(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
扉が閉鎖するときにスライド部材が移動してくる方向のレ−ル本体内の端部に制動ラックを装着し、歯車の回転と連動して負荷が発生する構成の減速部材を設け、レ−ル本体内を直線移動するスライド部材に上記の減速部材を組み付け、扉の閉鎖最終段階にて減速部材の歯車と制動ラックを強制的に係合するように構成し、その状態から扉を大きく開放後放置すると、ばね部材の付勢力と湾曲面の接線方向への傾斜の度合いにより、一定の閉鎖速度を継続したままの閉鎖動作になり、閉鎖最終段階に差し掛かった位置にて制動ラックと減速部材の歯車との係合動作による減速動作が開始されるのであるが、同時にこの位置にて押し込みビットの先端突部の当接位置が湾曲面から傾斜面に移動してさらに大きな閉鎖力が発生することになり、減速されつつもそのまま止まることなく最後まで閉鎖動作を継続するように設定したことを特徴とする請求項2に記載の扉用閉鎖制動装置。
扉が閉鎖するときにスライド部材が移動してくる方向のレ−ル本体内の端部の制動ラックを、増幅ラックと移動制動ラックから構成して連動歯車にて両者を連動させ、レ−ル本体内を移動するスライド部材がまず増幅ラックに当接し、その動作で移動制動ラックが逆の方向に移動するように両者を配置し、移動制動ラックを減速部材の歯車と係合させることでスライド部材の移動距離と移動制動ラックの逆方向への移動距離の合計距離にて減速動作を得るように構成したことを特徴とする請求項3に記載の扉用閉鎖制動装置。
レ−ル本体内を移動するスライド部材の減速部材の歯車がまず停止状態での移動制動ラックに一定距離係合し、その後スライド部材が増幅ラックに当接し、その動作で移動制動ラックが逆の方向に移動するように両者を構成することで、制動初期段階はスライド部材の移動距離のみの減速度合いを得、その後はスライド部材の移動距離と移動制動ラックの逆方向への移動距離の合計距離による減速度合いを得るように構成したことを特徴とする請求項4に記載の扉用閉鎖制動装置。
前記増幅ラックと移動制動ラックを連動させる連動歯車の両側の歯数の比率を変更し、スライド部材の移動距離に対する移動制動ラックの移動距離を任意に設定することで、移動制動ラックが減速部材の歯車と係合して扉を減速させる度合いを適宜変更可能としたことを特徴とする請求項4に記載の扉用閉鎖制動装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下図面に基づいて本発明に関する扉用閉鎖制動装置の実施の形態を説明する。
図1は本発明の閉鎖制動装置をドアの上枠33と扉34の上部に内蔵させた状態で取り付け、30度程度扉34を開放したときの斜視図であり、
図2はその状態での納まり上面図である。まず本発明においては、
図1に示すように上枠33の下部内面に閉鎖装置aを、扉34の上部厚み方向面にスライド部材2とレール本体1からなるレール装置bを共に埋め込んだ内蔵状態で配置し、閉鎖装置aとスライド部材2をアーム部材3にて連結しておく。また
図3は同じ構成での扉34の閉鎖状態を示す正面断面図であり、上枠33と扉34上面との隙間部分にアーム部材3が配置された状態になる。そして
図4は閉鎖状態から180度開放状態までの扉34の開閉によるスライド部材2とアーム部材3の位置関係の軌跡を示した上面図であり、アーム部材3は一定の長さであるため、扉34の開閉に従ってスライド部材2がレール本1体内を直線移動しながらアーム部材3が水平方向に回転移動する動作になる。
【0032】
次に
図5は閉鎖装置aの斜視図であり、ケース4内の中央位置に柱状カム5と軸心7を樹脂等のブッシュ13を介在させて円滑に回動自在になるように装着し、その左右両側に2個の押し込みビット6と複数のばね部材12を組み付けて構成する。柱状カム5は軸心7に回転不可な状態で固定されており、両押し込みビット6先端の先端突部11を柱状カム5の外周面に対向させた状態で複数のばね部材12により付勢させておく。そして軸心7の先端を太鼓形状にカットしておき、アーム部材3の片端に同様に太鼓形状の軸心取り付け孔14を設け、両者を互いに嵌め込んでねじにて連結する。
図6は閉鎖装置aの正面図であり、
図7は閉鎖装置aを下から見上げたときの平面図である。また
図6と
図7に示すように、実施形態ではばね部材12を各4本ずつ両押し込みビット6に配置して均等に柱状カム5を押し付けるようにしている。
【0033】
また
図6に示すように、ばね部材12の片端に共に斜面18を有したばね力調整部材15を2個組み合わせた状態で配置し、その片方のばね力調整部材15に雌ねじ部分16を形成しておき、ばね力調整ねじ17を雌ねじ部分16に挿通した状態で、ばね力調整ねじ17の頭部が下向きになる配置で、ケース4に対して空転するように装着しておく。すると
図6に示す状態からばね力調整ねじ17を回すと、雌ねじ部分16を有した側のばね力調整部材15が上下方向に移動し、互いの斜面18により他方のばね力調整部材15が横方向に移動することになる。この動作はばね部材12を撓み方向に押し引きすることになり、その結果押し込みビット6の柱状カム5の外周面への付勢力を調整することが可能になる。
【0034】
次に
図8は軸心7に固定された状態の柱状カム5の上面図であり、その形状は横断面が同一の上下方向に長い柱状で、外周は略8の字形状になっており、その外周面は略8の字の凹み部分10の深い位置から傾斜面9が形成されており、その後なだらかに連続した状態で同一単位開き角度に対して軸心7の中心から外周面までの距離が徐々に変化していくように設定された湾曲面8に続いている。そして基準線Xからの開き角度が110度位置付近の湾曲面8が終了する位置に溝部分19が形成されており、その後はなだらかな曲面にて反対側の凹み部分10へと連続した形状にて形成されている。したがって全体としては基準線Xを中心として上下を180度回転させた状態で重なり合う形状になっている。また、柱状カム5はアーム部材3に固定された状態で回転する方向は決まっており、
図8に表示する向きでは扉34が開放するときには常に時計と反対回りに回転するように設定しておく。そして
図7に示すように扉34が閉鎖している状態では、押し込みビット6の先端突起11は凹み部分10の傾斜面9に当接した位置に配置されている。
【0035】
ここで傾斜面9や湾曲面8の外周形状としては、
図8に示すように傾斜面9と湾曲面8を軸心7の中心位置から等角度毎ごとに0度から110度までを10度ずつにて分割し、その各々の外周面位置と軸心7の中心までの距離をA〜Lとすると、その長さが必ずL>K>J>I>H>G>F>E>D>C>B>Aとなるように設定しておく。またCからBを経てAに至るアーム部材3が戻る最終段階の角度範囲では、外周面位置においては湾曲面8から傾斜面9に連続した位置付近になり、この狭い範囲角度で外周面位置と軸心7の中心までの距離が極端に小さくなるように設定しておく。そしてL付近の軸心7からの距離がもっとも長くなる外周面位置に溝部分19を形成しておく。すると
図7の閉鎖状態からアーム部材3と共に柱状カム5を回転させると、両スライド部材2の先端突起11の位置が湾曲面8により左右横方向に押されて移動することになり、すなわちばね部材12を圧縮させる力につながる。
【0036】
図9は閉鎖装置aに対するアーム部材3の回転動作を順に示しており、扉が完全に閉鎖した状態が
図9(b)であり、スライド部材2の先端突起11は
図8での柱状カム5の傾斜面9のBからAの位置付近に当接している。そしてこの状態から扉34を開けると
図4に示すように柱状カム5と共にアーム部材3が反時計回りに回転し、扉34が85度〜90度開放した位置でアーム部材3は
図9(d)に示すように約110度程度回転することになり、常に先端突起11が傾斜面9や湾曲面8に当接しながら
図8におけるK〜Lの位置に至る。したがってその間ばね部材12はずっと圧縮され続けるため、その結果
図9(d)付近にてもっとも強い力がかかっていることになる。そしてこの位置で扉34の開放動作を停止してフリーにすると、ばね部材12の付勢力によりその湾曲面8での接点の接線方向の傾斜の度合いによった強さにてアーム部材3を時計回りに回転させる力がかかり、すなわち扉34を閉鎖する動作が得られる。また扉34を完全に閉じ切るためにアーム部材3は
図9(a)に示すように余分に回転するように設定しておくとよく、この状態においてもばね部材12はまだある程度撓んでおり、押し込みビット6に対しては十分な付勢力を有しているように設定しておく。すると施工時の建付け誤差等により閉まり切らないような不具合を阻止することができる。
【0037】
この閉鎖動作が本発明での最も重要な機構であり、理想的な条件としては
図9(d)の位置からは扉34を閉鎖するために必要な丁番等の摩擦力を超える程度の閉鎖力が継続し、
図9(c)付近からの閉鎖最終段階においては、慣性力が無い状態でも確実に閉じ切るためにはより強めの閉鎖力が必要と想定される。ところがばね部材12自体の付勢力は圧縮度合いに対して略比例して強弱するため、どうしても撓みの小さい
図9(c)付近のほうが力は弱まってしまう。そこで前述でのAからLに順に距離が大きくなっていく湾曲面8の形状設定、つまり同一開き角度あたりの変化寸法をばね部材12の力の強い範囲では小さく、ばね部材12の力が弱まった範囲では大きく設定しておくとよい。したがって
図8での単位角度あたりの中心からの距離の差である変化寸法が、理想とするとK−J<J−I<I−H<H−G<G−F<F−E<E−D<D−C<C−B<B−Aの順に大きくなれば、ばね部材12の力と相殺されて比較的均一な閉鎖力が得られることになる。そしてC−BやB−Aにあたる範囲を傾斜面9として急激に変化寸法を大きくしておくと、ラッチが掛かる閉鎖最終段階でより大きな閉鎖力を得ることができる。
【0038】
また扉34の重量は重いもので30kgを超えるため、この閉鎖装置aによる閉鎖力は一定以上強いことが絶対条件として挙げられる。そこで上記での柱状カム5を中央に挟んで両側から複数のばね部材12による押し込みビット6での付勢力をかける構成が最も適しており、柱状カム5の片側からのみ1個の押し込みビット6をばね部材12により付勢する構成と比較すると、単にばね部材12の力が2倍になるだけではなく、ケース4とブッシュ13との回転時の摩擦を大きく低減させる点においても非常に優れている。さらには柱状カム5の外周面を滑らかに研磨し、かつ摩擦抵抗の小さいクロムメッキを施し、押し込みビット6も潤滑剤入りの樹脂成型品等で構成する等の処置を追加するとさらに損失の少ない条件が得られる。
【0039】
そして
図9(d)の位置を超えてさらに扉34を開放すると、柱状カム5の外周形状は曲面にて軸心7の中心からの距離は小さくなっていくため、今度は扉34をさらに開放しようとする動作になり、そのまま180度まで開放することができる。つまり
図8の柱状カム5の形状では扉34が約90度の位置を境にして両方向に付勢する動作になる。また
図9での柱状カム5には
図8に示すような溝部分19は表記しておらず、したがってこの場合は大きな抵抗無く扉34が90度開放位置付近を通過する動作になる。ここで
図8に示すような溝部分19を設けておくと、
図9(d)付近で先端突起11が溝部分19に入り込み扉34を停止保持することができ、その後は両方向へのクリック感のある扉34の開閉動作を得ることも可能になる。また扉34の90度以上の開放動作においてはこの動作に限定されるわけではなく任意であり、例えば
図9(d)の位置からの柱状カム5の外周面形状を軸心7を中心とした円周面にすることで、扉34の90度開放以降はどちらの方向にも力はかからず、その位置にてそのまま停止するような構成も可能である。
【0040】
以上、上記の閉鎖装置aの構成によって一定以上の閉鎖力、特に閉鎖最終段階での大きな閉鎖力が得られることになり、その特徴をさらに用いることで単に扉34が閉じるだけでなく、油圧式のドアクローザーのように閉鎖最終段階で一旦低速度にまで減速し、その後ゆっくりと最後まで閉鎖するような制動機構も十分追加可能であると考えられる。そこで減速部材として歯車21の回転で負荷が発生する構成のロータリーダンパー20を用い、レール本体1内をスライド部材2が移動した閉鎖最終段階で、レール本体1内に装着された制動ラック22と歯車21が係合することによる減速動作を用いる構成が適している。
図10は歯車21を有するロータリーダンパー20を装着したスライド部材2の正面図であり、
図11はその上面図である。ここで
図4に示すようにスライド部材2は扉34の開閉に従ってレール本体1内を移動するため、その際にレール本体1の内壁面とスライド部材2の側面が擦れて走行性能が下がらないようにスライド部材2の適当な箇所にローラー23を配置しておくとよい。そして
図2に示すようにスライド部材2の上部とアーム部材3の他端部を回動自在に連結する。
【0041】
ここでロータリーダンパー20の構成としては、ハウジング内に粘性の高いオイルと羽根状の部材とを収容して0リングにて密封されており、歯車21が回転するとこの羽根状の部材が連動して回転し、オイルを押しのけながら回転することで負荷をかける機構が適しており、歯車21の回転速度が速いほど大きな負荷が掛かり、歯車21の回転速度が小さい場合は発生する負荷も小さくなる性質が非常に有効である。そして扉34を開放するときは当然操作が軽いほうがよいため、このロータリーダンパー20は歯車21が片方向に回転するときにのみ負荷が発生し、逆方向への回転時はフリーになるワンウエイクラッチ付のものを使用するとよい。また減速部材として用いることができるものはロータリーダンパー20のみに限らず、耐磨耗性能に優れた材質のワッシャ状の部材にて複数の皿ばね座金を挟み込んで歯車21と連動して回転するように組付けた、ばねの押し圧力と摩擦力とを利用して回転時に負荷をかけるトルクヒンジ(スイーベルヒンジ)のような構成でも可能である。
【0042】
ここで、ロータリーダンパー20と制動ラック22による減速動作においてはさまざまな構成が実施可能である。まず基本的なロータリーダンパー20と制動ラック22の配置においては、
図12に示すように扉34の閉鎖時にスライド部材2が移動してくるレール本体1の片端部に制動ラック22を装着しておく構成が簡単である。この構成ではスライド部材2が所定の速度で
図13(a)に示す位置に移動した段階で、ロータリーダンパー20の歯車21が制動ラック22に係合して減速動作が開始する。そしてある程度減速が実施されるとスライド部材2の移動速度が落ち、その結果ロータリーダンパー20への負荷が小さくなる。ところが閉鎖装置aによる閉鎖力は最終段階でも十分有しているため、
図13(b)に示すように引き続きスライド部材2はレール本体1内をゆっくりと移動して、そのまま低速度にて閉鎖動作が実施され、完全に扉34を閉鎖させることができる。しかし前述のように、閉鎖装置aの特徴として閉鎖最終段階での閉鎖力が大きく設定できているとしても、それを超える負荷が発生するロータリーダンパー20を用いると
図13(a)と
図13(b)の間で停止してしまうことも懸念される。したがって扉34が非常にゆっくりと慣性力がついていない状態で閉鎖して
図13(a)の位置に差し掛かっても、停止せずにそのまま最後まで閉鎖するように閉鎖力とロータリーダンパー20の負荷との関係を適宜設定しておく必要がある。
【0043】
そして、もう一点ここで非常に問題となるのが、扉34が閉鎖するときの単位角度あたりのスライド部材2の移動距離である。
図14は扉34を90度開放した時点から閉鎖させる際の、スライド部材2のレール本体1内での移動距離を、扉34の15度ごとの閉鎖位置にて示した模式図である。つまり90度から75度に閉鎖したときにスライド部材2はg−fの距離を移動することになる。そして本発明の構成における特性としては、この15度ごとの移動距離においては、75度から45度までのf−eとe−dとが最も大きく、その次に少しだけ短くなるのが90度から75度のg−fと45度から30度のd−cになる。そして30度から15度のc−bはかなり移動距離が小さくなり、15度から0度への最終閉鎖段階においてのb−aは極端に短くなってしまう。そして15度から0度への閉鎖においても15度から10度より10度から5度が、さらには5度から0度がますます移動距離は小さくなってしまう。
【0044】
ところが上記の減速動作はロータリーダンパー20の歯車21が制動ラック22に係合したまま移動する距離に略比例するため、閉鎖最終段階での減速量に関してはこの係合距離があまり取れないことになり、条件面において十分とは想定しにくい。そこで
図15に示すように、扉34が閉鎖するときにスライド部材2が移動してくる方向のレ−ル本体1内の端部下部に増幅ラック24を設け、その斜め上部に移動制動ラック25を配置して、2個の平坦な歯車を軸で連結したような形状の連動歯車26にて両者を連動させ、増幅ラック24が押されると移動制動ラック25が逆方向に移動するように設定しておくとよい。そしてスライド部材2の端面が増幅ラック24に当接すると同時にロータリーダンパー20の歯車21が移動制動ラック25と係合するように構成しておく。
【0045】
すると閉鎖最終段階でレ−ル本体1内を移動するスライド部材2がまず
図16(a)に示すように増幅ラック24に当接し、ほぼ同時に移動制動ラック25がロータリーダンパー20の歯車21と係合する動作が得られる。そしてこの動作は連動歯車26の両側の歯数が同じであるなら、
図16(b)に示すように歯車21と移動制動ラック25が係合してからスライド部材2が移動する距離L1と移動制動ラック25が逆方向に移動する距離L2の合計である2倍の距離にて減速動作が実施されることになり、扉34の閉鎖最終段階でのレール本体1内でのスライド部材2の短い移動距離においても減速動作に必要な歯車21と移動制動ラック25の係合距離を大幅に増幅させることが可能になる。また比較的急速に扉34が閉鎖した場合などのために、増幅ラック24のスライド部材2と当接する部分に衝撃吸収材27等を装着しておくとよい。
【0046】
しかし上記の減速係合距離が2倍の構成では、瞬間的にかなり急激な減速動作が実施されると想定される。そこでさらに優れた構成としては
図17に示すように、移動制動ラック25を手前方向にさらに長く設定しておき、
図17(a)に示すようにまずロータリーダンパー20の歯車21が停止状態の移動制動ラック25に係合してL1の距離のみ1倍の減速動作を実施させ、その後のタイミングで
図17(b)に示すようにスライド部材2が増幅ラック24に当接し、さらに
図17(c)に示すようにスライド部材2が移動する距離L2と移動制動ラック25が逆方向に移動する距離L3の合計の2倍の距離を減速させる2段階での減速動作を用いるとよい。この構成においては、比較的スライド部材2の移動距離がある
図14での扉34の開放速度が30度から15度付近を1倍の減速動作にて設定し、その後の15度〜0度の範囲を2倍の減速動作に設定するともっとも有効な制動動作が得られると想定される。
【0047】
さらには図示はしないが、増幅ラック24と移動制動ラック25を連動させる連動歯車26の両側の歯数の比率を変更し、スライド部材2の移動距離に対する移動制動ラック25の移動距離を任意に増幅して設定することで、移動制動ラック25がロータリーダンパー20の歯車21と係合して扉34を減速させる度合いをより幅広く可能とするような構成も実施できる。また閉鎖状態から扉34を開放する際には増幅ラック24と移動制動ラック25が所定の位置に必ず復帰するように
図16や
図17に示すように増幅ラック24内にばね部材12を装着しておくとよい。
【0048】
また別の制動機構としては、扉34が所定位置にまで閉鎖した段階で強制的に歯車21が移動して移動制動ラック25と噛み合う係合手段と、扉34がロータリーダンパー20の負荷により減速されながらさらに閉じ、所定の低速度になった段階で歯車21が移動制動ラック25から外れる離脱手段とを有する係脱機構を用いることも可能である。その係脱機構の一例としては、
図18に示すように、まず昇降部分28を設けたロータリーダンパー20をスライド部材2に対して一定の角度範囲にて首振り動作するように両者をスイング軸29で連結し、レール本体1の端部に増幅ラック24と連動歯車26と移動制動ラック25からなる構成を、その少し手前の下部位置に山型片30を配置しておく。そしてロータリーダンパー20の歯車21が移動制動ラック25に対して常に離れようとする方向に力がかかるように離脱用ばね31をスイング軸29に巻き付けるような配置にて組みつけておく。
【0049】
すると、
図18(a)に示すような扉34が大きく開放された状態ではロータリーダンパー20の歯車21と移動制動ラック25は離れているため両者は何ら影響していない。そして閉鎖最終段階に差し掛かるとスライド部材2がレール本体1内を移動してきて、ロータリーダンパー20の昇降部分28が山型片30に当たり、離脱用ばね31を撓ませながら山型片30に乗り上げるようにして上方に首振り動作し、ロータリーダンパー20の歯車21が移動制動ラック25側に移動する。そしてそのままさらに閉鎖すると
図18(b)に示すように歯車21と移動制動ラック25が強制的に係合し、この段階から減速動作を得ることになる。ところがロータリーダンパー20の昇降部分28が山型片30の上面に乗っているのはこの状態からは極僅かな範囲のみであり、
図18(c)の位置においては、既に昇降部分28が山型片30から外れており、強制的に歯車21と移動制動ラック25を係合させる構成は終了している。
【0050】
したがって
図18(c)から
図18(d)に至る状態では、扉34が閉鎖する力すなわちスライド部材2の移動しようとする力により歯車21と移動制動ラック25間に発生する摩擦力と離脱用ばね31の力が存在していることになる。つまり扉34を減速させるための負荷により移動制動ラック25と歯車21間に発生する摩擦力が離脱用ばね31によるロータリーダンパー20を下方に戻そうとする力より大きい間は減速動作を連続させ、その力が小さくなった段階で離脱用ばね31の力が上回ると歯車21が移動制動ラック25から離脱して減速動作が終了することになる。この離脱動作に関しては歯車21と移動制動ラック25との接点とスイング軸29とを結ぶ線の水平面に対する傾きが重要になり、この傾きが大きくなるほど離脱しにくい条件になる。そこで離脱用ばね31の強さとこの傾きを適宜調整して最も適した離脱条件にて設定するとよい。
【0051】
そしてこのロータリーダンパー20の歯車21と移動制動ラック25間に発生する摩擦力は扉34の閉鎖速度が速い時ほど大きく、速度が遅くなるにつれて小さくなっていく。したがって非常に強く扉34を閉鎖した場合等では、ある程度減速されてもまだ扉34の閉鎖速度が残っているときには摩擦力はまだ大きく、
図18(d)のように歯車21は移動制動ラック25から離脱することは無い。そして閉鎖速度が所定の低速度になり歯車21が移動制動ラック25から離脱した状態を
図18(e)に表示しており、歯車21と移動制動ラック25に発生する摩擦力が離脱用ばね31の付勢力よりも小さくなった段階で歯車21は移動制動ラック25から離脱して減速動作が終了する。
【0052】
また歯車21が移動制動ラック25から離脱した
図18(e)の段階においても、押し込みビット6を付勢するばね部材12と柱状カム5とによる閉鎖力は残っているため、そのまま最後まで扉34は閉鎖することになる。したがってこの歯車21と移動制動ラック25が離脱するときの条件を任意に設定することにより、扉34を比較的遅い所定速度にまで一旦減速し、引き続きそのまま緩やかに閉じる制動動作が得られることになる。つまり非常に扉34の速度が速いときには歯車21と移動制動ラック25が噛み合っている距離が長くなり、その分全体の減速量も大きくなり、逆に扉34の速度が遅いときは歯車21と移動制動ラック25が噛み合っている距離が短くなり、全体の減速量も少なくなるためである。その結果閉鎖速度の大小に比例した減速量が得られることになり、風での強いあおり等による閉鎖動作であっても最終段階での速度を一定にできるため、非常に優れた扉34の閉鎖制動動作が実現できることになる。
【0053】
以上では様々な閉鎖条件にて説明してきたが、長年の使用により丁番の動きが悪くなったりする場合も想定され、どのような条件においても扉34を確実に最後まで閉鎖させることが必要である。そこで前述の
図6に示すばね部材12の付勢力を調整可能な構成が有効であり、施工後にばね力調整ねじ17にてばね部材12の初期撓みを変更することで扉34の閉鎖力を調整するとよい。その要点としては、扉34を閉鎖方向への慣性力がついていない状態で減速動作に差し掛かる位置にて一旦停止保持し、その後閉鎖装置aのみの力でゆっくりと閉鎖が継続するようにばね力調整ねじ17にて強さを調整するとよい。また扉34を閉鎖させるために必要な力は扉34の重量やサイズにより異なり、各種様々な扉34に対して適応させることも重要であり、この点においても上記手段での施工後に閉鎖力が調整できることが重要と考えられる。
【0054】
また扉34を開放する動作においては、操作力は軽いほどよいため、ロータリーダンパー20の種類としては、歯車21は片方向の回転動作にのみ負荷が発生し逆方向はフリーになるワンウエイクラッチ付のタイプを使用し、逆方向の歯車21の回転では負荷が発生しないようにしておくとよい。すると開放時には閉鎖装置aのみの力に対して扉34を押し開く、比較的軽い開放操作にて実施可能になる。
【0055】
また廊下等での約90度までしか扉34が開放できない納まりの場合においては、通常85度開放付近にて壁面に扉34が衝突しないように、戸当たりやアームストッパーが装着されることが多い。しかしこれらの戸当たりやアームストッパーでは閉鎖状態から急激に扉34を開け放った場合においては強い力で衝撃を伴って戸当たりやアームストッパーにて強制停止させられることになる。そこで本発明のレール装置においては、扉34が約80度開放した段階でのレール本体1内のスライド部材2の位置に、歯車21と係合して負荷が発生するように、開放時係合ラック32を装着しておくとよい。また上記の構成では、ワンウエイクラッチのロータリーダンパー20を用いているため、
図3に示すようにレール本体1の中央下部位置に開放時係合ラック32を設けておくと、扉34の開放時にも80度開放以上の一定角度範囲にて減速動作が得られることになる。そしてこの角度範囲は
図14でのg−fに相当し、この範囲はスライド部材2の移動距離が比較的大きいため減速動作としてはかなり有効である。
【0056】
さらには、もう少し手前の扉34の開放角度が75度付近からロータリーダンパー20の歯車21を開放時係合ラック32に係合させてある程度の距離にて減速し、その後に押し込みビット6の先端突起11が柱状カム5の溝部分19に入り込むように設定しておくと、急激に開け放った後に減速動作が得られ、そのまま85度開放位置付近にて扉34を停止保持させることも可能になる。また、この停止保持させる強さ度合いは
図8に示す溝部分19の深さにて任意に設定可能である。さらには図示はしないが、スライド部材2が85度開放位置で必ず停止するように、レール本体1内にストッパーを固定しておくと、約90度開放タイプの閉鎖制動装置としても設定することができる。その結果通常必要とされている戸当たりやアームストッパーをも必要としない、戸当たり兼用タイプにまで発展させることが可能になる。
【0057】
また上記実施形態では上枠33に閉鎖装置aを、扉34の上部にレール装置bを共に掘り込んだ納まりにて内蔵させ、両者をアーム部材3で連結した構成にて表記しているが、その逆の上枠33にレール装置bを、扉34の上部に閉鎖装置aを配置する構成も可能である。さらにはレール装置bや閉鎖装置aを上枠33と扉34の上部正面に振り分けて取り付ける面付けタイプも可能である。
図19は扉34の上部表面にレール装置bを、上枠33の表面に閉鎖装置aを配置した状態での開閉軌跡を示しており、この面付け納まりの配置においても各々の動作は同じである。また
図20はその面付けタイプの閉鎖制動装置をドアの上部に装着し、扉34を閉鎖した状態の正面図であり、細長いレール装置bの上に閉鎖装置aが配置された意匠になり、両者共に扉面からの出っ張りも小さく、全体としても細長いで形状のため、デザイン性も兼ね備えた面付けタイプとしても非常に有効である。