(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
材料試験を実行する材料試験機には、試験片に試験負荷を与える負荷機構と、負荷機構により試験片に与える試験力を測定する試験力検出器や試験片に生じた変位を検出する変位計など、力や変位などの物理量を電気信号に変換する複数の検出器が配設されている。これらの検出器を、アンプを介して材料試験機全体を制御する試験機コントローラに接続することにより、材料試験における物理量の測定系が構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の検出器は、交流電圧により励起されることが多く、検出器が出力した電気信号を受信する受信回路では、力や変異などの物理量に応じて変調された搬送波(キャリア)信号から測定信号のみを抽出することにより、物理量の変化に応じた信号を得るようにしている。検出器の出力信号を受信して、物理量の成分を抽出する検波回路は、材料試験機の制御装置等に設けられており、検出器とアンプとは、多芯シールド線で接続されている。従来から、芯線間および芯線−シールド間の浮遊容量が物理量の測定誤差の要因となることが知られており、特許文献2では、ケーブル間浮遊容量による影響を補償する搬送波型ひずみ測定方法が提案されている。
【0004】
検出器を交流電圧で励起し、受信した信号から力や変位の成分を抽出する方法として、従来から、フーリエ変換が利用されている。力や変位の大きさに比例する抵抗成分をA、力や変位の大きさに比例せず回路に寄生する容量により発生する容量成分をBとすると、受信信号f(t)は式(1)で表される。
【0005】
【数2】
【0006】
なお、ωはキャリア信号の角周波数であり、式の簡略化のため、基準信号との位相差はゼロとしている。一般的にf(t)のフーリエ変換F(t)は、次の式(2)となる。
【0007】
【数3】
【0008】
式(2)の定義域は−∞から+∞であるが、検出器の出力信号を受信するアンプ側の回路では、測定間隔を短くするために、キャリア1周期ごとに相関関数との畳み込み積分を行い、抵抗成分Aを抽出している。すなわち、式(1)のsinωtに位相が一致する成分のみを1周期分求める。このとき、フーリエ変換F
s(ω)は、次の式(3)となる。
【0009】
【数4】
【0010】
式(1)で抵抗成分Aをsinωtとおいているため、求めたい値は式(3)の虚部となる。
【0011】
【数5】
【0012】
この式(4)により容量成分Bが消え、抵抗成分Aのみが抽出できる。すなわち、次の式(5)により抵抗成分Aを抽出する。
【0013】
【数6】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来は、キャリア周波数に対して、抵抗成分Aの周波数成分が十分に小さいと仮定して、式(5)を用いて抵抗成分Aを求めていた。このため、材料試験において要求されるサンプリング周波数が上がり、より高い周波数成分まで検出しようとする場合には、検出器の駆動波の周波数、すなわちキャリア周波数を上げる必要があった。一方で、検出器には、例えば差動トランス式の検出器のように、測定方式によっては、測定精度の観点から、駆動波の周波数範囲が決まっているものがあり、キャリア周波数をその周波数範囲を超えて上げることができないという問題があった。また、キャリア周波数を上げると、ケーブル間浮遊容量の影響が大きくなり、測定値の信頼性が低下するという問題もある。
【0016】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、検出器の駆動信号であるキャリア周波数を超える周波数成分まで抽出でき、検出器が検出した物理量の変動をより詳細に捉えることが可能な測定装置および材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明は、被測定物に生じた物理量の変化を測定する測定装置であって、前記被測定物に生じた物理量の変化を電気信号に変換して出力する検出器と、前記検出器を駆動する所定の周期の正弦波を前記検出器に与えるとともに、前記検出器から出力される信号を受信するセンサアンプと、を備え、前記センサアンプは、前記検出器から前記センサアンプに入力された受信信号から前記検出器で測定する物理量の成分を抽出する受信回路を有し、前記受信回路は、前記受信信号から前記物理量から変換された抵抗成分を抽出する相関関数として、前記所定の周期の正弦波に同期する成分とその奇数次高調波の成分とを含む関数を用いることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の測定装置において、前記受信回路は、g(t)を受信信号とし、G
s(ω)をg(t)の搬送波の周期における1周期間のフーリエ変換としたときに、前記所定の周期の正弦波に同期する成分とその奇数次高調波の成分とを含む関数を使用して、抵抗成分A
sを下記式により抽出する。
【0019】
【数7】
【0020】
請求項3に記載の発明は、試験片に試験力を与える負荷機構を備え、材料試験を実行する材料試験機であって、請求項1または請求項2に記載の測定装置を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の材料試験機において、前記測定装置は、前記試験片に与えられた試験力を検出する検出器としてロードセルを含む測定装置、または、前記試験片に生じた変位を検出する検出器として変位計を含む測定装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、検出器からの信号を受信する受信回路において、受信信号から物理量から変換された抵抗成分を抽出する相関関数として、所定の周期の正弦波に同期する成分とその奇数次高調波の成分とを含む関数を用いることにより、検出器の駆動信号であるキャリア周波数を超える周波数成分まで抽出でき、検出器が検出した物理量の変動をより詳細に捉えることが可能となる。また、物理量の測定において要求されるサンプリング周波数が上がっても、キャリア周波数を上げる必要がないため、ケーブル間浮遊容量の測定値に対する影響が大きくなることもなく、測定値の信頼性を損なうことがない。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、キャリア周波数を超える周波数でデータを取得できるため、材料試験に要求されるサンプリング周波数が高くなっても検出器のキャリア周波数を上げる必要がなくなる。
【0024】
請求項3および請求項4に記載の発明によれば、測定装置により測定された物理量のデータを元にフィードバック制御などの自動制御を実行することで、負荷機構の動作を、従来よりも滑らかに行うことが可能となる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、材料試験に要求されるサンプリング周波数で試験データを取得することができることから、材料試験においてロードセルによる試験力の測定値や変位計による伸びの測定値の精度を向上させることができるとともに、試験力制御や変位制御による材料試験機の動作の自動制御を、滑らかに実行することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、材料試験機の概要図である。
【0028】
この材料試験機は、試験機本体1と制御装置2から構成される。試験機本体1は、テーブル16と、このテーブル16上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設された一対のねじ棹11、12と、これらのねじ棹11、12に沿って移動可能なクロスヘッド13と、このクロスヘッド13を移動させて試験片10に対して負荷を付与するための負荷機構30と、被測定物である試験片10における物理量の変化を電気信号に変換する検出器であるロードセル14および変位計15を備える。
【0029】
クロスヘッド13は、一対のねじ棹11、12に対して、図示を省略したナット(ボールナット)を介して連結されている。各ねじ棹11、12の下端部には、負荷機構30におけるウォーム減速機32、33が連結されている。このウォーム減速機32、33は、負荷機構30の駆動源であるサーボモータ31と連結されており、サーボモータ31の回転がウォーム減速機32、33を介して、一対のねじ棹11、12に伝達される構成となっている。サーボモータ31の回転によって、一対のねじ棹11、12が同期して回転することにより、クロスヘッド13は、これらのねじ棹11、12に沿って昇降する。
【0030】
クロスヘッド13には、試験片10の上端部を把持するための上つかみ具21が付設されている。一方、テーブル16には、試験片10の下端部を把持するための下つかみ具22が付設されている。引張試験を行う場合には、試験片10の両端部をこれらの上つかみ具21および下つかみ具22により把持した状態で、クロスヘッド13を上昇させることにより、試験片10に試験力(引張試験力)を負荷する。
【0031】
制御装置2は、コンピュータやシーケンサーおよびこれらの周辺機器によって構成されており、論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等を有し、装置全体を制御する制御盤40を備える。さらに、制御装置2は、ロードセル用のセンサアンプであるロードアンプ41aと、変位計15用のセンサアンプであるストレインアンプ41bと、ロードセル14および変位計15が検出した変位量や試験力を表示するための表示器48を備える。
【0032】
負荷機構30を動作させたときに、上つかみ具21および下つかみ具22により両端を把持された試験片10に作用する試験力はロードセル14によって検出され、ロードアンプ41aを介して制御盤40に入力される。また、試験片10に生じた変位量は、変位計15により測定され、ストレインアンプ41bを介して制御盤40に入力される。
【0033】
制御盤40では、ロードセル14および変位計15からの試験力データおよび変位量データを取り込んでデータ処理がCPUにより実行される。さらに、制御盤40では、デジタル回路やROMに格納された制御プログラムの動作により、デジタルデータとして入力された試験力および変位量の変動を利用して、サーボモータ31の回転駆動がフィードバック制御される。
【0034】
図2は、各検出器の構造を説明する概要図である。
図3は、測定回路の構成概要図である。
図4は、FPGA(Field Programmable Gate Array)60の機能構成を説明するブロック図である。なお、
図3に示す測定回路は、検出器が
図2に示すいずれの検出器の場合も同様であることから、測定装置の測定回路の構成として説明するとともに、ロードアンプ41aおよびストレインアンプ41bは、以下においてセンサアンプ41と称する。
【0035】
図1に示す材料試験機は、ロードセル14と変位計15を備える。ロードセル14は、ひずみゲージの電気抵抗の変化を利用して試験力を測定するひずみゲージ式検出器であり、
図2(a)に示すように、抵抗値が同じひずみゲージR1〜R4が接続されたブリッジ回路を備えている。
【0036】
変位計15には、測定方式の違いにより、ひずみゲージ式変位計、差動トランス式変位計、ポテンショメータ式変位計があり、試験の内容に応じて選択される。ひずみゲージ式変位計は、ロードセル14と同様に、
図2(a)に示すブリッジ回路を備える。差動トランス式変位計は、
図2(b)に示すように、1次コイルT1と2次コイルT2A、T2B、試験片10の伸びに連動して動く鉄心MCとを備え、1次コイルT1を励磁したときに発生する2次コイルT2Aと2次コイルT2Bの誘起電圧との間に、鉄心MCの位置に応じた差が生じることを利用して、変位に応じた電圧出力を得る検出器である。また、ポテンショメータ式変位計は、
図2(c)に示すように、抵抗体TRとワイパーWPを備え、抵抗体TRとワイパーWPの相対的変位量を電圧出力に変換する検出器である。ポテンショメータ式変位計のSig−は、シグナルグラウンドに接続される。
図2に示す各検出器の入力端EX+、EX−と出力端Sig+、Sig−は、ケーブルユニット24の対応する接続端にそれぞれ接続される。
【0037】
センサアンプ41は、計装アンプ56、LPF(ローパスフィルタ)57、ADC(アナログデジタルコンバータ)58、DAC(デジタルアナログコンバータ)51、オペアンプ52、54、パワーアンプ53、55からなるアナログ回路と、FPGA60によるデジタル回路を備える。FPGA60の内部には、FPGA60からDAC51に送る波形データが記憶されるとともに、ADC58から入力された信号から試験力値や伸び値の信号成分を取り出す検波回路61と、オフセット減算器68と、ゲイン乗算器69が論理回路として構築されている。検波回路61は、後述する式(8)を利用して、試験力や変位に比例する抵抗成分を抽出する。オフセット減算器68は、試験力値や伸び値の試験開始時の定常状態分を示すオフセット値を、検波回路61を経たデジタルデータから差し引くものである。ゲイン乗算器69は、検出器に応じてゲイン差を調整するためのものである。なお、この実施形態では、デジタル信号を処理する論理回路を実現する素子としてFPGAを用いているが、内部の回路を書き換えることが可能な他のPLD(Programmable Logic Device)やデジタル信号をソフトウェアで行うマイクロコンピュータを使用してもよい。また、この実施形態では、計装アンプ56、LPF57およびADC58までのアナログ回路と、FPGA60の検波回路61、オフセット減算器68およびゲイン乗算器69のデジタル回路により、受信回路が構成される。
【0038】
検出器とセンサアンプ41はケーブルユニット24により接続される。そして、ケーブルユニット24は、各検出器の種別の情報とそれに関連した情報(型式、フルスケールなど)を記憶する不揮発性メモリ25を備える。
【0039】
FPGA60からDAC51へは、各検出器の入力端EX+、EX−に入力される駆動電圧の波形信号が送信される。DAC51から発生した波形は、オペアンプ52、54に入力され、ゼロボルトを中心にプラスマイナス対象な駆動波形とされた後、パワーアンプ53、55で増幅され、検出器に励起信号として供給される。検出器の出力端Sig+、Sig−から出力された信号は、計装アンプ56に入力され、差分が取り出される。そして、LPF57でADC58のナイキスト周波数を超える成分が取り除かれた後に、ADC58でデジタル信号に変換され、FPGA60に入力される。そして、FPGA60内での信号処理の後に、試験力値または試験片10の伸び値(変位量)が制御盤40を介して表示器48に表示される。
【0040】
以上のような構成を有する測定装置において、FPGA60の検波回路61における信号処理についてさらに説明する。検出器を所定の周期の正弦波で駆動し、受信した信号から力や変位の成分を抽出するために、フーリエ変換を利用する。この発明では、従来とは異なり、受信信号g(t)を以下の式(6)で表し、そのフーリエ変換G
s(ω)を式(7)で定義する。そして、相関関数との畳み込み積分により導かれる式(8)を利用して、試験片10に与えられる試験力または試験片10に生じる変位の大きさに比例した抵抗成分A
sを抽出する。
【0041】
なお、検出器を駆動する信号は単一周波数の正弦波であるが、検出器から出力される信号は、駆動信号が検出器の状態変化(ここでは変位としておく)によって振幅変調された信号となる。したがって、検出器から出力される信号には駆動信号の周波数以外に変位の周波数が含まれる。
【0045】
また、上記式で、抵抗成分AをA(t)として、時間の関数であるように書いているのは次の理由による。抵抗成分Aは検出器への駆動信号に対する位相差がゼロである成分ということであるが、この値が時刻によって変化する大きさが無視できないという意味である。しかし、本発明の計算手段ではA
sはg(t)を完全には再現できていないためA
sがg(t)あるいはtの関数とはしていない。
【0046】
なお、式(6)においては、A(t)は抵抗成分であり、Bは容量成分である。また、式(7)および式(8)における2k+1は、高調波の次数となる。
【0047】
検出器としての差動トランス式変位計を2kHzのキャリア周波数で駆動した場合について、従来の信号処理の手法と、上記式(8)によるこの発明の信号処理の手法とをシミュレーションした結果を比較して説明する。
図5〜
図7は、三角波で振幅変調したときの波形を示す。
図5は、受信信号を示すグラフであり、
図6は、従来の式(5)を利用した信号処理によって得られた計算結果を示すグラフである。また、
図7は、式(8)の計算結果を示すグラフである。これらの図においては、グラフの縦軸は変位(mm:ミリメートル)、横軸は時刻(ms:ミリ秒)を示し、測定点を白抜き丸で示している。
【0048】
図5の受信信号は、差動トランス変位計の鉄心MCが、一定の時間(10ミリ秒)内に0から1mm(ミリメートル)まで移動し、再び0の位置に戻ってきたときの波形を想定している。この
図6の想定波形を従来の式(1)における受信信号f(t)とすると、従来の式(5)によって得られる抵抗成分Aの算出は、従来の式(3)を利用していることから、キャリア周波数の1周期ごとに1回しか行われない。このため、キャリア周波数が2kHzの場合は、サンプリング周波数が100kHzであっても、500マイクロ秒ごとにしか計算が行われないことになる。したがって、従来の信号処理の手法では、
図6に示すように、変位の測定点がまばらになる。
【0049】
一方で、
図5の想定波形を式(6)における受信信号g(t)とし、キャリア周波数が2kHz、サンプリング周波数が100kHzである場合、式(7)および式(8)による計算を行うと、サンプリング周期(10マイクロ秒)ごとに計算結果が得られることとなる。すなわち、従来に比べて50倍の測定点が得られることになる。したがって、一定時間での変位の変化を示すグラフは、
図7に示すように、測定点が連続した滑らかなグラフとなる。なお、
図7のグラフでは、式(8)でn=5とし、キャリア周波数の9倍の高調波まで計算している。
【0050】
図8〜
図10は、矩形波で振幅変調したときの波形を示す。
図8は、受信信号を示すグラフであり、
図9は、従来の式(5)を利用した信号処理によって得られた計算結果を示すグラフである。また、
図10は、式(8)の計算結果を示すグラフである。これらの図においては、グラフの縦軸は変位(mm)、横軸は時刻(ms)を示し、測定点を白抜き丸で示している。
【0051】
三角波で振幅変調した場合と同様に、
図8の想定波形を従来の信号処理の手法を用いて計算を行うと、キャリア周波数の1周期ごとに1回、抵抗成分Aを計算することになるため、
図9に示すように、変位の測定点がまばらになる。
【0052】
一方で、
図8の想定波形について、式(7)および式(8)の計算を行うと、サンプリング周期ごとに、抵抗成分Asが計算される。したがって、
図10に示すように、変位の測定点を多数得ることができ、滑らかな測定結果となる。
【0053】
なお、
図7および
図10のグラフに示すような測定結果は、式(8)でnの数を大きくする(次数を上げる)ほど、滑らかなものとなる。このnの数(または次数)は、サンプリング周波数とキャリア周波数との関係、および、数値積分に使用する相関関数が高調波成分を再現できる範囲によって、適宜選択される。例えば、サンプリング周波数が100kHz、キャリア周波数が2kHzの場合は、両者は周波数に50倍の差のある関係となる。この場合に数値積分に使用する相関関数が再現できる高調波は、9倍の奇数次高調波となり、n=5が式(8)において好ましいnの数とされる。
【0054】
次に、容量成分について検討する。
図11は、容量成分を示すグラフである。
図12は、式(8)の計算結果である。これらの図においては、グラフの縦軸は変位(mm)、横軸は時刻(ms)を示し、測定点を白抜き丸で示している。
【0055】
容量成分は、変位には比例せず回路に寄生する成分であることから、その受信信号は、
図11に示すような波形となる。式(6)で受信信号A(t)=0、容量成分B=1としたときの容量成分Bに対する式(8)の計算結果は、As=0となる。このため、
図12に示すように、時間的に変化しない容量成分Bは、計算中で削除される。
【0056】
図13は、式(8)に使用する相関関数を示すグラフである。この図においては、グラフの縦軸は相関関数、横軸は時刻(ms)である。なお、
図13においては、説明の便宜上、式(8)におけるnが1、3、5の場合の相関関数を異なる線種で示している。この図において、破線はn=1、2点鎖線はn=3、1点鎖線はn=5の場合を示す。また、n=1の場合は、従来の式(5)に使用する相関関数と同じとなるため、従来の相関関数を例示するものとしてグラフ中に示している。
【0057】
検出器を励起している基本波の周波数(キャリア周波数)は、検出器の種別により推奨される周波数がおおよそ決まっている場合がある。したがって、材料試験機においては、検出器の種別と材料試験において要求されるサンプリング周波数の範囲から、式(8)におけるnは2〜5(3〜9次までの奇数次高調波)から選択するのが好ましい。
【0058】
従来の信号処理の手法で用いられていた相関関数は、単一の正弦波だけであったが(
図13のn=1参照)、この発明の信号処理においては、相関関数に奇数次高調波が含まれている(
図13のn=3およびn=5参照)。このように、式(8)の相関関数に、所定の周期の正弦波(キャリア周波数)に同期する成分だけでなく、その奇数次高調波の成分を含む関数を使用したことで、従来よりも短い時間間隔で抵抗成分A
sの計算結果を得ることができる。
【0059】
また、この発明の測定装置における検出器からの受信信号の処理によれば、材料試験に要求されるサンプリング周波数のサンプリング周期ごとに測定結果を取得することができることから、従来のように、試験片10の速い変化を捉えるためにキャリア周波数を上げる必要がない。キャリア周波数は検出器の種類に応じて適切な周波数に決定できるため、
図2(a)から(c)で示すような測定方式の異なるいずれの変位計15を備える材料試験機であっても、材料試験に要求されるサンプリング周波数で試験データを取得することが可能となる。