特許第6516053号(P6516053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6516053フラックス、やに入りはんだ及びはんだ付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6516053
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】フラックス、やに入りはんだ及びはんだ付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20190513BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20190513BHJP
   B23K 3/02 20060101ALI20190513BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   B23K35/363 D
   B23K35/14 B
   B23K35/14 Z
   B23K3/02 R
   H05K3/34 503Z
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-124563(P2018-124563)
(22)【出願日】2018年6月29日
【審査請求日】2018年6月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 基泰
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼▲冨▼ 尚志
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 浩由
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6337349(JP,B1)
【文献】 国際公開第2010/041668(WO,A1)
【文献】 特開2004−025305(JP,A)
【文献】 特開2003−025089(JP,A)
【文献】 特開2018−061978(JP,A)
【文献】 実開昭53−035928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363、35/14、3/02
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、前記はんだの融点を超える温度まで、前記やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、前記やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法であって、
前記はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔に前記やに入りはんだが供給され、前記はんだごてが前記はんだの融点を超える温度を保ち、前記貫通孔に供給された前記やに入りはんだを加熱するはんだ付け方法に用いる
固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、
活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含む
ことを特徴とするやに入りはんだ用のフラックス。
【請求項2】
フラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、前記はんだの融点を超える温度まで、前記やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、前記やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法であって、
前記はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔に前記やに入りはんだが供給され、前記はんだごてが前記はんだの融点を超える温度を保ち、前記貫通孔に供給された前記やに入りはんだを加熱するはんだ付け方法に用いる
フェノール系固形溶剤を70wt%以上100wt%以下、
活性剤を0wt%以上30wt%以下含む
ことを特徴とするやに入りはんだ用のフラックス。
【請求項3】
フラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、前記はんだの融点を超える温度まで、前記やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、前記やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法であって、
前記はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔に前記やに入りはんだが供給され、前記はんだごてが前記はんだの融点を超える温度を保ち、前記貫通孔に供給された前記やに入りはんだを加熱するはんだ付け方法に用いる
フェノール系固形溶剤を0wt%超30wt%以下、
フェノール系固形溶剤以外の固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、
活性剤を0wt%以上30wt%以下含む
ことを特徴とするやに入りはんだ用のフラックス。
【請求項4】
25℃で固形または粘度が3500Pa・s以上の液体である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のやに入りはんだ用のフラックス。
【請求項5】
活性剤は、有機酸、アミン、有機ハロゲン化合物、アミンハロゲン化水素酸塩のいずれ
か、または、有機酸、アミン、有機ハロゲン化合物、アミンハロゲン化水素酸塩の2つ以
上の組み合わせである
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のやに入りはんだ用のフラックス。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のやに入りはんだ用のフラックスがはんだに充填された
ことを特徴とするやに入りはんだ。
【請求項7】
固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含むフラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、前記はんだの融点を超える温度まで、前記やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、前記やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法において、
前記はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔に前記やに入りはんだが供給され、前記はんだごてが前記はんだの融点を超える温度を保ち、前記貫通孔に供給された前記やに入りはんだを加熱する
ことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項8】
フェノール系固形溶剤を70wt%以上〜100wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、前記はんだの融点を超える温度まで、前記やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、前記やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法において、
前記はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔に前記やに入りはんだが供給され、前記はんだごてが前記はんだの融点を超える温度を保ち、前記貫通孔に供給された前記やに入りはんだを加熱する
ことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項9】
フェノール系固形溶剤を0wt%超〜30wt%以下、フェノール系固形溶剤以外の固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、前記はんだの融点を超える温度まで、前記やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、前記やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法において、
前記はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔に前記やに入りはんだが供給され、前記はんだごてが前記はんだの融点を超える温度を保ち、前記貫通孔に供給された前記やに入りはんだを加熱する
ことを特徴とするはんだ付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、やに入りはんだ用のフラックス、このやに入りはんだ用のフラックスを用いたやに入りはんだ及びはんだ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、はんだ付けに用いられるフラックスは、はんだ及びはんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、はんだと接合対象物の金属表面との間に金属間化合物が形成できるようになり、強固な接合が得られる。
【0003】
はんだ付けで使用されるはんだとして、線状のはんだにフラックスが充填されたやに入りはんだと称すはんだが知られている。このようなやに入りはんだで使用されることを想定したフラックスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
やに入りはんだで使用されるフラックスは、加工性の面で固形、または、液体であっても高粘度の様態であることが求められる。
【0005】
やに入りはんだを使用したはんだ付け方法としては、はんだごてと称す加熱部材を用いることが知られている。これに対し、はんだごての中心軸に貫通孔を備え、この貫通孔にやに入りはんだを供給してはんだ付けを行う技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、特許文献2に記載のはんだごてで使用されるフラックスにおいて、フラックス残渣が炭化して残存することを原因としたはんだ付け不良を解決するため、ロジンを基材としたフラックスで低残渣を実現した技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−113776号公報
【特許文献2】特開2009−195938号公報
【特許文献3】特開2018−61978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
やに入りはんだで使用されるフラックスは、常温ではんだから流れ出ないようにするため所定の粘度が求められ、従来、フラックスに所定量のロジンを含んでいた。ロジンははんだ付けで想定される熱履歴で揮発しにくく、残渣の主成分となる。
【0008】
特許文献2に記載されているようなはんだごてを使用してはんだ付けを行うと、貫通孔に供給したやに入りはんだのフラックスが加熱後に残渣となり、貫通孔の内面に付着する場合がある。特許文献2に記載されているはんだごてを使用したはんだ付けでは、はんだごてがはんだの融点を超える所定の温度を保つように制御された状態で、やに入りはんだが貫通孔に供給されてはんだ付けが連続して行われる。これにより、残渣等の付着物が加熱され続けて炭化物となり、貫通孔内の焦げの原因となる。そして、はんだごての貫通孔内に炭化物が堆積して貫通孔の径が小さくなり、やに入りはんだが供給できなくなる可能性がある。特許文献3に記載のフラックスでは、ロジンの選択で低残渣を実現している。しかし、加温時において、ロジンを使用する場合よりもさらに速やかに流動性を確保することが求められていた。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、低残渣かつ加工性に優れたやに入りはんだ用のフラックス、このやに入りはんだ用のフラックスを使用したやに入りはんだ及びはんだ付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
固形溶剤及びフェノール系固形溶剤は、フラックスに所定の粘度を持たせることができ、かつ、はんだ付けで想定される温度域までの加熱では難揮発性であり、金属酸化物を除去する効果が得られ、更に、はんだ付けで想定される熱履歴では揮発性を有し、連続した加熱での炭化が抑制されることを見出した。
【0011】
そこで、本発明は、フラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、はんだの融点を超える温度まで、やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法であって、はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔にやに入りはんだが供給され、はんだごてがはんだの融点を超える温度を保ち、貫通孔に供給されたやに入りはんだを加熱するはんだ付け方法に用いる固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含むやに入りはんだ用のフラックスである。
【0012】
また、本発明は、フラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、はんだの融点を超える温度まで、やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法であって、はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔にやに入りはんだが供給され、はんだごてがはんだの融点を超える温度を保ち、貫通孔に供給されたやに入りはんだを加熱するはんだ付け方法に用いるフェノール系固形溶剤を70wt%以上〜100wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むやに入りはんだ用のフラックスである。
【0013】
更に、本発明は、フラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、はんだの融点を超える温度まで、やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法であって、はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔にやに入りはんだが供給され、はんだごてがはんだの融点を超える温度を保ち、貫通孔に供給されたやに入りはんだを加熱するはんだ付け方法に用いるフェノール系固形溶剤を0wt%超〜30wt%以下、フェノール系固形溶剤以外の固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むやに入りはんだ用のフラックスである。
【0014】
本発明では、フラックスが25℃で固形または粘度が3500Pa・s以上の液体であることが好ましい。また、活性剤は、有機酸、アミン、有機ハロゲン化合物、アミンハロゲン化水素酸塩のいずれか、または、有機酸、アミン、有機ハロゲン化合物、アミンハロゲン化水素酸塩の2つ以上の組み合わせであることが好ましい。
【0015】
更に、本発明は、上述したやに入りはんだ用のフラックスがはんだに充填されたやに入りはんだである。
【0016】
また、本発明は、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含むフラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、はんだの融点を超える温度までやに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法において、はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔にやに入りはんだが供給され、はんだごてがはんだの融点を超える温度を保ち、貫通孔に供給されたやに入りはんだを加熱するはんだ付け方法である。
【0017】
更に、本発明は、フェノール系固形溶剤を70wt%以上〜100wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、はんだの融点を超える温度まで、やに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法において、はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔にやに入りはんだが供給され、はんだごてがはんだの融点を超える温度を保ち、貫通孔に供給されたやに入りはんだを加熱するはんだ付け方法である。
【0018】
更に、本発明は、フェノール系固形溶剤を0wt%超〜30wt%以下、フェノール系固形溶剤以外の固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックスが充填されたはんだからなるやに入りはんだを使用し、はんだの融点を超える温度までやに入りはんだをはんだごてで加熱して、接合対象物を加熱すると共に、やに入りはんだを溶融させるはんだ付け方法において、はんだごては、中心軸に沿って形成された貫通孔にやに入りはんだが供給され、はんだごてがはんだの融点を超える温度を保ち、貫通孔に供給されたやに入りはんだを加熱するはんだ付け方法である。
【発明の効果】
【0019】
固形溶剤またはフェノール系固形溶剤、あるいは、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤を含むフラックスは、常温で固形または所定の粘度を有する様態となる。
【0020】
また、フェノール系の固形溶剤を含まない場合は活性剤を含むことで、また、フェノール系の固形溶剤を含む場合は活性剤を含まなくとも、金属酸化物に対する十分な活性を持ち、かつ、はんだの融点を超える温度域までの加熱の過程で、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤の粘度が低下して流れる。
【0021】
これにより、本発明では、やに入りはんだに使用して、金属酸化物を除去するための十分な活性を得ることができる。また、常温で流れないことから、やに入りはんだのフラックスとして好適である。更に、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤は、はんだ付けで想定される熱履歴で揮発性を有するので、低残渣の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態のはんだ付け方法で使用されるはんだごての一例を示す説明図である。
図2A】本実施の形態のはんだ付け方法を示す説明図である。
図2B】本実施の形態のはんだ付け方法を示す説明図である。
図2C】本実施の形態のはんだ付け方法を示す説明図である。
図2D】本実施の形態のはんだ付け方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<本実施の形態のフラックスの一例>
本実施の形態のフラックスは、固形溶剤またはフェノール系固形溶剤、あるいは、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤を含む。
【0024】
固形溶剤を含むフラックスは、常温で固形または流れ出さないような所定の粘度を有する。また、フェノール系固形溶剤を含むフラックスでも、常温で固形または流れ出さないような所定の粘度を有する。更に、沸点がはんだ付けで想定される温度域の近傍である固形溶剤及びフェノール系固形溶剤は、はんだ付けで想定される熱履歴で揮発性を有する。
【0025】
このような固形溶剤を含むフラックスは、有機酸等の活性剤を含むことで、金属酸化物を除去する機能を持つ。また、フェノール系固形溶剤は、活性剤としても機能し得る。これにより、フェノール系固形溶剤を含むフラックスは、有機酸等の他の活性剤を含まずとも、金属酸化物を除去する機能を持つ。
【0026】
はんだにフラックスが充填されたやに入りはんだでは、フラックスがはんだから流れ出ないようにするため、フラックスに所定の粘度が求められる。本実施の形態のフラックスをやに入りはんだに適用した場合、固形溶剤の量が少ないと、粘度を確保するため、ロジンの量を増やす必要がある。しかし、ロジンは、はんだ付けで想定される温度域までの加熱では難揮発性であり、ロジンの量を増やすと残渣量が多くなり、低残渣の用途に適さない。
【0027】
そこで、第1の実施の形態のフラックスは、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含む。
【0028】
フラックスがフェノール系固形溶剤を含む場合、活性剤を含まずともフラックスとして機能し得る。そこで、第2の実施の形態のフラックスは、フェノール系固形溶剤を70wt%以上〜100wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含む。
【0029】
また、第3の実施の形態のフラックスは、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、フェノール系固形溶剤を0wt%超〜30wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含む。各実施の形態のフラックスは、25℃で固形または粘度が3500Pa・s以上の液体であることが好ましい。
【0030】
固形溶剤としては、ネオペンチルグリコール(2、2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、ジオキサングリコール等が挙げられる。また、フェノール系固形溶剤としては、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、カテコール等が挙げられる。
【0031】
各実施の形態のフラックスは、ロジンを0wt%以上30wt%以下含んでも良い。また、各実施の形態のフラックスは、活性剤として、有機酸を0wt%以上30wt%以下、アミンを0wt%以上5wt%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上4wt%以下、有機ハロゲン化合物を0wt%以上10wt%以下含む。なお、フラックスに有機酸とアミンが添加されると、所定量の有機酸とアミンが反応して塩となる。そこで、有機酸、アミンの2種以上を反応させて塩の状態にしてから添加することで、有機酸とアミンの反応を抑制できるようにしても良い。
【0032】
更に、各実施の形態のフラックスは、添加剤として、シリコーンを0wt%以上5wt%、有機リン化合物を0wt%以上10wt%以下、消泡剤を0wt%以上3wt%以下含む。さらに界面活性剤や着色剤を含有してもよい。
【0033】
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の天然ロジン、並びに天然ロジンから得られる誘導体が挙げられる。ロジン誘導体としては、例えば、精製ロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、水添不均化ロジン、酸変性ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、エステル化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0034】
各実施の形態のフラックスは、ロジンに加えてさらにアクリル樹脂等の他の樹脂を含んでも良く、他の樹脂としては、アクリル樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンポリプロピレン共重合物、及びポリエチレンポリ酢酸ビニル共重合物から選択される少なくとも一種以上の樹脂をさらに含むことができる。変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等を使用することができる。なお、他の樹脂の量は、ロジンの全量を100としたとき、ロジンの15wt%以下、好ましくはロジンの10wt%以下、より好ましくはロジンの5wt%以下である。
【0035】
有機酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、4−tert−ブチル安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0036】
また、有機酸としては、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸等が挙げられる。更に、有機酸としては、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物以外のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸として、アクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸の反応物であるトリマー酸、リノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノレン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、上述したオレイン酸とリノール酸の反応物以外のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸等が挙げられる。
【0037】
アミンとしては、モノエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6′−tert−ブチル−4′−メチル−2,2′−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2′−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1′,2′−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0038】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素を反応させた化合物であり、アニリン塩化水素酸塩、アニリン臭化水素酸塩等が挙げられる。アミンハロゲン化水素酸塩のアミンとしては、上述したアミンを用いることができ、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられ、ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の水素化物(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素)が挙げられる。また、アミンハロゲン化水素酸塩に代えて、あるいはアミンハロゲン化水素酸塩と合わせてホウフッ化物を含んでも良く、ホウフッ化物としてホウフッ化水素酸等が挙げられる。
【0039】
有機ハロゲン化合物としては、有機ブロモ化合物であるtrans−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、cis−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、テトラブロモフタル酸、ブロモコハク酸、2,2,2−トリブロモエタノール等が挙げられる。また、有機クロロ化合物であるクロロアルカン、塩素化脂肪酸エステル、ヘット酸、ヘット酸無水物等が挙げられる。さらに有機フルオロ化合物であるフッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0040】
シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、環状シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0041】
有機リン化合物としては、メチルアシッドホスフェイト、エチルアシッドホスフェイト、イソプロピルアシッドホスフェイト、モノブチルアシッドホスフェイト、ブチルアシッドホスフェイト、ジブチルアシッドホスフェイト、ブトキシエチルアシッドホスフェイト、2−エチルへキシルアシッドホスフェイト、ビス(2−エチルへキシル)ホスフェイト、モノイソデシルアシッドホスフェイト、イソデシルアシッドホスフェイト、ラウリルアシッドホスフェイト、イソトリデシルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイト、オレイルアシッドホスフェイト、牛脂ホスフェイト、ヤシ油ホスフェイト、イソステアリルアシッドホスフェイト、アルキルアシッドホスフェイト、テトラコシルアシッドホスフェイト、エチレングリコールアシッドホスフェイト、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェイト、ジブチルピロホスフェイトアシッドホスフェイト、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、アルキル(アルキル)ホスホネート等が挙げられる。
【0042】
消泡剤としては、アクリルポリマー、ビニルエーテルポリマー、ブタジエンポリマー等が挙げられる。
【0043】
<本実施の形態のやに入りはんだの構成例>
本実施の形態のやに入りはんだは、上述したフラックスが充填された線状のはんだ以外にも、ペレット、ディスク、リング、チップ、ボール、カラムと称す円柱等の柱状の形状でも良い。やに入りはんだに使用されるフラックスは、はんだを加工する工程で流れ出さないように常温で固形であること、あるいは流れ出さないような所定の高粘度であることが求められる。なお、やに入りはんだで使用される場合にフラックスに求められる粘度は、例えば3500Pa・s以上である。やに入りはんだの線径は、0.1mm以上1.6mm以下であり、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下であり、より好ましくは0.6mm以上1.0mm以下である。また、やに入りはんだに充填されたフラックスの含有量は、やに入りはんだを100とした場合、0.5wt%以上6wt%以下であり、好ましくは1.5wt%以上3wt%以下である。
【0044】
はんだは、Sn単体、または、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn-In系、Sn−Zn系、Sn-Pb系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P、Pb、Zr等を添加した合金で構成される。
【0045】
<本実施の形態のフラックスコートはんだの構成例>
本実施の形態のフラックスコートはんだは、上述したフラックスで被覆されたはんだである。フラックスコートはんだは、線状のはんだ以外にも、ペレット、ディスク、リング、チップ、ボール、カラムと称す円柱等の柱状の形状でも良い。はんだを被覆した状態のフラックスは、常温でははんだの表面に付着した固形である。
【0046】
はんだは、Sn単体、または、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn-In系、Sn−Zn系、Sn-Pb系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P、Pb、Zr等を添加した合金で構成される。
【0047】
<本実施の形態のフラックス、やに入りはんだ及びフラックスコートはんだの作用効果例>
固形溶剤またはフェノール系固形溶剤、あるいは、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤を含むフラックスは、常温で固形または所定の粘度を有する様態となる。
【0048】
また、フェノール系の固形溶剤を含まない場合は活性剤を含むことで、また、フェノール系の固形溶剤を含む場合は活性剤を含まなくとも、金属酸化物に対する十分な活性を持ち、かつ、はんだの融点を超える温度域までの加熱の過程で、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤の粘度が低下して流れる。
【0049】
これにより、本実施の形態のフラックスは、やに入りはんだ、フラックスコートはんだに使用して、金属酸化物を除去するための十分な活性を得ることができる。また、常温で流れないことから、やに入りはんだのフラックスとして好適である。更に、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤は、はんだ付けで想定される熱履歴で揮発性を有するので、低残渣の用途に好適である。
【0050】
<本実施の形態のはんだ付け方法の一例>
図1は、本実施の形態のはんだ付け方法で使用されるはんだごての一例を示す説明図、図2A図2B図2C及び図2Dは、本実施の形態のはんだ付け方法を示す説明図である。
【0051】
本実施の形態のはんだ付け方法は、スルーホール実装や片面基板等に適用される。本実施の形態のはんだ付け方法で使用されるはんだごて1Aは、はんだごて1Aの中心軸に沿って貫通孔2が形成され、はんだごて1Aを加熱する加熱手段としてヒータ3を備える。
【0052】
はんだごて1Aは、貫通孔2の直径Dが、やに入りはんだHの直径dより大きく、貫通孔2を通してはんだごて1Aの先端部10にやに入りはんだHを供給することが可能である。また、はんだごて1Aは、貫通孔2の直径Dが、電子部品100のリード端子101の直径dより大きく、貫通孔2の先端部10にリード端子101を挿入することが可能である。
【0053】
本実施の形態のはんだ付け方法では、図2Aに示すように、電子部品100のリード端子101が、基板200に形成されたスルーホール201に挿入される。また、ヒータ3ではんだの融点を超えるまではんだごて1Aを加熱し、はんだごて1Aがはんだの融点を超える所定の温度を保つように制御する。次に、図2Bに示すように、リード端子101が挿入されたスルーホール201に、はんだごて1Aの先端部10を接触または近接させ、リード端子101をはんだごて1Aの貫通孔2に挿入する。
【0054】
次に、はんだごて1Aの貫通孔2に所定の長さに切断されたやに入りはんだHを供給し、貫通孔2に挿入されたリード端子101にやに入りはんだHを接触させる。
【0055】
はんだごて1Aがはんだの融点を超える所定の温度を保つように制御されることで、図2Cに示すように、やに入りはんだが加熱され、はんだが溶融すると共に、スルーホール201及びリード端子101が加熱される。
【0056】
はんだの融点を超える温度まではんだごて1Aでやに入りはんだHを加熱する際、やに入りはんだ中のフラックスの粘度が低下し、フラックスがスルーホール201及びリード端子101に流れることで、はんだ、スルーホール201及びリード端子101の表面の金属酸化物が除去され、溶融したはんだがぬれ広がる。
【0057】
次に、図2Dに示すように、はんだごて1Aをスルーホール201から離すことで、スルーホール201及びリード端子101にぬれ広がったはんだを硬化させる。
【0058】
上述したはんだ付け方法において、やに入りはんだHで使用されるフラックスが、本実施の形態のフラックスである場合、フラックスが固形溶剤またはフェノール系固形溶剤、あるいは、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤を含むことで、フラックスを固形、あるいは所定の高粘度とすることができる。これにより、やに入りはんだのフラックスとして好適である。
【0059】
また、固形溶剤及びフェノール系固形溶剤は、はんだ付けで想定される熱履歴で揮発性を有する。一方、ロジンを含まない、あるいは、ロジンを含む場合でも、ロジンの量を30wt%以下として、フラックスを固形、あるいは所定の高粘度とすることができ、ロジンの含有量を低減できる。
【0060】
これにより、はんだごて1Aの貫通孔2に供給されたやに入りはんだH中のフラックスが、加熱後に残渣となる量が抑制される。このため、はんだごて1Aがはんだの融点を超える所定の温度を保つように制御された状態で、やに入りはんだHが貫通孔2に供給されてはんだ付けが連続して行われても、貫通孔2内に残渣の炭化物が堆積することが抑制され、はんだごて1Aの貫通孔2が、残渣の炭化物で詰まる等の不具合の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0061】
以下の表1、表2に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、残渣量及び加工性について検証した。なお、表1、表2における組成率は、フラックスの全量を100とした場合のwt(重量)%である。
【0062】
<残渣量評価>
(1)検証方法
TG法(熱重量測定法)による試験評価方法として、アルミパンに各実施例及び各比較例のフラックスを10mg詰めて、ULVAC社製TGD9600を用いてN雰囲気下で25℃〜350℃まで、昇温速度10℃/minにて加熱した。加熱後の各フラックスの重量が、加熱前の15%以下になったかどうかを測定した。
【0063】
(2)判定基準
○:重量が加熱前の15%以下になった
×:重量が加熱前の15%より大きかった
【0064】
加熱後の重量が加熱前の15%以下になったフラックスは、加熱によってフラックス中の成分が十分に揮発したと言える。重量が加熱前の15%より大きかったフラックスは、フラックス中の成分の揮発が不十分であったと言える。揮発が十分ではないフラックスがやに入りはんだに使用され、上述したはんだ付け方法に適用されると、はんだごての貫通孔に残渣の炭化物が多く堆積し、やに入りはんだが正常に供給できない等の不具合の原因となる。
【0065】
<加工性の評価>
(1)検証方法
実施例、比較例のフラックスを試料とし、25℃における状態を観察して、固形及び液体のいずれであるかを判定した。フラックスが液体である場合、フラックスをレオメータ(Thermo Scientific HAAKE MARS III(商標))のプレート間に挟んだ後、6Hzでプレートを回転させることによりフラックスの粘度を測定した。そして、やに入りはんだを製造する際の加工性を、下記に示す基準で評価した。
【0066】
(2)判定基準
〇:25℃における状態が固形であった。または、25℃における状態が液体であるが、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s以上であった。フラックスの25℃における状態が固形、または、25℃における状態が液体であるが、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s以上であると、やに入りはんだを作ることができた。
×:25℃における状態が液体であり、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s未満であった。フラックスの25℃における状態が液体であり、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s未満であると、フラックスが流れ、やに入りはんだを作ることができなかった。
【0067】
<総合評価>
〇:残渣量及び加工性評価の何れも〇であった
×:残渣量及び加工性評価の何れか、または全てが×であった
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例1では、25℃での状態が固形、あるいは、25℃での状態が液体であっても、粘度が3500Pa・s以上であり、やに入りはんだを製造する際の加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量が15wt%以下で、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0071】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で減らして70wt%含み、有機酸としてアジピン酸を5wt%、エイコサン二酸を25wt%含み、2種以上の有機酸の組み合わせが本発明で規定される範囲内である実施例2でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0072】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で増やして99.5wt%含み、アミンハロゲン化水素酸塩としてN,N−ジエチルアニリン臭化水素酸塩を本発明で規定される範囲内で0.5wt%含む実施例3でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0073】
固形溶剤としてジオキサングリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例4でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0074】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例5でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0075】
フェノール系固形溶剤としてカテコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例6でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0076】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で100wt%含み、有機酸等の他の活性剤を含まない実施例7でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0077】
フェノール系固形溶剤としてカテコールを本発明で規定される範囲内で100wt%含み、有機酸等の他の活性剤を含まない実施例8でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0078】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で70wt%含み、フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で30wt%含み、有機酸等の他の活性剤を含まない実施例9でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0079】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてピメリン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例10でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0080】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてスベリン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例11でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0081】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてドデカン二酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例12でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0082】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、アミンとして2−フェニルイミダゾールを本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例13でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0083】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で96wt%含み、アミンハロゲン化水素酸塩としてN,N−ジエチルアニリン臭化水素酸塩を本発明で規定される範囲内で4wt%含む実施例14でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0084】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、有機ハロゲン化合物として2,2,2−トリブロモエタノールを本発明で規定される範囲内で10wt%含む実施例15でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0085】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で99wt%含み、有機ハロゲン化合物としてtrans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールを本発明で規定される範囲内で1wt%含む実施例16でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0086】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で99wt%含み、有機ハロゲン化合物としてトリアリルイソシアヌレート6臭化物を本発明で規定される範囲内で1wt%含む実施例17でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0087】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含み、シリコーンとしてジメチルシリコーンオイルを本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例18でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0088】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で85wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機リン化合物としてイソデシルアシッドホスフェイトを本発明で規定される範囲内で10wt%含む実施例19でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0089】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で92wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含み、消泡剤としてアクリルポリマーを本発明で規定される範囲内で3wt%含む実施例20でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0090】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例21でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0091】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で85wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを本発明で規定される範囲内で10wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例22でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0092】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で70wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを本発明で規定される範囲内で30wt%含む実施例23でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0093】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、天然ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例24でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0094】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として重合ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例25でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0095】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として不均化ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例26でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0096】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として水添不均化ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例27でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0097】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体としてアクリル酸変性ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例28でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0098】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体としてアクリル酸変性水添ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例29でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0099】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体としてロジンエステルを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例30でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0100】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で75wt%含み、天然ロジンを5wt%、ロジン誘導体として重合ロジンを5wt%、不均化ロジンを5wt%、アクリル酸変性ロジンを5wt%含み、2種以上のロジンの組み合わせが本発明で規定される範囲内であり、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例31でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0101】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で75wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを5wt%、水添不均加ロジンを5wt%、アクリル酸変性水添ロジンを5wt%、ロジンエステルを5wt%含み、2種以上のロジンの組み合わせが本発明で規定される範囲内であり、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例32でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0102】
これに対して、固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲を下回る50wt%含み、ロジン誘導体としてアクリル酸変性ロジンを本発明で規定される範囲を超えて45wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む比較例1では、低残渣とする効果は得られたが、25℃での状態が液体で、粘度が3500Pa・s未満であり、やに入りはんだを製造する際の加工性に対して十分な効果が得られなかった。
【0103】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲を下回る50wt%含み、ロジン誘導体として重合ロジンを本発明で規定される範囲を超えて45wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む比較例2では、残渣量が15wt%を超え、残渣量が抑制できず低残渣とする効果が得られなかった。また、加工性に対して十分な効果が得られなかった。
【0104】
固形溶剤、フェノール系固形溶剤を含まず、溶剤としてヘキシルジグリコールを40wt%含み、天然ロジンを50wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を10wt%含む比較例3では、低残渣とする効果は得られたが、加工性に対して十分な効果が得られなかった。
【0105】
以上のことから、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含むフラックス、フェノール系固形溶剤を70wt%以上〜100wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックス、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、フェノール系固形溶剤を0wt%超〜30wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックス、これらの何れかのフラックスを使用したやに入りはんだ、フラックスコートはんだでは、残渣量を抑制する効果が得られた。また、加工性が良好となる効果が得られた。
【0106】
これらの効果は、ロジン類、添加剤を本発明で規定される範囲内で含むことでも阻害されなかった。
【要約】
【課題】低残渣かつ加工性に優れたフラックス、このフラックスを使用したやに入りはんだ、フラックスコートハンダ及びはんだ付け方法を提供する。
【解決手段】フラックスは、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含む。また、フラックスは、フェノール系固形溶剤を70wt%以上〜100wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含む。更に、フラックスは、フェノール系固形溶剤を0wt%超〜30wt%以下、フェノール系固形溶剤以外の固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含む。
【選択図】無し
図1
図2A
図2B
図2C
図2D