【文献】
小田原誠 他,すし酢が酢飯の低温保存後のテクスチャーに与える影響 The Effect of Sushi Vinegar on Texture of Sushi Rice before and after Storage under Low Temperature,日本食品科学工学会誌 ,2004年,Vol. 51, No.11,p.620-625
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明においては、食品添加物を加えることなく、冷蔵環境下でも澱粉の老化を抑制することができる、加工米飯の製造方法、加工米飯食品の製造方法、加工酢飯の製造方法、及び加工酢飯食品の製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0037】
まず、加工米飯の製造方法及び加工米飯食品の製造方法について、
図1〜
図6を使用して説明する。
【0038】
図1は、実施例1の加工米飯の製造工程を示すフローチャートであり、この方法においては、まず、原料生米に加水及び加熱することにより、原料生米が含有する澱粉を糊化させて糊化飯を調製する(予備糊化工程)(S11)。
【0039】
つまり、この工程では、まず、原料生米を水洗し、原料生米に付着している汚れを落とすとともに、原料生米に吸水させ、この水洗済み原料生米を水中に浸漬して、更に吸水させ、次に、水中から取り出し、一旦水きりした原料生米を水とともに、ガスまたは電気を熱源とする通常の炊飯釜に入れ、この炊飯釜の内容物を加熱し、原料生米が含有する澱粉に水和させて糊化飯を調製する。
【0040】
原料生米としては、精白したうるち米、精白した餅米、うるち米の玄米、餅米の玄米等が挙げられ、これらの中から1種類を選択するか、或いは、2種類以上を選択し、混合して、得られた混合米を原料生米とすればよい。
【0041】
また、この予備糊化工程(S11)における加熱方法としては、上記炊飯釜による方法の他、例えば、ステンレススチール製の網の上に載置された吸水済み原料生米を蒸気に晒すとともに、該原料生米に熱水を散布する方法や、ステンレススチール製の網の上に載置された吸水済み原料生米を蒸気に晒す方法や、吸水済み原料生米を水とともに、または、吸水済み原料生米だけをポリプロピレン製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器にマイクロ波を照射し、炊飯容器の内容物を加熱する方法、吸水済み原料生米を水とともに、または、吸水済み原料生米だけをセラミックス製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器をラジエントヒータ(つまり、被加熱物を支持するためのセラミックス製の支持板と、この支持板の下方に設けられたニクロム線とを有する調理器具)により加熱し、ニクロム線からの熱と、加熱された、炊飯容器及び支持板が放出する遠赤外線とにより、炊飯容器の内容物を加熱する方法や、吸水済み原料生米を水とともに、または、吸水済み原料生米だけをステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブン(つまり、被加熱物を収納するための加熱室と、この加熱室内に熱風を供給し、強制対流させる熱風供給部と、加熱室内に蒸気を供給する蒸気供給部とを有する調理器具)の加熱室に入れ、熱風と蒸気とにより、バットの内容物を加熱する方法等が挙げられる。
【0042】
ここで、この予備糊化工程(S11)の上記加熱方法における加熱温度は、約100℃であるが、加熱方法を上記以外の方法としてもよく、その場合には、少なくとも、原料生米中の澱粉が糊化する温度である50℃以上の温度で加熱する必要があり、また、短時間内に加熱処理を完了させるためには、90℃以上とするのが好ましい。
【0043】
また、原料生米中の澱粉を糊化するためには、原料生米に対して、加水することと、加熱することの両方が必要であるが、その両方を実施できればよく、必ずしも加水と加熱を同時に行わなくてもよく、水洗、水中浸漬等により、予め充分に加水されていれば、その後、何らかの方法で加熱するだけでもよい。
【0044】
つまり、この工程において、加水及び加熱するとは、予め吸水された原料生米に加熱するとともに、加水したり、予め吸水された原料生米に加熱だけをしたり、未吸水の原料生米に加熱するとともに、加水することをいう。
【0045】
また、原料生米中の澱粉の少なくとも一部が糊化されていればよく、この工程で糊化されなかった未糊化澱粉については、後説する本糊化工程で糊化する。
【0046】
次に、予備糊化工程で得られた糊化飯が含有する糊化澱粉(糊化した澱粉)を老化させて老化飯を調製する(老化工程)(S12)。
【0047】
つまり、この工程では、糊化した澱粉の老化が進行する環境下に上記糊化飯を置いて、糊化澱粉に付加している水和水を該糊化澱粉から分離、蒸発させて老化飯を調製する。
【0048】
なお、糊化澱粉を老化させる際の温度は任意であり、例えば、澱粉の老化は、常温環境下で単に放置するだけでも進行するが、この工程での老化を進行させるための環境としては、製造上の観点からして、短時間で老化を進行させ、老化進行中に糊化飯の腐敗が進行することを避けるために、約0℃〜約10℃の範囲の冷蔵環境が好ましい。
【0049】
次に、老化工程で得られた老化飯に対して加水及び加熱するか、或いは、加熱することにより、老化飯が含有する老化澱粉(老化した澱粉)を再糊化させるとともに、予備糊化工程で糊化されなかった、老化飯中の未糊化澱粉を糊化させて加工米飯を調製する(本糊化工程)(S13)。
【0050】
この本糊化工程(S13)における加熱方法としては、予備糊化工程で用いた方法と同一の方法でよく、例えば、老化飯を水とともにガスまたは電気を熱源とする通常の炊飯釜に入れ、この炊飯釜の内容物を加熱する方法や、ステンレススチール製の網の上に載置された老化飯を蒸気に晒すとともに、該老化飯に熱水を散布する方法や、ステンレススチール製の網の上に載置された老化飯を蒸気に晒す方法や、老化飯を水とともに、または、老化飯だけをポリプロピレン製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器にマイクロ波を照射し、炊飯容器の内容物を加熱する方法や、老化飯を水とともにセラミックス製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器をラジエントヒータの支持板の上に載せて加熱し、ニクロム線からの熱と、加熱された炊飯容器及び支持板が放出する遠赤外線とにより、炊飯容器の内容物を加熱する方法や、老化飯を水とともに、または老化飯だけをステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブンの加熱室に入れ、熱風と蒸気とにより、バットの内容物を加熱する方法等が挙げられる。
【0051】
ここで、この本糊化工程(S13)の上記加熱方法における加熱温度は、約100℃であるが、加熱方法を上記以外の方法としてもよく、その場合には、少なくとも、老化澱粉が再糊化するとともに、老化飯中の未糊化澱粉が糊化する温度である50℃以上の温度で加熱する必要があり、また、短時間内に加熱処理を完了させるとともに、良好な食味を得るためには、90℃以上とするのが好ましい。
【0052】
また、老化飯中の老化澱粉を再糊化させるとともに、老化飯中の未糊化澱粉を糊化させるためには、老化飯に加熱することが必要であるが、加水については、必ずしも必要ではない。
【0053】
例えば、予備糊化工程で加える水を多くした場合で、老化後の老化飯の表面層は半乾燥状態でかたくなっているが、充分な水分が老化飯の内部に残留しており、かつ、未糊化澱粉が殆ど存在しないときには、仕上がり後の加工米飯が柔らかくなり過ぎないように本糊化工程で加える水を少なくするか、本糊化工程で水を加えず、加熱だけすればよい。また、反対に予備糊化工程で加える水を少なくした場合には、本糊化工程で加熱するとともに加水すればよい。つまり、予備糊化工程と本糊化工程のそれぞれで加える水分量を適宜加減し、予備糊化工程と本糊化工程での加水総量を調整することにより、適切な量の水分が仕上がり後の加工米飯に含有されるようにすればよい。
【0054】
この方法によれば、約0℃〜約10℃の冷蔵環境下で保存しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない加工米飯を得ることができる。
【0055】
なお、この方法により、老化抑制された加工米飯が得られるのは、一旦糊化された澱粉を老化させた後、再糊化させて、糊化を繰り返すことにより、澱粉を構成しているグルコース重合体の一部が、より分子量の小さな重合体に分解され、澱粉の保水力が高まり、老化され難くなるためと推測される。
【0056】
次に、本発明の加工米飯食品の製造方法について説明する。ここで加工米飯食品とは、上記加工米飯から製造されたものである。
【0057】
図2は、下記実施例2の加工米飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S11)と、老化工程(S12)と、本糊化工程(S13)とを経て得られた加工米飯を冷凍庫内に入れても支障がない程度の温度まで冷却した後、冷凍庫内に入れ、急速凍結させることにより(加工米飯凍結工程)(S14)、加工米飯食品を得る。予備糊化工程(S11)と老化工程(S12)と本糊化工程(S13)は、実施例1における各工程と同様である。
【0058】
この方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない冷凍飯(加工米飯食品)を得ることができる。
【0059】
また、
図3は、下記実施例3の加工米飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S11)と、老化工程(S12)と、本糊化工程(S13)とを経て得られた加工米飯に寿司酢を加えて(寿司酢添加工程)(S15)、加工米飯食品を得る。予備糊化工程(S11)と老化工程(S12)と本糊化工程(S13)は、実施例1における各工程と同様である。
【0060】
なお、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、酢飯(加工米飯食品)が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を加工米飯の重量に対して10〜12重量%とする(原料生米の重量に対して23〜29重量%としてもよい)。
【0061】
この方法によれば、冷蔵保存しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない酢飯(加工米飯食品)を得ることができる。
【0062】
また、
図4は、下記実施例4の加工米飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S11)と、老化工程(S12)と、本糊化工程(S13)とを経て得られた加工米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製し(寿司酢添加工程)(S15)、該酢飯を冷凍庫内に入れても支障がない程度の温度まで冷却した後、冷凍庫内に入れ、急速凍結させることにより(酢飯凍結工程)(S16)、加工米飯食品を得る。予備糊化工程(S11)と老化工程(S12)と本糊化工程(S13)は、実施例1における各工程と同様であり、寿司酢添加工程(S15)は、実施例3における寿司酢添加工程と同様である。
【0063】
なお、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、冷凍酢飯(加工米飯食品)を解凍した酢飯が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を加工米飯の重量に対して10〜12重量%とする(原料生米の重量に対して23〜29重量%としてもよい)。
【0064】
この方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない冷凍酢飯(加工米飯食品)を得ることができる。
【0065】
また、
図5は、下記実施例5の加工米飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S11)と、老化工程(S12)と、本糊化工程(S13)とを経て得られた加工米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製し(寿司酢添加工程)(S15)、該酢飯を取り扱いに支障がない程度の温度まで冷却した後、この酢飯からシャリ玉を成形し(シャリ玉成形工程)(S17)、得られたシャリ玉を冷凍庫内に入れ、急速凍結させることにより(シャリ玉凍結工程)(S18)、加工米飯食品を得る。予備糊化工程(S11)と老化工程(S12)と本糊化工程(S13)は、実施例1における各工程と同様であり、寿司酢添加工程(S15)は、実施例3における寿司酢添加工程と同様である。
【0066】
なお、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、冷凍シャリ玉(加工米飯食品)を解凍したシャリ玉が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を加工米飯の重量に対して10〜12重量%とする(原料生米の重量に対して23〜29重量%としてもよい)。
【0067】
この方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない冷凍シャリ玉(加工米飯食品)を得ることができる。
【0068】
また、
図6は、下記実施例6の加工米飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S11)と、老化工程(S12)と、本糊化工程(S13)とを経て得られた加工米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製し(寿司酢添加工程)(S15)、該酢飯を取り扱いに支障がない程度の温度まで冷却した後、この酢飯と、魚介類等の寿司ネタ、海苔、ワサビ、油揚げ等の寿司材料とから、握り寿司、軍艦巻き、散らし寿司、手巻き寿司、手まり寿司、いなり寿司等の寿司を製造し(寿司製造工程)(S19)、製造した該寿司を冷凍庫内に入れ、急速凍結させることにより(寿司凍結工程)(S20)、加工米飯食品を得る。予備糊化工程(S11)と老化工程(S12)と本糊化工程(S13)は、実施例1における各工程と同様であり、寿司酢添加工程(S15)は、実施例3における寿司酢添加工程と同様である。
【0069】
なお、油揚げは、いなり寿司のための寿司材料である。また、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、冷凍寿司(加工米飯食品)を解凍した寿司が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を加工米飯の重量に対して10〜12重量%とする(原料生米の重量に対して23〜29重量%としてもよい)。
【0070】
この方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない冷凍寿司(加工米飯食品)を得ることができる。
【0071】
次に、加工酢飯の製造方法及び加工酢飯食品の製造方法について、
図7〜
図10を使用して説明する。
【0072】
図7は、実施例7の加工酢飯の製造工程を示すフローチャートであり、この方法においては、まず、原料生米に加水及び加熱することにより、原料生米が含有する澱粉を糊化させて糊化飯を調製する(予備糊化工程)(S21)。
【0073】
つまり、この工程では、まず、原料生米を水洗し、原料生米に付着している汚れを落とすとともに、原料生米に吸水させ、この水洗済み原料生米を水中に浸漬して、更に吸水させ、次に、水中から取り出し、一旦水きりした原料生米を水とともに、ガスまたは電気を熱源とする通常の炊飯釜に入れ、この炊飯釜の内容物を加熱し、原料生米が含有する澱粉に水和させて糊化飯を調製する。
【0074】
原料生米としては、精白したうるち米、精白した餅米、うるち米の玄米、餅米の玄米等が挙げられ、これらの中から1種類を選択するか、或いは、2種類以上を選択し、混合して、得られた混合米を原料生米とすればよい。
【0075】
また、予備糊化工程(S21)における加熱方法は、実施例1の予備糊化工程(S11)における加熱方法と同様であり、加熱方法としては、上記炊飯釜による方法の他、例えば、ステンレススチール製の網の上に載置された吸水済み原料生米を蒸気に晒すとともに、該原料生米に熱水を散布する方法、ステンレススチール製の網の上に載置された吸水済み原料生米を蒸気に晒す方法、吸水済み原料生米を水とともに、または、吸水済み原料生米だけをポリプロピレン製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器にマイクロ波を照射し、炊飯容器の内容物を加熱する方法、吸水済み原料生米を水とともに、または、吸水済み原料生米だけをセラミックス製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器をラジエントヒータ(つまり、被加熱物を支持するためのセラミックス製の支持板と、この支持板の下方に設けられたニクロム線とを有する調理器具)により加熱し、ニクロム線からの熱と、加熱された、炊飯容器及び支持板が放出する遠赤外線とにより、炊飯容器の内容物を加熱する方法、吸水済み原料生米を水とともに、または、吸水済み原料生米だけをステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブン(つまり、被加熱物を収納するための加熱室と、この加熱室内に熱風を供給し、強制対流させる熱風供給部と、加熱室内に蒸気を供給する蒸気供給部とを有する調理器具)の加熱室に入れ、熱風と蒸気とにより、バットの内容物を加熱する方法等が挙げられる。
【0076】
ここで、この予備糊化工程(S21)の加熱方法における加熱温度は、約100℃であるが、加熱方法を上記以外の方法としてもよく、その場合には、少なくとも、原料生米中の澱粉が糊化する温度である50℃以上の温度で加熱する必要があり、また、短時間内に加熱処理を完了させるためには、90℃以上とするのが好ましい。
【0077】
また、原料生米中の澱粉を糊化するためには、原料生米に対して、加水することと、加熱することの両方が必要であるが、その両方を実施できればよく、必ずしも加水と加熱を同時に行わなくてもよく、水洗、水中浸漬等により、予め充分に加水されていれば、その後、何らかの方法で加熱するだけでもよい。
【0078】
つまり、この工程において、加水及び加熱するとは、予め吸水された原料生米に加熱するとともに、加水したり、予め吸水された原料生米に加熱だけをしたり、未吸水の原料生米に加熱するとともに、加水することをいう。
【0079】
また、原料生米中の澱粉の少なくとも一部が糊化されていればよく、この工程で糊化されなかった未糊化澱粉については、後説する本糊化寿司酢浸透工程で糊化する。
【0080】
次に、予備糊化工程で得られた糊化飯が含有する糊化澱粉(糊化した澱粉)を老化させて老化飯を調製する(老化工程)(S22)。
【0081】
つまり、この工程では、糊化した澱粉の老化が進行する環境下に上記糊化飯を置いて、糊化澱粉に付加している水和水を該糊化澱粉から分離、蒸発させて老化飯を調製する。
【0082】
なお、糊化澱粉を老化させる際の温度は任意であり、例えば、澱粉の老化は、常温環境下で単に放置するだけでも進行するが、この工程での老化を進行させるための環境としては、製造上の観点からして、短時間で老化を進行させ、老化進行中に糊化飯の腐敗が進行することを避けるために、約0℃〜約10℃の範囲の冷蔵環境が好ましい。
【0083】
次に、老化工程で得られた老化飯に対して、寿司酢の存在下で、加水及び加熱するか、或いは、加熱することにより、老化飯が含有する老化澱粉(老化した澱粉)を再糊化させるとともに、予備糊化工程で糊化されなかった、老化飯中の未糊化澱粉を糊化させながら、この工程で得られた糊化澱粉に前記寿司酢を浸透させて加工酢飯を調製する(本糊化寿司酢浸透工程)(S23)。
【0084】
ここで、「寿司酢の存在下」とは、老化飯における各粒(つまり、各米粒)の周囲に寿司酢が存在している状態であり、加熱方法としては、実施例1における本糊化工程(S13)と同様であり、炊飯釜による方法や、蒸気に晒す方法や、マイクロ波を照射する方法や、ラジエントヒータによる方法や、スチームコンベクションオーブンによる方法等が挙げられる。
【0085】
寿司酢の存在下で老化飯に対して加水及び加熱するための方法としては、例えば、老化飯と寿司酢を水とともにガスまたは電気を熱源とする通常の炊飯釜に入れ、この炊飯釜の内容物を加熱する方法、老化飯に寿司酢を添加し、これを混合して寿司酢を老化飯全体に馴染ませた後、得られた混合物を水とともに炊飯釜に投入し、この炊飯釜の内容物を加熱する方法、老化飯と寿司酢を水とともにポリプロピレン製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器にマイクロ波を照射し、炊飯容器の内容物を加熱する方法、老化飯に寿司酢を添加し、これを混合して寿司酢を老化飯全体に馴染ませた後、得られた混合物を水とともにポリプロピレン製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器にマイクロ波を照射し、炊飯容器の内容物を加熱する方法、老化飯と寿司酢を水とともにセラミックス製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器をラジエントヒータにより加熱し、ニクロム線からの熱と、加熱された、炊飯容器及び支持板が放出する遠赤外線とにより、炊飯容器の内容物を加熱する方法、老化飯に寿司酢を添加し、これを混合して寿司酢を老化飯全体に馴染ませた後、得られた混合物を水とともにセラミックス製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器をラジエントヒータにより加熱し、ニクロム線からの熱と、加熱された炊飯容器及び支持板が放出する遠赤外線とにより、炊飯容器の内容物を加熱する方法、老化飯と寿司酢を水とともにステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブンの加熱室に入れ、熱風と蒸気とにより、バットの内容物を加熱する方法、老化飯に寿司酢を添加し、これを混合して寿司酢を老化飯全体に馴染ませた後、得られた混合物を水とともにステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブンの加熱室に入れ、熱風と蒸気とにより、バットの内容物を加熱する方法等が挙げられる。
【0086】
また、寿司酢の存在下で老化飯を加熱するための方法としては、例えば、老化飯と寿司酢だけ(つまり、水を加えない)をポリプロピレン製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器にマイクロ波を照射し、炊飯容器の内容物を加熱する方法、老化飯に寿司酢を添加し、これを混合して寿司酢を老化飯全体に馴染ませた後、得られた混合物だけを(つまり、水を加えない)ポリプロピレン製の炊飯容器に入れ、この炊飯容器にマイクロ波を照射し、炊飯容器の内容物を加熱する方法、老化飯と寿司酢だけを(つまり、水を加えない)ステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブンの加熱室に入れ、熱風と蒸気とにより、バットの内容物を加熱する方法、老化飯に寿司酢を添加し、これを混合して寿司酢を老化飯全体に馴染ませた後、得られた混合物だけを(つまり、水を加えない)ステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブンの加熱室に入れ、熱風と蒸気とにより、バットの内容物を加熱する方法等が挙げられる。
【0087】
ここで、本糊化寿司酢浸透工程(S23)の上記加熱方法における加熱温度は、約100℃であるが、加熱方法を上記以外の方法としてもよく、その場合には、少なくとも、老化澱粉が再糊化するとともに、老化飯中の未糊化澱粉が糊化する温度である50℃以上の温度で加熱する必要があり、また、短時間内に加熱処理を完了させるとともに、良好な食味を得るためには、90℃以上とするのが好ましい。
【0088】
また、老化飯中の老化澱粉を再糊化させるとともに、老化飯中の未糊化澱粉を糊化させるためには、老化飯に加熱することが必要であるが、加水については、必ずしも必要ではない。
【0089】
例えば、予備糊化工程で加える水を多くした場合で、老化後の老化飯の表面層は半乾燥状態でかたくなっているが、充分な水分が老化飯の内部に残留しており、かつ、未糊化澱粉が殆ど存在しないときには、仕上がり後の加工酢飯が柔らかくなり過ぎないように本糊化寿司酢浸透工程で加える水を少なくするか、本糊化寿司酢浸透工程で水を加えず、加熱だけすればよい。一方、反対に予備糊化工程で加える水を少なくした場合には、本糊化寿司酢浸透工程で加熱するとともに加水する。つまり、予備糊化工程と本糊化寿司酢浸透工程のそれぞれで加える水分量を適宜加減し、予備糊化工程と本糊化寿司酢浸透工程での加水総量を調整することにより、適切な量の水分が仕上が後の加工酢飯に含有されるようにする。
【0090】
また、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、加工酢飯が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を原料生米の重量に対して23〜29重量%とする。
【0091】
この方法によれば、米飯の奥深くまで寿司酢が浸透した加工酢飯を得ることができ、この加工酢飯は、約0℃〜約10℃の冷蔵環境下で保存しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない。また、この加工酢飯は、上記加工米飯から製造された酢飯(加工米飯食品)よりも、更に耐老化性に優れている。
【0092】
なお、この方法により、老化抑制された加工酢飯が得られるのは、一旦糊化された澱粉を老化させた後、再糊化させて、糊化を繰り返すことにより、澱粉を構成しているグルコース重合体の一部が、より分子量の小さな重合体に分解され、再糊化させる際に老化飯の周囲に寿司酢が存在していることにより、グルコース重合体の分解が更に促進され、澱粉の保水力が高まり、老化され難くなるためと推測される。
【0093】
次に、本発明の加工酢飯食品の製造方法について説明する。ここで加工酢飯食品とは、上記加工酢飯から製造されたものである。
【0094】
図8は、下記実施例8の加工酢飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S21)と、老化工程(S22)と、本糊化寿司酢浸透工程(S23)とを経て得られた加工酢飯を冷凍庫内に入れても支障がない程度の温度まで冷却した後、冷凍庫内に入れ、急速凍結させることにより(加工酢飯凍結工程)(S24)、加工酢飯食品を得る。予備糊化工程(S21)と老化工程(S22)と本糊化寿司酢浸透工程(S23)は、実施例7における各工程と同様である。
【0095】
なお、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、冷凍酢飯(加工酢飯食品)を解凍した酢飯が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を原料生米の重量に対して23〜29重量%とする。
【0096】
この方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない冷凍酢飯(加工酢飯食品)を得ることができる。また、この冷凍酢飯(加工酢飯食品)は、上記加工米飯から製造された冷凍酢飯(加工米飯食品)よりも、更に耐老化性に優れている。
【0097】
また、
図9は、下記実施例9の加工酢飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S21)と、老化工程(S22)と、本糊化寿司酢浸透工程(S23)とを経て得られた加工酢飯を取り扱いに支障がない程度の温度まで冷却した後、この酢飯からシャリ玉を成形し(シャリ玉成形工程)(S25)、得られたシャリ玉を冷凍庫内に入れ、急速凍結させることにより(シャリ玉凍結工程)(S26)、加工酢飯食品を得る。予備糊化工程(S21)と老化工程(S22)と本糊化寿司酢浸透工程(S23)は、実施例7における各工程と同様である。
【0098】
なお、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、冷凍シャリ玉(加工酢飯食品)を解凍したシャリ玉が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を原料生米の重量に対して23〜29重量%とする。
【0099】
この方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない冷凍シャリ玉(加工酢飯食品)を得ることができる。また、この冷凍シャリ玉(加工酢飯食品)は、上記加工米飯から製造された冷凍シャリ玉(加工米飯食品)よりも、更に耐老化性に優れている。
【0100】
また、
図10は、下記実施例10の加工酢飯食品の製造工程を示すフローチャートであり、この方法では、予備糊化工程(S21)と、老化工程(S22)と、本糊化寿司酢浸透工程(S23)とを経て得られた加工酢飯を取り扱いに支障がない程度の温度まで冷却した後、この酢飯と、魚介類等の寿司ネタ、海苔、ワサビ、油揚げ等の寿司材料とから、握り寿司、軍艦巻き、散らし寿司、手巻き寿司、手まり寿司、いなり寿司等の寿司を製造し(寿司製造工程)(S27)、製造した該寿司を冷凍庫内に入れ、急速凍結させることにより(寿司凍結工程)(S28)、加工米飯食品を得る。予備糊化工程(S21)と老化工程(S22)と本糊化寿司酢浸透工程(S23)は、実施例7における各工程と同様である。
【0101】
なお、寿司酢の添加量は、通常の米飯に寿司酢を加えて酢飯を調製する場合の添加量と同程度の添加量でよく、この通常酢飯での添加量を目安として、冷凍寿司(加工米飯食品)を解凍した寿司が所望の食味を呈するように適宜加減すればよい。具体的には、寿司酢の添加量を原料生米の重量に対して23〜29重量%とする。
【0102】
この方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない冷凍寿司(加工酢飯食品)を得ることができる。また、この冷凍寿司(加工酢飯食品)は、上記加工米飯から製造された冷凍寿司(加工米飯食品)よりも、更に耐老化性に優れている。
【0103】
次に、加工米飯及び加工米飯食品についての実施例を示し、更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0104】
まず、精白されたうるち米(原料生米)を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、水とともに炊飯釜に入れ、これを炊いて米飯(糊化飯)を調製した(予備糊化工程)。この米飯は、うるち米に含まれている澱粉の殆ど全てが糊化され、芯が残っていない柔らかなものであった。
【0105】
次に、予備糊化工程で得られた米飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した(老化工程)。この老化工程により、米飯粒が凝集した冷や飯(老化飯)が得られた。
【0106】
次に、上記冷や飯をほぐした後、ステンレススチール製の網の上に載置し、網の下方から水蒸気(約100℃)を供給して、約15分間水蒸気に晒し、加熱することにより、加工米飯を得た(本糊化工程)。この加工米飯は、冷や飯に含有されていた老化澱粉の殆ど全てが再糊化され、柔らかなものであった。
【0107】
この実施例1で得られた加工米飯を減圧冷却により約20℃まで冷却し、減圧冷却後の加工米飯を庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した後、冷蔵庫から取り出し、取り出された加工米飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.1)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、当該試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。
【0108】
なお、評価方法としては、下記実施例11で得られた通常米飯を減圧冷却し、減圧冷却直後の通常米飯から、基準試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(STD)について、各検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、この試料の固さを基準として、これを評価1とし、評価1のものより少し固い場合を評価2、評価2のものより少し固い場合を評価3、評価3のものより少し固い場合を評価4、評価4のものより固い場合を評価5として、各検査員が評価し、その平均値を検査対象の評価とした。
【実施例2】
【0109】
実施例1の場合と同一の条件で同一の工程を経て得られた加工米飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより(加工米飯凍結工程)、冷凍飯(加工米飯食品)を得た。
【0110】
この実施例2で得られた冷凍飯を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.2)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例3】
【0111】
実施例1の場合と同一の条件で同一の工程を経て得られた加工米飯に寿司酢を加え、加工米飯全体に寿司酢を馴染ませることにより(寿司酢添加工程)、酢飯(加工米飯食品)を得た。
【0112】
なお、本実施例における加工米飯の水分量は、内割で約64重量%であった。この加工米飯に対して、外割で約12重量%の寿司酢を添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0113】
この実施例3で得られた酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却し、減圧冷却後の酢飯を庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した後、冷蔵庫から取り出し、取り出された酢飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採集し、当該試料(試料No.3)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、当該試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例4】
【0114】
実施例1の場合と同一の条件で同一の工程を経て得られた加工米飯に寿司酢を加え、加工米飯全体に寿司酢を馴染ませることにより(寿司酢添加工程)、酢飯を調製し、この酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより(酢飯凍結工程)、冷凍酢飯(加工米飯食品)を得た。
【0115】
なお、本実施例における加工米飯の水分量は、内割で約64重量%であった。この加工米飯に対して、外割で約12重量%の寿司酢を添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0116】
この実施例4で得られた冷凍酢飯を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍酢飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.4)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例5】
【0117】
まず、精白されたうるち米(原料生米)を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、ステンレススチール製の網の上に載置し、約25分間、網の下方から水蒸気を供給して、網上のうるち米を水蒸気に晒すとともに、網の上方から熱水を散布し、網上のうるち米に熱水を浴びせることにより、米飯(糊化飯)を調製した(予備糊化工程)。この米飯は、うるち米に含有されている澱粉の殆ど全てが糊化され、芯が残っていない柔らかなものであった。
【0118】
次に、予備糊化工程で得られた米飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した(老化工程)。この老化工程により、米飯粒が凝集した冷や飯(老化飯)が得られた。
【0119】
次に、上記冷や飯をほぐした後、ステンレススチール製の網の上に載置し、約15分間、網の下方から水蒸気(約100℃)を供給して、網上の老化米を水蒸気に晒し、加熱することにより、加工米飯を得た(本糊化工程)。この加工米飯は、冷や飯に含有されていた老化澱粉の殆ど全てが再糊化され、柔らかなものであった。
【0120】
次に、本糊化工程で得られた加工米飯に寿司酢を加え、加工米飯全体に寿司酢を馴染ませることにより(寿司酢添加工程)、酢飯を調製し、この酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、成形し、得られたシャリ玉を庫内温度−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより(シャリ玉成形凍結工程)、冷凍シャリ玉(加工米飯食品)を得た。
【0121】
なお、本実施例における加工米飯の水分量は、内割で約64重量%であった。この加工米飯に対して、外割で約12重量%の寿司酢を添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0122】
この実施例5で得られた冷凍シャリ玉を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍シャリ玉から、査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.5)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例6】
【0123】
まず、精白されたうるち米(原料生米)を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、ステンレススチール製の網の上に載置し、約15分間、網の下方から水蒸気(約100℃)を供給して、網上のうるち米を水蒸気に晒すことにより、米飯(糊化飯)を調製した(予備糊化工程)。この米飯は、澱粉の多くが糊化されずに、芯が残ったものであった。
【0124】
次に、予備糊化工程で得られた米飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した(老化工程)。この老化工程により、米飯粒が凝集した冷や飯(老化飯)が得られた。
【0125】
次に、上記冷や飯をほぐした後、水とともに炊飯釜に入れ、これを炊いて、加工米飯を得た(本糊化糊化工程)。この加工米飯は、冷や飯に含有されていた老化澱粉の殆ど全てが再糊化され、かつ、予備糊化工程で糊化されなかった未糊化澱粉の殆ど全てが糊化され、柔らかなものであった。
【0126】
次に、本糊化工程で得られた加工米飯に寿司酢を加え、加工米飯全体に寿司酢を馴染ませることにより(寿司酢添加工程)、酢飯を調製し、この酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、成形し、得られたシャリ玉と、魚介類等の寿司ネタ、海苔、ワサビ、油揚げ等の寿司材料とから寿司を調製し、この寿司を庫内温度−60℃の冷凍庫に入れ、約120分間静置し、凍結することにより(寿司調製凍結工程)、冷凍寿司(加工米飯食品)を得た。
【0127】
なお、本実施例における加工米飯の水分量は、内割で約64重量%であった。この加工米飯に対して、外割で約12重量%の寿司酢を添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0128】
この実施例6で得られた冷凍寿司を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍寿司から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.6)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【0129】
次に、加工酢飯及び加工酢飯食品についての実施例を示し、更に詳細に説明する。
【実施例7】
【0130】
まず、精白されたうるち米(原料生米)を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、ステンレススチール製の網の上に載置し、約15分間、網の下方から水蒸気(約100℃)を供給して、網上のうるち米を水蒸気に晒すことにより、米飯(糊化飯)を調製した(予備糊化工程)。この米飯は、澱粉の多くが糊化されずに、芯が残ったものであった。
【0131】
次に、予備糊化工程で得られた米飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した(老化工程)。この老化工程により、米飯粒が凝集した冷や飯(老化飯)が得られた。
【0132】
次に、ほぐした冷や飯と、寿司酢と、水とをステンレススチール製のバットに入れ、このバットをスチームコンベクションオーブンに入れ、上記バットの内容物を加熱することにより、加工酢飯を得た(本糊化寿司酢浸透工程)。この加工酢飯は、冷や飯に含有されていた老化澱粉の殆ど全てが再糊化され、かつ、予備糊化工程で糊化されなかった未糊化澱粉の殆ど全てが糊化され、また、加工米飯の奥深くまで寿司酢が浸透していて、柔らかなものであった。
【0133】
なお、寿司酢の添加量ついては、原料生米の重量を基準として算出した。つまり、原料生米の水分量は、内割で約14重量%(原料生米の正味が約86重量%)であり、この原料生米の重量に対する外割で約28重量%に相当する量の寿司酢を本糊化寿司酢浸透工程において添加した。この添加量は、水分量が内割で約64重量%の通常の米飯(米飯の正味が約36重量%)に対して、外割で約12重量%の寿司酢を添加した場合の添加量に相当する。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0134】
この実施例7で得られた加工酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却し、減圧冷却後の加工酢飯を庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した後、冷蔵庫から取り出し、取り出された加工酢飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.7)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、当該試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例8】
【0135】
実施例7の場合と同一の条件で同一の工程を経て得られた加工酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより(加工酢飯凍結工程)、冷凍酢飯(加工酢飯食品)を得た。
【0136】
なお、寿司酢の添加量ついては、実施例7の場合と同様に算出し、原料生米の重量に対する外割で約28重量%に相当する量の寿司酢を本糊化寿司酢浸透工程において添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0137】
この実施例8で得られた冷凍酢飯を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍酢飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.8)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例9】
【0138】
実施例7の場合と同一の条件で同一の工程を経て得られた加工酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、成形し、得られたシャリ玉を庫内温度−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより(シャリ玉成形凍結工程)、冷凍シャリ玉(加工酢飯食品)を得た。
【0139】
なお、寿司酢の添加量ついては、実施例7の場合と同様に算出し、原料生米の重量に対する外割で約28重量%に相当する量の寿司酢を本糊化寿司酢浸透工程において添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0140】
この実施例9で得られた冷凍シャリ玉を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍シャリ玉から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.9)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例10】
【0141】
実施例7の場合と同一の条件で同一の工程を経て得られた加工酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、成形し、得られたシャリ玉と、魚介類等の寿司ネタ、海苔、ワサビ、油揚げ等の寿司材料とから寿司を調製し、この寿司を庫内温度−60℃の冷凍庫に入れ、約120分間静置し、凍結することにより(寿司調製凍結工程)、冷凍寿司(加工酢飯食品)を得た。
【0142】
なお、寿司酢の添加量ついては、実施例7の場合と同様に算出し、原料生米の重量に対する外割で約28重量%に相当する量の寿司酢を本糊化寿司酢浸透工程において添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0143】
この実施例10で得られた冷凍寿司を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍寿司から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.10)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【0144】
次に、上記実施例1〜実施例10に対する比較例として行った実施例11〜実施例14について説明する。
【実施例11】
【0145】
まず、精白されたうるち米を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、水とともに炊飯釜に入れ、これを炊いて、通常の米飯を調製した。
【0146】
この実施例11で得られた通常米飯(従来の米飯)を減圧冷却により約20℃まで冷却し、減圧冷却後の通常米飯を庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した後、冷蔵庫から取り出し、取り出された通常米飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.11)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、当該試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例12】
【0147】
まず、精白されたうるち米を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、水とともに炊飯釜に入れ、これを炊いて、通常の米飯を調製し、この通常米飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより、通常の冷凍飯を得た。
【0148】
この実施例12で得られた通常の冷凍飯を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.12)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例13】
【0149】
まず、精白されたうるち米を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、水とともに炊飯釜に入れ、これを炊いて、通常の米飯を調製し、この通常米飯に寿司酢を加え、通常米飯全体に寿司酢を馴染ませることにより、通常の酢飯を得た。
【0150】
なお、本実施例における通常米飯の水分量は、内割で約64重量%であった。この通常米飯に対して、外割で約12重量%の寿司酢を添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0151】
この実施例13で得られた通常の酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却し、減圧冷却後の通常酢飯を庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した後、冷蔵庫から取り出し、取り出された通常酢飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.13)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、当該試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例14】
【0152】
まず、精白されたうるち米を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、水とともに炊飯釜に入れ、これを炊いて、通常の米飯を調製し、この通常米飯に寿司酢を加え、通常米飯全体に寿司酢を馴染ませることにより、酢飯を調製し、この酢飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより、通常の冷凍酢飯を得た。
【0153】
なお、本実施例における通常米飯の水分量は、内割で約64重量%であった。この通常米飯に対して、外割で約12重量%の寿司酢を添加した。また、寿司酢としては、食酢:砂糖:食塩=4:3:1の重量比で混合したものを用いた。
【0154】
この実施例14で得られた通常の冷凍酢飯を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍酢飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.14)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例15】
【0155】
まず、精白されたうるち米を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、この水切りしたうるち米と、水洗前のうるち米重量に対する外割で約1重量%に相当する量のトレハロースと、水とを炊飯釜に入れ、これを炊いて、トレハロース添加飯を調製した。
【0156】
この実施例15で得られたトレハロース添加飯を減圧冷却により約20℃まで冷却し、減圧冷却後のトレハロース添加飯を庫内温度約10℃の冷蔵庫に入れ、約48時間放置した後、冷蔵庫から取り出し、取り出されたトレハロース添加飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.15)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、当該試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例1の場合と同一の方法とした。
【実施例16】
【0157】
まず、精白されたうるち米を水洗し、この水洗済みのうるち米を水中に約90分間浸漬した後、水中から取り出し、一旦水切りした後、この水切りしたうるち米と、水洗前のうるち米重量に対する外割で約1重量%に相当する量のトレハロースと、水とを炊飯釜に入れ、これを炊いて、トレハロース添加飯を調製し、このトレハロース添加飯を減圧冷却により約20℃まで冷却した後、庫内温度約−60℃の冷凍庫内に入れ、約120分間放置し、凍結することにより、冷凍トレハロース添加飯を得た。
【0158】
この実施例16で得られた冷凍トレハロース添加飯を約8℃の温度下にて約12時間放置し解凍した後、解凍直後の冷凍トレハロース添加飯から、検査用試料として、米飯塊(米飯粒の集合体)を採取し、当該試料(試料No.16)について、5人の検査員により、指先での押圧及び実食による官能検査を行い、試料の固さについて評価した。その結果を下記表1に示す。なお、評価方法については、実施例の場合と同一の方法とした。
【0159】
【表1】
上記実施例から、以下のことが確認された。つまり、加工米飯(実施例1)は、通常の米飯(実施例11)、並びにトレハロースが添加された米飯(実施例15)に比べて、冷蔵環境下での耐老化性に優れていることが確認された(試料No.1、試料No.11、試料No.15を参照)。
【0160】
また、加工米飯から製造された酢飯(実施例3)は、加工米飯(実施例1)よりも更に耐老化性に優れていることが確認された(試料No.3、試料No.1を参照)。
【0161】
また、加工米飯、並びに加工米飯から製造された加工米飯食品は、一旦凍結した後、冷蔵環境下で解凍しても(実施例2、実施例4、実施例5、実施例6)、通常の米飯を一旦凍結して、冷蔵環境下で解凍した場合(実施例12)、通常の酢飯を一旦凍結して、冷蔵環境下で解凍した場合(実施例14)、並びにトレハロースが添加された米飯を一旦凍結した後、冷蔵環境下で解凍した場合(実施例16)に比べて、老化の進行の程度が弱く、冷蔵環境下での耐老化性に優れていることが確認された。
【0162】
また、予備糊化工程において、炊飯釜を用いた通常の炊飯方法とは異なる方法で、原料生米に含有の澱粉を糊化させた場合(実施例5、実施例6)であっても、老化抑制がなされた加工米飯食品を得ることができ、また、予備糊化工程において、原料生米に含有の澱粉の多くが糊化されなかった場合(実施例6)であっても、本糊化工程において、老化澱粉を再糊化させることにより、老化抑制された加工米飯を得ることができ、この加工米飯から耐老化性に優れた加工米飯食品を製造できることが確認された。
【0163】
また、本発明の加工酢飯(実施例7)は、通常の米飯(実施例11)、通常の酢飯(実施例13)、並びにトレハロースが添加された米飯(実施例15)に比べて、冷蔵環境下での耐老化性に優れていることが確認された(試料No.7、試料No.11、試料No.13、試料No.15を参照)。
【0164】
また、加工酢飯(実施例7)は、通常の酢飯(実施例13)、加工米飯から製造された酢飯(実施例3)に比べても、更に冷蔵環境下での耐老化性に優れていることが確認された(試料No.7、試料No.13、試料No.3を参照)。
【0165】
また、加工酢飯、並びに加工酢飯から製造された加工酢飯食品は、一旦凍結した後、冷蔵環境下で解凍しても(実施例8、実施例9、実施例10)、通常の米飯を一旦凍結して、冷蔵環境下で解凍した場合(実施例12)、通常の酢飯を一旦凍結して、冷蔵環境下で解凍した場合(実施例14)、並びにトレハロースが添加された米飯を一旦凍結した後、冷蔵環境下で解凍した場合(実施例16)に比べて、老化の進行の程度が弱く、冷蔵環境下での耐老化性に優れていることが確認された。
【0166】
以上のように、本発明の実施例1における加工米飯の製造方法によれば、約0℃〜約10℃の冷蔵環境下で保存しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない加工米飯を得ることができ、例えば、この加工米飯により、おにぎり等を作れば、冷蔵保存状態で市場を流通させても、老化が進行せず、柔らかな食感を維持したおにぎり等を提供することができる。また、トレハロース等の食品添加物を含有していないので、通常の米飯と食味が変わらず、また、一度に多くを食しても、消化不良を誘発することもない。また、この加工米飯を利用することにより、冷蔵環境下で解凍しても食感が劣化しない冷凍寿司等の様々な加工米飯食品を製造し供給することができる。
【0167】
また、本発明の実施例2における上記冷凍飯(加工米飯食品)の製造方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、食感が劣化しない冷凍飯(加工米飯食品)を得ることができ、例えば、他の工場で後加工を行う場合には、冷凍飯を他の工場等に輸送することにより、輸送中の腐敗の進行を防止することができ、輸送中に冷蔵環境下での解凍、または、自然解凍すれば、工場到着後に直ぐに使えて、しかも、食感が劣化していないので、解凍した冷凍飯から、品質の良い弁当、おにぎり等を製造することができる。
【0168】
また、本発明の実施例3における上記酢飯(加工米飯食品)の製造方法によれば、上記加工米飯よりも更に耐老化性に優れた酢飯(加工米飯食品)を得ることができ、例えば、この酢飯により、店頭販売用の寿司を作れば、冷蔵保存状態で市場を流通させても、作りたての酢飯と略同一の食感を維持した寿司を提供することができる。
【0169】
また、通常の酢飯を凍結した後、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍すると、老化が進行し、食感が損なわれ、また、解凍時の老化を防止するためにマイクロ波等により急速加熱すると、寿司酢が揮発し、食味が損なわれてしまうが、本発明の実施例4における上記冷凍酢飯(加工米飯食品)の製造方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、食感が劣化しない冷凍酢飯(加工米飯食品)を得ることができ、例えば、この冷凍酢飯を飲食店に供給し、そこで冷蔵環境下での解凍を行い、寿司ネタ等と合わせることにより、食感及び食味が通常の寿司と同等の寿司を効率良く提供して、コスト低減を図ることができる。
【0170】
また、通常のシャリ玉を凍結した後、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍すると、老化が進行し、食感が損なわれ、また、解凍時の老化を防止するためにマイクロ波等により急速加熱すると、寿司酢が揮発し、食味が損なわれてしまうが、本発明の実施例5における上記冷凍シャリ玉(加工米飯食品)の製造方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、食感が劣化しない冷凍シャリ玉(加工米飯食品)を得ることができ、例えば、この冷凍シャリ玉を飲食店に供給し、そこで冷蔵環境下での解凍を行い、寿司ネタ等と合わせることにより、食感及び食味が通常の寿司と同等の寿司を効率良く提供して、コスト低減を図ることができる。また、冷凍シャリ玉を家庭用として市場に流通させれば、家庭で冷凍シャリ玉を解凍して、寿司ネタ等と合わせることにより、家庭で簡単に美味しい握り寿司等の寿司を作ることができる。
【0171】
また、通常の寿司を凍結した後、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍すると、酢飯の老化が進行し、食感が損なわれ、また、酢飯の老化を防止するためにマイクロ波加熱等により急速加熱すると、寿司酢が揮発したり、生の魚介類である寿司ネタが加熱されて、食味が損なわれてしまうが、本発明の実施例6における上記冷凍寿司(加工米飯食品)の製造方法によれば、寿司ネタの食味が損なわれてしまわないように冷蔵環境下での解凍を行っても、酢飯の食感が劣化しない冷凍寿司(加工米飯食品)を得ることができ、例えば、この冷凍寿司を飲食店に供給し、そこで冷蔵環境下での解凍を行うことにより、食感及び食味が通常の寿司と同等の寿司を効率良く提供して、コスト低減を図ることができる。
【0172】
また、この冷凍寿司は、冷凍食品であるので、長期保存が可能であり、この冷凍寿司を遠隔地に輸送して、市場拡大を図ることもできる。
【0173】
また、本発明の実施例7における加工酢飯の製造方法によれば、約0℃〜約10℃の冷蔵環境下で保存しても、含有澱粉の老化があまり進行せず食感が劣化しない加工酢飯を得ることができ、この加工酢飯は、上記加工米飯から製造された酢飯(加工米飯食品)よりも、更に耐老化性に優れており、この加工酢飯を利用することにより、冷蔵環境下で解凍しても食感が劣化しない冷凍寿司等の加工酢飯食品を製造し供給することができる。また、トレハロース等の食品添加物を含有していないので、通常の酢飯と食味が変わらず、また、一度に多くを食しても、消化不良を誘発することもない。
【0174】
また、本発明の実施例8における上記冷凍酢飯(加工酢飯食品)の製造方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、食感が劣化しない冷凍酢飯(加工酢飯食品)を得ることができ、この冷凍酢飯は、上記加工米飯から製造された冷凍酢飯よりも、更に耐老化性に優れており、例えば、この冷凍酢飯を飲食店に供給し、そこで冷蔵環境下での解凍を行い、寿司ネタ等と合わせることにより、食感及び食味が通常の寿司と同等の寿司を効率良く提供して、コストの低減を図ることができる。
【0175】
また、本発明の実施例9における上記冷凍シャリ玉(加工酢飯食品)の製造方法によれば、冷蔵環境下で解凍したり、自然解凍しても、食感が劣化しない冷凍シャリ玉(加工酢飯食品)を得ることができ、この冷凍シャリ玉は、上記加工米飯から製造された冷凍シャリ玉よりも、更に耐老化性に優れており、例えば、この冷凍シャリ玉を飲食店に供給し、そこで冷蔵環境下での解凍を行い、寿司ネタ等と合わせることにより、食感及び食味が通常の寿司と同等の寿司を効率良く提供して、コストの低減を図ることができる。また、冷凍シャリ玉を家庭用として市場に流通させれば、家庭で冷凍シャリ玉を解凍して、寿司ネタ等と合わせることにより、家庭で簡単に美味しい握り寿司等の寿司を作ることができる
また、本発明の実施例10における上記冷凍寿司(加工酢飯食品)の製造方法によれば、冷蔵環境下での解凍を行っても、酢飯の食感が劣化しない冷凍寿司(加工酢飯食品)を得ることができ、この冷凍寿司は、上記加工米飯から製造された冷凍寿司よりも、更に耐老化性に優れており、例えば、この冷凍寿司を飲食店に供給し、そこで冷蔵環境下での解凍を行うことにより、食感及び食味が通常の寿司と同等の寿司を効率良く提供して、コストの低減を図ることがでる。また、この冷凍寿司は、冷凍食品であるので、長期保存が可能であり、この冷凍寿司を遠隔地に輸送し、市場拡大を図ることもできる。
【0176】
なお、上記実施例では、食品添加物として、米飯の老化を抑制可能な米飯改良剤、例えば、トレハロース、アルギン酸等の糖類、アミラーゼ等の酵素、加工澱粉、不凍タンパク質等を全く添加しない場合について説明したが、本発明の加工米飯、本発明の加工米飯食品、本発明の加工酢飯、本発明の加工酢飯食品のそれぞれに米飯改良剤を添加してもよく、その場合には、上記のように、米飯改良剤を添加しなくても老化防止を図ることができるので、通常の米飯に米飯改良剤を添加する場合よりも少ない添加量でよく、米飯改良剤の使用量を低く抑えることができるため、米飯改良剤による弊害、例えば、食味の変化や消化不良の誘発を十分抑制することができる。