(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6515619
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】枠体付窓ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20190513BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20190513BHJP
B60J 1/00 20060101ALN20190513BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/12
!B60J1/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-60624(P2015-60624)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-179590(P2016-179590A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】高山 充広
(72)【発明者】
【氏名】中田 修
【審査官】
中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−071283(JP,A)
【文献】
特開平05−008251(JP,A)
【文献】
特開2014−240185(JP,A)
【文献】
特開2010−269598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00−45/84
B29C33/00−33/76
B60J1/00−1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体付窓ガラスであって、該枠体部の少なくとも一辺には硬質樹脂製の補強部材を備え、前記枠体がガラス板の周縁に軟質樹脂の射出成形により形成されている枠体付窓ガラスの製造方法であり、
前記補強部材を、前記ガラス板の端部に沿うように、且つ、前記ガラス板と前記補強部材との間に射出成形時に前記枠体を形成するための樹脂が流動可能な隙間を備えるようにキャビ金型とコア金型からなる成形型内に配置する工程A、
前記成形型を閉じ成形型内に枠体の空隙を形成する工程B、
前記補強部材の側辺の少なくとも一箇所に、前記補強部材の配置位置を保つための突起物を差込む工程C、
前記空隙に前記枠体を形成するための樹脂を射出する工程D、
前記突起物を前記補強部材から抜き出す工程E、を備え、
前記コア金型には、前記補強部材の側辺に向かってスライドすることが可能なスライド部材が備え付けられており、前記スライド部材の前記補強部材と対向する面には、前記突起物が備え付けられていることを特徴とする枠体付窓ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記補強部材が長尺体であり、前記突起物を前記補強部材の長手方向の終端部又は始端部に差込むことを特徴とする請求項1に記載の枠体付窓ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記突起物が針状体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の枠体付窓ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記補強部材を凸部又は凹部を備えたものとし、前記成形型を凹部又は凸部を備えたものとし、補強部材側の凸部又は凹部と、成形型側の凹部又は凸部とを嵌合させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の枠体付窓ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材を備える枠体付窓ガラス、枠体付窓ガラスの成形型、枠体付窓ガラ
スの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントピラー近傍に取り付ける枠体付窓ガラスにおいて、枠体の中に補強板を
入れることが行われている(例えば、特許文献1)。しかし、枠体を射出成形する場合に、射出される樹脂の熱と流動によって補強板が動いてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−175419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、枠体を射出成形する場合に補強部材が動いてしまうことを抑制できる
枠体付窓ガラスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の枠体付窓ガラスの製造方法は、該枠体部の少なくとも一辺には硬質樹脂製の補強部材を備え
、前記枠体がガラス板の周縁に軟質樹脂の射出成形により形成されている枠体付窓ガラスの製造方法であり、
前記補強部材を、前記ガラス板の端部に沿うように、且つ、前記ガラス板と前記補強部材との間に射出成形時に
前記枠体を形成するための樹脂が流動可能な隙間を備えるように成形型内に配置する工程A、
前記成形型を閉じ成形型内に枠体の空隙を形成する工程B、
前記補強部材の少なくとも一箇所に、前記補強部材の配置位置を保つための突起物を差込む工程C
、
前記空隙に
前記枠体を形成するための樹脂を射出する工程D
、
前記突起物を前記補強部材から抜き出す工程E
、
前記枠体を取り出すため、成形型を開く工程F
、
を備えることを特徴とする。
【0006】
前記工程
C、Eを備えることで、補強部材の動きを抑制しやすくなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枠体を射出成形するときに補強部材が動いてしまうことを抑制できる枠体付窓ガラスの製造方法を提供でき、枠体付窓ガラスの生産効率の向上に奏功する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の方法で製造対象となる枠体付窓ガラスの要部を模式的に示した図である。
【
図2】枠体付窓ガラスの一例の断面の要部を模式的に示した図である。
【
図3】枠体付窓ガラスの一例の断面の要部を模式的に示した図である。
【
図4】本発明の枠体付窓ガラスの製造方法の工程Aを説明する図である。
【
図5】補強部材に凸部、金型に凹部を設けた構成にて、凸部と凹部とを
嵌合させたときの状態を説明する図である。
【
図6】本発明の枠体付窓ガラスの製造方法の工程Bを説明する図である。
【
図7】本発明の枠体付窓ガラスの製造方法の工程Cを説明する図である。
【
図8】本発明の枠体付窓ガラスの製造方法の工程Cに関し、突起物を補強部材に差し込む時の突起物の動作例を説明する図である。
【
図9】本発明の枠体付窓ガラスの製造方法の工程Cに関し、突起物を補強部材に差し込む時の突起物の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法で製造対象となる、枠体付窓ガラスを、図面を用いて説明する。
図1は、枠体付窓ガラスの要部を模式的に示した図である。
図2、
図3は、
図1中のa−a’断面におけるガラス周縁部を模式的に示したものである。
図2は、補強部材4が平板の場合、
図3は、補強部材4の長手方向に凹部の溝を有する構成の場合を示したものである。ガラス板2の周縁には、軟質樹脂製の枠体3が形成され、枠体3は、硬質樹脂製の補強部材4を備える構成となっている。枠体において、補強部材4が配置されている近傍は、剛性が向上したものとなる。本例では、補強部材4は、一辺に備えたものとなっているが、他の辺にも備えるものとしてもよい。
【0010】
前記ガラス板2としては、フラットな板ガラスの他に、曲げ加工された板ガラス、強化ガラス、曲げ加工をした強化ガラス、フラットな板ガラスあるいは曲げ加工した板ガラスを用いて作製される合わせガラス等が用いられる。ガラス板2の周縁部には、黒色セラミックスなどによる黒色系のベタ印刷が設けられていてもよい。
【0011】
枠体3は、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系等の熱可塑性エラストマー(樹脂)を金型内に射出成形して形成される(後段にて、詳細に説明する)。補強部材4には、前記枠体と融合する同系の樹脂で、その樹脂よりも硬度の高い樹脂が使用される。前記枠体と異材質を使用する場合は、プライマー等を補強部材4に塗布する必要がある。
以下に、枠体付ガラス1の製造例を、図面を用いて説明する。
図4〜
図7の説明は、
図3の補強部材4が、長手方向に凹部の溝を有する構成の場合に対応したものであるが、
図2に示したような補強部材4が平板の場合であっても、これに準拠して、操作することは可能である。また、
図4〜
図6は、
図1のa−a’断面に対応するもので、金型5、6については断面の要部を示している。
図4に示すように、コア金型6に補強部材4と、ガラス板2を配置する。これは前記工程Aに相当する。次に、
図6に示すように、キャビ金型5をコア金型6に合せ、成形型内に空隙8を形成する。これは、前記工程Bに相当する。この際、ガラス板2と、補強部材との間には空間あることが好ましい。
【0012】
また、
図5に図示したように、補強部材4の長手方向の側辺には、金型凹部6bと
嵌合する補強部材凸部4aを(好ましくは凸部4aを補強部材4に点在させる。)を設けてもよい。このように
嵌合する構成とすることで、補強部材4を配置位置にて保持しやすくなる。補強部材4のコア金型6への配置性と、凸部4aと凹部6bとの
嵌合しやすさのため、補強部材凸部4aの形状をドーム状の形状とし、金型凹部6bを前記ドーム形状に対応したクレータ状の形状とすることが好ましい。補強部材凸部4aの大きさは、
嵌合性を考慮し、その高さを0.5〜1mm、長さ5〜15mmとし、凸部4a間の間隔を、凸部の中心部間にて80〜120mmとすることが好ましい。
【0013】
補強部材4の長手方向の終端部(又は始端部)には(例えば、
図1のbの領域)、
図7(a)、(b)のように、突起物7を差込む。ここで始端部は、樹脂の射出を開始する側(川上側)、終端部は射出された樹脂が流動する方向(川下側)を意味している。
【0014】
図8、9に、突起物を補強部材4に差し込む時の突起物の動作例を示す。
図8、9は、
図1の
bの領域のような、長尺体の補強部材4のc−c’断面
の端部に、突起物7を差し込む動作を示すものである。
図8のようにコア金型6には、補強部材4に向かってスライドすることが可能なスライド部材9が備え付けられており、スライド部材9の
補強部材4と対向する面には、突起物7が備え付けられている。スライド部材9を
補強部材4の方向にスライドさせることで、
図9のように突起物7を
補強部材4
の端部の側辺部に差し込むことができる。空隙8に樹脂を射出成形するときは、突起物7が
補強部材4に差し込まれた状態を保持するようにスライド部材9を固定する。このような動作を行うことで、補強部材4は、その配置位置にて保持しやすくなり、さらには補強部材4の反りの発生を低減しやすくなる。
【0015】
突起物7は、補強部材4への差込み性を考慮すると、突起物7は、金属性の針状体のものが好ましく、工程Cにおいては、突起物7を前記補強部材4の表層から0.5〜1mm深さ差し込むことが好ましい。
【0016】
前記のように凸部4aと金型凹部6bとを
嵌合させる場合は、突起物7の差込みは、終端部のみに行ってもよい。終端部の方が、射出樹脂の熱による線膨張と流動により補強部材の反りが発生しやすいからで、突起物7の差込みは、終端部のみであっても補強部材の反り発生低減に効果を奏する。補強部材4の長手方向の終端部(又は始端部)ではなく、その側辺側にあってもよい。凸部4aと金型凹部6bとを
嵌合させることなく、枠体付窓ガラスを製造する場合は、突起物7の差込みは、前記補強部材7の長手方向の側辺に、例えば、80〜120mmの間隔で行うものとしてもよい。
【0017】
枠体3を形成するために、空隙8に樹脂を射出する。これは、前記工程Dに相当する。枠体3を形成する樹脂の熱により補強部材4は熱膨張し、また樹脂の流動により補強部材が動き、反りやすいものであったが、工程Cを備えることで、工程D時の補強部材4の動き、反りを抑制しやすくなる。
【符号の説明】
【0018】
1 枠体付窓ガラス
2 ガラス板
3 枠体
4 補強部材
4a 補強部材凸部
5 キャビ金型
6 コア金型
6b 金型凹部
7 突起物
8 空隙
9 スライド部材