(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータユニットと、前記モータユニットの回転軸に取り付けられる第1歯車と、前記第1歯車よりも大径かつ歯が多い第2歯車と、前記第1歯車と前記第2歯車とに掛けられる無端ベルトと、前記第2歯車の回転軸に取り付けられるまたは前記第2歯車の回転軸に回転動力伝達機構を介して取り付けられるドラムと、前記無端ベルトが規定走行経路から逸脱することを抑制する回転体とを備え、
前記回転体は、前記第1歯車の回転中心と前記第2歯車の回転中心とを結ぶ仮想線を基準にして、前記無端ベルトが走行するときの前記第1歯車から前記第2歯車側へ向かう走行方向下流側の位置に下流側回転体を有し、
前記下流側回転体は、前記規定走行経路に対して前記無端ベルトが逸脱する方向に離れて配置され、前記無端ベルトが走行して前記規定走行経路から逸脱するときに前記下流側回転体が前記無端ベルトの外面に接触するものであるとともに、
前記下流側回転体は、前記無端ベルトの規定走行経路の傍にかつ前記第1歯車と前記第2歯車との共通接線に対して垂直な方向からみて前記第1歯車の少なくとも一部と前記下流側回転体の少なくとも一部とが互いに重なり合うようになる箇所に配置されている、ドア移動装置。
前記回転動力伝達機構は、前記第2歯車の回転軸に設けられて前記第2歯車よりも小径でかつ歯が少ない第3歯車と、前記ドラムが取り付けられ前記第3歯車よりも大径でかつ歯が多く前記第3歯車と噛み合う第4歯車とを備える
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のドア移動装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図7を参照して、ドア移動装置について説明する。
以下の説明では、スライドドアモジュール30に取り付けられるドア移動装置50を例に挙げる。
【0017】
図1は、車両1を俯瞰した平面図である。
図1では、ステアリングホイール1aの配置側が車両1の前側を示す。なお、スライドドア10が車両本体2に取り付けられた状態で、車両1の上下方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「上下方向DZ」と規定する。車両1の前後方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「前後方向DY」と規定する。車両1の車幅方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「車幅方向DX」と規定する。
【0018】
スライドドア10は、アッパーガイドレール5a、ロアガイドレール5b及びセンターガイドレール5cを介して車両本体2の乗降口3に摺動可能に取り付けられる。
アッパーガイドレール5aは、ガイドローラを介してスライドドア10の上部を支持する。ロアガイドレール5bは、ガイドローラを介してスライドドア10の下部を支持する。センターガイドレール5cは、後述の第3及び第4ケーブル51,52に装着されるローラユニット6を介してスライドドア10の中央部を支持する。
【0019】
スライドドア10は、乗降口3を閉鎖する全閉位置から、乗降口3を全開する全開位置までの範囲で、車両本体2に敷設されたドアレールに沿って移動する。スライドドア10は、全閉位置から車幅方向DXに移動可能に、かつ全閉位置から外側に移動した状態で前後方向DYに移動可能に、車両本体2に取り付けられている。
【0020】
図2は、スライドドア10の内部構造を示す模式図である。
スライドドア10は、アウターパネル11と、インナーパネル12と、インナーパネル12に取り付けられるスライドドアモジュール30と、窓ガラス4とを備えている。インナーパネル12の内側(車内側)には内装パネルが取り付けられる。
【0021】
インナーパネル12は、アウターパネル11の内側に取り付けられる。インナーパネル12には、スライドドアモジュール30が配置される開口部12aが設けられている。窓ガラス4は、インナーパネル12及びスライドドアモジュール30により構成されるインナー部材と、アウターパネル11との間の空間に収容され得る。
【0022】
スライドドア10には、スライドドア10の前側に配置される第1ロック装置13と、スライドドア10の後側に配置される第2ロック装置14と、スライドドア10の下部に配置される第3ロック装置15とが設けられる。第1〜第3ロック装置13〜15は、アウターパネル11とインナーパネル12との間に配置される。
【0023】
第1ロック装置13は、車両本体2の乗降口3の前縁部に設けられたストライカ16a(
図1参照)に係合する。
第2ロック装置14は、車両本体2の乗降口3の後縁部に設けられたストライカ16b(
図1参照)に係合する。
【0024】
第3ロック装置15は、車両本体2の乗降口3の下縁部に設けられたストライカ(図示省略)に係合する。
スライドドア10は、全閉位置に位置するとき、第1及び第2ロック装置13,14に拘束される。また、スライドドア10は、全開位置に位置するとき、第3ロック装置15に拘束される。スライドドア10は、第1及び第2ロック装置13,14または第3ロック装置15により拘束されることによりその移動が制限される。
【0025】
スライドドアモジュール30について説明する。
スライドドアモジュール30は、樹脂製のベース31と、窓ガラス4を昇降させる窓ガラス昇降装置40と、スライドドア10を移動させるドア移動装置50と、第1〜第3ロック装置13〜15を操作するドア開閉装置60とを備える。窓ガラス昇降装置40、ドア移動装置50、及びドア開閉装置60は、ベース31に取り付けられている。
【0026】
窓ガラス昇降装置40は、窓ガラス4を牽引する第1及び第2ケーブル41,42と、第1及び第2ケーブル41,42を巻くドラム43と、ドラム43と協働して第1及び第2ケーブル41,42を張るプーリ44と、ドラム43を回転させる窓ガラス昇降用モータ45と、窓ガラス4の下端に取り付けられるキャリア46とを備える。
【0027】
ドラム43及びプーリ44は、ベース31の外面に配置される。窓ガラス昇降用モータ45は、ベース31の内面(車幅方向DXにおける車内側の面。以下、同じ。)に配置される。窓ガラス昇降用モータ45とドラム43とは減速機47を介して接続される。なお、減速機47の出力軸は、ベース31に設けられた貫通孔を挿通して、ドラム43に接続される。
【0028】
第1ケーブル41はプーリ44で折り返されるように張られる。第1ケーブル41の一端はドラム43に、他端はキャリア46に接続される。
第2ケーブル42は、キャリア46に対して第1ケーブル41とは反対方向に延びるように張られる。第2ケーブル42の一端はキャリア46に、他端はドラム43に接続される。
【0029】
ドラム43の回転により第1ケーブル41または第2ケーブル42がドラム43に巻かれると、第1ケーブル41及び第2ケーブル42の移動に伴ってキャリア46が移動する。これにより、窓ガラス4が所定移動範囲内で昇降する。
【0030】
ドア開閉装置60は、インナーハンドル61と、各種の動作に基づいて第1〜第3ロック装置13〜15を動作させる伝達機構63とを備える。スライドドア10の外側に取り付けられるアウターハンドル62はドア開閉装置60に接続される。
【0031】
インナーハンドル61は、回転可能にスライドドアモジュール30のベース31に取り付けられている。インナーハンドル61は、内装パネルから車幅方向DXの内側(座席側)に突出するように設けられている。
【0032】
第1の所定操作(以下、「閉操作」という。)によりインナーハンドル61が第1の所定方向に回転するとき、この回転動作が伝達機構63を介して第3ロック装置15に伝達されて、第3ロック装置15が操作される。
【0033】
また、第2の所定操作(以下、「開操作」という。)によりインナーハンドル61が第2の所定方向に回転するとき、この回転動作が伝達機構63を介して第1及び第2ロック装置13,14それぞれに伝達され、第1及び第2ロック装置13,14が操作される。
【0034】
所定操作(例えば、引く操作。)によりアウターハンドル62が所定方向に回転するとき、この回転動作が伝達機構63を介して第1〜第3ロック装置13〜15に伝達されて、伝達された動力により第1〜第3ロック装置13〜15が操作される。
【0035】
図3を参照して、ドア移動装置50を説明する。
ドア移動装置50は、スライドドア10を牽引する第3及び第4ケーブル51,52を巻いたり繰り出したりする。
【0036】
ドア移動装置50は、第3及び第4ケーブル51,52を巻くドラム54と、第3及び第4ケーブル51,52のうちの一方のケーブルをドラム54に案内するガイドプーリ55と、ドラム54を回転させるモータユニット56(
図4参照)と、モータユニット56の回転数を減速させる減速機57とを備える。
【0037】
モータユニット56及び減速機57は第1ケース71に収容される。ドラム54及びガイドプーリ55は第2ケース72で覆われる。第1ケース71は、底ケース71aと、底ケース71aの開口部を覆う蓋ケース71bとを備える。第1ケース71の底ケース71aは、ベース31に締結部材で締結される。蓋ケース71bにおいて第4歯車57d(
図4参照)が配置される部分は、ブラケット73によりベース31側に向けて押さえ付けられる。
【0038】
ブラケット73は、当該ブラケット73をベース31に締結するための締結部73aと、ガイドプーリ55を支持する支軸が固定される固定部73bと、第4歯車57dの回転軸57tを挿通する孔73cとを有する。
【0039】
ドラム54及びガイドプーリ55は、ブラケット73の外面(第1ケース71に接触する面と反対側の面)側に配置される。そして、ドラム54及びガイドプーリ55は、第2ケース72に覆われる。
【0040】
第3ケーブル51の一端は車両本体2に固定されたセンターガイドレール5cの前端側に接続される。第4ケーブル52の一端は車両本体2に固定されたセンターガイドレール5cの後端側に接続される。第3ケーブル51及び第4ケーブル52それぞれの他端はドラム54に接続される。
【0041】
第3及び第4ケーブル51,52のうちの一方のケーブルはガイドプーリ55に案内されてドラム54に巻かれ、他方のケーブルはガイドプーリ55に案内されずにドラム54に巻かれる。すなわち、第3ケーブル51のドラム54に対する巻き方向と第4ケーブル52のドラム54に対する巻き方向とが逆にされている。この構成により、ドラム54の回転に基づいて第3ケーブル51及び第4ケーブル52は次のようにドラム54に巻かれる。すなわち、ドラム54が所定方向に回転すると第3ケーブル51及び第4ケーブル52の一方のケーブルが巻かれるとともに他方のケーブルが繰り出される。ドラム54が所定方向とは逆方向に回転すると、巻かれるケーブルと繰り出されるケーブルとが所定方向に回転する場合に対して逆になる。このようにして、スライドドア10が車両1の前方または後方に移動する。
【0042】
図4を参照して、モータユニット56及び減速機57の構造を説明する。
モータユニット56は、ブラシレスモータであり、円形リング状のロータ56aと、ロータ56aの外側に配置されるステータ56bとにより構成されている。ロータ56aは磁石により構成される。ステータ56bは、ヨークとコイルとにより構成される。なお、モータユニット56内には、ロータ56aの回転位置を検出するセンサ(図示省略)が配置される。モータユニット56を駆動する駆動回路は、第1ケース71内に配置される。当該駆動回路は第1ケース71外に配置され得る。
【0043】
減速機57は、モータユニット56の出力軸(回転軸57r)に取り付けられる第1歯車57aと、回転軸57sを有する第2歯車57bと、第1歯車57aと第2歯車57bとに掛けられる無端ベルト58と、第2歯車57bの回転軸57sに設けられた第3歯車57cと、第3歯車57cと噛み合う第4歯車57dとを備える。
【0044】
無端ベルト58は、例えば、ガラス製の心線を有する繊維含有ゴムにより形成される。
ドラム54は第4歯車57dの回転軸57t(出力軸)に取り付けられる。また、底ケース71aには、無端ベルト58が規定走行経路L(
図6(b)参照)から逸脱することを抑制する逸脱抑制機構が設けられている。
【0045】
規定走行経路Lとは、第1歯車57aと第2歯車57bとに無端ベルト58が弛み無く掛かった状態でかつ弛みを生じさせることなく無端ベルト58が走行するときの、無端ベルト58の走行経路を示す。
【0046】
第2歯車57bは、第1歯車57aよりも大径でかつ第1歯車57aよりも歯が多い。第3歯車57cは、第2歯車57bよりも小径でかつ第2歯車57bよりも歯が少ない。第4歯車57dは、第3歯車57cよりも大径でかつ第3歯車57cよりも歯が多い。このような構成により、モータユニット56の回転速度が減速される。なお、第3歯車57cと第4歯車57dとは、第2歯車57bの回転動力をドラム54に伝達する機構(以下、「回転動力伝達機構57x」という。)を構成する。回転動力伝達機構57xは第2歯車57bの回転速度を減速させる。
【0047】
第3歯車57c及び第4歯車57dは斜歯歯車により構成されることが好ましい。この構成によれば、第3歯車57c及び第4歯車57dが平歯歯車により構成される場合よりも、動作時の音の大きさを低減することができるためである。
【0048】
図5は、
図4の構造体からモータユニット56を取り外したものを斜めから見た図である。
図5に示されるように、第1歯車57aと第2歯車57bとは車幅方向DXにおいて同じ位置に配置され、第3歯車57c及び第4歯車57dは、第1歯車57a及び第2歯車57bよりも車幅方向DX内側に配置される。また、モータユニット56は、第1歯車57a及び第2歯車57bよりも車幅方向DX内側に配置される。そして、車幅方向DXからみて、第2歯車57bと第4歯車57dとは一部で重なるように配置される。また、車幅方向DXからみて、第2歯車57bとモータユニット56とは一部で重なるように配置される。このような重なり構造により、車幅方向DXに垂直な面におけるドア移動装置50の面積が小さくなる。
【0049】
図5及び
図6を参照して、無端ベルト58の逸脱抑制機構について説明する。
小径の歯車と大径の歯車とに掛けられる無端ベルト58では歯飛びが発生するおそれがある。歯飛びとは、無端ベルト58の歯が、歯車において当初に噛み合った歯(以下、「当初の歯」という。)から離間して、当初の歯とは別の歯と噛み合うようになることを指す。このような歯飛びでは、無端ベルト58の歯が当初の歯を越えて別の歯と噛み合うときに無端ベルト58に大きな摩擦力が加わるため、無端ベルト58の歯が変形したり劣化したりするおそれがある。
【0050】
このような歯飛びは、歯車への負荷が高負荷時に発生し易い。
また、歯車の径(直径)が小さい場合にも歯飛びが生じ易い。歯車に掛けられる無端ベルト58の曲率が大きくなると、無端ベルト58の弾性に起因して歯車の外周に無端ベルト58が沿い難くなるからである。
【0051】
また、大径の歯車と小径の歯車とに掛けられる無端ベルト58においては、2個の歯車の間の離間距離が短いほど、歯車比(大径の歯車の歯数/小径の歯車の歯数)が大きいほど、無端ベルト58において小径の歯車に掛かる歯が少なくなるため、歯飛びが生じ易くなる。
【0052】
本実施形態では、第1〜第4回転歯車のうちで第1歯車57aが最も負荷が高い。
また、第1歯車57aは、第2歯車57bよりも小径である。更に、上述したように第2歯車57bとモータユニット56とが互いに重なるように配置されている。このため、第2歯車57bとモータユニット56とが互いに重ならないように配置される場合に比べて、第1歯車57aと第2歯車57bとの間の離間距離が短い。これらのことから、第1歯車57aにおいて無端ベルト58の歯飛びが生じ易くなっている。このような事情により、第1歯車57aに掛かる無端ベルト58に対応して、無端ベルト58についての逸脱抑制機構が設けられる。
【0053】
逸脱抑制機構は、無端ベルト58が規定走行経路Lから外れるときに少なくとも無端ベルト58に接触するものとして構成される。例えば、逸脱抑制機構は、回転体59として構成される。回転体59は、支軸59aと、支軸59aを中心軸として回転する回転部59bとを有する。回転部59bは円筒体または円形リング構造を有する。具体的には、回転体59は、プーリまたはベアリングにより構成される。
【0054】
第1歯車57aに掛かっている範囲において、無端ベルト58が第1歯車57aから離れ始める部分(以下、「離反部分」という。)が、無端ベルト58が第1歯車57aに掛かり始める部分よりも、規定走行経路L(
図6(b)の2点鎖線参照。)から外れ易い。これは、無端ベルト58が第1歯車57aの回転動力により走行することに起因して、無端ベルト58の上流側(第1歯車57aよりも上流側の部分)が引っ張られて無端ベルト58の下流側(第1歯車57aよりも下流側の部分)が弛むためである。
【0055】
このため、無端ベルト58において離反部分の弛みを抑制するべく、離反部分に逸脱抑制機構としての回転体59が配置される。
なお、第1歯車57aは、第3及び第4ケーブル51,52の牽引の方向に応じて正方向及び逆方向に回転するため、逸脱抑制機構としての回転体59は、第1歯車57aの回転中心と第2歯車57bの回転中心とを結ぶ線LEに対して対称の位置にそれぞれ配置される(
図6(a)参照)。
【0056】
図6及び
図7を参照して、逸脱抑制機構としての回転体59の配置構成について詳述する。
図6(a)は無端ベルト58が停止しているときの無端ベルト58と回転体59との配置関係を示す。
図6(b)は無端ベルト58が走行しているときの無端ベルト58と回転体59との配置関係を示す。
図6(b)の2点鎖線は、無端ベルト58の規定走行経路Lを示す。
【0057】
第1歯車57aの回転により無端ベルト58が走行するとき、上述したように、無端ベルト58において第1歯車57aよりも上流側は引っ張られ、下流側は弛む。このことは、第1歯車57aの回転速度が大きくなると顕著になる。この弛みは、第1歯車57aから無端ベルト58が離れる部分において大きい(
図6(b)参照)。このことを考慮して、回転体59は次のように配置される。
【0058】
図6(b)に示されるように、無端ベルト58が走行するとき、走行方向DR上流側の回転体59が無端ベルト58の外面に接触せずかつ走行方向DR下流側の回転体59が無端ベルト58の外面に接触するように、各回転体59が配置される。
【0059】
例えば、回転体59は、第1歯車57aと第2歯車57bとの共通接線LCに対して設定距離LSだけ離れたところに配置される。設定距離LSは、回転体59により無端ベルト58の逸脱を抑制することが可能な距離として設定される。設定距離LSは、無端ベルト58の歯高さ(歯たけ)よりも小さい。
【0060】
このような回転体59の配置によれば次の作用がある。
無端ベルト58が走行して規定走行経路Lから逸脱するときに無端ベルト58が回転体59に接触するようになる。このため、次の参考構造、すなわち無端ベルト58が停止しているときから回転体59が無端ベルト58に接触することにより無端ベルト58と回転体59とが絶えず互いに接触する参考構造に比べて、無端ベルト58に加わる摩擦が少なくなる。
【0061】
更に、
図7に示されるように、次のように回転体59が配置されることが好ましい。
図7に示されるように、回転体59は、無端ベルト58の規定走行経路Lの傍にかつ第1歯車57aと第2歯車57bとの共通接線LCに対して垂直な方向からみて第1歯車57aの少なくとも一部と回転体59の少なくとも一部とが互いに重なり合うになる箇所に配置される。例えば、第1歯車57aの歯先円に接してかつ上記共通接線LCに対して垂直に延びる2本の線LVの間の範囲AXに回転体59の少なくとも一部が入り、かつ第1歯車57aの歯先円または上述の共通接線LCから設定距離LS(上述参照)だけ離れた位置に、回転体59が配置される。
図7には、2個の回転体59のうちの一方の回転体59の配置範囲が示されているが、他方の回転体59も、この回転体59の少なくとも一部が同様に規定された範囲AXに入るように、配置される。
【0062】
このような配置によれば、無端ベルト58において規定走行経路Lから外側に外れやすい部分(離反部分)が外側から押さえられるようになるため、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱することが効果的に抑制される。これにより、無端ベルト58の歯飛びが抑制される。
【0063】
次に、本実施形態に係るドア移動装置50の効果を説明する。
(1)本実施形態では、ドア移動装置50は、第1歯車57aと、第1歯車57aよりも大径かつ歯が多い第2歯車57bと、第1歯車57aと第2歯車57bとに掛けられる無端ベルト58と、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱することを抑制する回転体59とを備える。
【0064】
この構成によれば、第1歯車57aの歯と第2歯車57bの歯との直接の接触がなくなるため騒音が抑制されるようになる。一方、無端ベルト58を用いると歯飛びが生じるおそれがあるが、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱することを抑制する回転体59が設けられているため、無端ベルト58の歯飛びが抑制される。
【0065】
(2)本実施形態では、ドア移動装置50には回転体59が2個設けられている。回転体59のそれぞれは、無端ベルト58の規定走行経路Lの傍にかつ第1歯車57aと第2歯車57bとの共通接線LCに対して垂直な方向からみて第1歯車57aの少なくとも一部と回転体59の少なくとも一部とが互いに重なり合うようになる箇所に配置されている。この構成によれば、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱することが効果的に抑制される。これにより、無端ベルト58の歯飛びが更に抑制される。
【0066】
(3)本実施形態では、無端ベルト58が走行するとき、走行方向上流側の回転体59が無端ベルト58の外面に接触せずかつ走行方向下流側の回転体59が無端ベルト58の外面に接触するように、回転体59が配置される。
【0067】
この構成によれば、無端ベルト58が走行して規定走行経路Lから逸脱するときに無端ベルト58が回転体59の一方に接触するようになる。このため、無端ベルト58が走行し始める前から回転体59が無端ベルト58に接触することにより無端ベルト58と回転体59とが絶えず互いに接触する構造に比べて、無端ベルト58に加わる摩擦が少なくなる。これにより、磨耗による無端ベルト58の劣化が抑制される。
【0068】
(4)本実施形態では、第2歯車57bの回転が回転動力伝達機構57xにより減速される。回転動力伝達機構57xは、第3歯車57cと、ドラム54が取り付けられる第4歯車57dとを備える。第3歯車57cは、第2歯車57bの回転軸57sに設けられて第2歯車57bよりも小径でかつ歯が少ない。第4歯車57dは、第3歯車57cよりも大径でかつ歯が多く、第3歯車57cと噛み合う。
【0069】
この構成によれば、2段階で減速されるため、減速比が高くなる。なお、この構成では、回転速度が高い第1段目で無端ベルト58を用いているため、回転速度が低い第2段目で無端ベルト58を用いる構成に比べて、騒音が小さい。
【0070】
図8〜
図15を参照して、逸脱抑制機構の変形例を説明する。
なお、逸脱抑制機構は、上記実施形態に示したものや下記に示される変形例に限定されるものではない。
【0071】
[第1変形例]
図8及び
図9を参照して、逸脱抑制機構の第1変形例を説明する。
図8は逸脱抑制機構の平面図であり、
図9は、
図8の矢印A1方向から見た側面図である。
【0072】
実施形態では、第1歯車57aの周囲に2個の回転体59が配置されている。これに対して、第1変形例では、第1歯車57aの周囲に回転体59が1つだけ配置される。回転体59は、第1歯車57aの回転中心と第2歯車57bの回転中心を結ぶ線LEの延長線上に配置される。この構成では、無端ベルト58における第1歯車57aに噛み合う範囲で、第1歯車57aに最も確実に噛み合う部分が外方(第1歯車57aの径方向)に移動することを抑制する。これにより、無端ベルト58の歯飛びが抑制される。
【0073】
[第2変形例]
図10及び
図11を参照して、逸脱抑制機構の第2変形例を説明する。
図10は逸脱抑制機構の平面図であり、
図11は、
図10の矢印A2方向から見た側面図である。
【0074】
第2変形例は、第1変形例を更に変形したものである。回転体59は、第1歯車57aの回転中心と第2歯車57bの回転中心を結ぶ線LEの延長線上に配置される。また、回転体59は、上述の線LEの延長線上に沿って移動可能(接近移動かつ離間移動可能)に、ステージ110により支持される。また、回転体59は、付勢部材113(例えば、コイルばね、板ばね、クッション等。)によって第1歯車57a側に付勢される。
【0075】
ステージ110は、回転体59の支軸59aを支持する支持体111と、支持体111を移動可能に支持する台部112とを備える。支持体111は、付勢部材113により第1歯車57aに向かうように付勢される。
【0076】
この構成によれば、次のような作用がある。
ドア移動装置50の各部品には寸法誤差や製造上での組立て誤差があるため、ドア移動装置50の個々の製品毎に、第1歯車57aの回転軸57rと回転体59の支軸59aとの間の間隔距離DAがばらつく。このため、ドア移動装置50の生産において、第1歯車57aの回転軸57rと回転体59の支軸59aとの間の間隔距離DAが許容最小寸法よりも小さくなる場合がある。この場合、回転体59が無端ベルト58に押し付けられるため無端ベルト58に加わる力が過大になる。このような製品は検査等によって除去されるが、歩留りが低下する。
【0077】
これに対して、上記構成によれば、回転体59が、第1歯車57aに対して接近かつ離間可能に配置され、かつ当該回転体59が、第1歯車57a側に向けて付勢されている。このため、各部品の寸法誤差や製造上での組立て誤差により、第1歯車57aの回転軸57rと回転体59の支軸59aとの間の間隔距離DAが小さくなって無端ベルト58に回転体59が接触することがあっても、この場合は、回転体59が第1歯車57aから遠ざかるように移動する。これにより、無端ベルト58に過大な力が加わることが抑制される。つまり、この構成によれば、この構成のないドア移動装置50に比べて、第1歯車57aの回転軸57rと回転体59の支軸59aとの間の間隔距離DAの許容最小寸法を大きくすることができ、これによって、製品歩留りを向上させることができる。
【0078】
[第3変形例]
図12を参照して、逸脱抑制機構の第3変形例を説明する。
図12は逸脱抑制機構の平面図である。
【0079】
第3変形例の逸脱抑制機構は、2個の回転体59を備える。2個の回転体59は、第1歯車57aに対して実施形態に準じた位置に配置される。そして、2個の回転体59は、支持部120により支持されて、付勢部材126により第1歯車57aに向けて付勢される。
【0080】
支持部120は、第1ケース71に固定されるベース121と、ベース121から延びる円筒状のポール122とを備える。2個の回転体59は、可動体123により支持される。
【0081】
可動体123は、2本の支軸59aを支持する支持部材124と、支持部材124から延びてポール122の孔122aに挿通する軸体125とを備える。可動体123の軸体125はポール122の孔122aに移動可能に挿通される。ポール122の延長方向は、第1歯車57aの回転中心と第2歯車57bの回転中心とを結ぶ線LEの延長方向と一致する。ポール122の外側には付勢部材126(例えば、コイルばね)が配置される。付勢部材126は、可動体123を第1歯車57aに向けて付勢する。この構成では、第2変形例と同様に回転体59が付勢されるため、製品歩留りが向上する。また、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱すると、無端ベルト58が回転体59に接触するようになるため、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱することが抑制される。
【0082】
[第4変形例]
図13を参照して、逸脱抑制機構の第4変形例を説明する。
図13は逸脱抑制機構の平面図である。
【0083】
第4変形例の逸脱抑制機構は、2個の回転体59を備える。2個の回転体59は、第1歯車57aに対して実施形態に準じた位置に配置される。そして、2個の回転体59は、付勢部材としてのねじりばね131(後述参照)により第1歯車57aに向けて付勢される。
【0084】
具体的には、2個の回転体59のそれぞれは、ねじりばね131により支持されている。すなわち、ねじりばね131の一端部は、支持ポール132に固定され、ねじりばね131の他端部は回転体59の支軸59aを支持する。ねじりばね131の付勢方向は、第1歯車57aの回転中心と第2歯車57bの回転中心とを結ぶ線LEに対して垂直な方向またはこれに近い角度で交差する方向である。
【0085】
この構成では、第2変形例と同様に回転体59が付勢されるため、製品歩留りが向上する。また、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱すると、無端ベルト58が回転体59に接触するようになるため、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱することが抑制される。
【0086】
[第5変形例]
図14を参照して、逸脱抑制機構の第5変形例を説明する。
図14は逸脱抑制機構の平面図である。
【0087】
第5変形例の逸脱抑制機構は、2個の回転体59を備える。2個の回転体59は、第1歯車57aに対して実施形態に準じた位置に配置される。そして、2個の回転体59は、付勢部材142により、第1歯車57aの回転中心と第2歯車57bの回転中心とを結ぶ線LEに向けて付勢される。
【0088】
具体的には、回転体59の支軸59aは支持部材141により支持される。2個の支持部材141は、付勢部材142(例えば、コイルばね)を介して連結される。
そして、支持部材141は、第1歯車57aの回転中心と第2歯車57bの回転中心とを結ぶ線LEに対して垂直に交わるガイド143に案内され、このガイド143に沿って摺動する。
【0089】
2個の回転体59の間の間隔距離DBは規定距離に設定される。規定距離は、2個の回転体59がともに無端ベルト58に接触する状態に配置されるときの回転体59間の長さに、所定長さ(例えば、歯たけの2倍程度の長さ)を加えて得た長さとして規定される。このような構成により、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱すると、無端ベルト58が回転体59に接触するようになるため、無端ベルト58が規定走行経路Lから逸脱することが抑制される。
【0090】
[第6変形例]
図15を参照して、逸脱抑制機構の第6変形例を説明する。
図15は逸脱抑制機構の平面図である。
【0091】
第6変形例の逸脱抑制機構は、1個の回転体59を備える。回転体59は、第1歯車57aに対して第1変形例に準じた位置に配置される。そして、回転体59は、付勢部材としての金属板152(後述参照)により第1歯車57aに向けて付勢される。
【0092】
具体的には、回転体59は、支持部材151により支持される。支持部材151は、湾曲した金属板152と、金属板152に設けられた一対の支持部材153とを有する。支持部材153は、金属板152の中間部(両端から等距離にある部分)に配置されて、回転体59の支軸59aを支持する。金属板152の初期形状は反った状態にある。金属板152が初期形状から更に曲げられた状態で、支持部材151の端部が第1ケース71に設けられた係止部154に係合される。これにより、第1歯車57aに対向する対向面152aが第1歯車57a側に向かうように付勢される。このような構成によれば、簡単な構成で、第2変形例に準じた効果が得られる。
【0093】
[その他の変形例]
・上記実施形態において、スライドドアモジュール30のベース31には、上記に示した装置とは別の装置が取り付けられ得る。例えば、音響用のスピーカユニットが取り付けられ得る。
【0094】
・上記実施形態では、スライドドアモジュール30を例に挙げて説明したが、本技術は、モジュール化されていない単体のドア移動装置50にも適用される。例えば、本技術は、車両1に取り付けられるドア移動装置50にも適用され得る。