(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記帯電装置による帯電後の前記像保持体の表面の帯電電圧と、前記現像装置による現像電圧との絶対値の差である電圧Vclnが、60V以上90V以下である請求項6に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[帯電ロール]
図1は、本実施形態に係る帯電ロールを示す概略斜視図である。
図2は、本実施形態に係る帯電ロールの概略断面図である。なお、
図2は、
図1のA−A断面図である。
【0019】
本実施形態に係る帯電ロール121は、
図1及び
図2に示すように、例えば、円筒状又は円柱状の導電性基材30(以下「基材30」と称する)と、導電性基材30の外周面上に設けられた導電性弾性層31(以下「弾性層31」と称する)と、弾性層31の外周面上に設けられた導電性表面層32(以下「表面層32」と称する)と、を有するロール部材である。なお、基材30と弾性層31との間は、例えば、接着層(不図示)が設けられている。
そして、帯電ロール121は、帯電ロールの表面の粗さ曲線のスキューネスRskが、−0.6<Rsk≦0を満たし、直流電圧100Vを印加したときの帯電ロールの体積抵抗値の常用対数値が、7.65LogΩ以上8.10LogΩ以下である。
【0020】
但し、本実施形態に係る帯電ロール121において、表面層32は必要に応じて設けられる層であり、帯電ロール121は表面層32を有さない構成であってもよい。また、帯電ロール121は、上記層構成に限られず、例えば、基材30と弾性層31との間に中間層を設けた構成、又は、弾性層31と表面層との間に抵抗調整層若しくは移行防止層を設けた構成であってもよい。
【0021】
なお、本明細書において、導電性とは、20℃における体積抵抗率が1×10
13Ωcm未満であることを意味する。
【0022】
本実施形態に係る帯電ロール121は、表面の粗さ曲線のスキューネスRskを上記関係とし、且つ体積抵抗値の常用対数値を上記範囲とすることにより、被帯電部材の帯電電位ムラを抑制する。この理由は定かではないが、以下に示す理由と考えられる。
【0023】
まず、帯電ロール121による被帯電部材の帯電電位ムラを抑制する手段として、帯電ロール121の表面の算術平均粗さRa又は十点平均粗さRzの制御を講じることが知られている。しかし、更なる被帯電部材の帯電電位ムラの抑制には、算術平均粗さRa又は十点平均粗さRzの制御のみでは、不十分であることがわかってきた。
【0024】
ここで、粗さ曲線のスキューネスRskは、JIS B 0601(1982年)に定義され、粗さ曲線の平均線に対しての山部と谷部の対称性を表す指標(歪度)である。このRskが正(Rsk>0)のときは、山部及び谷部が粗さ曲線の平均線よりも下側へ偏在している状態を示す。一方、このRskが負(Rsk<0)のときは、山部及び谷部が粗さ曲線の平均線よりも上側へ偏在している状態を示す。
【0025】
つまり、Rskが正(Rsk>0)の場合、帯電ロールの表面において、ロール外周面側に突出する山部が少ない状態となる。すると、少ない山部に電荷が集中し、これに起因して異常放電が発生すると考えられる。そして、この異常放電が帯電ロールの放電ムラを招き、被帯電部材の帯電電位ムラが生じると考えられる。
【0026】
一方、Rskが負(Rsk<0)の場合、帯電ロールの表面において、ロール外周面側に突出する山部が多い状態となる。このため、山部への電荷の集中が緩和され、異常放電の発生が抑制されると考えられる。
【0027】
これに加え、帯電ロール121の体積抵抗値の常用対数値を上記高い範囲に制御することにより、異常放電そのものの発生を抑制すると考えられる。
【0028】
以上から、本実施形態に係る帯電ロール121では、異常放電に起因する放電ムラを抑えられるため、被帯電部材の帯電電位ムラを抑制すると考えられる。
【0029】
特に、帯電ロール121の製造過程では、研磨工程を経て弾性層31の形成(つまり、例えば、ゴム成形工程後、研磨工程を経て弾性層の形成)が行われることが多い。この研磨工程を実施すると、弾性層31の表面に研磨模様(以下「研磨目」とも称する)が入り、この研磨目により表面性状ムラが生じる。そして、研磨目による表面性状ムラが生じると、帯電ロール121の外周面の粗さ曲線のスキューネスRskが正(Rsk>0)となりやすことがわかってきた。このため、弾性層31を形成するときに研磨工程を経た帯電ロール121は、異常放電が発生しやすい。その結果が、被帯電部材の帯電電位ムラも発生しやすい。
しかし、弾性層31を形成するときに研磨工程を経た帯電ロール121でも、表面の粗さ曲線のスキューネスRskを上記関係とし、且つ体積抵抗値の常用対数値を上記範囲とすることにより、被帯電部材の帯電電位ムラが抑制される。
【0030】
そして、本実施形態に係る帯電ロール121を電子写真方式の画像形成装置(その帯電装置)に適用すると、像保持体の帯電電位ムラに起因して生じる背景かぶりが抑制される。
帯電ロールの異常放電が発生すると、例えば、像保持体の表面に目的とする帯電電位よりも帯電電位が低下する領域(以下、「帯電電位低下領域」)が部分的に形成される。これが、像保持体の帯電電位ムラの原因となる。像保持体の表面の帯電電位低下領域では、帯電装置による帯電後の像保持体の表面の帯電電圧Vh(帯電電位)と、現像装置による現像電圧Vh(現像電位)との絶対値の差である電圧Vcln(電位差:以下、「背景電圧Vcln」とも称する)が低下する。そして、この背景電圧Vclnが低下した領域では、トナーが現像される傾向が高まり、背景かぶりが生じる。
これに対して、本実施形態に係る帯電ロール121は、異常放電の発生が抑えられ、像保持体の帯電電位ムラが抑制されるため、この背景かぶりの発生が抑制される。
【0031】
特に、背景電圧Vclnを60V以上90V以下と小さく設定した画像形成装置では、帯電ロールの異常放電が発生し、像保持体の帯電電位ムラが発生すると、背景かぶりが発生しやすい。しかし、本実施形態に係る帯電ロール121を採用すると、背景電圧Vclnを60V以上90V以下と小さく設定したでも、背景かぶりの発生が抑制される。
【0032】
以下、本実施形態に係る帯電ロール121の詳細について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0033】
帯電ロールの表面の粗さ曲線のスキューネスRskは、−0.6<Rsk≦0を満し、被帯電部材の帯電電位ムラ抑制の点から、−0.5<Rsk≦−0.1を満たすことが好ましく、−0.4<Rsk≦−0.2を満たすことがより好ましい。
粗さ曲線のスキューネスRskは、例えば、帯電ロールの外周面自体又は弾性層の研磨条件によって制御される。
粗さ曲線のスキューネスRskは、JIS B 0601(1982年)に準じて、帯電ロールの軸方向一端から他端の表面の粗さのプロファイルを測定して、得られた値である。測定装置としては、東京精密株式会社製、サーフコム1400を用いる。測定条件は、カットオフ:0.8mm、測定長:2.4mm、トラバーススピード:0.3mm/secとする。
【0034】
なお、帯電ロールの表面の十点平均粗さRzは、被帯電部材の帯電電位ムラ抑制の点から、6μm以上13μm以下が好ましく、8μm以上11μm以下がより好ましい。
十点平均粗さRzは、例えば、帯電ロールの弾性層の外周面自体又は弾性層の研磨条件によって制御される。
十点平均粗さRzは、JIS B 0601(1982年)に準じて、帯電ロールの軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を測定し、その平均値とし値である。測定装置としては、東京精密株式会社製、サーフコム1400を用いる。測定条件は、カットオフ:0.8mm、測定長:2.4mm、トラバーススピード:0.3mm/secとする。
【0035】
帯電ロールの体積抵抗値の常用対数値(直流電圧100Vを印加したときの体積抵抗値の常用対数値)は、7.65LogΩ以上8.10LogΩ以下である。
体積抵抗値は、例えば、弾性層の導電剤の種類及び量によって制御される。
体積抵抗値は、次の方法により測定される値である。まず、金属板の上に、帯電ロールの外周面が金属板表面と接するように、金属板上に帯電ロールを置く。次に、帯電ロールの基材の軸方向両端部から金属板方向に500gの荷重を掛けた状態とする。この状態で、温度22℃、湿度55%RHの環境下、帯電ロールの基材と金属板との間に印加電圧100Vを印加して、10秒後の電流値I(A)を測定し、式「体積抵抗値R=印加電圧V/電流値I」によって体積抵抗値(R)を計算する。この測定と計算を、帯電ロールを90°ずつ周方向に回転させて4点について行い、その平均値を帯電ロールの体積抵抗値とする。
【0036】
(基材)
基材は、帯電ロールの電極および支持部材として機能するものであり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;等が挙げられる。導電性基材としては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂、セラミック部材)等も挙げられる。基材は、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0037】
(接着層)
接着層の材質としては、基材と弾性層とを接着し、導電性を有する組成物である公知の接着剤が挙げられる。この接着剤としては、例えば、電子導電剤を含有する樹脂組成物、導電性樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0038】
(弾性層)
弾性層は、弾性材料と、導電剤と、を含む。弾性層は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。なお、弾性層は、抵抗調整層を兼ねていることがよい。
【0039】
弾性材料としては、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコ−ンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエ−テル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム、これらを混合したゴム等が挙げられる。
これらの弾性材料の中でも、シリコ−ンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、これらを混合したゴムが好ましい。
ゴム材料は、発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0040】
導電剤としては、電子導電性物質、イオン導電性物質が挙げられる。
電子導電性物質としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al
2O
3、SnO
2−Sb
2O
3、In
2O
3−SnO
2、ZnO−TiO
2、MgO−Al
2O
3、FeO−TiO
2、TiO
2、SnO
2、Sb
2O
3、In
2O
3、ZnO、MgO等の公知の金属酸化物が挙げられる。
イオン導電性物質としては、例えば、四級アンモニウム塩、アルカリ金属の過塩素酸塩、アルカリ土類金属の過塩素酸塩等の公知の塩が挙げられる。
【0041】
これらの導電剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0042】
導電剤の含有量は、弾性層の目的とする特性が得られる範囲内であれば、特に制限はない。
具体的には、電子導電性物質の場合、導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上90質量部以下であることが好ましい。
一方、イオン導電性物質の場合、導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0043】
弾性層におけるその他の添加剤としては、軟化剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0044】
弾性層の厚みは、帯電ロールを適用する装置によって異なるが、例えば、1mm以上10mm以下がよく、好ましくは2mm以上5mm以下である。
【0045】
弾性層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。弾性層(帯電ロール)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を5から50倍の厚みに応じて適切な倍率で観察して、膜厚を測定してその平均値とした。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−200を用いる。」
【0046】
(表面層)
帯電ロールは、必要に応じて、弾性層上に外周面を構成する表面層を設けてもよい。この表面層は、弾性層上に樹脂層等を独立して設けた態様であってもよいし、発泡した弾性層の表層部の気泡に樹脂等を含浸させて設けた態様(つまり、気泡に樹脂等が含浸した弾性層の表層部を表面層とした態様)であってもよい。
【0047】
表面層を形成するための材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等)が挙げられる。また、樹脂は、硬化性樹脂を硬化剤若しくは触媒により硬化又は架橋したものが好ましい。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含む共重合体である。なお、共重合ナイロンには、6ナイロン、66ナイロン等の他の重合単位を含んでいてもよい。
【0048】
これらの中でも、汚れ防止の観点から、樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、表面層の耐摩耗性、多孔質樹脂粒子の離脱抑制の点から、ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0049】
特に、ポリアミド樹脂としては、表面層の耐摩耗性の点から、アルコキシメチル化ポリアミド(アルコキシメチル化ナイロン)が好ましく、より好ましくはメトキシメチル化ポリアミド(N−メトキシメチル化ナイロン)である。
【0050】
なお、樹脂は、表面層の機械的強度を向上させ、表面層の割れの発生を抑制する点から、架橋構造を有していてもよい。
【0051】
表面層を形成するためのその他の材料としては、例えば、導電剤、充填剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る周知の添加剤が挙げられる。
【0052】
表面層の厚みは、例えば、2μm以上25μm以下がよく、好ましくは3μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下であり、更に好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0053】
表面層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。表面層(帯電ロール)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を倍率1000倍で観察して、膜厚を測定してその平均値とした。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−200を用いる。
【0054】
[帯電装置]
以下、本実施形態に係る帯電装置について説明する。
図3は、本実施形態に係る帯電装置の概略斜視図である。
【0055】
本実施形態に係る帯電装置は、帯電ロールとして、上記本実施形態に係る帯電ロールを適用した形態である。
具体的には、本実施形態に係る帯電装置12は、
図3に示すように、例えば、帯電ロール121と、クリーニング部材122と、が特定の食い込み量で接触して配置されている。そして、帯電ロール121の基材30およびクリーニング部材122の基材122Aの軸方向両端は、各部材が回転自在となるように導電性軸受け123(導電性ベアリング)で保持されている。導電性軸受け123の一方には電源124(電圧印加装置の一例)が接続されている。
なお、本実施形態に係る帯電装置は、上記構成に限られず、例えば、クリーニング部材122を備えない形態であってもよい。
【0056】
クリーニング部材122は、帯電ロール121の表面を清掃するための清掃部材であり、例えば、ロール状で構成されている。クリーニング部材122は、例えば、円筒状または円柱状の基材122Aと、基材122Aの外周面に弾性層122Bと、で構成される。
【0057】
基材122Aは、導電性の棒状部材であり、その材質は例えば、鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、基材122Aとしては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。基材122Aは、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0058】
弾性層122Bは、多孔質の3次元構造を有する発泡体からなり、内部や表面に空洞や凹凸部(以下、セルという。)が存在し、弾性を有していることがよい。弾性層122Bは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、オレフィン、メラミン、ポリプロピレン等の発泡性の樹脂材料、又は、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム等の発泡性のゴム材料;を含んで構成される。
【0059】
これらの発泡性の樹脂材料またはゴム材料のなかでも、帯電ロール121との従動摺擦によりトナーや外添剤などの異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電ロール121の表面にクリーニング部材122の擦れによるキズをつけ難くするために、また、長期にわたり千切れや破損が生じ難くするために、引き裂き、引っ張り強さなどに強いポリウレタンが特に好適に適用される。
【0060】
ポリウレタンとしては、特に限定するものではなく、例えば、ポリオール(例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなど)と、イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)の反応物が挙げられ、これらの鎖延長剤(例えば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど)による反応物であってもよい。なお、ポリウレタンは、発泡剤(水やアゾ化合物(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)を用いて発泡させるのが一般的である。
【0061】
弾性層122Bのセル数としては、20/25mm以上80/25mm以下であることが好ましく、30/25mm以上80/25mm以下であることがさらに好ましく、30/25mm以上50/25mm以下であることが特に好ましい。
【0062】
弾性層122Bの硬さとしては、100N以上500N以下が好ましく100N以上400N以下がさらに好ましく、150N以上400N以下が特に好ましい。
【0063】
導電性軸受け123は、帯電ロール121とクリーニング部材122とを一体で回転自在に保持すると共に、当該部材同士の軸間距離を保持する部材である。導電性軸受け123は、導電性を有する材料で製造されていればいかなる材料および形態でもよく、例えば、導電性のベアリングや導電性の滑り軸受けなどが適用される。
【0064】
電源124は、導電性軸受け123へ電圧を印加することにより帯電ロール121とクリーニング部材122とを同極性に帯電させる装置であり、公知の高圧電源装置が用いられる。
【0065】
本実施形態に係る帯電装置12では、例えば、電源124から導電性軸受け123に電圧が印加されることで、帯電ロール121とクリーニング部材122とが同極性に帯電する。
【0066】
[画像形成装置、プロセスカートリッジ]
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える画像形成装置を備える。そして、帯電装置として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。
【0067】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置を備えた装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0068】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置は、帯電装置による帯電後の像保持体の表面の帯電電圧と、現像装置による現像電圧との絶対値の差である背景電圧Vclnが60V以上90V以下とした装置であってもよい。具体的には、例えば、画像形成装置は、背景電圧Vclnが上記範囲となるように、帯電装置(その帯電ロール)および現像装置(その現像ロール)に電圧を印加する各電圧印加装置を制御する制御装置を備えることがよい。
背景電圧Vclnが60V以上90V以下とした画像形成装置であっても、上述のように、像保持体の帯電電位ムラに起因して生じる背景かぶりが抑制される。
【0069】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば上記構成の画像形成装置に脱着され、像保持体と、像保持体を帯電する帯電装置と、を備える。そして、帯電装置として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、例えば、像保持体の表面を帯電する帯電装置;帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置;静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置;および、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0070】
次に、本実施形態に係る画像形成装置、およびプロセスカートリッジについて図面を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図5は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【0071】
本実施形態に係る画像形成装置101は、
図4に示すように、像保持体10を備え、その周囲に、像保持体を帯電する帯電装置12と、帯電装置12により帯電された像保持体10を露光して静電荷像を形成する露光装置14と、露光装置14により形成した静電荷像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像装置16と、現像装置16により形成したトナー画像を記録媒体Pに転写する転写装置18と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を備える。また、転写装置18により記録媒体Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置22を備える。更に、画像形成装置101内の各装置及び各部材と接続され、各装置及び各部材の動作を制御する制御装置26を具備している。
【0072】
そして、本実施形態に係る画像形成装置101は、帯電装置12として、例えば、帯電ロール121と、帯電ロール121に接触配置されたクリーニング部材122と、帯電ロール121およびクリーニング部材122の軸方向両端を各部材が回転自在となるように保持する導電性軸受け123(導電性ベアリング)と、導電性軸受け123の一方に接続された電源124と、が配設された、上記本実施形態に係る帯電装置が適用されている。
【0073】
一方、本実施形態の画像形成装置101は、帯電装置12(帯電ロール121)以外の構成については、従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成が適用される。以下、各構成の一例につき説明する。
【0074】
像保持体10は、特に制限なく、公知の感光体が適用されるが、感光層を電荷発生層と電荷輸送層とに分離した、いわゆる機能分離型と呼ばれる構造の有機感光体が好適に適用される。また、像保持体10は、その表面層が電荷輸送性を有し架橋構造を有する保護層で被覆されているものも好適に適用される。この保護層の架橋成分としてシロキサン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アクリル樹脂で構成された感光体も好適に適用される。
【0075】
露光装置14としては、例えば、レーザー光学系やLED(Light Emitting Diode)アレイ等が適用される。
【0076】
現像装置16は、例えば、現像剤層を表面に形成させた現像ロール161(現像剤保持体の一例)を像保持体10に接触若しくは近接させて、像保持体10の表面の静電荷像にトナーを付着させてトナー画像を形成する現像装置である。現像装置16は、現像ロール161に電圧を印加するための電源162(電圧印加装置の一例)を備えている。現像装置16の現像方式は、既知の方式として二成分現像剤による現像方式が好適に適用される。この二成分現像剤による現像方式には、例えば、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。
【0077】
転写装置18としては、例えば、コロトロン等の非接触転写方式、記録媒体Pを介して導電性の転写ロールを像保持体10に接触させ記録媒体Pにトナー画像を転写する接触転写方式のいずれを適応してもよい。
【0078】
クリーニング装置20は、例えば、クリーニングブレードを像保持体10の表面に直接接触させて表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する部材である。クリーニング装置20としては、クリーニングブレード以外にクリーニングブラシ、クリーニングロール等を適用してもよい。
【0079】
定着装置22としては、ヒートロールを用いる加熱定着装置が好適に適用される。加熱定着装置は、例えば、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層又は耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し特定の接触圧で接触して配置され、円筒状芯金の外周面又はベルト状基材表面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラまたは加圧ベルトと、で構成される。未定着のトナー画像の定着プロセスは、例えば、定着ローラと加圧ローラまたは加圧ベルトとの間に未定着のトナー画像が転写された記録媒体Pを挿通させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。
【0080】
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、中間転写体を利用した中間転写方式の画像形成装置、各色のトナー画像を形成する画像形成ユニットを並列配置させた所謂タンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0081】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、
図5に示すように、上記
図4に示す画像形成装置において、露光のための開口部24A、および取り付けレール24Cが備えられた筐体24により、像保持体10と、像保持体を帯電する帯電装置12と、露光装置14により形成した静電荷像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像装置16と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を一体的に組み合わせて保持して構成したプロセスカートリッジ102である。そして、プロセスカートリッジ102は、上記
図4に示す画像形成装置101に脱着自在に装着されている。なお、
図5は、電源124、電源162の図示は省略している。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0083】
<実施例1>
下記成分の混合物をオープンロールで混練りし、SUS416からなる直径6mmの導電性基材の表面に、厚さ1.5mmとなるように円筒状に被覆した。これを、内径18.0mmの円筒型の金型に入れ、170℃で30分間加硫させ、金型から取り出した後、研磨して円筒状の発泡弾性層を得た。
ここで、研磨は、水口製作所社製 LEO-600FSを用いて、被研磨物の回転数200rpm、砥石回転数2,300rpmの条件で実施した。
【0084】
−発泡弾性層の成分−
・ゴム材料: 100質量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム)Gechron3106:日本ゼオン社製)
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製): 25質量部
・導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製): 8質量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム): 1質量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製: 1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製): 2.0質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製): 0.5質量部
【0085】
次に、下記成分の混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液Aを、メタノールで希釈して、粘度0.04Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液を用いて、発泡弾性層の表面に浸漬塗布し、塗布液を発泡弾性層の表層部の気泡に含浸させた後、140℃で15分間加熱乾燥し、表面層を形成した。得られた導電性ロールを帯電ロールとした。
【0086】
−表面層の成分−
・高分子材料: 100質量部
(共重合ナイロン)アラミンCM8000:東レ社製
・導電剤: 30質量部
(アンチモンドープ酸化スズ)SN−100P:石原産業社製
・溶剤(メタノール): 500質量部
・溶剤(ブタノール): 240質量部
【0087】
<実施例2>
発泡弾性層の形成において、研磨条件を被研磨物の回転数300rpm、砥石回転数3,450rpmと変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0088】
<実施例3>
表面層の形成において、溶剤量を調整して、粘度0.06Pa・sの塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0089】
<実施例4>
発泡弾性層の形成において、研磨条件を被研磨物の回転数600rpm、砥石回転数6,900rpmと変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0090】
<実施例5>
発泡弾性層の形成において、研磨条件を被研磨物の回転数600rpm、砥石回転数6,900rpmと変更し、表面層の形成において、溶剤量を調整して粘度0.06Pa・sの塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0091】
<実施例6>
発泡弾性層の形成において、研磨条件を被研磨物の回転数240rpm、砥石回転数2,760rpmと変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0092】
<実施例7>
発泡弾性層の形成において、研磨条件を被研磨物の回転数240rpm、砥石回転数2,760rpmと変更し、表面層の形成において、溶剤量を調整して粘度0.06Pa・sの塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0093】
<比較例1>
発泡弾性層の形成において、研磨条件を被研磨物の回転数100rpm、砥石回転数1,150rpmと変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0094】
<比較例2>
表面層の形成において、溶剤量を調整して、粘度0.02Pa・sの塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0095】
<測定/評価>
(各種測定)
各例の帯電ロールについて、ロール表面の粗さ曲線のスキューネスRsk(表中「Rsk」と表記)、ロール表面の十点平均粗さRz(表中「Rz」と表記)、直流電圧100Vを印加したときの体積抵抗値の常用対数値(表中「R」と表記)を既述の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0096】
(評価)
各例の帯電ロールを富士ゼロックス社製「DocuPrintCP200w」に装着し、評価用の装置とした。この評価用の装置は、帯電ロールおよび現像ロールへ印加する電圧を可変可能とし、帯電装置による帯電後の感光体の表面の帯電電圧(帯電電位)と現像装置による現像電圧(現像電圧)を調整可能に改造した装置とした。これにより、評価用の装置は、帯電電圧(帯電電位)と現像電圧(現像電圧)との絶対値の差である背景電圧(背景電位)を設定可能とした。
【0097】
評価用の装置を用いて、表1に記載の背景電圧Vcln(表中「Vcln」と表記)に設定した状態で、高温高湿環境下(温度30℃、80%RH環境下)、A4用紙の白紙印刷(画像を形成しない出力)を10枚実施した。そして、10枚目に出力の用紙を目視にて観察し、背景かぶりの評価を行った。この背景かぶりの評価は、表1に示すように設定した背景電圧Vcln毎に実施した。結果を表1に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
A: 背景かぶりの発生は全く無し
B: よく見たら、背景かぶりの発生が確認された。
C: やや、背景かぶりの発生が確認されたものの、実施上問題ないレベル
D: 一目でわかる程度に、背景かぶりの発生が確認された。
E: ある程度の濃度を持った背景かぶりの発生が確認された。
【0098】
【表1】
【0099】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、背景かぶりの発生が抑制されていることがわかる。
また、本実施例では、背景電圧Vclnが90V以下でも、比較例に比べ、背景かぶりの発生が抑制されていることがわかる。