特許第6515723号(P6515723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6515723
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】回転型アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20190513BHJP
【FI】
   H02N1/00
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-150553(P2015-150553)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-34789(P2017-34789A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−021189(JP,A)
【文献】 特開2013−092750(JP,A)
【文献】 特開2011−118194(JP,A)
【文献】 特開2010−139691(JP,A)
【文献】 特開2011−234530(JP,A)
【文献】 特開平10−215592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
H02N 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ本体と、
回路と、
を備え、
前記アクチュエータ本体は、
可動電極と、
前記可動電極の回転軸となる軸部材と、
平面視で前記可動電極に対向している固定電極と、
平面視で前記可動電極に対向している検出用電極と、
を備え、
前記回路は、
前記固定電極に駆動信号を出力する信号出力部と、
前記駆動信号から取り出された調節用信号の位相を制御する位相制御部と、
前記位相制御部からの電気信号と前記検出用電極からの電気信号とを乗算する第1乗算器と、
を備え、
前記位相制御部は、前記第1乗算器から出力された電気信号の時間積分に基づいて、前記調節用信号の位相を制御する回転型アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転型アクチュエータにおいて、
前記回路は、
前記第1乗算器から出力された電気信号の時間積分と調節用基準電位とを比較し、前記位相制御部に電気信号を出力する第1コンパレータを備え、
前記調節用基準電位は可変である回転型アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転型アクチュエータにおいて、
前記回路は、
前記位相制御部からの電気信号が高レベル信号から低レベル信号に遷移するタイミングで出力信号を高レベル信号及び低レベル信号の一方から他方に切り替える分周器と、
前記分周器からの電気信号と前記検出用電極からの電気信号とを乗算する第2乗算器と、
前記分周器からの電気信号の反転信号と前記検出用電極からの電気信号とを乗算する第3乗算器と、
前記第2乗算器からの電気信号の時間積分と前記第3乗算器からの電気信号の時間積分とを比較する第2コンパレータと、
を備える回転型アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転型アクチュエータにおいて、
前記回路は、
前記位相制御部からの電気信号が低レベル信号から高レベル信号に遷移するタイミングで出力信号を高レベル信号及び低レベル信号の一方から他方に切り替える分周器と、
前記分周器からの電気信号に基づいて、前記検出用電極からの電気信号を処理する第1S/H(サンプルアンドホールド)回路と、
前記分周器からの電気信号の反転信号に基づいて、前記検出用電極からの電気信号を処理する第2S/H回路と、
前記第1S/H回路からの電気信号の時間積分と前記第2S/H回路からの電気信号の時間積分とを比較する第2コンパレータと、
を備える回転型アクチュエータ。
【請求項5】
アクチュエータ本体と、
回路と、
を備え、
前記アクチュエータ本体は、
可動電極と、
前記可動電極の回転軸となる軸部材と、
平面視で前記可動電極に対向している固定電極と、
平面視で前記可動電極に対向している検出用電極と、
を備え、
前記回路は、
駆動信号を出力する信号出力部と、
前記駆動信号の位相を制御し、前記固定電極に電気信号を出力する位相制御部と、
前記駆動信号から取り出された調節用信号と前記検出用電極からの電気信号とを乗算する第1乗算器と、
を備え、
前記位相制御部は、前記第1乗算器からの電気信号の時間積分に基づいて、前記駆動信号の位相を制御する回転型アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回転型アクチュエータが開発されている。回転型アクチュエータは、例えば光スキャナーに用いられる。特許文献1〜3には、回転型アクチュエータの一例が記載されている。この例において、回転型アクチュエータは、可動電極、固定電極、及び検出用電極を備える。可動電極は、可動電極と固定電極の間の電圧によって回転する。可動電極の回転は、可動電極と検出用電極の間の静電容量によって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−208251号公報
【特許文献2】特開2014−21188号公報
【特許文献3】特開2014−21189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、回転型アクチュエータでは、固定電極に入力される電気信号によって可動電極が回転する。そして可動電極の回転は、可動電極と検出用電極の間の静電容量、すなわち検出用電極から出力される電気信号によって検出される。回転型アクチュエータの応用においては、検出用電極から出力される電気信号に同期した電気信号を生成することがある。この場合、検出用電極から出力される電気信号の位相と検出用電極から出力される電気信号に同期した電気信号の位相とのずれを、固定電極に入力される電気信号の条件(例えば、周波数)によらず一定にすることが重要となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転型アクチュエータにおいて検出用電極から出力される電気信号に同期した電気信号を生成する場合、検出用電極から出力される電気信号の位相と検出用電極から出力される電気信号に同期した電気信号の位相とのずれを、固定電極に入力される電気信号の条件によらず一定にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転型アクチュエータは、アクチュエータ本体及び回路を備える。アクチュエータ本体は、可動電極、軸部材、固定電極、及び検出用電極を備える。軸部材は、可動電極の回転軸となる。固定電極は、平面視で可動電極に対向している。検出用電極は、平面視で可動電極に対向している。回路は、信号出力部、位相制御部、及び第1乗算器を備える。信号出力部は、固定電極に駆動電極を出力する。位相制御部は、駆動信号から取り出された調節用信号の位相を制御する。第1乗算器は、位相制御部からの電気信号と検出用電極からの電気信号とを乗算する。位相制御部は、第1乗算器から出力された電気信号の時間積分に基づいて、調節用信号の位相を制御する。
【0007】
本発明に係る回転型アクチュエータは、上記したアクチュエータ本体を備え、さらに回路を備える。回路は、信号出力部、位相制御部、及び第1乗算器を備える。信号出力部は、駆動信号を出力する。位相制御部は、駆動信号の位相を制御し、固定電極に電気信号を出力する。第1乗算器は、駆動信号から取り出された調節用信号と検出用電極からの電気信号とを乗算する。位相制御部は、第1乗算器からの電気信号の時間積分に基づいて、駆動信号の位相を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転型アクチュエータにおいて検出用電極から出力される電気信号に同期した電気信号を生成する場合、検出用電極から出力される電気信号の位相と検出用電極から出力される電気信号に同期した電気信号の位相とのずれを、固定電極に入力される電気信号の条件によらず一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る回転型アクチュエータ(図2)に用いられるアクチュエータ本体の構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
図3】(a)は、電圧V1と電圧V2を説明するための図であり、(b)は、電圧V3を説明するための図である。
図4】(a)は、電圧V1と電圧V4の関係を説明するための図であり、(b)は、電圧V5と電圧V4の関係を説明するための図である。
図5図2の変形例を示す図である。
図6図5に示したアナログ乗算器の構成の詳細を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
図8】(a)は、電圧V4と電圧V82の関係を示す図であり、(b)は、電圧V4と電圧V84の関係を示す図である。
図9】第3の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
図10】(a)は、電圧V4と電圧V86の関係を示す図であり、(b)は、電圧V4と電圧V88の関係を示す図である。
図11】第4の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る回転型アクチュエータ(図2)に用いられるアクチュエータ本体100の構成を示す図である。アクチュエータ本体100は、枠体110、可動電極120、保持部材130、固定電極140、及び検出用電極150を有している。本図に示す例では、アクチュエータ本体100の外部に制御部300が設けられている。保持部材130(軸部材)は、可動電極120を枠体110に取り付けており、かつ可動電極120の回転軸となる。固定電極140は、平面視で可動電極120に対向している。検出用電極150は、固定電極140と並んでおり、可動電極120のうち固定電極140と対向している辺に対向している。
【0012】
可動電極120の平面形状は矩形である。そして固定電極140は、平面視で可動電極120を挟むように2つ設けられている。可動電極120のうち固定電極140と対向する辺(図1においてX方向に伸びている辺)は、櫛歯形状となっている。枠体110は、可動電極120の4辺のうち固定電極140と対向していない2つの辺(図1においてY方向に伸びている辺)それぞれに対向している。保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している2辺それぞれに対して設けられている。詳細には、保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している辺の中心に接続している。そして2つの保持部材130を結ぶ線が、可動電極120の回転軸となっている。本実施形態では、枠体110、可動電極120、及び保持部材130は一体的に形成されている。
【0013】
固定電極140のうち可動電極120と対向する辺は、櫛歯形状となっており、可動電極120の櫛歯部分とかみ合っている。このため、固定電極140と可動電極120は、互いに対向する部分の面積が大きくなり、その結果、可動電極120の駆動力は大きくなる。
【0014】
アクチュエータ本体100の可動電極120は、例えば上面が鏡面になっている。この鏡面は、例えば可動電極120の上面に金属膜(例えばAl膜)を形成することにより、形成されている。そして可動電極120の角度を変えることにより、可動電極120に入射してきた光の反射角を変える。アクチュエータ本体100は、例えば光スキャナーやモーションセンサに用いられる。
【0015】
検出用電極150は、固定電極140と並んでおり、可動電極120のうち固定電極140と対向している辺に対向している。本図に示す例では、固定電極140は、可動電極120の辺の中心部分に対向している。そして検出用電極150は、固定電極140を挟むように設けられており、可動電極120の辺の両端それぞれに対向している。固定電極140は、検出用電極150よりも大きい。本図に示す例では、検出用電極150は、可動電極120のうち対向する2辺に設けられている。すなわち検出用電極150は、保持部材130を基準として線対称となるように設けられている。ただし、検出用電極150は、可動電極120の一辺にのみ設けられていても良い。
【0016】
可動電極120が回転すると、可動電極120と検出用電極150の間に生じる静電容量が変化する。このため、制御部300は、この静電容量の大きさに基づいて可動電極120の回転角度を算出することができる。すなわち制御部300は、可動電極120と検出用電極150の間の静電容量を検出し、検出した静電容量の大きさに基づいて直流電圧を制御する。これにより、制御部300は、可動電極120の回転角度を所望の値に制御することができる。
【0017】
図2は、本実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。図1は、図2に示したアクチュエータ本体100の構成を示す図に相当する。回転型アクチュエータは、アクチュエータ本体100及び回路200を備える。本図に示す例において、制御部300は、コンピュータ、より具体的には、例えば、デスクトップコンピュータ又はラップトップコンピュータである。そして制御部300は、回転型アクチュエータ(アクチュエータ本体100及び回路200)の外側に設けられている。回路200は、電圧変換部210、信号増幅部220、位相制御部230、XORゲート240、ローパスフィルタ250を備える。制御部300は、クロック生成部310を備える。
【0018】
クロック生成部310は、クロックを生成する。クロック生成部310は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のクロックである。クロック生成部310は、制御部300の外部にクロックを出力する。本図に示す例において、クロックは、一定の周波数の矩形波である。
【0019】
クロック生成部310からのクロックは、電圧変換部210(信号出力部)に入力される。電圧変換部210は、クロック生成部310からのクロックの電圧を所定の電圧に変換する。この場合、電圧変換部210は、クロック生成部310からのクロックの周波数及び位相を変化させない。このようにして電圧変換部210は、駆動信号を生成する。
【0020】
電圧変換部210からの駆動信号は、信号増幅部220を介して固定電極140に出力される。詳細には、信号増幅部220は、キャパシタC22、抵抗R22,R24,R26、及び増幅器A1を備える。キャパシタC22、抵抗R22、抵抗R24、及び抵抗R26は、電圧変換部210からグラウンドに向かう方向にこの順で直列に接続している。キャパシタC22は、電圧変換部210からの駆動信号の直流成分を除去するために設けられている。抵抗R22,R24,R26は、電圧変換部210からの駆動信号の電圧を分圧するために設けられている。本図に示す例において、増幅器A1は、抵抗R22と抵抗R24の間から抵抗R24と抵抗R26の間までの任意の位置に電気的に接続可能である。これにより、増幅器A1の入力電圧は、抵抗R22と抵抗R24の間の電圧から抵抗R24と抵抗R26の間の電圧までに可変となる。そして増幅器A1によって増幅された駆動信号がアクチュエータ本体100の固定電極140に入力される。
【0021】
アクチュエータ本体100の可動電極120は、固定電極140に印加された電圧によって振動する。このため、可動電極120の振動の周期は、固定電極140に印加された電圧の周期(すなわち、電圧変換部210から出力された駆動信号の周期)と同じになる。上記したように、固定電極140が振動すると、固定電極140と検出用電極150の間の静電容量が変化する。静電容量の変化(振動)の周期は、固定電極140に印加された電圧の周期(すなわち、電圧変換部210から出力された駆動信号の周期)と同じになる。そして静電容量の変化(振動)は、検出用電極150の電圧によって検出される。本図に示す例では、検出用電極150の電圧が増幅器A2によって増幅される。この場合、増幅器A2から出力される電気信号の周期は、電圧変換部210から出力された駆動信号の周期と同じになる。
【0022】
本発明者が検討したところ、増幅器A2から出力された電気信号が極大値又は極小値をとるタイミングと電圧変換部210から出力された電気信号が低レベル信号及び高レベル信号の一方から他方に遷移するタイミングとの差は、電圧変換部210からの駆動信号の周期によって変化する場合があることが明らかとなった。詳細を後述するように、回路200は、位相制御部230から矩形波の電気信号を出力する。そして本図に示す例では、位相制御部230から出力される電気信号が低レベル信号及び高レベル信号の一方から他方に遷移するタイミングと電圧変換部210から出力される電気信号が極大値又は極小値をとるタイミングとの差を、電圧変換部210からの駆動信号の周期によらず、一定にすることができる。
【0023】
位相制御部230は、電圧変換部210と信号増幅部220の間に電気的に接続している。これにより、駆動信号(電圧変換部210から出力された電気信号)から取り出された調節用信号が位相制御部230に入力される。位相制御部230は、調節用信号の位相を制御する。詳細を後述するように、位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号に基づいて、調節用信号の位相を制御する。なお、位相制御部230から出力された電気信号は、歪んでいることがある。このため、本図に示す例では、後述するように、コンパレータU1によってこの歪みを取り除いている。
【0024】
位相制御部230からの電気信号は、コンパレータU1を介してXORゲート240(第1乗算器)に入力される。検出用電極150(増幅器A2)からの電気信号は、コンパレータU2を介してXORゲート240に入力される。これにより、位相制御部230からの電気信号と検出用電極150からの電気信号がXORゲート240で乗算される。具体的には、XORゲート240は、位相制御部230からの電気信号レベルと検出用電極150からの電気信号レベルとが同じ場合には低レベル信号を出力し、位相制御部230からの電気信号レベルと検出用電極150からの電気信号レベルとが互いに異なる場合には高レベル信号を出力する。
【0025】
コンパレータU1は、位相制御部230からの電気信号の電位と基準電位(例えば、グラウンド電位)とを比較し、その比較結果に基づいて高レベル信号又は低レベル信号を出力する。例えば、コンパレータU1は、位相制御部230からの電気信号の電位がグラウンド電位よりも高い場合には高レベル信号を出力し、位相制御部230からの電気信号の電位がグラウンド電位よりも低い場合には低レベル信号を出力する。これにより、上記したように位相制御部230から出力される電気信号が歪んでいたとしても、この歪みを取り除くことができる。
【0026】
コンパレータU2は、増幅器A2からの電気信号の電位と基準電位(例えば、グラウンド電位)とを比較し、その比較結果に基づいて高レベル信号又は低レベル信号を出力する。例えば、コンパレータU2は、増幅器A2からの電気信号の電位がグラウンド電位よりも高い場合には高レベル信号を出力し、増幅器A2時間積分からの電気信号の電位がグラウンド電位よりも低い場合には低レベル信号を出力する。これにより、増幅器A2からの電気信号(増幅器A2から出力される電気信号は、曲線状の波となっている。)を矩形波に変換することができる。
【0027】
なお、本図に示す例において、コンパレータU1が出力する矩形波の振幅とコンパレータU2が出力する矩形波の振幅は、互いに等しい。
【0028】
XORゲート240からの電気信号は、ローパスフィルタ250を通過する。ローパスフィルタ250は、積分器である。これにより、ローパスフィルタ250は、XORゲート240からの電気信号の時間積分を出力する。
【0029】
ローパスフィルタ250からの電気信号は、コンパレータU3(コンパレータU3の詳細は後述する。)を介して、位相制御部230に入力される。詳細を後述するように、位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号に基づいて、調節用信号(電圧変換部210からの駆動信号から取り出された電気信号)の位相を制御する。
【0030】
図3(a)は、電圧V1と電圧V2を説明するための図であり、図3(b)は、電圧V3を説明するための図である。図2に示したように、電圧V1はコンパレータU1とXORゲート240の間の電圧であり、電圧V2はコンパレータU2とXORゲート240の間の電圧であり、電圧V3はXORゲート240とローパスフィルタ250の間の電圧である。図3に示すように、電圧V3は、電圧V1の電気信号のレベルと電圧V2の電気信号のレベルとが同じ場合には低レベル信号となり、電圧V1の電気信号のレベルと電圧V2の電気信号のレベルとが互いに異なる場合には高レベル信号となる。
【0031】
図2及び図3を用いて、位相制御部230の機能について説明する。上記したように、位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号に基づいて、調節用信号(電圧変換部210からの駆動信号から取り出された信号)の位相を制御する。具体的には、位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号がある一定の値となるように、調節用信号の位相を制御する。本図に示す例では、位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号がほぼゼロとなるように、調節用信号の位相を制御する。
【0032】
ローパスフィルタ250からの電気信号がある一定の値となる場合とは、位相制御部230からの電気信号(電圧V1)の位相と検出用電極150からの電気信号(電圧V2)の位相との差が固定されている場合である。言い換えると、位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号が所望の値(例えば、ゼロ)となるように、調節用信号の位相を制御している。本図に示す例では、位相制御部230からの電気信号(電圧V1)の位相と検出用電極150からの電気信号(電圧V2)の位相との差は、電圧V2の信号が高レベル信号である場合の電圧V3の高レベル信号の時間積分(+A)、電圧V2の信号が高レベル信号である場合の電圧V3の低レベル信号の時間積分(−A)、電圧V2の信号が低レベル信号である場合の電圧V3の高レベル信号の時間積分(+B)、及び電圧V2の信号が低レベル信号である場合の電圧V3の低レベル信号の時間積分(−B)の和がゼロとなるように固定されている。
【0033】
なお、ローパスフィルタ250からの電気信号がゼロとなるように位相制御部230が調節用信号の位相を制御したとしても、ローパスフィルタ250からの電気信号はゼロからずれる場合がある。本図に示す例では、コンパレータU3(第1コンパレータ)を用いることにより、ローパスフィルタ250から位相制御部230に入力される電気信号をほぼゼロにする。
【0034】
詳細には、コンパレータU3の第1入力端子(反転入力端子及び非反転入力端子の一方)には、ローパスフィルタ250が電気的に接続している。コンパレータU3の第2入力端子(反転入力端子及び非反転入力端子の他方)には、調節回路260、抵抗R52,R54,R56及びキャパシタC52,C54が電気的に接続している。
【0035】
調節回路260は、可変抵抗VR、抵抗R62,R64、及びキャパシタC62を備える。可変抵抗VRの両端には、所定の電圧が印加されている。抵抗R62及びキャパシタC62は、ローパスフィルタを形成している。抵抗R62には、可変抵抗VRから電圧が印加される。キャパシタC62は接地している。抵抗R62とキャパシタC62の間には抵抗R64が電気的に接続している。これにより、抵抗R62から抵抗R64に向かう方向に電流が流れる。そしてこの電流は調節回路260から出力される。この場合、可変抵抗VRの抵抗値を調節することで、抵抗R62に印加される電圧を調節することができる。言い換えると、可変抵抗VRの抵抗値を調節することで、調節回路260から出力される電流の値を調節することができる。
【0036】
コンパレータU3の上記した第2入力端子には、調節用基準電位を与えることができる。具体的には、抵抗R52及びキャパシタC52は、ローパスフィルタを形成している。抵抗R52はコンパレータU3の上記した第2入力端子に電気的に接続している。キャパシタC52は接地している。抵抗R54の一端は抵抗R52とキャパシタC52の間に電気的に接続し、抵抗R54の他端は接地している。調節回路260からの電流は、抵抗R52に流れる。これにより、コンパレータU3の上記した第2入力端子に調節用基準電位を与えることができる。上記したように、調節回路260からの電流の値は、可変抵抗VRの抵抗値を調節することで、調節することができる。このため、上記した調節用基準電位は、可変抵抗VRの抵抗値を調節することで、調節することができる。
【0037】
本図に示す例において、コンパレータU3からの出力信号は、抵抗R56及びキャパシタC54を介して、コンパレータU3の上記した第2入力端子に帰還している。この場合、コンパレータU3からの出力信号は、抵抗R64とキャパシタC62によるローパスフィルタによって遮断され、かつ抵抗R52とキャパシタC52によるローパスフィルタによって遮断される。このため、コンパレータU3からの出力信号が調節回路260及び抵抗R52に流れることが抑制されている。さらに、調節回路260からの電流は、キャパシタC54によって遮断される。このため、調節回路260からの電流がコンパレータU3の出力端子に流れることが抑制される。
【0038】
本図に示す例では、ローパスフィルタ250からの電気信号がゼロからずれていたとしても、コンパレータU3の上記した調節用基準電位を調節することにより、ローパスフィルタ250から位相制御部230に入力される電気信号(すなわち、コンパレータU3から位相制御部230に入力される電気信号)をほぼゼロにすることができる。
【0039】
図4(a)は、電圧V1と電圧V4の関係を説明するための図であり、図4(b)は、電圧V5と電圧V4の関係を説明するための図である。図2に示したように、電圧V1はコンパレータU1とXORゲート240の間の電圧であり、電圧V4は増幅器A2とコンパレータU2の間の電圧であり、電圧V5は第1分周器272から出力された電気信号の電圧である。
【0040】
図2及び図4を用いて、第1分周器272及び第2分周器274について説明する。位相制御部230からの電気信号は、コンパレータU1を介して第1分周器272及び第2分周器274に入力される。第1分周器272及び第2分周器274は、回路200の外部(本図に示す例では、制御部300)に電気信号を出力する。
【0041】
第1分周器272及び第2分周器274は、いずれも、コンパレータU1からの電気信号の周波数を1/2に分周するために設けられている。より詳細には、コンパレータU1からの電気信号(電圧V1)が高レベル信号から低レベル信号に遷移するタイミングにおいて、第1分周器272は、低レベル信号を保持しているときは高レベル信号を出力し、高レベル信号を保持しているときは低レベル信号を出力する(例えば、図4(b))。これに対して、コンパレータU1からの電気信号(電圧V1)が低レベル信号から高レベル信号に遷移するタイミングにおいて、第2分周器274は、低レベル信号を保持しているときは高レベル信号を出力し、高レベル信号を保持しているときは低レベル信号を出力する。なお、第1分周器272及び第2分周器274は、例えば、フリップフロップを用いて形成されている。
【0042】
図5は、図2の変形例を示す図である。本図に示す例では、XORゲート240(図2)がアナログ乗算器242(第1乗算器)に置き換わっている。さらに、検出用電極150(増幅器A2)からの電気信号は、コンパレータU2(図2)を介さず、直接、アナログ乗算器242に入力されている。本図に示す例においても、位相制御部230からの電気信号の位相と検出用電極150からの電気信号の位相との差を固定することができる。
【0043】
図6は、図5に示したアナログ乗算器242の構成の詳細を示す図である。本図に示す例において、アナログ乗算器242は、コンパレータU1(位相制御部230)からの電気信号と増幅器A2(検出用電極150)からの電気信号との積を算出し、その積をローパスフィルタ250に出力する。
【0044】
詳細には、アナログ乗算器242は、オペアンプO42及びスイッチS42,S44,S46,S48を備える。スイッチS42,S44,S46,S48はいずれも、高レベル信号が入力された場合に開き、低レベル信号が入力された場合に閉じる。スイッチS42,S46はオペアンプO42の反転入力端子(−)に電気的に接続しており、スイッチS44,S48はオペアンプO42の非反転入力端子(+)に電気的に接続している。本図に示す例では、スイッチS42,S48には、互いに直列に接続したNOTゲートN42,N44を介してコンパレータU1(位相制御部230)が電気的に接続し、スイッチS44,S46には、NOTゲートN46を介して増幅器A2(検出用電極150)が電気的に接続している。本図に示す例では、コンパレータU1(位相制御部230)からアナログ乗算器242に高レベル信号が入力されている。この場合、スイッチS42,S48は開き、スイッチS44,S46は閉じる。
【0045】
本図に示す例において、オペアンプO42の反転入力端子(−)には、抵抗R41,R43及びキャパシタC42が電気的に接続している。抵抗R41、スイッチS42、及びキャパシタC42は、増幅器A2(検出用電極150)からグラウンドに向かって、この順で直列に接続している。これにより、スイッチS42が閉じている場合、抵抗R41及びキャパシタC42は、ローパスフィルタを形成する。さらに、スイッチS42とキャパシタC42の間からグラウンドに向かって、スイッチS46及び抵抗R43がこの順で直列に接続している。
【0046】
同様にして、オペアンプO42の非反転入力端子(+)には抵抗R42,R44及びキャパシタC44が電気的に接続している。抵抗R42、スイッチS44、及びキャパシタC44は、増幅器A2(検出用電極150)からグラウンドに向かって、この順で直列に接続している。これにより、スイッチS44が閉じている場合、抵抗R42及びキャパシタC44は、ローパスフィルタを形成する。さらに、スイッチS44とキャパシタC44の間からグラウンドに向かって、スイッチS48及び抵抗R44がこの順で直列に接続している。
【0047】
オペアンプO42の反転入力端子(−)には、抵抗R45が電気的に接続している。抵抗R45は、オペアンプO42の反転入力端子(−)をスイッチS42とキャパシタC42の間に電気的に接続している。オペアンプO42の出力端子とオペアンプO42の反転入力端子(−)の間には、抵抗R47及びキャパシタC46が並列に設けられている。オペアンプO42の非反転入力端子(+)に電気信号が入力される場合、オペアンプO42、抵抗R45,47、及びキャパシタC46は、積分回路(ローパスフィルタ)となる。
【0048】
オペアンプO42の非反転入力端子(+)には、抵抗R46,R48及びキャパシタC48が電気的に接続している。抵抗R46及びキャパシタC48は、スイッチS44とキャパシタC44の間からグラウンドに向かう方向において、この順で直列に接続している。これにより、スイッチS44が閉じている場合、抵抗R46及びキャパシタC48は、ローパスフィルタとなる。抵抗R48は、抵抗R46とキャパシタC48の間をグラウンドに接続している。
【0049】
オペアンプO42(位相制御部230)からアナログ乗算器242に高レベル信号が入力される場合、スイッチS42,S48は開き、スイッチS44,S46は閉じる。この場合、増幅器A2(検出用電極150)からの電気信号がオペアンプO42によって非反転増幅される。一方、コンパレータU1(位相制御部230)からアナログ乗算器242に低レベル信号が入力される場合、スイッチS44,S46は開き、スイッチS42,S48は閉じる。この場合、増幅器A2(検出用電極150)からの電気信号がオペアンプO42によって反転増幅される。このようにして、アナログ乗算器242は、コンパレータU1(位相制御部230)からの電気信号と増幅器A2(検出用電極150)からの電気信号を乗算する。
【0050】
以上、本実施形態によれば、電圧変換部210から出力された駆動信号から取り出された調節用信号が位相制御部230に入力される。位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号に基づいて、調節用信号の位相を制御する。これにより、位相制御部230から出力される電気信号の位相と検出用電極150から出力される電気信号の位相とのずれを、駆動信号の周波数によらず一定にすることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図であり、第1の実施形態の図2に対応する。本実施形態に係る回転型アクチュエータは、以下の点を除いて、第1の実施形態に係る回転型アクチュエータと同様の構成である。
【0052】
本図に示す例において、回転型アクチュエータの回路200は、判定回路280を備える。判定回路280は、NOTゲートN82、アナログ乗算器M82,M84、ローパスフィルタL82,L84、及びコンパレータU82を備える。本図に示すように、第1分周器272からの電気信号がアナログ乗算器M82(第2乗算器)に入力されるとともに、増幅器A2とコンパレータU2の間からの電気信号がアナログ乗算器M82(第2乗算器)に入力される。さらに、第1分周器272からの電気信号がNOTゲートN82を介してアナログ乗算器M84(第3乗算器)に入力されるとともに、増幅器A2とコンパレータU2の間からの電気信号がアナログ乗算器M84(第3乗算器)に入力される。アナログ乗算器M82からの電気信号は、ローパスフィルタL82を介してコンパレータU82(第2コンパレータ)に入力される。アナログ乗算器M84からの電気信号は、ローパスフィルタL84を介してコンパレータU82(第2コンパレータ)に入力される。
【0053】
上記したように、第1分周器272から出力される電気信号は、増幅器A2からの電気信号が極小値をとるタイミングで高レベル信号及び低レベル信号の一方から他方に遷移する矩形波である。言い換えると、第1分周器272から出力される電気信号(矩形波)は、増幅器A2からの電気信号が極大値をとるタイミングで高レベル信号及び低レベル信号のいずれかとなる。図8を用いて後述するように、アクチュエータ本体100の状態によっては、増幅器A2からの電気信号は、互いに異なる第1の極大値と第2の極大値が交互に繰り返すようになる。この場合、本図に示す例では、判定回路280を用いることにより、可動電極120(図1)がいずれの方向に回転しているのかを判断することができる。
【0054】
図8(a)は、電圧V4と電圧V82の関係を示す図であり、図8(b)は、電圧V4と電圧V84の関係を示す図である。図7に示したように、電圧V4は増幅器A2とコンパレータU2の間の電圧であり、V82は第1分周器272とアナログ乗算器M82の間の電圧であり、V84はNOTゲートN82とアナログ乗算器M84の間の電圧である。図8に示すように、増幅器A2からの電気信号(電圧V4)は、互いに異なる第1の極大値と第2の極大値が交互に繰り返している。
【0055】
図7及び図8を用いて、可動電極120(図1)がいずれの方向に回転しているかを判断する方法を説明する。アナログ乗算器M82は電圧V4と電圧V82を乗算し、アナログ乗算器M84は電圧V4と電圧V84を乗算する。ローパスフィルタL82によってアナログ乗算器M82からの電気信号の時間積分が算出され、ローパスフィルタL84によってアナログ乗算器M84からの電気信号の時間積分が算出される。
【0056】
図8に示す例においては、ローパスフィルタL82からの時間積分(図8(a)に対応)がローパスフィルタL84からの時間積分(図8(b)に対応)よりも大きくなる。これは、図8(a)に示す例では電圧V82が高レベル信号であるタイミングで電圧V4が第1の極大値と第2の極大値のうち大きい極大値をとるのに対し、図8(b)に示す例では電圧V84が高レベル信号であるタイミングで電圧V4が第1の極大値と第2の極大値のうち小さい極大値をとるためである。
【0057】
ローパスフィルタL82からの電気信号及びローパスフィルタL84からの電気信号は、コンパレータU82に入力される。コンパレータU82は、ローパスフィルタL82からの電気信号の大きさとローパスフィルタL84からの電気信号の大きさとを比較する。そしてコンパレータU82は、その比較結果に基づいて、高レベル信号又は低レベル信号を制御部300に出力する。例えば、コンパレータU82は、ローパスフィルタL82からの電気信号がローパスフィルタL84からの電気信号よりも大きい場合には低レベル信号を出力し、ローパスフィルタL82からの電気信号がローパスフィルタL84からの電気信号よりも小さい場合には高レベル信号を出力する。
【0058】
制御部300は、記憶部320及び判断部330を備える。記憶部320は、可動電極120(図1)が回転している方向と、ローパスフィルタL82からの電気信号とローパスフィルタL84からの電気信号との差(すなわち、コンパレータU82からの出力信号)と、の関係を記憶している。判断部330は、記憶部320から上記した関係を読み出す。さらに、判断部330は、コンパレータU82からの出力信号を受信する。これにより、判断部330は、上記した関係とコンパレータU82からの出力信号に基づいて、可動電極120(図1)が回転している方向を判断することができる。
【0059】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図であり、第2の実施形態の図7に対応する。本実施形態に係る回転型アクチュエータは、以下の点を除いて、第2の実施形態に係る回転型アクチュエータと同様の構成である。
【0060】
本図に示す例において、判定回路280は、NOTゲートN82、S/H回路(サンプルアンドホールド回路)SH82,SH84、ローパスフィルタL82,L84、及びコンパレータU82を備える。本図に示すように、第2分周器274からの電気信号がS/H回路SH82に入力されるとともに、増幅器A2とコンパレータU2の間からの電気信号がS/H回路SH82に入力される。さらに、第2分周器274からの電気信号がNOTゲートN82を介してS/H回路SH84に入力されるとともに、増幅器A2とコンパレータU2の間からの電気信号がS/H回路SH84に入力される。S/H回路SH82からの電気信号は、ローパスフィルタL82を介してコンパレータU82(第2コンパレータ)に入力される。S/H回路SH84からの電気信号は、ローパスフィルタL84を介してコンパレータU82(第2コンパレータ)に入力される。
【0061】
上記したように、第2分周器274から出力される電気信号は、増幅器A2からの電気信号が極大値をとるタイミングで高レベル信号及び低レベル信号の一方から他方に遷移する矩形波となる。図10を用いて後述するように、アクチュエータ本体100の状態によっては、増幅器A2からの電気信号は、互いに異なる第1の極大値と第2の極大値が交互に繰り返すようになる。この場合、本図に示す例では、判定回路280を用いることにより、可動電極120(図1)がいずれの方向に回転しているのかを判断することができる。
【0062】
図10(a)は、電圧V4と電圧V86の関係を示す図であり、図10(b)は、電圧V4と電圧V88の関係を示す図である。図9に示したように、電圧V4は増幅器A2とコンパレータU2の間の電圧であり、V86は第2分周器274とS/H回路SH82の間の電圧であり、V88はNOTゲートN82とS/H回路SH84の間の電圧である。図10に示すように、増幅器A2からの電気信号(電圧V4)は、互いに異なる第1の極大値と第2の極大値が交互に繰り返している。
【0063】
図9及び図10を用いて、可動電極120(図1)がいずれの方向に回転しているかを判断する方法を説明する。S/H回路SH82は、電圧V86が高レベル信号である場合には電圧V4の電気信号と同じ電気信号を出力し(サンプルモード)、電圧V86が低レベル信号である場合には電圧V86が高レベル信号から低レベル信号に遷移するタイミングにおける電圧V4(すなわち、電圧V4の電気信号の極大値)を出力する(ホールドモード)。S/H回路SH84は、電圧V88が高レベル信号である場合には電圧V4の電気信号と同じ電気信号を出力し(サンプルモード)、電圧V88が低レベル信号である場合には電圧V88が高レベル信号から低レベル信号に遷移するタイミングにおける電圧V4(すなわち、電圧V4の電気信号の極大値)を出力する(ホールドモード)。ローパスフィルタL82によってS/H回路SH82からの電気信号の時間積分が算出され、ローパスフィルタL84によってS/H回路SH84からの電気信号の時間積分が算出される。
【0064】
図10に示す例においては、ローパスフィルタL82からの時間積分(図10(a)に対応)がローパスフィルタL84からの時間積分(図10(b)に対応)よりも大きくなる。これは、S/H回路SH82がホールドモードで出力する電気信号(図10(a)に対応)が、S/H回路SH84がホールドモードで出力する電気信号(図10(b)に対応)よりも大きいためである。このような差が生じる理由は、上記したように、電圧V4の電気信号では、互いに異なる第1の極大値と第2の極大値が交互に繰り返しているためである。
【0065】
ローパスフィルタL82からの電気信号及びローパスフィルタL84からの電気信号は、コンパレータU82に入力される。コンパレータU82は、ローパスフィルタL82からの電気信号の大きさとローパスフィルタL84からの電気信号の大きさとを比較する。そしてコンパレータU82は、その比較結果に基づいて、高レベル信号又は低レベル信号を制御部300に出力する。例えば、コンパレータU82は、ローパスフィルタL82からの電気信号がローパスフィルタL84からの電気信号よりも大きい場合には低レベル信号を出力し、ローパスフィルタL82からの電気信号がローパスフィルタL84からの電気信号よりも小さい場合には高レベル信号を出力する。
【0066】
制御部300は、記憶部320及び判断部330を備える。記憶部320は、可動電極120(図1)が回転している方向と、ローパスフィルタL82からの電気信号とローパスフィルタL84からの電気信号との差(すなわち、コンパレータU82からの出力信号)と、の関係を記憶している。判断部330は、記憶部320から上記した関係を読み出す。さらに、判断部330は、コンパレータU82からの出力信号を受信する。これにより、判断部330は、上記した関係とコンパレータU82からの出力信号に基づいて、可動電極120(図1)が回転している方向を判断することができる。
【0067】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図であり、第1の実施形態の図2に対応する。本実施形態に係る回転型アクチュエータは、以下の点を除いて、第1の実施形態に係る回転型アクチュエータと同様の構成である。
【0068】
クロック生成部310は、クロックを生成する。クロック生成部310からのクロックは、電圧変換部210(信号出力部)に入力される。電圧変換部210は、クロック生成部310からのクロックの電圧を所定の電圧に変換する。このようにして、電圧変換部210は、駆動信号を生成する。
【0069】
電圧変換部210からの駆動信号は、位相制御部230に入力される。位相制御部230は、駆動信号の位相を制御する。詳細を後述するように、位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号に基づいて、駆動信号の位相を制御する。
【0070】
なお、位相制御部230から出力された電気信号は、歪んでいることがある。このため、本図に示す例では、後述するように、コンパレータU1によってこの歪みを取り除いている。
【0071】
位相制御部230からの電気信号は、コンパレータU1を介して信号増幅部220に入力される。図2を用いて説明したように、コンパレータU1は、位相制御部230からの電気信号の電位と基準電位(例えば、グラウンド電位)とを比較し、その比較結果に基づいて高レベル信号又は低レベル信号を出力する。これにより、位相制御部230からの電気信号の歪みを取り除くことができる。さらに、図2を用いて説明したように、信号増幅部220は、コンパレータU1からの電気信号を増幅し、かつ増幅された電気信号を固定電極140に出力する。
【0072】
アクチュエータ本体100の可動電極120は、固定電極140に印加された電圧によって振動する。固定電極140が振動すると、固定電極140と検出用電極150の間の静電容量が変化する。静電容量の変化(振動)は、検出用電極150の電圧によって検出される。本図に示す例では、検出用電極150の電圧が増幅器A2によって増幅される。
【0073】
電圧変換部210と位相制御部230の間の駆動信号から調節用信号が取り出される。そして調節用信号は、XORゲート240(乗算器)に入力される。検出用電極150(増幅器A2)からの電気信号は、コンパレータU2を介してXORゲート240に入力される。これにより、電圧変換部210と位相制御部230の間からの電気信号(調節用信号)と検出用電極150からの電気信号がXORゲート240で乗算される。なお、図2に示した例と同様にして、コンパレータU2は、増幅器A2からの電気信号を矩形波に変換するために設けられている。
【0074】
XORゲート240からの電気信号は、ローパスフィルタ250を通過する。ローパスフィルタ250は、積分器である。これにより、ローパスフィルタ250は、XORゲート240からの電気信号の時間積分を出力する。
【0075】
ローパスフィルタ250からの電気信号は、コンパレータU3(コンパレータU3の機能は、図2に示した例と同様である。)を介して、位相制御部230に入力される。位相制御部230は、ローパスフィルタ250からの電気信号に基づいて、駆動信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部230は、電圧変換部210と位相制御部230の間からの電気信号(調節用信号)の位相と検出用電極150からの電気信号の位相との差が固定される(言い換えると、ローパスフィルタ250から出力される電気信号がある一定の値(例えば、ゼロ)となる)ように、駆動信号の位相を制御する。
【0076】
電圧変換部210とXORゲート240の間には、第1分周器272及び第2分周器274が電気的に接続している。図2に示した例と同様にして、第1分周器272及び第2分周器274は、第1分周器272に入力された電気信号及び第2分周器274に入力された電気信号をそれぞれ分周するために設けられている。
【0077】
本実施形態によれば、電圧変換部210から出力された駆動信号が位相制御部230に入力される。さらに、駆動信号から取り出された調節用信号がXORゲート240に入力される。位相制御部230は、XORゲート240からの電気信号に基づいて、駆動信号の位相を制御する。これにより、電圧変換部210から出力される電気信号(駆動信号)の位相と検出用電極150から出力される電気信号の位相とのずれを、駆動信号の周波数によらず一定にすることができる。
【0078】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0079】
100 アクチュエータ本体
110 枠体
120 可動電極
130 保持部材
140 固定電極
150 検出用電極
200 回路
210 電圧変換部
220 信号増幅部
230 位相制御部
240 XORゲート
242 アナログ乗算器
250 ローパスフィルタ
260 調節回路
272 第1分周器
274 第2分周器
300 制御部
310 クロック生成部
A1 増幅器
A2 増幅器
C22 キャパシタ
C42 キャパシタ
C44 キャパシタ
C46 キャパシタ
C48 キャパシタ
C52 キャパシタ
C54 キャパシタ
C62 キャパシタ
N42 NOTゲート
N46 NOTゲート
O42 オペアンプ
R22 抵抗
R24 抵抗
R26 抵抗
R41 抵抗
R42 抵抗
R43 抵抗
R44 抵抗
R45 抵抗
R46 抵抗
R47 抵抗
R48 抵抗
R52 抵抗
R54 抵抗
R56 抵抗
R62 抵抗
R64 抵抗
S42 スイッチ
S44 スイッチ
S46 スイッチ
S48 スイッチ
U1 コンパレータ
U2 コンパレータ
U3 コンパレータ
V1 電圧
V2 電圧
V3 電圧
V4 電圧
V5 電圧
V82 電圧
V84 電圧
V86 電圧
V88 電圧
VR 可変抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11