【実施例】
【0048】
以下に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
まず、吸水性ポリマーの平均粒子径の算出方法を以下に説明する。
平均粒子径の算出方法は、吸水性ポリマー100gをJIS Z−8801−1982準拠の篩(ふるい)を用いて分級し、各フラクションの質量分率より平均粒子径を求める。
【0050】
次に、吸水性ポリマーの吸水量の測定法を以下に説明する。
吸水量の測定は、室温(20±5℃)で、吸水性ポリマー1.00gを室温(20±5℃)の生理食塩水(0.9%NaCl水溶液、大塚製薬製)150mLで30分間膨潤させた後、250メッシュの不織布袋に入れ、遠心分離機にて143Gで10分間脱水し、脱水後の総質量(全体質量)を測定する。そして、次式(1)に従って、遠心脱水後の生理食塩水の保持量を測定し、この値を吸水量とする。
【0051】
【数1】
ここで、不織布袋液残り量=(遠心脱水後の不織布袋質量)−(不織布袋質量)である。
【0052】
次に、
図6を参照して加圧下吸収量の測定法を実施する測定装置を説明する。
図6(1)に示すように、垂直に立てた円筒211(内径30mm)の下端開口部212にメッシュ213(250メッシュ)を貼ったカラム210を用意する。その中に吸水性ポリマー22(粒子)0.500gを均一な厚みになる様に入れる。次いで、外径30mmよりやや小さいおもり221(2.0kPaの圧力を加えられるおもり)を吸水性ポリマー22の上に載せる。
100mLビーカー230に、室温(20±5℃)の生理食塩水231(0.9質量%塩化ナトリウム水)100mLを注ぐ。そしてメッシュ213をビーカー230の底に着けない様にして、生理食塩水231中にカラム210を浸漬させ、この状態で1時間放置する。
その後、ビーカー130からカラム210を取り出し、
図6(2)に示すように、吸水性ポリマー22上におもり221を載せた状態で15分間水切りする。この試験雰囲気の温度は室温(20±5℃)である。
そして、次式(2)に従って、加圧下吸収量を算出する。
【0053】
【数2】
【0054】
次に、吸水性ポリマーの合成例を以下に説明する。
合成例1として、吸水性ポリマーIの合成を以下のように行った。
合成例1では、まず、撹拌機、還流冷却管、モノマー滴下口、窒素ガス導入管、温度計を取り付けたSUS304製5L容反応容器(アンカー翼使用)に分散剤として花王(株)製ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(商品名エマール20C)0.11%[対アクリル酸質量]を仕込み、シクロヘキサン1600mLを加えた。窒素雰囲気下で撹拌し、内温77℃まで昇温した。
【0055】
一方、2L容三つ口フラスコ中に、東亞合成(株)製80%アクリル酸、イオン交換水を仕込み、氷冷しながら旭硝子(株)製48%苛性ソーダ水溶液を滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液(72%中和品,濃度約48%)1054gを得た。このモノマー水溶液に、味の素(株)製N−アシル化グルタミン酸ソーダ(商品名アミソフトGS−11F)0.18gをイオン交換水3gに溶解させたものを添加し、暫く撹拌した後、264g(以下、モノマー水溶液A)、264g(以下、モノマー水溶液B)、528g(以下、モノマー水溶液C)に三分割した。
【0056】
次いで、和光純薬工業(株)製2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(商品名V−50)0.12g、花王(株)製ポリエチレングリコール(PEG6000)0.20g、イオン交換水14gを混合溶解し、開始剤(A)水溶液を調製した。また、和光純薬工業(株)製過硫酸ナトリウム0.49gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(B)水溶液を調製した。さらに、クエン酸チタン水溶液(50%クエン酸と硫酸チタニル水溶液を20/27の質量比で混合)を調製した。
モノマー水溶液Aに開始剤(A)水溶液7.2gを加えてモノマーAを調製し、モノマー水溶液Bに開始剤(A)水溶液7.2gとクエン酸チタン水溶液1.5gを加えてモノマーBを調製し、モノマー水溶液Cに開始剤(B)水溶液10.5gとクエン酸チタン水溶液3gを加えてモノマーCを調製した。
【0057】
前述の5L容反応容器のモノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、5分以上静置したモノマーA、モノマーB、モノマーCを順に約60分かけて滴下し重合した。モノマー滴下終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、吸水性ポリマー(ハイドロゲル)の含水量を60%に調整し、架橋剤としてナガセ化成工業(株)製エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX−810)0.33gを水10gに溶解したものを添加した。その後、さらに共沸脱水を行い、冷却後、シクロヘキサンを除き、減圧乾燥させることにより吸水性ポリマーを得た。850ミクロンの目開きの篩で粗大粒子を除去した後、この重合体粒子100部に対し日本アエロジル(株)製アエロジル200の0.5部をドライブレンドすることにより吸水性ポリマーIを得た。
【0058】
合成例2として、吸水性ポリマーIIの合成を以下のように行った。
合成例2は、前述の合成例1において、架橋剤としてナガセ化成工業(株)製エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX−810)0.33gを0.18gに変更し、吸水性ポリマーを得た。この吸水性ポリマーに、花王(株)製第四級アンモニウム塩(商品名コータミン86W)1%(吸水性ポリマーの重質量に対して)を水希釈して添加し乾燥した。850ミクロンの目開きの篩で粗大粒子を除去した後、この重合体粒子100部に対し日本アエロジル(株)製、商品名アエロジル200の0.5部をドライブレンドすることにより吸水性ポリマーIIを得た。
【0059】
合成例3として、吸水性ポリマーIIIの合成を以下のように行った。
合成例3は、前述の合成例2において、架橋剤としてナガセ化成工業(株)製エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX−810)0.18gを0.25gに変更した以外は同様の操作を行い、吸水性ポリマーIIIを得た。
【0060】
合成例4として、吸水性ポリマーIVの合成を以下のように行った。
撹拌機,還流冷却管,モノマー滴下口,窒素ガス導入管,温度計を取り付けたSUS304製5L容反応容器(アンカー翼使用)に分散剤として日本油脂(株)製ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(商品名パーソフトEL)0.06%[対アクリル酸重質量]と日光ケミカルズ(株)製ステアロイルメチルタウリンナトリウム(商品名ニッコールSMT)0.04%[対アクリル酸質量]を仕込み、ヘプタン1600mLを加えた。窒素雰囲気下で撹拌し、内温88℃まで昇温した。
【0061】
一方、2L容三つ口フラスコ中に、東亞合成(株)製80%アクリル酸、イオン交換水を仕込み、氷冷しながら旭硝子(株)製48%苛性ソーダ水溶液を滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液(72%中和品,濃度約48%)1054gを得た。このモノマー水溶液に、味の素(株)製N−アシル化グルタミン酸ソーダ(商品名アミソフトGS−11F)0.25gをイオン交換水3gに溶解させたものを添加し、暫く撹拌した後、264g(以下、モノマー水溶液D)、264g(以下、モノマー水溶液E)、528g(以下、モノマー水溶液F)に三分割した。
【0062】
次いで、和光純薬工業(株)製2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(商品名V−50)0.041g、花王(株)製ポリエチレングリコール(PEG6000)0.20g、イオン交換水9gを混合溶解し、開始剤(C)水溶液を調製した。また、和光純薬工業(株)製過硫酸ナトリウム0.49gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(D)水溶液を調製した。さらに、クエン酸チタン水溶液(50%クエン酸と硫酸チタニル水溶液を20/54の質量比で混合)を調製した。
モノマー水溶液Dに開始剤(C)水溶液2.3gを加えてモノマーAを調製し、モノマー水溶液Eに開始剤(C)水溶液6.9gとクエン酸チタン水溶液1.5gを加えてモノマーEを調製し、モノマー水溶液Fに開始剤(D)水溶液10.5gとクエン酸チタン水溶液3gを加えてモノマーFを調製した。
【0063】
前述の5L容反応容器のモノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、5分以上静置したモノマーD、モノマーE、モノマーFを順に約60分かけて滴下し重合した。重合終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、吸水性ポリマー(ハイドロゲル)の含水量を60%に調整し、架橋剤としてナガセ化成工業(株)製エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX−810)0.12gを水10gに溶解したものを添加した。その後、更に共沸脱水を行い、冷却後、ヘプタンを除き、減圧乾燥させることにより吸水性ポリマーを得た。850μmの目開きの篩で粗大粒子を除去した後、この重合体粒子100部に対し日本アエロジル(株)製、商品名アエロジル200の0.5部をドライブレンドすることにより吸水性ポリマーIVを得た。
【0064】
上述の合成例1ないし4における吸水性ポリマーI,II,IIIおよびIVのそれぞれの平均粒子径、吸水量および2kPa加圧下の吸収量は、表1のようになった。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1として、以下のようにして
図7に示す形状の吸収体を具備する吸収性物品を作製した。
図7(1)に示すように、吸水性ポリマー22として、合成例3で得た吸水性ポリマーIIIを用い、パルプシート21Sと吸水性ポリマー22との積層体23(坪量50g/m
2のパルプシート21Sの4層の各層間に吸水性ポリマー22を各層100g/m
2の坪量で3層散布)を作製した。この積層体23を、
図7(2)に示すように、横幅h2=30mm、縦幅h1=50mmとなる様に切断して吸収体ブロック24を作製した。ホットメルト剤(図示せず)を塗布した坪量16g/m
2のティッシュペーパーを基盤シート13として用い、その基盤シート13上に上記カットした吸収体ブロック24を横隙間e=5mm、縦間隔d=5mmで、横3×縦7個で配列させ固定した。
次に、各吸収体ブロック24の上側(肌当接面側)に、ホットメルト剤を塗布した坪量16g/m
2のティッシュペーパー(図示せず)を載せて、マングルでプレス加工した。
[パルプの質量]/[吸水性ポリマーの質量]で表される質量比は、1/1.5であった。また、吸収体の厚みは3mmであった。
図示しないが、プレス加工して得た吸収体を表面シートと裏面シートの間に配置し、吸収性物品を得た。肌当接面である表面シートには、花王(株)製の商品名メリーズの表面材を用い、液不透過性の裏面シートには、花王(株)製の商品名メリーズのバックシートを用いた。
【0067】
実施例2,3,4および比較例
実施例2として、実施例1において、吸水性ポリマーIIIを合成例4で得た吸水性ポリマーIVに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸収性物品を得た。
【0068】
実施例3として、実施例1において、基盤シート13上に上記カットした吸収体ブロック24を横3×縦7個で配列させ固定した後、吸収体ブロック24間の溝(幅5mm)の部分の坪量が50g/m
2となるように、その溝内を実施例1で使用した坪量50g/m
2のパルプシート21S(幅5mm)1枚を配して吸収体ブロック24間を繋ぎ、基盤シート13側にパルプシート1層分の厚さを有するパルプ連続層を配した。
次に、各吸収体ブロック24の上側(肌当接面側)に、ホットメルト剤を塗布した坪量16g/m
2のティッシュペーパー(図示せず)を載せて、マングルでプレス加工した。[パルプの質量]/[吸水性ポリマーの質量]で表される質量比は、1/1.4であった。また、吸収体の厚みは3mm、凹部の深さは1.5mm(50%)であった。
以下、実施例1と同様の操作を行い、吸収性物品を得た。プレス加工した吸収体を表面シートと裏面シートの間に配置する際、裏面シート側にパルプ連続層を配した。
【0069】
実施例4として、前述の実施例3において、プレス加工した吸収体を表面シートと裏面シートの間に配置する際、上下を逆転させて、表面シート側にパルプ連続層を配した。
【0070】
比較例1として、実施例1において、吸水性ポリマーIIIを合成例1で得た吸水性ポリマーIに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸収性物品を得た。
吸収体中の[パルプの質量]/[吸水性ポリマーの質量]で表される質量比は、1/1.5で、吸収体の厚みは3mmであった。
比較例2として、実施例1において、吸水性ポリマーIIIを合成例2で得た吸水性ポリマーIIに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸収性物品を得た。
吸収体中の[パルプの質量]/[吸水性ポリマーの質量]で表される質量比は、1/1.5で、吸収体の厚みは3mmであった。
比較例3として、実施例1において、作成したパルプと吸水性ポリマーとの積層体(坪量50g/m
2のパルプシート4層の間に吸水性ポリマーIIIを各層80g/m
2の坪量で3層散布)を横幅100mm、縦幅375mmとなる様にカットし吸収性物品を得た。なお、実施例1より吸収体の面積が広くなった分、吸水性ポリマーの坪量を下げ、吸水性ポリマーの使用量は実施例1と同量にした。
吸収体中の[パルプの質量]/[吸水性ポリマーの質量]で表される質量比は、1/1.2で、吸収体の厚みは3mmであった。
比較例4として、比較例1において、作成したパルプと吸水性ポリマーとの積層体(坪量50g/m
2のパルプシート4層の間に吸水性ポリマーIを各層90g/m
2の坪量で3層散布)を横幅100mm、縦幅375mmとなる様にカットし吸収性物品を得た。なお、比較例1よりも吸収体の面積が広くなっており、また吸水性ポリマーの坪量を下げ、吸水性ポリマーの使用量は実施例1の約1.13倍としている。
吸収体中の[パルプの質量]/[吸水性ポリマーの質量]で表される質量比は、1/1.4で、吸収体の厚みは3mmであった。
【0071】
次に、吸収性物品の吸収速度と液戻り量の測定法を説明する。一例として、乳幼児用紙おむつ(Mサイズ)の場合を説明する。
吸収性物品の長手方向において腹側端縁部から150mm、幅方向において中央部に内径35mmのアクリル製円筒を置き、吸収性物品全体に2.0kPaの荷重を加えながら、着色した人工尿40gを高さ10mmになるように液を維持しながら注入した。なお、円筒最下部には吸収性物品全体を覆う大きさのアクリル板が備えられている。この時、吸収に要した時間を測定した(吸収時間1)。吸収時間が短いのほど性能が良好であることを示している。吸収開始から10分後に、再度40gを注入、吸収時間を測定した(吸収時間2)。この操作をさらに2回繰り返し、計160gの生理食塩水を注入し、吸収時間を測定した(吸収時間3,4)。試験雰囲気の温度は室温(20±5℃)、人工尿の温度は室温(20±5℃)のものを使用した。
注入完了から10分後に、アドバンテック社製のろ紙No.4A(100mm×100mm,質量測定W1)を10枚重ねたものを、注入点を中心として吸収性物品上に置いた。
厚さ5mm、100mm×100mmのアクリル板を介して、3.5kPaの圧力を掛け、2分後にろ紙の質量を測定し(W2)、次式のようにして、液戻り量を算出した。
【0072】
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(W2)−最初のろ紙の質量(W1)
【0073】
測定した吸収速度および液戻り量を、下記評価基準により3段階評価した。
吸収時間が30秒未満の場合○、30秒以上60秒未満の場合を△、60秒以上の場合を×とした。また、液戻り量が1.0g未満の場合○、1.0g以上1.5g未満の場合を△、1.5g以上の場合を×とした。
【0074】
次に、吸収性物品の吸収量に関する評価方法を以下に説明する。
20度に傾けたアクリル板の上に作製した吸収性物品を載せ(腹側端縁部が下方側)、その上にアクリル板と錘をのせて吸収性物品全体に2.0kPaの荷重を加えた。この状態で、吸収性物品の上方側の端部から200mmの位置に着色した人工尿を一定量、一定間隔ごとに繰り返し注入し、吸収体の下方側の端部から漏れ出すまでの注入量を比較した。試験雰囲気の温度は室温(20±5℃)、人工尿は室温(20±5℃)のものを使用した。
比較例4の吸収容量を1.0とした時の相対値を以下の計算式を用いて算出した。
【0075】
吸収容量(相対値)=(サンプルの吸収容量)/(比較例4の吸収容量)
【0076】
人工尿の組成は表2の通りである。
【0077】
【表2】
【0078】
上記評価方法により、実施例1ないし4および比較例1ないし4を評価した。その結果を表3ないし表5に示す。なお、表3〜5中の「溝の位置」については、
図8に吸収性物品50の概略構成断面図によって示した。図中に示した符号は前述した各構成部品の符号と同様である。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
上記表3ないし表5に示すように、実施例1ないし4では、いずれも1回目は液体の吸収時間が30秒未満であり、2回目から4回目の吸収でも吸収時間が60秒未満であった。一方、比較例においては、比較例1は、吸収時間に関しては実施例とほぼ同等の評価結果が得られたが、加圧下吸収量が低い吸水性ポリマーを用いた比較例2、および溝を有していない吸収体を用いた比較例3、4では2回目以降の吸収時間が60秒以上かかり、吸収時間が長くなった。この結果、実施例の液体の吸収性能が使用開始から繰り返し吸収末期まで高く維持されることがわかった。
【0083】
このように、本発明の吸収体10に用いる吸水性ポリマー22は、例えば、乳児の尿が1回あたり40cc程度であるとして、1回目の排せつ(排尿)、2回目、3回目、4回目の排せつであっても、吸水性ポリマー22が排せつ液(尿)を吸収しても膨潤しにくいので、1回目の排せつ時の溝11の状態を保持している。このため、吸水性ポリマー22によって溝11が閉塞されることはなく、溝11の通液性が確保される。その結果、排せつ液の吸収速度が速くなる。
【0084】
また、実施例1ないし4では液戻り量が1.5g未満であり、吸水量が少ない吸水性ポリマーを用いた比較例1、加圧下吸収量が低い吸水性ポリマーを用いた比較例2、および吸収体に溝を有さない比較例3では液戻り量が1.5g以上であった。この結果、各実施例の液戻り量が少ないことがわかった。
【0085】
このように、比較例2のように加圧下における吸収量が低い従来の吸水性ポリマーでは、1回目の排尿では溝11の通液が可能である。しかし、2回目以降の排尿では、1回目の排尿で膨潤した吸水性ポリマーに着用者の荷重がかかることによって、吸水性ポリマーがつぶされ、溝11内にはみ出して、最悪の場合、溝11を塞いでしまうため、溝11を通しての通液が困難になる。このため、2回目以降の排せつでは、溝11内を排せつ液が流れにくくなる、もしくは流れなくなるので、液の拡散が十分にできなくなり、液戻り量が多くなる。
一方、各実施例で用いた吸収体ポリマーでは2回目以降の排せつに対しても吸水性ポリマーが膨潤することがほとんどないので、溝11を塞ぐこともなく、吸収体全体に排せつ液を拡散させ、吸収させることができるので、液戻り量を1.5g未満にすることができる。
【0086】
さらに、実施例1ないし4の吸収容量は、吸水性ポリマーの使用量が実施例1よりも1.13倍多い比較例4に対して、いずれも1.0であり、比較例4と同等の吸収容量であることがわかった。すなわち、各実施例は十分な吸収容量を有することがわかった。
このように、各実施例が十分な吸収容量を有することから、各実施例においては、液戻り量が1.5g未満と少なくなっており、一方、比較例1では、吸収容量が0.8と低くなっているので、液戻り量が多くなる。また、比較例3では、実施例1と同じ吸水性ポリマーIIIを同量用いているが、溝を有していないため、吸収体としての吸収容量も0.8と低くなり、液戻り量が多くなる。
【0087】
以上説明したように、本発明の吸収体10およびその吸収体10を用いた吸収性物品50によれば、長時間使用により繰り返しの排せつ液の吸収において、高吸収量と高吸収速度とを両立し、液戻り量が少なく、高い吸収性能を発揮することができる。