(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、請求項2に記載のコンデンサ用フィルム。
前記熱可塑性樹脂はポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリエチレンテレフタラート樹脂からなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載のコンデンサ用フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルムは、複数層から構成されるコンデンサ用フィルムであって、
前記コンデンサ用フィルムの酸素ガス透過係数Cmuと、前記コンデンサ用フィルムを単層として形成した場合のフィルムの酸素ガス透過係数Cmoが、以下の関係式(1):
(1) Cmo/Cmu≧1.1 (即ち、(Cmo/Cmu)が1.1以上)
を満たし、且つ、
前記コンデンサ用フィルムの厚さが1〜35μmである、コンデンサ用フィルムである。なお、前記コンデンサ用フィルムを単層として形成した場合のフィルムとは、前記コンデンサ用フィルムを構成する熱可塑性樹脂組成物と同じ熱可塑性樹脂組成物を溶融混練して樹脂成分を均質に分散して形成したフィルムであり、前記コンデンサ用フィルムと同一の厚さを有する。
上記フィルムは、当該フィルムの厚さや樹脂成分等を変更せずに層数のみ変更する(即ち、複数層でなく単数層としてフィルムを形成する)場合と比較して、高温下での絶縁特性に優れるので、高温下での高い耐電圧性を有する。そのため、上記フィルムを用いて得られるコンデンサは、当該フィルムの厚さや樹脂成分等を変更せずに層数のみ変更する場合(単数層としてフィルムを形成する場合)と比較して、高温下での耐電圧性に優れる。
【0012】
本発明のフィルムの高絶縁特性発現の原理について、説明する。本発明者は、フィルムの絶縁破壊は、最も絶縁耐圧の劣る部位が起点となって、そこから絶縁破壊が始まると考えた。つまり、同じ原料から製造したフィルムであっても、フィルムにピンホールなどの欠陥部分が多ければ絶縁耐圧の低いフィルムになり、欠陥部分が少なければ絶縁耐圧の高いフィルムになると考えた。そこで、<1>フィルムの欠陥の程度の指標としてヘリウムガス透過係数および酸素ガス透過係数とフィルム中の層数との関係、について着目した。また、<2>上記関係と当該フィルムを用いたコンデンサの高温下での絶縁破壊電圧との関係、について着目した。
【0013】
その結果、上記<1>の関係については、フィルム中の層数とヘリウムガス透過係数との間には、相関関係がなかったことを見出したとともに、フィルム中の層数と酸素ガス透過係数との間には相関関係があり、フィルム中の層数が複数であると酸素ガス透過係数が減少することを見出した。また、上記<2>の関係については、酸素ガス透過係数Cmuが上記の(1)の関係式を満たすと、高温下での絶縁破壊電圧性に優れることを見出した。Cmuは、複数層(2層以上)から構成される前記コンデンサ用フィルムの酸素ガス透過係数であり、Cmoは、前記コンデンサ用フィルムを単層(1層)として形成した場合のフィルムの酸素ガス透過係数である。つまり、Cmo/Cmuは、Cmuに対するCmoの比率である。Cmoについて、例えば、本明細書における比較例1、4および7における酸素ガス透過係数がそれぞれ当該Cmoとなる。
Cmo/Cmuは、フィルム全体の厚さ方向の欠陥の改善率を示すパラメータといえる。即ち、Cmo/Cmuが高ければ高いほど厚さ方向の欠陥が改善されていることを示し、結果として、単層のフィルムと同じ厚さを有するにもかかわらず、絶縁特性および長期耐用性により優れることを示す。
Cmo/Cmu(Cmo÷Cmuともいう)は、本発明の効果の観点から、Cmo/Cmu≧1.1が好ましく、Cmo/Cmu≧1.15がより好ましく、Cmo/Cmu≧1.2がさらに好ましく、Cmo/Cmu≧1.25が特に好ましく、Cmo/Cmu≧1.3が非常に好ましい。また、Cmo/Cmuは、本発明の効果の観点から、Cmo/Cmu≦100が好ましく、Cmo/Cmu≦20が好ましく、Cmo/Cmu≦10がより好ましく、Cmo/Cmu≦2がさらに好ましく、Cmo/Cmu≦1.5が特に好ましい。
【0014】
本発明のフィルムの酸素ガス透過係数Cmuは、上記Cmo/Cmuが(1)の式を満たす限り特に限定されないが、本発明のフィルムの樹脂成分がポリプロピレンである場合、Cmuは、上限値については、1.8×10
−16[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下が好ましく、1.7×10
−16[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下がより好ましく、1.6×10
−16[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下がさらに好ましく、Cmuは、下限値については、1.0×10
−17[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上が好ましく、1.0×10
−16[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上がより好ましく、1.1×10
−16[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上がさらに好ましく、1.4×10
−16[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上が特に好ましい。ポリスチレンの場合、Cmuは、上限値については、9.2×10
−17[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下が好ましく、9.0×10
−17[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下がより好ましく、8.5×10
−17[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下がさらに好ましく、8.0×10
−17[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下がさらに好ましく、Cmuは、下限値については、1.0×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上が好ましく、3.0×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上がより好ましく、5.0×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上がさらに好ましい。ポリエチレンテレフタラートの場合、Cmuは、上限値については、2.0×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下が好ましく、1.9×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下がより好ましく、1.85×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以下がさらに好ましく、Cmuは、下限値については、1×10
−19[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上が好ましく、1.0×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上がより好ましく、1.2×10
−18[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]以上がさらに好ましい。なお、ガス透過係数は、JIS K7126−1:2006に従って測定することができる。例えば、フィルム(試験片)をガス透過率測定装置(例えば、株式会社東洋精機製作所製、ガス透過率測定装置BR-3,BT-3)にセットし、圧力センサ法にてガス透過度を測定し、その平均値に試験片の厚さを乗ずることによって、ガス透過係数を算出することができる。試験ガスには純度99.5%以上のガス(酸素、ヘリウム等)を用いる。Cmuは、複数層(2層以上)から構成されるフィルムの酸素ガス透過係数であり、Cmoは、前記コンデンサ用フィルムを単層(1層)として形成した場合のフィルムの酸素ガス透過係数である。
【0015】
本発明のフィルムの酸素ガス透過係数CmuやCmo/Cmuの調整方法について説明する。本発明において、上記CmuやCmo/Cmuを調整する方法としては、(i)フィルム中の、フィルムを構成する層の数を変更する、(ii)フィルムの片面または両面に別の層を設け、その別の層を含めたフィルムとする、(iii)フィルム中の樹脂成分を適宜設定する、等が挙げられる。
【0016】
上記<1>の関係については、以下の原理と予想される。但し、本発明のフィルムが上記効果に優れる理由について、仮に下記の理由とは異なっていたとしても、本発明の範囲内であることをここで明記する。
<1>の原理:
熱可塑性樹脂は分子量の大きな鎖状の分子(分子鎖)からなり、結晶性高分子の場合は結晶領域と非晶(非結晶)領域とが存在する。非晶領域では分子鎖が熱振動を行っており、分子鎖と分子鎖の間には自由体積と呼ばれる隙間が存在する。この自由体積は分子鎖の熱振動によって常に大きさが変化している。気体の分子または原子がフィルムを透過する際には、まず気体が熱可塑性樹脂の自由体積に進入し、熱振動を行っている分子鎖を押し広げながら次の自由体積に進入し、これを繰り返しながら最終的にフィルムの反対面へ透過することになる。
ヘリウムはヘリウム原子単体からなる常温で気体の単原子分子であり、非常に小さな物質である。ヘリウムはその小ささから自由体積の大きさにかかわらず容易に分子鎖と分子鎖との隙間を縫ってフィルムの反対面まで透過することができるので、フィルムの欠陥比率の多寡の影響を受けずに一定の値のヘリウムガス透過係数を示したと考えられる。
一方、酸素は酸素原子2個からなる常温で気体の分子である。酸素分子がフィルムを透過する際には、前述のようにまず酸素分子が熱可塑性樹脂の自由体積に進入し、熱振動を行っている分子鎖を押し広げながら次の自由体積に進入し、これを繰り返しながら最終的にフィルムの反対面へ透過することになる。ところが、フィルムにピンホールのような欠陥部分が存在すると、酸素分子は熱可塑性樹脂の自由体積に進入することなく、欠陥部分を介して容易に欠陥部分を通って移動できるため、その分だけ酸素ガス透過係数は大きくなる(酸素ガスを透過させやすくなる)。つまり、欠陥比率の大きなフィルムほど酸素ガス透過係数は大きく算出されることになる。本来、物質は固有の酸素ガス透過係数を持つはずであるが、本発明のようにフィルムを薄くした場合は欠陥部分がガス透過係数に与える影響が大きくなるので、本発明における酸素ガス透過係数はフィルムの欠陥比率を反映した指標値として利用できるものと考えられる。
また、積層によって酸素ガス透過係数が変化した理由は、次のように考えられる。フィルムを製造する際、完全に均一で欠陥が全く存在しないフィルムを得ることは困難であり、実際にはある一定の確率でピンホールのような微小欠陥がフィルムに存在していると考えられる。このようなフィルムの酸素ガス透過係数を測定する際には、ガスは微小欠陥のない部分(健全部分)よりもピンホールのような微小欠陥部分を優先的に通過し易いと考えられる。したがって、フィルムが1層であれば酸素ガスは欠陥部分を容易に透過し易い。しかしながら、1層のフィルムではなく、さらに1層積層した2層のフィルムとした場合、各層のフィルムが有する当該欠陥部分同士が重ならず、厚さ方向では欠陥部分と健全部分の組合せになるため酸素ガスが透過しにくくなると考えられる。上記と同様に3層、4層と積層数を増やしていくと、フィルム全体の厚さに対する、欠陥部分を有する層の厚さの比率が低下していく。言い換えれば、フィルム全体の厚さに対するフィルム厚さ方向の健全部分の比率が向上する。その結果、酸素ガス透過係数が小さくなると考えている。このフィルム全体の厚さに対する、欠陥部分を有する層の厚さの比率の低下が、酸素ガス透過係数の低下に現れており、さらには、絶縁破壊強さの向上をもたらしていると考えている。なお、本発明では絶縁特性と酸素ガス透過係数との間に相関関係があることを見出したが、ガスの種類は多岐にわたるので、他のガス(例えば窒素ガスや二酸化炭素ガスなど)においても同様の相関関係が成立している可能性があることも見出している。適切な種類のガスを選択して透過係数を測定すれば、そのガスにおけるC’mo/C’muを算出することができるので、そのガスによるフィルム全体の厚さ方向の欠陥の改善率の指標を得ることができる。また、C’mo/C’muからの換算によりCmo/Cmuを推測することもできる。
【0017】
上記<2>の関係については、以下の理由(機構)と予想される。但し、本発明のフィルムが上記効果に優れる理由について、仮に下記の理由とは異なっていたとしても、本発明の範囲内であることをここで明記する。
<2>の原理:
耐電圧試験においてもフィルムの欠陥部分で絶縁破壊を起こしやすいと考えられるので、フィルムの層数を複数層とすることにより、フィルム全体の厚さに対するフィルム厚さ方向の健全部分の比率が向上する結果、絶縁破壊強さが向上するものと推測している。
【0018】
複数層から構成される(含む)本発明のコンデンサ用フィルムにおいて、複数層は、好ましくは熱可塑性樹脂組成物から構成され、すなわち熱可塑性樹脂組成物から形成される。上記層は、通常2層以上、好ましくは10層以上、より好ましくは12層以上、さらに好ましくは40層以上、特に好ましくは80層以上、非常に好ましくは160層以上、例えば200層以上である。本発明のコンデンサ用フィルム中の複数層の層数が上記下限値以上であると、絶縁特性に優れるため望ましい。なお、本発明のコンデンサ用フィルム中の複数層は、特に限定されないが、例えば3000層以下である。
【0019】
本発明のコンデンサ用フィルムを構成するそれぞれの層の厚さ(A)(「単層当たりの層の厚さ(A)」ともいう)は特に限定されないが、層構造の乱れを小さく抑えたフィルムを得ることができる観点から、単層当たりの層の厚さ(A)は、0.65nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、6.5nm以上であることがより一層好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、20nm以上が特に好ましい。また、積層する層数を多くすることにより本発明の効果をさらに高めることができる観点から、単層当たりの層の厚さ(A)は、3μm(=3000nm)以下が好ましく、1μm(=1000nm)以下がより好ましく、900nm以下がより一層好ましく、800nm以下がさらに好ましく、650nm以下がさらに一層好ましく、500nm以下が特に好ましい。なお、コンデンサ用フィルムを構成する各層の厚さが異なる場合、単層当たりの層の厚さ(A)とは、各層の厚さの平均値を意味する。つまり、単層当たりの層の厚さ(A)は、例えば紙厚測定器または光学顕微鏡を用いて測定したフィルム全体の厚さを、積層した層数で割ることによって算出できる。
【0020】
本発明のコンデンサ用フィルムを構成する各層の厚さは、同一であっても異なっていてもよい。溶融樹脂組成物の積層時において溶融樹脂組成物の乱流を小さく抑えて各層の積層状態を良好にすることができる観点からは、任意の層の厚さD
Rとその隣接する層D
Aとの厚さの比率をD
R:D
A=5:95〜95:5にすることが好ましく、フィルムを構成する各層が全て同じ厚さである(D
R:D
A=50:50である)ことがさらに好ましい。また、溶融樹脂組成物を積層してから溶融積層体を吐出するまでの過程において、溶融樹脂組成物の乱流により溶融積層体の層構造が乱される場合は、溶融積層体の表裏の各最表層(以下、スキン層と称す)の厚さを他の層よりも厚くすることにより、層構造の乱れを抑制することができる。本発明において、スキン層を除いた溶融積層体を構成するそれぞれの層のうちで、最も薄い層の厚さD
Nと最も厚い層の厚さD
Cとの比率は、特に限定されないが、好ましくはD
N:D
C=1:99〜50:50、より好ましくは2:98〜50:50、さらに好ましくは5:95〜50:50、最も好ましくは50:50(1:1)である。
【0021】
また、上記本発明のフィルム中の各層の厚さ(単層当たりの層の厚さ)が同じである場合、当該単層当たりの層の厚さ(A)と、本発明のコンデンサ用フィルムの厚さ(B)の比率(=A/BまたはA÷B)は、層構造の乱れを抑えつつ本発明の効果がより奏されるという理由から、下限値については0.0001以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.003以上がさらに好ましい。また、上記と同様の理由により、上記比率(=A/BまたはA÷B)の上限値については、0.15以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.09以下がさらに好ましく、0.05以下が特に好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂組成物から構成された層が複数層(2層以上、例えば10層以上)であると絶縁特性に優れる理由は明らかではないが、上記の通り、各層に存在する電流が流れ易い箇所(微小欠陥部分)が隣接する確率が複数層化によって抑えられ、実質的な絶縁距離が増加した結果、絶縁特性が向上したことも考えられる。各層に存在するピンホール等の欠陥が隣接する確率が複数層化によって抑えられ、厚さ方向での欠陥比率が低下した結果、絶縁特性が向上したことも考えられる。他には、熱可塑性樹脂の結晶サイズが微細化することにより漏れ電流が結晶を迂回して流れるため、実質的な絶縁距離(電気が流れる距離)が増加した結果、絶縁特性が向上したことが考えられる。また、本発明のコンデンサ用フィルムにおいて熱可塑性樹脂組成物が溶融状態で積層されて多数の層が形成されるが、各層の界面は維持され、熱可塑性樹脂組成物が混じり合わず、平面方向に分子鎖が配向し、配向度が上昇し、その結果、絶縁特性の向上がもたらされたことも考えられる。
【0023】
本発明のコンデンサ用フィルムの厚さ(B)は、通常1〜35μmであり、好ましくは1.0〜30μm、より好ましくは1.2〜24μm、さらに好ましくは1.2〜15μm、さらに一層好ましくは1.4〜12μm、特に好ましくは1.6〜10μmである。本発明のコンデンサ用フィルムの厚さ(B)が上記範囲内であると、本発明のコンデンサ用フィルムを含むコンデンサの絶縁特性とコンデンサ容量のバランスに優れる点から望ましい。なお、本発明のコンデンサ用フィルムの厚さ(B)は、例えば紙厚測定器または光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0024】
熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。
【0025】
ポリオレフィン樹脂は、オレフィンを重合してなるポリマーであり、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数3〜6のオレフィンを重合してなるポリマーである。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ(1−ブテン)樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリ(1−ペンテン)樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂の中でも、コンデンサ用フィルムとしての高い絶縁特性を得ることができ、また工業上の経済性に優れる観点から、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0026】
ポリビニル樹脂は、オレフィン以外の、α位に極性基や芳香族基が直接結合するビニルモノマーを重合してなるポリマーである。ポリビニル樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。ポリビニル樹脂の中でも、コンデンサ用フィルムとしての高い絶縁特性を得ることができ、また工業上の経済性に優れる観点から、ポリスチレン樹脂が好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂は、エステル結合を主鎖に有するポリマーである。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂の中でも、コンデンサ用フィルムとしての高い絶縁特性を得ることができ、また工業上の経済性に優れる観点から、ポリエチレンテレフタラート樹脂が好ましい。
【0028】
ポリエーテル樹脂は、エーテル結合を主鎖に有するポリマーである。エーテル樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。
【0029】
ポリアミド樹脂は、主鎖にアミド結合を有するポリマーである。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6樹脂、ナイロン46樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン69樹脂、ナイロン610樹脂、ナイロン612樹脂、ナイロン116樹脂、ナイロン4樹脂、ナイロン7樹脂、ナイロン8樹脂、ナイロン11樹脂およびナイロン12樹脂等が挙げられる。
【0030】
本発明において、熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂は、1種の熱可塑性樹脂であってもよいし、2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて使用してもよい。上記熱可塑性樹脂の中でも、コンデンサ用フィルムとしての高い絶縁特性を得ることができ、また工業上の経済性に優れる観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上が好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上がより好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリエチレンテレフタラート樹脂からなる群から選択される1種以上がさらに好ましい。温度によるコンデンサの容量変化率が小さいという観点から、ポリオレフィン樹脂が特に好ましく、さらには誘電正接特性に優れる観点から、ポリプロピレンがとりわけ好ましい。
【0031】
本発明のコンデンサ用フィルムを構成する複数の層は、単一の熱可塑性樹脂組成物から構成されてよく、複数種の熱可塑性樹脂組成物から構成されてもよい。さらに、本発明のコンデンサ用フィルムに含まれる各層中の熱可塑性樹脂組成物は、全ての層において同一であってもよいし、層によって異なっていてもよい。本発明のコンデンサ用フィルムを構成する層中の熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂種を選択することによって、コンデンサ用フィルムの酸素ガス透過係数(Cmu)やCmo/Cmu等を調整することができる。
【0032】
延伸工程を行う場合に適度な樹脂流動性が得られ、フィルムの厚さの制御が容易であれば、熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されない。
【0033】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、熱可塑性樹脂の分子量分析が可能な市販の高温型GPC測定機、例えば、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機、HLC−8121GPC-HT等を使用することができる。例えばポリオレフィン樹脂の場合、GPCカラムとして東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結させたものが用いられ、カラム温度は140℃に設定され、溶離液としてトリクロロベンゼンが用いられ、流速1.0ml/分にて測定される。通常、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)が得られる。また、ポリスチレン樹脂の場合、GPCカラムとして東ソー(株)製、TSKgelSuperH2500を4本連結させたものが用いられ、カラム温度は40℃に設定され、溶離液としてTHFが用いられ、流速0.5ml/分にて測定される。通常、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)が得られる。通常、標準PMMAを用いて検量線を作製し、PMMA換算により重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)が得られる。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)として算出することができる。また、熱可塑性樹脂の種類によっては、粘度測定等により熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を算出してもよく、例えばポリエステル樹脂の1種であるポリエチレンテレフタラート樹脂等の場合には極限粘度(IV値)測定によって算出することができる。粘度測定は、JIS K7367に従って行うことができる。
【0034】
熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合、かかるポリプロピレンは、プロピレンのみを重合させて得られるホモポリマーであってもよいし、他のモノマーと共重合させたコポリマーであってもよい。
【0035】
熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合、かかるポリプロピレンは、重量平均分子量(Mw)が、25万以上45万以下であることが好ましい。このようなポリプロピレンを用いると、延伸工程を行う場合に適度な樹脂流動性が得られ、フィルムの厚さの制御が容易となり、また、フィルムの厚さのムラが発生し難くなるため好ましい。ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は、コンデンサ用フィルムの厚さの均一性、力学特性、熱-機械特性等の観点から、28万以上であることがより好ましく、30万以上であることがさらに好ましい。ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は、流動性およびコンデンサ用フィルムを得る際の延伸性の観点から、40万以下であることがより好ましい。
【0036】
ポリプロピレンは、分子量分布(Mw/Mn)が6以上12以下であることが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、7以上であることがより好ましく、7.5以上であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、11以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。このようなポリプロピレンを用いると、延伸工程を行う場合に適度な樹脂流動性が得られ、厚さムラのないコンデンサ用フィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、このようなポリプロピレンは、コンデンサの耐電圧性の観点からも好ましい。
【0037】
プロピレンのホモポリマーとしては、例えばアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等が挙げられ、プロピレンと他のモノマーとのコポリマーとしては、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマー等が挙げられる。
耐熱性の観点から、ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンであることが好ましく、オレフィン重合用触媒の存在下でポリプロピレンを単独重合して得られるアイソタクチックポリプロピレンであることがより好ましい。
【0038】
ポリプロピレンは、メソペンタッド分率([mmmm])が、94.0%以上98.0%未満であることが好ましい。メソペンタッド分率は、95.0%以上97.0%以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂がこのようなポリプロピレンであると、適度に高い立体規則性によって樹脂の結晶性が適度に向上し、コンデンサの耐電圧性が向上する一方、未延伸フィルムを成形する際の適度な固化(結晶化)速度によって所望の延伸性を得ることができる。
【0039】
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。具体的には、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500を利用して測定することができる。観測核は、
13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、溶媒には、o−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いることができる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。
【0040】
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は、9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準は、CH
3(mmmm)=21.7ppmとすることができる。メソペンタッド分率を、5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出する。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関しては、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参考としてよい。
【0041】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmおよびmrrm等)に由来する各シグナルの強度の積分値に基づいて百分率で計算される。mmmmおよびmrrm等に由来する各シグナルは、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等を参照して帰属することができる。
【0042】
熱可塑性樹脂がポリスチレン樹脂である場合、かかるポリスチレン樹脂は、スチレンのみを重合させて得られるホモポリマーであってもよいし、他のモノマーと共重合させたコポリマーであってもよい。他のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリレート、酢酸ビニルおよびポリオレフィン等が挙げられる。
【0043】
熱可塑性樹脂がポリスチレン樹脂である場合、かかるポリスチレン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、10万以上100万以下であることが好ましい。このようなポリスチレン樹脂を用いると、延伸工程を行う場合に適度な樹脂流動性が得られ、フィルムの厚さの制御が容易となるため好ましい。また、フィルムの厚さのムラが発生し難くなるため好ましい。ポリスチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、コンデンサ用フィルムの厚さの均一性、力学特性、熱-機械特性等の観点から、12万以上であることがより好ましい。ポリスチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、流動性およびコンデンサ用フィルムを得る際の延伸性の観点から、20万以下であることがより好ましい。
【0044】
ポリスチレン樹脂は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上5.0以下であることが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、1.2以上であることがより好ましく、1.6以上であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。このようなポリスチレン樹脂を用いると、延伸工程を行う場合に適度な樹脂流動性が得られ、厚さムラのないコンデンサ用フィルムを得ることが容易となるため好ましい。
【0045】
熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタラート樹脂である場合、かかるポリエチレンテレフタラート樹脂は、極限粘度測定において、IV値が、0.4dl/g以上1.4dl/g以下であることが好ましい。このようなポリエチレンテレフタラート樹脂を用いると、延伸工程を行う場合に適度な樹脂流動性が得られ、フィルムの厚さの制御が容易となるため好ましい。また、フィルムの厚さのムラが発生し難くなるため好ましい。ポリエチレンテレフタラート樹脂のIV値は、コンデンサ用フィルムの厚さの均一性、力学特性、熱-機械特性等の観点から、0.5dl/g以上であることがより好ましい。ポリエチレンテレフタラート樹脂のIV値は、流動性およびコンデンサ用フィルムを得る際の延伸性の観点から、0.9dl/g以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明において、熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂の他に、必要に応じて少なくとも1種の添加剤を含有してよい。添加剤とは、一般的に、熱可塑性樹脂に使用される添加剤である限り特に制限されない。このような添加剤には、例えば酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤、造核剤等が含まれる。このような添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲内で熱可塑性樹脂組成物に添加されてよい。
【0047】
酸化防止剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。酸化防止剤は、一般的に2種類の目的で使用される。一つの目的は、押出混練機内での熱劣化および酸化劣化を抑制することであり、他の目的は、フィルムコンデンサとしての長期使用における劣化抑制およびコンデンサ性能の向上に寄与することである。押出混練機内での熱劣化および酸化劣化を抑制する酸化防止剤を「1次剤」ともいい、コンデンサ性能の向上に寄与する酸化防止剤を「2次剤」ともいう。これらの2つの目的のために、1次剤と2次剤の2種類の酸化防止剤を用いてもよいし、2つの目的のために1種類の酸化防止剤を使用してもよい。
【0048】
2種類の酸化防止剤を用いる場合、熱可塑性樹脂は、1次剤として、例えば、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)を、熱可塑性樹脂を基準(100質量部)に対して、1000ppm〜4000ppm程度含むことができる。この目的の酸化防止剤は、押出混練機内にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない(一般的には、残存量100ppmより少ない)。1次剤として単独の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を組み合わせてもよい。
【0049】
2次剤として、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤を使用することができる。本発明において使用できるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098)などが挙げられる。リン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:イルガフォス168)、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト(商品名:イルガフォス38)などが挙げられる。熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合、高分子量であってポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、最も好ましい。2次剤として単独の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を組み合わせてもよい。
【0050】
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、押出混練機内で少なからず消費されることを考慮して、熱可塑性樹脂100質量部を基準に、好ましくは2000ppm以上7000ppm以下、より好ましくは3000ppm以上7000ppm以下の量で、熱可塑性樹脂組成物中に含まれる。
【0051】
熱可塑性樹脂が1次剤を含まない場合、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤をより多く使用することができる。この場合、押出混練機内におけるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の消費量が増える点から、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、熱可塑性樹脂100質量部を基準に、3000ppm以上8000ppm以下の量で、熱可塑性樹脂組成物中に含まれることが好ましい。
【0052】
塩素吸収剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。塩素吸収剤として、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸等を例示できる。
【0053】
紫外線吸収剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール(BASF製Tinuvin328等)、ベンゾフェノン(Cytec製Cysorb UV−531等)、ヒドロキシベンゾエート(Ferro製UV−CHEK−AM−340等)等を例示できる。
【0054】
滑剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。滑剤として、例えば、第一級アミド(ステアリン酸アミド等)、第二級アミド(N−ステアリルステアリン酸アミド等)、エチレンビスアミド(N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド等)等を例示できる。
【0055】
可塑剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。可塑剤として、例えば、PPランダム共重合体、アクリル系ポリマー等を例示できる。
【0056】
難燃化剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。難燃化剤として、例えば、ハロゲン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸塩、ボレート、アンチモン酸化物等を例示できる。
【0057】
帯電防止剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。帯電防止剤として、例えば、グリセリンモノエステル(グリセリンモノステアレート等)、エトキシル化された第二級アミン等を例示できる。
【0058】
着色剤は、熱可塑性樹脂に対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。着色剤として、例えば、カドミウム、クロム含有無機化合物からアゾ、キナクリドン有機顔料の範囲まで例示できる。
【0059】
本発明では、コンデンサ用フィルムの長期使用時における経時的に進行する劣化を抑制する目的で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)を1種以上含有し、フィルム中の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部を基準に、1000ppm以上6000ppm以下であることが好ましく、1500ppm以上6000ppm以下であることが好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂と分子レベルで相溶性が良好であるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、最適な特定範囲の量を含有させたフィルムコンデンサは、高い耐電圧性を維持したまま、非常に高温のライフ促進試験においても長期に渡って、静電容量を低下させず(劣化が進行せず)、長期耐用性が向上するので好ましい。
【0061】
本発明における熱可塑性樹脂は、従来公知の方法を用いて製造することができる。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂の場合、その重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法およびスラリー重合法が挙げられる。重合は、1つの重合反応器を用いる一段重合であってよく、2以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。また、反応器中に水素またはコモノマーを分子量調整剤として添加して重合を行ってもよい。重合触媒としては、従来公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、重合触媒には助触媒成分やドナーが含まれていてもよい。分子量、分子量分布および立体規則性等は、重合触媒その他の重合条件を適宜調整することによって制御することができる。また、重合触媒としてメタロセン触媒を使用することもでき、かかる場合には、生成するポリマーの分子量、分子量分布および立体規則性等の制御を行いやすい。ポリスチレン樹脂の場合、その重合方法として、ラジカル重合、アニオン重合および配位重合等が挙げられ、必要に応じて開始剤および触媒を用いてスチレンを重合させることによってポリスチレン樹脂を得ることができる。ラジカル重合を行う場合、懸濁重合法またはシード重合法等の周知の重合方法を行うことができる。ポリエステル樹脂の場合、必要に応じてアンチモン化合物等の触媒を用いて重縮合反応により製造することができる。また、助触媒の存在下で重縮合を行うこともできる。いずれの樹脂であっても、重合は、1つの重合反応器を用いる一段重合であってよく、2以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。
【0062】
また、熱可塑性樹脂の分子量分布を調整する方法としては、例えば、重合条件を調節して分子量分布を調整することによる方法、分解剤を使用する方法、高分子量成分を選択的に分解処理する方法、異なる分子量の樹脂をブレンドする方法などが挙げられる。
【0063】
重合条件によって分子量分布を調整する場合には、後述の重合触媒を用いることが、分子量分布や分子量の構成を容易に調整できるため好ましい。多段重合反応によってポリプロピレンを得る場合には、例えば、次のような方法を例示できる。触媒の存在下、高分子量成分用の重合反応器と低分子量または中分子量成分用の反応器との複数の反応器によって重合反応を行う。複数の反応器は、例えば直列または並列に使用することができる。まず、反応器中へプロピレンおよび触媒を供給する。これらの成分とともに、要求されるポリマーの分子量に到達するために必要な量の分子量調整剤、例えば水素を混合して第1の重合反応を行う。反応温度は、例えばスラリー重合の場合、70〜100℃程度、滞留時間は20分〜100分程度である。第1の重合反応による生成物を、追加のプロピレン、触媒、分子量調整剤とともに逐次または連続的に次の反応器に送り、第1の重合反応より低分子量あるいは高分子量の生成物が得られるように調整して第2の重合反応を行う。第1および第2の重合反応による収量(生産量)を調整することによって、分子量分布を調整することができる。
【0064】
ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を製造する場合、触媒としては、一般的なチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒が好適に用いられる。また、熱可塑性樹脂をラジカル重合により製造する場合、重合制御剤等の添加剤を添加することもできる。また、用いる触媒は助触媒成分やドナーを含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタラート樹脂等のポリエステル樹脂を製造する場合、カルボジイミド化合物等の縮合剤を用いることができる。触媒や重合条件を適宜調整することにより、分子量分布をコントロールすることができる。
【0065】
樹脂のブレンドによって低分子量成分の含有量を調整する場合、上記平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いてもよい。この場合、主成分としての樹脂と添加樹脂とのMFRの差の絶対値は、主成分である樹脂がポリプロピレン樹脂の場合には好ましくは0〜10g/10分程度、さらに好ましくは0〜5g/10分程度、ポリスチレン樹脂の場合には好ましくは0〜7g/10分程度、さらに好ましくは0〜5g/10分程度である。
【0066】
本発明における熱可塑性樹脂原料中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性、特に絶縁破壊強さを向上させるために可能な限り少ないことが好ましい。総灰分は、熱可塑性樹脂を基準(100質量部)として、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、40ppm以下であることがさらに好ましく、30ppm以下であることが特に好ましく、20ppm以下であることがとりわけ好ましく、10ppm以下であることが非常に好ましい。なお、総灰分は、通常0ppm以上である。
【0067】
本発明のコンデンサ用フィルムは、該フィルムの片面または両面において、別の層を有してもよい。別の層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル;ナイロンなどのポリアミド;エチレン−ビニルアルコールコポリマーなどのポリビニルアルコール系ポリマー;ポリスチレン;ポリメタクリル酸エステルおよびポリアクリル酸エステルなどのアクリル系ポリマー;ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル;セルロースエステル;ポリカーボネート;ならびにポリウレタンからなる層などが挙げられる。上記別の層は、スキン層として設けられてもよい。
【0068】
本発明のコンデンサ用フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。本発明のコンデンサ用フィルムは、次の工程:
熱可塑性樹脂組成物を溶融し、溶融樹脂組成物を得る溶融工程、
溶融樹脂組成物を複数層(2層以上、例えば10層以上)積層し、溶融積層体を得る積層工程、および
溶融積層体を吐出し、フィルムを得る吐出工程
を含む方法によって好適に製造することができる。
【0069】
溶融工程において、熱可塑性樹脂と、必要に応じて添加される酸化防止剤等の各種添加剤とを溶融混練することによって、溶融樹脂組成物が得られる。この溶融工程は、例えば
(1)熱可塑性樹脂と各種添加剤とを混練して熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを混練機で溶融混練する方法、
(2)熱可塑性樹脂と各種添加剤とを予備混練してマスターバッチペレットを製造し、該マスターバッチペレットと熱可塑性樹脂ペレットを混練機で溶融混練する方法、または
(3)マスターバッチ化せず、熱可塑性樹脂と各種添加剤とをドライブレンドし、混練機で溶融混練する方法
によって行うことができる。上記(1)または(2)の方法を用いることが、押出混練機近傍をクリーンな環境に保つことができるため好ましい。なお、ドライブレンドの際の混合装置としては、タンブラーやウイングミキサー等のバッチ式や、連続式の計量混合機を使用することができる。
【0070】
溶融混練の温度は、熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、例えば170〜340℃、好ましくは185〜320℃、より好ましくは200〜310℃である。ポリプロピレン樹脂の場合には通常200〜300℃であり、好ましくは200〜250℃である。ポリスチレン樹脂の場合には、通常170〜340℃であり、好ましくは180〜330℃である。ポリエチレンテレフタラート樹脂の場合、通常250〜320℃であり、好ましくは270〜310℃である。溶融混練の温度が上記範囲内であると、熱可塑性樹脂の熱劣化によるコンデンサ用フィルムの絶縁特性の低下が生じにくく、また混錬が十分に行われ、コンデンサ用フィルムの成分を均一に混合することができる。樹脂の混練の際の劣化を抑制するために、押出混練機中へ窒素などの不活性ガスをパージしてもよい。
【0071】
押出混練機は、特に制限されず、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、多軸スクリュータイプのものを適宜使用できる。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも、樹脂劣化が大きくならないよう混錬条件を調整することで使用可能ではあるが、1軸スクリュータイプ、同方向回転の2軸スクリュータイプを用いると、樹脂が熱劣化し難く好ましい。
【0072】
なお、熱可塑性樹脂を溶融混練する前に、熱可塑性樹脂中に含まれる水分を除去する処理を行ってもよい。水分の除去の方法は、特に限定されないが、例えば熱処理が挙げられる。かかる熱処理の温度は、水分を十分に除去する観点からは、例えば100℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上であり、熱可塑性樹脂の熱分解を抑制する観点からは、例えば350℃以下である。熱処理の時間は、水分を十分に除去する観点からは、例えば1時間以上、好ましくは2時間以上であり、熱可塑性樹脂の熱分解を抑制する観点からは、通常24時間以下、例えば10時間以下である。かかる処理により、水分による熱可塑性樹脂(例えばポリエステル樹脂)の加水分解を抑制することができる。
【0073】
積層工程において、溶融工程において得られた溶融樹脂組成物を、複数層積層し、溶融積層体が得られる。積層工程において、溶融樹脂組成物は、通常2層以上、好ましくは10層以上、より好ましくは12層以上、さらに好ましくは40層以上、特に好ましくは80層以上、非常に好ましくは160層以上、例えば200層以上積層される。積層工程において、溶融樹脂組成物を上記下限値以上積層すると、得られるコンデンサ用フィルムが絶縁特性に優れるため望ましい。積層工程において、積層される層数は、特に限定されないが、例えば3000層以下である。
【0074】
積層工程において、上記溶融樹脂組成物を積層して溶融積層体を得る方法は特に限定されないが、例えば、マルチマニホールドまたはフィードブロックを用いて共押出を行うことによって、溶融積層体を得るができる。中でも、製造設備が複雑にならず、製造効率が良い観点から、フィードブロックを用いることが好ましい。
【0075】
マルチマニホールドを用いて積層工程を行う場合、所望の層数と同じ数以上のマニホールドが設けられているマルチマニホールドが使用される。マルチマニホールドに導入された溶融樹脂組成物は、各マニホールドに分割して流され、マルチマニホールドの幅方向に広げられる。この際、各マニホールドの形状および断面積は、全て等しいことが好ましい。各マニホールドの形状および断面積が全て等しいと、得られるコンデンサ用フィルムに含まれる各層の厚さが均等になる。その後、マルチマニホールド端部近傍において各マニホールドを流れる溶融樹脂組成物が合流し、積層され、その結果、所望の層数を有する溶融積層体が得られる。
【0076】
一方、フィードブロックを用いて積層工程を行う場合、溶融樹脂組成物をフィードブロックに導入する。フィードブロックに導入された溶融樹脂組成物は、まず、マルチプライヤーブロックに通される。かかるマルチプライヤーブロックには、溶融樹脂組成物を分割するようにm個(mは2以上の整数)の分割流路が配されている。その後、m個に分割された溶融樹脂組成物は、厚さ方向に積層され、幅広化されることによって、m層の溶融積層体が成形される。
【0077】
また、積層されたm層の溶融積層体をさらに、n個(nは2以上の整数)の分割流路を有する別のマルチプライヤーブロックに通すことによって、m×n層の溶融積層体を成形することができる。さらに、同様の操作を繰り返すことにより、所望の層数を有する溶融積層体を得ることができる。
【0078】
本発明のコンデンサ用フィルムを構成する各層は、同一または異なる複数の熱可塑性樹脂組成物から構成(形成)されていてもよい。各層が同一または異なる複数の熱可塑性樹脂組成物から構成されてなる場合、上記フィードブロックに導入する前に、各熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で積層してもよい。例えば、同一または異なる2種の熱可塑性樹脂組成物(例えば、熱可塑性樹脂組成物aおよびb)を積層する場合には、フィードブロックに導入する前に熱可塑性樹脂組成物aおよびbを溶融状態で層状に積層し、フィードブロックに導入することによって、熱可塑性樹脂組成物aからなる層と熱可塑性樹脂組成物bからなる層とが交互に2×m層積層した溶融積層体が得られる。同一または異なる3種の熱可塑性樹脂組成物(例えば、熱可塑性樹脂組成物a、bおよびc)を積層する場合、3×m層の溶融積層体が得られ、各層は熱可塑性樹脂組成物a、bおよびcの組合せが複数積層した構造となる。
【0079】
さらに、マルチマニホールドまたはフィードブロックを用いて得られた溶融積層体に対して、別の溶融樹脂組成物を積層させてスキン層を形成してもよい。スキン層の形成により、溶融樹脂組成物の乱流を抑制することができる。
【0080】
本発明においては、各層中の熱可塑性樹脂の流動性を同一にすることで溶融積層体中の各層の厚さのムラを小さくできるという観点から、溶融積層体の全ての層が同一の熱可塑性樹脂組成物から構成されることが好ましい。また、積層時の溶融樹脂組成物の乱流を小さくできるという観点から、溶融積層体は全て同じ厚さの層を積層させることが好ましいが、厚さの異なる層を積層しても本発明の効果は損なわれない。なお、各層の厚さは、例えば、溶融樹脂組成物を積層させる際の溶融樹脂組成物の押出速度(供給速度)を調整することによって、調製することができる。
【0081】
ここで、本発明で用いられるマルチマニホールドおよびフィードブロックには、加熱手段、例えばヒーターを設けることが好ましい。この加熱手段を設ける位置は、溶融樹脂組成物を加熱することができれば特に限定されるものではない。
【0082】
この際の加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、通常170〜340℃、好ましくは175〜320℃、より好ましくは180〜310℃である。ポリプロピレンの場合には通常200〜300℃であり、好ましくは200〜250℃である。ポリスチレン樹脂の場合には、通常170〜340℃であり、好ましくは180〜330℃である。ポリエチレンテレフタラート樹脂の場合、通常250〜320℃であり、好ましくは270〜310℃である。溶融混練の温度が上記範囲内であると、熱可塑性樹脂の熱劣化によるコンデンサ用フィルムの絶縁特性の低下が生じにくく、また混錬が十分に行われ、コンデンサ用フィルムを構成する成分を均一に混合することができる。
【0083】
吐出工程において、積層工程において得られた溶融積層体が吐出され、フィルムが得られる。溶融積層体は、マルチマニホールドまたはフィードブロック等に接続されたダイ(好ましくはTダイ)から吐出され、フィルムが成形される。該フィルムは、少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることによって、未延伸のキャスト原反シートを成形することができる。金属ドラムの温度(キャスト温度)は、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常15〜150℃、より好ましくは20〜140℃、さらに好ましくは25〜120℃、特に好ましくは30〜110℃である。ポリプロピレン樹脂の場合には、キャスト温度は、通常30〜140℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。ポリスチレン樹脂の場合には、通常30〜150℃であり、好ましくは40〜130℃、より好ましくは50〜110℃、さらに好ましくは60〜90℃である。ポリエチレンテレフタラート樹脂の場合、通常15〜150℃であり、好ましくは20〜130℃、より好ましくは25〜100℃、さらに好ましくは30〜70℃である。なお、上記キャスト原反シートの厚さは、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常8μm〜2000μm、好ましくは10μm〜1800μm、より好ましくは12μm〜1600μm、さらに好ましくは14μm〜1400μm、特に好ましくは16μm〜1200μmである。ポリプロピレン樹脂の場合には、上記キャスト原反シートの厚さは、通常40μm〜2000μm、好ましくは50μm〜1800μm、より好ましくは60μm〜1400μm、さらに好ましくは70μm〜900μm、特に好ましくは80μm〜800μm、さらに一層好ましくは90μm〜600μmである。
ポリスチレン樹脂の場合には、通常8μm〜400μmであり、好ましくは10μm〜350μm、より好ましくは12μm〜300μm、さらに好ましくは12μm〜200μm、特に好ましくは14μm〜150μm、さらに一層好ましくは16μm〜120μmである。ポリエチレンテレフタラート樹脂の場合、通常8μm〜400μmであり、好ましくは10μm〜350μm、より好ましくは12μm〜300μm、さらに好ましくは12μm〜200μm、特に好ましくは14μm〜150μm、さらに一層好ましくは16μm〜120μmである。
【0084】
本発明のコンデンサ用フィルムを製造する方法において、フィルム(キャスト原反シート)を延伸する延伸工程がさらに含まれてもよい。延伸工程は、一軸または二軸延伸によって行うことができるが、幅方向での厚さの均一性の観点から、二軸延伸によって行うことが好ましい。
【0085】
二軸延伸を行う場合、通常の方法に従ってフィルム(キャスト原反シート)を二軸延伸することができる。二軸延伸は、縦および横に二軸に配向させる二軸延伸が行われ、延伸方法としては同時または逐次の二軸延伸方法が挙げられるが、逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、例えばポリプロピレンの場合には、まずフィルムを、好ましくは100〜180℃(より好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは120〜165℃)の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に3〜7倍に延伸する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて160℃以上(例えば170℃以上)の温度で幅(横)方向に3〜11倍(例えば5〜10倍、好ましくは6〜9倍)に延伸した後、緩和、熱固定を施して、巻き取ることができる。巻き取られたフィルムは、例えば20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に裁断することができる。ポリスチレン樹脂の場合、逐次二軸延伸方法としては、フィルムを好ましくは100〜140℃(より好ましくは110〜130℃、さらに好ましくは115〜120℃)の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に2〜7倍(例えば2.2〜5倍、好ましくは2.5〜3.5倍)に延伸する。次に、当該延伸フィルムをテンターに導いて100℃以上(例えば110℃以上)の温度で幅(横)方向に2〜7倍(例えば2.2〜5倍、好ましくは2.5〜3.5倍)に延伸した後、緩和、熱固定を施し、巻き取り、エージング処理を施す。ポリエチレンテレフタラート樹脂の場合、逐次二軸延伸方法としては、フィルムを好ましくは60〜170℃(より好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは75〜130℃)の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に2〜7倍(例えば2.5〜5倍、好ましくは3〜3.5倍)に延伸する。次に、当該延伸フィルムをテンターに導いて180〜220℃の温度で幅(横)方向に4〜4.5倍に延伸した後、緩和、熱固定を施し、巻き取る。
【0086】
さらに、フィルムの両端をクリップ等で固定しながら、結晶配向のために熱処理を行ってもよい。熱処理の温度および時間は、熱可塑性樹脂によって異なるが、熱処理温度は、例えば150〜300℃、好ましくは180〜280℃、より好ましくは200〜260℃であり、熱処理時間は、例えば1秒〜3分、好ましくは5秒〜1分、より好ましくは10秒〜40秒である。
【0087】
こうして得られる延伸フィルムは、通常1〜35μmであり、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1.2〜24μm、さらに好ましくは1.4〜12μm、特に好ましくは1.6〜10μmの厚さを有する。上記延伸フィルムの厚さが上記範囲内であると、該フィルムを含むコンデンサの絶縁特性とコンデンサ容量のバランスに優れる点から望ましい。
【0088】
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された延伸フィルムとなる。延伸フィルムの表面には、巻き適性を向上させつつ、コンデンサ性能をも良好とする適度な表面粗さを付与することが好ましい。
【0089】
本発明のコンデンサ用フィルムは、少なくとも片方の表面において、その表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.01μm以上0.20μm以下であることが好ましく、かつ、最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)で0.1μm以上1.5μm以下に微細粗面化されていることが好ましい。RaおよびRzが、上述の好ましい範囲にある場合、表面は、微細に粗化された表面になり得、コンデンサ加工の際には、素子巻き加工において巻きシワが発生し難く、好ましく巻上げることができる。さらに、フィルム同士の間も均一な接触が可能となるため、コンデンサの耐電圧性および長期間に渡る耐電圧性も向上し得る。
【0090】
ここで、「Ra」および「Rz」(旧JIS定義のRmax)とは、例えばJIS−B0601:2001等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式表面粗さ計(例えば、ダイヤモンド針等による触針式表面粗さ計)を用いて測定された値をいう。「Ra」および「Rz」は、より具体的には、例えば、東京精密社製、三次元表面粗さ計サーフコム1400D−3DF−12型を用い、JIS−B0601:2001に定められている方法に準拠して求めることができる。
【0091】
フィルム表面に微細な凹凸を与える方法としては、エンボス法、エッチング法など、公知の各種粗面化方法を採用することができる。熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用いる場合は、上記方法の中でも、不純物の混入などの必要がないβ晶を用いた粗面化法が好ましい。β晶の生成割合は、一般的には、キャスト温度およびキャストスピードを変更することによって制御することができる。また、縦延伸工程のロール温度によってβ晶の融解/転移割合を制御することができ、これらのβ晶生成とその融解/転移の二つのパラメータについて最適な製造条件を選択することによって微細な粗表面性を得ることができる。
【0092】
上記方法によって得られたフィルムは、フィルムの片面または両面において、別の層を積層してもよい。別の層の積層方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂を含む塗工液を塗布し、乾燥または加熱させることによって樹脂の層を形成させる方法、および別の層(フィルム)を、必要に応じて接着剤(例えばアクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、オレフィン系接着剤)等を用いて、貼り合わせる方法等が挙げられる。別の層を積層することによって、得られる積層フィルムの酸素ガス透過係数(Cmu)やCmo/Cmu等を調整することができる。なお、別の層の積層は、二軸延伸前に行ってもよいし、二軸延伸後に行ってもよい。二軸延伸前に別の層を積層する場合、二軸延伸の際に別の層の延伸も合わせて実施することができる。
【0093】
本発明のコンデンサ用フィルムには、金属蒸着加工工程などの後工程における接着特性を高める目的で、延伸および熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行うことができる。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとしては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、およびこれらの混合ガスを用いることが好ましい。
【0094】
本発明の別の実施態様においては、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面または両面に金属蒸着が施された、フィルムコンデンサ用金属化ポリプロピレンフィルムが提供される。即ち、本発明のフィルムコンデンサ用金属化ポリプロピレンフィルムは、前記フィルムの片面または両面に金属蒸着膜を有する。金属化フィルムを作製する工程では、コンデンサ用フィルムの片面または両面に金属蒸着膜を形成する。コンデンサ用フィルムに金属蒸着膜を設ける方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられ、生産性や経済性などの点からは真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法によって金属蒸着膜を設ける場合には、るつぼ方式、ワイヤー方式など公知の方式から適宜選択して行われる。金属蒸着膜を構成する金属としては、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの単体金属、これらの金属から選択される複数種の金属からなる混合物または合金などを使用することができる。環境面、経済性、およびフィルムコンデンサ性能、とりわけ静電容量や絶縁抵抗の温度特性並びに周波数特性などの点からは、金属蒸着膜を構成する金属として、亜鉛およびアルミニウムから選択される単体金属、金属混合物または合金を採用することが好ましい。
【0095】
金属蒸着膜(金属膜)の膜抵抗は、コンデンサの電気特性の点から、1〜150Ω/□が好ましい。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、膜抵抗は5Ω/□以上であることがより好ましく、10Ω/□以上であることがさらに好ましい。また、コンデンサとしての安全性の点から、膜抵抗は100Ω/□以下であることがより好ましく、50Ω/□以下であることがさらに好ましく、20Ω/□以下であることが特に好ましい。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば当業者に既知の二端子法によって金属蒸着中に測定することができる。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量をすることによって調節することができる。金属蒸着膜の膜抵抗の上記範囲は、例えばベタ蒸着または特殊マージンを転写する場合の好適な範囲となる。なお、傾斜蒸着法の場合においては、50〜100Ω/□程度の膜抵抗で蒸着膜の厚さに変化を設けて蒸着が行われてよい。金属膜の厚さは、特に限定されないが、1〜200nmが好ましい。
【0096】
フィルムの片面または両面に金属蒸着膜を形成する際、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンを形成することが好ましい。さらに、金属化フィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は通常2〜8Ω/□であり、3〜6Ω/□であることが好ましい。
【0097】
形成する金属蒸着膜のマージンパターンには特に制限はないが、フィルムコンデンサの保安性等の点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンとすることが好ましい。特殊マージンを含むパターンで金属蒸着膜をフィルムの片面または両面に形成すると、得られるフィルムコンデンサの保安性が向上し、フィルムコンデンサの破壊やショートを抑制できるため、好ましい。マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングを施すテープ法、オイルの塗布によりマスキングを施すオイル法等、公知の方法を何ら制限なく使用することができる。
【0098】
本発明の別の実施態様においては、上記コンデンサ用金属化フィルムを含むコンデンサ(コンデンサ素子、フィルムコンデンサ素子または単に素子ともいう)も提供される。該コンデンサは、上記コンデンサ用金属化フィルムを用いて製造することができる。例えば、上記のように作製された金属化フィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とコンデンサ用フィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回した後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサ素子を作製することができる。
コンデンサ素子を作製する際は、通常、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の金属化フィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の金属化フィルムは、0.5〜2mmずらして積層することが好ましい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW−N2型等を利用することができる。
【0099】
巻回後、通常、得られた巻回物に対して圧力をかけながら熱処理(以下、「熱プレス」と称することがある)が施される。熱プレスによってフィルムコンデンサ素子の巻締まりや結晶構造の変化が適度に起こると、機械的および熱的な安定が得られる。しかし、熱プレスによって過度な素子の巻締まりや結晶構造の変化が起こると、フィルムが熱負けして収縮し、熱シワや型付などの成形不良といった問題が生じる場合がある。このような点から、与える圧力は、コンデンサ用フィルムの厚さ等によってその最適値は変わるが、10×10
4〜450×10
4Paが好ましく、より好ましくは15×10
4〜300×10
4Pa、さらに好ましくは20×10
4〜150×10
4Paである。また、熱処理の温度は100〜120℃とすることが好ましい。熱処理を施す時間は、機械的および熱的な安定を得る点で、5時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいが、熱シワや型付などの成形不良を防止する点で、20時間以下とすることが好ましく、15時間以下とすることがより好ましい。
【0100】
続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、フィルムコンデンサ素子を作製する。メタリコン電極には、通常、電極端子が接合される。なお、電極端子との接合方法は、特に限定されないが、例えば溶接、超音波溶着およびハンダ付けによって行うことができる。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサ素子をケースに封入してエポキシ樹脂等の樹脂で封止することが好ましい。
【0101】
本発明において得られるコンデンサ素子は、金属化フィルム等の金属箔を備えたフィルムを含む(から構成される)フィルムコンデンサ素子であって、高温下での高い耐電圧性を有するものである。なお、金属箔を備えたフィルムは、金属化フィルムの他に、金属箔とフィルムとを巻回して得られる巻回型のフィルムであってもよい。
【0102】
本発明の一実施態様においては、複数層から構成されるフィルムの酸素ガス透過係数Cmuと、前記フィルムを単層として形成した場合のフィルムの酸素ガス透過係数Cmoが、上記の関係式(1)を満たし、且つ、前記コンデンサ用フィルムの厚さが1〜35μmであるフィルムの、コンデンサ用フィルムとしての使用および使用方法も提供される。かかるフィルムは、コンデンサの製造のために使用することができる。かかるフィルムを使用することにより、高温下において高い耐電圧性を有するコンデンサを製造することができる。
【0103】
コンデンサ素子の耐用性を調べる試験方法としては、例えば「ステップアップ試験」、「ライフ(寿命)試験」などが挙げられ、これらはいずれも耐用性を評価する試験方法である。「ステップアップ試験」は、コンデンサ素子への一定時間(短時間)、一定電圧の電圧印加を、電圧値を少しずつ上げながら繰り返し行う試験方法であって、コンデンサ素子の耐用性を電圧限界(高電圧)の観点から評価する方法である。一方、「ライフ試験」は、コンデンサ素子への一定電圧の電圧印加を長時間に亘って行う試験方法であって、長期間の耐電圧性、すなわちコンデンサ素子の耐用性を静電容量の減少が抑制され、または容量変化率ΔCが許容範囲(例えば、試験温度105℃、フィルム厚2.5μmにおいて好ましくは−10%以上[200時間後])であり、暴走なども起こさない時間の観点から評価する方法である。
【0104】
本発明において得られるコンデンサ素子は、試験温度およびフィルム厚さにもよるが、例えば試験温度が105℃、フィルム厚が2.5μmである場合に、「ステップアップ試験」に従って評価される容量変化率ΔC=−5%時の電圧が1100Vを超えることが好ましく、1120V以上であることがより好ましく、1150V以上であることがさらに好ましく、1180V以上であることが特に好ましい。また、「ステップアップ試験」に従って評価される容量変化率ΔC=−95%時の電圧が1450Vを超えることが好ましく、1460V以上であることがより好ましく、1470V以上であることがさらに好ましく、1480V以上であることが特に好ましい。
【0105】
また、本発明において得られるコンデンサ素子は、「ライフ試験」に従って評価される電圧印加後の容量変化率ΔC(200時間後)が−10%以上であることが好ましく、−8%以上であることがより好ましく、−6%以上であることがさらに好ましく、−5%以上であることが特に好ましい。ハイブリッド自動車用高電圧タイプのコンデンサの定格電圧は400〜800V
DCが一般的であることから、例えば「ライフ試験」における印加電圧を600V
DCとして評価してよい。
具体的には、コンデンサ素子に対するライフ試験を以下の手順で行ってよい。
予めコンデンサ素子を、試験環境温度(例えば105℃)で予熱した後、試験前の初期の静電容量を日置電機株式会社製のLCRハイテスター3522−50にて測定する。次に、高圧電源を用いて、105℃の恒温槽中にて、コンデンサ素子に直流600Vの電圧を200時間印加し続ける。200時間経過後のコンデンサ素子の静電容量を上記テスターで測定し、電圧印加前後の容量変化率(ΔC)を算出する。200時間経過後のコンデンサ素子の容量変化率を、コンデンサ素子3個の平均値により評価する。
【実施例】
【0106】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0107】
[各特性値の評価方法]
実施例における各特性値の評価方法は以下の通りである。
【0108】
(1)各熱可塑性樹脂の物性の測定
・ポリプロピレン樹脂
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定を行った。
測定機:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC HLC−8121GPC−HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結
カラム温度:140℃
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
なお、検量線の作製には東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、ポリスチレン換算により測定結果を得た。ただし、分子量はQ−ファクターを用いてポリプロピレンの分子量へ換算した。
・ポリスチレン樹脂
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定を行った。
測定機:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC HLC−8121GPC−HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgelSuperH2500を4本連結
カラム温度:40℃
溶離液:THF
流速:0.5ml/分
なお、検量線の作製には東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、ポリスチレン換算により測定結果を得た。
・ポリエチレンテレフタラート樹脂
JIS K7367−5に従って、落下型の毛管粘度計と25℃のo−クロロフェノールを用いて粘度測定を行うことによって、極限粘度IV値を測定した。
【0109】
(2)フィルムの厚さ
フィルムの厚さは、シチズンセイミツ株式会社製の紙厚測定器MEI−11を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
【0110】
(3)絶縁破壊強さ
JIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて、直流電源を使用し、100℃において昇圧速度100V/秒で、絶縁破壊電圧値を28回定した。絶縁破壊電圧値(V
DC)を、フィルムの厚さ(μm)で割り、28回の測定結果中の上位2回および下位2回を除いた24回の平均値を、絶縁破壊強さ(V
DC/μm)とした。
【0111】
(4)酸素ガス透過係数
JIS K7126-1:2006に準拠して次の手順により測定した。フィルムを直径50mmの円盤状に打ち抜き、試験片を採取した。株式会社東洋精機製作所製のガス透過率測定装置BR-3,BT-3に試験片をセットし、圧力センサ法にて透過面の直径を30mm(透過面積706.5mm
2)としてガス透過度を測定した。このときの試験ガスには純度99.9%以上の酸素ガスを用い、高圧側の試験ガス圧力は100kPa、試験環境の温度は23℃一定とした。試験は各フィルムに対して3回行い、3回の平均値を酸素ガス透過度の測定値とした。この酸素ガス透過度に試験片の厚さを乗じて酸素ガス透過係数を得た。
【0112】
(5)ヘリウムガス透過係数
試験ガスとして、酸素ガスに代えて、純度99.9%以上のヘリウムガスを用いた以外は、上記(4)と同様の方法により、ヘリウムガス透過係数を得た。
【0113】
〔熱可塑性樹脂〕
実施例および比較例のコンデンサ用フィルムの製造において、ポリプロピレン樹脂PP−1(アイソタクチックポリプロピレン、プライムポリマー株式会社製)、ポリスチレン樹脂PSt、またはポリエチレンテレフタラート樹脂PETをそれぞれ使用した。なお、ポリプロピレン樹脂PP−1の重量平均分子量(Mw)は31×10
4、分子量分布(Mw/Mn)は8.6であり、これらの値は、原料樹脂ペレットの形態で、上記の測定方法に従い測定した値である。また、ポリスチレン樹脂PStの重量平均分子量(Mw)は18×10
4、分子量分布(Mw/Mn)は2.9であり、これらの値は、原料樹脂ペレットの形態で、上記の測定方法に従い測定した値である。また、ポリエチレンテレフタラート樹脂PETのIV値は0.74である。
【0114】
実施例1
ポリプロピレン樹脂PP−1および酸化防止剤(樹脂100質量部に対して、イルガノックス1010を5000ppm、BHTを2000ppm含む)からなる熱可塑性樹脂組成物1を、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度250℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、前記溶融樹脂組成物をフィードブロックに導入する前に溶融状態でA(単軸押出機(A)からの溶融樹脂組成物)、B(単軸押出機(B)からの溶融樹脂組成物)、Aの順に3層の層状に積層した後、第一のフィードブロックを用いて前記3層状の溶融樹脂組成物を2分割してから積層して6層にし、次いで第二のフィードブロックにて前記6層状の溶融樹脂組成物を2分割してから積層して12層(3×2
2層)に積層し、溶融積層体a1を得た。次に、前記溶融積層体a1をTダイを用いて押出(吐出)し、次いで表面温度を55℃に保持した金属ドラムに前記押し出された(吐出された)溶融積層体a1を巻きつけて固化させて、厚さ約400μmのキャスト原反シートを得た。このとき、溶融積層体a1の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整した。このキャスト原反シートを165℃の温度で、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KARO IVを用いて、流れ方向に5倍、ついで横方向に9倍に延伸した。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0115】
実施例2
まず、実施例1と同様の方法により、フィードブロックを用いて溶融樹脂組成物を12層に積層した溶融積層体a1を得た。次に、熱可塑性樹脂組成物1を単軸押出機(C)に供給して得られた溶融樹脂組成物を用いて前記溶融積層体a1の表面及び裏面に表スキン層及び裏スキン層(表層及び裏層ともいう)を設けて14層(1+3×2
2+1層)に積層し、溶融積層体b1を得た。次に、前記溶融積層体b1をTダイを用いて押し出した(吐出した)。このとき、(1)前記溶融積層体a1の表面及び裏面に設けた前記各スキン層の厚さの合計が溶融積層体b1の全体の厚さの1/4となるよう単軸押出機(C)の吐出比率を調整したことと、(2)前記各スキン層を除いた溶融積層体a1の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整したこと以外は、実施例1と同様の工程を行った。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0116】
実施例2において得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの断面を、光学顕微鏡(株式会社ニコン製、OPTIPHOT200)を用いて観察した。その結果を
図1に示す。なお、倍率は1000倍(対物レンズ:100倍、接眼レンズ:10倍)、観察は明視野観察法にて行った。
【0117】
実施例3
まず、実施例1と同様の方法により、溶融積層体a1を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三および第四のフィードブロックを用いて溶融積層体a1を更に2分割して積層する工程を更に2回繰り返して積層することにより、溶融樹脂組成物を48層(3×2
4層)に積層して、溶融積層体c1を得た。次いで、溶融積層体a1に代えて溶融積層体c1を用いる以外は、実施例1と同様の工程を行った。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0118】
実施例4
まず、実施例1と同様の方法により、溶融積層体a1を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三および第四のフィードブロックを用いて溶融積層体a1を2分割して積層する工程を更に2回繰り返して溶融樹脂組成物を48層に積層し、溶融積層体c1を得た。次いで、熱可塑性樹脂組成物1を単軸押出機(C)に供給して得られた溶融樹脂組成物を用いて溶融積層体c1の表面及び裏面に表スキン層及び裏スキン層を設けて溶融樹脂組成物を50層(1+3×2
4+1層)に積層し、溶融積層体d1を得た。このとき、(1)表面及び裏面に設けた前記各スキン層の厚さの合計が溶融積層体d1の全体の厚さの1/4となるよう単軸押出機(C)の吐出比率を調整したことと、(2)前記各スキン層を除いた溶融積層体c1の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整したこと以外は、実施例1と同様の工程を行った。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0119】
実施例5
まず、実施例1と同様の方法により、溶融積層体a1を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三、第四、第五、および第六のフィードブロックを用いて溶融積層体a1を2分割して積層する工程を更に4回繰り返して溶融樹脂組成物を192層(3×2
6層)に積層して、溶融積層体e1を得た。次いで、溶融積層体a1に代えて溶融積層体e1を用いる以外は、実施例1と同様の工程を行った。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0120】
実施例6
まず、実施例1と同様の方法により、溶融積層体a1を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三、第四、第五、および第六のフィードブロックを用いて溶融積層体a1を2分割して積層する工程を更に4回繰り返して溶融樹脂組成物を192層(3×2
6層)に積層し、溶融積層体e1を得た。次いで、熱可塑性樹脂組成物1を単軸押出機(C)に供給して得られた溶融樹脂組成物を用いて溶融積層体e1の表面及び裏面に表スキン層及び裏スキン層を設けて溶融樹脂組成物を194層(1+3×2
6+1層)に積層し、溶融積層体f1を得た。このとき、(1)表面及び裏面に設けた前記各スキン層の厚さの合計が溶融積層体f1の全体の厚さの1/4となるよう単軸押出機(C)の吐出比率を調整したことと、(2)前記各スキン層を除いた溶融積層体e1の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整したこと以外は、実施例1と同様の工程を行なった。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0121】
実施例7
実施例1で使用した熱可塑性樹脂組成物1を、単軸押出機(A)、単軸押出機(B)および単軸押出機(C)に供給し、樹脂温度250℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、前記溶融樹脂組成物を単軸押出機(A)、単軸押出機(B)および単軸押出機(C)フィードブロックに導入する前に溶融状態でC(単軸押出機(C)からの溶融樹脂組成物)、A(単軸押出機(A)からの溶融樹脂組成物)、B(単軸押出機(B)からの溶融樹脂組成物)、A、及びCの順に5層の層状に積層し、溶融積層体g1を得た。次いで、第一から第六のフィードブロックを用いて溶融積層体g1を2分割して積層する工程を6回繰り返して320層(5×2
6層)に積層し、溶融積層体h1を得た。このとき、溶融積層体の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)単軸押出機(B)および単軸押出機(C)の吐出比率を調整した以外は、実施例1と同様の工程を行なった。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0122】
実施例8
単軸押出機(A)と単軸押出機(B)の吐出比率を調整することにより、単軸押出機(B)由来の層の厚さが単軸押出機(A)由来の層の厚さの4倍とし、任意の層と隣接する層の厚さが異なる状態に調整した以外は、実施例6と同様にして、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0123】
比較例1(参考例)
実施例1で使用した熱可塑性樹脂組成物1を、単軸押出機(A)に供給し、樹脂温度250℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、フィードブロックを用いず溶融樹脂組成物を積層させなかった以外は、実施例1と同様の工程を行なった。これにより、厚さ9μmの単層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0124】
比較例2
実施例1で使用した熱可塑性樹脂組成物1を、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度250℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、フィードブロックを用いずに溶融樹脂組成物を2層に積層し、溶融積層体i1を得た。このとき、溶融積層体i1の各層の厚さが同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整した以外は、実施例1と同様の工程を行なった。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0125】
比較例3
実施例1で使用した熱可塑性樹脂組成物1を、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度250℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、前記溶融樹脂組成物を単軸押出機(A)および単軸押出機(B)を用いて溶融状態でA、B、及びAの順に3層の層状に積層し、溶融積層体j1を得た。次に、得られた溶融積層体j1に対して、フィードブロックを用いず、単軸押出機(C)を用いて溶融積層体j1の表面及び裏面にスキン層を設けて5層の溶融積層体k1を得た。このとき、溶融積層体k1の各層の厚さが全て同じになるように単軸押出機(A)、単軸押出機(B)および単軸押出機(C)の吐出比率を調整した以外は、実施例1と同様の工程を行なった。これにより、厚さ9μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0126】
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて、絶縁破壊強さを上記方法に従い評価した。得られた評価結果を表1に示す。また、各実施例および比較例の層数、ヘリウムガス透過係数[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]、酸素ガス透過係数(Cmu)[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]、Cmo/Cmu、フィルム厚さ(B)[μm]、フィルム中の単層当たりの層の厚さ(A)[μm]、およびA/Bについても、表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例9
ポリスチレン樹脂PStからなる熱可塑性樹脂組成物2を、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度310℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、前記溶融樹脂組成物をフィードブロックに導入する前に溶融状態でA(単軸押出機(A)からの溶融樹脂組成物)、B(単軸押出機(B)からの溶融樹脂組成物)、Aの順に3層の層状に積層した後、第一のフィードブロックを用いて前記3層状の溶融樹脂組成物を2分割してから積層して6層にし、次いで第二のフィードブロックにて前記6層状の溶融樹脂組成物を2分割してから積層して12層(3×2
2層)に積層し、溶融積層体a2を得た。次に、前記溶融積層体a2をTダイを用いて押出(吐出)し、次いで表面温度を70℃に保持した金属ドラムに前記押し出された(吐出された)溶融積層体a2を巻きつけて固化させて、厚さ約200μmのキャスト原反シートを得た。このとき、溶融積層体a2の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整した。このキャスト原反シートを115℃の温度で、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KARO IVを用いて、流れ方向に2.5倍、ついで横方向に2.5倍に延伸した。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0129】
実施例10
まず、実施例9と同様の方法により、フィードブロックを用いて溶融樹脂組成物を12層に積層した溶融積層体a2を得た。次に、熱可塑性樹脂組成物2を単軸押出機(C)に供給し得られた溶融樹脂組成物を用いて前記溶融積層体a2の表面及び裏面に表スキン層及び裏スキン層(表層及び裏層ともいう)を設けて14層(1+3×2
2+1層)に積層し、溶融積層体b2を得た。次に、前記溶融積層体b2をTダイを用いて押し出した(吐出した)。このとき、(1)前記溶融積層体a2の表面及び裏面に設けた前記各スキン層の厚さの合計が溶融積層体b2の全体の厚さの1/4となるよう単軸押出機(C)の吐出比率を調整したことと、(2)前記各スキン層を除いた溶融積層体a2の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整したこと以外は、実施例9と同様の工程を行った。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0130】
実施例11
まず、実施例9と同様の方法により、溶融積層体a2を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三および第四のフィードブロックを用いて溶融積層体a2を更に2分割して積層する工程を更に2回繰り返して積層することにより、溶融樹脂組成物を48層(3×2
4層)に積層して、溶融積層体c2を得た。次いで、溶融積層体a2に代えて溶融積層体c2を用いる以外は、実施例9と同様の工程を行った。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0131】
実施例12
まず、実施例9と同様の方法により、溶融積層体a2を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三および第四のフィードブロックを用いて溶融積層体a2を2分割して積層する工程を更に2回繰り返して溶融樹脂組成物を48層に積層し、溶融積層体c2を得た。次いで、単軸押出機(C)を用いて溶融積層体c2の表面及び裏面に表スキン層及び裏スキン層を設けて溶融樹脂組成物を50層(1+3×2
4+1層)に積層し、溶融積層体d2を得た。このとき、(1)表面及び裏面に設けた前記各スキン層の厚さの合計が溶融積層体d2の全体の厚さの1/4となるよう単軸押出機(C)の吐出比率を調整したことと、(2)前記各スキン層を除いた溶融積層体c2の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整したこと以外は、実施例9と同様の工程を行った。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0132】
実施例13
まず、実施例9と同様の方法により、溶融積層体a2を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三、第四、第五、および第六のフィードブロックを用いて溶融積層体a2を2分割して積層する工程を更に4回繰り返して溶融樹脂組成物を192層(3×2
6層)に積層して、溶融積層体e2を得た。次いで、溶融積層体a2に代えて溶融積層体e2を用いる以外は、実施例9と同様の工程を行った。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0133】
実施例14
まず、実施例9と同様の方法により、溶融積層体a2を得た。次に、第二のフィードブロックに続いて、第三、第四、第五、および第六のフィードブロックを用いて溶融積層体a2を2分割して積層する工程を更に4回繰り返して溶融樹脂組成物を192層(3×2
6層)に積層し、溶融積層体e2を得た。次いで、熱可塑性樹脂組成物2を単軸押出機(C)に供給して得られた溶融樹脂組成物を用いて溶融積層体e2の表面及び裏面に表スキン層及び裏スキン層を設けて溶融樹脂組成物を194層(1+3×2
6+1層)に積層し、溶融積層体f2を得た。このとき、(1)表面及び裏面に設けた前記各スキン層の厚さの合計が溶融積層体f2の全体の厚さの1/4となるよう単軸押出機(C)の吐出比率を調整したことと、(2)前記各スキン層を除いた溶融積層体e2の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整したこと以外は、実施例9と同様の工程を行なった。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0134】
実施例15
実施例9で使用した熱可塑性樹脂組成物2を、単軸押出機(A)、単軸押出機(B)および単軸押出機(C)に供給し、樹脂温度250℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、前記溶融樹脂組成物を単軸押出機(A)、単軸押出機(B)および単軸押出機(C)フィードブロックに導入する前に溶融状態でC(単軸押出機(C)からの溶融樹脂組成物)、A(単軸押出機(A)からの溶融樹脂組成物)、B(単軸押出機(B)からの溶融樹脂組成物)、A、及びCの順に5層の層状に積層し、溶融積層体g2を得た。次いで、第一から第六のフィードブロックを用いて溶融積層体g2を2分割して積層する工程を6回繰り返して320層(5×2
6層)に積層し、溶融積層体h2を得た。このとき、溶融積層体の各層の厚さが全て同じになるように単軸押出機(A)単軸押出機(B)および単軸押出機(C)の吐出比率を調整した以外は、実施例9と同様の工程を行なった。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0135】
比較例4(参考例)
実施例9で使用した熱可塑性樹脂組成物2を、単軸押出機(A)に供給し、樹脂温度310℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、フィードブロックを用いず溶融樹脂組成物を積層させなかった以外は、実施例9と同様の工程を行なった。これにより、厚さ30μmの単層の二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0136】
比較例5
実施例9で使用した熱可塑性樹脂組成物2を、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度310℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、フィードブロックを用いずに溶融樹脂組成物を2層に積層し、溶融積層体i2を得た。このとき、溶融積層体i2の各層の厚さが同じになるように単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整した以外は、実施例9と同様の工程を行なった。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0137】
比較例6
実施例9で使用した熱可塑性樹脂組成物2を、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度310℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、前記溶融樹脂組成物を単軸押出機(A)および単軸押出機(B)を用いて溶融状態でA、B、及びAの順に3層の層状に積層し、溶融積層体j2を得た。次に、得られた溶融積層体j2に対して、フィードブロックを用いず、単軸押出機(C)を用いて溶融積層体j2の表面及び裏面にスキン層を設けて5層の溶融積層体k2を得た。このとき、溶融積層体k2の各層の厚さが全て同じになるように単軸押出機(A)、単軸押出機(B)および単軸押出機(C)の吐出比率を調整した以外は、実施例9と同様の工程を行なった。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリスチレンフィルムを得た。
【0138】
得られた二軸延伸ポリスチレンフィルムについて、絶縁破壊強さを上記方法に従い評価した。得られた評価結果を表2に示す。また、各実施例および比較例の層数、酸素ガス透過係数(Cmu)[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]、Cmo/Cmu、フィルム厚さ(B)[μm]、フィルム中の単層当たりの層の厚さ(A)[μm]、およびA/Bについても、表2に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
実施例16
ポリエチレンテレフタラート樹脂PETを、150℃で3時間乾燥させた。その後、かかるポリエチレンテレフタラート樹脂PETからなる熱可塑性樹脂組成物3を単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度285℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、前記溶融樹脂組成物をフィードブロックに導入する前に溶融状態でA(単軸押出機(A)からの溶融樹脂組成物)、B(単軸押出機(B)からの溶融樹脂組成物)、Aの順に3層の層状に積層した後、第一のフィードブロックを用いて前記3層状の溶融樹脂組成物を2分割してから積層して6層にし、次いで第二のフィードブロックにて前記6層状の溶融樹脂組成物を2分割してから積層して12層(3×2
2層)に積層し、溶融積層体a3を得た。さらに、第二のフィードブロックに続いて、第三および第四のフィードブロックを用いて溶融積層体a3を2分割して積層する工程を更に2回繰り返して溶融樹脂組成物を48層に積層し、溶融積層体b3を得た。次いで、単軸押出機(C)を用いて溶融積層体b3の表面及び裏面に表スキン層及び裏スキン層を設けて溶融樹脂組成物を50層(1+3×2
4+1層)に積層し、溶融積層体c3を得た。次に、前記溶融積層体c3をTダイを用いて押出(吐出)し、次いで表面温度を25℃に保持した金属ドラムに前記押し出された(吐出された)溶融積層体c3を巻きつけて固化させて、厚さ約350μmのキャスト原反シートを得た。このとき、表面及び裏面に設けた前記各スキン層の厚さの合計が溶融積層体c3の全体の厚さの1/4となるよう単軸押出機(C)の吐出比率を調整し、また、前記各スキン層を除いた溶融積層体b3の各層の厚さが全て同じになるように、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整した。このキャスト原反シートを130℃の温度で、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KARO IVを用いて、流れ方向に3.2倍、ついで横方向に3.5倍に延伸して、230℃で20秒間の熱処理を行い結晶配向させて、厚さ30μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムを得た。
【0141】
比較例7(参考例)
実施例16で使用した熱可塑性樹脂組成物3を、単軸押出機(A)に供給し、樹脂温度285℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、フィードブロックを用いず溶融樹脂組成物を積層させなかった以外は、実施例16と同様の工程を行なった。これにより、厚さ30μmの単層の二軸延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムを得た。
【0142】
比較例8
実施例16で使用した熱可塑性樹脂組成物3を、単軸押出機(A)および単軸押出機(B)に供給し、樹脂温度285℃の温度で加熱溶融し、溶融樹脂組成物を得た。次に、フィードブロックを用いずに溶融樹脂組成物を2層に積層し、溶融積層体d3を得た。このとき、溶融積層体d3の各層の厚さが同じになるように単軸押出機(A)および単軸押出機(B)の吐出比率を調整した以外は、実施例16と同様の工程を行なった。これにより、厚さ30μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムを得た。
【0143】
得られた二軸延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムについて、絶縁破壊強さを上記方法に従い評価した。得られた評価結果を表3に示す。また、各実施例および比較例の層数、酸素ガス透過係数(Cmu)[(mol・m)/(m
2・s・Pa)]、Cmo/Cmu、フィルム厚さ(B)[μm]、フィルム中の単層当たりの層の厚さ(A)[μm]、およびA/Bについても、表3に示す。
【0144】
【表3】
【0145】
表1に示されるように、実施例1〜8の本発明のポリプロピレン二軸延伸フィルムは、比較例1および2と比較して、高い絶縁破壊強さを有しており、高温における優れた絶縁特性を有することがわかる。さらに、実施例6および8の結果により、任意の層とその隣接する層との厚さの比率が異なっていても高い絶縁破壊強さを示すが、フィルムを構成する各層が全て同じ厚さである方がより高い絶縁破壊強さを示すことがわかる。
また、実施例9〜15の本発明のポリスチレン二軸延伸フィルムについても、表2に示されるように、同一の樹脂種からなるフィルムと比較して、より高い絶縁破壊強さを有しており、高温における優れた絶縁特性を有することがわかる。さらに、表3に示されるように、実施例16の本発明のポリエチレンテレフタラート二軸延伸フィルムについても、同一の樹脂種からなるフィルムと比較して、より高い絶縁破壊強さを有しており、高温における優れた絶縁特性を有することがわかる。
以上より、優れた絶縁特性を有する実施例1〜16の二軸延伸フィルムは、コンデンサ用フィルムとして極めて好適である。