(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホルダに取り付けられたスクライビングホイールは、上述のようにスクライブラインを形成するために保持溝で回転する必要がある。したがって、保持溝の幅はスクライビングホイールの厚みより若干広くなっており、スクライビングホイールと保持部との間にはクリアランスが確保されている。具体的には、スクライビングホイールの厚みが0.65mmの場合には、保持溝の幅は0.02mm程度広くなっている。このように、スクライビングホイールと保持部との間にクリアランスが存在することによって、スクライビングホイールは、回転自在に保持される。
【0006】
一方で、このクリアランスによって、スクライビングホイールは、ホルダ溝内でピン軸に沿って0.02mm程度移動できることになってしまう。したがって、スクライブラインを形成する際に、スクライビングホイールがピン軸方向に移動してしまうことで、スクライブラインの形成位置が安定しなくなり、従来のスクライブ装置では、スクライブラインが所望の位置からずれるということが問題となっていた。
【0007】
本発明は、上述したスクライビングホイールがピン軸方向に移動することによりスクライブラインの形成位置がずれるという問題点に鑑みてなされたものであって、スクライブイラインの形成位置を安定させ、所望の位置からのずれが生じないようにするホルダ、ホルダユニット及びスクライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のホルダは、本体部と、前記本体部の下方に形成された一対の保持部と、同軸上に位置し前記保持部にそれぞれ形成されたピン孔と、を備え、スクライビングホイールの貫通孔に貫通されるとともに前記ピン孔に挿通されるピン軸により、前記保持部間に前記スクライビングホイールを回転自在に保持するためのホルダであって、前記保持部には、前記スクライビングホイールを保持した際に、前記スクライビングホ
イールの側面と対向する位置に空気を排出又は吸引するための通気孔が形成されて
おり、前記通気孔が、一対の前記保持部の一方にのみ形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のホルダによれば、スクライビングホイールが保持部に保持された状態で通気孔を介して空気を排出又は吸引することによって、
スクライビングホイールが一方の保持部へ引き寄せられる。これにより、スクライビングホイールと保持部とのクリアランスによるスクライビングホイールのピン軸方向への移動が規制されることになる。したがって、ホルダは、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
【0012】
また、本発明のホルダは、前記通気孔が、前記保持部の外側側面に形成された側面通気路とつながっており、前記側面通気路は、前記本体部の内部に形成された本体通気路とつながっていることを特徴とする。
【0013】
本発明のホルダによれば、通気孔へとつながる通気路をホルダの加工によって簡単に形成することができる。
【0014】
また、本発明のホルダは、前記通気孔を前記ピン孔が兼ねていることを特徴とする。
【0015】
本発明のホルダによれば、ピン孔内に空気の流れが生じるため、スクライブラインを形成した際に生じたカレットがピン軸へ付着することを防止することができる。また、スクライビングホイールの中央部において空気の流れが生じることにより、スクライブ中のスクライビングホイールの傾きが抑制される。
【0016】
また、本発明のホルダユニットは、スクライビングホイールと、前記スクライビングホイールの貫通孔に貫通されたピン軸と、本体部と、前記本体部の下方に形成され前記スクライビングホイールを保持する一対の保持部と、同軸上に位置し前記保持部にそれぞれ形成されるとともに前記ピン軸が挿通されたピン孔と、を有するホルダと、を備えたホルダユニットであって、前記保持部には、前記スクライビングホイールの側面と対向する位置に空気を排出又は吸引するための通気孔が形成されて
おり、前記通気孔が、一対の前記保持部の一方にのみ形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明のホルダユニットによれば、通気孔を介して空気を排出又は吸引することによって、
スクライビングホイールが一方の保持部へ引き寄せられる。これにより、スクライビングホイールと保持部とのクリアランスによるスクライビングホイールのピン軸方向への移動が規制されることになる。したがって、ホルダユニットは、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
【0020】
また、本発明のホルダユニットは、前記通気孔が、前記保持部の外側側面に形成された側面通気路とつながっており、前記側面通気路は、前記本体部の内部に形成された本体通気路とつながっていることを特徴とする。
【0021】
本発明のホルダユニットによれば、通気孔へとつながる通気路をホルダの加工によって簡単に形成することができる。
【0022】
また、本発明のホルダユニットは、前記側面通気路が、前記保持部の外側側面に固定された止め金によって表面が塞がれていることを特徴とする。
【0023】
本発明のホルダユニットによれば、側面通気路の表面を樹脂や溶接等で塞ぐ場合に比べ簡単に塞ぐことができる。また、この止め金はピン軸の抜け防止としても利用することができる。
【0024】
また、本発明のホルダユニットは、前記通気孔を前記ピン孔が兼ねていることを特徴とする。
【0025】
本発明のホルダユニットによれば、ピン孔内に空気の流れが生じるため、スクライブラインを形成した際に生じたカレットがピン軸へ付着することを防止することができる。また、スクライビングホイールの中央部において空気の流れが生じることにより、スクライブ中のスクライビングホイールの傾きが抑制される。
【0026】
また、本発明のスクライブ装置は、上記のホルダを備え、前記通気孔を介して空気の排出又は吸引を行う吸排気部を有することを特徴とする。また、本発明のスクライブ装置は、上記のホルダユニットを備え、前記通気孔を介して空気の排出又は吸引を行う吸排気部を有することを特徴とする。
【0027】
本発明のスクライブ装置によれば、吸排気部によって空気の排出又は吸引を行うことにより、スクライビングホイールと保持部とのクリアランスによるスクライビングホイールのピン軸方向への移動が規制されることになる。したがって、スクライブ装置は、スクライブラインの形成位置を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例を示すものであり、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態にも適応できるものである。
【0030】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態に係るスクライブ装置1の概略図である。スクライブ装置1は、移動台10を備えている。移動台10は、ボールネジ11と螺合されており、モータの駆動によりこのボールネジ11が回転することで、一対の案内レール12に沿ってy軸方向に移動可能となっている。
【0031】
移動台10の上面には、モータ13が設置されている。モータ13は、上部に位置するテーブル14をxy平面で回転させて所定角度に位置決めする。モータ13により水平回転可能なテーブル14は、図示しない真空吸着手段を備えており、テーブル14上に載置された脆性材料基板15をこの真空吸着手段によって保持する。
【0032】
この脆性材料基板15は、ガラス基板、低温焼成セラミックスや高温焼成セラミックスからなるセラミック基板、シリコン基板、化合物半導体基板、サファイア基板、石英基板等である。また、脆性材料基板15は、基板の表面又は内部に薄膜或いは半導体材料を付着させたり、含ませたりしたものであってもよい。また、脆性材料基板15は、その表面に脆性材料に該当しない薄膜等が付着されていても構わない。
【0033】
スクライブ装置1は、テーブル14に載置された脆性材料基板15の上方に、この脆性材料基板15の表面に形成されたアライメントマークを撮像する二台のCCDカメラ16を備えている。移動台10とその上部のテーブル14とを跨ぐように、ブリッジ17が支柱18a、18bに架設されている。
【0034】
ブリッジ17にはガイド19が取り付けられており、スクライブヘッド20はこのガイド19に案内されてx軸方向に移動するように設置されている。スクライブヘッド20の下端には、ホルダ60にスクライビングホイール40が保持されているホルダユニット30が取り付けられている。
【0035】
ここで、スクライブ装置1を用いて脆性材料基板15へスクライブラインを形成する工程の概略を説明する。まず、スクライブヘッド20に取り付けられたホルダ60にスクライビングホイール40を取り付ける。そして、スクライブ装置1は、一対のCCDカメラ16によって脆性材料基板15の位置決めを行う。次いで、スクライブ装置1は、スクライブヘッド20を所定の位置に移動させ、スクライビングホイール40に対して所定の荷重を印加して、脆性材料基板15へ接触させる。そして、スクライブ装置1は、スクライブヘッド20をX軸方向に移動させることにより、脆性材料基板15の表面に所定のスクライブラインを形成する。なお、スクライブ装置1は、必要に応じてテーブル14を回動ないしY軸方向に移動し、上記の場合と同様にしてスクライブラインを形成する。
【0036】
次に、ホルダユニット30の詳細について図を用いて説明する。
図2(A)はホルダユニット30の正面図であり、
図2(B)はホルダユニット30の側面図である。また、
図3(A)はホルダユニット30を構成するホルダ60の正面図であり、
図3(B)はホルダ60の側面図であり、
図3(C)は
図3(B)のIIIC−IIIC線に沿った断面図である。また、
図4(A)は、
図3(B)の一点鎖線で囲った領域Pの拡大図であり、
図4(B)は
図4(A)で示した場所の下方側からの斜視図であり、
図4(C)は
図4(A)のIVC−IVC線に沿った断面図である。なお、
図4(C)は、ホルダ30の断面図とともにホルダユニット30を構成する他の部品についても一部示している。また、スクライブラインを形成する際のホルダユニット30の進行方向は、
図2(B)の矢印Dで示した方向となる。
【0037】
ホルダユニット30は、スクライビングホイール40と、
図4(C)に示されているピン軸50と、ホルダ60と、が一体となったものである。なお、
図2にはスクライブヘッド20に内蔵され、ホルダユニット30をスクライブヘッド20に取り付けるためのホルダジョイント(図示せず)を構成する二つのベアリング21a、21bと、円筒形のスペーサ22が示されている。
【0038】
スクライビングホイール40は、例えば焼結ダイヤモンドや超硬合金等で形成された、円板状の部材である。また、スクライビングホイール40にはピン軸50が貫通するための貫通孔が円板の両側面41a、41bの中心に形成されている。また、スクライビングホイール40には稜線を形成するV字状の刃が外周部に形成されている。また、本実施形態のスクライビングホイール40は、厚さが約0.65mmであり、外径が約2.0mm、貫通孔41の径が約0.8mm、刃43の刃先角が約130°である。
【0039】
なお、スクライビングホイール40は、焼結ダイヤモンドや超硬合金で形成されたものの他に、単結晶ダイヤモンドや多結晶ダイヤモンドからなるものもある。
【0040】
ピン軸50は、例えば焼結ダイヤモンドや超硬合金等で形成された、円柱状の部材であり、
図4(C)に示すように一端が尖頭形状の尖頭部51になっている。また、本実施形態のピン軸50の径は約0.8mmとなっている。
【0041】
ホルダ60は、例えばSUS303等の金属で形成されたものである。ホルダ60は、本体部を形成する上方側のホルダ上部61と、下方側のホルダ下部62で構成されている。ホルダ上部61は、上記したホルダジョイントを構成する二つのべアリング21a、21bと、スペーサ22に挿入される。
【0042】
ホルダ下部62は、例えば
図3(B)に示すように側面視において下方側では徐々に幅が狭くなる台形状となっている。ホルダ下部62の台形状部分は、
図3(A)に示すように正面視において下方が開放されており、一対の保持部63a、63bと、保持部63a、63bの間に位置する保持溝64が形成されている。
【0043】
また、保持部63a、63bには、円柱体65a、65bがロウ付けによってそれぞれ同軸位置で固定されている。そして、円柱体65a、65bには、ピン軸50が挿通されるピン孔66a、66bが同軸位置に形成されている。したがって、スクライビングホイール40の側面41aとは保持部63aの円柱体65aと対向し、側面41bとは保持部63bの円柱体65bと対向することになり、側面41aと対向する円柱体65aの対向面が保持壁67aとなり、側面41bと対向する円柱体65bの対向面が保持壁67bとなる。なお、各図において円柱体65a、65bは、左右の斜め線によるハッチングで示している。
【0044】
また、この円柱体65a、65bは、スクライビングホイール40の側面41との摩擦を抑え回転精度の維持を図るために取り付けられており、焼結ダイヤモンドや超硬合金からなるものである。したがって、この円柱体65a、65bは必須なものではなく、スクライビングホイール40の材質等との関係で保持部63a、63bに設けられる。なお、この円柱体65a、65bの取付方法等は、具体的には特開2011−240540号公報に記載されている方法を採用することができる。また、円柱体65a、65bは、取付工程において下端側が切断されることになる。したがって、円柱体65a、65bは、各図において下端が切断された状態で示している。
【0045】
以上のような構成のホルダ60は、スクライビングホイール40がピン軸50方向に移動することによるスクライブラインの形成位置のずれを防止するため、スクライビングホイール40の側面41aを保持壁67aから常に引き離すために空気を排出することのできる通気孔70或いは側面41aを保持壁67aへ引き付けるために空気を吸引することのできる通気孔70を更に備えている。以下に通気孔70に関して説明する。
【0046】
まず、ホルダ上部61とホルダ下部62の内部には本体通気路71が形成されている。この本体通気路71は、
図3(C)に示すように、ホルダ上部61の内部中央を上下に伸びるとともに、ホルダ下部62の保持溝64の少し上まで達している。またホルダジョイントを構成するスペーサ22の位置と対応する位置に、本体通気路71へつながる分岐通気路71aが等間隔に4つ形成されている。
【0047】
また、ホルダ下部62には、右側面と左側面との間を貫通するネジ取付孔68が形成されている。また、
図3(B)に示すように、保持部63aの外側側面Sにはピン孔66aとネジ取付孔68との間を結ぶ側面通気路72が形彫り放電加工により形成されている。
【0048】
そして、この側面通気路72の途中には本体通気路71へとつながる連結孔73が形成されている。
【0049】
このように、ホルダ60には、ホルダ上部61の分岐通気路71aから始まり、分岐通気路71aから本体通気路71へ、本体通気路71から連結孔73へ、連結孔73から側面通気路72へと達する通気経路が形成されている。そして、側面通気路72とピン孔66aとが重なることで、ホルダ60は、通気経路とピン孔66aとがつながる構成となっている。そして、本実施形態において通気孔70は、ピン孔66aが兼ねる構成となっている。
【0050】
このようなホルダ60を用いて、スクライビングホイール40の貫通孔にピン軸50を通したものを一対の保持部63a、63bのピン孔66a、66bに挿通し、
図2に示すように、ネジ取付孔68と固定ネジ80a、80bを用いて止め金81a、81bをそれぞれ取り付けることで、ホルダユニット30は構成されている。
【0051】
なお、この止め金81a、81bは、
図4(C)に示すように、ピン軸50が落ちないようピン孔66a、66bをそれぞれ閉塞するためのものである。
【0052】
そして、更に、止め金81aは、ピン孔66aを閉塞した際に、保持部63aの外側側面に露出した側面通気路72の表面を塞ぐことになる。なお、側面通気路72の表面は、止め金81aではなく、樹脂や溶接等他の方法によって塞いでも構わないが、ピン孔66aを閉塞する止め金81aを利用することにより簡単に塞ぐことができる。
【0053】
ホルダユニット30は、止め金81aを取り付けることで通気経路が気密状態となり、ピン孔66aを兼ねる通気孔70から通気経路を介して空気の排出或いは吸引を行うことができるようになっている。
【0054】
そして、ホルダユニット30は、外部から分岐通気路71aへ空気を送り込むことでホルダ60の通気経路を介して通気孔70であるピン孔66aから空気を排出することができる。このピン孔66aから排出された空気は、スクライビングホイール40の側面41aをピン軸50に沿って押すことになるため、側面41aは保持壁67aから引き離され、側面41bは保持壁67b側へと押し付けられることになる。
【0055】
したがって、スクライビングホイール40の側面41bと保持壁67bとのクリアランスがゼロになり、スクライブラインを形成する際、ピン軸50に沿ったスクライビングホイール40の移動が規制されるため、スクライブ装置1はスクライブラインの形成位置が安定することになり、所望の位置へスクライブラインを形成することができる。なお、
図4(C)の破線矢印Eは、通気経路を利用して通気孔70から空気を排出した時の空気の流れを概念的に示したものである。
【0056】
また反対に、ホルダユニット30は、分岐通気路71aから空気を引き出すことで、ホルダ60の通気経路を介して通気孔70であるピン孔66aから空気を吸引することができる。このピン孔66aから空気を吸引することで、スクライビングホイール40の側面41aをピン軸50に沿って引き付けることになるため、側面41aは保持壁67aへと引き付けられることになる。
【0057】
したがって、スクライビングホイール40の側面41aと保持壁67aとのクリアランスがゼロになり、スクライブラインを形成する際、ピン軸50に沿ったスクライビングホイール40の移動が規制されるため、スクライブ装置1はスクライブラインの形成位置が安定することになり、所望の位置へスクライブラインを形成することができる。
【0058】
以上のように、通気孔70となるピン孔66aから空気を排出又は吸引するために、スクライブ装置1は、
図3(C)に示すように本体通気路71、側面通気路72等からなる通気経路を利用している。そのため、スクライブ装置1は、通気孔70へ空気を送ったり通気孔70から空気を吸い上げたりするための吸排気部23と、吸排気部23からスクライブヘッド20内へとつながる導管24と、を備えている。また、
図2に示すようにスペーサ22には連通孔25が設けられている。スクライブヘッド20内においてホルダ上部61は比較的気密性がよくスクライブヘッド20内に収まっている。したがって、ホルダ60の通気経路とスクライブヘッド20内とは、吸排気部23からスクライブヘッド20内へ空気を送る或いは吸排気部23から空気を吸うことにより連通孔25と分岐通気路71aとを介して空気が流れるようになっている。
【0059】
なお、通気孔70から排出された時の風圧があまり強過ぎると、かえってスクライビングホイール40の回転を妨げてしまう可能性もある。したがって、空気を排出或いは吸引する際、このような点等も考慮して吸排気部からの風量は決定される。本実施形態において、0.05MPa程度の風圧で空気を送ってみたところ、スクライブ装置1は良好なスクライブラインを形成することができた。
【0060】
また、吸排気部23には例えば圧縮空気を供給するコンプレッサーが用いられる。そのほか、真空ポンプ、吸気ファンや排気ファン等を用いることができる。なお、吸排気部223とスクライブヘッド20との間に圧力センサーや圧力調整用のレギュレーターを設けてもよい。また、本実施形態のような通気孔70を介してスクライビングホイール40の側面41aに空気を排出又は吸引するスクライブ装置1とは全く異なるが、ホルダやホルダ周りから空気を排出又は吸引するスクライブ装置として、例えば特開2000−247667号公報や特開2008−94635号公報に記載されているものが知られている。したがって、スクライブ装置1が備える吸排気部23や導管24の具体的構成としては、このような文献に記載されている構成を採用することができる。
【0061】
このように、本実施形態のホルダ60は、本体部を形成するホルダ下部62に形成された一対の保持部63a、63bを有しており、この保持部63aには、スクライビングホイール40を保持した際にスクライビングホイール40の側面41aと対向する位置に空気を排出又は吸引するための通気孔70が形成されている。したがって、ホルダユニット30は、スクライビングホイール40を保持した状態で通気孔70からスクライビングホイール40の側面41aへ空気を排出することによって、スクライビングホイール40の側面41bと保持壁67bとのクリアランスがゼロになり、スクライブラインを形成する際、ピン軸50に沿ったスクライビングホイール40の移動が規制されることになる。したがって、スクライブ装置1は、スクライブラインの形成位置が安定し、所望の位置へスクライブラインを形成することができる。
【0062】
また、反対にスクライビングホイール40を保持した状態で通気孔70からスクライビングホイール40の側面41aから空気を吸引することによって、ホルダユニット30は、スクライビングホイール40の側面41aと保持壁67aとのクリアランスがゼロになり、スクライブラインを形成する際、ピン軸50に沿ったスクライビングホイール40の移動が規制されることになる。したがって、スクライブ装置1は、スクライブラインの形成位置が安定し、所望の位置へスクライブラインを形成することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ピン孔66aを通気孔70として利用する構成となっている。したがって、スクライブ装置1は、ピン孔66a内に空気の流れが生じ、スクライブラインを形成した際に生じたカレットがピン軸50に付着することを防ぐことができる。また、スクライブ装置1は、ピン孔66aから空気の排出或いは吸引を行うことにより、スクライビングホイール40の側面41aに対して均等に力を加えることができる。
【0064】
また、スクライビングホイール40が斜めになった状態でスクライブラインを形成すると、クラックが基板の厚さ方向に対し斜め方向に形成される、所謂ソゲと呼ばれる現象が発生してしまう。そしてソゲが発生すると、脆性材料基板15の切断面も斜めになってしまうため、所望の位置で分断することができなくなってしまう。しかしながら、本実施形態のホルダユニット30は、ピン孔66aを通気孔70として利用する構成となっている。したがって、ホルダユニット30は、ピン孔66aから空気の排出或いは吸引を行うことにより、スクライビングホイール40の側面41aに対して均等に力を加えることができ、スクライビングホイール40を直立させることができる。そのため、スクライブ装置1は、ソゲが発生し難いスクライブラインを形成することができる。
【0065】
[実施形態2]
次に他の実施形態のホルダユニットについて図を用いて説明する。
図5は実施形態2のホルダユニットを構成するホルダ160のホルダ下部162の要部拡大側面図である。
【0066】
このホルダユニットは、実施形態1のホルダユニット30と略同様の構成となっている。したがって、ホルダユニット30と異なる点について説明する。また、実施形態1と同様の構成については一部同じ符号を用いて説明する。
【0067】
実施形態1のホルダユニット30は、ホルダ60に形成された通気孔70をピン孔66aが兼ねる構成となっている。一方、本実施形態のホルダユニットは、ホルダ160のホルダ下部162に形成されたピン孔166aと通気孔170は別々に設けられている。
【0068】
ピン孔166aは実施形態1のピン孔66aと同様に保持部163aにロウ付けされた円柱体165aに形成されている。一方、通気孔170は、ピン孔166aの周りに等間隔で三つ形成されている。
【0069】
そして、実施形態1の側面通気路72は、保持部63aの外側側面にピン孔66aとネジ取付孔68との間を結ぶように形成されているが、本実施形態の側面通気路172は、
図5に示すように保持部163aの外側側面にネジ取付孔168と三つの通気孔170とを結ぶように形彫り放電加工により形成されている。また、この側面通気路172の途中には本体通気路へとつながる連結孔173が形成されている。
【0070】
ホルダユニットは、ホルダ160のネジ取付孔168を利用して図示していない止め金を取り付ける。ホルダユニットは、止め金によりピン孔166aを閉塞するとともに、側面通気路172の表面を塞ぎ、側面通気路172で構成される通気路を介して三つの通気孔170から空気の排出或いは吸引を行うことができるようになる。
【0071】
したがって、ホルダユニットは、ホルダ160に形成された通気孔170から空気を排出することによって、スクライビングホイール40の側面41bと、保持部163aとは反対側の保持部の保持壁(図示せず)とのクリアランスがゼロになり、スクライブラインを形成する際、ピン軸50に沿ったスクライビングホイール40の移動が規制されることになる。そして、このホルダユニットを備えるスクライブ装置は、スクライブラインの形成位置が安定し、所望の位置へスクライブラインを形成することができる。
【0072】
また、反対にホルダユニットは、通気孔170から空気を吸引することによって、スクライビングホイール40の側面41aと、保持部163a側の保持壁とのクリアランスがゼロになり、スクライブラインを形成する際、ピン軸50に沿ったスクライビングホイール40の移動が規制されることになる。そして、このホルダユニットを備えるスクライブ装置は、スクライブラインの形成位置が安定し、所望の位置へスクライブラインを形成することができる。
【0073】
また、本実施形態のホルダユニットは、実施形態1の通気孔70とは異なり、ピン孔166aとは別に通気孔170をホルダ160に有する構成になっている。したがって、通気孔170を通過する空気の流れがピン軸50に影響を与え難くなる。また、ピン孔166aとは別の設計となるため、本実施形態のホルダユニットは、通気孔170の数や位置、形状を自由に形成することができる。したがって、このホルダユニットは、空気の排出或いは吸引により適した通気孔170を採用することができる。
【0074】
なお、上記の実施形態において、例えば、実施形態1の通気孔70は、一対の保持部63a、63bの内、保持部63aに形成されている。つまり、通気孔70は保持部63a側にだけ形成されているが、本発明は、通気孔70が保持部63a、63bの両方に形成される構成でも構わない。この場合、保持部63b側に側面通気路72と、この側面通気路72と本体通気路71とを連結孔73を介してつなぐことになる。
【0075】
このように保持部63a、63bの両側からスクライビングホイール40の側面41a、41bのそれぞれに保持部63a、63bの通気孔70から空気を排出或いは吸引することで、スクライビングホイール40の位置は、保持溝64の略中央に安定して位置することになる。また、スクライビングホイール40の側面41a、41bの両側で空気の流れが生じているので、スクライビングホイール40の表面やピン軸50の表面にカレットが付着し難くなる。
【0076】
また、例えば、実施形態1のホルダ60は、本体通気路71や側面通気路72等を形成し、通気孔70へつながる通気経路を備える構成となっている。しかしながら、本発明は、例えば、ホルダに形成された通気孔とスクライブ装置1の吸排気部23とを直接チューブ等の導管24でつなぐ等して、ホルダに通気経路を設けない構成としても構わない。