体2の内部の後方には送風機6を搭載している。送風機6は、自身を駆動することで集塵ケース13内の空気を外部に排出して負圧を発生させ、床面から吸口H3を介して塵埃を吸い込む機能を有している。
【0022】
吸口H3から下流側に向かう風路は、集塵ケース13、集塵フィルタ(図示せず)、送風機6、及び本体後方の排気口(図示せず)で構成される。吸口H3付近には、床面上の塵埃を掻き込む吸口ブラシ14が設けられている。この吸口ブラシ14は、左右方向に沿う軸を中心に回転可能に軸支され、吸口ブラシ用モータ15(
図4参照)に連結されている。
【0023】
送風機5及び吸口ブラシ用モータ15が駆動すると、床面の塵埃は吸口H3を介して吸引され、吸口ブラシ14によって掻き込まれ、集塵ケース13に導かれる。集塵フィルタで塵埃が取り除かれた空気は、排気口を介して排出される。なお、集塵ケース13は、上ケース10に設けられた蓋10aを開けることで着脱可能である。
【0024】
また、
図2に示すサイドブラシ8R,8Lは、自身が回転駆動されることで本体2よりも外側にある塵埃を吸口H3に導くブラシであり、その一部が平面視で本体2から突き出している。サイドブラシ8R,8Lは、平面視において120°間隔で放射状に延びる3束の刷毛を有し、吸口H3よりも前方において、下ケース11の左右の切欠V1に配置されている。
【0025】
サイドブラシ8Rの刷毛は、先端に向かうにつれて床面に近づくように下方に傾斜しており、その先端付近は床面に接している。なお、左側のサイドブラシ8Lについても同様である。
【0026】
サイドブラシ8R、8Lは、それぞれサイドブラシ用モータ16R,16L(
図4参照)に連結されて、サイドブラシ用モータ16R,16Lが本体2底面から見てそれぞれ時計回り、反時計回りに駆動されることで、吸口H3の前方に塵埃を掻き集めるようになっている。
【0027】
バンパセンサ12R,12L(
図4参照:障害物検知手段)は、バンパ12の後退(つまり、障害物との接触)を検知するマイクロスイッチである。バンパセンサ12R、12Lはバンパ12の裏側で、本体2の前側(下ケース11の周縁付近)に右側、左側に分かれて固定されている。例えば、バンパ12の右側(又は中央付近)に障害物が接触した場合、バンパ12が後退し、バンパセンサ12Rを作動させることで、検知信号が制御装置9に出力される。左側のバンパセンサ12Lについても同様である。
【0028】
測距センサ7(障害物検知手段)は、障害物までの距離を検出する赤外線センサである。本実施形態例では、下ケース11の周縁付近において正面に1個、左右両側に2個ずつ、計5個の測距センサ7を設けている(
図2、3参照)。バンパ12のうち少なくとも測距センサ7の近傍は、赤外線を透過させる樹脂又はガラスで形成されている。なお、測距センサ7として他の種類のセンサ(例えば、超音波センサ、可視光センサ)を用いてもよい。
【0029】
床面用測距センサ17は、床面までの距離を計測する赤外線センサであり、下ケース11の下面に設置されている(
図3参照)。床面用測距センサ17を設けることで、階段等の大きな段差があった場合に当該段差を検出し、自律走行型掃除機1が落下してしまうことを防止できる。例えば、床面用測距センサ17によって本体2の前側下方に30mm程度の段差が検知された場合、制御装置9は走行モータ4R,4Lを制御して本体2を後退させ、進行方向を転換させる。
【0030】
図4に示す走行モータ用エンコーダ18R,18Lは、走行モータ4R,4Lの回転速度・回転角度を検出する検出器である。なお、走行モータ用エンコーダ18R,18Lによって検出される回転速度・回転角度と、減速機の減速比と、駆動輪3R,3Lの径とに基づいて、制御装置9は本体2の移動速度・移動距離を算出する。
【0031】
操作ボタン19a,19b,19cは、ユーザの操作に応じた操作信号を制御装置9に出力するボタンであり(
図2参照)、電源ボタン19aと、掃除の開始/終了ボタン19bと、掃除モードを変更するための掃除モード選択ボタン19cと、を有している。
【0032】
図4に示す表示パネル20は、複数のLED(Light Emitting Diode:図示せず)と、7セグメントディスプレイ(図示せず)と、を有しており、自律走行型掃除機1の運転状態等を表示する。
【0033】
充電池21は、充電することで再利用可能な二次電池であり、本体2内部の前側に収容されている。充電池21からの電力は、各センサ類、各モータ、及び制御装置9に供給される。また、電池残量を検出する電池残量検出装置22を有している。電池残量検出装置22は充電池21の端子電圧を測定する方式や、充電池21に流入した電力量と流出した電力量を比較する方式等があるが、いずれの方式でも構わない。
【0034】
制御装置9は、例えばマイクロコントローラ23であり、プログラムの書き換え可能なフラッシュROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)が各種処理を実行するようになっている。
【0035】
制御装置9は、操作ボタン19a,19b,19c、及び前記したセンサ類からの信号に応じて演算処理を実行し、前記した各モータに指令信号を出力する。
【0036】
このような自律走行型掃除機1は、主に部屋A(
図5、6参照)の中で使用され、部屋Aの中を掃除走行制御と帰還走行制御の2つの主な走行制御で自律走行する。掃除走行制御は、サイドブラシ8R、8Lを回転させるとともに、床面上の塵埃を吸口ブラシ14で取り込み、送風機5で吸引して集塵ケース13に回収しながら、自律走行させている。掃除走行制御の例として、反射走行パターンを以下に示す。
【0037】
図5は、反射走行パターンの走行軌跡を示す説明図である。反射走行パターンは、壁や障害物24(棚、ソファ等)に接触又は接近した場合、自律走行型掃除機1が進行方向を変えながら走行する走行パターンであり、部屋A全体の掃除に適している。バンパセンサ12R,12Lや測距センサ7から入力される検出信号によって障害物24が検知された場合、制御装置9は走行モータ4R,4Lを互いに逆方向に回転させることで、本体2を超信地旋回(その場で回転)させて進行方向を変える。これによって自律走行型掃除機1は、あたかも障害物等によって本体2が反射するように方向転換する。
【0038】
このような掃除走行制御による掃除が一定時間経過した、もしくは充電池21の電池残量が所定の値以下に達した場合に、掃除走行制御から帰還走行制御に自動で移行する。もしくは、掃除モード選択ボタン19cにより帰還走行モードが指示された場合に帰還走行制御を行う。
【0039】
帰還走行制御は
図6のように、自律走行型掃除機1を基地局25まで移動させる走行制御である。自律走行型掃除機1が基地局25に帰還することで、充電池21は充電される。
【0040】
この帰還走行制御を行う上で、基地局25は自律走行型掃除機1を基地局25に誘導する帰還信号を送信している。この帰還信号を自律走行型掃除機1は受信し、制御装置9により基地局25の位置を推測し(もしくは、基地局25に対する自律走行型掃除機1の位置を推測し)、進行方向を決め、駆動輪3R,3Lを駆動させる。以下、帰還走行制御、帰還信号の伝送システム、受信システムについて詳細に説明する。
【0041】
まず、本体2における帰還信号の受信システムについて
図2、7、8を用いて説明する。
【0042】
本体2のバンパ12は、帰還信号を受信するために中央受信装置26、右受信装置27R、左受信装置27Lを設けている。
【0043】
中央受信装置26は本体2の左右幅の略中央で、バンパ12上面に固定されている。中央受信装置26の内部構造を
図7に示す。中央受信装置26は赤外線を受光する受光素子26aと、その受光素子26aを囲う略円筒形状の受光レンズ26bと、その受光レンズ26bの上面を覆う上面カバー26cと、で構成される。受光素子26aはバンパ12上面とほぼ同じ高さの位置に、受光方向を上向きに固定される。受光レンズ26bは、その胴部が赤外線を透過する樹脂材料で作られており、胴部外周のどの方向からの赤外線の帰還信号を取り込むことができる。また、受光レンズ26b内側は、下側がすぼんだすり鉢状の空間が設けられ、胴部外周から取り込んだ赤外線の帰還信号を、このすり鉢状の空間との境界面で下方に向けて反射させている。このように反射した帰還信号を受光レンズ26bの下方にある受光素子26aが受光する構造となっており、水平面において全方位(前方向、後方向、右方向、左方向)から帰還信号を受信できるようなっている。また、上面カバー26cは赤外線を通過させない樹脂で作られており、本体2の上方からの赤外線、例えば、照明光や他の機器のリモコン信号を遮断している。
【0044】
右受信装置27Rと左受信装置27Lは本体2の高さ方向の中央位置より高い位置で、本体2の左右幅の略中央よりそれぞれ右に約30mm、左に30mm離れた位置に、受信方向を略前向きにバンパ12に固定されている。右受信装置27Rと左受信装置27Lの内部構造を
図8に示す。左右の受信装置27は受光方向を略水平にした受光素子27aと、バンパ12の外郭より後方に伸びる長さ約20mmのホーン状の筒27bで構成され、水平面および鉛直面に対する受信範囲が約30度となるような指向性を有している。
【0045】
つまり、中央受信装置26は水平面において様々な方向からの帰還信号を受信するのに対し、右受信装置27R、左受信装置27Lは中央受信装置26より受信範囲が狭く、本体2の前方からの帰還信号のみを受信するように構成される。これにより、基地局25に対して、本体2が前向きか後ろ向きか判別可能となる。つまり、右受信装置27R、左受信装置27Lが帰還信号を受信していれば前向きであり、中央受信装置26のみが帰還信号を受信していれば後向きである。
【0046】
次に、
図9、10を用いて基地局25および帰還信号29の伝送システムを説明する。
図9は基地局25を正面上方より見下ろした外観斜視図であり、
図10は基地局25を
図9の破線Cで切断した面を上方より示すとともに、帰還信号29の伝送領域B1〜B4を示した図である。
【0047】
基地局25は床面に対して略垂直に伸びる背もたれ部25aと、床面に平行に前側にのびたベース部25bとで構成されている。背もたれ部25aの高さは自律走行型掃除機1の高さより若干高く、背もたれ部25aの上部には帰還信号29を伝送する2つの開口部25cを有している。開口部25cは高さ約10mm、横幅約20mmの横長な形状であり、その内側には赤外線を透過する材質で作られた窓板25dが設けられている。また、背もたれ部25aを上から見ると略台形をしており、後ろ側の幅が広く、前側が狭くなっている。この形状により、壁を背にして設置された基地局25に対して、壁際を走行している自律走行型掃除機1が接触した場合、基地局25に対し壁側に向かう力が生じ、基地局25を壁に押し付け、移動させ難くできる。
【0048】
また、
図10に示すように背もたれ部25aの内側は、帰還信号29を送信する2個の赤外線LED25i、25jと、これら赤外線LED25i、25jを発光させるための発光回路および自律走行型掃除機1の充電池21に電力を供給するための充電回路を含む電子基板25fを有している。
【0049】
また、基地局25は電源コード25eを有しており、電子基板25fに電力を供給する。
【0050】
2個の赤外線LED25i、25jは基地局25の左右幅の略中央を中心に左右に約5mmずつ離れた状態で、開口部25cから約50mm後方の位置に設けられている。これら2個の赤外線LED25i、25jの間には窓板25dまで延びる仕切り板25gが設けられ、帰還信号29の伝送範囲を制限している。この仕切り板25gは黒色であり、赤外線の反射を抑え、意図しない方向に赤外線が広がるのを抑えている。
【0051】
また、ベース部25bは自律走行型掃除機1の充電池21を充電するときの給電端子25hを備えている。給電端子25hは正極・負極の2極あり、ベース部25bの左右幅の略中央を中心に左右に分かれて、ベース部25bの凸状に盛り上がった頂上に設けられている。
【0052】
給電端子25hは、基地局25に自律走行型掃除機1が帰還した際に、下ケース11の底面に設けた受電端子28と接触し、これにより充電池21に給電することができる。また、どちらの給電端子25hも、ばねでベース部25bの下方から押し上げられるように設けられ、上から力を加えると沈み込むようになっている。この構成により、充電時において、給電端子25hは自律走行型掃除機1の受電端子28を押し上げるように受電端子28と接触し、端子間をしっかり接触させることができる。また、受電端子28は給電端子25hより広く、基地局25の左右幅の中心と本体2の左右幅の中心が多少ずれても、充電池21に電力を供給できる。具体的には給電端子25hの幅は約5mmであり、受電端子28の幅は約20mmである。
【0053】
また、ベース部25bの前縁は、給電端子25h付近が前側に出張っており、逆に2つの給電端子25h間においては背もたれ部25a側に奥まっている。この形状により、自律走行型掃除機1が自動で帰還するときに、本体2の補助輪5がベース部25bに接触すると補助輪5の向きが変わり、本体2の進行方向が変わり、給電端子25hに受電端子28が接触できなくなることを防ぐ。つまり、自律走行型掃除機1が基地局25に帰還しても、補助輪5がベース部25bにほぼ接触しないように、補助輪5が接近するベース部25bの前縁の一部を切り欠いた形状となっている。
【0054】
このような基地局25からの帰還信号29の伝送について説明する。まず、帰還信号は
図1に示す様な、高速で赤外線LED25i、25jを点滅させて(約50〜100ms間にON/OFFを数十回繰り返して)作られるコードである。このような帰還信号29を左右の赤外線LED25i、25jより伝送する。なお、右側および左側の帰還信号のコードは異なっている。
【0055】
図10に示すように、右側の赤外線LED25iは基地局25の左右幅の略中央から右側前方の領域に向けて右側帰還信号29Rを伝送し、左側の赤外線LED25jは基地局25の左右幅の略中央から左側前方の領域に向けて左側帰還信号29Lを伝送している。
具体的には、どちらの帰還信号29R,29Lも基地局25から前方に約6m離れた領域まで伝送され、右側の帰還信号29Rの伝送領域の幅は、基地局から約1m前方の位置で基地局25の左右幅の略中央より左側に約25mmから、略中央より右に約30度方向までの範囲であり、左側の帰還信号29Lの伝送領域の幅は、基地局25の左右幅の略中央より右側に約25mmから、左に約30度方向までの範囲である。よって、基地局25の左右幅の略中央の前方、幅約50mmの範囲は、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方が伝送される。ただし、基地局25の近傍(前方約50mm以内)では、左右両方の帰還信号29が伝送される領域は狭くなり、幅約20mm程度となる。
【0056】
このように基地局25周辺の領域は、右側帰還信号29Rだけが伝送される領域B1、左側帰還信号29Lだけが伝送される領域B2、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方が伝送される領域B3、どちらも伝送されない領域B4の4領域に分けることができる。自律走行型掃除機1は、これらの帰還信号29を受信し、コードを識別し、自律走行型掃除機1が基地局25に対してどの領域(位置)を走行しているかを判断し、進行方向を決める。特に、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方が伝送される領域B3は重要であり、後で述べるが、自律走行型掃除機1は領域B3から外れないように前進し、基地局25に帰還する。
【0057】
そのためにも、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方が伝送される領域B3は狭いほうが望ましく、左右の帰還信号29のみ伝送される領域B1、B2より狭くしている。
【0058】
2つの帰還信号29R、29Lのそれぞれの伝送領域の一部が重なるように伝送させるが、これら2つの帰還信号29R、29Lを同時に発信させると、信号自体が重なり合い、信号が乱れ、右側帰還信号29Rでも左側帰還信号29Lでもなくなってしまう。2つの信号が重なった別信号は、どちらか一方の信号がHIGHのときはHIGHになり、両方の信号がLOWのときはLOWになる。そのため、この別信号は2つの信号の伝送タイミングによって異なる信号となる。2つの信号を毎回、同じタイミングで伝送していれば、この別信号は毎回同じコードの信号になるが、タイミングにずれが生じると信号(コード)が乱れ、異なるコードとなり、自律走行型掃除機1が帰還信号として認識できなくなる。特に、本実施形態例のように赤外線LED25i、25jの点滅が速い場合、発光タイミングが少しずれると全く異なる信号となってしまう。
【0059】
信号が異なると、自律走行型掃除機1が帰還信号として認識できなくなるだけでなく、他の機器に対して、誤動作を引き起こすことも考えられる。赤外線を用いた家庭用電化機器の信号(例えば、リモコン信号)は、各社、各製品、各動作によって、リモコン信号のコードが割り当てられている。そのため、想定した信号のコードから異なると、他の家庭用電化機器のリモコン信号のコードと同じコードとなる恐れもあり、他の機器を誤動作させることも考えられる。
【0060】
そこで、本発明の2つの帰還信号29R、29Lは
図11、
図12のように一方が送信を停止している間に、もう一方を送信させることで、2つの帰還信号29R、29Lが重ならないようにしている。
図11は帰還信号29の伝送の様子を示す模式図であり、
図12は帰還信号29の伝送パターンを示すタイミングチャートである。約80msの右側帰還信号29Rを伝送した後、約70msの時間を空けて(約70ms間、両方の帰還信号29の伝送を停止した後)、約80msの左側帰還信号29Lを伝送させる。その後、70msの時間を空けて(約70ms間、両方の帰還信号29の伝送を停止した後)、右側帰還信号29Rから同様のタイミングで伝送を繰り返す。これにより、2つの帰還信号29R、29Lを重ねることなく伝送することができる。
【0061】
このように2つの帰還信号29R、29Lを交互に伝送しているが、片側の帰還信号29について見れば、約80msの帰還信号29のコードを約300ms間隔で伝送を繰り返している。つまり、帰還信号29の伝送を停止している時間は220msであり、伝送している時間に対して時間が長い。これは、家庭内で使われる赤外線信号を用いたテレビ、エアコン、照明機器などの家庭用電化機器のリモコン操作を妨げないためである。具体的には、家庭用電化機器のリモコン信号のコードは一般的に約100〜130ms間隔で伝送されているため、帰還信号29のコードの伝送を停止している時間は、130ms以上確保していることが望ましい。
【0062】
また、別の伝送パターンのタイミングチャートを
図13に示す。この場合は、約80msの右側帰還信号29Rを伝送した後、約10msの時間を空けて(約10ms間、帰還信号29R,29Lの両方の伝送を停止した後)、約80msの左側帰還信号29Lを伝送させる。その後、約130msの時間を空けて(約130ms間、帰還信号29R,29Lの両方の伝送を停止した後)、右側帰還信号29Rから同様のタイミングで伝送を繰り返す。本伝送パターンの特徴は、帰還信号29R,29Lの両方の伝送を停止している2つの時間の長さを異ならせることである。特に、帰還信号29R,29Lの両方の伝送を停止している時間の一方の時間を、帰還信号29の伝送時間よりも短くし、もう一方の帰還信号29R,29Lの両方の伝送を停止している時間を、帰還信号29の伝送時間よりも長くすることで、伝送パターンの1サイクル分の時間を長くせずに、帰還信号29R,29Lの両方の伝送を停止している状態を長時間継続させることができる。これにより右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方を伝送する領域B3に対して、他の家庭用電化機器のリモコン操作を妨げないようにすることができる。
【0063】
また、これらの伝送パターンのように、右側帰還信号29R、左側帰還信号29Lは交互に伝送させることが望ましい。交互に伝送させずに、右側帰還信号29Rもしくは左側帰還信号29Lを2回以上連続して伝送させると、左右両方の帰還信号29R,29Lの伝送を完了させるまでの時間が長くなるので(1サイクルの時間が長くなるので)、帰還信号29を取り逃さないためにも、本体2の移動速度を低下させる必要が生じる。本体2の移動速度を低下させると、基地局25に帰還するまでの時間が長くなり、充電池21の電池残量をより低下させてしまう恐れがある。よって、左右の帰還信号29R,29Lを交互に伝送させることで、交互に伝送させない場合よりも基地局25に帰還するまでの時間を短くすることができ、充電池21の電池残量の低下を抑えることができるため望ましい。
【0064】
このような帰還信号の伝送システムおよび受信システムにおける帰還走行制御を、
図6を用いて説明する。
【0065】
帰還走行制御は、基地局25に自律走行型掃除機1を帰還させることが主目的であり、充電池21の電池残量が極端に低下して、走行できなくなり、基地局25に帰還できなくなることを防ぐため、サイドブラシ8R、8Lの回転速度、吸口ブラシ14の回転速度、送風機5の吸引力を低下または停止させ、消費電力を抑えて自律走行させる。
【0066】
まず、中央受信装置26もしくは左右の受信装置27が基地局25からの帰還信号29を受信していない状態においては、前記反射走行パターンと同様に、障害物が検知された場合、本体2を超信地旋回させて進行方向を変える走行パターンを行う。そのときの走行速度は、走行中に帰還信号29を取り逃さないためにも、掃除走行制御時の最高速度より遅い速度で走行させる。
【0067】
反射走行パターンで走行している間に、中央受信装置26もしくは左右の受信装置27が基地局25からの帰還信号29を受信した場合、直進動作(S1)から大きな円弧を描くように本体2を前進させる動作(S2)に変更し、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方が伝送される領域B3に、本体2を移動させる。このとき本体2が右側帰還信号29Rを受信している場合は、左側に大きな円弧を描くように本体2を移動させ、左側帰還信号29Lを受信している場合は、右側に大きな円弧を描くように本体2を移動させる。ただし、中央受信装置26のみが帰還信号29を受信している場合は、本体2が基地局25に対して後を向いている状態であり、本体2を超信地旋回させ、右側受信装置27Rもしくは左側受信装置27Lが帰還信号29を受信する状態にした後に、前記大きな円弧を描く前進動作(S2)に移行させる。また、前記大きな円弧を描く前進動作(S2)において、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方を受信できる領域B3は狭いため、帰還信号29を取り逃さないためにも、前進速度をさらに遅くさせる方が望ましい。
【0068】
中央受信装置26もしくは左右の受信装置27が右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方を受信した後、本体2を本体2の約半径の距離、前進させ、本体2の略中央部を左右両方の帰還信号29が伝送される領域B3まで移動させる(S3)。中央受信装置26および左右の受信装置27は本体2の前側に設けられているため、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方を受信し始めた状態では、左右両方の帰還信号29R、29Lが伝送される領域B3に、本体2の前側だけしか位置していないため、上記走行制御S3を行う。ただし、このように本体2を前進させると、本体2の受信装置26、27は左右両方の帰還信号29R、29Lが伝送される領域B3から一旦外れることになる。
【0069】
その後、本体2を超信地旋回させ、中央受信装置26もしくは左右の受信装置27が右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方の信号を受信したら停止させる(S4)。
この走行制御S4において、本体2を超信地旋回させる時点で、中央受信装置26が右側帰還信号29Rを受信している場合は、本体2を本体2上方から見て反時計回りに回転させ、左側帰還信号29Lを受信している場合は、本体2を本体2上方から見て時計回りに回転させたほうが、右側帰還信号29Rと左側帰還信号29Lの両方の信号を、早く受信できるため(両方の帰還信号29R、29Lが伝送される領域B3に本体2の前側に設けた受信装置26、27を早く位置させることができるため)望ましい。この動作により、受信装置26、27を設けた本体2の前側と、本体2の略中央をともに、右左両方の帰還信号29R、29Lが伝送される領域B3に位置させることができる。つまり、基地局25の左右幅の略中央前面(正面)と本体2の左右幅の略中央前面(正面)が向かい合った状態になる。
【0070】
その後、本体2の正面が基地局25の正面、つまり領域B3の範囲から外れないように、中央受信装置26が右左両方の帰還信号29R、29Lを受信した状態を保つように基地局25に向かって前進させる(S5)。この走行制御S5は、基地局25の給電端子25hと本体2の受電端子28を接触させるために必要であり、本体2が基地局25近傍まで近づいたときに、基地局25の正面からずれ、給電端子25hと受電端子28は接触しなくなることを防ぐ。具体的には、中央受信装置26が右側帰還信号29Rのみを受信するようになったら、本体2を左前方に前進させ、中央受信装置26が左側帰還信号29Lのみを受信するようになったら、本体2を右前方に前進させる制御により、左右両方の帰還信号29R、29Lが伝送される領域B3から本体2の正面が外れても、領域B3に戻すことが可能となる。
【0071】
また、より本体2の正面が基地局25の正面から外れないようにするためにも、右側受信装置27Rは右側帰還信号29Rのみを受信し、左側受信装置27Lは左側帰還信号29Lのみを受信する状態を保つように前進させる制御も追加したほうが望ましい。この制御により、左右の受信装置27が領域3に入った場合にも、本体2の進行方向を変えることができ、本体2の正面が領域B3から大幅に外れることを防ぐ。そのためには、右側受信装置27Rと左側受信装置27Lの距離は、左右の帰還信号の両方が伝送される領域の左右幅の距離より若干長いことが望ましい。そのため、少なくとも右側受信装置27Rと左側受信装置27Lの間隔は、基地局25に設けた左右の赤外線LED25i、25jの間隔より広いほうが望ましい。
【0072】
自律走行型掃除機1は、上記走行制御S5を行いながら基地局25に向かって前進していると、基地局25近傍で本体2の底面が基地局25のベース部25bに乗り上げる。そして、本体2の底面に設けた受電端子28と基地局25の給電端子25hが接して電気的導通が確認されると、自律走行型掃除機1は走行を停止させるとともに、サイドブラシ8R、8L、吸口ブラシ14の回転、送風機5の運転を停止させ、帰還走行制御を終了させる。その後、基地局25は本体2の充電池21へ電力を供給し始める。
【0073】
上記帰還走行制御において、左右両方の帰還信号29が伝送される領域B3は重要であり、その領域B3で帰還信号の誤判定を起こさないことが求められる。そのため、本発明は左右の帰還信号29R,29Lを重複させずに、交互に伝送させることにより、帰還信号29の乱れを抑えて誤判定を防ぐ基地局25への自動帰還システムを提供する。