(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、水素を燃料として走行する車両では、
図5で示す様に、水素貯蔵タンク50、燃料充填系統(ディスペンサー60、充填ホース45等)を備える水素充填所で、充填ノズル30と車両側充填口であるレセプタクル40とを接続して水素ガスを充填しており、当該充填は、車両Aに搭載された水素タンク41の最高使用圧力に応じて制御しながら行われる。なお、符号51は水素貯蔵タンク50からディスペンサー60に水素を供給する配管系を示す。
この様な水素充填装置については、本出願人は既に提案している(例えば、特許文献1参照)。
係る水素充填装置は有効な技術ではあるが、車両に水素ガスを充填する際に、充填ノズルと車両側充填口との内部を気密状態にするため、複数のシール構造を必要としている。
【0003】
例えば、
図6で示す従来の水素充填装置300においては、ノズル30のロッド32に接続された弁体33と、ノズル30の管継手内流路31Aの段部により構成された弁座31Bを有する弁機構の開閉により、水素ガスの充填、充填停止が行われる。
水素ガスの充填に際しては、ノズル30の管継手31と車両側充填口であるレセプタクル40とを接続すると、ロッド32の先端(
図6では右端)はレセプタクル40側の嵌合凹部40Aに挿入され、クラッチ34先端の突起34Aがレセプタクル40の嵌合溝40Bに嵌合する。レバー35がクラッチ34先端の突起34Aの半径方向外側に位置しており、レバー35をレセプタクル40から離隔する方向(
図6では左側)に移動しなければ、クラッチ34は嵌合溝40Bから外れない。そして、充填中にレバー35がレバー35をレセプタクル40から離隔する方向(
図6では左側)に移動することを防止して、充填ノズル30の管継手31とレセプタクル40とが連結されている状態を保持するレバー保持機構36が、管継手31に設けられている。
【0004】
図6に示す従来技術において、ロッド32は中空に構成されており、弁機構を通過した水素ガスはロッド32の開口32Aを介してロッド内流路32Bを流れ、レセプタクル40内の流路40Cに流入する。そして、ロッド32の半径方向外方と管継手内流路31Aの隙間δから水素ガスが漏洩することを防止するため、シール構造としてノズル側Oリング37が管継手内流路31Aに設けられている。そして、レセプタクル40の嵌合凹部40Aの内壁面とロッド32先端の隙間εから水素ガスが漏洩することを防止するため、シール構造としてレセプタクル側Oリング41が嵌合凹部40A内に設けられている。
【0005】
しかし、当該シール構造(ノズル側Oリング37、レセプタクル側Oリング41)は、管継手31とレセプタクル40(車両側充填口)とを着脱する際には抵抗となる。
また、同一の充填ノズル30で複数の車両に充填するため、充填回数が多くなるとシール構造が劣化し、水素ガスが漏洩する可能性がある。
さらに、充填ノズル30とレセプタクル40とを着脱する際に、ロッド32がノズル側Oリング37及びレセプタクル側Oリング41と摺動するため、充填ノズル30と車両側充填口40との着脱を繰り返すことによりノズル側Oリング37及びレセプタクル側Oリング41がロッド32の摺動により劣化して、水素ガスが漏洩する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、シール構造の劣化を防止して、水素ガス漏洩の可能性を低減することが出来る充填装置の提案を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の充填装置(100、101)は、水素燃料を貯える貯蔵タンクと、該貯蔵タンクから燃料充填系統(ディスペンサー、充填ホース等)を介して車両に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する充填ノズル(10、11)を備えた充填装置(100、101)において、
前記充填ノズル(10、11)の管継手本体(1)の内側には先端に弁体を有するロッド(2:弁棹)が弾性材(3)に抗して摺動自在に配設されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の充填装置(100、101)は、
水素燃料を貯える貯蔵タンク
(50)から車両
(A)に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する燃料充填系統
の充填ホース(45)の先端の充填ノズル(10、11)に設けられ、車載用水素充填タンクの車両側充填口(20:レセプタクル)に連結される管継手本体(1)を含む充填装置(100、101)において、
充填ノズル(10、11)の管継手本体(1)の内側に
管継手内流路(1A)が形成され、管継手内流路(1A)には一端に弁体
(2A)を有するロッド(2:弁棹)
が摺動自在に配設され
且つ弁体(2A)が座着する弁座(1H)が形成され、弁体(2A)を弁座(1H)に付勢する弾性材(3)が配設されており、
管継手本体(1)の車両側充填口(20)側の端部では中空の管継手中央突起(1E)が車両側充填口(20)側に突出し、ロッド(2)は管継手内流路(1A)の内側と管継手中央突起(1E)の内側を摺動自在に配置され、管継手内流路(1A)の内周面及び管継手中央突起(1E)の内周面はロッド(2)の摺動面を構成しており、当該摺動面にはシール機構は配設されておらず、
前記管継手本体(1)と連結する車両側充填口(20)は管継手中央突起(1E)を収容する嵌合凹部を備え、管継手中央突起(1E)の外周面と接触する嵌合凹部の内周面(20D)にはシール構造(21)が配設されていることを特徴としている。
【0010】
本発明において、(充填ノズル10、11が車両側充填口20に連結された場合に、)前記ロッド(2:弁棹)の一端が車両側充填口(20:レセプタクル)に当接されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明によれば、充填ノズル(10、11)の管継手本体(1)の内側には先端に弁体を有するロッド(2:弁棹)が弾性材(3)に抗して摺動自在に配設されているため、充填ノズル(10、11)内のシール構造が削減されて、耐久性が向上する。
また本発明によれば、ロッド(2)が摺動する箇所にシール構造を配置する必要がなくなるため、ロッド(2)の摺動によるシール構造の劣化を防止することが出来る。
【0012】
本発明において、前記ロッド(2:弁棹)の一端が車両側充填口(20)に当接されていれば、充填ノズル(10、11)が車両用充填口(20)に接続されると流路が開いて充填可能となるので、安全である。
【0013】
また本発明において、車両側充填口(20)の内周の管継手(1)と接する箇所にシール構造が配設されていれば、水素ガス充填時には当該シール構造により水素ガスの漏洩を防止することが出来る。
車両側充填口(20)の管継手本体(1)外周に接する箇所にシール構造を設ければ、車両側充填口(20)の管継手本体(1)外周に接する箇所と、管継手本体(1)外周との隙間(ε1)から水素ガスが漏出することを防止出来る。
【0014】
ここで、
図6で示す様に、従来技術に係る充填ノズル(30)の管継手(31)は、水素ガス充填中に充填ノズル(30)と車両側充填口(40)とが連結されている状態を保持するレバー保持機構(36)は、管継手内流路(31A)から分岐する分岐流路(36A)と、分岐流路(36A)内を摺動するレバー保持用摺動部材(36B)と、レバー保持用Oリング(36C)を有している。
水素ガス充填中は、管継手内流路(31A)の水素ガスの圧力が分岐流路(36A)に作用してレバー保持用摺動部材(36B)を
図6の下方に移動する。レバー保持用摺動部材(36B)が下方に移動することにより、レバー保持用摺動部材(36B)のロッド(36D)がレバー移動通路(31D)内に突出して、レバー(35)が車両側充填口(40)から離隔することを防止し、以て、充填ノズル(30)と車両側充填口(40)とが連結されている状態を保持している。
しかし、充填ノズル(30)と車両側充填口(40)との着脱を繰り返すことにより、レバー保持用摺動部材(36B)が分岐流路(36A)内を摺動する回数が増加し、レバー保持用Oリング(36C)が劣化して、レバー保持機構(36)の分岐流路(36A)から水素ガスが漏洩する恐れがある。
【0015】
これに対して、本発明において、充填ノズル(10)と車両用充填口(20)とを連結状態を維持するクラッチ機構(12)を備えていれば、加圧状態においては充填ノズル(10)を取り外すことが出来なくなる。そして、係るクラッチ機構(12)であれば、例えば
図6で示す様な分岐流路(36A)を形成する必要が無く、分岐流路(36A)内で摺動部材(36B)が摺動する必要が無く、分岐流路(36A)にシール構造(Oリング36C)を設ける必要も無い。
そのため、従来技術におけるレバー保持機構(36)を構成する分岐流路(36A)から水素ガスが漏洩する恐れも無い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態を説明する
図1において、充填ノズル10は、図示しない水素燃料貯蔵タンクから燃料充填系統(ディスペンサー60、充填ホース45等)を介して、車載用水素充填タンクに水素を充填する。充填ノズル10は管継手本体1を有しており、管継手本体1の水素供給源側(
図1で左側)端部の中央部(
図1では上下方向中央部)には、充填ホース側(図示しない)に接続される水素導入口1Bが設けられている。そして、管継手本体1のレセプタクル側(車両用充填口側、
図1で右側)端部には、レセプタクル20(
図2)を挿入するための開口1Cが設けられている。管継手1内における開口1Cより水素供給源側(
図1で左側)にはレセプタクル挿入空間1Dが形成され、水素充填時にはレセプタクル20は開口1Cから管継手1側(
図1で左側)へ挿入され、レセプタクル挿入空間1Dに位置している。
【0018】
管継手本体1の
図1における上下方向中央部には管継手内流路1Aが形成されており、管継手内流路1Aは、水素供給源側の開口1Bからレセプタクル側の空間1Dに延在している(
図1で左側の領域から右側の領域に延在している)。
また、管継手本体1のレセプタクル(車両用充填口)側(
図1では右側)には、中空の管継手中央突起1Eが突出しており、管継手中央突起1Eは管継手内流路1Aのレセプタクル側端部を形成している。
【0019】
図1において左右方向へ延在して管継手内流路1Aには、2箇所の拡径された領域、すなわち弁体収容部1Fと拡径部1Gが設けられている。
管継手内流路1Aにはロッド2が収容されている。
ロッド2の先端には弁体2Aが設けられており、弁体2Aは管継手内流路1Aの弁体収容部1Fに収容される。弁体収容部1F内において、弁体2Aの水素供給源側(
図1で左側)には弾性材としてのスプリング3が配置されている。
【0020】
ロッド2は管継手内流路1A内を(
図1では左右方向に)摺動自在であり、
図1で示す状態、すなわち管継手本体1がレセプタクル20(
図2)と連結されていない状態では、弁体2Aはスプリング3の弾性反撥力によりレセプタクル側(
図1では右側)に付勢されて、弁体収容部1Fの端部(
図1では右端部)の段部により構成された弁座1Hに座着している。
図1で示す様に管継手本体1がレセプタクル20(
図2)と連結されていない状態では、ロッド2のレセプタクル側(
図1では右側)の端部は、管継手中央突起1Eのレセプタクル側端部よりもレセプタクル側(
図1では右側)に突出している。ロッド2が管継手中央突起1Eよりも突出している領域は、符号TAで示されている。ここで、領域TAの突出量(突出寸法)は、水素充填時にロッド2が
図1の左方向(レセプタクル20から離隔する方向)に移動する距離等に基づき決定される(
図2参照)。
【0021】
図6で示す従来技術と同様に、ロッド2は中空部分を有し、中空部分はロッド内流路2Bを構成している。
弁体2Aに接続された細径部2Cと中空部分を形成した大径部2Dとは、開口2Eを形成した径寸法変化部2Fにより接続されている。ロッド2の径寸法変化部2Fは、管継手内流路1Aの拡径部1Gに収容されている。
水素ガス充填時(
図2参照)には、
図1では図示しないディスペンサー(
図5参照:
図1の左側の領域に配置)から弁体2Aを経由して管継手内流路1Aを流過する水素ガスは、管継手内流路1Aの拡径部1Gに収容されたロッド2の径寸法変化部2Fの開口2Eを介して、ロッド内流路2Bを流れる。
図1において、ロッド2の径寸法変化部2Fのレセプタクル側端面(
図1では右端面)が管継手内流路1Aの拡径部1Gの段部1Iとは係合している。ただし、径寸法変化部2Fのレセプタクル側端面と管継手内流路1Aの拡径部1Gの段部1Iとは、開閉弁としての機能は有していない。
【0022】
管継手内流路1Aの半径方向外方であって、レセプタクル側(
図1で右側)には、中空シリンダー形状のクラッチ4が設けられている。クラッチ4の水素供給源側(
図1で左側)の端部には、半径方向内方に突出した係止部4Aが形成され、係止部4Aは管継手本体1に形成したクラッチ嵌合溝1Jに嵌合し、固定される。
一方、クラッチ4のレセプタクル側端部(
図1で右側)には、半径方向外方及び内方に突出した(厚さ寸法が大きい)突起4Bが設けられている。
充填ノズル10とレセプタクル20(
図2)の連結時(水素供給時)には、突起4Bの半径方向内側の部分がレセプタクル20の嵌合溝20Aに嵌入する(
図2参照)。
【0023】
クラッチ4の半径方向外方にはレバー5が設けられている。
レバー5はレバー用把持部5Aが一体的に形成され、レバー用把持部5Aを把持してレバー5を矢印H方向に移動させることにより、レバー5のレセプタクル側端部(
図1では右端)をクラッチ4の突起4Bの半径方向外側に位置させて、クラッチ4の突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20A(
図2)から外れてしまうことを防止することが出来る。
或いはレバー5のレセプタクル側端部をクラッチ4の突起4Bの半径方向外側から外れる位置、例えば水素供給源側(
図1で左側)に位置せしめ、クラッチ4の突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れることを許容することが出来る。より詳細には、
図2で示す様に、充填ノズル10(管継手本体1)とレセプタクル20が連結している状態から、充填ノズル10を取り外すには、作業者がレバー用把持部5Aを把持して、レバー5を
図1、
図2における左側(レセプタクル20から離隔する側)に移動し、以て、レバー5のレセプタクル側端部(
図1、
図2の右端部)をクラッチ4の突起4Bの半径方向外方の位置から移動させる。その結果、クラッチ4の突起4Bが半径方向外方に移動可能となり、突起4Bが半径方向外方に移動すれば、突起4Bはレセプタクル20の嵌合溝20Aから外すことが出来る。
【0024】
再び
図1において、管継手本体1には、レバー5が矢印H方向に移動することを許容するレバー用開口部1Kと、レバー移動通路1Lが形成されている。
なお、充填ノズル10とレセプタクル20の連結時(
図2:水素供給時)において、レバー5をクラッチ4の突起4Bの外方に保持するクラッチ機構12の詳細は後述する。
【0025】
充填ノズル10(管継手本体1)とレセプタクル20が連結された状態を示す
図2において、レセプタクル20は、管継手本体1の開口1Cから管継手1内のレセプタクル挿入空間1Dに挿入されている。
図1に示す充填ノズル10とレセプタクル20が連結されていない状態では、ロッド2の突出領域TAは管継手中央突起1Eよりレセプタクル20側に突出しているが、
図2の連結状態では、ロッド2の突出領域TAはレセプタクル20の嵌合凹部の底部20Cに当接し、押圧されて、ロッド2全体が
図1で示す状態から、
図1、
図2の左方向(レセプタクル20から離隔する方向)へ移動する。
その際、ロッド2は、
図1における突出領域TAの突出量分だけ左方向に移動し、突出領域TAのレセプタクル側端部(右端)(
図1参照)が管継手中央突起1Eのレセプタクル側端部(右端)の位置に到達するまで移動する。
【0026】
ロッド2が左方向に移動するに伴い、ロッド2先端の弁体2Aはスプリング3の弾性反撥力に抗して弁座1Hから離隔する。そして弁座1Hと弁体2Aの間から、水素ガスが管継手内流路1Aに流入する。
管継手内流路1Aに流入した水素ガスは、ロッド2の開口2E、ロッド内流路2Bを経由し、レセプタクル内流路20Bを流過して、
図2では図示しない車載用水素充填タンク41(
図5)内に供給される。
【0027】
図2において、水素ガスが管継手内流路1A、ロッド内流路2Bを流過する際に、ロッド2の開口2Eからロッド内流路2Bを流れずに、ロッド大径部2Dの外周面と管継手内流路1の内周面との間の隙間δ1を流れる水素ガスが存在したとしても、当該水素ガスは、レセプタクル20の嵌合凹部の底部20Cに到達して、レセプタクル内流路20Bに流入し、管継手本体1外には漏出しない。
ここで、レセプタクル20の嵌合凹部の内周面20Dにおいて、管継手中央突起1Eの外周と接する箇所にレセプタクル側Oリング21が設けられている。
レセプタクル嵌合凹部の底部20Cから、レセプタクル嵌合凹部の内壁面20Dと管継手中央突起1Eの外周面の隙間ε1を流れる水素ガスが存在したとしても、当該水素ガスは、レセプタクル側Oリング21によりシールされるので、管継手本体1外に漏出することはない。
【0028】
図1、
図2から明らかなように、ロッド2は管継手内流路1Aを摺動するが、ロッド2が摺動する箇所にOリングを設けなくても、水素ガスは管継手本体1外に漏出しない。
なお、
図1で示す管継手本体1とレセプタクル20を連結する以前の状態では、弁体2Aが弁座1Hに座着するので、管継手内流路1Aには水素ガスは流れず、管継手本体1とレセプタクル20から水素ガスが漏出することはない。
【0029】
図2で示す管継手本体1とレセプタクル20を連結した状態では、管継手内流路1Aを流れる水素ガスは、ロッド内流路2Bを流れ、或いは、ロッド大径部2Dの外周面と管継手内流路1Aの内周面の隙間δ1を流れて、レセプタクル嵌合凹部の底部20Cに到達し、レセプタクル内流路20Bを流れるので、管継手本体1やレセプタクル20の外部に漏出することは無い。
したがって、第1実施形態においては、ロッド2が管継手内流路1Aを摺動する箇所にOリングを配置しなくても、水素ガスは管継手本体1やレセプタクル20の外部に漏出しない。そのため、ロッド2の摺動による劣化するOリングを設ける必要が無く、ロッド2の摺動によるOリングの劣化を防止して、水素ガスの漏出を防止出来る。また、充填ノズル10内のシール構造が削減されて、耐久性が向上する。
【0030】
上述した様に、
図1、
図2で示す第1実施形態においても、充填ノズル10とレセプタクル20の連結時(水素供給時)にレバー5を保持して、クラッチ4の突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れないようにするクラッチ機構12が存在する。しかし、係る機構は、
図6で示す構成ではない。
図2において、クラッチ機構12は、レバー5のレセプタクル側端部をクラッチ4の突起4Bの半径方向外方位置に保持して、クラッチ4がレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れないようにする機能を有している。そしてクラッチ機構12は、レバー5のレセプタクル側(
図1、
図2の右側)の端部に設けられた突起5B(レバーの突起)と、レバーの突起5Bよりもレセプタクル20から離隔した側(
図1、
図2では左側)に配置したリング状の弾性部材6(例えばOリング)を有している。
レバー5のレセプタクル側端部に設けられた突起5Bは、半径方向内側に突出している。そして、リング状弾性部材6は、レバー5のレセプタクル側端部近傍に形成された弾性体用溝5Cに嵌合している。
【0031】
図2で示すように管継手本体1とレセプタクル20を連結した場合に、ロッド2の先端の弁体2Aが弁座1Hから離隔して、水素ガスが管継手内流路1Aに流入し、ロッド内流路2B、レセプタクル内流路20Bを流過する。
その際、水素ガスは非常に高圧(例えば70MPa)であり、その圧力により管継手本体1をレセプタクル20から引き剥がそうとする引張力F1(
図2)が作用する。
引張力F1が管継手本体1に作用する結果、クラッチ4の突起4Bにおけるレセプタクル20から離隔する側(
図2で左側)の傾斜面4BAと、レセプタクル嵌合溝20Aにおけるレセプタクル20から離隔する側(
図2で左側)の傾斜面20AAとの作用により、引張力F1の分力として、クラッチ4には半径方向外方に向かう力ROが作用して、半径方向外方に向かう力ROはクラッチ4を半径方向外方に移動せしめる。
【0032】
図2におけるF3部分を拡大した
図3で示すように、半径方向外方に向かう力ROによりクラッチ4が半径方向外方に移動すると、弾性体6が半径方向について潰れた状態となる。その結果、領域FTで、クラッチ4の突起4Bの端面4BBと、レバー5の突起5Bの端面5BAが接合する。端面4BBと端面5BAが接合するため、レバー5は
図3で示す状態から、レセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動することは出来ない。
レバー5が移動しないため、レバー4はクラッチ4の突起4Bの半径方向外方に位置し続け、クラッチ4が半径方向外方に移動することを抑止する。そのため、クラッチ4の突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れてしまうことは無く、管継手本体1とレセプタクル20の連結が解除されてしまうことが防止される。
なお、弾性体6の弾性係数、クラッチ側への突出量、レバー5の突起5Bにおけるクラッチ側への突出量、突起4Bの傾斜面4BAの傾斜角度(
図2、
図3)、レセプタクル嵌合溝20Aの傾斜面20AA(
図2、
図3)の傾斜角度等、を適宜設計することにより、上述の作用効果を奏することが出来る。
【0033】
図2、
図3において、水素ガスの充填が完了し、所定の脱圧作業が完了すれば、水素ガスの高圧に起因する引張力F1が消失する。
それに伴い、クラッチ4に作用する半径方向外方に向かう力ROも消失し、クラッチ4は半径方向内方の位置(水素ガス充填前の位置)に復帰する。
クラッチ4が半径方向内内方の位置(水素ガスの充填前の位置)に復帰するため、レバー5の先端近傍に設けられたリング状弾性部材6は、
図3で示す潰れた状態から断面円形の状態に復帰して、クラッチ4の突起4Bの端面4BBとレバー5の突起5Bの端面5BAは、半径方向における相対位置(
図3における上下方向位置)が異なった状態となる。そのため端面4BBと端面5BAは接合せず、
図3における領域FTの様な状態にはならない。
従って、レバー5は
図3で示す状態とは異なり、レセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動可能となり、レバー5をレセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動すれば、レバー5はクラッチ4の突起4Bの半径方向外方には位置せず、クラッチ4の突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れることが可能となる。そして、管継手本体1とレセプタクル20の連結を解除することが出来る。
【0034】
図1〜
図3で示す第1実施形態において、レバー5を保持してクラッチ4がレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れないようにするクラッチ機構12は、
図6で示すレバー保持機構構36の構成とは異なり、管継手内流路31Aから分岐する分岐流路36Aと、当該分岐流路内を摺動する部材36B(
図6におけるレバー保持用摺動部材)を設ける必要が無く、当該部材にOリング36C(レバー保持用Oリング)を設ける必要もない。
そのため、レバーを保持する機構に設けたOリングが摺動により劣化して、水素ガスが漏洩することが防止される。
【0035】
図1〜
図3の充填装置100によれば、充填ノズル10の管継手本体1の内側には、先端に弁体2Aを有するロッド2がスプリング3(弾性材)に抗して摺動自在に配設されている。水素充填時には、管継手内流路1Aを流れる水素ガスは、ロッド内流路2Bを流れる場合も、ロッド大径部2Dの外周面と管継手内流路1Aの内周面の隙間δ1を流れる場合でも、管継手本体1外に漏出すること無く、レセプタクル嵌合凹部の底部20Cに到達し、レセプタクル内流路20Bに流入する。
したがって、充填ノズル10内でロッド2が摺動する箇所にOリングを設ける必要が無くなる。そのため、ロッド2の摺動によるシール構造(Oリング)の劣化を防止することが出来る。
【0036】
図1〜
図3の第1実施形態においては、水素充填時にロッド2の一端がレセプタクル20(車両側充填口)の嵌合凹部の底部20Cに当接されているので、充填ノズル10がレセプタクル20(車両側充填口)に接続されると流路が開いて充填可能となるので、安全である。
また第1実施形態において、レセプタクル20の嵌合凹部の内周面20Dにおいて、管継手中央突起1Eの外周と接する箇所にレセプタクル側Oリング21が配設されているので、水素ガス充填時にはレセプタクル20の管継手本体1外周に接する箇所と、管継手本体1外周との隙間ε1から水素ガスが漏出することを防止出来る。
【0037】
さらに第1実施形態において、充填ノズル10とレセプタクル20(車両用充填口)とを連結状態を維持するクラッチ機構12を備えており充填ノズル10とレセプタクル20を連結して水素を充填すると、クラッチ4が弾性部材6を半径方向に潰して、クラッチ4の突起4Bの端面4BBとレバー5の突起5Bの端面5BAが接合するため、レバー5がレセプタクル20から離隔する方向に移動することは出来なくなる。したがって、充填ノズル10とレセプタクル20を連結して水素を充填する間に充填ノズル10をレセプタクル20から取り外すことは出来ない。
係るクラッチ機構12であれば、例えば
図6で示す様な分岐流路36Aを形成する必要が無く、分岐流路36A内で摺動部材36Bが摺動する必要が無く、分岐流路36Aにシール構造(Oリング36C)を設ける必要も無い。
そのため、従来技術におけるレバー保持機構36を構成する分岐流路36Aから水素ガスが漏洩する恐れも無い。
【0038】
図4は本発明の第2実施形態を示している。
図4の第2実施形態の充填ノズル11は、
図1〜
図3の第1実施形態の充填ノズル10とは、クラッチ機構(レバーを保持機構)が異なっている。第2実施形態では、
図1、
図2の第1実施形態のようなレバー5のレセプタクル側(
図1、
図2の右側)の端部に設けられた突起5B(レバーの突起)と、レバー5の突起5Bよりもレセプタクル20から離隔した側(
図1、
図2では左側)に設けられたリング状の弾性部材6(例えばOリング)は設けられていない。
【0039】
第2実施形態のレバー保持機構は、
図6で示す機構と同様に構成されており、充填ノズル11とレセプタクル20の連結時に、レバー35をクラッチ34の突起34Aの外方位置に保持して、クラッチ34の突起34Aがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れないようにする機能を有している。当該レバー保持機構の構成及び作用効果は、
図6で示す機構と同様であり、重複説明は省略する。なお、
図4においてレバー保持機構36を構成する部材については、
図6と同様な符号を付している。
図4におけるその他の部材であって
図1〜
図3で示すのと同様な部材には、
図1〜
図3と同様な符号が付されている。
【0040】
第2実施形態の充填装置101においても、ロッド2が管継手内流路1Aを摺動する箇所にシール構造を配置する必要がなく、ロッド2の摺動によるシール構造(Oリング)の劣化を防止することが出来る。
そのため、シール構造(Oリング)劣化による水素ガス漏出を防止することが出来る。
図4の第2実施形態におけるその他の構成や作用効果は、
図1〜
図3で説明した第1実施形態と同様である。
【0041】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。