特許第6515525号(P6515525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6515525
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/10 20180101AFI20190513BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20190513BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20190513BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20190513BHJP
【FI】
   F21S45/10
   F21S41/25
   F21W102:155
   F21Y115:30
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-259041(P2014-259041)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-119250(P2016-119250A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】大和田 竜太郎
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−180886(JP,A)
【文献】 特開2003−317515(JP,A)
【文献】 特開2004−241349(JP,A)
【文献】 特開2010−170836(JP,A)
【文献】 独国実用新案第202014003078(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/10
F21S 41/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源と、
前記レーザー光源からのレーザー光を受けて、前記レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材からの光又は前記レーザー光が入射する入射面、前記入射面からの光を全反射する第1反射面及び前記第1反射面で全反射された反射光が出射する出射面を含むレンズ体と、を備え、
前記第1反射面は、前記レーザー光源の光軸近傍の範囲に前記レンズ体内部に入射した前記レーザー光の全反射を阻止する全反射阻止構造を含む灯具。
【請求項2】
前記レンズ体は、前記入射面と、前記第1反射面と、第2反射面と、凸レンズ面である前記出射面と、を含み、
前記第2反射面は、前記出射面の焦点近傍から後方に向かって延びた反射面として構成されており、
前記入射面、前記第1反射面、前記第2反射面及び前記出射面は、前記入射面から前記レンズ体内部に入射して前記第1反射面で全反射された前記波長変換部材からの光のうち前記第2反射面によって一部遮光された光及び前記第2反射面で全反射された光が、前記出射面から出射して前方に照射されることにより、上端縁に前記第2反射面の前端縁によって規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する光学系を構成している請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記レンズ体は、前記入射面と、前記第1反射面と、凸レンズ面である前記出射面と、を含み、
前記入射面、前記第1反射面及び前記出射面は、前記入射面から前記レンズ体内部に入射して前記第1反射面で全反射された前記波長変換部材からの光が、前記出射面から出射して前方に照射されることにより、ハイビーム用配光パターンを形成する光学系を構成している請求項1に記載の灯具。
【請求項4】
前記全反射阻止構造は、前記レンズ体内部に入射した前記レーザー光が前記レンズ体外部に出射するプリズム出射面を含むプリズムである請求項1から3のいずれか1項に記載の灯具。
【請求項5】
前記レーザー光源は、レーザーダイオードと、前記レーザーダイオードから出射したレーザー光を前記波長変換部材へ導く光ファイバーによって構成される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の灯具。
【請求項6】
前記全反射阻止構造から前記レンズ体外部に出射した前記レーザー光源からのレーザー光及び前記波長変換部材で波長変換された光のうち少なくとも一方の強度を検出する光検出手段と、
前記光検出手段の検出結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、前記レーザー光を放出しないように前記レーザー光源を制御する制御手段と、を備えた請求項5に記載の灯具。
【請求項7】
前記レーザー光源は、その光軸に直交する方向に長手方向を有するファーフィールドパターンを有し、
前記全反射阻止構造は、前記第1反射面内方向に長手方向を有する構造であり、前記第1反射面に照射された前記レーザー光源のファーフィールドパターンの長手方向に沿って前記全反射阻止構造の長手方向が配置されている請求項5又は6に記載の灯具。
【請求項8】
前記波長変換部材は、前記レンズ体の前記入射面とは離間して配置されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具に係り、特に、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材が欠損などした場合、レーザー光が外部に出射するのを防止するため、レーザー光の強度を検知する光検出器を設け、この光検出器の検出出力と基準値とを比較し、その比較結果に基づき、レーザー光が外部に出射するのを抑制するように構成された安全装置を備えた車両用前照灯が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−66069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術における安全装置は放物面鏡を用いたリフレクタ型の車両用前照灯に適用されるものであるため、これを、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具に適用し、波長変換部材が欠損などした場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、レーザー光源と、前記レーザー光源からのレーザー光を受けて、前記レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材からの光又は前記レーザー光が入射する入射面、前記入射面からの光を全反射する第1反射面及び前記第1反射面で全反射された反射光が出射する出射面を含むレンズ体と、を備え、前記第1反射面は、前記レンズ体内部に入射した前記レーザー光の全反射を阻止する全反射阻止構造を含む灯具であることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することができる。
【0008】
これは、波長変換部材が何らかの理由で定位置から脱落した場合、全反射阻止構造の作用により、レーザー光が第1反射面で全反射されるのが阻止されることによるものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記レンズ体は、前記入射面と、前記第1反射面と、第2反射面と、凸レンズ面である前記出射面と、を含み、前記第2反射面は、前記出射面の後側焦点近傍から後方に向かって延びた反射面として構成されており、前記入射面、前記第1反射面、前記第2反射面及び前記出射面は、前記入射面から前記レンズ体内部に入射して前記第1反射面で全反射された前記波長変換部材からの光のうち前記第2反射面によって一部遮光された光及び前記第2反射面で全反射された光が、前記出射面から出射して前方に照射されることにより、上端縁に前記第2反射面の前端縁によって規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する光学系を構成していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御してロービーム用配光パターンを形成するように構成されたレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記レンズ体は、前記入射面と、前記第1反射面と、凸レンズ面である前記出射面と、を含み、前記入射面、前記第1反射面及び前記出射面は、前記入射面から前記レンズ体内部に入射して前記第1反射面で全反射された前記波長変換部材からの光が、前記出射面から出射して前方に照射されることにより、ハイビーム用配光パターンを形成する光学系を構成していることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御してハイビーム用配光パターンを形成するように構成されたレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、前記全反射阻止構造は、前記レンズ体内部に入射した前記レーザー光が前記レンズ体外部に出射するプリズム出射面を含むプリズムであることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することができる。
【0015】
これは、波長変換部材が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レーザー光がプリズム出射面からレンズ体外部に出射するため、レーザー光が第1反射面で全反射されるのが阻止されることによるものである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記レーザー光源は、レーザーダイオードと、前記レーザーダイオードから出射したレーザー光を前記波長変換部材へ導く光ファイバーによって構成されることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記全反射阻止構造から前記レンズ体外部に出射した前記レーザー光源からのレーザー光及び前記波長変換部材で波長変換された光のうち少なくとも一方の強度を検出する光検出手段と、前記光検出手段の検出結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、前記レーザー光を放出しないように前記レーザー光源を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのをさらに抑制することができる。
【0020】
これは、制御手段が、光検出手段の検出結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、レーザー光を放出しないようにレーザー光源を制御することによるものである。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、前記全反射阻止構造は、前記レーザー光源のファーフィールドパターンの長手方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、波長変換部材が何らかの理由で定位置から脱落した場合、発光装置から直接放出されるレーザー光源からのレーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制できる。これとともに、全反射阻止構造に起因して配光パターンの形成に用いられる光束の利用率が減少するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材からの光を制御するレンズ体を備えた灯具において、波長変換部材が脱落した場合、レーザー光が出射面からレンズ体外部に出射するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)本発明の一実施形態である車両用灯具10の側面図、(b)部分拡大図である。
図2】車両用灯具10(レンズ体40)により、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるロービーム用配光パターンPの例である。
図3】(a)半導体レーザー素子22の正面図(概略図)、(b)半導体レーザー素子22の斜視図(概略図)である。
図4】半導体レーザー素子22の発光サイズ及びビーム拡散角の例である。
図5】集光レンズ24で集光された半導体レーザー素子22からのレーザー光が、波長変換部材26(楕円で囲まれた領域)を照射している様子を表す図である。
図6】(a)レンズ体40の上面図、(b)正面図、(c)斜視図、(d)側面図である。
図7】発光装置20(波長変換部材26)からの光がレンズ体40内部を進行する様子を描いた断面図(全反射阻止構造56省略)である。
図8】(a)波長変換部材26が定位置(図1(a)及び図1(b)参照)から脱落した発光装置20からの光(半導体レーザー素子22からのレーザー光)がレンズ体40内部を進行する様子を描いた断面図(全反射阻止構造56「無し」の場合)、(b)波長変換部材26が定位置(図1(a)及び図1(b)参照)から脱落した発光装置20からの光(半導体レーザー素子22からのレーザー光)がレンズ体40内部を進行する様子を描いた断面図(全反射阻止構造56「有り」の場合)である。
図9】レンズ体40の上面図である。
図10】レンズ体40の上面図である。
図11】(a)〜(c)比較例1、実施例1、実施例2のシミュレーション結果である。
図12】(a)〜(d)プリズム56の変形例である。
図13】変形例である車両用灯具10A(レンズ体40A)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1(a)は本発明の一実施形態である車両用灯具10の側面図(全反射阻止構造56省略)、図1(b)は部分拡大図である。図2は、車両用灯具10(レンズ体40)により、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるロービーム用配光パターンPの例である。
【0027】
本実施形態の車両用灯具10は、上端縁にカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP(図2参照)を形成する灯具ユニットで、図1(a)に示すように、発光装置20、レンズ体40等を備えている。
【0028】
発光装置20は、図1(b)に示すように、半導体レーザー素子22、集光レンズ24、波長変換部材26等を備えている。半導体レーザー素子22、集光レンズ24、波長変換部材26は、基準軸AX20(以下、発光装置20の光軸AX20とも称する)に沿ってこの順に配置されている。
【0029】
半導体レーザー素子22は、青色域(例えば、発光波長が450nm)のレーザー光を放出するレーザーダイオード等の半導体レーザー光源で、例えば、CANタイプのパッケージに実装、封止されている。
【0030】
図3(a)は半導体レーザー素子22の正面図(概略図)で、同図中の楕円はNFP(ニアフィールドパターン)を表している。図3(b)は半導体レーザー素子22の斜視図(概略図)で、同図中の楕円はFFP(ファーフィールドパターン)を表している。FFPはNFPと異なり、回折の影響で、接合面A(活性領域)の発光部分に対して略直角の方向に延びた楕円形状となる。
【0031】
半導体レーザー素子22は、FFPの長手方向が左右方向(車幅方向。図1(a)、図1(b)中、紙面に直交する方向)に一致する姿勢で、ホルダ等の保持部材28に保持されている。本実施形態では、図4に示すとおり、半導体レーザー素子22の活性領域Aの発光部分の大きさが幅15μm、高さ2μmであるものを用いた。なお、レーザー光の広がりは、活性領域Aに対して平行な方向において発光強度がピークに対して1/e^2(約13.5%)となる角度が14°、活性領域Aに対して垂直な方向において発光強度がピークに対して1/e^2(約13.5%)となる角度が44°のものを用いた。なお、FFPの長手方向が上下方向(車幅とは直角の方向。図1(a)、図1(b)中、上下方向)としても良い。
【0032】
集光レンズ24は、半導体レーザー素子22からのレーザー光を集光させるためのレンズで、半導体レーザー素子22と波長変換部材26との間に配置された状態で、ホルダ等の保持部材28に保持されている。
【0033】
波長変換部材26は、集光レンズ24によって集光された半導体レーザー素子22からのレーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材(例えば、発光サイズが0.4×0.8mmの矩形板状の蛍光体)である。
【0034】
図5は、集光レンズ24で集光された半導体レーザー素子22からのレーザー光が、波長変換部材26を照射している様子を表している。図中、楕円で囲まれた部分は、半導体レーザー素子22からのレーザー光のスポットパターンである。なお、図5中の各数値の単位はmmである。
【0035】
波長変換部材26は、半導体レーザー素子22から離間した位置(光源点F40近傍の位置。例えば、半導体レーザー素子22から5〜10mm離間した位置。以下、定位置と称する)に、その長手方向がFFPの短手方向に一致する(図5参照)姿勢で、ホルダ等の保持部材28に保持されている。
【0036】
集光レンズ24で集光された半導体レーザー素子22からのレーザー光を受けた波長変換部材26は、これを透過する青色域のレーザー光と青色域のレーザー光による発光(黄色光)との混色による白色光(疑似白色光)を放出する。
【0037】
発光装置20(波長変換部材26)は、図1(a)に示すように、レンズ体40の入射面42から離間した位置(例えば、レンズ体40の入射面42から0.1mm離間した位置)に、その光軸AX20が鉛直線Vに対して角度θ傾斜した姿勢で、ヒートシンク等の保持部材30に保持されている。角度θは、レンズ体40内部に入射する発光装置20(波長変換部材26)からの光がより多くなり、かつ、レンズ体40の第1反射面44で全反射される光がより多くなる角度(例えば、θ=34deg)とされている。
【0038】
図6(a)はレンズ体40の上面図、図6(b)は正面図、図6(c)は斜視図、図6(d)は側面図である。図7は、発光装置20(波長変換部材26)からの光がレンズ体40内部を進行する様子を描いた断面図(全反射阻止構造56省略)である。
【0039】
レンズ体40は、発光装置20(波長変換部材26)の前方に配置されるレンズ体であって、図6及び図7に示すように、後端部40AA及び前端部40BBを含み、後端部40AA(入射面42)からレンズ体40内部に入射した発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26が前端部40BB(出射面48)から出射して前方に照射されることにより、上端縁にカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP(図2参照)を形成する中実のレンズ体として構成されている。レンズ体40の材料は、ガラスであってもよいし、それ以外のアクリル、ポリカーボネイト等の透明樹脂であってもよい。
【0040】
レンズ体40の後端部40AAは、入射面42及び第1反射面44を含んでいる。レンズ体40の前端部40BBは、凸レンズ面である出射面48を含んでいる。レンズ体40の後端部40AAと前端部40BBとの間には、第2反射面46が配置されている。
【0041】
入射面42は、発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26(波長変換部材26が定位置に配置されている場合。図7参照)又は発光装置20から直接放出される半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22(波長変換部材26が定位置から脱落した場合。図8(b)参照)が透過してレンズ体40内部に入射する面で、レンズ体40内部に入射した発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26の指向性が狭くなるように、その面形状が構成されている。なお、本実施形態中、脱落とは、波長変換部材26の定位置からの脱落及び一部欠損を含む意味で用いる。入射面42は、レンズ体40内部に入射した発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26の指向性が狭くなるように、平面形状の面として構成されていてもよいし、発光装置20(波長変換部材26)に向かって凸又は凹の曲面形状の面として構成されていてもよい。
【0042】
第1反射面44は、レンズ体40内部に入射した発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26を全反射する面である。第1反射面44は、第1焦点F144が光源点F40近傍に設定され、かつ、第2焦点F244が出射面48の焦点F48近傍に設定された楕円形状(又はこれに類する自由曲面等)の反射面として構成されている。
【0043】
第2反射面46は、第1反射面44で全反射された発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26の少なくとも一部を全反射する反射面である。第2反射面46は、出射面48の焦点F48近傍から後方に向かって略水平方向に延びた平面形状の反射面として構成されている。もちろん、これに限らず、第2反射面46は、水平に対して傾斜した平面形状の反射面として構成されていてもよい。
【0044】
第2反射面46の前端縁46aは、ロービーム用配光パターンP中のカットオフラインCL1〜CL3を明瞭なものとする観点から、直線ではなく、前方に向かって凹の円弧形状とされている(図示せず)。すなわち、第2反射面46の前端縁46aは、上面視で、基準軸AX40上(レンズ体40の中央付近)が出射面48の焦点F48近傍を通り、かつ、基準軸AX40から左右に離れるに従って、車両前方に向かって延びる円弧形状とされている。一方、第2反射面46の前端縁46aは、正面視で、基準軸AX40上(レンズ体40の中央付近)において出射面48の焦点F48近傍を通る略水平線となる形状とされている。
【0045】
第2反射面46の前端縁46aは、左水平カットオフラインCL1に対応する辺、右水平カットオフラインCL2に対応する辺、及び、左水平カットオフラインCL1と右水平カットオフラインCL2とを接続する斜めカットオフラインCL3に対応する辺を含んでいる(いずれも図示せず)。左水平カットオフラインCL1に対応する辺は、鉛直方向に関し、右水平カットオフラインCL2に対応する辺より低い位置に配置されている(左側通行の場合)。もちろん、これに限らず、左水平カットオフラインCL1に対応する辺は、鉛直方向に関し、右水平カットオフラインCL2に対応する辺より高い位置に配置されていてもよい(右側通行の場合)。
【0046】
図7に示すように、入射面42からレンズ体40内部に入射して第1反射面44で全反射された発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26のうち、第2反射面46によって一部遮光された光は出射面48(主に基準軸AX40より下の面)から出射する。一方、第2反射面46で全反射された光は、出射面48(主に基準軸AX40より上の面)から出射して路面方向に向かう。すなわち、第2反射面46で全反射された光は、第2反射面46の前端縁46aを境に折り返されてカットオフラインCL1〜CL3以下に重畳される形となる。
【0047】
以上のように出射面48の上下面から出射する光により、上端縁に第2反射面46の前端縁46aによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンPが形成される。
【0048】
出射面48は、第2反射面46の前端縁46a近傍(例えば、前端縁46aの左右方向の中心近傍)に焦点F48が設定された、前方に向かって凸のレンズ面として構成されている。出射面48は、第1反射面44で全反射された発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26により、出射面48の焦点F48近傍に形成される光度分布(光源像)を前方に反転投影して、上端縁にカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンPを形成する。
【0049】
以上のように、入射面42、第1反射面44、第2反射面46及び出射面48は、入射面42からレンズ体40内部に入射して第1反射面44で全反射された発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26のうち第2反射面46によって一部遮光された光及び第2反射面46で全反射された光が、出射面48から出射して前方に照射されることにより、上端縁に第2反射面46の前端縁46aによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンPを形成する光学系を構成している。
【0050】
レンズ体40は、図6に示すように、全反射阻止構造56を含んでいる。
【0051】
波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、発光装置20から半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が直接放出されてレンズ体40内部に入射する(図8(b)参照)。
【0052】
全反射阻止構造56は、このレンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22の全反射を阻止する構造で、例えば、図6に示すプリズム56である。
【0053】
プリズム56は、図8(b)に示すように、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22がレンズ体40外部に出射するプリズム出射面56aを含んでいる。
【0054】
プリズム56は、第1反射面44のうち、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が到達する範囲(発光装置20の光軸AX20近傍の範囲)、例えば、図9中の範囲A1をカバーするように、半導体レーザー素子22のFFPの長手方向に沿って配置されている。図9中の範囲A1は、FFPの長手方向が左右方向(車幅方向。図9中左右方向)に一致する姿勢で半導体レーザー素子22が配置されている場合に、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が到達する範囲を表している。もちろん、これに限らず、プリズム56は、第1反射面44のうち、図10中の範囲A2をカバーするように、半導体レーザー素子22のFFPの長手方向に沿って配置されていてもよい。図10中の範囲A2は、FFPの長手方向が前後方向(車両前後方向。図10中上下方向)に一致する姿勢で半導体レーザー素子22が配置されている場合に、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が到達する範囲を表している。
【0055】
上記構成のプリズム56によれば、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が出射面48からレンズ体40外部に出射するのを抑制することができる。
【0056】
これは、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、図8(b)に示すように、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22がプリズム出射面56aからレンズ体40外部に出射するため、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が第1反射面44で全反射されるのが阻止されることによるものである。
【0057】
次に、比較例1、実施例1、2として、上記効果を確認するため、本発明者が所定のソフトウエアプログラムを用いて行ったシミュレーション結果について説明する。
【0058】
<比較例1>
半導体レーザー素子22(出力3W)、レンズ体40(プリズム56無し)及び発光装置20(波長変換部材26無し)の条件で、出射面48から出射する光(半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22)の出力及び配光パターンを確認した。
【0059】
その結果、出射面48から出射する光(半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22)の出力が2.75Wとなること及び仮想鉛直スクリーン上に図11(a)に示す配光パターンが形成されることを確認した。
【0060】
<実施例1>
半導体レーザー素子22(出力3W)、レンズ体40(図10に示す範囲A2に配置されたプリズム56有り)及び発光装置20(波長変換部材26無し)の条件で、出射面48から出射する光(半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22)の出力及び配光パターンを確認した。
【0061】
その結果、出射面48から出射する光(半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22)の出力が0.11Wとなること及び仮想鉛直スクリーン上に図11(b)に示す配光パターンが形成されることを確認した。
【0062】
<実施例2>
半導体レーザー素子22(出力3W)、レンズ体40(図9に示す範囲A1に配置されたプリズム56有り)及び発光装置20(波長変換部材26無し)の条件で、出射面48から出射する光(半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22)の出力及び配光パターンを確認した。
【0063】
その結果、出射面48から出射する光(半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22)の出力が0.02Wとなること及び仮想鉛直スクリーン上に図11(c)に示す配光パターンが形成されることを確認した。
【0064】
上記比較例1、実施例1、2から、プリズム56を半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が到達する範囲(例えば、範囲A1、A2)に配置することで、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が出射面48からレンズ体40外部に出射するのを抑制できることが分かる(波長変換部材26脱落時の青色域のレーザー光の放出量:1/100以下)。
【0065】
次に、比較例2、実施例3として、プリズム56がロービーム用配光パターンPに与える影響を確認するため、本発明者が所定のソフトウエアプログラムを用いて行ったシミュレーション結果について説明する。
【0066】
<比較例2>
半導体レーザー素子22(出力3W)、レンズ体40(プリズム56無し)及び発光装置20(波長変換部材26有り)の条件で、出射面48から出射する光(波長変換部材26からの光Ray26)の光束、ロービーム用配光パターン中の最大光度を確認した。
【0067】
その結果、出射面48から出射する光(波長変換部材26からの光Ray26)の光束は267.5lmとなること及び仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターン中の最大光度が14465cdとなることを確認した。また、光束利用率が61.8%であることを確認した(アウターレンズ(図示せず)を含む)。
【0068】
<実施例3>
半導体レーザー素子22(出力3W)、レンズ体40(図9に示す範囲A1に配置されたプリズム56有り)及び発光装置20(波長変換部材26有り)の条件で、出射面48から出射する光(波長変換部材26からの光Ray26)の光束、ロービーム用配光パターン中の最大光度を確認した。
【0069】
その結果、出射面48から出射する光(波長変換部材26からの光Ray26)の光束は254.8lmとなること及び仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターン中の最大光度が13150cdとなることを確認した。また、光束利用率が58.8%であることを確認した(アウターレンズ(図示せず)を含む)。
【0070】
上記比較例2、実施例3から、プリズム56を半導体レーザー素子22のFFPの長手方向に沿って配置することで、プリズム56に起因してロービーム用配光パターンの形成に用いられる光束の利用率が減少するのを抑制できることが分かる(光束利用率減少:3.0%)。
【0071】
プリズム出射面56aの面形状は、当該プリズム出射面56aから出射する光が拡散光となるように外側に向かって凹の曲面形状(図8(b)参照)であってもよいし、当該プリズム出射面56aから出射する光が略平行光となるように外側に向かって凸の曲面形状(図12(a)参照)であってもよいし、当該プリズム出射面56aから出射する光がある点に集光するように外側に向かって凸の曲面形状(より曲率半径が大きい曲面形状。図示せず)であってもよいし、その他の形状であってもよい。プリズム出射面56aの面形状は、例えば、後述の光検出手段58の特性に鑑みて選択することができる。
【0072】
プリズム56自体の形状は、図6図8(b)及び図12(a)に示す凸形状の単一プリズムに限らず、図12(b)に示すように凹凸を組み合わせた形状であってもよいし、図12(c)に示すように凹形状であってもよいし、図12(d)に示すように2つの凸形状を組み合わせた形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0073】
次に、半導体レーザー素子22を制御するシステム及び当該システムの動作例について説明する。
【0074】
半導体レーザー素子22を制御するシステムは、図8(b)に示すように、光検出手段58、制御手段60、光学フィルタ62等を備えている。
【0075】
光検出手段58は、プリズム出射面56aからレンズ体40外部に出射した半導体レーザー素子22からのレーザー光(青色域のレーザー光)及び波長変換部材26で波長変換された光(黄色域の光)のうち少なくとも一方の強度を検出する手段で、例えば、フォトダイオードである。光検出手段58は、プリズム出射面56aからレンズ体40外部に出射した半導体レーザー素子22からのレーザー光(青色域のレーザー光)及び波長変換部材26で波長変換された光(黄色域の光)のうち少なくとも一方が入射するように、プリズム出射面56a近傍に配置されている。
【0076】
制御手段60は、例えば、CPUで、所定プログラムを実行することで、光検出手段58の検出結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、レーザー光を放出しないように半導体レーザー素子22を制御する手段として機能する。
【0077】
光学フィルタ62は、黄色光を選択透過させるフィルタ又は青色光を選択透過させるフィルタで、プリズム56(プリズム出射面56a)と光検出手段58との間に配置されている。なお、光学フィルタ62は省略してもよい。
【0078】
次に、上記システムの動作例について説明する。
【0079】
以下の処理は、主に、制御手段60がプログラム格納部(図示せず)からRAM等に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0080】
<動作例1>
動作例1は、光学フィルタ62として黄色光を選択透過させるフィルタを用いた場合の動作例である。
【0081】
波長変換部材26が定位置に配置されている場合、光検出手段58は黄色光を受光し、受光量に応じた検出信号を制御手段60へ発する。一方、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、光検出手段58は黄色光を受光せず、検出信号を発しない(または、検出できなかった、との信号を発する)。ここで、予め定められたしきい値として、波長変換部材26が定位置に配置されている場合の光検出手段58の検出信号の値より小さく、波長変換部材26が脱落した場合の光検出手段58の検出信号の値よりは大きい値を設定しておき、制御手段60に格納しておく。
【0082】
したがって、制御手段60は、光検出手段58が検出した検出結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、波長変換部材26が定位置から脱落したか否かを判定することができる。そして、制御手段60は、光検出手段58が発した検出信号より予め定められたしきい値のほうが大きいとの比較結果を得て、波長変換部材26が定位置から脱落したと判定した場合、レーザー光を放出しないように半導体レーザー素子22への電流供給を停止するなどの制御を行う。
【0083】
これにより、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が出射面48からレンズ体40外部に出射するのをさらに抑制することができる。
【0084】
<動作例2>
動作例2は、光学フィルタ62として青色光を選択透過させるフィルタを用いた場合の動作例である。
【0085】
波長変換部材26が定位置に配置されている場合、光検出手段58は青色光を受光し、受光量に応じた検出信号を制御手段60へ発する。一方、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、光検出手段58はより強い青色光を受光し、受光量に応じた検出信号を発する。ここで、予め定められたしきい値として、波長変換部材26が定位置に配置されている場合の光検出手段58の検出信号の値より大きく、波長変換部材26が脱落した場合の光検出手段58の検出信号の値よりは小さい値を設定しておき、制御手段60に格納しておく。
【0086】
したがって、制御手段60は、光検出手段58が検出した検出結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、波長変換部材26が定位置から脱落したか否かを判定することができる。そして、制御手段60は、予め定められたしきい値より光検出手段58が発した検出信号のほうが大きいとの比較結果を得て、波長変換部材26が定位置から脱落したと判定した場合、レーザー光を放出しないように半導体レーザー素子22への電流供給を停止するなどの制御を行う。
【0087】
これにより、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が出射面48からレンズ体40外部に出射するのをさらに抑制することができる。
【0088】
<動作例3>
動作例3は、光学フィルタ62を省略した場合の動作例である。
【0089】
波長変換部材26が定位置に配置されている場合、光検出手段58は青色光と黄色光を含む可視光領域の光を受光し、受光量に応じた検出信号を制御手段60へ発する。一方、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、光検出手段58はより強い青色光を受光し、かつ黄色光を含む他の可視光領域の光を受光せず、全体の受光量に応じた検出信号を発する。ここで、予め定められたしきい値として、波長変換部材26が定位置に配置されている場合の光検出手段58の検出信号の値より大きい値および小さい値の2つの値を設定しておき、制御手段60に格納しておく。どの程度大きい値または小さい値とするかは、光検出手段58の各波長に対する検出感度などにより適宜設定すれば良い。
【0090】
したがって、制御手段60は、光検出手段58が検出した検出結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、波長変換部材26が定位置から脱落したか否かを判定することができる。そして、制御手段60は、予め定められた大きい値のしきい値と小さい値のしきい値の範囲から光検出手段58が発した検出信号が外れてしまったという比較結果を得て、波長変換部材26が定位置から脱落したと判定した場合、レーザー光を放出しないように半導体レーザー素子22への電流供給を停止するなどの制御を行う。
【0091】
これにより、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が出射面48からレンズ体40外部に出射するのをさらに抑制することができる。
【0092】
本実施形態によれば、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材26からの光を制御してロービーム用配光パターンPを形成するように構成されたレンズ体40及びこれを備えた車両用灯具10において、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が出射面48からレンズ体40外部に出射するのを抑制することができる。
【0093】
これは、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22がプリズム出射面56aからレンズ体40外部に出射する(図8(b)参照)ため、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が第1反射面44で全反射されるのが阻止されることによるものである。
【0094】
次に、変形例について説明する。
【0095】
上記実施形態では、全反射防止構造56がプリズム出射面56aを含むプリズム56である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、全反射防止構造56は、第1反射面44のうち、レンズ体40内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が到達する範囲(例えば、図9中の範囲A1又は図10中の範囲A2)に密着した状態で配置された、レンズ体40より屈折率が高い物質(例えば、レンズ体40がガラス製の場合、当該レンズ体40より屈折率が高いガラス)であってもよいし、微少凹凸(例えば、シボ加工又は複数の微少レンズカット)であってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、本発明を、上端縁にカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP(図2参照)を形成するように構成された車両用灯具10(レンズ体40)に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図13に示すように、本発明を、ハイビーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具10A(例えば、レンズ体40から第2反射面46を省略したレンズ体40A)やそれ以外のレンズ体に適用することもできる。
【0097】
図13中、入射面42A、第1反射面44A及び出射面48Aは、入射面42Aからレンズ体40A内部に入射して第1反射面44Aで全反射された発光装置20(波長変換部材26)からの光Ray26が、出射面48Aから出射して前方に照射されることにより、ハイビーム用配光パターン(図示せず)を形成する光学系を構成している。
【0098】
本変形例によれば、上記実施形態と同様、レーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する波長変換部材26からの光を制御してハイビーム用配光パターンを形成するように構成されたレンズ体40A及びこれを備えた車両用灯具10Aにおいて、波長変換部材26が何らかの理由で定位置から脱落した場合、レンズ体40A内部に入射した半導体レーザー素子22からのレーザー光Ray22が出射面48Aからレンズ体40A外部に出射するのを抑制することができる。
【0099】
なお、光源として、半導体レーザー素子からの光を集光レンズを介して波長変換部材に照射する例を挙げて説明したが、例えば半導体レーザー素子からの光を、光ファイバーを介して波長変換部材へ導く構造としても良い。光ファイバーを介する構造とする場合、半導体レーザー素子からの光のFFP形状が光ファイバー中を伝達される間に回転対称形となってしまう場合があるため、全反射阻止構造をこの形状に合わせて変更すれば良い。
【0100】
上記実施形態及び各変形例で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができる。
【0101】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0102】
10、10A…車両用灯具、20…発光装置、22…半導体レーザー素子、24…集光レンズ、26…波長変換部材、28…保持部材、30…保持部材、40、40A…レンズ体、40AA…後端部、40BB…前端部、42、42A…入射面、44、44A…第1反射面、46…第2反射面、46a…前端縁、48、48A…出射面、56…全反射阻止構造(プリズム)、58…光検出手段、60…制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13