【実施例】
【0061】
以下の表1、表2に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、残渣量及び加工性について検証した。なお、表1、表2における組成率は、フラックスの全量を100とした場合のwt(重量)%である。
【0062】
<残渣量評価>
(1)検証方法
TG法(熱重量測定法)による試験評価方法として、アルミパンに各実施例及び各比較例のフラックスを10mg詰めて、ULVAC社製TGD9600を用いてN
2雰囲気下で25℃〜350℃まで、昇温速度10℃/minにて加熱した。加熱後の各フラックスの重量が、加熱前の15%以下になったかどうかを測定した。
【0063】
(2)判定基準
○:重量が加熱前の15%以下になった
×:重量が加熱前の15%より大きかった
【0064】
加熱後の重量が加熱前の15%以下になったフラックスは、加熱によってフラックス中の成分が十分に揮発したと言える。重量が加熱前の15%より大きかったフラックスは、フラックス中の成分の揮発が不十分であったと言える。揮発が十分ではないフラックスがやに入りはんだに使用され、上述したはんだ付け方法に適用されると、はんだごての貫通孔に残渣の炭化物が多く堆積し、やに入りはんだが正常に供給できない等の不具合の原因となる。
【0065】
<加工性の評価>
(1)検証方法
実施例、比較例のフラックスを試料とし、25℃における状態を観察して、固形及び液体のいずれであるかを判定した。フラックスが液体である場合、フラックスをレオメータ(Thermo Scientific HAAKE MARS III(商標))のプレート間に挟んだ後、6Hzでプレートを回転させることによりフラックスの粘度を測定した。そして、やに入りはんだを製造する際の加工性を、下記に示す基準で評価した。
【0066】
(2)判定基準
〇:25℃における状態が固形であった。または、25℃における状態が液体であるが、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s以上であった。フラックスの25℃における状態が固形、または、25℃における状態が液体であるが、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s以上であると、やに入りはんだを作ることができた。
×:25℃における状態が液体であり、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s未満であった。フラックスの25℃における状態が液体であり、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s未満であると、フラックスが流れ、やに入りはんだを作ることができなかった。
【0067】
<総合評価>
〇:残渣量及び加工性評価の何れも〇であった
×:残渣量及び加工性評価の何れか、または全てが×であった
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例1では、25℃での状態が固形、あるいは、25℃での状態が液体であっても、粘度が3500Pa・s以上であり、やに入りはんだを製造する際の加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量が15wt%以下で、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0071】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で減らして70wt%含み、有機酸としてアジピン酸を5wt%、エイコサン二酸を25wt%含み、2種以上の有機酸の組み合わせが本発明で規定される範囲内である実施例2でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0072】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で増やして99.5wt%含み、アミンハロゲン化水素酸塩としてN,N−ジエチルアニリン臭化水素酸塩を本発明で規定される範囲内で0.5wt%含む実施例3でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0073】
固形溶剤としてジオキサングリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例4でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0074】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例5でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0075】
フェノール系固形溶剤としてカテコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例6でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0076】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で100wt%含み、有機酸等の他の活性剤を含まない実施例7でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0077】
フェノール系固形溶剤としてカテコールを本発明で規定される範囲内で100wt%含み、有機酸等の他の活性剤を含まない実施例8でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0078】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で70wt%含み、フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で30wt%含み、有機酸等の他の活性剤を含まない実施例9でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0079】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてピメリン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例10でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0080】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてスベリン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例11でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0081】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、有機酸としてドデカン二酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例12でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0082】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で95wt%含み、アミンとして2−フェニルイミダゾールを本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例13でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0083】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で96wt%含み、アミンハロゲン化水素酸塩としてN,N−ジエチルアニリン臭化水素酸塩を本発明で規定される範囲内で4wt%含む実施例14でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0084】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、有機ハロゲン化合物として2,2,2−トリブロモエタノールを本発明で規定される範囲内で10wt%含む実施例15でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0085】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で99wt%含み、有機ハロゲン化合物としてtrans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールを本発明で規定される範囲内で1wt%含む実施例16でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0086】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で99wt%含み、有機ハロゲン化合物としてトリアリルイソシアヌレート6臭化物を本発明で規定される範囲内で1wt%含む実施例17でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0087】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含み、シリコーンとしてジメチルシリコーンオイルを本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例18でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0088】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で85wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機リン化合物としてイソデシルアシッドホスフェイトを本発明で規定される範囲内で10wt%含む実施例19でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0089】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で92wt%含み、有機酸としてアジピン酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含み、消泡剤としてアクリルポリマーを本発明で規定される範囲内で3wt%含む実施例20でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0090】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例21でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0091】
固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲内で85wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを本発明で規定される範囲内で10wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例22でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0092】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で70wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを本発明で規定される範囲内で30wt%含む実施例23でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0093】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、天然ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例24でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0094】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として重合ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例25でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0095】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として不均化ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例26でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0096】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体として水添不均化ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例27でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0097】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体としてアクリル酸変性ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例28でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0098】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体としてアクリル酸変性水添ロジンを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例29でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0099】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で90wt%含み、ロジン誘導体としてロジンエステルを本発明で規定される範囲内で5wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例30でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0100】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で75wt%含み、天然ロジンを5wt%、ロジン誘導体として重合ロジンを5wt%、不均化ロジンを5wt%、アクリル酸変性ロジンを5wt%含み、2種以上のロジンの組み合わせが本発明で規定される範囲内であり、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例31でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0101】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲内で75wt%含み、ロジン誘導体として水添ロジンを5wt%、水添不均加ロジンを5wt%、アクリル酸変性水添ロジンを5wt%、ロジンエステルを5wt%含み、2種以上のロジンの組み合わせが本発明で規定される範囲内であり、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む実施例32でも、加工性に対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0102】
これに対して、固形溶剤としてネオペンチルグリコールを本発明で規定される範囲を下回る50wt%含み、ロジン誘導体としてアクリル酸変性ロジンを本発明で規定される範囲を超えて45wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む比較例1では、低残渣とする効果は得られたが、25℃での状態が液体で、粘度が3500Pa・s未満であり、やに入りはんだを製造する際の加工性に対して十分な効果が得られなかった。
【0103】
フェノール系固形溶剤として4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを本発明で規定される範囲を下回る50wt%含み、ロジン誘導体として重合ロジンを本発明で規定される範囲を超えて45wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を本発明で規定される範囲内で5wt%含む比較例2では、残渣量が15wt%を超え、残渣量が抑制できず低残渣とする効果が得られなかった。また、加工性に対して十分な効果が得られなかった。
【0104】
固形溶剤、フェノール系固形溶剤を含まず、溶剤としてヘキシルジグリコールを40wt%含み、天然ロジンを50wt%含み、有機酸としてエイコサンニ酸を10wt%含む比較例3では、低残渣とする効果は得られたが、加工性に対して十分な効果が得られなかった。
【0105】
以上のことから、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、活性剤を0.5wt%以上30wt%以下含むフラックス、フェノール系固形溶剤を70wt%以上〜100wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックス、固形溶剤を70wt%以上99.5wt%以下、フェノール系固形溶剤を0wt%超〜30wt%以下、活性剤を0wt%以上30wt%以下含むフラックス、これらの何れかのフラックスを使用したやに入りはんだ、フラックスコートはんだでは、残渣量を抑制する効果が得られた。また、加工性が良好となる効果が得られた。
【0106】
これらの効果は、ロジン類、添加剤を本発明で規定される範囲内で含むことでも阻害されなかった。