(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検眼の眼前に配置される光学部材の屈折度数を切り換え被検眼の矯正度数を自覚的に測定する自覚検眼装置において設定される検査条件を、操作入力部に対する操作信号に基づいて取得する条件取得手段を有し、
前記第1評価視標生成手段は、前記検査条件を第1矯正度数として適用し第1評価視標を生成し、
前記表示制御手段によってモニタに表示される前記第1評価指標および前記第2評価指標は、前記操作入力部に対する操作と連動して更新される請求項1記載の眼科装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しつつ、本開示における例示的な実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係る眼科装置1の概略構成を示すブロック図である。詳細は後述するが、眼科装置1は、被検眼Eにおける見え方の質(見え具合の質ともいう)を評価するための評価指標を、被検眼Eの裸眼波面収差データを用いて演算する。なお、第1実施形態において眼科装置1は、波面収差測定装置(眼収差計とも言われる。)と一体化された構成であってもよい。
【0013】
第1実施形態において、眼科装置1は、CPU(演算制御部)30、メモリ35、操作入力部(以下、入力部)40、プリンタ43、モニタ50、画像処理部31等を有する。各部はバス等を介して接続されている。
【0014】
CPU30は、網膜像シミュレーションプログラムや各種制御プログラムに基づいて各部の動作を制御するプロセッサである。入力部40は、検者によって操作される入力装置である。入力部40としては、スイッチ、キーボード、マウス、タッチパネル等のポインティングデバイスなどが用いられる。画像処理部31は、各種データやシミュレーション画像等を表示するモニタ50の表示画面を制御する。メモリ35は、記憶部であり、CPU30で実行される各種プログラム(装置動作のための各種制御プログラム、眼科測定プログラム)等を記憶する。メモリ35は、記憶装置として用いられ、例えば、半導体メモリ、磁気記憶装置、光学記憶装置などが用いられる。モニタ50は、出力装置として用いられ、CPU30によって制御される。本実施例のモニタ50は、検者による入力操作が可能なタッチパネルであり、入力部40の少なくとも一部を兼用する。プリンタ43は、シミュレーションの結果を印刷する。
【0015】
また、第1実施形態における眼科装置1は、収差測定ユニット100を有する。収差測定ユニット100は、被検眼の波面収差を測定するために利用される。収差測定ユニット100は、被検眼眼底に測定指標を投影し測定指標の眼底からの反射光を受光する構造を持つ。
【0016】
測定光学系10は、投光光学系10aと、受光光学系10bと、を含む。投光光学系10aは、例えば、測定光源からスポット状の光束を被検眼眼底に投光する。受光光学系10bは、例えば、眼底で反射され被検眼から射出された光束を複数に分割して二次元受光素子22に受光させる。本実施形態の眼科装置1は、二次元受光素子22からの出力に基づいて被検眼の波面収差が測定される。
【0017】
より具体的には、投光光学系10aは、測定光源11から順に、リレーレンズ12、対物レンズ14を有する。測定光源11は、被検眼眼底と共役な位置に配置される。受光光学系10bは、被検眼前方から、対物レンズ14、ハーフミラー13、リレーレンズ16、全反射ミラー17、コリメータレンズ19、マイクロレンズアレイ20、二次元受光素子22を有する。受光光学系10bは、被検眼の瞳孔とレンズアレイ20とが光学的に略共役な関係となるように構成されている。マイクロレンズアレイ20は、測定光軸と直交する面に二次元的に配置された微小レンズと遮光板からなり眼底反射光を複数の光束に分割する(特開平10−216092号公報)。なお、上記の構成は、いわゆるシャックハルトマン方式の波面センサを用いたものであるが、瞳孔共役位置に直交格子上のマスクを配置し、マスクを透過した光を二次元受光素子により受光するようないわゆるタルボット式波面センサを用いるようにしてもよい(詳しくは、本出願人による特開2006−149871号公報参照)。
【0018】
測定光源11から出射された光束は、リレーレンズ12、対物レンズ14、被検眼の瞳孔を介して被検眼の眼底に投光される。これにより、被検眼の眼底上に点光源像が形成される。
【0019】
そして、被検眼の眼底に投光された点光源像は、反射光束として被検眼を射出し、対物レンズ14で集光された後、ハーフミラー13で反射される。ハーフミラー13で反射された光は、リレーレンズ16にて一旦集光された後、全反射ミラー17で反射される。そして、全反射ミラー17で反射された光束は、コリメータレンズ19を介して、レンズアレイ20によって複数の光束に分割された後、二次元受光素子22に受光される。そして、二次元受光素子22に受光されたパターン像は、画像データとしてメモリ35に記憶される。
【0020】
レンズアレイ20で複数の光束に分割され二次元受光素子に受光されるパターン像は、被検眼の収差(低次収差、高次収差)の影響によって変化する。無収差の光が通過するときの基準パターン像に対して、被検眼からの反射光により生じるパターン像を解析することにより、眼の波面収差を測定できる。すなわち、収差測定ユニット100によって取得されたパターン像における各ドット像の偏位量に基づいて、被検眼全体の裸眼での波面収差W(ρ、θ)がCPU30によって求められる。なお、本第1実施形態では、このようにして求められた波面収差の値が、裸眼での波面収差データ(裸眼波面収差データともいう)としてメモリ35に記憶される。
【0021】
なお、収差測定ユニット100は、上記構成に限定されず、周知の構成が用いられる。他の構成としては、収差測定ユニット100は、被検眼眼底にスリット光束を投影し、その反射光束を受光素子によって検出したときの位相差信号を出力する構成であってもよい(特開平10−108837号公報参照)。この場合、被検眼Eの波面収差が位相差信号の処理結果として得られる。
【0022】
<装置の動作>
次に、
図2のフローチャートを参照して、第1実施形態における眼科装置1の動作を説明する。
【0023】
まず、収差測定ユニット100を用いて被検眼Eの波面収差が測定される。そして、CPU30は、被検眼全体の裸眼における波面収差(つまり、裸眼波面収差W(ρ、θ))を、裸眼波面収差データとして得る(S1)。取得された裸眼波面収差データは、CPU30によってメモリ35に記憶される。
【0024】
次に、CPU30は、収差測定ユニット100によって得られた裸眼波面収差データを解析する。より詳細には、CPU30は、S1で取得した裸眼波面収差W(ρ、θ)の低次収差成分(より詳細には、2次以下の収差成分)を算出する(S2)。本実施形態では、球面度数(S)、乱視度数(C)、乱視軸角度(A)の各成分が算出される場合を例示する。例えば、CPU30は、所定瞳孔径の領域に対応する被検眼の裸眼波面収差データを求め、その裸眼波面収差データから算出される低次収差成分に基づいて裸眼波面収差W(ρ、θ)のS,C,A成分を求める。
【0025】
以下に、裸眼波面収差W(ρ、θ)に含まれるS,C,A成分の算出手法について、簡単に説明する。裸眼波面収差W(ρ、θ)は、裸眼波面収差データを近似する多項式の1つである周知のゼルニケ(Zernike)多項式の展開を適用することによって定量化される。
【0027】
ここで、Ziはi番目のZernike項、Ciはその係数である。ρは瞳孔径に対する相対的な位置(0〜1の範囲)を示し、θはX軸に対して反時計回りに計測した角度(0〜2π)である。また、標準化した表示方式では、
【0032】
そして、球面度数(S)、乱視度数(C)、乱視軸角度(A)は多項式次数2次以下の項で表される。
【0034】
ここで、Rは解析する瞳孔径の半径(mm)である。なお、高次収差成分は多項式次数3次以上で求められる。
【0035】
例えば、所定瞳孔径Pの値を用いて裸眼波面収差W(ρ、θ)を求め、更に、S,C,Aの成分を求める場合に、R=P/2を用いる。CPU30は、求められた被検眼のレフ値(SCA(REF))をモニタ50上に出力してもよい(図示せず)。
【0036】
<自覚検査シミュレーション>
第1実施形態における眼科装置1は、その後、レフラクター等の自覚検眼装置を用いて行われる自覚検査における被検眼の見え方をシミュレーションする。自覚検眼装置は、被検眼の眼前に配置される光学部材の配置を切り換え、被検眼の矯正度数を自覚的に測定する装置である。自覚検査では、視標呈示装置および視力表等によって呈示された視標を、被験者が視認できるか否かによって眼屈折力が自覚的に測定される。第1実施形態では、シミュレーションにおいて、CPU30は、被検眼Eの裸眼波面収差データを用いた演算処理を行い、矯正度数での処方を想定した被検眼における波面収差データ(以下、矯正波面収差データと称する)を、裸眼波面収差データと、矯正度数とに基づいて演算する。演算の結果として、自覚検査における見え方の質を表す評価指標を生成する。
【0037】
本実施形態において、CPU30は、裸眼波面収差データに対し第1の矯正度数を適用することによって、第1矯正波面収差データを求める。そして、第1矯正波面収差データに基づいて、第1矯正度数での屈折矯正を想定した第1評価指標を生成する。また、CPU30は、眼波面収差データに対し第2の矯正度数を適用することによって、第2矯正波面収差データを求める。そして、第2矯正波面収差データに基づいて、第2評価指標を生成(取得)する。第2矯正度数は、第1矯正度数に対し所定度数だけ異なる矯正度数である。矯正度数は、被検眼の裸眼屈折力を矯正するために被検眼に付与する屈折力である。そして、CPU30は、第1評価指標と第2評価指標とを対応付けてメモリ35に記憶する。
【0038】
第2矯正度数は、第1矯正度数に対し、2次以下の低次収差成分の何れか(例えば、S,C,Aの少なくとも1つ)が所定量だけ異なる関係にある。以下説明するように、例えば、第1矯正度数と第2矯正度数とは、S,C,Aのうち、乱視軸角度(A)だけが異なる関係にあってもよい。第1実施形態において、第1矯正度数と第2矯正度数との差分である所定度数は、自覚検査における検査のステップ(つまり、自覚検眼装置における検査度数の切換)と対応した度数であることが好ましい。また、1つの第1矯正度数に対し、第2矯正度数が2つ以上設定されてもよい。第2矯正度数が2つ以上設定される場合は、少なくとも1つの第2矯正度数は、第1矯正度数に対し、S,C,Aのいずれか1つの成分を所定量増加させた矯正度数(プラス第2矯正度数)であり、別の1つの第2矯正度数は、第1矯正度数に対し、S,C,Aのいずれか1つの成分を所定量減少させた矯正度数(マイナス第2矯正度数)であってもよい。例えば、第1実施形態において、第2矯正度数は、第1矯正度数に対し、乱視軸角度(A)を+5°回転させた度数と、−5°回転させた度数との両方に設定される。
【0039】
評価指標は、例えば、屈折矯正が行われた状態の被検眼における網膜像のシミュレーション画像、および、その状態における被検眼の見え方の質を示す評価パラメータの少なくともいずれかであってもよい。網膜像のシミュレーション画像は、例えば、被検眼における所定視標の見え方を表したシミュレーション画像であってもよい。また、評価パラメータとしては、ストレール比、被検眼全体の波面収差のRMS値、位相シフト(PTF)、および空間周波数特性(MTF)等であってもよい。
【0040】
本実施形態において、CPU30は、各矯正度数と対応する評価指標を求めるために、各矯正度数での処方を想定した被検眼における波面収差データ(以下、矯正波面収差データと称する)を、被検眼全体の裸眼波面収差データ(即ち、収差測定ユニット100を用いて得られる波面収差データ)に対する演算によって求める。ここで、矯正面収差データの導出方法の概要を、一例として説明する。
【0041】
CPU30は、裸眼波面収差データ(裸眼波面収差W(ρ、θ))に含まれる低次収差成分と、矯正度数との各経線方向における差分データを求める(差分データ=裸眼波面収差W(ρ、θ)の低次収差成分−矯正度数;「矯正度数」としては、例えば、後述する第1矯正度数あるいは第2矯正度数)。そして、CPU30は、裸眼波面収差データを近似する多項式の係数に対し、低次収差(より詳細には、2次以下の低次収差)に対応する係数を、差分データに対応する係数に置き換えた多項式を用いて波面収差データを逆算し、その結果として、矯正波面収差データを得る。波面収差データを近似する多項式としては、ゼルニケ多項式が代表的である。もちろん、波面収差を近似する式であればよく、これに限定されない。なお、第1実施形態では、S,C,A成分に関する屈折矯正をシミュレーションするため、裸眼波面収差W(ρ、θ)のS,C,A成分と、矯正度数との差分データが利用される。
【0042】
差分データは、より具体的には、裸眼波面収差W(ρ、θ)の低次収差成分、および矯正度数のそれぞれを、近似曲線(経線方向(θ)毎の眼屈折力(D)の分布を示す近似曲線)に変換し、互いの近似曲線の差分に基づいて得ることができる。なお、それぞれの近似曲線は、例えば、sinカーブとして表現される。そして、第1実施形態において、CPU30は、差分データ(SCA差分)を、ゼルニケ多項式の2次式におけるSCAに代入する。結果として、差分データ(SCA差分)に基づく2次式の係数が算出される。
【0043】
第1実施形態のCPU30は、裸眼のZernike係数に対し、2次式の係数を差分データ(SCA差分)に基づく係数に置き換えたZernike係数を用いて波面収差データを逆算する。逆算の結果として、矯正波面収差データが得られてもよい。
【0044】
そして、CPU30は、矯正波面収差データを用いた更なる演算処理の結果として、各矯正度数と対応する評価指標を生成する。例えば、矯正度数での処方を想定した被検眼における網膜像のシミュレーション画像は、次のようにして生成できる。まず、CPU30は、矯正波面収差データを利用して点像強度特性(point spread function;PSF)を求める。そして、CPU30は、得られたPSFと所定指標(例えば、ETDRS視標、解像度チャート、風景チャート)とを画像処理(コンボリューション積分)する。その結果、CPU30は、矯正度数での処方を想定した被検眼における所定視標の見え方を表すシミュレーション画像を得ることができる。
【0045】
<レフ値矯正状態のシミュレーション>
第1実施形態では、第1評価指標として、裸眼屈折力を矯正するためのレフ値(第1実施形態における第1矯正度数)での矯正を想定した評価指標が、裸眼波面収差データを用いた演算処理に基づいて生成される(S3)。つまり、第1実施形態では、裸眼波面収差データに基づく他覚的眼屈折値(レフ値)を第1矯正度数として適用し第1評価視標が生成される。なお、レフ値は、他覚検査にて得られた矯正度数の他覚値であり、第1実施形態においては、裸眼波面収差W(ρ、θ)に含まれるS,C,A成分から求められる。第1評価指標は、より具体的には、レフ値で眼を処方した場合の所定視標の見え方を表すシミュレーション画像と、ストレール比(評価パラメータの一例)とである。
【0046】
ここで、CPU30は、レフ値での処方を想定した被検眼の矯正波面収差データを、例えば、上記の手法にて求める。その結果として、裸眼でのゼルニケ多項式を、S、C、Aがいずれも0である場合に対応する係数に置き換えた多項式に基づいて、矯正波面収差データが得られる。そして、第1矯正度数での処方を想定した矯正波面収差データに基づいて、CPU30は、レフ値に関するシミュレーション画像を取得する。
【0047】
また、第1実施形態においてストレール比は、以下の式で求められる近似値であってもよい。
【0049】
ここで、Wは、裸眼波面収差W(ρ、θ)のRMS値である。レフ値の処方を想定した被検眼のストレール値は、S、C、Aがいずれも0である場合に対応する係数に置き換えたZernike係数に基づくRMS値がWに代入されることによって得られる。ストレール比は、1に近いほど収差が少なく、被検眼のコントラストが良好であることを示す。
【0050】
第1実施形態では、このようにして得られたシミュレーション画像およびストレール比は、後述のS6のステップにて、モニタ50に表示出力される。
【0051】
<第2矯正状態のシミュレーション>
また、CPU30は、第2矯正度数で眼を処方した場合の被検眼の見え方を示す第2評価指標を生成する(S4)。第1実施形態では、他覚的眼屈折値(レフ値)に対して所定のSCA成分を付加した矯正度数が第2矯正度数として適用され、第2評価視標が生成される。なお、ここでいう「付加」には、SCA成分のいずれかを増加させる場合と、減少させる場合との両方を含む。第1実施形態では、プラス第2評価指標と、マイナス第2評価指標との2種類が、第2評価指標として生成される。プラス第2評価指標は、第1矯正度数(第1実施形態ではレフ値)に対し、更に乱視軸角度(A)を+5°回転(つまり、増加方向に変化)させた矯正度数の処方で想定される見え方を示す。また、マイナス第2評価指標は、第1矯正度数に対し、更に乱視軸角度(A)を−5°回転(つまり、減少方向に変化)させた矯正度数の処方で想定される見え方を示す。第2実施形態では、プラス第2評価指標およびマイナス第2評価指標として、それぞれの矯正度数に関するシミュレーション画像およびストレール比(評価パラメータの一例)が生成される。
【0052】
そのために、CPU30は、レフ値に対し、乱視軸角度(A)を±5°回転させた矯正度数での処方を想定した被検眼の矯正波面収差データを求める。そして、各矯正度数での処方をそれぞれ想定した矯正波面収差データに基づいて、CPU30は、それぞれの第2矯正度数に関するシミュレーション画像を作成する。その結果、レフ値に対し、所定量だけ異なる矯正度数で眼を処方した場合に被検眼網膜面に形成される所定指標像のシミュレーション画像を得ることができる。すなわち、CPU30は、レフ値とは所定量だけ異なる矯正度数に関するシミュレーション画像を取得する。
【0053】
また、第1実施形態のCPU30は、数5を用いてストレール比を求める。この場合、数5のWには、裸眼波面収差データを近似するゼルニケ多項式に対し、裸眼波面収差W(ρ、θ)に含まれるS,C,Aデータ成分と第2矯正度数との差分データ(SCA差分)に基づく係数で2次式の係数が置き換えられた式に基づく、全体の収差のRMS値が代入される。
【0054】
<裸眼状態および旧眼鏡矯正状態のシミュレーション>
また、第1実施形態において、CPU30は、裸眼での見え方シミュレーション画像、および旧眼鏡矯正状態(前眼鏡矯正状態ともいう)での見え方シミュレーション画像の少なくともいずれかを取得してもよい(S5)。
【0055】
裸眼での見え方シミュレーション画像は、裸眼波面収差データを利用して得られる裸眼状態の点像強度特性(point spread function;PSF)を求め、そのPSFと所定の指標との画像処理によって得ることができる。また、旧眼鏡矯正状態での見え方シミュレーション画像の生成方法は、例えば、上記特許文献1等を参照されたい。また、裸眼波面収差データの高次収差量(HO)を算出してもよい。高次収差量(HO)は、例えば、波面収差データにおける高次収差成分のRMS値であってもよい。この場合、ゼルニケ多項式の3次式およびそれよりも高次の式に基づいて高次収差量(HO)は算出可能である。
【0056】
<シミュレーション結果の表示>
第1実施形態において、CPU30は、上記の各種シミュレーション(演算処理)の結果を、モニタ50に表示出力する。
図3に示すように、モニタ50のシミュレーション結果画面には、例えば、第1評価指標(即ち、レフ値矯正状態でのシミュレーション画像、およびレフ値矯正状態のストレール比)と、第2評価指標(例えば、予測検査画像(プラスマイナス5度下)、および第2矯正状態のストレール比)と、が並んで(同時に)表示される。その結果として、自覚検査において初めに設定されるレフ値矯正状態での被検眼の見え方と、レフ値矯正状態に対して度数を所定量だけ変化させたときの被検眼の見え方とを、検者が客観的に把握し、更に、比較することができる。よって、例えば、第2矯正状態となるように自覚検査を進めた場合に、被検眼の見え方が改善するか否かを、検者は容易に把握することができる。また、例えば、自覚検査における光学素子の配置切り換え時の被検者からの応答、および問い合わせがあった場合に、検者が適切に回答し、検査を進めることが可能となる。その結果として、自覚検査によって適正な処方値を容易に求めることができる。
【0057】
特に、円錐角膜の眼など、不正乱視がある眼では、他覚値として得られた矯正度数が処方されても、好適な見え方が得られない場合がある。このような場合に、例えば、第1実施形態のように乱視軸角度が異なる2以上の矯正状態での見え方を示す評価パラメータ(例えば、ストレール比)、およびシミュレーション画像は、好適な見え方の処方値を得るための有力な手掛かりとなりうる。つまり、第1実施形態において、検者は、第1評価指標と第2評価指標と目安に検査を進めることによって、不正乱視がある眼に対しても、処方値を良好に求めることができる。
【0058】
また、第1実施形態では、複数の第2矯正度数に関する第2評価指標がモニタ50に表示される。より具体的には、レフ値に対し乱視軸角度(A)を+5°回転させた度数での処方を想定した第2評価指標と、レフ値に対し乱視軸角度(A)を−5°回転させた度数での処方を想定した第2評価指標と、が並んで(同時に)表示される。複数の第2矯正度数に関する第2評価指標が表示されることによって、例えば、検者は、自覚検査の進行に伴う検者の見え方の変化を、より良好に予測できる。また、本実施形態では、レフ値矯正状態に対して、S,C,Aのいずれか一つの度数(但し、第1実施形態では、乱視軸角度(A))を大きくした場合に想定される見え方と、小さくした場合に想定される見え方とを、検者が容易に比較することができる。よって、検者は、被検眼の見え方が改善する検査手順を良好に予想することができる。その結果、検者は、適正な自覚検査を、容易に行うことができる。
【0059】
また、第1実施形態では、裸眼状態における被検眼の見え方のシミュレーション結果と、旧眼鏡矯正状態における見え方のシミュレーション結果とが、モニタ50に表示される(
図3参照)。これによって、自覚検査を含む検査のプラン立てを行ったり、自覚検査での被検者の反応を予測することが容易になる。例えば、高次収差量(HO)の値は、矯正による視力の改善されやすさについての指標となる。高次収差量(HO)が高い場合、白内障等によって被検眼の透光体に混濁がある可能性がある。よって、この場合、検者は、混濁の確認をする検査(例えば、徹照像による検査)を行うプランを立ててもよい。
<第2実施形態>
次に、本開示における第2実施形態を説明する。第2実施形態では、被検眼の見え方の質を表すために眼科装置によって出力される評価指標が、自覚検査の進行と連動して切り換わる。なお、第2実施形態に係る眼科装置1の概略構成は、特に断りがない限り、第1実施形態と同様であるものとし、説明を省略する。
<自覚式検眼装置との接続>
図4に示すように、第2実施形態において、眼科装置1には、自覚式検眼装置(以下、検眼装置と称す)200が接続されている。検眼装置200は、主に、被検眼の屈折力を自覚的に測定するために用いられる。
【0060】
第2実施形態において、検眼装置200は、レンズユニット210と、制御ボックス220と、操作入力部230と、を有する。
【0061】
レンズユニット210は、自覚検査が行われる場合に、被検眼の眼前に配置される左右一対のレンズユニット210a,210bを備える。各レンズユニット210は、様々の光学素子(球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ等)が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスク全体を回転する第1の回転駆動部と、レンズディスクに対し、各々の光学素子を回転させる第2の回転駆動部と、を有する。検眼装置200では、検査窓211a,211b(つまり、被検眼の眼前)に配置される光学素子の光学特性を切り換えながら自覚検査が行われる。
【0062】
制御ボックス220は、
図5に示すように、少なくとも制御部221と、メモリ222とを有する。制御部221は、検眼装置200全体の動作を制御するプロセッサである。メモリ222には、検眼装置200にて自覚検査を実行するためのプログラムが記憶される。また、自覚検査における測定結果等がメモリ222に記憶されてもよい。
【0063】
また、第2実施形態において、検眼装置200の制御ボックス220は、眼科装置1の制御部30と有線又は無線で接続される。その結果として、検眼装置200と眼科装置1との間では、データの送受信(受け渡し)が可能である。検眼装置200は、眼科装置1にて測定された裸眼波面収差W(ρ、θ)に基づくレフ値(他覚値:例えば、球面度数(S)、円柱度数(C)、乱視軸角度(A)で表現される)を取得する。なお、レフ値は、メモリ222に記憶される。レフ値が取得された場合、検眼装置200の制御部221は、レンズユニット210を駆動することによって、レフ値に対応した光学素子を、初期値として眼前に配置させる。その後、検眼装置200は、得られたレフ値を基にして眼前に配置される光学素子の光学特性を切り換えながら検査を行う。また、眼科装置1は、検眼装置200にて得られる自覚値、および、自覚検査の進行に関するデータ等を、制御ボックス220から取得可能である。
【0064】
自覚検査において、検眼装置200は、被検者の最高の視力を得るための完全矯正度数を求める。その後、検眼装置200は、この完全矯正度数から検者の経験や所定の手法にしたがって最終的な自覚値(眼鏡処方値)を決定する。
【0065】
操作入力部230は、検眼装置200を検者が操作するためのユニットである。
図5に示すように、第2実施形態において、コントローラ230には、ディスプレイ231と、スイッチ部232と、を有する。ディスプレイ231は、検眼情報を表示する。
【0066】
また、スイッチ部232には、複数のスイッチが設けられている。
【0067】
スイッチ部232は、タッチパネルとして、ディスプレイと兼用される構成であってもよい。第2実施形態におけるスイッチ部232には、例えば、スタートスイッチ234及び送りスイッチ235、回転ダイヤル237等を備える。回転ダイヤル237は、球面度数(S)、乱視度数(C)、乱視軸角度(A)の軸角度等を調整する時に用いられる。
【0068】
<装置の動作>
次に、
図6のフローチャートを参照して、第2実施形態における眼科装置1の動作を説明する。
【0069】
まず、眼科装置1は、収差測定ユニット100を用いて被検眼全体の裸眼での波面収差を測定する。その結果として、裸眼波面収差データ(本実施形態では、波面収差W(ρ、θ))を得る(S11)。また、CPU30は、波面収差データをメモリ35に記憶する。
【0070】
次に、CPU30は、収差測定ユニット100によって得られた裸眼波面収差データを解析し、裸眼波面収差W(ρ、θ)に含まれる低次収差成分(ここでは、S,C,A成分)を求める(S12)。
【0071】
次に、CPU30は、裸眼波面収差W(ρ、θ)に基づくレフ値(他覚値)を、検眼装置200に送信する(S13)。ここでは、裸眼波面収差W(ρ、θ)のS,C,A成分の値が、レフ値として送信される。その結果、波面収差に基づくレフ値が、検眼装置200のメモリ222に記憶される。なお、検眼装置200に対するレフ値の送信は、検眼装置200からのレフ値要求信号に基づいて行われてもよい。
【0072】
この段階で、CPU30は、裸眼での見え方シミュレーション画像、および旧眼鏡矯正状態(前眼鏡矯正状態ともいう)での見え方シミュレーション画像の少なくともいずれかを生成してもよい(S14)。そして、生成したシミュレーション画像を、モニタ50に表示してもよい(
図7参照)。なお、以下のシミュレーション結果は、検眼装置200のコントローラに設けられたディスプレイ231に表示されてもよい。
【0073】
<自覚検査におけるシミュレーション>
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、自覚検査における被検眼の見え方を表す評価指標が眼科装置1によってシミュレーションされる。第2実施形態では、CPU30は、評価指標を、自覚検査の進行と連動して生成する(S15〜S20)。例えば、第2実施形態における眼科装置1は、検眼装置200の操作入力部230を用いて設定される自覚検査の検査条件に応じて、異なる評価指標を生成する。この場合、CPU30は、検眼装置200の検査条件と対応する矯正度数での処方を想定した被検眼の見え方を表す矯正波面収差データを、波面収差データと及び矯正度数に基づいて演算する。そして、CPU30は、矯正度数での処方を想定した被検眼の見え方を表す評価指標を、矯正波面収差データに基づいて生成する。検査条件は、例えば、検眼装置200によって被検眼の眼前に配置される光学部材の種類、その光学部材の軸角度、および被検眼に提示される検査視標の少なくとも1つに関する条件であってもよい。
【0074】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、S,C,Aの少なくとも1つの成分が所定量だけ異なる関係にある第1矯正度数および第2矯正度数のそれぞれに関する評価指標が生成されてもよい。この場合、検査条件と対応する矯正度数が第1矯正度数として適用され、第1評価指標が生成されてもよい。また、検査条件と対応する矯正度数に対し,所定のSCA成分を付加した矯正度数が第2矯正度数として適用され、第2評価視標が生成されてもよい。例えば、第1評価指標によって、検眼装置200に現在設定されている検査条件で検査される度数での処方を想定した被検眼の見え方が示されてもよい。この場合、現在の検査条件にて検査される度数に対し、所定量だけ度数を変化させたときの被検眼の見え方が、第2評価指標として示される。以下では、具体例として、第2評価視標は、第1評価視標に対し、乱視軸角度(A)を+5°回転させた場合における見え具合と、−5°回転させた場合における見え具合とをそれぞれ示す2種類の評価視標を含む場合について説明する。なお、評価視標としては、第1実施形態と同様に、シミュレーション画像と、見え具合の評価パラメータとが作成される場合について説明するが、もちろんこれに限られるものではない。
【0075】
第2実施形態において、眼科装置1は、検眼装置200における検査条件データを取得する。例えば、検査条件データは、操作入力部230の操作に基づいて取得される。検査条件データは、検眼装置200に設定される検査条件そのものを示すデータであってもよいし、その検査条件で検査される度数を示すデータであってもよい。ここでは、検査条件データは、検眼装置200における検査条件と対応する乱視軸角度(A)の矯正値を少なくとも示すデータである。検査条件データは、操作入力部230による検査条件の設定操作に応じて検眼装置200から送信されるデータであってもよいし、眼科装置1のメモリ35に予め記憶されているデータであってもよい。
【0076】
例えば、CPU30は、検眼装置200に裸眼波面収差W(ρ、θ)に基づくレフ値を送信した後、自覚検査開始のトリガ信号が入力されたか否かを判定し(S15)、トリガ信号の入力があるまで評価視標に関する動作を待機する(S15:No)。
【0077】
ここで、検眼装置200では、スタートスイッチ234が検者によって操作される場合に、自覚検査開始のトリガ信号が操作入力部230から出力される。検眼装置200の制御部221は、トリガ信号の入力に基づいて、例えば、予めメモリ222に記憶されるレフ値に対応する光学素子を検査窓211a,検査窓211bの少なくとも一方に配置する。また、トリガ信号は、眼科装置1に対しても送信される。その結果として、CPU30は、待機を解除し(S15:Yes)、自覚検査の初期状態における第1および第2評価指標を生成し、モニタ50に表示する(S16)。また、CPU30は、第1評価指標と第2評価指標とを対応付けてメモリ35に記憶する。自覚検査の初期状態では、検査条件データとして、眼科装置1が予め測定している裸眼波面収差W(ρ、θ)に基づくレフ値が使用されてもよい。つまり、レフ値での矯正を想定した評価指標が、自覚検査の初期状態における第1評価視標として生成されても良い。また、レフ値に対して所定量だけ乱視軸角度(A)を回転させた場合を想定した見え方が、自覚検査の初期状態における第2評価視標として生成されてもよい。なお、第1評価視標と第2評価視標とを生成および表示開始のタイミングは、必ずしもトリガ信号の入力を待って行う必要はない。例えば、トリガ信号の入力以前に各評価視標が生成等されてもよい。
【0078】
一方、検眼装置200では、レフ値に対応する光学素子が眼前に配置された後で、例えば、R/Gテストが行われてもよい。検者は、被検者に対し、レッドグリーン視標を見させる。また、検査窓211a,211bには、レフ値に対してS+0.5D分を加える雲霧が掛けられる。また、検眼装置200の制御部220は、検眼プログラムに従って、球面度数が変更可能なSPHモードとされる。検者は被検者の応答を得て、赤と緑の文字が同程度となるように、回転ダイヤル237を操作して球面度数を調整する。
【0079】
球面度数の調整後、送りスイッチ235が操作されることによって、XCレンズによる乱視軸調整検査に進む。このとき、検者は、被検者に対し、点群視標を見させる。また、制御部221は、レンズユニット210を駆動することによって、被検眼の眼前にXCレンズを配置する。また、図示無き第2駆動記憶を駆動して、XCレンズのマイナス軸を、他覚値データの乱視軸角度に応じて調整する(乱視軸調整検査では、XCレンズのマイナス軸を検査窓に配置された乱視レンズマイナス軸に対して45°に位置させる)。検者は、XCレンズを反転(XCレンズの経線周りに反転)させる前後での点群視標の見え方の違いを、被検者からの応答によって確認しつつ、回転ダイヤル237を操作して、回転の前後で点群視標の見え方が同じになるように、XCレンズのレンズ光軸の周りの角度を(例えば、1ステップの操作につき、5°ずつ)調節する。この場合、回転ダイヤル237の操作に応じて、検査条件と対応する乱視軸角度(A)の矯正値が、5°づつ変化される。検眼装置200は、回転ダイヤル237が1ステップ操作される毎に、検査条件信号(例えば、その時の検査条件と対応する乱視軸角度(A)の矯正値を示す信号であってもよい)を、眼科装置200へ送信する。
【0080】
眼科装置1では、例えば、第1評価視標と第2評価視標との初期表示をS16にて行った後、検査条件信号が入力されるまで、モニタ50に表示される評価視標を維持し続けても良い(S17:No)。そして、検査条件信号が入力された場合は、検査条件信号にて示される新たな検査条件と対応する矯正値での評価視標を生成し、表示を行う(S18)。例えば、検眼装置200にて検査される乱視軸角度(A)が、例えば、自覚検査における矯正値の初期値であるレフ値の乱視軸角度(A)に対し、5°増大した場合には、第1矯正度数および第2矯正度数を、初期値(つまり、S16における値)に対し、それぞれ5°増大させたときの被検眼の見え方をそれぞれ表す第1及び第2評価視標が、CPU30によって作成および表示される。
【0081】
その後、検眼装置200からの検査終了信号が眼科装置1に受信されるまでの間、S17およびS18は繰り返し行われる(S19:No)。つまり、第2実施形態では、自覚検査にて検査される乱視軸角度(A)の矯正値に関する検査条件と連動するように、CPU30は、第1評価視標および第2評価視標を更新する。その結果として、検者は、自覚検査において検査される乱視軸角度(A)が変化したときの見え方の違いを、各評価視標によって、自覚検査において逐次確認することができる。よって、検者は、ステップ毎の被検眼の見え方を把握しながら自覚検査を進めることが容易になる。
【0082】
また、再度のレッドグリーンテスト等自覚検査の各ステップが完了した後、検者は、所定の検査終了操作を操作入力部230に対して行う。その結果として、検眼装置200は、最終的な自覚値データと、検査終了信号とを、眼科装置1に送信する。また、検眼装置200のメモリ222には、自覚値データが記憶される。眼科装置1は、検査終了信号を受信した場合(S19:Yes)、検眼装置200から受信した自覚値データに基づいて自覚値での処方を想定した、処方値矯正状態での見え方を示す評価視標(
図7参照)が、CPU30によって生成され、モニタ50に表示される(S20)。これによって、検者は、最終的な処方値での処方を想定した被検眼の見え方を確認することができる。
<変形例>
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、上記実施形態は様々に変形可能である。
【0083】
例えば、上記実施形態において、自覚検査での見え方を示す第1および第2評価指標は、モニタ50上で並列的に表示されるものとして説明したが、選択的に切り換えて表示されるものであってもよい。
【0084】
また、上記各実施形態では、第2評価視標として、プラス第2評価視標とマイナス第2評価視標との両方が眼科装置1によって生成および表示されるものとして説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、いずれか一方のみが生成および表示されてもよい。また、プラス第2評価視標とマイナス第2評価視標の両方が生成される場合であっても、必ずしも並列的に表示される必要はなく、選択的に表示されても良い。
【0085】
また、上記各実施形態において、第1評価視標と、第2評価視標とは、処方を想定した矯正度数のうち、乱視軸角度(A)が所定量だけ異なる関係にあるものとして説明したが、S,C,Aのうち、乱視軸角度(A)以外の度数が異なる関係にあるものであっても良い。例えば、球面度数(S)の値が異なる場合、上記のレッドグリーンテスト等の球面度数を調節する検査において、見え方の良好な球面度数を調節しやすい場合があると考えられる。
【0086】
また、上記第2実施形態では、自覚検査において乱視軸角度(A)の検査が行われる場合にだけ、操作入力部230への操作に応じた検眼装置200の検査条件と連動して、自覚検査における見え方を示す評価視標(第1および第2評価視標)が更新された。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、自覚検査における球面度数(S)の検査、および乱視度数(C)においても、検眼装置200の検査条件と連動して、自覚検査における見え方を示す評価視標(第1および第2評価視標)が更新されてもよい。
【0087】
上記各実施形態では、眼収差計の構造を持つ装置を、被検眼の見え方についての各種シミュレーションを行う眼科装置として説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2実施形態にて例示した自覚検眼装置が、被検眼の見え方をシミュレーションする眼科装置であってもよいし、眼収差系および自覚検眼装置とのいずれとも別体の装置が、被検眼の見え方をシミュレーションする眼科装置であってもよい。このような装置としては、例えば、汎用のコンピュータ(パーソナルコンピュータ等)が利用されうる。いずれの場合も、
図2のフローチャートに示す各処理、或いは、
図6のフローチャートに示す各処理等を含む測定プログラムをメモリに記憶し、そのプログラムがプロセッサによって実行される。眼科装置が眼収差計の構造を備えない場合、例えば、眼収差計で測定された裸眼破面収差データを通信で、或いは、波面収差データが記憶されたメモリーカード等を読み込むことで、眼科装置における波面収差データの取得が行われても良い。そして、波面収差データを用いて上記の各処理が実施されることによって、眼収差計と別体の眼科装置においても、上記実施形態と同様のシミュレーションを行い、眼科装置が備えるモニタあるいは眼科装置と接続されるモニタにシミュレーション結果を表示することができる。なお、シミュレーションにて利用可能な裸眼波面収差データとしては、裸眼波面収差W(ρ、θ)に限定されるものではない。例えば、波面収差データを近似する多項式の係数(例えば、ゼルニケ多項式の係数)を示すデータであってもよい。つまり、多項式の係数を示すデータが、収差計から眼科装置へ送信される場合にも、シミュレーションは可能である。
【0088】
また、第1および第2実施形態において、自覚検査による最終的な処方値が得られた場合に、レフ値矯正状態での被検眼の見え方を示す評価視標(即ち、第1実施形態における第1評価視標、および、第2実施形態における初期状態での第1評価視標)と、処方値矯正状態での見え方を示す評価視標と、を選択的に、あるいは並列的に、CPU30がモニタ50上に表示するようにしてもよい。レフ値矯正状態での被検眼の見え方と、自覚検査の初期状態における被検眼の見え方と、を比べて、見え方の質の改善度合いを検者が客観的に把握することができる。この場合において、評価パラメータをそれぞれの評価視標として生成する場合、互いの評価パラメータの種類(つまり算出方法)が同じであることが好ましい。
【0089】
また、上記各実施形態において、明所視状態での自覚値と、薄暮視状態での自覚値とをそれぞれ測定してもよい。この場合、明所視状態での自覚値と、薄暮視状態での自覚値とを測定する場合において、各シミュレーションを行う際に使用する裸眼での波面収差データは、異なる瞳孔系に対応して求めたものであってもよい。
【0090】
また、上記各実施形態において、自覚検査における第2矯正度数は、第1矯正度数に対し、S,C,Aの少なくとも1つが所定量だけ異なるものとして説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2矯正度数は、第1矯正度数と低次収差成分のいずれかが所定量だけ異なるものであればよく、例えば、第2矯正度数は、第1矯正度数とで、プリズム度数が異なっていてもよい。