(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
(シクロデキストリン含有シート)
本発明のシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層を備え、前記シクロデキストリン含有層が乾式法で設けられたシートである。
【0024】
本明細書において、「機能性成分が包接されたシクロデキストリン」という際には、必ずしも、包接性能を有するシクロデキストリンの全量が最大量の機能性成分を包接しているものに限定されない。すなわち、本明細書における「機能性成分が包接されたシクロデキストリン」は、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のいわゆる空のシクロデキストリンを含んでいることができるものとする。
【0025】
図1を参照して、本発明の範囲に含まれるシクロデキストリン含有シートの構成について説明する。
図1は、本発明のシクロデキストリン含有シートの構成を限定目的ではなく例示目的で示す図である。図中において、同一の符号は同一の構成要素を示す。同一の構成要素に関しては、重複する説明を割愛する場合がある。
【0026】
図1(a)〜(c)は、本発明に係る、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100を備えるシクロデキストリン含有シートを示す。
図1(a)は、シクロデキストリン含有層100のみからなるシクロデキストリン含有シートである。
図1(b)および(c)は、シクロデキストリン含有層100の片面または両面に他の層300が積層されたシクロデキストリン含有シートである。
【0027】
本発明のシクロデキストリン含有シートは、このように、単層構造を有していてもよく、2層、3層、または図示しない4層以上の多層構造を有していてもよい。シクロデキストリン含有シートは、シクロデキストリン含有層100を2層以上含んでいてもよい。他の層300は、例えば、シクロデキストリン含有シートの表面を改質する目的や、シクロデキストリン含有シートに強度(剛性)を付与する目的など、シクロデキストリン含有シートに何らかの機能性を付与する目的等で配設することができる。他の層300には、例えば、布、不織布、紙、フィルム等のシートを用いることができる。他の層300には、熱融着性樹脂が含まれていてもよい。シクロデキストリン含有シートが複数の層300を備える場合、これらの層300は、同一材料であっても異なる材料であってもよい。
【0028】
シクロデキストリン含有層100には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCのみが含まれていることができる。このとき、一種類に限定されず、複数種類の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCが含まれていることができる。すなわち、機能性成分およびシクロデキストリンのそれぞれが、一種類であってもよく複数種類であってもよい。機能性成分の種類、およびシクロデキストリンの種類については、後述する。
【0029】
また、シクロデキストリン含有層100には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCに加えて、繊維、熱融着性樹脂、および添加剤などが含まれていてもよい。
【0030】
シクロデキストリン含有シートから機能性成分が包接されたシクロデキストリンCが粉落ちしないための構成の例として、以下の第1の態様から第6の態様に示すような具体的態様を説明する。
【0031】
(第1の態様)
図1(d)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100が繊維Fを含む例である。繊維Fを含むシクロデキストリン含有層110において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末は、繊維Fによって形成される空隙、すなわち繊維Fが構成する繊維構造物中の空隙に保持されることによって、粉落ちが防止されている。
【0032】
繊維を含むシクロデキストリン含有層110には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび繊維Fのみが含まれていることができる。また、繊維を含むシクロデキストリン含有層110には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび繊維Fに加えて、熱融着性樹脂、および添加剤などが含まれていてもよい。また、繊維F自体が、熱融着性樹脂であってもよい。
【0033】
本態様において、シクロデキストリン含有シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、繊維Fを含むシクロデキストリン含有層110の片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
【0034】
つまり、本発明の第1の態様のシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリンと、繊維と、を含むシクロデキストリン含有層を備える単層構造体または多層構造体である。機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末は、シクロデキストリン含有層において、シクロデキストリン含有層を構成する繊維によって形成される空隙に保持されていることができる。このような形態は、エアレイド法などの乾式法によって実現されることができる。機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末は、シクロデキストリン含有層の全体にわたってまたは一部に分布していることができる。すなわち、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末は、シクロデキストリン含有層において、面内方向および厚さ方向において、ほぼ均一に分布していることができる。あるいはまた、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末は、シクロデキストリン含有層において、面内方向または厚さ方向の少なくとも一方において、偏在して存在していることができる。シクロデキストリン含有層におけるシクロデキストリンの粉末の分布は、エアレイド法などの乾式法により層を形成する際に、原材料の調製方法(原材料の混合または非混合)、散布順、散布位置等を適宜設定することにより、制御することができる。
【0035】
(第2の態様)
図1(e)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100が熱融着性樹脂Aを含む例である。熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120は、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末と熱融着性樹脂Aとを含む混合物中の熱融着性樹脂Aを溶融することにより得られたものである。
【0036】
熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、溶融した熱融着性樹脂Aが固化する際に、一部が被覆された状態で固着されることによって、粉落ちが防止されている。また、熱融着性樹脂Aは、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCの全体を被覆しないような量で配合されており、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、熱融着性樹脂Aによって被覆されていない部分を有し、機能性成分を放出する性能が保証されている。
【0037】
熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび熱融着性樹脂Aのみが含まれていることができる。また、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび熱融着性樹脂Aに加えて、繊維、および添加剤などが含有されていてもよい。また、熱融着性樹脂A自体が、繊維状であってもよい。
【0038】
本態様において、シクロデキストリン含有シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120の片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
【0039】
つまり、本発明の第2の態様のシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリンと、熱融着性樹脂と、を含むシクロデキストリン含有層を備える単層構造体または多層構造体である。シクロデキストリン含有層において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、その一部が前記熱融着性樹脂に被覆された状態で固着されている。シクロデキストリン含有層において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、粉末の形態を有していることができる。
【0040】
(第3の態様)
図1(f)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100に隣接する層が熱融着性樹脂Bを含む例である。シクロデキストリン含有層に隣接する、熱融着性樹脂Bを含む層200は、シクロデキストリン含有層100の表面に熱融着性樹脂Bを配置して熱により熱融着性樹脂Bを溶融することにより得られたものである。
【0041】
シクロデキストリン含有層100に含まれる、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、これに隣接する熱融着性樹脂Bを含む層200において溶融した熱融着性樹脂Bが固化する際に、一部が被覆されて固着されることによって、粉落ちが防止されている。また、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、熱融着性樹脂Bによって被覆されていない部分を有し、機能性成分を放出する性能が保証されている。
【0042】
熱融着性樹脂Bを含む層200には、熱融着性樹脂Bのみが含まれていることができる。また、熱融着性樹脂Bを含む層200には、熱融着性樹脂Bに加えて、繊維、および添加剤などが含まれていてもよい。これら他の成分が含まれる場合は、熱融着性樹脂Bを含む層200は、シクロデキストリン含有層100の表面に熱融着性樹脂Bとこれら他の成分との混合物を配置して熱により熱融着性樹脂Bを溶融することにより得ることができる。
【0043】
図1(f)に示す例のシクロデキストリン含有シートは、詳細には、熱融着性樹脂Bを含む層200と、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末からなるシクロデキストリン含有層100と、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120と、からなる3層構造を有する。この例の場合、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120もまた、中間層として位置付けられたシクロデキストリン含有層100に含まれるシクロデキストリンの粉落ち防止に寄与し得る。また、ここではシクロデキストリン含有層100と熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120とを別々の層として図示および説明したが、この2つの層が一体的に構成されていて1層の熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120を成している構成も、本態様に含まれる。本態様によれば、特に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120において、シクロデキストリンの粉末が表面側に偏在している場合に、粉落ちを有効に防止することができる。
【0044】
本態様において、熱融着性樹脂Bを含む層200は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層の両面に設けられていてもよい。
【0045】
本態様において、シクロデキストリン含有シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、シクロデキストリン含有層および熱融着性樹脂Bを含む層200の積層体の外面のうちの片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
【0046】
つまり、本発明の第3の態様のシクロデキストリン含有シートは、熱融着性樹脂を含む層と、それに隣接する、機能性成分が包接されたシクロデキストリンを含むシクロデキストリン含有層と、を備える多層構造体である。当該シクロデキストリン含有層において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、隣接する熱融着性樹脂を含む層に由来する前記熱融着性樹脂にその一部が被覆された状態で固着されていることができる。当該シクロデキストリン含有層において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、粉末の形態を有していることができる。また、本態様のシクロデキストリン含有シートの全体において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、厚さ方向において分布が偏在している。
【0047】
(第4の態様)
上述の本発明に係るシクロデキストリン含有シートは、ヒートシール加工や超音波シール加工などのシール加工によって形成されていてもよい。1つの例として、
図1(g)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100の両面に熱融着性樹脂を含む他の層300が積層され、四辺がヒートシールされた構成を示す。
【0048】
つまり、本発明の第4の態様のシクロデキストリン含有シートは、部分的に融着された2枚の外層(他の層300)と、当該2枚の外層間の融着されていない部分に位置する、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100と、を含む多層構造体である。このような形態は、シール加工により容易に実現することができる。
【0049】
図1(g)の例では、四辺が融着されているため、2枚の外層の間には、袋状部分が形成されている。その袋状部分に、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100が含まれていることができる。
【0050】
四辺を連続的に融着することにより、袋状部分を密閉された状態とすることができる。例えば、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100が、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末のみからなる場合は、当該粉末は、密閉された袋状部分の内部で粉末の形態のまま存在していることができる。このとき、当該粉末は、密閉された袋状部分の内部において、位置が固定されておらず流動可能となっていることができる。
【0051】
シール加工の位置は、適宜設定することができる。例えば、シール加工を、シートの四辺に加えてシートの中央部分に例えば線状に施して、袋状部分を複数の連続的または非連続的な区画に分割してもよい。機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100は、この複数の区画に分散して配置されることができる。
【0052】
(第5の態様)
図1(h)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100に隣接して接着層が設けられている例である。シクロデキストリン含有層に隣接する、接着層500は、シクロデキストリン含有層の表面に接着層500を配置することにより得られたものである。接着層としては、シクロデキストリン含有層100に含まれるシクロデキストリンの粉落ちが防止されるように粘着機能を示す層であれば特に限定されないが、例えば、ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0053】
詳細には、
図1(h)に示すシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100と他の層300との間に、例えば熱可塑性樹脂のようなホットメルト接着剤からなる接着層500を介在させて、ホットメルト加工により層間接着された構成を示す。
【0054】
より詳細には、
図1(h)に示す例のシクロデキストリン含有シートは、シクロデキストリン含有層100の、接着層500とは反対側の面に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120を有する。
図1(h)に示す例のシクロデキストリン含有シートにおいても、
図1(f)に示す例の場合と同様に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120は、中間層として位置付けられたシクロデキストリン含有層100に含まれるシクロデキストリンの粉落ち防止に寄与し得る。また、ここではシクロデキストリン含有層100と熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120とを別々の層として図示および説明したが、この2つの層が一体的に構成されていて1層の熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120を成している構成も、本態様に含まれる。本態様によれば、特に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120において、シクロデキストリンの粉末が表面側に偏在している場合に、粉落ちを有効に防止することができる。
【0055】
つまり、本発明の第5の態様のシクロデキストリン含有シートは、接着剤のような粘着機能を有する接着層と、それに隣接する、機能性成分が包接されたシクロデキストリンを含むシクロデキストリン含有層と、を備える多層構造体である。当該シクロデキストリン含有層において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、隣接する接着層の粘着機能によりシクロデキストリン含有シート内に固着されていることができる。当該シクロデキストリン含有層において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、粉末の形態を有していることができる。また、本態様のシクロデキストリン含有シートの全体において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、厚さ方向において分布が偏在している。
【0056】
(第6の態様)
上述の本発明に係るシクロデキストリン含有シートは、エンボス加工によって形成されていてもよい。1つの例として、
図1(i)は、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120の両面に層300が積層され、エンボス加工により層間接着された構成を示す。
【0057】
つまり、本発明の第6の態様のシクロデキストリン含有シートは、部分的に融着された2枚の外層(他の層300)と、当該2枚の外層間の複数の融着されていない部分に位置する、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100と、を含む多層構造体である。少なくとも一方の表面に凹凸模様が形成されていてもよい。このような形態は、エンボス加工により容易に実現することができる。
【0058】
以上、
図1(a)から(i)を用いて本発明のシクロデキストリン含有シートの構成を説明した。しかしながらこれらは例示であり、これ以外の構成、例えば例示した各態様の組み合わせも本発明の範囲に含まれる。例えば、図中で機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100として示した層は、繊維Fを含むシクロデキストリン含有層110、または熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120であってもよく、あるいは、繊維Fおよび熱融着性樹脂Aの両方を含む層であってもよい。同様に、これらの層間で層を置き換えた構成は、本発明の範囲に含まれる。
【0059】
以下に、本発明に係るシクロデキストリン含有シートの構成要素の詳細について説明する。
【0060】
(機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層)
本発明の機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層は、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンを含む層である。本発明の機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のいわゆる空のシクロデキストリンが含まれていてもよい。シクロデキストリンは、粉末(粒子)として含まれる。機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンのみが含まれていることができる。機能性成分が包接されたシクロデキストリンとしては、一種類に限定されず、複数種類が含まれていてもよい。また、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンに加えて、繊維、熱融着性樹脂、および添加剤などが含有されていてもよい。さらに、本発明において、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接されたシクロデキストリン(すなわち、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のいわゆる空のシクロデキストリンが含まれていてもよいシクロデキストリン)の他に、機能性成分を包接させていないシクロデキストリン(すなわち、包接性能を有する部位がいわゆる空の状態のシクロデキストリン)がさらに配合されてもよい。
【0061】
(シクロデキストリン)
本発明で用いられるシクロデキストリンは、サイクロデキストリンまたは環状オリゴ糖とも呼ばれ、ゲストとして種々の分子を空洞に取り込み(包接し)包接錯体を形成する性能、および取り込んだゲスト分子を徐放する性能を有する。シクロデキストリン1分子中に含まれるグルコース基の数が6個のα−シクロデキストリン、7個のβ−シクロデキストリン、8個のγ−シクロデキストリンのいずれも、包接される機能性成分の分子量や構造、機能性成分との相性を勘案して使用することができる。シクロデキストリンはメチル化、ヒドロキシル化、アセチル化等の化学修飾がされていてもよい。また、シクロデキストリンは、分岐を有していてもよい。これらのシクロデキストリンは、単独で使用することができ、また、併用することもできる。本発明では、上述のようなシクロデキストリンに、機能性成分を包接させたものを使用する。使用するシクロデキストリンには機能性成分を包接していない空のシクロデキストリンが含まれていてもよい。
【0062】
(機能性成分)
機能性成分としては、シクロデキストリン含有シートの用途および目的等に応じてさまざまな機能性成分を用いることができる。シクロデキストリン含有シートの用途の例については後述する。
【0063】
本発明で用いることのできる機能性成分は合成成分でも天然物からの抽出成分でもよい。例えば、ワサビ成分、マスタード成分、唐辛子成分、ジンジャー成分、レモン成分、オレンジ成分、グレープフルーツ成分、ユズ成分、ウメ成分、抹茶成分、アーモンド成分、天然ミートフレーバー、ローズ、ハーブなどの抽出成分、植物抽出エキス、茶抽出物等の天然物系抗菌剤もしくは香料、l-メントール成分等の天然系または有機系揮発性抗菌剤もしくは香料、コエンザイムQ10やイソフラボン、ビタミン等の化粧品原料等が挙げられる。
【0064】
上述のもの以外にも、機能性成分としては、例えば:薬用成分、保湿剤、感触向上剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、香料、色素、着色剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、止痒剤、角質軟化剥離剤、防腐殺菌剤、脂溶性物質、消臭成分、忌避剤等の公知の化合物を、用途および目的に応じて任意に選択することができる。
【0065】
これらの機能性成分は、シクロデキストリン含有シート中において、単独で使用されることができ、また、併用されることもできる。
【0066】
(機能性成分が包接されたシクロデキストリン)
本発明において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、粉末(粒子)の形態で用いられる。粉末(粒子)の形態の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、当技術分野で知られている任意の方法で得ることができる他、メーカーから販売品を購入することができる。例えば、塩水港製糖株式会社製のデキシーエース(サイクロデキストリン利用製品)や株式会社シクロケム製のCAVAMAX(登録商標)などを好適に使用することができる。これらの、粉末(粒子)の形態の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンには、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のシクロデキストリンが含まれていてもよい。
【0067】
(繊維)
繊維としては、パルプ(例えば、針葉樹および/または針葉樹の化学パルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプや、古紙パルプ等)、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリ乳酸、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)、高分子吸収繊維(SAF)等の合成繊維を用いることができる。これらの繊維は、吸水性を有するため、吸水性材料として配合して、シクロデキストリン含有シートの使用時に機能性成分の放出を促進させることもできる。機能性成分として冷感材料を包接したシクロデキストリンを使用する場合に、繊維としてSAFなど吸水性の高い繊維を使用すると、冷感が強く持続時間の長いシートを提供することが可能となる。また、本発明の繊維として、非吸水性の繊維を用いることもできる。以下に説明する熱融着性樹脂を、繊維の形態で使用してもよい。これらの繊維は、例えば解繊ショートカットファイバーの形態で用いることができる。これらの繊維は、2種以上を併用しても構わない。
【0068】
(熱融着性樹脂)
本発明における熱融着性樹脂は、構成成分を結着させるバインダ樹脂となる。また、熱融着性樹脂は、シクロデキストリン含有シートにおける強度付与の効果を有し、シクロデキストリン含有シートは熱融着性樹脂を含むことにより形状が維持されやすくなる。
【0069】
熱融着性樹脂AおよびBは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン同士、および他の成分が含まれる場合は機能性成分が包接されたシクロデキストリンおよび他の成分を結着させることができる。熱融着性樹脂AおよびBは、機能性成分が包接されたシクロデキストリンからの機能性成分の放出を妨げないように、溶融され固化する際に、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末(粒子)の全体を被覆しないような量で配合される。
【0070】
熱融着性樹脂は繊維状であってもよいし、粒子状であってもよい。強度がより高くなる点からは、熱融着性樹脂は繊維状であることが好ましい。熱融着性樹脂は、例えば、ショートカットファイバーの形態であってもよい。
【0071】
熱融着性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0072】
熱融着性樹脂は、2種類以上の樹脂の複合体であってもよい。例えば、芯部分と鞘部分とからなる芯鞘繊維、長手方向に垂直な断面において片側の半分ともう一方の片側の半分とが異なる樹脂からなるサイドバイサイド繊維、異なる樹脂からなるコアとシェルとを有するコアシェル粒子等が挙げられる。
【0073】
熱融着性樹脂は2種類以上を併用しても構わない。すなわち、熱融着性樹脂AおよびBは、同一の熱融着性樹脂であってもよく異なる熱融着性樹脂であってもよい。熱融着性樹脂Aおよび熱融着性樹脂Bとして、それぞれ、1種類の熱融着性樹脂を用いてもよく、また、複数種類の熱融着性樹脂を併用してもよい。シクロデキストリン含有シートが、後述する他の層300を含む場合であって、他の層300が熱融着性樹脂を含む場合は、他の層300に含まれる熱融着性樹脂は、熱融着性樹脂AおよびBと同一であってもよく異なっていてもよく、1種類であっても複数種類の併用であってもよい。
【0074】
(他の層)
本発明のシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100、110、120に加えて、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、他の層300を含むことができる。また、他の層との間に接着性向上を目的として樹脂パウダーを散布し、加熱したり、ホットメルト樹脂層や粘着層など任意の接着層を設けてもよい。
【0075】
他の層300としては、例えば、不織布、布、紙などの水分を通す性質(通水性)および/または水分を吸収する性質(吸水性)を有する任意のシートを用いることができる。また、任意のフィルムを用いることができる。他の層300は、熱融着性樹脂を含んでいてもよい。シクロデキストリン含有シートの1つの面に通気性が相対的に低いフィルムを用いると、放出された機能性成分がその面から放散することを防止できる。シクロデキストリン含有シートの外層となる他の層300の表面には、凹凸などの表面加工を施してもよい。
【0076】
(添加剤)
本発明のシクロデキストリン含有シートには、その用途に応じて、1つまたは複数の効果を有する添加剤を配合することができる。添加剤は、本発明の機能性成分の効果を補う成分を含み本発明の効果を促進させる剤(例えば、いわゆる効果促進剤)であってもよく、また、本発明の機能性成分とは相互作用を示さない成分を含む剤であってもよい
【0077】
添加剤としては、例えば:油性基剤、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、炭酸塩、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、金属含有化合物、不飽和単量体、多価アルコール、高分子添加剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、収れん剤、増粘剤、粘着付与物質、止痒剤、角質軟化剥離剤、油性原料、紫外線遮断剤、防腐殺菌剤、抗酸化物質、液状マトリックス、脂溶性物質、高分子カルボン酸塩、添加剤、金属セッケン、吸水性材料等、が挙げられる。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコールや高分子吸収体(SAP)などの水性樹脂粒子等の粒子を使用すると持続時間の延長や機能性成分の除放効率の向上などの効果がある。また、液体の形態の添加剤を、カプセル等に含有させた粒子として固体の形態で配合してもよい。
【0078】
添加剤は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100、110、120に配合することができる。また、シクロデキストリン含有シートが、シクロデキストリン含有層と他の層とを含む多層構造である場合は、複数の層のうちのいずれか1つまたは複数の層に配合することができる。
【0079】
例えば、シクロデキストリン含有シートが多層構造である場合、1つの層に酸を配合し、別の1つの層に炭酸塩を配合して、使用時に炭酸ガスが発生するシートとしてもよい。炭酸ガスが発生することで、シクロデキストリンに包接された機能性成分が炭酸ガスと一緒に効率的に放出される。
【0080】
(ヒートシール)
ヒートシールは、ヒートシーラーなどの加熱手段により熱を加えて層間接着させる方法である。本発明においては、例えば、機能性成分が包接されたシクロデキストリンのみからなる機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層を中間層とし、その両面に、熱融着性樹脂を含む層200を配置して、四辺をヒートシールすることにより、多層構造のシクロデキストリン含有シートを形成することができる。
【0081】
(超音波シール)
超音波シールは、超音波振動と加圧によって層間接着させる方法である。ヒートシールと同様にシクロデキストリン含有層の両面に、超音波シール性のある層200を配置して、四辺を超音波シールすることにより、多層構造のシクロデキストリン含有シートを形成することができる。
【0082】
(接着層)
接着層の形成方法は特に限定されないが、ホットメルト加工によって得られた接着層であることが好ましい。ホットメルト加工は、熱可塑性樹脂を溶かして押し出し、シートとシートを接着する加工方法である。シクロデキストリン含有層と他の層を接合する際の層間接着に用いることができる。
【0083】
ホットメルト加工に用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などが知られている。この他に合成ゴム系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、アクリル系、オレフィン系などの一般にホットメルト接着剤として知られている樹脂を用いることができる。
【0084】
(エンボス加工)
エンボス加工は、凸凹模様を彫った押し型で強圧し、熱を加える加工である。この方法もまた、多層構造の層間接着に用いることができる。また、この方法は、単層または多層構造のシクロデキストリン含有シートに凹凸などの表面加工を施すために用いることもできる。
【0085】
(各成分の含有比率)
シクロデキストリン含有シートにおけるシクロデキストリンの配合量は、シート全量に占める粉末の量が0.01質量%以上が好ましい。0.01質量%以上であれば、シクロデキストリン包接成分を効果的に除放することができる。
【0086】
(坪量)
シクロデキストリン含有シートの坪量は、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、10〜4000g/m
2であることが好ましい。
【0087】
(乾式法によるシクロデキストリン含有層の形成)
本発明において、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層は、乾式法で設けられた層である。本発明で用いることのできる乾式法には、水を使用しない任意の層形成方法が含まれる。
【0088】
(シクロデキストリン含有シートの製造方法)
例えば、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層を作製し、他の層が含まれる場合は、シクロデキストリン含有層に対して他の層を別途積層させる製造方法を用いることができる。そのような方法として、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層の表面に、例えばポリエチレン(PE)のような熱融着性樹脂Bを配置し、熱融着性樹脂Bを熱により溶融させて接合する方法がある。あるいはまた、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層(例えば、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120)を作製する際に、シクロデキストリン含有層120となるウェブ層を搬送するためのキャリアシートに本発明の他の層300を用いることによって、他の層300とシクロデキストリン含有層120との積層体を形成して、本発明に係る層構成を有するシクロデキストリン含有シートを得てもよい。また、別途作製したシクロデキストリン含有シートの各層を、エンボス加工やヒートシール加工により接合させてもよい。また、シクロデキストリン含有シートの各層の接合面の少なくとも一方に熱可塑性樹脂のようなホットメルト接着剤などにより接着層(粘着層)を設けて、ホットメルト加工により各層を接合させる方法などもある。製造時における、機能性成分の放出(流出)や、シクロデキストリンの凝集等を防ぐために、本発明において、これらの積層は乾式法にて行う。
【0089】
(エアレイド法を採用するシクロデキストリン含有シートの製造方法)
エアレイド法を採用する本実施形態のシクロデキストリン含有シートの製造方法は、解繊工程と混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを任意選択的に有する。
【0090】
(解繊工程)
解繊工程は、ショートカットファイバーの形態の材料を、空気流によって解繊して解繊ショートカットファイバーを得る工程である。
【0091】
ショートカットファイバーの空気流による解繊方法では、ブロアー等によって空気流を形成し、その空気流にショートカットファイバーを供給し、空気流の攪拌効果によって解繊する。
【0092】
解繊方法としては、旋回する空気流で解繊することが好ましい。旋回する空気流を利用した解繊方法によれば、ショートカットファイバーを充分に解繊することができ、エアレイド法によってエアレイドウェブを形成する際に、解繊ショートカットファイバーの分散性をより高めることができる。
【0093】
旋回する空気流を利用した解繊方法としては、例えば、ブロアーの中にショートカットファイバーを投入してブロアーにて解繊する方法が挙げられる。また、ブロアーによって円筒容器内に、周方向に沿うように空気を送って旋回流を形成し、その旋回流の中にショートカットファイバーを供給し、攪拌して解繊する方法が挙げられる。
【0094】
空気流の流速は、ショートカットファイバーの量に応じて適宜選択されるが、通常は、10〜150m/秒の範囲内である。
【0095】
(混合工程)
混合工程は、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末(粒子)と解繊ショートカットファイバーの形態の材料(含まれる場合)とを混合してウェブ原料を得る工程である。このとき同時に、任意の他の材料を混合することができる。任意の他の材料の形状は、繊維状でも粒子状でもよい。任意の他の材料の例としては、熱融着性樹脂、添加剤等の必要に応じて添加される助剤等が挙げられる。これらの材料の添加順に特に限定は無く、また、これらの材料は、混合工程よりも後の工程で、例えば散布等によって添加することもできる。
【0096】
混合に際しては、解繊ショートカットファイバーの分散性を向上させるために、解繊ショートカットファイバーと他の材料とを攪拌することが好ましい。ただし、解繊ショートカットファイバーの破断を防ぐために、機械的剪断力を利用した攪拌ではなく、空気流を用いた攪拌を適用することが好ましい。
【0097】
混合工程は、解繊工程の後でもよいし、解繊工程と同時でもよい。混合工程を解繊工程と同時とする場合には、解繊工程での空気流を利用して、解繊ショートカットファイバーと任意の材料を混合する。また、後述する粒子散布工程で解繊ショートカットファイバーのウェブ形成ラインにシクロデキストリンの粉末(粒子)および/または任意の粒子を投入し、混合してもよい。
【0098】
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、エアレイド法によってウェブ原料からエアレイドウェブを得る工程である。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
【0099】
(粒子散布工程)
粒子散布工程は、既知の方法よってウェブ原料に粉末(粒子)の形態の材料を配合する工程である。繊維に粉末(粒子)の形態の材料を混合してウェブを形成する方式もしくはウェブの表面もしくはキャリアシート上に散布する方式のいずれを用いてもよい。
【0100】
本実施形態におけるウェブ形成工程では、例えば、
図3に示すウェブ形成装置1を用いる。このウェブ形成装置1は、コンベア10と透気性無端ベルト20とウェブ原料供給手段30と第1のキャリアシート供給手段40と第2のキャリアシート供給手段50とサクションボックス60と備える。
【0101】
ここで、コンベア10は、複数のローラー11によって構成されている。透気性無端ベルト20は、コンベア10に装着されて回転するようになっている。ウェブ原料供給手段30は、透気性無端ベルト20にウェブ原料を空気流と共に供給するものである。第1のキャリアシート供給手段40は、透気性無端ベルト20に向けて第1のキャリアシート41を供給するものである。第2のキャリアシート供給手段50は、透気性無端ベルト20を通過した第1のキャリアシート41に向けて第2のキャリアシート51を供給するものである。サクションボックス60は、透気性無端ベルト20をその内側から吸引するものである。
【0102】
ウェブ形成装置1においては、ウェブ原料供給手段30は透気性無端ベルト20の上方に設置され、第1のキャリアシート供給手段40は透気性無端ベルト20よりも上流に設置され、第2のキャリアシート供給手段50は透気性無端ベルト20よりも下流に設置されている。
【0103】
上記ウェブ形成装置1を用いたウェブ形成工程では、各ローラー11を同方向に回転させることによりコンベア10を駆動させて透気性無端ベルト20を回転させる。また、透気性無端ベルト20の上に接触するように、第1のキャリアシート41を第1のキャリアシート供給手段40から繰り出す。
【0104】
次いで、サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、ウェブ原料供給手段30から空気流と共にウェブ原料を下降させ、透気性無端ベルト20上の第1のキャリアシート41上に繊維混合物を落下、堆積させる。これにより、エアレイドウェブWを形成する。
【0105】
次いで、エアレイドウェブWの上に、第2のキャリアシート51を第2のキャリアシート供給手段50より供給して、エアレイドウェブ含有積層シートを得る。
【0106】
(結着工程)
結着方式は、水を使わずに結着させる観点から、サーマルボンド方式を使用することが好ましい。サーマルボンド方式による結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、解繊ショートカットファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる工程である。
【0107】
エアレイドウェブの加熱処理としては、熱風処理、赤外線照射処理が挙げられ、装置が低コストである点では、熱風処理が好ましい。
【0108】
熱風処理としては、エアレイドウェブを、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
【0109】
本実施形態のように、エアレイドウェブが第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートに挟まれて積層シートになっている場合には、積層シートのまま熱風処理してもよい。第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートは、熱風処理後にエアレイドウェブから剥離することができる。加熱処理温度は、熱融着性樹脂が溶融する温度とすればよい。
【0110】
結着工程の後には、シクロデキストリン含有シートの厚みおよび密度を微調整する目的で、加熱ロールに通して圧縮処理してもよい。
【0111】
(作用効果)
上記製造方法では、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末(粒子)を、水を介さずに、粉末(粒子)の形態のまま、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層中に含有させることができる。そのため、製造工程中にシクロデキストリンの内部空洞から放出されてしまう機能性成分が少なく、結果として、製造されたシクロデキストリン含有シートは良好な徐放性能を示す。
【0112】
(シクロデキストリン含有シートの用途)
以下に、本発明に係るシクロデキストリン含有シートの用途を例示する。
【0113】
シクロデキストリン含有シートの用途としては、(1)衣料用、(2)防護用、(3)医療用、(4)建材用、(5)土木用、(6)車両用、(7)衛生用、(8)家具・インテリア用、(9)ワイパー用、(10)フィルター用、(11)寝装用、(12)農業・園芸用、(13)皮革用、(14)生活資材用、(15)工業資材用、などが挙げられる。
【0114】
(1)衣料用としては、例えば、衣料部材、ディスポーザブル衣料(ディスポ衣料ともいう)、靴、ワッペン、手袋、スリッパ、帽子などが挙げられる。前記衣料部材の具体的な例としては、芯地、接着芯地、中入れ綿、ブラジャーパッド、肩パッド、ジャンパーライナー等である。前記ディスポ衣料の具体的な例としては、イベントジャンパー、旅行下着等である。前記靴の具体的な例としては、インソール材、釣革底等である。
【0115】
(2)防護用としては、例えば、保護衣、防護用品などが挙げられる。前記保護衣の具体的な例としては、仕事着、実験着、防護服等である。前記防護用品の具体的な例としては、安全靴、作業手袋、防煙マスク、防塵マスク、防毒マスク等である。
【0116】
(3)医療用としては、例えば、ガーゼ、手術着、覆布セット、お産用バット、キャップ、マスク、シーツ類、抗菌マット、パップ剤基布、湿布剤基布、ギブス材、白血球分離材、人工皮膚などが挙げられる。
【0117】
(4)建材用としては、例えば、ルーフィング、タフト、カーペット基布、結露防止シート、調温シート、調湿シート、壁装材、断熱材、吸湿材、防音材、吸音材、防振材、木質材、養生シートなどが挙げられる。
【0118】
(5)土木用としては、例えば、ドレーン材、ろ過材、吸出し防止材、分離材、遮水シート、補強材、保護材、コンクリート補強シート、アスファルトオーバーレイ材、地中埋設管の補修材、防触材などが挙げられる。
【0119】
(6)車両用としては、例えば、自動車内装材、自動車部品などが挙げられる。前記自動車内装材の具体的な例としては、フロアーマット、ドアートリム、トランクマット、天井材、リアーパーセル、内張り布、ヘッドレスト、ボンネットカバー、吸音材、防振材等である。前記自動車部品の具体的な例としては、エアークリーナー、オイルクリーナー、室内清浄フィルター、外気取り入れフィルター等である。
【0120】
(7)衛生用としては、例えば、おむつ、生理用品、救急用品、清浄用品、おしぼり、マスクなどが挙げられる。前記おむつの具体的な例としては、紙おむつ、おむつカバー等である。前記生理用品の具体的な例としては、ナプキン、タンポン等である。前記救急用品の具体的な例としては、ガーゼ、救急絆創膏、綿棒等である。前記清浄用品の具体的な例としては、ウェットティッシュ、化粧綿、母乳パッド、清拭シート、汗吸収シート(顔・脇・首・足等用)、抗菌・除菌シート、抗ウイルス性シート、抗アレルゲンシート、抗菌防臭シート等である。前記マスクの具体的な例としては、使い捨て立体マスク等である。
【0121】
(8)家具・インテリア用としては、例えば、カーペット、フローリング、カーテン、家具部品、建具、壁紙、装飾品などが挙げられる。前記カーペットの具体的な例としては、カーペット、カーペット基布、タイルカーペット、電気カーペット、マット基布、アンダーカーペット等である。前記家具部品の具体的な例としては、クッション材、応接チェアーの中入れ綿等である。前記建具の具体的な例としては、障子紙、襖、畳関係、ブラインド等である。前記装飾品の具体的な例としては、ペナント、ロールスクリーン、造花等である。
【0122】
(9)ワイパー用としては、例えば、ワイパー、ウェットワイパー、油こし用、複写機クリーニング材などが挙げられる。
【0123】
(10)フィルター用としては、例えば、空気用フィルター、バグフィルター、液体用フィルター、エレクトレットフィルター、掃除機用フィルター、フィルタープレス用フィルター、排水処理用マット、塩分除去フィルター、ガス吸着フィルター、家庭用空気清浄フィルター、浄水器用フィルターなどが挙げられる。前記空気用フィルターの具体的な例としては、粗塵用、中高性能用、超高性能用等である。
【0124】
(11)寝装用としては、例えば、ふとん、枕カバー、シーツなどが挙げられる。前記ふとんの具体的な例としては、ふとん中綿、ふとん袋等である。
【0125】
(12)農業・園芸用としては、例えば、苗床用シート、べたがけシート、防霜シート、防草シート、園芸プランターなどが挙げられる。
【0126】
(13)皮革用としては、例えば、人工皮革用基布、合成皮革用基布、塩ビレザー用基布などが挙げられる。
【0127】
(14)生活資材用としては、例えば、収納用品、包装資材、掃除用品、袋物、食品用、生活雑貨、台所用品、テーブルトップ、事務用品、スポーツ用品、手芸用品、DIY用シート、DIY用ボード、アイロンマット、美容資材などが挙げられる。前記収納用品の具体的な例としては、収納袋、スーツカバー、防虫カバー等である。前記包装資材の具体的な例としては、風呂敷、包装等である。前記掃除用品の具体的な例としては、化学雑巾、たわし等である。前記袋物の具体的な例としては、化学カイロ、乾燥剤袋、ショッピングバッグ等である。前記食品用の具体的な例としては、ティーバッグ、コーヒーバッグ、食品バッグ、鮮度保持材、食品吸水用シート等である。前記生活雑貨の具体的な例としては、カレンダー、滑り止めシート、アイマスク、冷感シート、温感シート、ネックスカーフ、手袋、ブックカバー、防臭シート、芳香剤基材等である。前記台所用品の具体的な例としては、水切りシート、クッキングペーパー、たわし、ロールタオル、消火布等である。前記テーブルトップの具体的な例としては、テーブルクロス、ランチョンマット、コースター等である。前記事務用品の具体的な例としては、スタンプパッド、フェルトペン芯、掲示用板、黒板消し、封筒等である。前記スポーツ用品の具体的な例としては、ゴルフクラブヘッドカバー、テニスグリップ等である。美容資材としては、フェイスマスク、パフ、美容パック、美容手袋等である。
【0128】
(15)工業資材用としては、例えば、工業資材、電気資材、電池、製品材料、OA機器、AV機器、ロール、機器部材、楽器、包材などが挙げられる。前記工業資材の具体的な例としては、研磨材、吸油材、製紙フェルト、耐熱クッション、水切り材、断熱材、防音材、防振材等である。前記電気資材の具体的な例としては、電気絶縁材、プリント基板用基材、電磁波シールド材、静電気除去シート、電線押さえ巻きテープ等である。前記電池の具体的な例としては、セパレーター等である。前記製品材料の具体的な例としては、FRP(繊維強化プラスチック)基材、テープ、印刷用基布、合成紙、静電記録紙、接着テープ、熱転写シート、放射線遮蔽マット等である。前記OA機器の具体的な例としては、ディスクライナー、包装材等である。前記AV機器の具体的な例としては、スピーカー振動板、吸音板等である。前記ロールの具体的な例としては、バフロール、塗布ロール、絞液ロール等である。前記機器部材の具体的な例としては、Vベルト、コンベアーベルト、タイミングベルト等である。前記楽器の具体的な例としては、ピアノキークッション、ハンマーレール等である。前記包材の具体的な例としては、ドライアイス用包材、パッキング等である。
【0129】
本発明のシクロデキストリン含有シートは、特に、食品トレイマット、食品包装シート、美容シート、および虫除けシートなどの生活資材用シート(上記(14)等)、抗菌・抗ウイルス性シートなどの医療用および衛生用シート(上記(3)、(7)等)、マスクなどの防護用、医療用および衛生用シート(上記(2)、(3)、(7)等)、掃除用シート(上記(7)、(9)、(10)等)、ならびにおしぼりなどの衛生用シート(上記(7)等)等の用途に好適に使用されることができる。また、上記分類に限定されることなく、同一のシクロデキストリン含有シートを、多岐に亘る分野および用途において使用することができる。
【0130】
(シクロテキストリン含有シートの各用途に適した層構成の例)
図2を参照して、本発明のシクロテキストリン含有シートの各用途に適した層構成の例を示す。これは、単なる例示目的であり、本発明を制限するものではない。なお、同一の符号は同一の構成を示す。
【0131】
図2(a)は、どのような用途においても好適に使用されることができる、汎用の構成の例を示す。詳細には、
図2(a)には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCと熱融着性樹脂Aとを含むシクロデキストリン含有層1010と、その両面に配設された不織布3010と、からなる層構成が示される。
【0132】
本例において、不織布3010は、木材パルプを主原料として乾式法にて形成されている。不織布3010は、例えば、原材料を、エアレイド法を用いて堆積させ、および表面にバインダをスプレーすることにより接着して、シート化したものであってもよい。そのような不織布として、例えば、王子キノクロス株式会社製のキノクロス(登録商標)を使用することができる。かかる不織布は、ウェブ密度が低く、保液性・ろ過性・嵩高性などに優れている。そのため、使用時に水分を通過させやすく、および水分を保持する性能が高く、好適に用いられる。
【0133】
図2(b)は、冷感シートに好適に使用されることのできる構成の例を示す。詳細には、
図2(b)には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCと熱融着性樹脂Aとを含むシクロデキストリン含有層1010と、その一方の面に配設された不織布3010と、その他方の面にこの順番で配設された不織布3020およびティシュ3030と、からなる層構成が示される。
【0134】
本例において、シクロデキストリン含有層1010とティシュ3030との間に配設される不織布3020は、例えば、パルプと合成繊維とを含んでいてもよく、合成繊維は高分子吸収繊維(SAF)を含んでいてもよい。したがって、不織布3020の層は、水分の吸収性および保持性が高い。ここで、シクロデキストリン含有層1010は、不織布3020の表面に置かれた層として存在していてもよく、不織布3020を構成する繊維間に一部または全部が埋め込まれる形で存在していてもよい。すなわち、シクロデキストリン含有層1010と不織布3020とは、シクロテキストリン含有シートの厚さ方向において、別個に存在していてもよく重複する部分を有して存在していてもよい。また、外層となるティシュ3030の層は、薄く密度が低いため、水分の透過性が良好である。さらにティシュ3030は、柔らかい肌触りを提供することができる。また、もう一方の外層となる不織布3010の層は、柔らかい肌触りを提供することができる。加えて、不織布3010は、保液性が高いため、シクロデキストリンCを添加した効果を徐々に体感させる効果がある。したがって、かかる構成のシートは、肌に当てて用いる用途に好適に用いられ、効果が発現しやすく持続されやすい傾向にある。
【0135】
図2(c)は、冷感シート、衛生用シート、ワイパー等に好適に使用されることのできる構成の例を示す。詳細には、
図2(c)には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCと熱融着性樹脂Aとに加えて繊維を含むシクロデキストリン含有層1020と、その両面に配設されたティシュ3030と、からなる層構成が示される。
【0136】
本例において、シクロデキストリン含有層1020は不織布の層であり、繊維としてパルプと合成繊維とを含み、合成繊維は高分子吸収繊維(SAF)を含んでいてもよい。したがって、シクロデキストリン含有層1020は、水分の吸収性および保持性が高い。また、外層となるティシュ3030の層は、薄く密度が低いため、水分の透過性が良好である。さらにティシュ3030は、柔らかい肌触りを提供することができる。したがって、かかる構成のシートは、肌に当てて用いる用途に好適に用いられ、効果が発現しやすく持続されやすい傾向にある。また、外層として、ティシュ以外の層を用いることもでき、ティシュの上にさらに表裏面材を設けることもできる。例えば片面に水分の流出を防ぐための層を設けることができる。層1020は、繊維によって形成される空隙の中に粒子を含有させることができる。そのため、層1020は、バインダとしての樹脂を用いなくとも粒子を層中に保持することができるので、熱融着性樹脂Aを含んでいてもよく、含んでいなくともよい。熱融着性樹脂Aを含む場合、粉落ちを軽減させる効果がある。
【0137】
図2(d)は、汗取りパッド等に好適に使用されることのできる構成の例を示す。詳細には、
図2(d)には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCと熱融着性樹脂Aと繊維に加えて添加剤Yを含むシクロデキストリン含有層1030と、その一方の面に配設された任意の不織布3040と、その他方の面に配設されたフィルム3050と、からなる層構成が示される。
【0138】
本例において、シクロデキストリン含有層1030は不織布の層であり、繊維としてパルプと合成繊維とを含み、合成繊維は高分子吸収繊維(SAF)を含んでいてもよい。したがって、シクロデキストリン含有層1030は、水分の吸収性および保持性が高い。また、本例において、シクロデキストリン含有層1030は、添加剤Yを含んでいてもよい。添加剤Yは、ゼオライト、活性炭、シリカなどの任意の無機顔料であってもよい。添加剤Yとして、抗菌性および吸収性を有する材料を選択することにより、汗取りパッド等の用途に用いるシクロデキストリン含有シートの効果を促進することができる。
【0139】
外層となるフィルム3050の層は、水分を通さないかまたはほとんど通さないため、もう一方の外層となる任意の不織布3040の面を人の肌等の適用部位に当てることにより、適用部位に対して添加剤を効果的に作用させることができると共に、吸収した汗等の液体の反対面からの放出を防ぐことができる。なお、フィルム3050の代わりに、撥水性の高い不織布を使用してもよく、フィルム3050の外側(層1030とは反対側)に粘着層を設け、衣類に留めて使用することもできる。
【0140】
図2(e)は、掃除シート等に好適に使用されることのできる構成の例を示す。詳細には、
図2(e)には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCと熱融着性樹脂Aと繊維と添加剤Zとを含むシクロデキストリン含有層1040と、その一方の面に配設された不織布、フィルムなどの任意の層3060と、からなる層構成が示される。
【0141】
本例において、シクロデキストリン含有層1040は不織布の層であり、繊維として合成繊維を含む。合成繊維を主原料とする場合、シート強度が強く、かきとり性(固形物を掻き落とす性能)の良いシートを提供することができる。合成繊維は、吸液性、保液性を高める目的で、高分子吸収繊維(SAF)を含んでいてもよく、吸液性を高める目的でパルプなどの吸水性繊維を含んでいてもよい。また、本例において、シクロデキストリン含有層1040は、添加剤Zを含んでもよい。添加剤Zは、クエン酸、重曹などの任意の掃除用成分であってもよい。添加剤Zとして、掃除用成分を選択することにより、掃除シート等の用途に用いるシクロデキストリン含有シートの効果を促進することができる。1つの変形例として、シクロデキストリン含有層1040には、層3060とは反対側の面に、通水性もしくは通気性のある不織布等のシートが設けられていてもよい。
【0142】
以上、構成例を説明したが、本発明は、これらの構成に限定されるものではない。
【実施例】
【0143】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0144】
[実施例1]
<シクロデキストリン含有シートの製造>
ショートカットのレーヨン繊維(繊度3.3dtex、繊維長5mm)およびショートカットの芯部分がポリエチレンテレフタレート(PET)であり鞘部分がポリエチレン(PE)である芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/PE複合芯鞘繊維、繊度3.3dtex、繊維長5mm、鞘部融点130℃)を、それぞれ、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、それぞれの解繊ショートカットファイバーを得た。
【0145】
次いで、解繊ショートカットファイバーの形態のレーヨン繊維と、解繊ショートカットファイバーの形態の熱融着性複合繊維と、を70/30の割合(質量比)で空気流により均一に混合してレーヨン/(PET/PE)の繊維混合物(ウェブ原料)を得た。
【0146】
シクロデキストリンにジンジャー成分を包接させた材料Mと、ポリエチレン(PE)パウダーと、を80/20の割合(質量比)で混合し、材料M/PEパウダーの粒子混合物を得た。
【0147】
次いで、キャリアシート上に材料M/PEパウダーの粒子混合物を散布した後、
図3に示すウェブ形成装置1を用い、繊維混合物からエアレイドウェブを形成したシートを得た。
【0148】
具体的には、コンベア10に装着されて走行する透気性無端ベルト20の上に、第1のキャリアシート供給手段40によって、ティシュ(坪量14g/m
2)からなる第1のキャリアシート41を繰り出した。
【0149】
サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、その第1のキャリアシート41の上に、材料M/PEパウダーの粒子混合物を30g/m
2となるように散布し、その上にウェブ原料供給手段30から空気流と共に上記繊維混合物を落下堆積させた。その際、エアレイドウェブ部分あたりのショートカットファイバーの坪量が230g/m
2となるように、繊維混合物を供給した。その上にティシュ(坪量14g/m
2)からなる第2のキャリアシート51を積層して、エアレイドウェブ含有積層シートを得た。
【0150】
得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、140℃で熱風処理して、坪量288g/m
2のシクロデキストリン含有シートを得た。
【0151】
[実施例2]
ショートカットのレーヨン繊維を針葉樹化学パルプに変更し、エアレイド法のウェブ形成装置を用いて、針葉樹化学パルプと芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/PE複合芯鞘繊維)とを70/30の割合(質量比)で空気中で均一に混合しつつ、エアレイドウェブを形成した以外は実施例1と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は288g/m
2であった。
【0152】
[実施例3]
ショートカットのレーヨン繊維をPET繊維(繊度3.3dtex、繊維長5mm、融点260℃)に変更し、熱融着性複合繊維を高密度ポリエチレン繊維(繊維長1.5mm、融点120℃)に変更し、これらの繊維を50/50の割合(質量比)で空気中で均一に混合しつつエアレイドウェブを形成した以外は実施例1と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は288g/m
2であった。
【0153】
[実施例4]
材料M/PEパウダーの粒子混合物を5g/m
2となるように散布した以外は実施例3と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は263g/m
2であった。
【0154】
[実施例5]
材料M/PEパウダーの粒子混合物をキャリアシート上に散布する代わりに、ジンジャー成分を包接させた材料Mを24g/m
2となるようにウェブ原料供給手段30から空気流と共に繊維混合物と混合しながら落下堆積させ、第1と第2のキャリアシートをPETスパンボンド(坪量15g/m
2)とした以外は実施例3と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は284g/m
2であった。
【0155】
[実施例6]
ショートカットのPET繊維を針葉樹化学パルプに変更し、エアレイド法のウェブ形成装置を用いて、針葉樹化学パルプと高密度ポリエチレン繊維とを50/50の割合(質量比)で空気中で均一に混合しつつエアレイドウェブを形成した以外は実施例5と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は284g/m
2であった。
【0156】
[実施例7]
コンベア10に装着されて走行する透気性無端ベルト20の上に、第1のキャリアシート供給手段40によって、PETスパンボンド不織布(15g/m
2)からなる第1のキャリアシート41を繰り出した。
【0157】
サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、その第1のキャリアシート41の上に、ジンジャー成分を包接させた材料Mを24g/m
2を散布した。
【0158】
次いで、PETスパンボンド不織布(15g/m
2)からなる第2のキャリアシート51を積層して、積層シートを得た。
【0159】
得られた積層シートを、凹凸のあるエンボスロールで加熱圧着して、坪量54g/m
2のシクロデキストリン含有シートを得た。
【0160】
[実施例8]
積層シートの四辺をヒートシール加工した以外は実施例7と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は54g/m
2であった。
【0161】
[実施例9]
第1のキャリアシート41の上に、材料M/PEパウダーの粒子混合物を散布する代わりに、エアレイドウェブの上に材料Mが24g/m
2となるように散布し、EVA系の接着剤を5g/m
2となるように溶融押出し、PEフィルム(26g/m
2)と貼合した以外は実施例2と同様にしてシクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は299g/m
2であった。
【0162】
[実施例10]
シクロデキストリンにジンジャー成分を包接させた材料Mの代わりにシクロデキストリンにわさび成分を包接させた材料Nを使用した以外は実施例1と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は288g/m
2であった。
【0163】
[実施例11]
シクロデキストリンにジンジャー成分を包接させた材料Mの代わりにシクロデキストリンにl-メントール成分を包接させた材料Qを使用した以外は実施例1と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は288g/m
2であった。
【0164】
[実施例12]
シクロデキストリンにジンジャー成分を包接させた材料Mの代わりにシクロデキストリンにl-メントール成分を包接させた材料Qを使用し、ショートカットのレーヨン繊維を針葉樹化学パルプと高分子吸収繊維(SAF)に変更し、エアレイド法のウェブ形成装置を用いて、針葉樹化学パルプと高分子吸収繊維(SAF)と芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/PE複合芯鞘繊維)とを35/35/30の割合(質量比)で空気中で均一に混合しつつ、エアレイドウェブを形成した以外は実施例1と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は288g/m
2であった。
【0165】
[実施例13]
シクロデキストリンにローズ香料を包接させた材料Rと、ポリエチレン(PE)パウダーと、を20/80の割合(質量比)で混合し、材料R/PEパウダーの粒子混合物を得た。第1と第2のキャリアシートとしてレーヨンスパンレース(坪量28g/m
2)を使用した。第1のキャリアシートの上に材料R/PEパウダーの粒子混合物を10g/m
2となるように散布し、その上に針葉樹化学パルプと芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/PE複合芯鞘繊維)とを70/30の割合(質量比)で空気中で均一に混合しつつ落下堆積させてエアレイドウェブを形成した。その際、エアレイドウェブ部分あたりのショートカットファイバーの坪量が60g/m
2となるように、繊維混合物を供給した。エアレイドウェブの上にPEパウダーを5g/m
2となるように散布し、その上に第2のキャリアシートを積層した。それ以外は、実施例2と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は131g/m
2であった。
【0166】
[実施例14]
材料R/PEパウダーの粒子混合物を20g/m
2となるように散布した以外は、実施例13と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は141g/m
2であった。
【0167】
[実施例15]
第1と第2のキャアシートとしてキノクロス(坪量40g/m
2)を使用した以外は、実施例14と同様にして、シクロデキストリンシートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は165g/m
2であった。
【0168】
[実施例16]
第1と第2のキャリアシートとして、レーヨンスパンレース(坪量28g/m
2)を用い、第1と第2のキャリアシートの間に材料R/PEパウダーの粒子混合物を20g/m
2となるように散布し、得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、140℃で熱風処理して、坪量76/m
2のシクロデキストリン含有シートを得た。
【0169】
[実施例17]
第1と第2のキャリアシートとして、ヒートシール性のあるPET/PEスパンレース(坪量20g/m
2)を用い、第1と第2のキャリアシートの間に材料Rを10g/m
2となるように散布し、得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、140℃で熱風処理して、坪量50g/m
2のシクロデキストリン含有シートを得た。
【0170】
[実施例18]
エアレイドウェブ上にPEパウダーを5g/m
2となるように散布し、第2のキャリアシートとして、ティッシュ(坪量14g/m
2)を繰り出し、その上にPEフィルム(坪量26g/m
2)をホットメルト樹脂を10g/m
2となるように塗布して貼合した以外は、実施例11と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は329g/m
2であった。
【0171】
[実施例19]
材料N/PEパウダーの粒子混合物を55g/m
2となるように散布した以外は実施例10と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は313g/m
2であった。
【0172】
[実施例20]
材料M/PEパウダーの粒子混合物を14g/m
2となるように散布し、エアレイドウェブ部分あたりのショートカットファイバーの坪量が56g/m
2となるように、繊維混合物を供給した。また、第1と第2のキャリアシートとして、レーヨンスパンレース(坪量28g/m
2)を用いた以外は実施例2と同様にして、シクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は126g/m
2であった。
【0173】
[比較例1]
材料M/PEパウダーの粒子混合物を散布しない以外は実施例2と同様にしてシートを得た。得られたシートを幅100mm、長さ100mmの小片にし、金属バット内に入れた。材料M2.4gを100mlの水に溶解し、材料Mの水溶液Sを得た。水溶液S100mlのうち10mlを金属バット内に入れて小片を浸し、80℃の乾燥機に2時間入れて乾燥させてシクロデキストリン含有シートを得た。得られたシクロデキストリン含有シートの坪量は281g/m
2であった。
【0174】
[比較例2]
材料M/PEパウダーの粒子混合物を散布しない以外は実施例2と同様にしてシートを得た。得られたシート(シクロデキストリンを含有せず)の坪量は258g/m
2であった。
【0175】
(シクロデキストリン含有シートの官能評価1)
実施例1から20および比較例1で得られたシクロデキストリン含有シートを裁断して、幅50mm、長さ50mmの試験片を3枚作製した。各試験片を50mlバイアル内に入れ、バイアルへの注水または非注水により、水1mlを加えたバイアル、および水を加えていないバイアルを用意した。バイアルの蓋を開けて表1に示した判定基準に従って臭気強度を判定し、数値で評価を示した。数値が大きいほど、臭気強度が高く、シクロデキストリン含有シートから放出された機能性成分が多いことを示す。
【0176】
【表1】
【0177】
(シクロデキストリン含有シートの官能評価2)
実施例2および比較例1で得られたシクロデキストリン含有シートを裁断して、幅50mm、長さ50mmの試験片を1枚作製した。各試験片をそれぞれ100mlビーカー内に入れ、ビーカーへ水1mlを加えた後、80℃の乾燥機で2時間乾燥させた。取り出したシートをそれぞれ、バイアルに入れて水1mlを加え、蓋を開けて表1に示した判定基準に従って臭気強度を判定し、数値で評価を示した。数値が大きいほど、臭気強度が高く、シクロデキストリン含有シートから放出された機能性成分が多いことを示す。
【0178】
(シクロデキストリン含有シートの官能評価3)
実施例11、12で得られたシクロデキストリン含有シートおよび比較例2で得られたシート(シクロデキストリンを含有せず)を裁断して、幅50mm、長さ50mmの試験片を1枚作製した。各試験片をそれぞれ100mlビーカー内に入れ、ビーカーへ室温の水1mlを加えた後、5分間皮膚に貼付し、表2に示した判定基準に従って冷感を判定し、数値で評価を示した。数値が大きいほど、冷感を強く感じられることを示す。
【0179】
【表2】
【0180】
(食品へのカビ抵抗性試験)
実施例19で得られたシクロデキストリン含有シートおよび比較例2のシートを食品とともにチャック付ポリ袋に入れ、室温放置し、1週間毎にカビの発育の有無を目視確認し、カビを確認した日を記録した(4週間実施)。4週間目(28日目)にカビが確認できなかった場合は、カビを確認した日を「28日以上」と記録した。食品としては、市販のお餅(生きり餅、株式会社丸善製)および食パン(超熟、PASCO製)を用いた。
【0181】
(消臭性試験)
実施例20で得られたシクロデキストリン含有シートについての消臭性評価は、一般社団法人繊維評価技術協議会のSEKマーク繊維製品認証基準で定める方法によって評価した。評価ガスとしては、アンモニアガスを用い、1時間後のアンモニアガスの減少率を測定した。減少率が大きいほど、消臭性が高いことを示す。
【0182】
(評価結果)
表3から表7に、評価試験の結果を示す。試験参加者7人による評価の平均値を示した。
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
【表5】
【0186】
【表6】
【0187】
【表7】
【0188】
本発明のシクロデキストリン含有シートは、水の存在下で高い臭気強度を示した。また、本発明のシクロデキストリン含有シートは、一旦水分を与えて乾燥した後、再度水分を与えた際に、比較例よりも高い臭気強度を示した。すなわち、本発明のシクロデキストリン含有シートは、比較例と比べて、製造されてから試験されるまでの間に揮発等によって失われた機能性成分が少なく、機能性成分の徐放効果に優れていると考えられる。
【0189】
また、l−メントール成分を包接させたシクロデキストリンを含有する本発明のシクロデキストリン含有シートは、シクロデキストリンを含有しない比較例2と比べて、格別な冷感作用を奏した。
【0190】
さらに、抗カビ性能を有するワサビ成分を包接したシクロデキストリンは、空気中もしくは食品中の水分によってワサビ成分を放出し、食品の抗カビ性を示すことを確認した。
【0191】
また、機能性成分を放出したシクロデキストリンは他の成分を包接することができるため、消臭性能を有するシートを提供することができた。
【0192】
以上に、本発明のシクロデキストリン含有シートを限定目的ではなく例示的に説明してきた。シクロデキストリンは水分を付与することにより、包接している機能性成分を放出するため、本発明で得られたシートは、水分を付与することにより機能性成分を効果的に放出することができる。付与する水の温度は問わないが、水温を高くすることで機能性成分の放出を効率化することができる場合もある。シクロデキストリンは水分が無い状態では、包接している機能性成分を放出しないため、機能性成分を放出せずに製造や保管することができる。例えば、においの強い機能性成分を使用して製造する場合、製造工程内ににおいが残留することを防ぐことができる。また、シクロデキストリンは、紫外線や熱などに弱い物質、液体の状態では揮発性の高い物質を安定化させることができるため、機能性成分の変質を防ぎ、機能性成分を効率良く放出でき、長期保管できるシートを作製することが可能になる。また、機能性成分を放出したシクロデキストリンは他の成分を包接することができるため、例えば、消臭性能を有するシートを提供することができる。
【0193】
本発明で得られたシートに付与する水分は、シートが湿る程度の微量でもシート全体が浸漬する量でもよい。付与する水分は、水が含まれていれば他の成分が含まれていてもよい。例えば、体液や動植物に含まれる水分、人工的に混合した任意の液体、アルコールなどを含有する液体であってもよい。