特許第6516085号(P6516085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6516085-導光板 図000002
  • 特許6516085-導光板 図000003
  • 特許6516085-導光板 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516085
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】導光板
(51)【国際特許分類】
   F21V 8/00 20060101AFI20190513BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20190513BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20190513BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20190513BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20190513BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   F21V8/00 355
   F21S2/00 434
   F21V8/00 100
   G02B6/00 331
   C03B17/06
   C03C3/091
   C03C3/093
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-160237(P2014-160237)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-72896(P2015-72896A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-182133(P2013-182133)
(32)【優先日】2013年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嘉成
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−199875(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078421(WO,A1)
【文献】 特開2003−227943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 8/00
C03B 17/06
C03C 3/091
C03C 3/093
F21S 2/00
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラス板を有すると共に、該ガラス板中のCrの含有量が0.0001質量%以下であり、該ガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が50%以上であり、且つ該ガラス板の一方の表面側に反射膜又は反射板を備えることを特徴とする導光板。
【請求項2】
ガラス板中のFeの含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
ガラス板の少なくとも一辺の寸法が1000mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導光板。
【請求項4】
ガラス板の端面の表面粗さRaが2μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の導光板。
【請求項5】
ガラス板の熱膨張係数が120×10−7/℃以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の導光板。
【請求項6】
ガラス板が、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 2〜25%、B 0〜20%、RO(RはLi、Na、Kの一種又は二種以上) 0〜25%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜10%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜10%、ZrO 0〜10%、Fe 0.001〜0.1%、Cr 0〜0.0001%を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の導光板。
【請求項7】
ガラス板中のCrの含有量が0.00001質量%以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の導光板。
【請求項8】
エッジライト型面発光装置に用いることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の導光板。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の導光板を備えることを特徴とするエッジライト型面発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板に関し、特に、エッジライト型面発光装置に好適な導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶テレビ等に液晶表示装置が用いられている。液晶表示装置は、面発光装置と、この面発光装置の光出射面側に配置される液晶パネルとを備えている。面発光装置として、例えば、直下型、エッジライト型が知られている。
【0003】
直下型面発光装置では、光源が、光出射面に対して反対側となる背面に配置される。光源として、発光ダイオード(Light Emitting Diode)等の点光源を用いる場合、明るさを補うために、多数のLEDチップが必要になり、輝度特性のばらつきが非常に大きくなる。
【0004】
このため、現在では、エッジライト型面発光装置が主流になっている。エッジライト型面発光装置では、LED等の光源と、導光板と、反射板(又は反射膜)等とを備えている。光源は、光出射面に対して直交方向となる側面に配置される。導光板は、光源からの光を全反射により内部に伝播し、面状に出射させるために配置される。導光板として、アクリル樹脂等の樹脂板が一般的に使用されている(特許文献1〜4参照)。反射板は、光出射面と反対側の光反射面に配置されると共に、光反射面に抜けた光を反射させて、液晶パネル等の表示面を発光させるために配置される。なお、液晶パネル等の表示面を均一に発光させるために、導光板の光出射面側に、拡散板(拡散膜)が配置される場合もある。
【0005】
図1は、エッジライト型面発光装置1の一例を示す断面概念図である。エッジライト型面発光装置1は、LED等の光源2と、導光板3と、反射板4と、拡散板5とを備えている。光源2からの光は、導光板3の端面から入射し、導光板3の内部に伝搬する。光反射面6に達した光は、反射板4により反射し、光出射面7の方に進み、拡散板5により拡散する。結果として、拡散板5の上方に配置された液晶パネル等の表示面を均一に発光させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−123933号公報
【特許文献2】特開2012−138345号公報
【特許文献3】特開2012−216523号公報
【特許文献4】特開2012−216528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エッジライト型面発光装置では、光源から光が発生すると、熱が発生し、それに伴い、導光板の温度も上昇する。そして、導光板として樹脂板を用いる場合、導光板の熱による寸法変化は液晶パネルの寸法変化よりも大きくなる。この原因は、樹脂板の熱膨張係数が高いことによる。例えば、アクリル樹脂板の熱膨張係数は約700×10−7/℃である。そのため、従来までは、寸法変化の差に起因して不当な応力が発生しないように、液晶表示装置の額縁部分に空隙を設けて、導光板の寸法変化を補正していた。
【0008】
しかし、近年、液晶表示装置の狭額縁化により、導光板の寸法変化を液晶表示装置の額縁部分で補正し難くなっている。
【0009】
また、導光板として樹脂板を用いる場合、光源からの光が端面から入射して光出射面に抜ける際に、光量が減殺される。結果として、表示装置の輝度特性が低下し易くなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、その技術的課題は、温度上昇に伴い、寸法変化が生じ難く、且つ表示装置の輝度特性を低下させ難い導光板を創案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、導光板として、温度変化による寸法変化が小さいガラス板を採択すると共に、ガラス板の透過率を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の導光板は、少なくともガラス板を有すると共に、該ガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が50%以上であることを特徴とする。「光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率」は、市販の透過率測定装置で測定可能であり、例えば、島津製作所社製UV−3100PCにより測定可能である。
【0012】
液晶パネル等の表示パネルは、一対のガラス板間に、液晶素子等の表示素子を挟み込んだ構造を有している。そこで、導光板としてガラス板を採択すると、表示パネルと導光板の寸法変化の差が小さくなり、液晶表示装置等の表示装置の狭額縁化に適正に対応することができる。
【0013】
本発明者は、ガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が表示装置の輝度特性に影響を与えることを見出した。そこで、本発明では、ガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を50%以上に規制して、表示装置の輝度特性を高めている。
【0014】
本発明の導光板は、ガラス板中のFeの含有量が0.1質量%以下であることが好ましい。このようにすれば、ガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を高めることができる。Feは、ガラス中でFe3+又はFe2+の状態で存在する。Fe3+は、波長380nm付近に吸収ピークを持ち、紫外域、短波長側の可視域における透過率を低下させる。Fe2+は、波長1080nm付近に吸収ピークを持ち、長波長側の可視域における透過率を低下させる。よって、Feの含有量が多くなると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。ガラス板は、一般的に、ガラス原料や製造工程中から多量のFeが混入している。よって、従来のガラス板は、Feの含有量が多いため、表示装置の輝度特性を高めることが困難である。そこで、ガラス板中のFeの含有量を0.1質量%以下に規制すると、表示装置の輝度特性を高めることができる。なお、本発明でいう「Fe」は、2価の酸化鉄と3価の酸化鉄を含み、2価の酸化鉄は、Feに換算して、取り扱うものとする。他の酸化物についても、同様にして、表記の酸化物を基準にして取り扱うものとする。
【0015】
本発明の導光板は、ガラス板の少なくとも一辺の寸法が1000mm以上であることが好ましい。このようにすれば、表示装置の大型化の要請を満たすことができる。
【0016】
本発明の導光板は、ガラス板の端面の表面粗さRaが2μm以下であることが好ましい。ここで、「表面粗さRa」とは、JIS B0601:2001に準拠した方法により測定した値を指し、評価長さ8mm、カットオフ値λc=0.8mm、カットオフ比λc/λs=100の条件で測定した値を指す。
【0017】
本発明の導光板は、ガラス板の熱膨張係数が120×10−7/℃以下であることが好ましい。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターを用いて、JIS R3102に基づき、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した値を指す。
【0018】
本発明の導光板は、ガラス板が、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 2〜25%、B 0〜20%、RO(RはLi、Na、Kの一種又は二種以上) 0〜25%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜10%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜10%、ZrO 0〜10%、Fe 0.001〜0.1%を含有することが好ましい。このようにすれば、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を高めつつ、熱膨張係数を低下させることが可能になる。
【0019】
本発明の導光板は、ガラス板がオーバーフローダウンドロー法により成形されてなることが好ましい。ここで、「オーバーフローダウンドロー法」は、耐熱性の樋状成形体の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを成形体の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を製造する方法である。
【0020】
本発明の導光板は、エッジライト型面発光装置に用いることを特徴とする。
【0021】
本発明のエッジライト型面発光装置は、上記の導光板を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】エッジライト型面発光装置の一例を示す断面概念図である。
図2】実施例1〜3に係るガラス板の光路長100mm、波長範囲300〜750nmにおける透過率の測定データである。
図3】実施例4に係るガラス板の光路長100mm、波長範囲300〜750nmにおける透過率の測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の導光板において、ガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率は50%以上であり、好ましくは70%以上、75%以上、80%以上、81%以上、82%以上、特に83%以上である。光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低過ぎると、表示装置の輝度特性が低下し易くなる。
【0024】
本発明の導光板では、ガラス板中の着色酸化物の含有量を可及的に低減することが好ましい。着色酸化物として、例えば、Fe、Cr、V、NiO、MnO、Nd、CeO、Er等を例示することができる。
【0025】
本発明の導光板において、ガラス板中の遷移金属酸化物の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.009質量%以下、0.008質量%以下、0.007質量%以下、0.006質量%以下、0.005質量%以下、0.004質量%以下、特に0.001〜0.01質量%である。遷移金属酸化物の含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。なお、遷移金属酸化物の含有量が0.001質量%より少なくなると、原料コスト、ガラス板の製造コストが高騰する。
【0026】
ガラス板中のFeの含有量は、好ましくは0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、特に0.001〜0.01質量%である。Feの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。なお、Feの含有量が0.001質量%より少なくなると、原料コスト、ガラス板の製造コストが高騰する。
【0027】
ガラス板中のCrの含有量は、好ましくは0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、0.003質量%以下、0.001質量%以下、0.0005質量%以下、0.0004質量%以下、0.0003質量%以下、特に0.0002質量%以下、特に0.0001質量%以下である。Crの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。なお、Crの含有量が少な過ぎると、原料コスト、ガラス板の製造コストが高騰する。好適な下限含有量は0.00001質量%以上、特に0.00005質量%以上である。
【0028】
ガラス板中のVの含有量は、好ましくは0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、特に0.003質量%以下である。Vの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。
【0029】
ガラス板中のNiOの含有量は、好ましくは0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、特に0.003質量%以下である。NiOの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。
【0030】
ガラス板中のMnOの含有量は、好ましくは0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、特に0.003質量%以下である。MnOの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。
【0031】
ガラス板中のNdの含有量は、好ましくは0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、特に0.003質量%以下である。Ndの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。
【0032】
ガラス板中のCeOの含有量は、好ましくは0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、特に0.003質量%以下である。CeOの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。
【0033】
ガラス板中のErの含有量は、好ましくは0.03質量%以下、0.02質量%以下、0.015質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、特に0.003質量%以下である。Erの含有量が多過ぎると、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が低下し易くなる。
【0034】
Fe、Cr等の着色酸化物の混入を可及的に排除するには、高純度ガラス原料を用いたり、原料調合設備等から原料へFe、Cr等の着色酸化物が混入しないように設計された製造設備を使用すればよい。
【0035】
本発明の導光板において、ガラス板の少なくとも一辺の寸法は、好ましくは1000mm以上、1500mm以上、2000mm以上、2500mm以上、特に3000mm以上である。このようにすれば、表示装置の大型化の要請を満たすことができる。
【0036】
ガラス板の端面の表面粗さRaは、好ましくは2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、0.7μm以下、特に0.5μm以下である。このようにすれば、光源からの光がガラス板の端面で散乱し易くなり、光源からの光を均一に導光板に入射させることが困難になる。
【0037】
ガラス板の熱膨張係数は、好ましくは120×10−7/℃以下、90×10−7/℃以下、60×10−7/℃以下、55×10−7/℃以下、50×10−7/℃以下、45×10−7/℃以下、特に25×10−7〜40×10−7/℃以下である。熱膨張係数が高過ぎると、表示パネルと導光板の熱による寸法変化の差が大きくなる。
【0038】
ガラス板の歪点は、好ましくは550℃以上、580℃以上、600℃以上、615℃以上、630℃以上、640℃以上、特に650℃以上である。歪点が低過ぎると、ガラス板の耐熱性が低下し易くなり、例えば、ガラス板の表面に高温で反射膜、拡散膜等を成膜すると、ガラス板が熱変形し易くなる。ここで、「歪点」は、JIS R3103に基づいて測定した値である。
【0039】
ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 2〜25%、B 0〜20%、RO(RはLi、Na、Kの一種又は二種以上) 0〜25%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜10%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜10%、ZrO 0〜10%、Fe 0.001〜0.1%を含有することが好ましい。上記のように各成分の含有量を規制した理由を下記に示す。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は質量%を意味する。
【0040】
SiOは、ガラスのネットワークフォーマーとなる成分であり、熱膨張係数を低下させて、熱による寸法変化を低減する成分である。また耐酸性、歪点を高める成分である。SiOの含有量は、好ましくは40〜70%、50〜67%、特に57〜64%である。SiOの含有量が多くなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下すると共に、成形時にクリストバライトの失透ブツが析出し易くなる。一方、SiOの含有量が少なくなると、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。また耐酸性、歪点が低下し易くなる。
【0041】
Alは、熱膨張係数を低下させて、熱による寸法変化を低減する成分である。また、歪点を高めたり、成形時にクリストバライトの失透ブツの析出を抑える効果もある。Alの含有量は、好ましくは2〜25%、10〜20%、特に14〜17%である。Alの含有量が多くなると、液相温度が上昇して、ガラス板に成形し難くなる。一方、Alの含有量が少なくなると、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。また歪点が低下し易くなる。
【0042】
は、融剤として作用し、高温粘性を下げて、溶融性を改善する成分である。また熱膨張係数を低下させて、熱による寸法変化を低減する成分である。Bの含有量は、好ましくは0〜20%、5〜15%、特に7.5〜12%である。Bの含有量が多くなると、歪点、耐酸性が低下し易くなる。一方、Bの含有量が少なくなると、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。また溶融性が低下し易くなる。
【0043】
Oは、高温粘性を低下させて、溶融性を改善する成分である。ROの含有量は0〜25%、0〜20%、特に0〜15%である。ROの含有量が多くなると、歪点が低下し易くなり、また波長550nm付近の最大透過率が低下する傾向が見られる。なお、熱膨張係数を低下させる観点では、ROの含有量を可及的に低減することが好ましく、その含有量は5%以下、1%以下、特に0.5%以下が好ましい。なお、LiO、NaO、KOの含有量もそれぞれ5%以下、1%以下、特に0.5%以下が好ましい。
【0044】
MgOは、歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、溶融性を改善する成分である。MgOの含有量は、好ましくは0〜10%、0〜5%、特に0〜3.5%である。MgOの含有量が多くなると、成形時に失透ブツが析出し易くなる。
【0045】
CaOは、歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、溶融性を改善する成分である。CaOの含有量は、好ましくは0〜15%、2〜12%、特に3.5〜10%である。CaOの含有量が多過ぎると、成形時に失透ブツが析出し易くなる。
【0046】
SrOは、耐薬品性、耐失透性を高める成分である。SrOの含有量は、好ましくは0〜10%、0.5超〜8%、特に1〜8%である。SrOの含有量が多くなると、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。
【0047】
BaOは、SrOと同様にして、耐薬品性、耐失透性を高める成分である。BaOの含有量は、好ましくは0〜15%、0〜10%、特に0.1〜8%である。BaOの含有量が多くなると、密度が高くなったり、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。また溶融性が低下し易くなる。
【0048】
ZnOは、溶融性を改善する成分である。ZnOの含有量は、好ましくは0〜10%、0〜5%、特に0〜1%である。ZnOの含有量が多くなると、耐失透性、歪点が低下し易くなる。
【0049】
ZrOは、歪点を高める成分である。ZrOの含有量は、好ましくは0〜10%、0〜7%、特に0〜5%である。ZrOの含有量が多くなると、密度が著しく上昇したり、成形時にZrOに起因する失透ブツが析出し易くなる。
【0050】
着色酸化物は、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を低下させる成分である。着色酸化物の好適な含有量等は、上記の通りである。
【0051】
上記成分以外にも、他の成分を導入してもよい。例えば、液相温度を低下させるために、Y、La、Nb、Pを各3%まで、清澄剤としてAs、Sb、SnO、SO、F、Cl等を合量で2%まで導入してもよい。但し、As、Sbは、環境負荷物質であり、またフロート法でガラス板を成形する場合、フロートバス中で還元されて金属異物となるため、実質的な導入を避けることが好ましく、具体的には、その含有量をそれぞれ0.01%未満とすることが好ましい。
【0052】
本発明の導光板において、ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、成形時にガラスリボンの表裏面の温度差、組成差が生じ難いと共に、未研磨で表面品位が良好なガラス板を成形し易くなり、結果として、導光板の製造コストの低廉化、輝度特性の均一化を図り易くなる。この理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、表面となるべき面が樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うために、ガラスリボンに対して力を印加する方法は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスリボンに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスリボンの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
【0053】
なお、オーバーフローダウンドロー法以外にも、スロットダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法、リドロー法等でガラス板を成形することもできる。なお、フロート法では、成形時にガラスリボンの表裏面の温度差、組成差が発生し易いが、成形時の温度制御を厳密に行うと、その温度差、組成差を低減することができる。
【0054】
本発明の導光板は、一方の表面(光反射面)側に、反射膜を備えることが好ましく、他方の表面(光出射面)側に、拡散膜を備えることが好ましい。このようにすれば、表示装置の輝度特性を均一化し易くなる。
【0055】
本発明のエッジライト型面発光装置は、上記の導光板を備えることを特徴とする。また、本発明のエッジライト型面発光装置は、導光板の一方の表面(光反射面)側に、反射板を備えることが好ましく、導光板の他方の表面(光出射面)側に、拡散板を備えることが好ましい。このようにすれば、表示装置の輝度特性を均一化し易くなる。
【0056】
本発明のガラス板は、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率が50%以上であり、且つ導光板に用いることを特徴とする。ここで、本発明のガラス板の技術的特徴(好適な特性、効果等)は、本発明の導光板の技術的特徴と同様である。よって、本発明のガラス板について、詳細な説明を省略する。
【0057】
本発明のガラス板は、表示パネルに使用されるガラス板に適用して、導光板の機能を併有させることもできる。このようにすれば、表示装置の部材構成を簡略化することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0059】
(実施例1)
まずガラス組成として、質量%で、SiO 60%、Al 15%、B 10%、MgO 1%、CaO 8%、SrO 5%、BaO 1%を含有するように、ガラス原料を調合、混合した後、連続溶融炉にて、最高温度1650℃で溶融して、溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法にて板状に成形、徐冷した後、2200mm×1950mm×厚み1.1mmの寸法に切断すると共に、端面の表面粗さRaを0.5μmに研磨することにより、ガラス板を得た。なお、ガラス板中のFeの含有量が0.013質量%になるように、ガラス原料として、Fe等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にFe等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。また、ガラス板中のCrの含有量が0.0005質量%になるように、ガラス原料として、Cr等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にCr等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。
【0060】
得られたガラス板から、熱膨張係数の測定試料を作製し、ディラトメーターを用いて、JIS R3102に基づき、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。その結果、熱膨張係数は38×10−7/℃であった。
【0061】
オーバーフローダウンドロー法で用いた樋状耐火物の樋部分からガラス生地を採取し、所定の徐冷処理、加工処理を行うことにより、25mm×25mm×100mmの寸法のガラスブロックを得た。次に、得られたガラスブロックの表面を光学研磨した後、島津製作所社製UV−3100PCを用いて、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を測定した。その結果、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率は82%であった。なお、図2に実施例1に係るガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける透過率の測定データを示す。
【0062】
以上の結果から、このガラス板を有する導光板は、温度上昇に伴い、寸法変化が生じ難く、且つ表示装置の輝度特性を高めることができるものと考えられる。
【0063】
(実施例2)
まずガラス組成として、質量%で、SiO 60%、Al 19%、B 7%、MgO 3%、CaO 5%、SrO 1%、BaO 5%を含有するように、ガラス原料を調合、混合した後、連続溶融炉にて、最高温度1650℃で溶融して、溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法にて板状に成形、徐冷した後、2200mm×1950mm×厚み1.1mmの寸法に切断すると共に、端面の表面粗さRaを0.5μmに研磨することにより、ガラス板を得た。なお、ガラス板中のFeの含有量が0.009質量%になるように、ガラス原料として、Fe等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にFe等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。また、ガラス板中のCrの含有量が0.0003質量%になるように、ガラス原料として、Cr等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にCr等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。
【0064】
得られたガラス板から、熱膨張係数の測定試料を作製し、ディラトメーターを用いて、JIS R3102に基づき、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。その結果、熱膨張係数は38×10−7/℃であった。
【0065】
オーバーフローダウンドロー法で用いた樋状耐火物の樋部分からガラス生地を採取し、所定の徐冷処理、加工処理を行うことにより、25mm×25mm×100mmの寸法のガラスブロックを得た。次に、得られたガラスブロックの表面を光学研磨した後、島津製作所社製UV−3100PCを用いて、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を測定した。その結果、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率は84%であった。なお、図2に実施例2に係るガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける透過率の測定データを示す。
【0066】
以上の結果から、このガラス板を有する導光板は、温度上昇に伴い、寸法変化が生じ難く、且つ表示装置の輝度特性を高めることができるものと考えられる。
【0067】
(実施例3)
まずガラス組成として、質量%で、SiO 62%、Al 18%、B 0.5%、MgO 3%、NaO 14.5%、KO 2%を含有するように、ガラス原料を調合、混合した後、連続溶融炉にて、最高温度1650℃で溶融して、溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法にて板状に成形、徐冷した後、1800mm×1500mm×厚み1.1mmの寸法に切断すると共に、端面の表面粗さRaを0.5μmに研磨することにより、ガラス板を得た。なお、ガラス板中のFeの含有量が0.006質量%になるように、ガラス原料として、Fe等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にFe等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。また、ガラス板中のCrの含有量が0.00015質量%になるように、ガラス原料として、Cr等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にCr等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。
【0068】
得られたガラス板から、熱膨張係数の測定試料を作製し、ディラトメーターを用いて、JIS R3102に基づき、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。その結果、熱膨張係数は91×10−7/℃であった。
【0069】
オーバーフローダウンドロー法で用いた樋状耐火物の樋部分からガラス生地を採取し、所定の徐冷処理、加工処理を行うことにより、25mm×25mm×100mmの寸法のガラスブロックを得た。次に、得られたガラスブロックの表面を光学研磨した後、島津製作所社製UV−3100PCを用いて、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を測定した。その結果、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率は80%であった。なお、図2に実施例3に係るガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける透過率の測定データを示す。
【0070】
以上の結果から、このガラス板を有する導光板は、温度上昇に伴い、寸法変化が生じ難く、且つ表示装置の輝度特性を高めることができるものと考えられる。
【0071】
(実施例4)
まずガラス組成として、質量%で、SiO 60%、Al 15%、B 10%、MgO 1%、CaO 8%、SrO 5%、BaO 1%を含有するように、ガラス原料を調合、混合した後、連続溶融炉にて、最高温度1650℃で溶融して、溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法にて板状に成形、徐冷した後、2200mm×1950mm×厚み1.8mmの寸法に切断すると共に、端面の表面粗さRaを0.5μmに研磨することにより、ガラス板を得た。なお、ガラス板中のFeの含有量が0.005質量%になるように、ガラス原料として、Fe等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にFe等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。また、ガラス板中のCrの含有量が0.0001質量%になるように、ガラス原料として、Cr等の着色不純物が少ない高純度ガラス原料を使用すると共に、ガラス板の製造設備からガラス中にCr等の着色成分が混入しないように設計されたガラス製造設備を使用した。
【0072】
得られたガラス板から、熱膨張係数の測定試料を作製し、ディラトメーターを用いて、JIS R3102に基づき、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。その結果、熱膨張係数は38×10−7/℃であった。
【0073】
得られたガラス板を1.8mm×40mm×100mmの寸法に8枚切り出した。次に、8枚のガラス板を14.4mm×40mm×100mmのブロック状に重ねた状態で、島津製作所社製UV−3100PCを用いて、14.4mm×40mmの面から光源の光を入射して光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率を測定した。その結果、光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける最大透過率は85%であった。なお、図3に実施例4に係るガラス板の光路長100mm、波長範囲350〜750nmにおける透過率の測定データを示す。
【0074】
以上の結果から、このガラス板を有する導光板は、温度上昇に伴い、寸法変化が生じ難く、且つ表示装置の輝度特性を高めることができるものと考えられる。
【符号の説明】
【0075】
1 エッジライト型面発光装置
2 光源
3 導光板
4 反射板
5 拡散板
6 光反射面
7 光出射面
図1
図2
図3