特許第6515982号(P6515982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6515982
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】航空機用水タンクおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/06 20060101AFI20190513BHJP
   B64D 11/00 20060101ALI20190513BHJP
   B64F 5/10 20170101ALI20190513BHJP
   B65D 25/42 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   B65D88/06 Z
   B64D11/00
   B64F5/10
   B65D25/42 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-224601(P2017-224601)
(22)【出願日】2017年11月22日
【審査請求日】2018年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝史
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/194574(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/064424(WO,A1)
【文献】 特開2011−251736(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/060308(WO,A1)
【文献】 特開2014−142017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
F17C 1/00−13/12
B64D 11/00
B64F 5/10
B65D 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム部を有するインナライナーと、前記ドーム部の中央に取着され蓋により開閉される環状の口金とを備え、
前記口金は、前記蓋が結合可能な結合部がその軸心方向の一端に設けられた筒状部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向外側に環状に拡がるスカート部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向内側に環状に膨出する膨出部とを有し、
前記スカート部は、前記インナライナーが取着されるスカート内面を有し、
前記膨出部は、前記スカート内面に連続状に接続され径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の一端に向かう湾曲面からなる第1膨出面と、前記筒状部の軸心方向の一端に位置する前記膨出部の箇所から径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の他端に向かう第2膨出面とを有し、
前記インナライナーは前記スカート内面から前記第1膨出面に接着剤で取着されている航空機用水タンクの製造方法であって、
前記第1膨出面に、前記筒状部の軸心方向の幅を有して前記膨出部の内側に窪み前記第1膨出面の周方向全周に延在する環状欠部を設け、
前記インナライナーの前記ドーム部の中央を、前記スカート内面に合されるスカート部用板部と、前記スカート部用板部の端部に連続状に接続され前記第1膨出面に合されかつ前記第1膨出面に合された状態でその端部が前記環状欠部の幅方向の中間部に位置する膨出部用板部とで形成し、
前記口金の軸心方向において前記ドーム部の中央と前記口金とを近づけ前記接着剤を介在させて前記スカート部用板部を前記スカート内面に合わせ、かつ、前記膨出部用板部を前記第1膨出面に合わせると共に余った前記接着剤を前記環状欠部に収容し、
前記膨出部用板部の端部から露出する前記環状欠部の箇所にシーラント材を充填するようにした、
ことを特徴とする航空機用水タンクの製造方法。
【請求項2】
ドーム部を有するインナライナーと、前記ドーム部の中央に取着され蓋により開閉される環状の口金とを備え、
前記口金は、前記蓋が結合可能な結合部がその軸心方向の一端に設けられた筒状部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向外側に環状に拡がるスカート部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向内側に環状に膨出する膨出部とを有し、
前記スカート部は、前記インナライナーが取着されるスカート内面を有し、
前記膨出部は、前記スカート内面に連続状に接続され径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の一端に向かう湾曲面からなる第1膨出面と、前記筒状部の軸心方向の一端に位置する前記膨出部の箇所から径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の他端に向かう第2膨出面とを有し、
前記インナライナーは前記スカート内面から前記第1膨出面に接着剤で取着されている航空機用水タンクであって、
前記第1膨出面に、前記筒状部の軸心方向の幅を有して前記膨出部の内側に窪み前記第1膨出面の周方向全周に延在する環状欠部が設けられ、
前記インナライナーの端部は、前記環状欠部の幅方向の中間部に位置し、前記インナライナーと前記環状欠部との間に前記インナライナーの前記スカート内面および前記第1膨出面への接着の際に余った前記接着剤が収容され、
前記接着剤が収容されていない残りの前記環状欠部にシーラント材が充填され、前記環状欠部に収容された前記接着剤は、前記インナライナーと前記シーラント材により覆われている、
ことを特徴とする航空機用水タンク。
【請求項3】
前記第2膨出面に、径方向内側に変位しつつ前記結合部側に向かい前記蓋に装着されたシール部材が弾接する円錐面が設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の航空機用水タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空機用水タンクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機用水タンクは、ブロー成形により成形されたインナライナーと、このインナライナーを覆う繊維強化樹脂層とで構成されたタンク本体を備え、タンク本体は、円筒部とこの円筒部の両側に設けられたドーム部とを有している。
航空機用水タンクでは、両側のドーム部の中央に、タンク本体の内部の清掃を行なうための開口部が設けられている。開口部は、ドーム部の中央に取着された口金によって構成され、口金には蓋が着脱可能に結合される。
口金は、蓋の雄ねじが螺合される雌ねじが形成された筒状部と、筒状部の端部から筒状部の半径方向外側に拡がるスカート部を備え、インナライナーのドーム部の中央はこのスカート部の内周面に接着剤で取着され、繊維強化樹脂層はスカート部の外周面に取着されている(特許文献1)。
インナライナーのドーム部の中央のスカート部の内周面への取着は次のように行なわれている。
まず、インナライナーのドーム部の中央に接着剤を塗布し、口金の軸心方向に口金のスカート部とインナライナーのドーム部の中央とを近づけ、それらスカート部とドーム部の中央とを合わせる。
この場合、余った接着剤がインナライナーの端部から溢れる(オーバーフローする)ように接着剤を多めに塗布している。これは、スカート部とインナライナーとの間に隙間なく確実に接着剤が充填されていることを目視で確認するためである。
そして、接着剤が硬化したのち、オーバーフローした接着剤の部分を除去する作業を行なっている。
このようなオーバーフローした接着剤の目視確認および接着剤の除去作業は、開口部からタンク本体の内部に挿入した鏡を用いてインナライナーの端部周辺を観察しながら行っている。
そして、接着剤に対して水が直接触れないことを目的として、インナライナーのドーム部の中央の端部の周辺から口金のスカート部の表面に、FDA(Food and Drug Administration)認定を受けた材料を塗布するコーティング作業を行っている。
【0003】
そのため、航空機用水タンクの従来の製造工程においては、鏡を用いて観察しつつ接着剤がオーバーフローしたことを確認したり、オーバーフローした接着剤の部分を除去するといった煩雑な作業を行った上に、さらにコーティング作業が必要となる。
また、メンテナンス時に、このコーティングを点検し、補修しなければならず、航空機用水タンクの生産効率を高めコストダウンを図る上で、また、メンテナンス作業の効率を高める上で何らかの改善が望まれていた。
そこで、本出願人は、インナライナーの端部を、蓋と口金との間に設けられたシール部材よりもタンク本体の外部寄りに離し、航空機用水タンクの使用時、インナライナーの端部に飲料水を接触させない航空機用水タンクを提案している(特許文献2)。
この提案では、口金に、蓋が結合可能な結合部がその軸心方向の一端に設けられた筒状部と、筒状部の軸心方向の他端から筒状部の径方向外側に環状に拡がるスカート部と、筒状部の軸心方向の他端から筒状部の径方向内側に環状に膨出する膨出部とを設けておき、インナライナーのドーム部の中央をスカート部から、結合部寄りの膨出部の箇所まで接着剤により取着するようにし、蓋により口金を閉塞した状態で、インナライナーのドーム部の中央部の端部を、水収容空間の外側に位置するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−85946
【特許文献2】WO2016/194574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成によれば、インナライナーのドーム部の中央部の端部が水収容空間の外側に位置するため、接着剤が水収容空間の飲料水に接触することが無くなるため、上述のような鏡を用いて観察しつつ接着剤がオーバーフローしたことを確認する作業やコーティング作業が不要となる。
しかしながら上記構成では、専用の治具を用いてインナライナーのドーム部の中央の端部を加熱しつつ膨出部に当て付けることでインナライナーの端部を折り曲げて膨出部に取着する熟練した技術が必要とされるインナライナーの成形作業が必要となる。
そのため、熟練した技術が必要とされることから航空機用水タンクの製造コストの低減を図る上で不利がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、口金をインナライナーに取り付ける作業を簡単化し製造コストの低減を図る上で有利な航空機用水タンクおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ドーム部を有するインナライナーと、前記ドーム部の中央に取着され蓋により開閉される環状の口金とを備え、前記口金は、前記蓋が結合可能な結合部がその軸心方向の一端に設けられた筒状部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向外側に環状に拡がるスカート部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向内側に環状に膨出する膨出部とを有し、前記スカート部は、前記インナライナーが取着されるスカート内面を有し、前記膨出部は、前記スカート内面に連続状に接続され径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の一端に向かう湾曲面からなる第1膨出面と、前記筒状部の軸心方向の一端に位置する前記膨出部の箇所から径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の他端に向かう第2膨出面とを有し、前記インナライナーは前記スカート内面から前記第1膨出面に接着剤で取着されている航空機用水タンクの製造方法であって、前記第1膨出面に、前記筒状部の軸心方向の幅を有して前記膨出部の内側に窪み前記第1膨出面の周方向全周に延在する環状欠部を設け、前記インナライナーの前記ドーム部の中央を、前記スカート内面に合されるスカート部用板部と、前記スカート部用板部の端部に連続状に接続され前記第1膨出面に合されかつ前記第1膨出面に合された状態でその端部が前記環状欠部の幅方向の中間部に位置する膨出部用板部とで形成し、前記口金の軸心方向において前記ドーム部の中央と前記口金とを近づけ前記接着剤を介在させて前記スカート部用板部を前記スカート内面に合わせ、かつ、前記膨出部用板部を前記第1膨出面に合わせると共に余った前記接着剤を前記環状欠部に収容し、前記膨出部用板部の端部から露出する前記環状欠部の箇所にシーラント材を充填するようにしたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、ドーム部を有するインナライナーと、前記ドーム部の中央に取着され蓋により開閉される環状の口金とを備え、前記口金は、前記蓋が結合可能な結合部がその軸心方向の一端に設けられた筒状部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向外側に環状に拡がるスカート部と、前記筒状部の軸心方向の他端から前記筒状部の径方向内側に環状に膨出する膨出部とを有し、前記スカート部は、前記インナライナーが取着されるスカート内面を有し、前記膨出部は、前記スカート内面に連続状に接続され径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の一端に向かう湾曲面からなる第1膨出面と、前記筒状部の軸心方向の一端に位置する前記膨出部の箇所から径方向内側に変位しつつ前記筒状部の軸心方向の他端に向かう第2膨出面とを有し、前記インナライナーは前記スカート内面から前記第1膨出面に接着剤で取着されている航空機用水タンクであって、前記第1膨出面に、前記筒状部の軸心方向の幅を有して前記膨出部の内側に窪み前記第1膨出面の周方向全周に延在する環状欠部が設けられ、前記インナライナーの端部は、前記環状欠部の幅方向の中間部に位置し、前記インナライナーと前記環状欠部との間に前記インナライナーの前記スカート内面および前記第1膨出面への接着の際に余った前記接着剤が収容され、前記接着剤が収容されていない残りの前記環状欠部にシーラント材が充填され、前記環状欠部に収容された前記接着剤は、前記インナライナーと前記シーラント材により覆われていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記第2膨出面に、径方向内側に変位しつつ前記結合部側に向かい前記蓋に装着されたシール部材が弾接する円錐面が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、2記載の発明によれば、オーバーフローした接着剤が環状欠部の全周にわたって収容されたか否かを直接目視できるため、従来のように、タンク本体の内部に挿入した鏡を用いてインナライナーの端部を観察しつつ接着剤がオーバーフローしたことを確認したり、鏡を用いて観察しつつオーバーフローした接着剤を除去したり、鏡を用いて観察しつつコーティング作業を行なう必要がない。
また、専用の治具を用いてインナライナーの端部を加熱しつつ膨出部に当て付けることでインナライナーの端部を折り曲げて膨出部に取着するといった熟練を必要とするインナライナーの成形作業を必要としない。
したがって、口金をインナライナーに取り付ける組み立て作業の簡単化を図れ製造コストの低減を図る上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、シール部材を用いて蓋により口金を液密に閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】航空機用水タンクの斜視図である。
図2】航空機用水タンクの断面図である。
図3】口金の断面図である。
図4】インナライナーに口金が接着された状態を示す断面図である。
図5】オーバーフローした接着剤が環状欠部に収容された状態を示す拡大断面図である。
図6】環状欠部にシーラント材が充填された状態を示す拡大断面図である。
図7】口金に蓋が締結された状態を示す断面図である。
図8】インナーライナーに口金を取り付ける作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態の航空機用水タンクをその製造方法と共に図面を参照して説明する。
図1図2に示すように、航空機用水タンク10は、航空機に設置されて飲料水を収容するものであり、航空機用水タンク10は、その内部が水収容空間とされるタンク本体12を備えている。
タンク本体12は、円筒部14と、円筒部14の両側に設けられたドーム部16とを有している。
円筒部14の上部には、タンク本体12に飲料水を給水する給水用のタンクポート18が設けられ、円筒部14の下部には、機内の各所にタンク本体12内の飲料水を送給する送給用のタンクポート(不図示)が設けられている。
また、円筒部14の上部に、水を航空機の各所に供給するための不図示の配管用のノズル部が設けられ、円筒部14の下部に、水を排出するための不図示の配管用のノズル部が設けられている。
両側のドーム部16の中央に、タンク本体12の内部の清掃を行なうための開口部20が設けられ、開口部20は蓋22により開閉される。
【0010】
タンク本体12は、図2に示すように、航空機用水タンク10の内面を形成するインナライナー24と、インナライナー24の外面を覆う繊維強化樹脂層26とを含んで構成されている。
インナライナー24は、航空機用水タンク10の輪郭を形成する中空体をなし、ブロー成形によって形成される。ブロー成形は、合成樹脂を溶融してパイプ状としたものを金型で挟み込み、パイプの内側に空気を吹き込むことで成形品を得るものである。
ブロー成形により得られたインナライナー24は、円筒部24Aと、円筒部24Aの両側に設けられたドーム部24Bとを備えている。
図2図4に示すように、ドーム部24Bの中央は、円錐面からなるスカート部用板部2402と、スカート部用板部2402の内周端に連続状に接続する湾曲面からなる膨出部用板部2404とで構成されている。
インナライナー24には、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンやポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂など、FDA認定を受けた従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0011】
繊維強化樹脂層26は、熱硬化性樹脂を含浸した強化繊維(フィラメント)をインナライナー24の外周面に巻き付けるフィラメントワインディング法によって形成される。
熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂など従来公知のさまざまな合成樹脂が使用可能である。また、強化繊維として、カーボン繊維、ガラス繊維など従来公知のさまざまな繊維が使用可能である。
【0012】
開口部20は、インナライナー24の両端と、繊維強化樹脂層26の両端との間に取着された環状の口金28により形成され、航空機用水タンク10の使用時、図2図7に示すように、開口部20は蓋22により閉塞される。
【0013】
図2に示すように、口金28は、ドーム部24Bの中央に配置される。
図3に示すように、口金28は、筒状部30と、スカート部32と、膨出部34とを含んで構成されている。
筒状部30は、蓋22が結合可能な口金側結合部3002がその軸心方向の一端に設けられており、口金側結合部3002は、筒状部30の軸心方向の一端の内周部に形成された雌ねじ31で構成されている。
スカート部32は、筒状部30の軸心方向の他端から筒状部30の径方向外側に環状に拡がっている。
図7に示すように、スカート部32は、インナライナー24が取着されるスカート内面3202と、繊維強化樹脂層26が設けられるスカート外面3204とを有している。
【0014】
図3に示すように、膨出部34は、筒状部30の軸心方向の他端から筒状部30の径方向内側に環状に膨出している。
膨出部34は、第1膨出面3402と、第2膨出面3404とを有している。
第1膨出面3402は、スカート内面3202に連続状に接続され径方向内側に変位しつつ筒状部30の軸心方向の一端に向かう湾曲面から構成されている。
第2膨出面3404は、筒状部30の軸心方向の一端側に位置する膨出部30の箇所から径方向内側に変位しつつ筒状部30の軸心方向の他端に向かっている。
第2膨出面3404に、径方向内側に変位しつつ口金側結合部3002側に向かう円錐面3404Aが設けられ、この円錐面3404Aには、蓋22に装着されたシール部材36(図7)が弾接する。
第1膨出面3402の第2膨出面3404寄りの箇所に、筒状部30の軸心方向の幅Wを有して膨出部34の内側に窪み第1膨出面3402の周方向全周に延在する環状欠部38が設けられている。なお、環状欠部38は、第1膨出面3402の第2膨出面3404寄りの箇所から第2膨出面3404の第1膨出面3402寄りの箇所にわたって設けられていてもよく、あるいは、第2膨出面3404寄りの第1膨出面3402の箇所のみに設けられていてもよい。環状欠部38が設けられる箇所をこのようにすると、後述するオーバーフローした接着剤40が環状欠部38の全周にわたって収容されたか否かを口金28の開口部20を介して直接目視する上で有利となる。
【0015】
図4に示すように、インナライナー24のスカート部用板部2402は、接着剤40によりスカート内面3202に接着され、インナライナー24の膨出部用板部2404は、接着剤40により第1膨出面3402に接着され、インナライナー24の膨出部用板部2404の端部2404Aは環状欠部38の幅方向の中間部に位置している。
図5に示すように、スカート部用板部2402と環状欠部38とにより上方が開放された下部収容空間42Aが形成され、下部収容空間42Aの上方に位置する環状欠部38の箇所が側方が開放された上部収容空間42Bとなっており、下部収容空間42Aに、スカート部用板部2402とスカート内面3202との接着およびスカート部用板部2402と第1膨出面3402との接着の際に余った接着剤40が収容されている。
また、図6に示すように、接着剤40が収容されていない下部収容空間42Aの箇所と上部収容空間42Bにシーラント材44が充填され、シーラント材44が上部収容空間42Bを閉塞し膨出部34の表面を構成している。
シーラント材44として、シリコンなどFDA認定を受けた従来公知の様々な材料が使用可能である。
すなわち、インナライナー24の端部2404Aは、環状欠部38の幅方向の中間部に位置し、インナライナー24と環状欠部38との間に接着剤40が収容され、接着剤40が収容されていない残りの環状欠部38にシーラント材44が充填され、シーラント材44が残りの環状欠部38を閉塞し残りの環状欠部38における膨出部34の表面を構成している。
【0016】
図7に示すように、蓋22は、環板部46と、環板部46の厚さ方向の一方の端面の内周部から突設された筒部48と、筒部48の先端を接続する端面部50とを備えている。
環板部46の外周部には、口金側結合部3002に結合される蓋側結合部2202として雄ねじ52が形成され、雄ねじ52は雌ねじ31に螺合可能である。
また、本実施の形態では、環板部46寄りの筒部48の外周面の箇所に、シール部材36としてOリング36Aが装着されている。Oリング36Aを蓋22に装着させることで、蓋22による開口部20の開閉作業の簡易化が図られている。
なお、本実施の形態では、口金28と蓋22はFDA認定を受けた同一の合成樹脂材料で形成され、雄ねじ52と雌ねじ31とが円滑に結合できるように図られている。
【0017】
雌ねじ31に雄ねじ52を介して蓋22が開口部20に結合された状態で、雌ねじ31からタンク本体12の内部に突出する蓋22の部分と、口金28の部分との間でOリング36Aが圧縮されることで開口部20が液密に閉塞されてタンク本体12の内部に閉塞された水収容空間が形成される。
本実施の形態では、Oリング36Aを圧縮する蓋22の部分は、環板部46の端面4602と筒部48の外周面4802とで構成される角部であり、Oリング36Aを圧縮する口金28の部分は、第2膨出面3404をなす円錐面3404Aである。
また、雌ねじ31に雄ねじ52を介して蓋22が開口部20に結合された状態で、膨出部34の第1膨出面3402および第2膨出面3404並びに環状欠部38に収容されたシーラント材44と外周面4802の間に1〜2mm程度の隙間Sが確保されている。
【0018】
このような航空機用水タンク10によれば、飲料水中に位置するインナライナー24と環状欠部38との間に接着剤40が収容され、接着剤40が収容されていない残りの環状欠部38にシーラント材44が充填され、シーラント材44は膨出部用板部2404と共に環状欠部38における膨出部34の表面を構成している。
したがって、航空機用水タンク10の使用時、タンク本体12の内部に収容された水が接着剤40に接触することはない。
【0019】
次に、インナライナー24と口金28とを取り付ける手順について説明する。
ブロー成形により円筒部24Aとドーム部24Bとを有するインナライナー24を成形する。
また、筒状部30と、スカート部32と、膨出部34とを有する口金28を用意する。
作業者は、図8に示すように、インナライナー24のスカート部用板部2402の表面に接着剤40を塗布し、口金28の軸心方向においてドーム部24Bの中央と口金28とを近づけ、接着剤40を介在させた状態でスカート部用板部2402をスカート内面3202に合わせ、かつ、膨出部用板部2404を第1膨出面3402に合わせる。
【0020】
この作業により、図5に示すように、スカート部用板部2402とスカート内面3202との間に介在する接着剤40、スカート部用板部2402と第1膨出面3402との間に介在する接着剤40のうち余った接着剤40がオーバーフローし、オーバーフローした接着剤40が、膨出部用板部2404と環状欠部38との下部収容空間42Aへ押し出され、下部収容空間42Aに収容される。
また、図6に示すように、接着剤40が収容されていない下部収容空間42Aの箇所と上部収容空間42Bにシーラント材44が充填され、シーラント材44が上部収容空間42Bを閉塞し膨出部34の表面を構成している。
作業者は、従来のように鏡をタンク本体12内部に挿入することなく、上方から口金28の開口部20を介して膨出部用板部2404の端部2404Aと環状欠部38(下部収容空間42A)との間を直接目視することができ、したがって、オーバーフローした接着剤40が環状欠部38(下部収容空間42A)の全周にわたって収容されたか否かを簡単かつ確実に確認することができる。
環状欠部38(下部収容空間42A)の周囲全周に接着剤40が収容されたことが確認できたならば、スカート部用板部2402の表面とスカート内面3202との間に隙間なく接着剤40が充填されたことになる。
【0021】
接着剤40の充填が確認されたならば、スカート部用板部2402がスカート内面3202に当接し、かつ、膨出部用板部2404が第1膨出面3402に当接した状態を適宜治具を用いて保持し接着剤40を硬化させる。
接着剤40の硬化後、作業者は、膨出部用板部2404の端部2404Aから露出する環状欠部38の箇所にシーラント材44を充填する。すなわち、接着剤40が収容されていない下部収容空間42Aの箇所および上部収容空間42Bにシーラント材44が充填される。
これにより、シーラント材44が膨出部用板部2404と共に環状欠部38を閉塞し環状欠部38における膨出部34の表面を膨出部用板部2404と共に構成する。
すなわち、下部収容空間42Aに収容された接着剤40は、膨出部用板部2404およびシーラント材44により覆われることになる。
シーラント材44が硬化したならば、口金28のインナライナー24への取り付け作業が終了する。
そして、口金28が取着されたインナライナー24の外面に繊維強化樹脂層26を形成することで航空機用水タンク10が完成する。
【0022】
本実施の形態によれば、口金28をインナライナー24に取り付ける際に、口金28の膨出部34に設けた環状欠部38でスカート部32とインナライナー24との間からオーバーフローした接着剤40を収容するようにした。
また、膨出部用板部2404の端部2404Aから露出する環状欠部38の箇所にシーラント材44を充填するようにした。
したがって、オーバーフローした接着剤40が環状欠部38の全周にわたって収容されたか否かを口金28の開口部20を介して直接目視できるため、従来のように、タンク本体12の内部に挿入した鏡を用いてインナライナー24の端部を観察しつつ接着剤40がオーバーフローしたことを確認したり、鏡を用いて観察しつつオーバーフローした接着剤40を除去したり、鏡を用いて観察しつつコーティング作業を行なう必要がない。
また、専用の治具を用いてインナライナー24の端部を加熱しつつ膨出部34に当て付けることでインナライナー24の端部を折り曲げて膨出部34に取着するといった熟練を必要とするインナライナー24の成形作業を必要としない。
したがって、口金28をインナライナー24に取り付ける組み立て作業の簡単化を図れ製造コストの低減を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0023】
10 航空機用水タンク
22 蓋
24 インナライナー
24B ドーム部
2402 スカート部用板部
2404 膨出部用板部
2404A 端部
28 口金
30 筒状部
3002 口金側結合部
32 スカート部
3202 スカート内面
34 膨出部
3402 第1膨出面
3404 第2膨出面
3404A 円錐面
38 環状欠部
40 接着剤
44 シーラント材
【要約】
【課題】口金をインナライナーに取り付ける作業を簡単化し製造コストの低減を図る。
【解決手段】口金28をインナライナー24に取り付ける際に、口金28の膨出部34に設けた環状欠部38によりスカート部32とインナライナー24との間からオーバーフローした接着剤40を収容するようにした。また、膨出部用板部2404の端部から露出する環状欠部38の箇所にシーラント材44を充填するようにした。オーバーフローした接着剤40が環状欠部38の全周にわたって収容されたか否かを口金28の開口部20を介して直接目視できるため、従来のように、タンク本体12の内部に挿入した鏡を用いてインナライナー24の端部2404Aを観察しつつ接着剤40がオーバーフローしたことを確認したり、鏡を用いて観察しつつオーバーフローした接着剤40を除去したり、鏡を用いて観察しつつコーティング作業を行なう必要がない。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8