【文献】
岡尚男,LC/MS/MSによる食肉中のテトラサイクリン系及びペニシリン系抗生物質の同時分析,SCAS News,2007年,No.25,Pages 3-6
【文献】
畠山えり子, 阿久津千寿子, 梶田弘子,LC/MS/MSを用いた加工食品中のグルホシネート及び代謝物の同時分析,岩手県環境保健研究センター年報,2011年,第9号(平成21年度)
【文献】
[食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法]、GC/MSによる農薬等の一斉試験, 平成17年1月24日付け食安発第0124001号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知,,2005年 1月24日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離膜は、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体樹脂およびポリカーボネート樹脂からなる群から選択された樹脂材料からなる有機膜またはアルミナ膜である、請求項1または2に記載の残留農薬の分析用試料の調製方法。
前記吸着材は、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体系樹脂、ジビニルベンゼン共重合体系樹脂、シアノプロピル化シリカゲル、フェニル化シリカゲルおよびオクタデシル化シリカゲルからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1から4のいずれかに記載の残留農薬の分析用試料の調製方法。
前記精製材は、エチレンジアミン−N−プロピルシリル化シリカゲル、アミノプロピルシリル化シリカゲル、グラファイトカーボン、オクタデシル化シリカゲルおよびケイ酸マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項6または7に記載の残留農薬の分析用試料の調製方法。
前記遠沈管の内部に対して挿入・抜取り可能でありかつ内部に前記第1ユニットを挿入・抜取り可能な、前記残留農薬に混在する夾雑物質を吸着可能でありかつ通液性を有する精製層により前記遠沈管の内部を前記底部と前記吸着層との間で上下に区画可能な第3ユニットをさらに備えている、請求項10に記載の残留農薬の分析用試料の調製キット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、食品の残留農薬を簡単にかつ短時間で、しかも高精度に分析できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、食品の残留農薬を分析するために用いられる試料の調製方法に関するものである。この調製方法は、水溶性の
有機溶媒を用いて食品から残留農薬を抽出し、得られた抽出液を水と混合して混合液を調製する工程1と、ナノろ過膜、限外ろ過膜または精密ろ過膜として使用可能な分離膜を用い、混合液をろ過してろ液を得る工程2と、ろ液中の残留農薬を吸着可能な吸着材にろ液を通過させる工程3と、工程3の後、残留農薬を抽出可能な
抽出用溶媒を吸着材に通過させる工程4とを含む。
【0012】
工程1で調製された混合液を工程2においてろ過すると、抽出液に含まれる固形物が分離された混合液がろ液として得られる。工程2では所定の分離膜を用いることから、混合液に含まれる残留農薬は分離膜を通過し、ろ液中に残留する。このろ液を工程3において吸着材に通過させると、ろ液に含まれる残留農薬が吸着材に吸着され、ろ液に含まれる夾雑物質はろ液とともに吸着材を通過する。そして、工程4において吸着材に
抽出用溶媒を通過させると、吸着材に吸着された残留農薬が
抽出用溶媒により抽出される。したがって、吸着材を通過した
抽出用溶媒は、食品の残留農薬を分析するための試料として用いることができる。
【0013】
本発明の調製方法は、例えば、混合液、ろ液および
抽出用溶媒に遠心力を加えることで、それぞれ工程2、工程3および工程4を実行することができる。
【0014】
この場合、工程2、工程3および工程4を効率的に実行することができ、目的の分析用試料をより簡単にかつ速やかに調製することができる。
【0015】
工程2において用いられる分離膜は、例えば、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体樹脂およびポリカーボネート樹脂からなる群から選択された樹脂材料からなる有機膜またはアルミナ膜である。
【0016】
分離膜として用いられる有機膜は、プラズマ処理またはオゾン処理されているのが好ましい。プラズマ処理またはオゾン処理された有機膜は、親水性が高まることから残留農薬が付着しにくく、混合液に含まれる残留農薬を円滑に通過させることができる。
【0017】
工程3において用いられる吸着材は、例えば、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体系樹脂、ジビニルベンゼン共重合体系樹脂、シアノプロピル化シリカゲル、フェニル化シリカゲルおよびオクタデシル化シリカゲルからなる群から選ばれた少なくとも一つである。
【0018】
本発明の調製方法の一形態は、吸着材を通過した
抽出用溶媒に含まれる夾雑物質を吸着可能な精製材に吸着材を通過した
抽出用溶媒を通過させる工程5をさらに含む。工程5を含む場合、吸着材を通過した
抽出用溶媒に残留している夾雑物質が精製材に捕捉されるため、夾雑物質の影響をより受けにくい分析用試料を調製することができる。
【0019】
工程5は、例えば、
抽出用溶媒に遠心力を加えることで実行することができる。この場合、工程5を効率的に実行することができ、目的の分析用試料をより簡単にかつ速やかに調製することができる。
【0020】
工程5において用いられる精製材は、例えば、エチレンジアミン−N−プロピルシリル化シリカゲル、アミノプロピルシリル化シリカゲル、グラファイトカーボン、オクタデシル化シリカゲルおよびケイ酸マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つである。
【0021】
本発明の調製方法では、例えば、
工程1において有機溶媒としてアセトニトリルまたはメタノールを用い、かつ、
工程4において抽出用溶媒としてアセトン、トルエン、ジクロロメタンおよびヘキサンからなる群から選ばれた少なくとも一つのものであって
工程1で用いる有機溶媒よりも低極性のものを用いる。
【0022】
他の観点に係る本発明は、本発明の調製方法により食品の残留農薬を分析するために用いられる試料を調製するためのキットに関するものである。この調製キットは、底部が閉鎖された遠沈管と、遠沈管の内部に対して挿入・抜取り可能な、残留農薬を溶解可能な水溶性の
有機溶媒と水との混合液に含まれる残留農薬を吸着可能でありかつ通液性を有する吸着層により遠沈管の内部を上下に区画可能な第1ユニットと、第1ユニットの内部に対して挿入・抜取り可能な、ナノろ過膜、限外ろ過膜または精密ろ過膜として使用可能な分離膜により遠沈管の内部を第1ユニットの吸着層の上方で上下に区画可能な第2ユニットとを備えている。
【0023】
遠沈管に第1ユニットを挿入し、この第1ユニットに第2ユニットを挿入した状態の調製キットの第2ユニット内に残留農薬を含む混合液を注入し、遠沈管を遠心分離器に適用すると、混合液は遠心力を受けて第2ユニットの分離膜および第1ユニットの吸着層をこの順に通過する。このとき、混合液に含まれる固形分は分離膜により分離され、また、混合液とともに分離膜を通過した残留農薬は吸着層に吸着される。
【0024】
次に、遠沈管から第2ユニットとともに第1ユニットを抜取り、遠沈管の底部に溜まった混合液を廃棄する。この遠沈管を洗浄後、抜取った第1ユニットのみを遠沈管内に再度挿入し、この第1ユニット内に残留農薬の抽出用溶媒を注入する。そして、遠沈管を遠心分離器に適用すると、抽出用溶媒は遠心力を受けて第1ユニットの吸着層を通過する。このとき、吸着層に吸着された残留農薬は、吸着層を通過する抽出用溶媒により抽出される。したがって、遠沈管の底部には、抽出用溶媒による残留農薬の抽出液が溜まる。遠沈管から第1ユニットを再度抜出すと、遠沈管の底部に溜まった抽出液を取り出すことができ、この抽出液は残留農薬の分析用試料として用いることができる。
【0025】
本発明に係る調製用キットの一形態は、遠沈管の内部に対して挿入・抜取り可能でありかつ内部に第1ユニットを挿入・抜取り可能な、残留農薬に混在する夾雑物質を吸着可能でありかつ通液性を有する精製層により遠沈管の内部をその底部と第1ユニットの吸着層との間で上下に区画可能な第3ユニットをさらに備えている。
【0026】
第3ユニットは洗浄後の遠沈管に挿入することができ、遠沈管に挿入した第3ユニットには第1ユニットを挿入することができる。第3ユニットおよび第1ユニットをこのように挿入した遠沈管の第1ユニット内に残留農薬の抽出用溶媒を注入し、遠沈管を遠心分離器に適用すると、抽出用溶媒が遠心力を受けて第1ユニットの吸着層および第3ユニットの精製層をこの順に通過する。このとき、吸着層に吸着された残留農薬は、吸着層を通過する抽出用溶媒により抽出され、また、残留農薬を抽出した抽出用溶媒に含まれる夾雑物質は、抽出用溶媒が精製層を通過するときに精製層に吸着される。したがって、遠沈管の底部には、抽出用溶媒による残留農薬の抽出液が溜まる。遠沈管から第3ユニットおよび第1ユニットを抜出すと、遠沈管の底部に溜まった抽出液を取り出すことができ、この抽出液は残留農薬の分析用試料として用いることができる。この分析用試料は、精製層により夾雑成分が除去されたものであるため残留農薬の分析精度を高めることができる。
【0027】
本発明に係る調製用キットは、同じ遠沈管を二つ備えていてもよい。この場合、底部に混合液が溜まった遠沈管から第2ユニットとともに第1ユニットを抜取り、抜取った第2ユニットを別の遠沈管に挿入して次の工程を実行することができるため、残留農薬の分析用試料の調製過程において遠沈管の洗浄が不要になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る残留農薬の分析用試料の調製方法は、上述の工程を含むものであることから、食品の残留農薬を高精度に分析可能な分析用試料を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0029】
本発明に係る残留農薬の分析用試料の調製キットは、遠沈管に対して吸着層を有する第1ユニットおよび分離膜を有する第2ユニットを組み合わせたものであるため、食品の残留農薬を高精度に分析可能な分析用試料を簡単にかつ短時間で効率的に調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1および
図2を参照し、本発明に係る分析用試料調製キットの一形態を説明する。この分析用試料調製キット1は、多成分含有試料を同時分析可能なガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)等の分析機器を用い、食品から残留農薬を抽出することで得られる抽出液から調製される、後記の混合液から食品の残留農薬を分析するのに適した分析用試料、特に、一斉分析するのに適した分析用試料を調製するためのものであり、遠沈管10、第1ユニット100、第2ユニット200および第3ユニット300を主に備えている。
【0032】
遠沈管10および各ユニット100、200、300は、耐溶媒性を有する樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂またはポリアミド樹脂を用いて形成されたものである。また、遠沈管10は、ガラス製のものであってもよい。
【0033】
遠沈管10は、実験室で使用可能な遠心分離器に適用可能な円筒状の容器であり、上端部の全体が開口するとともに底部が円錐状に形成されることで閉鎖されている。
【0034】
第1ユニット100は、遠沈管10の内部に対して挿入・抜取り可能な円筒状の容器であり、上部の全体が開口するとともに、底部の中心に第1通液孔101を有している。第1ユニット100の上部は、水平方向に突出した第1フランジ部102を有している。また、第1ユニット100の底部の全体に吸着層103が配置されている。
【0035】
吸着層103は、第1ユニット100の底部において、混合液に含まれる残留農薬を吸着可能な粉末状、粒子状または顆粒状の吸着材を一定の厚さに充填することで形成されたものであり、混合液が通過可能な通液性を有している。
【0036】
吸着層103において用いられる吸着材は、混合液に含まれる残留農薬を吸着可能である一方、低極性の溶媒と触れたときに吸着した農薬を脱着可能なものである。このような機能を有する吸着材として、例えば、塩基性、中性若しくは酸性のアルミナ、シリカ、活性炭、グラファイトカーボン、メソポーラスカーボン若しくは活性炭素繊維等の各種の炭素系材料、または、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体系樹脂若しくはジビニルベンゼン共重合体系樹脂等の樹脂材料を用いて形成された樹脂多孔質体などを用いることができる。スチレン/ジビニルベンゼン共重合体系樹脂としては、スチレンおよびジビニルベンゼンを構成単位として含むものであれば各種のものを用いることができ、例えば、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体樹脂やスチレン/ジビニルベンゼン/メタクリレート共重合体樹脂を用いることができる。また、ジビニルベンゼン共重合体系樹脂としては、ジビニルベンゼンを構成単位として含むものであれば各種のものを用いることができ、例えば、ジビニルベンゼン/メタクリレート共重合体樹脂やジビニルベンゼン/ビニルピロリドン共重合体樹脂を用いることができる。
【0037】
吸着材は、混合液に含まれる農薬の吸着性を高めるために、化学修飾により官能基を導入したものを用いることもできる。例えば、吸着材として用いられる各種アルミナおよびシリカは、シアノプロピル基、フェニル基またはオクタデシル基などの芳香環やアルキル鎖を導入したものであってもよい。また、樹脂材料は、例えば、カルボキシジビニルベンゼンビニルピロリドン共重合体樹脂やピペラジンジビニルベンゼンビニルピロリドン共重合体樹脂等、カルボキシ基やピペラジン基を導入したものであってもよい。
【0038】
吸着材として特に好ましいものは、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体系樹脂、ジビニルベンゼン共重合体系樹脂、シアノプロピル化シリカゲル、フェニル化シリカゲルまたはオクタデシル化シリカゲルである。
【0039】
吸着材は、目的の分析用試料の調製において用いる溶媒の種類に応じて適宜選択することができる。この際、二種以上のものを混合または積層することで併用することもできる。また、吸着材は、混合液に含まれる残留農薬の吸着性および低極性の溶媒と触れたときの残留農薬の脱着性を損なわない程度において、他の材料と混合して用いられてもよい。
【0040】
第1ユニット100の底面は、第1通液孔101からの吸着材の漏出を防止するための通液性のネットまたはシート(図示省略)が配置されている。
【0041】
第2ユニット200は、遠沈管10の内部に対して挿入・抜取り可能な円筒状の容器であり、上部の全体が開口するとともに、底部の中心に第1通液孔201を有している。第2ユニット200の上部は、水平方向に突出した第2フランジ部202を有している。第2ユニット200は、第1ユニット100内に挿入できるよう容器部分の外径が第1ユニット100の内径と略同じに設定されており、また、第2フランジ部202の外径が第1フランジ部102と同じに設定されている。
【0042】
第2ユニット200は、底部の全体に分離膜203が配置されている。分離膜203は、混合液から残留農薬および溶媒以外の夾雑物質を分離可能なナノろ過膜、限外ろ過膜または精密ろ過膜としての機能を有するものであり、残留農薬の非吸着性および通過性を有し、しかも耐溶媒性を有する素材からなるものである。
【0043】
このような分離膜203としては、有機膜または無機膜を用いることができる。有機膜は、有機質材料を用いて形成された膜であり、例えば、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体樹脂またはポリカーボネート樹脂などの樹脂材料からなるものが挙げられる。このうち、耐溶媒性の点において、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂またはポリアミド樹脂が特に好ましい。
【0044】
一方、無機膜は、無機質材料を用いて形成された膜であり、例えば、アルミナ、酸化チタンまたはジルコニアなどからなるものが挙げられる。このうち、アルミナ膜が好ましい。
【0045】
分離膜203としてナノろ過膜または限外ろ過膜を用いる場合、少なくとも1,000分子量カットオフ(MWCO)の孔径を有するもの、特に、少なくとも3,000MWCOの孔径を有するものを用いるのが好ましい。1,000MWCO未満の孔径のナノろ過膜および限外ろ過膜は、残留農薬と夾雑物質との分離効果が高いが、混合液をろ過するためにより高い圧力を加える必要があることから、圧力調整を誤ると一部の固形状の夾雑物質が残留農薬とともに分離膜203を通過してしまう可能性がある。
【0046】
また、分離膜203として精密ろ過膜を用いる場合、その孔径は0.1μm以下のものが好ましい。孔径が0.1μmを超える精密ろ過膜は、残留農薬とともに固形状の夾雑物質を通過させてしまう可能性がある。
【0047】
分離膜203として有機膜を用いる場合、その有機膜、特に、ナノろ過膜としての機能を有する有機膜は、プラズマ処理またはオゾン処理されているのが好ましい。プラズマ処理またはオゾン処理された有機膜は、親水性が高まることから残留農薬が付着しにくく、混合液に含まれる残留農薬を円滑に通過させることができる。なお、ナノろ過膜は、孔径が1,000MWCO未満のものであっても、プラズマ処理またはオゾン処理をすることで残留農薬を円滑に通過させることができることから、混合液をろ過するために高い圧力を加えなくても、残留農薬と夾雑物質とを高精度に分離することができる。
【0048】
第3ユニット300は、遠沈管10の内部に対して挿入・抜取り可能な円筒状の容器であり、上部の全体が開口するとともに、底部の中心に第3通液孔301を有している。第3ユニット300の上部は、水平方向に突出した第3フランジ部302を有している。第3ユニット300は、その容器部分の外径が遠沈管10の内径と略同じに設定されており、また、その内部に第1ユニット100を挿入できるよう容器部分の内径が第1ユニット100の外径と略同じに設定されている。第3フランジ部302の外径は、第1フランジ部102と同じに設定されている。
【0049】
第3ユニット300は、底部の全体に精製層303が配置されている。精製層303は、第3ユニット300の底部において、後記する低極性の抽出用溶媒に含まれる残留農薬以外の夾雑物質を吸着可能な粉末状、粒子状または顆粒状の精製材を一定の厚さに充填することで形成されたものであり、抽出用溶媒が通過可能な通液性を有している。
【0050】
精製層303において用いられる精製材は、抽出用溶媒に含まれる夾雑物質を吸着可能である一方、当該抽出用溶媒に含まれる残留農薬を吸着しにくいもの、すなわち、夾雑物質を吸着することで、夾雑物質と残留農薬とを分離可能なものである。このような機能を有する精製材として、例えば、塩基性、中性若しくは酸性のアルミナ、シリカ、ケイ酸マグネシウム、活性炭、グラファイトカーボン若しくは活性炭素繊維等の各種の炭素系材料、または、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体系樹脂若しくはジビニルベンゼン共重合体系樹脂等の樹脂材料を用いて形成された樹脂多孔質体などを用いることができる。スチレン/ジビニルベンゼン共重合体系樹脂およびジビニルベンゼン共重合体系樹脂としては、吸着層103において用いられる吸着材として利用可能なものと同様のものを用いることができる。
【0051】
上述の精製材は、抽出用溶媒に含まれる夾雑物質の吸着性を高めるために、化学修飾によりエチレンジアミンN−プロピル基、プロピルアミノ基、オクタデシル基、オクチル基、トリメチルアミノプロピル基、シアノプロピル基、フェニル基、ジオール基またはアミノ基などの官能基を導入したものであってもよい。
【0052】
精製材として特に好ましいものは、エチレンジアミン−N−プロピルシリル化シリカゲル、アミノプロピルシリル化シリカゲル、グラファイトカーボン、オクタデシル化シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムである。
【0053】
精製材は、目的の分析用試料の調製において用いる抽出用溶媒の種類に応じて適宜選択することができる。この際、二種以上のものを混合または積層することで併用することもできる。また、精製材は、夾雑物質と残留農薬との分離性を損なわない程度において、他の材料と混合して用いられてもよい。
【0054】
第3ユニット300の底面は、第3通液孔301からの精製材の漏出を防止するための通液性のネットまたはシート(図示省略)が配置されている。
【0055】
分析用試料調製キット1は、通常、
図1に示すように、遠沈管10内に第3ユニット300、第1ユニット100および第2ユニット200をこの順に挿入することで一体化し、この状態で販売したり、輸送したりすることができる。遠沈管10内に各ユニット100、200、300を挿入することで一体化したとき、第1ユニット100の吸着層103は、遠沈管10の内部を上下に区画する。また、第2ユニット200の分離膜203は、遠沈管10の内部を吸着層103の上方で上下に区画する。さらに、第3ユニット300の精製層303は、遠沈管10の内部をその底部と吸着層103との間で上下に区画する。
【0056】
一体化された分析用試料調製キット1は、分離膜203等が汚染されるのを防止するために、第2ユニット200の開口部を閉鎖する蓋が装着されていてもよい。この蓋としては、例えば、第2フランジ部202、第1フランジ部102および第3フランジ部302のフランジ部全体を覆うよう、遠沈管10の外周面に螺旋止め可能なものや、フランジ部全体を覆うよう嵌め込み可能な柔軟性を有するものなどが用いられる。
【0057】
分析用試料調製キット1は、目的の分析用試料を調製する場合において、
図2に示すように遠沈管10から各ユニット100、200、300を個々に分離し、次に説明する分析用試料の調製方法の各工程において、ユニット100、200、300のうちの必要なものを選択して遠沈管10内に挿入することで用いられる。
【0058】
次に、上述の分析用試料調製キット1を用い、食品の残留農薬を一斉分析するために用いられる分析用試料を調製するための方法を説明する。分析用試料の調製方法は、主に、残留農薬の抽出工程、抽出工程により得られた残留農薬含有液から残留農薬を分離するための精製工程および精製工程において分離された残留農薬の分析用試料を調製するための調製工程の3段階の工程を含む。
【0059】
(抽出工程)
この工程では、残留農薬の一斉分析対象となる食品から残留農薬を抽出し、所定の残留農薬含有液、すなわち混合液を調製する(工程1)。残留農薬の抽出対象となる食品は、各種の農作物、食肉、魚介類またはこれらの加工品など、種類が特に限定されるものではなく、通常、所要量を残留農薬の抽出のために微細な状態に粉砕するか、或いは切り刻むことで均一化する。
【0060】
食品からの残留農薬の抽出は、通知法またはQuEChERS法において採用されている方法に従って実行することができる。すなわち、均一化された所要量の食品試料に残留農薬の抽出用溶媒(第1溶媒)を加えてホモジナイズし、これを吸引ろ過する。ここで用いられる抽出用溶媒は、通常、アセトニトリル、メタノールまたはアセトン等の、残留農薬を溶解可能であるとともに水に溶解しやすい高極性の有機溶媒である。
【0061】
吸引ろ過により得られたろ液、すなわち残留農薬の抽出液は、通常、塩を添加して塩析することで夾雑物質を析出させるのが好ましい。ここで用いられる塩は、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム若しくはその水和物、クエン酸水素二ナトリウム若しくはその水和物、無水硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水酢酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウム等である。これらの塩は、適宜併用されてもよい。
【0062】
次に、抽出液を遠心分離し、固形分と抽出液とに分離する。そして、抽出液に水を加え、抽出液と水との混合液Lを調製する。
【0063】
(精製工程)
この工程では、分析用試料調製キット1を用い、抽出工程において調製された混合液Lを分離膜203を用いてろ過することでろ液を得(工程2)、このろ液を吸着層103に通過させる(工程3)。
【0064】
ここでは、遠沈管10から各ユニット100、200、300を分離した分析用試料調製キット1において、
図3に示すように、遠沈管10内に第1ユニット100を挿入し、また、第1ユニット100内に第2ユニット200を挿入する。そして、
図4に示すように、第2ユニット200内に混合液Lを注入し、遠沈管10を遠心分離器により遠心分離処理する。この処理により、混合液Lは、遠心力が加わり、
図4に矢印で示すように第2ユニット200の分離膜203を通過する。分離膜203を通過したろ液は、第2通液孔201を通じて第1ユニット100内に飛散し、遠心力が加わることで吸着層103を通過して第1通液孔101を通じて遠沈管10の底部に溜まる。この際、混合液Lに含まれる主に固形状の夾雑物質は分離膜203により混合液Lから分離される。また、分離膜203を通過したろ液に含まれる残留農薬は吸着層103の吸着材に吸着し、当該ろ液に溶解している夾雑物質はろ液とともに吸着層103を通過する。結果的に、混合液L中の残留農薬は、混合液Lに含まれる夾雑物質、抽出用溶媒および水から分離され、精製される。
【0065】
精製工程を実行後の分析用試料調製キット1は、遠沈管10から第2ユニット200および第1ユニット100をこの順にまたは同時に抜出す。そして、第2ユニット200および遠沈管10の底部に溜まった混合液Lを廃棄し、次の工程のために遠沈管10を洗浄する。
【0066】
(調製工程)
この工程では、残留農薬を抽出可能な抽出用溶媒(第2溶媒)を吸着層103に通過させ(工程4)、また、吸着層103を通過した抽出用溶媒(第2溶媒)を精製層303に通過させ(工程5)、目的の分析用試料を調製する。
【0067】
ここでは、
図5に示すように、精製工程後に洗浄した遠沈管10内に第3ユニット300を挿入し、また、第3ユニット300内に精製工程を経た第1ユニット100を挿入する。そして、
図6に示すように、第1ユニット100内に抽出用溶媒Sを注入し、遠沈管10を遠心分離器により遠心分離処理する。この処理により、抽出用溶媒Sは、遠心力が加わることで
図6に矢印で示すように第1ユニット100の吸着層103を通過し、その際に吸着材に吸着した残留農薬を抽出する。また、吸着層103を通過した抽出用溶媒Sは、第1通液孔101を通じて第3ユニット300内に飛散し、遠心力が加わることで精製層303を通過して第3通液孔301を通じて遠沈管10の底部に溜まる。この際、抽出用溶媒Sにより残留農薬とともに吸着層103から抽出された夾雑物質は、精製材に吸着し、抽出用溶媒Sから分離される。
【0068】
この工程において用いられる抽出用溶媒Sは、通常、抽出工程において用いる抽出用溶媒(第1溶媒)よりも相対的に極性の低い有機溶媒であり、例えば、アセトン、トルエン、ヘキサン若しくはジクロロメタンまたはこれらの溶媒から適宜選択したものの混合物などを用いることができる。
【0069】
この工程において遠沈管10の底部に溜まった抽出用溶媒Sは、遠沈管10から第1ユニット100および第3ユニット300をこの順にまたは同時に抜出すと、遠沈管10から採取することができる。この抽出用溶媒Sは、吸着層103から残留農薬を抽出したものであることから、そのままで、或いは、必要により適宜濃縮し、GC/MSやLC/MS等に適用するための残留農薬の一斉分析用試料として用いることができる。
【0070】
上述の実施の形態に係る分析用試料調製キット1およびそれを用いた分析用試料の調製方法は、精製層303を備えた第3ユニット300を用いるが、残留農薬とともに食品から抽出される夾雑成分の種類や量により、分離膜203で夾雑成分を十分に除去可能な場合や、吸着層103に残留農薬とともに吸着された夾雑成分が調製工程において吸着層103へ適用する抽出用溶媒Sにより抽出されにくいような場合などにおいては、第3ユニット300を省くことができ、それによって工程5を省略することができる。
【0071】
分析用試料調製キット1は、同じ遠沈管10を二つ有するものであってもよい。この場合、精製工程から調製工程へ移るときに遠沈管10を洗浄する必要がなく、精製工程で用いる遠沈管10と、調製工程で用いる遠沈管10とを使い分けることができる。
【0072】
分析用試料の調製において、第1ユニット100の吸着層103に混合液Lの水分が吸着されやすい場合、吸着層103に吸着した残留農薬を抽出用溶媒Sにより抽出する場合において、吸着層103に吸着した水分が抽出用溶媒Sに混入し、結果的に分析用試料が水分を含むことになる場合がある。この場合、分析用試料調製キット1は、遠沈管10内において吸着層103の下方に(分析用試料調製キット1が第3ユニット300を含む場合は、吸着層103と精製層303との間に)脱水材を含む脱水層を配置可能な第4ユニットを要素としてさらに含めることができる。この場合、調製工程において、吸着層103の下方に脱水層を配置することができ、吸着層103を通過した抽出用溶媒Sは当該脱水層を通過するときに水分が除去されるため、水分の混入が少ない分析用試料を調製することができる。
【0073】
脱水材としては、抽出用溶媒Sの種類等に応じて、無水硫酸ナトリウム、無水炭酸カリウム、塩化カルシウム、フッ化カリウム、シリカゲル、モレキュラーシーブまたはゼオライトなどの各種のものを用いることができる。これらの脱水材は、それぞれ単独で用いられてもよいし、二種以上のものを混合または積層することで併用されてもよい。なお、分析用試料調製キット1が第3ユニット300を含む場合、第4ユニットを用いずに、精製層303の上に脱水層を積層して配置することもできる。
【0074】
分析用試料調製キット1を用いた上述の分析用試料の調製方法は、遠沈管10を遠心分離器により遠心分離処理することで工程2、3、4および5を実行しているが、これらの工程は遠心分離器を用いずに実行することもできる。例えば、遠沈管10に挿入した所定のユニット内に混合液や溶媒等を注入した後、当該ユニットの開口側から窒素ガスや空気などを気密に導入することで内圧を高め、それによって混合液や溶媒等を分離膜203や吸着層103などに通過させることもできる。
【0075】
本発明に係る分析用試料の調製方法は、分析用試料調製キット1を用いて実行したとき、残留農薬の一斉分析用試料を効率的に調製することができるが、分析用試料調製キット1を用いずに、工程毎に汎用の器具や装置を用いることで実行することもできる。
【0076】
本発明に係る分析用試料の調製方法および調製キットは、食品の残留農薬を個別に分析するために用いられる試料を調製するために用いることもできる。
【実施例】
【0077】
[分離膜のプラズマ処理]
図7に示したプラズマ処理装置400を用い、分離膜をプラズマ処理した。プラズマ処理装置400は、銅棒410と、この銅棒410と同軸に順に配置された第1ガラス管420、第2ガラス管430および第3ガラス管440と、第1ガラス管420と第2ガラス管430との間に配置された第1銅板421並びに第3ガラス管440の外周面に巻き付けられた第2銅板441を備えており、第2ガラス管430と第3ガラス管440との空間にアルゴンガスを流しながら銅棒410と第2銅販441との間に交流電圧を印加すると、第2ガラス管430と第3ガラス管440との間にプラズマを発生させることができるものである。
【0078】
第2ガラス管430の外周面に分離膜500を一重に巻き付けた状態でプラズマ処理装置400に微量の水分を含むアルゴンガスを流し、銅棒410と第2銅板441との間に交流電圧を印加した。これにより発生するプラズマにより分離膜500の表面を2分間プラズマ処理した。アルゴンガスの流量は250mL/分とした。
【0079】
ここで処理した分離膜は、ポリピペラジンアミド製のナノろ過膜(TriSep社の商品名「XN45」:分子量カットオフ(MWCO)500)である。
【0080】
[食品試料の調製]
食品試料A:
市販のきゅうりを微細に切り刻むことで均一化し、食品試料Aを作成した。
食品試料B:
市版のほうれん草を微細に切り刻むことで均一化し、食品試料Bを作成した。
【0081】
実施例1
食品試料Aの10.0gと農薬標準液(関東化学株式会社の商品名「農薬標準混合液31」)とを容量50mLの遠沈管に量り採り、攪拌・混合後に暫時静置した。農薬標準液は、食品試料Aでの濃度が200ppbとなるよう添加した。
【0082】
食品試料A等を量り採った遠沈管にアセトニトリル10mLを加えて手作業で1分間振とうした。これにクエン酸三ナトリウム二水和物1g、クエン酸水素二ナトリウム1.5水和物0.5g、塩化ナトリウム1gおよび無水硫酸マグネシウム4gを加えて手作業でさらに1分間激しく振とうし、塩析した。続いて、遠沈管を遠心分離器に装着して3,500rpmで10分間遠心分離し、遠沈管内の液層(4.0mL)に水6.0mLを加え、混合液を調製した。
【0083】
プラズマ処理したナノろ過膜にアセトニトリルと水とを2:3の体積割合で混合した溶媒20mLを通過させ、ナノろ過膜を洗浄した。そして、このナノろ過膜を装着したろ過セル(STERLITEC社の商品名「HP4750 Stirred Cell」)を用い、窒素ガスにより加圧することで混合液の全量(10mL)をろ過し、第1のろ液を得た。また、第1のろ液を得た後のナノろ過膜によりアセトニトリルと水とを2:3の体積割合で混合した溶媒5mLを同じ要領でろ過し、第2のろ液を得た。
【0084】
高分子系吸着材(ジーエルサイエンス株式会社の商品名「InertSep RP−1」:スチレン/ジビニルベンゼン/メタクリレート共重合体)を750mg充填した吸着カラムにアセトニトリルと水とを2:3の体積割合で混合した溶媒6mLを注入し、吸着カラムにシリンジから空気圧を加えた。これにより、吸着カラムに溶媒を通過させ、溶出液を廃棄した。次に、第1のろ液と第2のろ液との混合ろ液から5mLを分取し、この混合ろ液を上記吸着カラムに注入して同じ要領で通過させ、溶出液を廃棄した。
【0085】
混合ろ液が通過後の吸着カラムにアセトン5mLを注入し、このアセトンを同じ要領で通過させて溶出液を確保した。この溶出液を無水硫酸ナトリウムで脱水処理した後に適宜濃縮することで、試料濃度が1g/mLの分析用試料とした。ここで、試料濃度とは、分析用試料1mLがどれだけの重量の食品試料の抽出物から得られたものかを表す濃度をいう。例えば、試料濃度が1g/mLの場合、これは、食品試料1g分相当の抽出液を最終的に濃縮することで1mLの溶液に調整したことを意味する。試料濃度は、抽出液の濃縮の程度により調整可能である。
【0086】
分析用試料の調製に要した時間は、食品試料A等を量り採った遠沈管にアセトニトリルを加える作業を開始した時点から55分であった。
【0087】
比較例1(欧州規格EN15662に従ったQuEChERS法による分析用試料の調製)
食品試料Aの10.0gと農薬標準液(関東化学株式会社の商品名「農薬標準混合液31」)とを容量50mLの第1遠沈管に量り採り、攪拌・混合後に暫時静置した。農薬標準液は、食品試料Aでの濃度が200ppbとなるよう添加した。
【0088】
食品試料A等を量り採った第1遠沈管にアセトニトリル10mLを加えて手作業で1分間振とうした。これにクエン酸三ナトリウム二水和物1g、クエン酸水素二ナトリウム1.5水和物0.5g、塩化ナトリウム1g、無水硫酸マグネシウム4gを加えて手作業で1分間激しく振とうし、塩析した。続いて、第1遠沈管を遠心分離器に装着して3,500rpmで10分間遠心分離した。
【0089】
別の第2遠沈管に硫酸マグネシウム150mgとエチレンジアミン−N−プロピルシリル化シリカゲル(ジーエルサイエンス株式会社の商品名「InertSep PSA」)25mgとを加え、これに第1遠沈管から分取した液層1mLを加えてボルテックスミキサーで30秒間振とうすることで攪拌した。そして、第2遠沈管を遠心分離器に装着して13,000rpmで2分間遠心分離し、第2遠沈管内の上澄み液500μLを採取した。この上澄み液にインジェクションスパイクとしてフェナントレンd−10、アントラセンd−10および9−ブロモアントラセンの3種類をそれぞれ濃度が100ppbとなるように添加し、試料濃度が1g/mLの分析試料とした。この分析試料の調製に要した時間は、食品試料A等を量り採った第1遠沈管にアセトニトリルを加える作業を開始した時点から30分であった。
【0090】
実施例2
プラズマ処理されたナノろ過膜をプラズマ処理していない精密ろ過膜であるポリテトラフルオロエチレン膜(フロン工業株式会社の商品名「ポアフロンメンブレン」:孔径0.1μm)に変更した点を除いて実施例1と同様に操作し、食品試料Bから分析用試料を調製した。また、この分析用試料をさらに精製処理した。
【0091】
分析用試料の精製処理では、グラファイトカーボン(ジーエルサイエンス株式会社の商品名「InertSep GC」)30mgとアミノプロピルシリル化シリカゲル(ジーエルサイエンス株式会社の商品名「InertSep NH
2」)250mgとの混合物を充填したカラムに分析用試料を注入し、このカラムにシリンジから空気圧を加えた。これによりカラムを通過した分析用試料の全量を40℃に加熱して適宜濃縮した後、インジェクションスパイクとして、フェナントレンd−10、アントラセンd−10および9−ブロモアントラセンの3種類をそれぞれ濃度が100ppbとなるように添加した。これにより、試料濃度が1g/mLのものと4g/mLのものとの二種類の分析用試料を調製した。分析用試料の調製とその精製処理の全体に要した時間は、食品試料B等を量り採った遠沈管にアセトニトリルを加える作業を開始した時点から70分であった。
【0092】
比較例2(通知法による分析試料の調製)
食品試料Bの20.0gを量り採り、これに50ppbとなるように農薬標準液(関東化学株式会社の商品名「農薬標準混合液31」)を添加し、攪拌・混合後に暫時静置した。これにアセトニトリル50mLを加えてホモジナイズした後、吸引ろ過し、第1のろ液を得た。また、ろ紙上の残留物にアセトニトリル20mLを加えてホモジナイズした後、吸引ろ過し、第2のろ液を得た。第1のろ液と第2のろ液とを合わせ、これにアセトニトリルを加えて正確に100mLに調整することで抽出液を調製した。
【0093】
分取した20mLの抽出液に塩化ナトリウム10gおよび0.5mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)20mLを加え、これを振とう機で振とうした後に静置し、分離した水層を廃棄した。一方、アセトニトリル層は、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後に40℃以下で溶媒を除去した。この残留物にアセトニトリルとトルエンとを3:1の体積割合で混合した溶媒2mLを加え、試料溶液を得た。
【0094】
次に、グラファイトカーボン500mgとアミノプロピルシリル化シリカゲル500mgとを積層充填したミニカラム(ジーエルサイエンス株式会社の商品名「InertSep GC/NH
2」)のグラファイトカーボン側からアセトニトリルとトルエンとを3:1の体積割合で混合した溶媒10mLを注入し、流出液を廃棄した。そして、このミニカラムのグラファイトカーボン側から試料溶液を注入した後、アセトニトリルとトルエンとを3:1の体積割合で混合した溶媒20mLを注入し、溶出液の全てを確保した。この溶出液を40℃以下で1mL以下に濃縮し、これにアセトン10mLを加えて40℃以下で再度1mL以下に濃縮した。この濃縮物に再度アセトン5mLを加えて溶解した後、溶媒を除去した。このときの残留物を体積が正確に1mLになるようアセトンに溶かし、試料濃度が4g/mLの分析用試料とした。分析用試料の調製に要した時間は、食品材料Bと農薬標準液との混合後にアセトニトリルを加える作業を開始した時点から110分であった。この分析用試料は、インジェクションスパイクとして、フェナントレンd−10、アントラセンd−10および9−ブロモアントラセンの3種類をそれぞれ濃度が100ppbとなるように添加した。
【0095】
比較例3(欧州規格EN15662に従ったQuEChERS法による分析試料の調製)
第2遠沈管に硫酸マグネシウム150mg、エチレンジアミン−N−プロピルシリル化シリカゲル(ジーエルサイエンス株式会社の商品名「InertSep PSA」)25mgおよびグラファイトカーボン(Waters社の商品名「Graphitized Carbon Black」)7.5mgを加え、これに第1遠沈管から分取した液層1mLを加えた点を除いて比較例1と同様に操作し、食品試料Bから試料濃度1g/mLの分析用試料を調製した。この分析用試料の調製に要した時間は、食品試料B等を量り採った第1遠沈管にアセトニトリルを加える作業を開始した時点から30分であった。
【0096】
評価
GC/MS(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社の商品名「Trace GC/PolarisQ」)を用いて下記の条件で各実施例および各比較例で調製した分析用試料を分析し、添加した農薬の回収率を求めた。結果を表1A、表1Bおよび表1Cに示す。また、
図8に実施例1および比較例1で得られた分析用試料のGC/MS SCANクロマトグラム、
図9に実施例2および比較例2で得られた分析用試料のGC/MS SCANクロマトグラム、
図10に実施例2および比較例3で得られた分析用試料のGC/MS SCANクロマトグラムをそれぞれ示す。
【0097】
カラム:
5%フェニル−メチルシリコン 内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm
カラム温度:
50℃(1分)−30℃/分−125℃(0分)−5℃/分−200℃(0分)−10℃/分−300℃(11分30秒)
注入口温度:220℃
キャリヤーガス:ヘリウム
イオン化モード(電圧):EI(70eV)
【0098】
【表1A】
【0099】
【表1B】
【0100】
【表1C】
【0101】
回収率が70〜120%の農薬ピーク数と、農薬の全ピーク数に対する回収率が70〜120%の農薬ピーク数の割合を求めた結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例1と比較例1とを対比すると、70〜120%の回収率が得られた農薬はほぼ同数であった。但し、
図8によると、実施例1の方が比較例1よりも夾雑ピークが少なく、精製効果が高い。
【0104】
実施例2と比較例2とを対比すると、70〜120%の回収率が得られた農薬数はほぼ同数であった。但し、
図9によると、実施例2の方が比較例2よりも夾雑ピークが少なく、精製効果が高い。
【0105】
実施例2と比較例3とを対比すると、70〜120%の回収率が得られた農薬数は実施例2の方が多かった。また、
図10によると、実施例2の方が比較例3よりもが夾雑ピークが少なく、精製効果が高い。