特許第6516170号(P6516170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6516170改良型非絶縁変圧器を用いたトンネル内のファン駆動用電源回路システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516170
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】改良型非絶縁変圧器を用いたトンネル内のファン駆動用電源回路システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20190513BHJP
   E21F 1/00 20060101ALI20190513BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   H02M7/06 M
   E21F1/00 A
   H01F30/12 T
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-174135(P2017-174135)
(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公開番号】特開2019-50685(P2019-50685A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】501170080
【氏名又は名称】株式会社創発システム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】川畑 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 茂
(72)【発明者】
【氏名】村上 健一
(72)【発明者】
【氏名】古井 玲央奈
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−323045(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0135126(US,A1)
【文献】 実開平07−008500(JP,U)
【文献】 特開平03−032366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
E21F 1/00
H01F 30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の気流を制御するファン装置をインバータ駆動するファン駆動用電源回路システムにおいて、
3相鉄芯のそれぞれの鉄芯に巻かれデルタ巻線を構成するそれぞれの1次コイルの一端に、入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルおよびその位相を所定角度進ませる位相進み用コイルを2次コイルとして付加するとともに、前記1次コイルの他端に、前記入力電圧を前記所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルおよびその位相を前記所定角度遅らせる位相遅れ用コイルを2次コイルとして付加した構成とし、入力側の3相電圧を前記所定電圧分高くかつ前記所定角度の2倍の位相差を持つ3相2組の6相電圧に変換して出力する改良型非絶縁多相化変圧器を含むものであることを特徴とするファン駆動用電源回路システム。
【請求項2】
前記改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが、3相交流リアクトル、ダイオード3相ブリッジ整流回路を介してインバータ装置に印加されており、2台の前記インバータ装置を制御することができる組み合わせ12相整流回路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のファン駆動用電源回路システム。
【請求項3】
前記改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが、同相リアクトル、3相交流リアクトル、ダイオード3相ブリッジ整流回路に接続され、これら二つの前記ダイオード3相ブリッジ整流回路の直流出力を並列接続して1台のインバータ装置に供給されており、1台の前記インバータ装置を制御することができる単機12相整流回路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のファン駆動用電源回路システム。
【請求項4】
前記同相リアクトルに代えて、前記ダイオード3相ブリッジ整流回路の出力側と前記インバータ装置の間に直流リアクトルを設けたことを特徴とする請求項3に記載のファン駆動用電源回路システム。
【請求項5】
上位層に1個の前記改良型非絶縁多相化変圧器が配置され、下位層に第1群と第2群の前記改良型非絶縁多相化変圧器が配置され、前記第1群および前記第2群にはそれぞれ1個または複数個の前記改良型非絶縁多相化変圧器が配置されており、前記改良型非絶縁多相化変圧器が上下2層に階層化した構成となっており、
前記下位層の前記第1群および前記第2群のそれぞれの前記改良型非絶縁多相化変圧器において、2台のインバータ装置を制御することができる組み合わせ12相整流回路、1台のインバータ装置を制御することができる単機12相整流回路のいずれかまたはそれらの組み合わせが構成されており、
前記組み合わせ12相整流回路は、前記改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが、3相交流リアクトル、ダイオード3相ブリッジ整流回路を介してインバータ装置に印加されており、2台の前記インバータ装置を制御するものであり、
前記単機12相整流回路は、前記改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが、同相リアクトル、3相交流リアクトル、ダイオード3相ブリッジ整流回路に接続され、これら二つの前記ダイオード3相ブリッジ整流回路の直流出力を並列接続して1台のインバータ装置に供給されており、1台の前記インバータ装置を制御するものであり、
24相整流制御を行う24相整流回路であることを特徴とする請求項1に記載のファン駆動用電源回路システム。
【請求項6】
前記24相整流回路に含まれる、前記第1群における前記組み合わせ12相整流回路がn台であり、前記単機12相整流回路がm台であり、
前記24相整流回路に含まれる、前記第2群における前記組み合わせ12相整流回路がn台であり、前記単機12相整流回路がm台であり、
前記24相整流回路により制御される前記インバータ装置の数が(2n+m+2n+m)であることを特徴とする請求項5に記載のファン駆動用電源回路システム。
【請求項7】
前記24相整流回路における前記上位層側の前記改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の電圧値と位相、および、前記下位層側の前記改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の電圧値と位相を調整することにより、前記上位層側または前記下位層側のいずれか一方で5次と7次の高調波を抑制し、前記上位層側または前記下位層側の他方で11次と13次の高調波を抑制することを特徴とする請求項5または6に記載のファン駆動用電源回路システム。
【請求項8】
前記24相整流回路における前記上位層側の前記改良型非絶縁多相化変圧器において、前記位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を7.5度進ませるものであり、前記位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を7.5度遅らせるものであり、
前記24相整流回路における前記下位層側の前記改良型非絶縁多相化変圧器において、前記位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を15度進ませるものであり、前記位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を15度遅らせるものであることを特徴とする請求項7に記載のファン駆動用電源回路システム。
【請求項9】
前記24相整流回路における前記上位層側の前記改良型非絶縁多相化変圧器において、前記位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を15度進ませるものであり、前記位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を15度遅らせるものであり、
前記24相整流回路における前記下位層側の前記改良型非絶縁多相化変圧器において、前記位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を7.5度進ませるものであり、前記位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、前記1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を7.5度遅らせるものであることを特徴とする請求項7に記載のファン駆動用電源回路システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路トンネルや地下鉄トンネル内に設置されるジェットファンや送排風ファンなどのファン装置駆動用のインバータ装置の制御に用いる変圧器として非絶縁変圧器を用いた装置を採用することでコスト低減と小形化を実現したファン駆動用電源回路システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルや地下鉄トンネルにおいて、トンネル内の汚染物質を排気するには自然換気力や交通換気力による換気では不十分であり、トンネル内に設置された「縦流換気方式」のジェットファンや「集中排気式換気方式」の送排風ファンを用いた強制換気が行われている。
「縦流換気方式」とはトンネル断面全体を換気ダクトとして利用する方式の換気方式であり、用いる換気装置としては、道路トンネル内の空気をトンネル外に押し出すジェットファンがあり、適切にこれらを配設してトンネルの入口から出口に向かう空気流を形成して排気する。
「集中排気式換気方式」とはトンネル内の空気を縦穴から直接大気へ放出する換気方式であり、トンネル内の汚染物質を放出するとともにトンネル内の気圧を調整する。用いる換気装置としては、大型の軸流ファン、道路トンネル内の空気を浄化する電気集塵機などがあり、トンネル全体の中では比較的出口付近の縦穴に設けられ、縦穴から大気へ抜け出る空気流を形成して排気する。
【0003】
従来のジェットファンモータや送排風ファンのモータは、起動電流が定格電流の数倍の誘導モータである。トンネル用のジェットファンモータは通常20kWから50kW程度、4極から8極、400V系の誘導電動機で駆動されるものが多い。
【0004】
ジェットファンは、短いトンネルであればトンネル入口か出口の1カ所に配設する構成例もあるが、長距離トンネルであれば、複数台のジェットファンを複数個所に配設することとなる。ここで、従来の縦流換気方式のジェットファンを用いた換気制御は、台数ごとにオンオフを切り替えて運転する台数制御が主流の時期があったが、近年は、インバータを用いた制御が注目されている。
【0005】
インバータを用いてジェットファンや送排風ファンを制御する場合、一般的には図11に示すような回路構成が考えられる。
図11に示す回路構成は、12相ダイオード整流回路と呼ばれる。3相電源を変圧器により6相化し、ダイオードを用いてそれら入力を整流することで12相電源となっている。図11に示すような12相ダイオード整流回路は、高効率、小形経済的で、電源の高調波電流が少ないという利点があり、優れた整流回路である。
図11に示す12相ダイオード整流回路10の回路構成は、商用電源20から絶縁変圧器30を通って2系統に分かれ、交流リアクター40を経て、整流器50で整流されたのち、インバータ装置60が並列接続されている。
なお、絶縁変圧器30は、一次側が3相のデルタ接続、二次側が3相のデルタ・3相のスター接続となっており、出力が30度の位相差を持つ2組の3相電源となっている。
図11に示す12相ダイオード整流回路には、それぞれ同電圧の30度の位相差を持つ2組の3相電源を供給する必要がある。
【0006】
なお、ジェットファンのインバータに対して外部の商用電源20から供給される電圧は400V系であり、ジェットファン駆動用の電源装置において、6600Vから400Vなどへの降圧用の変圧器は必要ではなく、400V系のまま使用することができるという環境にある。
【0007】
【特許文献1】特許第5300775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の一般的なジェットファン駆動用のインバータ装置システムには以下のような問題がある。
第1はコストとサイズの問題である。
図11に示す12相ダイオード整流回路10における絶縁変圧器30において、その容量は通過電力の100%となるので、6600V→400Vの降圧用の電圧変換を要する場合は価値があるが、上記したように、トンネルに対して外部の商用電源20から供給される電圧は400V系であり、同じ400V系で駆動するジェットファン駆動用の電源変圧器において、高価な絶縁変圧器30を使用することは不経済である。
ジェットファンの駆動用の電源として所望の電圧が、外部の商用電源20の電圧と同じ例えば400V系である場合、比較的安価で小形である非絶縁変圧器を用いて相互に30度の位相差関係を持つ3相2系統の電源を得ることができれば、絶縁変圧器を用いた従来の一般的なジェットファン駆動用電源回路システムに代えて、非絶縁変圧器を用いたジェットファン駆動用電源回路システムを用いることができ、コスト低減、装置の小形化を図ることができる。
もし、非絶縁変圧器を用いた場合、絶縁変圧器を用いた場合に比べて、その自己容量が小さくなる。
【0009】
次に、第2の問題は、絶縁変圧器の進み側と遅れ側の電圧の1%以下のわずかな差異でも電流分担に20〜30%ぐらいの大きなアンバランスが生じる問題である。
絶縁変圧器の2次側における、スター結線の誘起電圧は、デルタ結線の誘起電圧の1/√3であり、二次側のデルタ結線の誘起電圧とスター結線の誘起電圧の比は、1:1.732となるのが理想的である。
しかし、絶縁変圧器の巻き数は整数値しかあり得ないので、デルタ結線とスター結線のコイル電圧の比1.732を実現することは困難である。特に数十kVA以上の絶縁変圧器ではターン数が30から50ターン程度以下になるので、デルタ結線とスター結線の電圧を同じにすることは極めて困難である。如何に近しい比率となるように巻き数比を調整しても、絶縁変圧器の巻き数比は整数しかあり得ないので、1:1.732の比が得られず、進み側と遅れ側の電圧が微妙に異なってしまう(0.5〜1%程度の電圧偏差が生じる)。そのため、電流分担に20%〜30%の大きなアンバランスが生じてしまう。
【0010】
また、第3の問題は、第5、第7高調波、さらに第11次、第13次高調波の影響が大きいという問題である。
上記の第2の問題で述べたように、絶縁変圧器の巻き数は整数しかあり得ないので、整数比以外の比が得られず、絶縁変圧器の出力電流において、上記のように電流分担に20%〜30%の大きなアンバランスが生じ、第5、第7高調波が残存してしまい、同様に、第11次、第13次高調波も残存してしまい、それらの影響が大きく、電流波形の歪みが大きくなってしまう。
【0011】
ここで、本発明の発明者らは、絶縁変圧器に代えて、改良型の非絶縁多相化変圧器を用いることを想定してみた。
まず、非絶縁変圧器は、絶縁変圧器よりも安価で小形である。また、非絶縁変圧器は、出力電圧を多相化でき、それら多相化電圧の位相差を調整できるため、高調波の影響に関しても上記で前提としていた絶縁変圧器に代えて、非絶縁変圧器を用いれば解消できる。
非絶縁変圧器のこれらメリットを活かして、トンネル内の気流を制御するファン装置をインバータ駆動するファン駆動用電源回路システムに適用することとし、装置の小型化、電流分担のバランスに加え、第5、第7高調波、さらに第11次、第13次高調波を有効に抑制するシステムを発明した。
また、非絶縁変圧器は、非絶縁であるため、非絶縁変圧器を介してダイオード3相ブリッジ整流回路で発生する電源周波数の3倍の周波数成分の循環電流が流れてしまうと、無駄な同相電流が流れるおそれがあるが、それに対する対策も検討した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明はトンネル内の気流を制御するファン装置をインバータ駆動するファン駆動用電源回路システムにおいて、従来技術の絶縁変圧器に代えて改良型の非絶縁多相化変圧器を用いるものである。改良型の非絶縁多相化変圧器は、3相鉄芯のそれぞれの鉄芯に巻かれデルタ巻線を構成するそれぞれの1次コイルの一端に、前記入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルおよびその位相を所定角度進ませる位相進み用コイルを2次コイルとして付加するとともに、前記1次コイルの他端に、前記入力電圧を前記所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルおよびその位相を前記所定角度遅らせる位相遅れ用コイルを2次コイルとして付加した構成とし、入力側の3相電圧を前記所定電圧分高くかつ前記所定角度の2倍の位相差を持つ3相2組の6相電圧に変換して出力するものである。
改良型非絶縁多相化変圧器は、コイルの巻き数比を自在に調整できるため、出力電圧を昇圧する昇圧コイルと出力電圧において位相差を自在に調整する位相差設定用コイルを調整することにより、出力電圧の大きさと位相差を調整することができる。
【0013】
この改良型非絶縁多相化変圧器を用いて12相整流回路を構成することができる。
例えば、改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが、3相交流リアクトル、ダイオード3相ブリッジ整流回路を介してインバータ装置に印加されており、2台の前記インバータ装置を制御することができる“組み合わせ12相整流回路”を構成することができる。
【0014】
また、例えば、改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが、同相リアクトル、3相交流リアクトル、ダイオード3相ブリッジ整流回路に接続され、これら二つの前記ダイオード3相ブリッジ整流回路の直流出力を並列接続して1台のインバータ装置に供給されており、1台の前記インバータ装置を制御することができる“単機12相整流回路”を構成することができる。
なお、“単機12相整流回路”の場合、同相リアクトルに代えて、ダイオード3相ブリッジ整流回路の出力側とインバータ装置の間に直流リアクトルを設けた構成とすることもできる。
【0015】
次に、この改良型非絶縁多相化変圧器を2層化することにより24相整流回路を構成することもできる。
例えば、上位層に1個の改良型非絶縁多相化変圧器が配置され、下位層に第1群と第2群の改良型非絶縁多相化変圧器が配置され、第1群および第2群にはそれぞれ1個または複数個の改良型非絶縁多相化変圧器が配置されており、改良型非絶縁多相化変圧器が上下2層に階層化した構成とする。ここで、下位層の第1群および第2群のそれぞれの改良型非絶縁多相化変圧器において、2台のインバータ装置を制御することができる“組み合わせ12相整流回路”、1台のインバータ装置を制御することができる“単機12相整流回路”のいずれかまたはそれらの組み合わせで構成とすることにより、24相整流制御を行う24相整流回路とすることができる。
ここで、上記24相整流回路に含まれる、第1群における“組み合わせ12相整流回路”がn台であり、“単機12相整流回路”がm台であり、第2群における“組み合わせ12相整流回路”がn台であり、“単機12相整流回路”がm台であるとすると、24相整流回路により制御されるインバータ装置の数は(2n+m+2n+m)台となる。
【0016】
ここで、24相整流回路における上位層側の改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の電圧値と位相、および、下位層側の改良型非絶縁多相化変圧器の3相2組の電圧値と位相を調整することにより、上位層側または下位層側のいずれか一方で5次と7次の高調波を抑制し、上位層側または下位層側の他方で11次と13次の高調波を抑制することができる。
【0017】
例えば、第5、第7高調波の抑制は、30度の位相差を持つ2組の3相電源を生成することにより解消することができる。また、第11、第13高調波の抑制は、改良型非絶縁多相化変圧器を用いて15度の位相差を持つ2組の3相電源を生成することにより解消することができる。つまり、改良型非絶縁多相化変圧器を複数用いて階層化した整流回路を構成し、30度の位相差を持つ2組の3相電圧の生成要素と、15度の位相差を持つ2組の3相電圧を生成する要素を組み合わせれば良い。
【0018】
一例としては、上位層側で11次と13次の高調波を抑制し、下位層側で5次と7次の高調波を抑制する構成がある。
つまり、24相整流回路における前記上位層側の前記改良型非絶縁多相化変圧器において、位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと2次コイルの巻き数比が位相を7.5度進ませるものであり、位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を7.5度遅らせるものであり、24相整流回路における下位層側の改良型非絶縁多相化変圧器において、位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと2次コイルの巻き数比が位相を15度進ませるものであり、位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を15度遅らせるよう調整したものである。
【0019】
他の例としては、上位層側で5次と7次の高調波を抑制し、下位層側で11次と13次の高調波を抑制する構成がある。
つまり、24相整流回路における上位層側の改良型非絶縁多相化変圧器において、位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと2次コイルの巻き数比が位相を15度進ませるものであり、位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと2次コイルの巻き数比が位相を15度遅らせるものであり、24相整流回路における下位層側の改良型非絶縁多相化変圧器において、位相進み用コイルが1次コイルに対して位相が進む方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を7.5度進ませるものであり、位相遅れ用コイルが1次コイルに対して位相が遅れる方向に設けた2次コイルであり、1次コイルと前記2次コイルの巻き数比が位相を7.5度遅らせるよう調整したものである。
【発明の効果】
【0020】
上記構成により、本発明の改良型非絶縁多相化変圧器およびそれを用いたファン駆動用電源回路システムは、2組の3相電源に対して、昇圧コイルによる昇圧、位相差設定用コイルによる位相差が自在に設定でき、進み側と遅れ側の電圧の位相差と昇圧比を自由に設定することができる。
本発明の改良型非絶縁多相化変圧器により、30度の位相差、15度の位相差を持つものをそれぞれ構成することができ、また、それらを2階層化した24相整流回路としてファン駆動用電源回路システムとして提供すれば、出力電流に含まれ得る第5、第7高調波、第11次、第13次高調波を有効に抑制することができる。
また、本発明のファン駆動用電源回路システムにおいて、同相リアクトルや直流リアクトルを設けておけば、改良型非絶縁多相化変圧器を経由して循環する同相電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を中心とした構成例を示す図である。
図2】本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を用いたファン駆動用電源回路システム100を組み合わせ12相整流回路100−1とした構成例を示す図である。
図3】本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を用いたファン駆動用電源回路システム100を単機12相整流回路100−2とした構成例を示す図である。
図4】組み合わせ12相整流回路100−1、単機12相整流回路100−2により得られる電力波形を示す図である。
図5】改良型非絶縁多相化変圧器120を2階層化したファン駆動用電源回路システム100を24相整流回路100−3とした構成例を示す図である。
図6】24相整流回路100−3により得られる電力波形を示す図である。
図7】24相整流制御回路100−3の回路構成(その1)を示す図である。
図8】24相整流制御回路100−3の回路構成(その2)を示す図である。
図9】本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を用いて30度の位相差(進み位相15度、遅れ位相15度)を生成する様子を示す図である。
図10】本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を用いて15度の位相差(進み位相7.5度、遅れ位相7.5度)を生成する様子を示す図である。
図11】従来のインバータを用いてジェットファンを制御する場合の一般的な回路構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明のファン駆動用電源回路システムの実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
本発明のファン駆動用電源回路システム100の回路構成を説明する。
本発明のファン駆動用電源回路システム100は、改良型非絶縁多相化変圧器120を含んだ構成となっている。
まず、改良型非絶縁多相化変圧器120について説明する。
【0024】
[改良型非絶縁多相化変圧器120の基本構成]
図1は、本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を中心とした回路構成を示す図である。図1の右側にはそれを簡単に図示したシンボルが示されている。本発明では改良型非絶縁多相化変圧器120を図1右に図示したシンボルで描くことがある。
図1に示すように、入力電源として3相商用電源が用いられ、3つの入力線がそれぞれ、改良型非絶縁多相化変圧器120のU相端子,V相端子,W相端子に接続されている。
【0025】
ここで、改良型非絶縁多相化変圧器120には、3相鉄芯のそれぞれの鉄芯に巻かれ、デルタ巻線を構成している一次コイルとして、U相−V相間のコイル121、V相−W相間のコイル122、W相−U相間のコイル123が設けられている。
それら1次コイルの両端に対してそれぞれ2次コイルが設けられているが、2次コイルに昇圧するコイル(昇圧コイル)と位相を変化させるコイル(位相差設定用コイル:位相進み用コイル、位相遅れ用コイル)の2種類のコイルを設けたことが特徴となっている。このように、非絶縁多相化変圧器として2次側の出力部に昇圧コイルと位相差設定用コイルの2種類のコイルを設けて2次出力電圧を調整せしめるような非絶縁多相化変圧器は従来にはなく、本発明独自の構成部材となっている。
【0026】
以下、2次側コイルの出力部に設けた昇圧コイルと位相差設定用コイルの2種類のコイルについて説明する。
U相の2次側コイルのうち、昇圧用コイル124U1は、1次側からの入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルである。また、位相進み用コイル125U1は、1次側からの入力電圧の位相を所定角度θ進ませる位相進み用コイルである。
一方、U相の2次側コイルのうち、昇圧用コイル124U2は、1次側からの入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルである。また、位相遅れ用コイル125U2は、1次側からの入力電圧の位相を所定角度θ遅らせる位相進み用コイルである。
このように、位相進み用コイル125U1の出力端子と位相遅れ用コイル125U2の出力端子がU相から2次側への2つの出力となっており、それら出力電圧は略同じ大きさであり、位相差が2θとなっている。
【0027】
同様に、V相の2次側コイルのうち、昇圧用コイル124V1は、1次側からの入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルである。位相進み用コイル125V1は、1次側からの入力電圧の位相を所定角度θ進ませる位相進み用コイルである。
一方、V相の2次側コイルのうち、昇圧用コイル124V2は、1次側からの入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルである。位相遅れ用コイル125V2は、1次側からの入力電圧の位相を所定角度θ遅らせる位相進み用コイルである。
このように、位相進み用コイル125V1の出力端子と位相遅れ用コイル125V2の出力端子がV相からの2つの出力となっており、それら出力電圧は略同じ大きさであり、位相差が2θとなっている。
【0028】
また同様に、W相の2次側コイルのうち、昇圧用コイル124W1は、1次側からの入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルである。位相進み用コイル125W1は、1次側からの入力電圧の位相を所定角度θ進ませる位相進み用コイルである。
一方、W相の2次側コイルのうち、昇圧用コイル124W2は、1次側からの入力電圧を所定電圧分高く昇圧するための昇圧用コイルである。位相遅れ用コイル125W2は、1次側からの入力電圧の位相を所定角度θ遅らせる位相進み用コイルである。
このように、位相進み用コイル125W1の出力端子と位相遅れ用コイル125W2の出力端子がW相からの2つの出力となっており、それら出力電圧は略同じ大きさであり、位相差が2θとなっている。
【0029】
以上まとめると、改良型非絶縁多相化変圧器120は、入力側の3相電圧を所定電圧分高くかつ所定角度θの2倍の位相差2θを持つ3相2組の6相電圧に変換して出力する改良型非絶縁多相化変圧器となっている。ここで、相間コイルに対する昇圧用コイルの大きさ、位相進み用コイルの大きさ、位相遅れ用コイルの大きさにより、様々なバリエーションにて、昇圧電圧、位相差θを調整することができる。この調整の具体例については後述する。
【0030】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた12相整流回路、24相整流回路の構成]
上記したように、改良型非絶縁多相化変圧器120によって入力側の3相電圧から所定電圧分高くかつ所定角度θの2倍の位相差2θを持つ3相2組の6相電圧に変換することができる。この改良型非絶縁多相化変圧器120とダイオード3相ブリッジ整流回路130とインバータ装置160を組み合わせることにより5次、7次の高調波を低減する組み合わせ12相整流回路や単機12相整流回路を構成することができ、さらに、改良型非絶縁多相化変圧器120を2階層化することにより、11次、13次の高調波も低減しつつ、さらに多くの複数台のインバータ装置を運転できる24相整流回路を構成することができる。
【0031】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた組み合わせ12相整流回路の構成]
以下、本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を用いたファン駆動用電源回路システム100を12相整流回路とした構成例について述べる。
図2は、本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を用いたファン駆動用電源回路システム100を組み合わせ12相整流回路100−1とした構成例を示す図である。
本発明では、「組み合わせ12相整流回路」とは制御するインバータ装置が2台のものを言う。制御するインバータ装置が1台の場合は「単機12相整流回路」と呼び、それは後述する。
組み合わせ12相整流回路100−1の構成例は、図2に示すように、改良型非絶縁多相化変圧器120の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが3相交流リアクトル150、ダイオード3相ブリッジ整流回路130を介してそれぞれ1台ずつのインバータ装置160に接続する構成となっており、2台のインバータ装置を制御することができる構成となっている。
【0032】
商用電源200は、受電設備としては特に限定されないが、長距離道路トンネル内にはジェットファンのみならず多数の照明設備や防災設備などがあり大容量の電力を必要とするため、電気事業者から直接、特別高圧ないしは高圧で受電し、施設内の装置向けに変圧して電気を供給するものである。後述するように、商用電源200の電圧は、トンネル設備である本発明のファン駆動用電源回路システムに供給される段階で 既に、400V、440V、460V等のいわゆる400V系に降圧されている。
【0033】
インバータ装置160は、整流された直流を、可変周波数・可変電圧の3相交流に変換する装置である。
インバータ装置160の回路の構成例としては様々なものがあり得る。例えば、2レベルインバータ、3レベルインバータのTYPE1、3レベルインバータのTYPE2などがある。
【0034】
改良型非絶縁多相変圧器120は、分かりやすくシンボルを用いて表示されているが、図1に詳述した構成例と同様のものである。
次に、ダイオード3相ブリッジ整流回路130は、交流電圧を直流電圧に変換するものである。この例では、ダイオード3相ブリッジ整流回路130として、進み位相3相電源と遅れ位相3相電源のそれぞれを入力とするダイオード3相ブリッジ整流回路を2つ並列に備えた構成となっている。
【0035】
3相交流リアクトル150は、ダイオード3相ブリッジ整流回路130のダイオード3相ブリッジ整流回路などで生じる高調波を抑制するものである。
なお、3相交流リアクトル150のリアクタンスは限定されないが、例えば、電源電流波形を改善するため3%から5%程度のリアクトルとすることができる。
図2における交流リアクトル150の設置個所はダイオード3相ブリッジ整流回路130の交流側(入力側)に置いた構成である。
つまり、非絶縁多相化変圧器120の進み位相の3相電源出力とダイオード3相ブリッジ整流回路130の間に、進み位相に対応する3相交流リアクトル150の直列接続回路を設け、同様に、非絶縁多相化変圧器120の遅れ位相の3相電源出力とダイオード3相ブリッジ整流回路130の間に、遅れ位相に対応する3相交流リアクトル150の直列接続回路を設けた構成である。
【0036】
以上が、本発明のファン駆動用電源回路システム100として、組み合わせ12相整流回路100−1を構成した場合の例である。
本発明のファン駆動用電源回路システム100は、例えば、トンネルのジェットファンを駆動する用途が想定される。トンネルのジェットファン駆動用の電力は、実際には長距離道路トンネルなど長距離にわたって使用される場合があり、電力が数百mから1000m程度の長尺ケーブルを介してジェットファンに供給される。
【0037】
以上の構成によるファン駆動用電源回路システム100の一例である組み合わせ12相整流回路100−1により得られる電力波形は図4に示すものとなる。図4の電力波形図に示すように、3相2組の6相電圧が改良型非絶縁多相化変圧器120により6相電圧が得られ、ダイオード3相ブリッジ整流回路130により整流され、12相整流電力波形となっている。図2の構成例ではこのダイオード3相ブリッジ整流回路130の12相電圧が2台のインバータ装置160に接続されている。つまり、2台のインバータ装置160が12相整流電圧により運転できる構成となっている。
ここで、後述するように、図2の組み合わせ12相整流回路100−1の昇圧用コイル124、位相差設定用コイル125により出力電圧の大きさと位相差を調整することにより、位相差30度(進み位相15度、遅れ位相15度)や位相差15度(進み位相7.5度、遅れ位相7.5度)を得ることができる。位相の調整については後述するが、第5、第7高調波の抑制は、30度の位相差を持つ2組の3相電圧波形を生成することにより解消でき、第11次、第13次の高調波の抑制は15度の位相差を持つ2組の3相電圧波形生成することにより解消できる。
【0038】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた組み合わせ12相整流回路の構成]
図3は、本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を用いたファン駆動用電源回路システム100を単機12相整流回路100−2とした構成例を示す図である。
単機12相整流回路100−2の構成例は、図3に示すように、改良型非絶縁多相化変圧器120の3相2組の6相出力電圧のそれぞれが、同相リアクトル140、3相交流リアクトル150、ダイオード3相ブリッジ整流回路130に接続され、これら二つの前記ダイオード3相ブリッジ整流回路の直流出力を並列接続して1台のインバータ装置に供給されており、1台のインバータ装置160を制御する構成となっている。
3相交流リアクトル150、ダイオード3相ブリッジ整流回路130は、上記の組み合わせ12相整流回路100−1のものと同様で良いのでここでは説明を省略する。
【0039】
同相リアクトル140は、ダイオード3相ブリッジ整流回路130に発生する電源周波数の3倍の周波数成分の同相電圧により流れる同相電流を低減するものである。
図3における同相リアクトル140と交流リアクトル150の設置個所は、それらをダイオード3相ブリッジ整流回路130の交流側(入力側)に置いた構成である。
つまり、非絶縁多相化変圧器120の進み位相の3相電源出力とダイオード3相ブリッジ整流回路130の間に、進み位相に対応する同相リアクトル140と3相交流リアクトル150の直列接続回路を設け、同様に、非絶縁多相化変圧器120の遅れ位相の3相電源出力とダイオード3相ブリッジ整流回路130の間に、遅れ位相に対応する同相リアクトル140と3相交流リアクトル150の直列接続回路を設けた構成である。
進み位相と遅れ位相の電源間でダイオード3相ブリッジ整流回路130に発生する電源周波数の3倍の周波数成分の同相電圧により非絶縁変圧器を経由して循環電流が流れることを抑制する作用がある。
【0040】
なお、同相リアクトル140の代わりに、直流リアクトルを設ける構成も可能である。なお、直流リアクトルを設置する場合は、ダイオード3相ブリッジ整流回路130の直流側(出力側)となる。このように、同相リアクトル140の代わりに、改良型非絶縁多相化変圧器120の進み位相側のダイオード3相ブリッジ整流回路130の出力側とインバータ装置160の間に、進み位相に対応する直流リアクトルを接続し、改良型非絶縁多相化変圧器120の遅れ位相側のダイオード3相ブリッジ整流回路130の出力側とインバータ装置160の間にも遅れ位相に対応する直流リアクトルを接続する構成で代用することも可能である。直流リアクトルが、進み位相側と遅れ位相側のダイオード3相ブリッジ整流回路130に発生する電源周波数の3倍の周波数成分の同相電圧により非絶縁変圧器を経由して循環電流が流れることを抑制する作用がある。
【0041】
以上の構成による単機12相整流回路100−2により得られる電力波形は図4に示すものとなる。図4の電力波形の図に示すように、3相2組の6相電圧が改良型非絶縁多相化変圧器120により6相電圧が得られ、ダイオード3相ブリッジ整流回路130により整流され、12相整流電力波形となっている。図3の構成例ではこのダイオード3相ブリッジ整流回路130の12相電圧が1台のインバータ装置160に並列接続されている。つまり、1台のインバータ装置160が12相整流電圧により運転できる構成となっている。
【0042】
ここで、後述するように、図3の単機12相整流回路100−2の昇圧用コイル124、位相差設定用コイル125により出力電圧の大きさと位相を調整することにより、位相差30度(進み位相15度、遅れ位相15度)や位相差15度(進み位相7.5度、遅れ位相7.5度)を得ることができる。位相の調整については後述するが、第5、第7高調波の抑制は、30度の位相差を持つ2組の3相電圧波形を生成することにより解消でき、第11次、第13次の高調波の抑制は15度の位相差を持つ2組の3相電圧波形生成することにより解消できる。
【0043】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた24相整流回路]
図5は、本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を2階層化することにより、複数台のインバータ装置を運転できる24相整流回路100−3とした構成例を示す図である。
24相整流回路100−3の構成は、図5に示すように、上位層である第1層に1台の改良型非絶縁多相化変圧器120が設けられ、その第1層の改良型非絶縁多相化変圧器120の3相2組の6相出力電圧それぞれに対して、下位層である第2層の改良型非絶縁多相化変圧器120が接続され、上下2層に階層化した構成となっている。
図5に示すように、下位層である第2層の改良型非絶縁多相化変圧器120は、第1群のものと第2群のものに分かれている。第1群および第2群にはそれぞれ1個または複数個の改良型非絶縁多相化変圧器が配置されており、図2で示した改良型非絶縁多相化変圧器120を用いた“組み合わせ12相整流回路100−1”、図3で示した改良型非絶縁多相化変圧器120を用いた“単機12相整流回路100−2”のいずれかまたはそれらの組み合わせとなっている。
各々の構成要素は上記の図2図3に示したものであり、ここでは図示を一部省略している。
【0044】
以上の構成による24相整流回路100−3により得られる電力波形は図6に示すものとなる。図6の電力波形図に示すように、3相2組の6相出力電圧が上位層側の改良型非絶縁多相化変圧器120により6相電圧となり、さらに下位相側の改良型非絶縁多相化変圧器120により24相電圧となり、ダイオード3相ブリッジ整流回路130により整流され、24相整流電力波形となっている。
【0045】
この24相整流回路100−3より得られた24相整流電力波形を用いたインバータ装置の制御台数は、原理的には2台以上の任意の多数台に適用できる。図4に示した構成例では、組み合わせ12相整流回路100−2が2台ありそれらで駆動するインバータ140が4台、単機12相整流回路100−1が2台ありそれらで駆動するインバータ装置160が2台の合計6台のインバータ装置160が駆動できる構成例となっている。下位層側に図2の単機12相整流回路100−1を1つ増設すれば新たにインバータ装置を1台追加でき、図3の組み合わせ12相整流回路100−2を1つ増設すれば、新たにインバータ装置を2台追加できる。
【0046】
例えば、24相整流回路100−3における改良型非絶縁多相化変圧器120の配置において、下位層側の第1群において接続されている組み合わせ12相整流回路がn台、また、並列接続されている単機12相整流回路がm台あるものとし、また、第2群において接続されている組み合わせ12相整流回路がn台、また、並列接続されている単機12相整流回路がm台であるものとすると、24相整流回路により制御されるインバータ装置160の数は2n+m+2n+mとなる。
【0047】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた24相整流回路による第5次、第7次高調波、第11次、第13次高調波の抑制]
ここで、本発明にかかる改良型非絶縁多相化変圧器120を2階層化されたファン駆動用電源回路システム100であって24相整流回路100−3とした構成例による高調波の抑制について述べる。
上位層側の改良型非絶縁多相化変圧器120により得られる電圧値および位相、および、下位層側の改良型非絶縁多相化変圧器120により得られる電圧値および位相を調整することにより、上位層側または下位層側のいずれか一方で5次と7次の高調波を抑制し、上位層側または下位層側の他方で11次と13次の高調波を抑制することができる。
【0048】
図7は、上位層側の改良型非絶縁多相化変圧器120により15度の位相差を設定して第11次、第13次の高調波を抑制し、下位層側の改良型非絶縁多相化変圧器120により30度の位相差を設定して第5次、第7次の高調波を抑制せしめる24相整流制御回路100−3の回路構成を示す図である。
一方、図8は、上位層側の改良型非絶縁多相化変圧器120により30度の位相差を設定して第5次、第7次の高調波を抑制し、下位層側の改良型非絶縁多相化変圧器120により15度の位相差を変動させて第11次、第13次の高調波を抑制せしめる24相整流制御回路100−3の回路構成を示す図である。
図7および図8より、上位層側、下位層側のいずれか一方に30度(進み側15度、遅れ側15度)の位相差を生じる改良型非絶縁多相化変圧器120を設け、他方に15度(進み側7.5度、遅れ側7.5度)の位相差を生じる改良型非絶縁多相化変圧器120を設けることとなる。
【0049】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた第5次、第7次高調波の抑制]
まず、改良型非絶縁多相化変圧器120において、位相差30度(進み側15度、遅れ側15度)の位相差を生じるようコイル電圧を調整し、5次と7次の高調波を抑制するための昇圧と位相差の調整について説明する。
図9は、本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を用いて30度の位相差(進み位相15度、遅れ位相15度)を生成する様子を示す図である。6個の昇圧用のコイル124W1、124W2、124U1、124U2、124V1、124V2は同じ電圧値xであり、さらに、6個の位相差設定用のコイル125W1、125W2、125U1、125U2、125V1、125V2は同じ電圧値yである。
これら二つの電圧値xとyを適切に設計することにより、上記進み側の電圧と遅れ側の電圧との位相を30度とし、かつ二組の3相電源の電圧値をもとの電源電圧に対して任意の値(ここでは10%)昇圧した非絶縁多相化変圧器を得ることができる。
【0050】
それらの電圧を如何に調整するかを説明する図が図9右側のベクトル図である。図9の下図ではU相についてU相の相電圧、昇圧コイル分124U1、進み側コイル分の125U1のベクトル図を代表的に図示している。
U相の相電圧=1.0とし、それに対し進み側の電圧U1=1+aとする。
ここでa=0.1〜0.2程度の任意の昇圧値である。U相の相電圧=1.0にコイル124U1の電圧x(ここでは30度)を加え、さらにコイル125U1の電圧yを加える。その結果角度が15度で1+aの電圧U1となる。
【0051】
この関係から次式が成り立つ。
[数1](1+a)cos15=1+xcos30
[数2](1+a)sin15=y+xsin30
この数式から例えば a=0.1としたい場合のxとyを求めると、
x=0.072、y=0.248(但し、相電圧=1.0)という値に決まる。
これにより30度の位相差をつけると共に10%昇圧できる本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を製作することができ、これは自己容量が少ないので小型経済的となる。
【0052】
図9右図は、改良型非絶縁多相化変圧器120で10%の昇圧と30度の位相変化をさせる昇圧用コイルと位相差設定用コイルの比率を図示した回路シンボルである。
ちなみに、上記の数式1、2で昇圧分であるxをx=0とすれば、aとyは数式1、2からa=0.03527、y=0.2679と決まり、位相差30度で昇圧なし(3.5%の昇圧)の場合になり、上記数式1,2が一般化されていることが分かる。
【0053】
本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を用いると、自己容量の小さな小型軽量な変圧器で12相整流回路を構成することができ、しかも50Hz系の400vとか420vなどの低い電圧を460v〜480v程度に昇圧して供給できるので、長尺ケーブルを介した駆動においてケーブルでの電圧低下が20から30V程度と大きな場合におけるインバータの出力電圧不足問題が解消する。なお、ちなみに400v系インバータの直流電圧は700v程度まで許容できるので電源電圧は520v程度まで上がっても良い。
【0054】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた第11次、第13次高調波の抑制]
改良型非絶縁多相化変圧器120を用いて、位相差15度(進み側7.5度、遅れ側7.5度)の位相差を生じる改良型非絶縁多相化変圧器120の構成により、11次と13次の高調波を抑制するための昇圧と位相差の調整について説明する。
【0055】
図10は、本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を用いて15度の位相差(進み位相7.5度、遅れ位相7.5度)を生成する様子を示す図である。6個の昇圧用のコイル124W1、124W2、124U1、124U2、124V1、124V2は同じ電圧値xであり、さらに、6個の位相差設定用のコイル125W1、125W2、125U1、125U2、125V1、125V2は同じ電圧値yである。
これら二つの電圧値xとyを適切に設計することにより、上記進み側の電圧と遅れ側の電圧との位相を15度とし、かつ二組の3相電源の電圧値をもとの電源電圧に対して任意の値(ここでは10%)昇圧した非絶縁多相化変圧器を得ることができる。
【0056】
それらの電圧を如何に調整するかを説明する図が図10右側のベクトル図である。図10の下図ではU相についてU相の相電圧、昇圧コイル分124U1、進み側コイル分の125U1のベクトル図を代表的に図示している。
U相の相電圧=1.0とし、それに対し進み側の電圧U1=1+aとする。ここでa= 0.1〜0.2程度の任意の昇圧値である。U相の相電圧=1.0にコイル124U1の電圧x(ここでは30度)を加え、さらにコイル125U1の電圧yを加える。その結果角度が15度で1+aの電圧U1となる。
【0057】
この関係から次式が成り立つ。
[数3](1+a)cos7.5=1+xcos30
[数4](1+a)sin7.5=y+xsin30
この数式から例えば a=0.1としたい場合のxとyを求めると、
x=0.1046、y=0.0913(但し、相電圧=1.0)という値に決まる。
【0058】
図10右図は、改良型非絶縁多相化変圧器120で10%の昇圧と15度の位相変化をさせる昇圧用コイルと位相差設定用コイルの比率を図示した回路シンボルである。
これにより15度の位相差をつけると共に10%程度昇圧できる本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を製作することができ、50Hz系で電源電圧が400v, 415v, 420vなどと低い場合に15度の位相差を有しかつ10%昇圧した電源を作ることができ都合が良い。
【0059】
[改良型非絶縁多相化変圧器を用いた回路まとめ]
図7に示したように、本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を2層化し、上位層の改良型非絶縁多相化変圧器120に対して、並列に下位層の改良型非絶縁多相化変圧器120を設けた24相整流回路を構成し、図9に示すように、上位層の改良型非絶縁多相化変圧器120によって、15度の位相差の電力波形(つまり、7.5度の進み位相の電力波形と7.5度の遅れ位相の電力波形)を生成し、図9に示すように、下位層の改良型非絶縁多相化変圧器120によって、30度の位相差の電力波形(つまり、15度の進み位相の電力波形と15度の遅れ位相の電力波形)を生成すれば、上位層側で第11次、第13次の高調波を抑制でき、下位層側で第5次、第7次の高調波を抑制できる。
【0060】
同様に、図8に示したように、本発明の改良型非絶縁多相化変圧器120を2層化し、上位層の改良型非絶縁多相化変圧器120に対して、並列に下位層の改良型非絶縁多相化変圧器120を設けた24相整流回路を構成し、図10に示すように、上位層の改良型非絶縁多相化変圧器120によって、30度の位相差の電力波形(つまり、15度の進み位相の電力波形と15度の遅れ位相の電力波形)を生成し、図10に示すように、下位層の改良型非絶縁多相化変圧器120によって、15度の位相差の電力波形(つまり、7.5度の進み位相の電力波形と7.5度の遅れ位相の電力波形)を生成すれば、上位層側で第5次、第7次の高調波を抑制でき、下位層側で第11次、第13次の高調波を抑制できる。
【0061】
以上、本発明の改良型非絶縁多相化変圧器、それを用いたファン駆動用電源回路システム、その位相差を調整して構成した12相整流回路、24相整流回路の構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の改良型非絶縁多相化変圧器、それを用いたファン駆動用電源回路システム、その位相差を調整して構成した12相整流回路、24相整流回路は、長距離道路トンネル用の換気制御システム、特に、長距離道路トンネル内に設置した複数のジェットファンをインバータ駆動で制御する換気制御システムなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 ジェットファン駆動用電源回路システム
100−1 組み合わせ12相整流回路
100−2 単機12相整流回路
100−3 24相整流回路
120 改良型非絶縁多相変圧器
130 ダイオード3相ブリッジ整流回路
140 同相リアクトル
150 3相交流リアクトル
160 インバータ装置
200 商用電源
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