【文献】
軽部 征夫,臨床用バイオセンサーの開発の動向,月刊新医療 2月号,日本,株式会社エム・イー振興協会 今元 禎三,1992年 2月 1日,第19巻 第2号,pp.75−79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受付部は、前記排水物質として、前記ユーザを洗浄するための洗浄器具を洗浄水により洗浄する什器から取り出される洗浄水、前記ユーザを洗浄水により洗浄する什器から取り出される洗浄水、又は、前記ユーザから当該ユーザの排出物が排出される什器から取り出される当該排出物を受け付ける、
請求項1に記載の生体管理システム。
前記予測部は、前記什器から取り出される排水物質と前記反応物質と前記磁気ビーズとが混合されてから所定の時間が経過した後に、前記ユーザの体内に所定の生体物質が含まれるか否かを予測し、前記所定の時間よりも長い時間が経過した後に、前記ユーザの体内に含まれる前記所定の生体物質の量を予測する
請求項1〜3のいずれか一つに記載の生体管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る生体管理システム及び生体管理方法を説明する。なお、以下の実施形態においては、生体管理システムが、複数の手法(例えば、磁気的手法、熱的手法等)により生体物質を検出する例を説明するが、必ずしも、複数の手法を実現することが必須の構成ではない。生体管理システムや測定装置は、複数の手法のうちの一部の手法を実現する構成でもよい。
【0012】
(実施形態の一例)
今日、誰もが、家族と地域の中で健康快活に、仕事や趣味に生きるのが理想だが、将来の病気への不安、痴呆、うつ、孤独感、離れた家族への心配等が、少子高齢化の進む現代社会において人々を脅かし、安寧な生活を蝕んでいる。このような状況において、誰もが、家族と社会の中で健康快活に、仕事や趣味に生きることを理想としている。その実現手段の1つが、『日常人間ドック』である。この『日常人間ドック』では、非意識(Unconscious Sensing)技術により収集される生体情報を含む革新的なPHR(Personal Health Record)ビッグデータを基盤に、理想のライフスタイルを創造する。なお、センシングデータには、例えば、心拍数、ストレス、血圧、ホルモン、血中濃度、薬剤の服用量等がある。また、センシングデータである生体物質には、例えば、生体に含まれる物質や、生体由来物質や、生体の一部の物質や、生体の構成要素である物質等の生体情報がある。なお、生体物質の例としては、細菌、菌類、ウイルス、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、酵素、DNA(deoxyribonucleic acid)、RNA(ribonucleic acid)、有機物質、糖分、塩分、胃酸、農薬、微生物、環境物質等が挙げられる。
【0013】
以下に説明する実施形態では、ユーザが生活している中で、ユーザが日常使用する什器を介して、生体物質を収集することで、生活の中でさりげなく健康状態をユーザにフィードバックする日常人間ドックを実現することにより、結果として将来の病気への不安を解消する。なお、ここでいう什器とは、例えば、洗面所に設置される洗面台(シンク)、トイレに設置される便器などである。また、什器とは、例えば、洗面所に設置される歯ブラシ洗浄機なども該当する。
【0014】
図1は、実施形態の一例を説明するための図である。
図1では、日常人間ドックが活用されている将来の宅内の様子を示す。ここでは、宅内に、祖父、父、母、長女、長男等のユーザが暮らしており、別宅に祖母が暮らしているものとする。
図1に示す実施形態では、ユーザ宅内の洗面所31やトイレ32及び33において、ユーザの体内物質から、ユーザの体内に含まれる細菌や生体由来物質等の生体物質を予測する。ここでいうユーザの体内物質とは、ユーザから得られる物質に該当し、例えば、「唾液」、「汗」、「尿や便等の排出物」、「唾液や汗や尿や便等が含まれる洗浄水」、「体内から取得された血液」等が該当する。以下の実施形態では、例えば、ユーザが洗面所31において使用した歯ブラシ(または、歯間を清掃するための歯間ブラシや、舌を清掃するための舌ブラシ)を洗浄した洗浄水から、体内に含まれる生体物質を予測する。また、例えば、ユーザがトイレ32又は33を利用した際に、肛門等を洗浄した洗浄水から、体内に含まれる生体物質を予測する。
【0015】
そして、実施形態では、収集した生体物質に基づく健康情報をユーザにフィードバックする。例えば、洗面所31を利用している母に対しては、洗面所31の鏡に健康情報(「虫歯のおそれがある」といった情報等)を表示する。また、例えば、携帯端末装置を所有する父に対しては、その携帯端末装置に健康情報(「健康である」といった情報等)を表示する。また、例えば、装着型情報端末を所有する長女に対しては、その装着型情報端末に健康情報(「インフルエンザのおそれがある」といった情報等)を表示する。また、例えば、祖母が暮らす別宅にも実施形態に係る日常人間ドックが適用されている場合には、別宅から送信される祖母の健康情報も所定の表示装置に表示する。
図1の例の場合、居間40に置かれているモニタ(ディスプレイ)に、祖母を含む家族全員の健康情報や、健康情報から予測されるユーザへのアドバイスを表示する。このような生体物質の予測処理や健康情報の表示処理は、宅内に構築される生体管理システムによって実現される。例えば、生体物質の予測処理は、洗面所に設置される歯ブラシ洗浄機に組み込まれるセンサによって検知される情報に基づいて行われたり、トイレに設置される便器に組み込まれるセンサによって検知される情報に基づいて行われたり、ハンディタイプ(持ち運び可能な小型タイプ)の測定測定に組み込まれるセンサによって検知される情報に基づいて行われたりする。
【0016】
ここで、
図1に示したモニタに表示される「健康ニュース」について説明する。例えば、祖父が朝にトイレ32に入り、尿の検査が行われたとする。この結果、生体管理システムが、毎日の検査の履歴から祖父の尿糖値が徐々に上昇していることを検知したものとする。すなわち、生体管理システムが、前日の酒の飲み過ぎや食べ過ぎによる一過性ではないことを検知したものとする。この場合、生体管理システムは、健康情報である尿糖値に基づいて、「お医者さんと相談して」といったアドバイスをモニタに表示する。このとき、生体管理システムは、尿糖値が所定の値(例えば、80[mg/dl])以上になった場合に、アドバスを表示することもできる。なお、空腹時の尿糖の検査では、血糖値が正常範囲以内(110[mg/dl]程度以内)である場合は、尿には糖が出にくいという性質があるが、糖尿病患者では、腎閾値(血糖値が180[mg/dl]程度)を超えると尿に排泄され、尿糖値が例えば、2000[mg/dl]というように急激に増えるといわれている。すなわち、ユーザの体内から尿糖が検出され始めた時が疾病(例えば、糖尿病)の発症リスクの観点から重要である。
【0017】
また、
図1の例において、離れて暮らしている祖母が、トイレに行って、大便や小便の検査の結果、生体物質の中の病原体(細菌やウイルスなど)が見つからないが、祖父同様に尿糖値や乳酸値などが所定の値よりも高くなっているような場合、生体管理システムは、「病院へ行ってね」というアドバイスを表示する。このとき、生体管理システムは、ノロウイルスやO−157などの病原体であるウイルスが検出されたときには、「直ぐ病院に行って下さい!」などの命令的な強いアドバイスを表示してもよい。
【0018】
また、
図1の例において、母が、歯磨きをして、その歯ブラシの洗浄水から特定の菌(例えば、ミュータンス菌やラクトバチラス菌などの虫歯菌)が所定の値(例えば、1x10
6個/ml)を超えるようになった場合に、生体管理システムは、「必ず病院へ行ってね!」といったアドバイスをモニタに表示する。
【0019】
また、
図1の例において、長女から吐き出された排水物(歯磨き後に口を濯いだ水、うがい時に吐き出した水、痰など)から微量のインフルエンザウイルスが検出された場合や、トイレでの尿検査の結果から微量のインフルエンザウイルスが検出された場合など、生体管理システムは、検出限界に近い微少量であっても、伝染の可能性など危険が高いので、例えば「必ず病院へ行ってね!」といった強い表現のアドバイスをモニタに表示する。なお、
図1に示す長女は、右手の保持するハンディタイプの測定測定に痰などを注入することで、検査を行ったものとする。
【0020】
また、
図1の例において、長男が、これまで病院から風邪の症状で薬を処方してもらい、くすりを飲み続けて学校を休んでいたが、自宅のトイレ33での病原菌の検出量が閾値以下になった場合、生体管理システムは、「明日から学校いいよ!」といったアドバイスをモニタに表示する。
【0021】
このように、実施形態に係る生体管理システムは、単にユーザの現時点での健康状態を表示するだけではなく、現時点での健康状態から次の行動に対するアドバイスを表示することができる。例えば、学校において登校停止となる疾病(いわゆる感染症)の代表として、腸管出血性大腸菌感染症O−157が知られているが、生体管理システムは、ユーザから検出される菌に基づいて、「明日から学校いいよ!」等のアドバイスを表示することで、感染拡大を防止するツールとしての役割も担うことができる。
【0022】
また、生体管理システムは、各家庭内で検出結果やアドバイスをユーザが見られるようにすることだけでなく、各ユーザの意思も反映できるような表示を実現してもよい。すなわち、病原体や生体由来物質などの生体物質の検査結果、特定菌や特定のウイルスの検出の有無、生体由来物質の量や日々の量の増加傾向などからの判断により、各個人へのメッセージの形で、個人の勝手な判断ではなく、検査結果に基づく適切は判断ができるようなアドバイスをモニタに表示する。このようにすることにより、ユーザにやさしい表現のメッセージ表示となり、検査結果に対する恐怖感を抱かせないことができる。また、生体管理システムでは、ユーザが更に詳しい結果を要求する場合には、要求された情報を表示ができるようにしてもよい。例えば、音声認識によるコンピュータとの対話形式で、必要な情報をモニタに表示するようにしてもよい。
【0023】
このように、実施形態では、歯磨きや排尿や排便といった行為が行われる日常生活の中で、各ユーザの体内に含まれる生体物質を予測し、予測結果に基づく健康情報をフィードバックすることにより、日常生活の中であたかも人間ドックが日々行われるような日常人間ドックを実現する。
【0024】
上述したような生体物質の予測処理は、宅内に構築される生体管理システムによって実現される。この点について
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係る生体管理システムの一例を示す図である。実施形態に係る生体管理システムとしては、歯ブラシ等を洗浄する洗浄機101と、宅内に設置される宅内サーバ50と、表示装置60とを含むスマートブラシシステム1や、洗面台のシンク201と宅内サーバ50と表示装置60とを含むスマートシンクシステム2や、便器301と宅内サーバ50と表示装置60とを含むスマートトイレシステム3が挙げられる。スマートブラシシステム1、スマートシンクシステム2及びスマートトイレシステム3は、磁気的手法や熱的手法により、ユーザの体内に含まれる生体物質を予測することができる。
【0025】
磁気的手法について説明すると、例えば、スマートブラシシステム1は、歯ブラシを洗浄した洗浄水に含まれる体内物質中の生体物質の抗体に結合した磁気ビーズ等に起因する磁界を測定することで、ユーザの体内に含まれる生体物質として抗原(例えば、細菌)を予測する。また、例えば、スマートシンクシステム2は、うがい後にユーザが吐き出した水等に含まれる体内物質に起因する磁界を測定することで、ユーザの体内に含まれる抗原を予測する。また、例えば、スマートトイレシステム3は、排便後に肛門等を洗浄した洗浄水に含まれる体内物質に起因する磁界を測定することで、ユーザの体内に含まれる抗原を予測する。この場合、宅内サーバ50は、予測された各ユーザの生体物質に関する情報を各種の表示装置60に送信する。これにより、表示装置60は、宅内サーバ50から受信した生体物質に関する情報を表示することで、宅内のユーザに健康情報を知らせることができる。表示装置60としては、例えば、宅内のモニタ、洗面所の鏡、携帯端末装置、装着型情報端末、ウェアラブル端末などが挙げられる。
【0026】
熱的手法について説明すると、例えば、スマートブラシシステム1は、歯ブラシの洗浄水に含まれる体内物質と、所定の酵素との触媒反応時における発熱量を測定することで、ユーザの体内に含まれる生体物質を予測する。同様に、スマートシンクシステム2は、うがい後の水と酵素との触媒反応時における発熱量を測定する。また、スマートトイレシステム3は、肛門等の洗浄水と酵素との触媒反応時における発熱量を測定する。この後の宅内サーバ50による処理は、上述した磁気的手法で説明した処理と同様である。
【0027】
また、ユーザ宅外のネットワーク上に形成されるクラウド(以下、「ヘルスケアクラウド」と表記する場合がある)にはサーバ装置であるPHR処理装置20が構築されてもよい。PHR処理装置20は、宅内サーバ50から各個人の生体情報を収集、蓄積する。このとき、PHR処理装置20は、各個人の生体情報と行動情報とを関連付けてライフログ情報として収集、蓄積してもよい。そして、PHR処理装置20は、時系列で収集した膨大な生体情報とライフログ情報とを複数ユーザについて統合化したPHRビッグデータを、ヘルスケアクラウド上で一元管理する。また、PHR処理装置20は、かかるPHRビッグデータを解析することで、将来の疾病発症リスク、食事量、運動量、又は運動負荷に対する体の応答反応等を高度且つ詳細に分析してもよい。ひいては、疾病発症リスクや発作の予兆、自分の体質、ライフスタイルに最適な食事内容、運動、ライフスタイル、薬やサプリメントの選択等、理想像を目指した日々の生活の設計も可能になる。また、PHR処理装置20は、これらの情報を、ユーザにフィードバックするだけでなく医療機関にフィードバックすることもできる。医師は、PHR処理装置20からフィードバックされた解析の結果をもとに、例えば、ハイリスクな疾病発症予備軍を認識し、必要に応じ積極的にこれらの者にアクセスする。なお、ユーザから送信されたセンシングデータは、ユーザの身体の異常検知にも役立てられる。例えば、PHR処理装置20は、ハイリスクな疾病発症予備軍のユーザについて日々送信されるセンシングデータを常時監視し、その中で異常を検知すると、直ちに医療機関等にフィードバックする。PHR処理装置20が、PHRビッグデータの解析の結果を医療機関や各種企業等に提供することで、様々なサービスへの利用や、新産業創出に貢献することができる。
【0028】
なお、
図2では、宅内サーバ50が生体物質に関する情報を表示装置60に送信する例を示したが、PHR処理装置20が生体物質に関する情報を表示装置60に送信してもよい。この場合、宅内サーバ50は、PHR処理装置20に生体物質に関する情報を中継する中継装置としての役割を担う。
【0029】
以下、第1の実施形態において、磁気的手法による処理について説明し、第2の実施形態において、熱的手法による処理について説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
〔スマートブラシシステム〕
まず、
図2に示したスマートブラシシステム1を例に挙げて説明する。ここでは、歯ブラシ等を洗浄した洗浄水にユーザの体内物質が含まれ、その洗浄水から体内物質に含まれる口腔内細菌(抗原の一例)を磁気的手法により検出する例を示す。
図3は、第1の実施形態に係るスマートブラシシステム1の一例を示す図である。
図3に示すように、スマートブラシシステム1には、洗浄機101と、濃縮装置102と、測定装置103とが含まれる。なお、
図3では、洗浄機101に、濃縮装置102及び測定装置103が外付けされる例を示したが、濃縮装置102及び測定装置103は、洗浄機101内部に組み込まれてもよい。
【0031】
洗浄機101は、ユーザを洗浄するための洗浄器具である歯ブラシ(または、歯間ブラシや舌ブラシ等)を洗浄するための洗浄装置である。例えば、洗浄機101は、洗浄水を入れるための容器と、容器内の洗浄水を濃縮装置102に排水する排水口とを有する。また、洗浄機101は、超音波洗浄の機能を有する。例えば、洗浄機101は、容器内に入れられた洗浄水に歯ブラシが浸された状態で、所定の洗浄開始ボタンが押下された場合に、超音波を発生させることで歯ブラシを洗浄する。ここで、歯ブラシにはユーザから得られる体内物質が付着し得るので、洗浄後の洗浄水には、歯ブラシに付着していた体内物質が含まれ得る。すなわち、洗浄機101は、体内物質が含まれ得る洗浄水を濃縮装置102に排水することとなる。
【0032】
また、洗浄機101には、認証部101aが設けられる。認証部101aは、例えば、ユーザの指紋等を読み取るセンサである。認証部101aを用いた認証処理については後述する。
【0033】
濃縮装置102は、洗浄機101から排水された排水物質である洗浄水から水分を飛ばす濃縮処理を行う。そして、濃縮装置102は、濃縮後の洗浄水を測定装置103に排出する。なお、
図3では、濃縮装置102を示したが、スマートブラシシステム1には、濃縮装置102が含まれなくてもよい。この場合、洗浄機101から排水される洗浄水は、濃縮されることなく測定装置103に流入される。
【0034】
測定装置103は、宅内サーバ50との間で無線通信又は有線通信を行う通信部103a(送信部の一例)を有する。また、測定装置103は、濃縮装置102から排出された洗浄水に、磁気ビーズと、生体物質と反応する反応物質として抗体とを混合させ、混合後の混合物から発生する磁界を測定する。そして、測定装置103は、通信部103aを介して、磁界の測定結果を宅内サーバ50に送信する。
【0035】
ここで、
図3の破線矩形内に測定装置103の内部構成を示す。図示するように、測定装置103は、第1の流路104と、第2の流路105
1〜105
nと、混合部106と、直流磁界発生部107と、交流磁界発生部108と、磁界センサ110と、処理回路120と、測定制御部130とを有する。
【0036】
第1の流路104は、濃縮装置102から排水された体内物質を含む洗浄水が流れる。
図3の例の場合、洗浄水は、濃縮装置102が位置する左側から、第2の流路105
1〜105
nが位置する右側に向かって第1の流路104を流れるものとする。この第1の流路104のうち、濃縮装置102との接続部分は、濃縮装置102から排水された洗浄水(すなわち、洗浄機101から排水された洗浄水)を受け付ける受付部に該当する。
【0037】
第2の流路105
1〜105
nは、第1の流路104から分岐した流路であって、第1の流路104から流入する洗浄水が流れる。
図3の例の場合、洗浄水は、第1の流路104が位置する左側から、混合部106が位置する右側に向かって第2の流路105
1〜105
nを流れるものとする。
【0038】
混合部106は、第2の流路105
1の上流に設けられる。そして、混合部106は、特定の抗体が結合された磁気ビーズを蓄積しており、この磁気ビーズを第2の流路105
1に注入する。これにより、混合部106は、第2の流路105
1を流れる洗浄水に、抗体が結合された磁気ビーズを混合させる。上記の通り、第2の流路105
1を流れる洗浄水には、ユーザから得られる体内物質が含まれ得る。このため、体内物質に特定の抗原(ここの例では、口腔内細菌)が含まれ、かつ、その特定の抗原と抗原抗体反応を起こす抗体が磁気ビーズに結合されている場合には、特定の抗原は、混合部106によって注入された抗体と抗原抗体反応により結合することにより磁気ビーズと結合する。一方、体内物質に含まれる抗原と抗原抗体反応を起こす抗体が磁気ビーズに結合されていない場合には、磁気ビーズに結合されている抗体がないので、体内物質内の抗原と結合できず、抗原抗体反応を起こさない。
【0039】
なお、第2の流路105
1を例に挙げて説明したが、混合部106は、第2の流路105
2〜105
nにも設けられる。そして、第2の流路毎に設けられる混合部106は、それぞれ異なる抗体が結合された磁気ビーズを蓄積する。すなわち、混合部106は、第2の流路毎に異なる抗体を、第2の流路に流れる洗浄水と混合させる。これにより、第2の流路105
1〜105
nでは、混合部106によって注入された抗体と抗原抗体反応を起こす特定の抗原(ここの例では、口腔内細菌)のみが、その抗体を介して磁気ビーズと結合する。一例を挙げて説明すると、第2の流路105
1には、抗原B1と抗原抗体反応を起こす抗体A1が注入され、第2の流路105
2には、抗原B2と抗原抗体反応を起こす抗体A2が注入され、第2の流路105
3には、抗原B3と抗原抗体反応を起こす抗体A3が注入されるものとする。そして、第2の流路105
1〜105
3を流れる洗浄水には抗原B1、B2及びB3が含まれるものとする。この場合、第2の流路105
1では抗原B1のみが抗体A1を介して磁気ビーズと結合し、第2の流路105
2では抗原B2のみが抗体A2を介して磁気ビーズと結合し、第2の流路105
3では抗原B3のみが抗体A3を介して磁気ビーズと結合する。このように、測定装置103では、第2の流路毎に、異なる抗原が抗体を介して磁気ビーズと結合する。なお、以下では、口腔内細菌等の抗原が結合している磁気ビーズを「結合ビーズ」と表記し、抗原が結合していない磁気ビーズを「未結合ビーズ」と表記する場合がある。
【0040】
直流磁界発生部107は、混合部106よりも第2の流路105
1の下流に設けられ、直流磁界を発生する。具体的には、直流磁界発生部107は、直流磁界発生部107から発生する磁界内に第2の流路105
1が位置するように、第2の流路105
1の近傍に設けられる。例えば、直流磁界発生部107は、着磁コイルによって形成され、この着磁コイルに電圧が印加されることで直流磁界を発生する。また、例えば、直流磁界発生部107は、直流磁界を発生する永久磁石や電磁石等であってもよい。このような直流磁界発生部107は、直流磁界を発生させることで、第2の流路105
1を流れる磁気ビーズを着磁する。ここでは第2の流路105
1を例に挙げて説明したが、直流磁界発生部107は、第2の流路105
2〜105
nにも設けられる。なお、混合部106によって着磁済みの磁気ビーズが注入される場合には、測定装置103は、直流磁界発生部107を有しなくてもよい。
【0041】
交流磁界発生部108は、直流磁界発生部107よりも第2の流路105
1の下流に設けられ、交流磁界を発生する。具体的には、交流磁界発生部108は、交流磁界発生部108から発生する磁界内に第2の流路105
1が位置するように、第2の流路105
1の近傍に設けられる。例えば、交流磁界発生部108は、コイルによって形成され、このコイルに電圧が印加されることで交流磁界を発生する。ここでは第2の流路105
1を例に挙げて説明したが、交流磁界発生部108は、第2の流路105
2〜105
nにも設けられる。
【0042】
ここで、洗浄水(実際には磁気ビーズ)から発生する磁界は、交流磁界発生部108から発生する交流磁界に応じて変動する。この点について説明する。
図3に、抗原109
1が抗体109
2を介して結合している磁気ビーズ109
3が洗浄水に含まれる例を示す。また、ここでは図示しないが、混合部106によって注入される抗体と抗原抗体反応を起こす抗原が洗浄水に含まれない場合には、抗原が結合していない磁気ビーズが洗浄水に含まれることになる。また、抗体と抗原抗体反応を起こす抗原が洗浄水に含まれる場合であっても、抗原の量が抗体の量よりも少ない場合には、抗原が結合している磁気ビーズと、抗原が結合していない磁気ビーズとが洗浄水に含まれることになる。このような磁気ビーズは、交流磁界発生部108によって交流磁界が印加された場合に、ブラウン緩和現象により回転する。このブラウン緩和現象によるブラウン回転運動の速さ(周波数)は、磁気ビーズの質量に依存する。具体的には、結合ビーズは、未結合ビーズと比較して抗原の分だけ質量が重くなり、かつブラウン回転運動の回転半径が大きくなる。このため、結合ビーズのブラウン回転運動は、未結合ビーズのブラウン回転運動よりも遅くなる。すなわち、未結合ビーズよりも相対的に質量が重い結合ビーズは、交流磁界発生部108から発生する交流磁界の周波数が低周波であれば、交流磁界に共鳴し、より大きな磁界を発生する。これに対して、結合ビーズよりも相対的に質量が軽い未結合ビーズは、交流磁界発生部108から発生する交流磁界の周波数が高周波であれば、交流磁界に共鳴し、より大きな磁界を発生する。すなわち、ブラウン回転運動に対応する周波数の交流磁界を交流磁界発生部108から発生させることで、結合ビーズから発生する磁界を大きくしたり、未結合ビーズから発生する磁界を大きくすることが可能となる。
【0043】
磁界センサ110及び処理回路120は、交流磁界発生部108によって交流磁界が印加された結合ビーズや未結合ビーズから発生する磁界を測定する。磁界センサ110及び処理回路120については後述する。
【0044】
測定制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。また、例えば、測定制御部130は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、各種プログラムがRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることにより実現される。
【0045】
このような測定制御部130は、測定装置103による処理を制御する測定部に該当する。具体的には、測定制御部130は、認証部101aによって読み取られた指紋の画像を宅内サーバ50に送信する。この場合、宅内サーバ50は、測定制御部130から受信した画像に基づいてユーザ認証を行い、認証結果を測定制御部130に通知する。このとき、宅内サーバ50は、認証成功である場合には、認証結果とともに、ユーザを識別するためのユーザIDを測定制御部130に通知する。
【0046】
そして、測定制御部130は、宅内サーバ50から通知される認証結果が失敗を示す場合には、混合部106に抗体及び磁気ビーズを注入させず、直流磁界発生部107に直流磁界を発生させず、交流磁界発生部108に交流磁界を発生させず、処理回路120に磁界の測定処理を行わせない。これにより、測定制御部130は、ユーザ認証が成功した場合のみ、センシング処理を行うことができる。
【0047】
一方、測定制御部130は、認証結果が成功を示す場合には、混合部106に抗体及び磁気ビーズを注入させ、直流磁界発生部107に直流磁界を発生させ、交流磁界発生部108に交流磁界を発生させ、処理回路120に磁界の測定処理を行わせる。上記のとおり、結合ビーズ及び未結合ビーズから発生する磁界の大きさは、交流磁界の周波数に依存する。このため、測定制御部130は、交流磁界発生部108から発生させる交流磁界の周波数を制御することで、結合ビーズから発生する磁界を大きくしたり、未結合ビーズから発生する磁界を大きくすることができる。例えば、測定制御部130は、結合ビーズから発生する磁界を大きくさせた状態で磁界を測定したり、未結合ビーズから発生する磁界を大きくさせた状態で磁界を測定する。そして、測定制御部130は、第2の流路毎に、このような各種状態で磁界を測定し、第2の流路毎の測定結果を宅内サーバ50に送信する。例えば、測定制御部130は、測定状態を識別する状態情報と、第2の流路に注入される抗体を識別する抗体情報(または、第2の流路を識別する情報)と、磁界の測定結果との組合せを宅内サーバ50に送信する。後述する宅内サーバ50は、磁界の測定結果に基づいて、洗浄水に含まれる結合ビーズの量や、結合ビーズと未結合ビーズの相対量を求める。これにより、宅内サーバ50は、ユーザ体内に含まれる抗原(ここの例では、口腔内細菌)の量や濃度を予測する。
【0048】
なお、抗原及び抗体によるが、抗原抗体反応には所定の時間(例えば、30分〜60分程度)がかかる。このため、
図3に示した第2の流路105
1〜105
nには、開閉可能な弁が設けられてもよい。例えば、混合部106が設けられる位置と直流磁界発生部107が設けられる位置との間や、直流磁界発生部107が設けられる位置と交流磁界発生部108が設けられる位置との間に弁が設けられてもよい。そして、測定制御部130は、抗原抗体反応にかかる時間が経過するまで弁が閉状態となるよう制御し、抗原抗体反応にかかる時間が経過した後に弁を開状態となるよう制御してもよい。
【0049】
〔磁界センサ〕
次に、
図3に示した磁界センサ110について説明する。磁界センサ110は、外部磁界が印加された場合に磁界の関数として透磁率が変化する磁性体を有し、その磁性体の近傍に設けられた伝送線路に通電された電流(キャリア)の位相に基づいて、磁性体に印加された磁界を検出するためのセンサである。なお、伝送線路を流れる電流は、磁性体における磁場の影響によって変化する特性があり、この特性が、ユーザの体内に含まれる抗原の特性を示すと言える。
図4は、第1の実施形態に係る磁界センサ110を示す上面図である。
図5は、
図4のA−A線に沿った矢視の概略断面図である。
【0050】
図4及び
図5に示すように、磁界センサ110は、基板111と、CoNbZr(コバルトニオブジルコニウム)薄膜112と、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)薄膜113と、Cu(銅)薄膜114
1〜114
3とを有する。
【0051】
基板111は、例えば、カリガラスやソーダライムガラス等のガラスによって形成される。基板111のうち、CoNbZr薄膜112やSrTiO薄膜113が積層される基板111の面における短手方向の寸法H1は、例えば1.15[mm]であり、長手方向の寸法H2は、例えば12[mm]である。また、基板111の厚さH3は、例えば1[mm]である。ただし、基板111の材質や寸法は、この例に限られない。
【0052】
CoNbZr薄膜112は、アモルファスであり、レジストパターンが形成された基板111上に、高周波スパッタ法等により磁気インピーダンス効果を有する磁性膜として成膜される。CoNbZr薄膜112の厚さは、例えば5[μm]である。CoNbZr薄膜112が成膜された後にレジスト剥離が実施されることで、磁性膜のパターンが得られる。また、CoNbZr薄膜112は、磁界中熱処理等によって、所定軸方向への磁気異方性が付与される。ここの例では、CoNbZr薄膜112には、短手方向の磁気異方性が付与される。
【0053】
SrTiO薄膜113は、絶縁層としての強誘電体膜であり、CoNbZr薄膜112が成膜された基板111上に、高周波スパッタ法等により成膜される。SrTiO薄膜113の厚さは、例えば6[μm]以下である。
【0054】
Cu薄膜114
1〜114
3は、コプレーナ線路作成用のレジストパターンが形成されたSrTiO薄膜113上に、高周波スパッタ法等により成膜される。具体的には、SrTiO薄膜113上には、膜の密着性向上のための下地として、厚さ0.2[μm]程度のCr(クロム)が成膜される。そして、Cu薄膜114
1〜114
3は、Cr薄膜上に高周波スパッタ法等により成膜される。Cu薄膜114
1〜114
3の厚さは、例えば4[μm]である。Cu薄膜114
1〜114
3が成膜された後にレジスト剥離が実施されることで、コプレーナ線路のパターンが得られる。なお、隣接するCu薄膜の間隔H4は、例えば0.05[mm]である。また、コプレーナ線路の短手方向の寸法H5は、例えば0.3[mm]である。
【0055】
上述した磁界センサ110は、
図3に示した例において、第2の流路105
1を流れる混合物から発生する磁界内(実際には、結合ビーズや未結合ビーズから発生する磁界内)に、磁気インピーダンス効果を有する磁性体であるCoNbZr薄膜112が位置するように、第2の流路105
1の近傍に設けられる。また、磁界センサ110のCu薄膜114
2は、例えば、信号を伝送する伝送線路(ここの例では、コプレーナ線路)となる。このため、第2の流路105
1を流れる結合ビーズや未結合ビーズから磁界が発生した場合、短手方向の磁気異方性が付与された磁性膜(CoNbZr薄膜112)の透磁率は変化する。この磁性膜の透磁率の変化に応じて、コプレーナ線路のインピーダンスや表皮効果が変化するので、コプレーナ線路を流れる電流(キャリア)の位相や振幅は変動する。後述する処理回路120は、磁界センサ110のコプレーナ線路に流れる電流の位相差を検出することで、結合ビーズや未結合ビーズから発生する磁界を測定する。
【0056】
図4及び
図5では直線形状のコプレーナ線路を示したが、コプレーナ線路は直線形状に限られない。この点について
図6を用いて説明する。
図6は、第1の実施形態に係る他の磁界センサを示す上面図である。
図6に例示した磁界センサ110a、110b、110c、110d、110e、110fのそれぞれは、コプレーナ線路114a、114b、114c、114d、114e、114fが形成される。このように、コプレーナ線路は、直線形状に限られず、ミアンダ形状(ジグザグ形状)であってもよい。また、
図6に示した例に限られず、コプレーナ線路は、スパイラル形状であってもよい。
【0057】
なお、
図6では、磁界センサ110a、110b、110c、110d、110e、110fの上部に、磁性薄膜113a、113b、113c、113d、113e、113fが更に設けられる例を示す。このように、伝送線路を磁性薄膜で挟む構造としてもよく、これにより高感度な磁界センサを実現することができる。
【0058】
第1の実施形態に係る測定装置103では、
図4に示した磁界センサ110や、
図6に示した磁界センサ110a、110b、110c、110d、110e、110fのいずれが採用されてもよい。ただし、磁性薄膜と重なるコプレーナ線路が長いほど、高感度に磁界を検出することができる一方でSN比が劣化する傾向にある。このため、検出精度とSN比との兼ね合いにより、いずれかの磁界センサが採用されることが望ましい。
【0059】
また、上記例では、磁界センサ110にコプレーナ線路が形成される例を示したが、この例に限られない。例えば、磁界センサ110には、マイクロストリップ線路や、トリプレート線路が形成されてもよい。
【0060】
また、上記例では、基板111上に、磁性膜(CoNbZr薄膜112)、誘電体膜(SrTiO薄膜113)、伝送線路(Cu薄膜114
1〜114
3)が積層される例を示した。しかし、この例に限られず、磁性膜は、基板上に成膜されずに、伝送線路上に設けられてもよい。この点について
図7を用いて説明する。
図7は、第1の実施形態に係る磁界センサの他の例を示す図である。
図7に示すように、磁界センサ110gは、グランドプレーン115と、絶縁膜116と、導電体117と、磁性薄膜118とを有する。
【0061】
グランドプレーン115上には、絶縁膜116と導電体117とが順に積層される。導電体117は、電流が流れる伝送線路として、マイクロストリップ線路を形成する。そして、磁界センサ110gでは、マイクロストリップ線路上に、磁性薄膜118が載置される。磁性薄膜118としては、例えば、CoNbZr、NiFe(ニッケル合金)等の軟磁性膜が用いられる。なお、磁性薄膜118は、マイクロストリップ線路と直交する方向の磁気異方性が付与されているものとする。
【0062】
図7の例の場合、外部から磁界センサ110gに磁界が印加されると、磁性薄膜118の透磁率が変化することで、伝送線路(マイクロストリップ線路)のインピーダンスが変化する。このため、伝送線路を流れる電流の位相や振幅は、外部磁界の影響により変動する。第1の実施形態では、
図7に例示するような磁界センサ110gが用いられてもよい。
【0063】
なお、
図7では直線形状のマイクロストリップ線路を示したが、マイクロストリップ線路は、ミアンダ形状(ジグザグ形状)やスパイラル形状であってもよい。また、磁界センサ110gには、マイクロストリップ線路ではなく、コプレーナ線路や、トリプレート線路が形成されてもよい。
【0064】
〔処理回路〕
処理回路120は、磁界センサ110に入力される信号と、磁界センサ110から出力される信号とに基づいて、第2の流路を流れる混合物(結合ビーズや未結合ビーズ)から発生する磁界を測定する。例えば、処理回路120は、DMTD(Dual Mixer Time Difference)法などにより磁界を測定する。この点について
図8を用いて説明する。
図8は、第1の実施形態に係る処理回路120の一例を示す図である。
図8に示すように、処理回路120は、発振器121と、位相シフタ122と、発振器123と、ミキサ124a及び124bと、アンプ125a及び125bと、バンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)126a及び126bと、コンパレータ127a及び127bと、カウンタ128とを有する。また、処理回路120には、発振器121とミキサ124aとの間に磁界センサ110が設けられる。
【0065】
発振器121は、所定の周波数f
1の第1の繰り返し信号を発生する。例えば、発振器121は、回路に2〜3[GHz]の交流電流を流す。発振器121から発生する第1の繰り返し信号は、磁界センサ110と、位相シフタ122とに分配される。
【0066】
磁界センサ110に分配される第1の繰り返し信号は、磁界センサ110のコプレーナ線路によって伝送される。ここで、磁界センサ110は、上記の通り、結合ビーズや未結合ビーズから発生する外部磁界が印加されることにより、伝送線路のインピーダンスが変化する。このため、磁界センサ110に外部磁界が印加される場合には、第1の繰り返し信号の位相は変調する。
【0067】
また、位相シフタ122に分配される第1の繰り返し信号は、位相シフタ122によって減衰されるとともに位相シフトされる。ここで、位相シフタ122から出力される第1の繰り返し信号は、磁界センサ110を経由しないため、結合ビーズや未結合ビーズから発生する外部磁界の影響を受けない。このため、位相シフタ122から出力される第1の繰り返し信号の位相は変調しない。
【0068】
発振器123は、第1の繰り返し信号の周波数f
1とは異なる周波数f
2の第2の繰り返し信号を発生する。発振器123から発生する第2の繰り返し信号は、ミキサ124aと、ミキサ124bとに分配される。
【0069】
ミキサ124aは、発振器123から発生する第2の繰り返し信号と、磁界センサ110からの出力信号とを混合する。また、ミキサ124bは、発振器123から発生する第2の繰り返し信号と、位相シフタ122からの出力信号とを混合する。例えば、ミキサ124a及び124bは、2〜3[GHz]の繰り返し信号を5[kHz]程度にダウンコンバートする。
【0070】
ミキサ124aから出力される信号は、アンプ125aによって増幅され、バンドパスフィルタ126aによって所定の周波数の成分のみが通過され、コンパレータ127aによって矩形波に変換される。同様に、ミキサ124bから出力される信号は、アンプ125bによって増幅され、バンドパスフィルタ126bによって所定の周波数の成分のみが通過され、コンパレータ127bによって矩形波に変換される。
【0071】
カウンタ128は、信号波形129aによって示されるようなコンパレータ127aからの出力信号と、信号波形129bによって示されるようなコンパレータ127bからの出力信号との位相差を時間差として計測する。上記の通り、磁界センサ110は、外部磁界が印加された場合に磁界の関数として透磁率が変化する磁性体(例えば、CoNbZr薄膜112)を有する。すなわち、カウンタ128は、計測した位相差に基づいて、磁界センサ110に印加された磁界、すなわち、結合ビーズや未結合ビーズから発生した磁界を計測することができる。
【0072】
このように、
図8に示した処理回路120によれば、出力信号の位相差に基づき磁界を検出することによって、磁界センサ110及び各回路素子の熱雑音によるSN比の制約がなくなるため、高感度の磁気センサユニットを構成することができる。また、
図8に示した処理回路120によれば、ミキサ124a、124bからの出力信号をアンプ125a、125bによってそれぞれ増幅することで、SN比の向上させることができる。
【0073】
〔宅内サーバ〕
次に、宅内サーバ50について説明する。宅内サーバ50は、ユーザ宅内に設けられ、ユーザに関する各種情報を管理する管理装置である。
図9は、第1の実施形態に係る宅内サーバ50の一例を示す図である。
図9に示すように、宅内サーバ50は、通信部51と、ユーザ情報記憶部52と、認証部53と、受信部54と、予測部55と、表示制御部56と、送信部57とを有する。
【0074】
通信部51は、測定装置103の通信部103aとの間で無線通信や有線通信を行う。例えば、通信部51は、通信部103aから、認証部101aによって取得された認証用の指紋画像や、測定装置103によって測定された磁界に関する情報を受信する。
【0075】
ユーザ情報記憶部52は、ユーザに関する各種情報を記憶する。例えば、ユーザ情報記憶部52は、宅内に所在する家族や、別宅に暮らす家族に関する情報を記憶する。ここで、
図10に、第1の実施形態に係るユーザ情報記憶部52の一例を示す。
図10に示すように、ユーザ情報記憶部52には、「ユーザID」、「日時」、「抗原」といった項目が含まれる。
【0076】
「ユーザID」は、ユーザを識別するための識別情報を示す。「日時」は、ユーザから口腔内細菌等の生体物質がセンシングされた日時を示す。「抗原」は、ユーザの体内に含まれる抗原の量を示す。なお、
図10では、歯周病を起こす嫌気性菌として知られている「ポルフィノモナスジンジバリス」と「プレボテラインテルメディア」を示したが、これに限られない。例えば、ユーザ情報記憶部52は、歯周病を起こす嫌気性菌として、「アクチノバチラスアクチノミセテムコミタンス」、「ポルフィロモナスジンジバリス」、「フソバクテリウムヌクレアトゥム」、「トレポネーマデンティコーラ」等を記憶してもよい。また、ユーザ情報記憶部52は、虫歯原因菌(例えば、「ミュータンス菌」や「ラクトバチラス菌」)等を記憶してもよい。
【0077】
すなわち、
図10では、2014年12月1日7時にスマートブラシシステム1を利用した祖父の体内に、「ポルフィノモナスジンジバリス」が「M11」個含まれ、「プレボテラインテルメディア」が「N11」個含まれると予測された例を示す。なお、ここでは、ユーザ情報記憶部52に抗原の量が記憶される例を示したが、抗原の濃度(個/ml)が記憶されてもよい。
【0078】
認証部53は、測定装置103から受信した認証用の指紋画像に基づいて、ユーザの認証処理を行う。例えば、
図10では図示を省略したが、ユーザ情報記憶部52は、予め各ユーザによって登録された指紋画像を記憶する。この場合、認証部53は、認証用の指紋画像と、登録済みの指紋画像とを比較することで認証処理を行う。そして、認証部53は、通信部51を介して、認証結果を測定装置103に通知する。上記の通り、宅内サーバ50は、認証成功である場合には、認証結果とともにユーザIDを測定制御部130に通知する。
【0079】
受信部54は、通信部51を介して、測定装置103から磁界の測定結果を受信する。例えば、受信部54は、測定装置103から、測定状態を識別する状態情報と、第2の流路に注入される抗体を識別する抗体情報と、磁界の測定結果との組合せを受信する。
【0080】
予測部55は、受信部54によって受信された磁界の測定結果に基づいて、混合部106によって混合された抗体毎に、その抗体との間で抗原抗体反応を起こす抗原であってユーザの体内に含まれる抗原を予測する。具体的には、予測部55は、測定装置103から送信される抗体情報に基づいて、抗原の種類を特定する。そして、予測部55は、測定装置103から送信される状態情報と磁界の測定結果に基づいて、結合ビーズの量や、未結合ビーズの量を予測する。例えば、予測部55は、結合ビーズから発生する磁界を大きくした状態で測定装置103により測定された磁界に基づいて、結合ビーズの量を予測することで、結合ビーズに結合されている抗原の量を予測する。また、例えば、予測部55は、未結合ビーズから発生する磁界を大きくした状態で測定装置103により測定された磁界に基づいて、未結合ビーズの量を予測してもよい。そして、予測部55は、結合ビーズと未結合ビーズとの相対量を予測してもよい。なお、測定装置103は、結合ビーズから発生する磁界を大きくした状態のみで磁界を測定してもよい。この場合、予測部55は、結合ビーズの量のみを予測してもよい。また、予測部55は、第2の流路を流れる洗浄水の量が予め決められている場合には、結合ビーズの量から洗浄水に含まれる抗原の濃度を予測してもよい。このようにして、予測部55は、ユーザ体内に含まれる抗原(ここの例では、口腔内細菌)の種類及び量を予測する。そして、予測部55は、予測結果である抗原の量を、ユーザIDに対応付けてユーザ情報記憶部52に格納する。なお、予測部55による予測結果は、ユーザ体内に含まれる抗原の種類及び量の検出結果であると言える。すなわち、予測部55は、抗原の種類及び量を検出するとも言える。
【0081】
なお、上記例に限られず、予測部55は、ユーザの体内に含まれる抗原の量を予測せずに、単にユーザの体内に所定の抗原が含まれるか否かを予測してもよい。また、予測部55は、予測結果である抗原等の生体物質から、ユーザの健康状態を判定する判定部として機能してもよい。例えば、予測部55は、予測結果である抗原の量に基づいて、ユーザの健康状態を判定してもよい。すなわち、予測部55は、ユーザが患っている病気、又は、ユーザが将来患うおそれがある病気を予測してもよい。一例を挙げて説明すると、予測部55は、ユーザの体内に虫歯原因菌が含まれると予測したものとする。このとき、予測部55は、予測した虫歯原因菌の量が所定量よりも多い場合には、ユーザが虫歯を患っていると判定したり、虫歯を患うおそれがあると判定する。
【0082】
表示制御部56は、予測部55による予測結果を表示装置60aに表示させる。例えば、表示制御部56は、予測部55による予測結果を表示装置60aに送信することで、予測結果を表示装置60aに表示させる。ここで、
図11に、第1の実施形態における表示例を示す。
図11では、予測部55によって虫歯原因菌がユーザ体内に含まれると予測された例を示す。また、
図11では、洗面所の鏡が表示機能を有する表示装置60aである例を示す。このような表示装置60aは、例えば、ユーザと対向する対向面が鏡のように特殊加工された透明部材(例えば、ガラス等)が表示ディプレイの表示面に取り付けられることで実現される。また、
図11では、表示装置60aが無線通信機能を有するものとする。
【0083】
図11に示すように、表示制御部56は、ユーザ体内に虫歯原因菌が含まれると予測部55に予測された場合に、虫歯原因菌が発見された旨を表示装置60aに表示制御する。具体的には、表示制御部56は、虫歯原因菌が発見された旨のメッセージを表示装置60aに送信する。これにより、表示装置60aは、虫歯原因菌が発見された旨のメッセージ(例えば、「虫歯菌が発見されました」)を表示する。
【0084】
また、例えば、表示制御部56は、予測部55によって虫歯原因菌の量が予測された場合に、虫歯原因菌の量に関する情報を表示装置60aに表示制御してもよい。この場合、表示装置60aは、虫歯原因菌の量に関するメッセージ(例えば、「虫歯菌が20個発見されました」)を表示する。また、例えば、表示制御部56は、予測部55によってユーザの健康状態が予測された場合には、健康状態に関するメッセージを表示装置60aに表示制御してもよい。
図11の例では、表示装置60aは、虫歯原の危険性に関するメッセージ(例えば、「虫歯のおそれがあります」、「虫歯の可能性は低いです」)を表示制御する。
【0085】
また、表示制御部56は、予測部55による予測結果を時系列に表示装置60aに表示させてもよい。例えば、表示制御部56は、ユーザ情報記憶部52から所定期間(例えば、1週間や1か月)に収集された抗原の量を取得し、抗原の量とセンシング日時との関係を示すグラフに関する情報を表示装置60aに送信する。このとき、表示制御部56は、グラフ上に虫歯の危険性に関するメッセージを含めてもよい。この場合、表示装置60aは、例えば、抗原の量とセンシング日時との関係を示すグラフとともに、虫歯の危険性に関するメッセージ(例えば、「ローリスク」、「ハイリスク」)を表示制御する。
図11の例では、表示装置60aは、30日前から20日前までは虫歯原因菌の量がローリスクの範囲であったものの、10日前から今日までに虫歯原因菌の量がハイリスクの範囲であることを表示する。これにより、ユーザは、時系列に表示される病気の危険度を把握することで、これまでの生活を振り返り、今後の生活習慣を改善することができる。
【0086】
また、
図11では図示することを省略したが、表示制御部56は、
図1を用いて説明したように、予測部55によって予測された抗原の量に応じたアドバイス(例えば、「1日3回歯磨きしましょう」)を表示装置に表示させてもよい。この点について一例を挙げて説明する。例えば、宅内サーバ50には、抗原量の閾値と、ユーザの健康状態と、アドバイスとを対応付けた健康状態テーブルを保持するものとする。この場合、予測部55は、例えば、予測結果である抗原等の量が閾値を超えた場合に、健康状態テーブルにおいて閾値に対応する健康状態がユーザの状態であると判定する。そして、表示制御部56は、健康状態テーブルにおいてユーザの健康状態に対応するアドバイスを表示装置に表示させてもよい。なお、健康状態テーブルには、同一の抗原に対して複数の閾値が記憶されてもよい。例えば、健康状態テーブルには、抗原Aの閾値「T
1[個/dl]」と、健康状態「虫歯なし」と、アドバイス「よく歯磨きできています」とを対応付けた情報と、抗原Aの閾値「T
2[個/dl]」と、健康状態「虫歯になる恐れあり」と、アドバイス「1日3回歯磨きしましょう」とを対応付けた情報と、抗原Aの閾値「T
3[個/dl]」と、健康状態「虫歯の可能性が高い」と、アドバイス「必ず歯医者へ行ってね!」とを対応付けた情報とを記憶する。ここでは、「T
1<T
2<T
3」であるものとする。この場合、予測部55は、予測結果である抗原Aの量が閾値T
1未満である場合には、ユーザの健康状態が「虫歯なし」であると判定する。そして、表示制御部56は、アドバイス「よく歯磨きできています」(又は、健康状態「虫歯なし」)を表示装置に表示させる。また、予測部55は、予測結果である抗原Aの量が閾値T
1以上かつ閾値T
2未満である場合には、ユーザの健康状態が「虫歯になる恐れあり」と判定する。そして、表示制御部56は、アドバイス「1日3回歯磨きしましょう」を表示装置に表示させる。また、予測部55は、予測結果である抗原Aの量が閾値T
3以上である場合には、ユーザの健康状態が「虫歯の可能性が高い」と判定する。そして、表示制御部56は、アドバイス「必ず歯医者へ行ってね!」を表示装置に表示させる。なお、ここでは、虫歯を例に挙げて説明したが、健康状態テーブルには、予測され得る生体物質毎に、健康状態(糖尿病など)やアドバイスが対応付けられた情報が記憶される。また、表示制御部56は、これまで表示してきたアドバイスに応じて、現時点で表示させるアドバイスを変動させてもよい。例えば、表示制御部56は、予測部55によって感染症の病原菌がユーザの体内にあると予測されたことから、これまでに「学校に行かないで」といったアドバイスを表示し続けていたものとする。その後に、表示制御部56は、予測部55によって感染症の病原菌がユーザの体内にあると予測されなくなった最初の日には、「学校に行っていいよ」といったアドバイスを表示してもよい。そして、この例において、表示制御部56は、「学校に行っていいよ」と表示した翌日からは、予測部55によって感染症の病原菌がユーザの体内にあると予測されていない限り、例えば「今日も健康です」といったアドバイスを表示する。
【0087】
また、例えば、宅内サーバ50は、予測部55による予測結果をPHR処理装置20に送信することで、PHR処理装置20を介して医師からのアドバイスを取得してもよい。この場合、表示制御部56は、医師からのアドバイスを表示装置に表示させてもよい。
【0088】
また、
図11では、鏡が表示機能を有する表示装置60aであるものとして説明したが、この例に限られない。この点について
図12を用いて説明する。
図12は、第1の実施形態における表示例を示す図である。
図12に示すスマートブラシシステム1には、投影機70が含まれる。投影機70は、例えば、洗面所の天井や壁に取り付けられ、宅内サーバ50との間における無線通信機能を有する。そして、投影機70は、宅内サーバ50から受信する各種メッセージを洗面台の鏡60bに視認可能に投影する。このように、投影機70によって鏡に各種メッセージを表示させてもよい。
【0089】
また、
図11及び
図12では、洗面台の鏡に各種メッセージが表示される例を示したが、
図2に示した例のように、表示制御部56は、宅内のモニタ、携帯端末装置、装着型情報端末、ウェアラブル端末などの表示装置に各種メッセージを表示させてもよい。
【0090】
また、上記例では、宅内サーバ50が表示装置60aに各種メッセージを送信する例を示したが、宅内サーバ50は、各種メッセージを測定装置103に送信してもよい。この場合、測定装置103は、自装置(測定装置103)に予め対応付けられている表示装置に、宅内サーバ50から受信した各種メッセージを表示させる。例えば、洗面所に配置される洗浄機101の測定装置103には、洗面台の鏡に設けられた表示装置60aが対応付けられているものとする。この場合、測定装置103は、表示装置60aに各種メッセージを表示させる。これにより、宅内サーバ50は、ユーザ近傍にある表示装置に、そのユーザに対する各種メッセージを表示させることができる。
【0091】
送信部57は、予測部55による予測結果をPHR処理装置20に送信する。例えば、送信部57は、予測部55による予測処理が行われるたびに、ユーザIDと予測結果とをPHR処理装置20に送信する。また、例えば、送信部57は、ユーザ情報記憶部52に記憶されている各種情報を定期的に取得し、取得した各種情報をPHR処理装置20に送信する。このようにして、PHR処理装置20は、各宅内に設置された宅内サーバから各個人の生体情報を収集、蓄積し、複数ユーザについて統合化したPHRビッグデータを、ヘルスケアクラウド上で一元管理する。
【0092】
〔処理手順〕
次に、第1の実施形態に係るスマートブラシシステム1による処理手順について説明する。
図13は、第1の実施形態に係るスマートブラシシステム1による処理手順を示すシーケンス図である。
【0093】
図13に示すように、洗浄機101は、ユーザ操作に従って、超音波洗浄を行う(ステップS101)。超音波洗浄に用いられた洗浄水は、測定装置103に排水される(ステップS102)。測定装置103に流入した洗浄水は、第1の流路104から分岐した第2の流路105
1〜105
nを流れる。なお、ここでは省略したが、洗浄水は、濃縮装置102によって濃縮された後に測定装置103に排水されてもよい。
【0094】
続いて、測定装置103は、第2の流路毎に、特定の抗体が結合された磁気ビーズを洗浄水に注入する(ステップS103)。そして、測定装置103は、交流磁界を洗浄水に印加した上で(ステップS104)、洗浄水から発生する磁界を測定する(ステップS105)。そして、測定装置103は、磁界の測定結果を宅内サーバ50に送信する(ステップS106)。
【0095】
宅内サーバ50は、測定装置103から受信した磁界の測定結果に基づいて、体内に含まれる抗原を予測する(ステップS107)。
図13の例では、歯ブラシ等の洗浄機101を例に挙げているので、宅内サーバ50は、体内に含まれる口腔内細菌を予測する。そして、宅内サーバ50は、予測結果に基づく情報(例えば、抗原の量、ユーザの健康情報)をユーザにフィードバックする(ステップS108)。
【0096】
〔変形例(洗浄処理)〕
上述した洗浄機101は、複数のユーザによって利用される場合がある。この場合、所定のユーザが洗浄機101を利用することで、第1の流路104及び第2の流路105
1〜105
nに所定のユーザの体内物質や結合ビーズが残存する可能性がある。そこで、スマートブラシシステム1は、第1の流路104及び第2の流路105
1〜105
nを洗浄する洗浄機能を有してもよい。
【0097】
図14は、第1の実施形態に係る洗浄処理を説明するための図である。
図14に示した洗浄機101は、洗浄ボタン101bが設けられる。ユーザは、洗浄機101の容器に歯ブラシ等を入れずに水のみを入れた状態で洗浄ボタン101bを押下する。この場合、洗浄ボタン101bは、洗浄処理を行うよう測定制御部130に通知する。
【0098】
測定制御部130は、洗浄処理を行う旨の通知を受信した場合には、混合部106に抗体及び磁気ビーズを注入させず、直流磁界発生部107に直流磁界を発生させず、交流磁界発生部108に交流磁界を発生させず、処理回路120に磁界の測定処理を行わせない。これにより、洗浄機101の容器に入れられた水が流れることにより、第1の流路104及び第2の流路105
1〜105
nが洗浄される。この結果、第1の実施形態に係るスマートブラシシステム1では、複数のユーザによって洗浄機101が利用される場合であっても、ユーザの体内に含まれる抗原を高精度に予測することができる。
【0099】
また、
図14に示す例において、スマートブラシシステム1は、洗浄機101の洗浄状態を予測する予測処理を行ってもよい。具体的には、測定制御部130は、上述した洗浄処理において水が第1の流路104及び第2の流路105
1〜105
nに流れている状態で、交流磁界発生部108に交流磁界を発生させ、処理回路120に磁界の測定処理を行わせる。これにより、宅内サーバ50の予測部55により洗浄後の第2の流路105
1〜105
nに残存する抗原の量が予測される。このとき、予測部55は、予測した抗原の量が所定の閾値以下である場合には、洗浄が十分であると予測し、抗原の量が所定の閾値よりも多い場合には、洗浄が不十分であると予測する。この場合、表示制御部56は、洗浄状態の予測結果に関する情報を表示装置60aに表示制御してもよい。
【0100】
例えば、予測部55によって洗浄が不十分であると予測されたものとする。この場合、表示制御部56は、
図14の左側に示すように、洗浄が不十分であることを示すメッセージ(例えば、「もう1度洗浄してください!」)を表示装置60aに表示させる。この状態で再度洗浄が行われ、予測部55によって洗浄が十分であると予測されたものとする。この場合、表示制御部56は、
図14の右側に示すように、洗浄が十分であると判定されたメッセージ(例えば、「きれに洗浄できました」)を表示させる。このように、測定装置103の洗浄状態を予測することにより、十分に洗浄された洗浄機101をユーザに利用させることができるので、ユーザの体内に含まれる抗原を更に高精度に予測することができる。
【0101】
〔変形例(予測タイミング)〕
上述した抗原抗体反応には、30分〜60分程度がかかる場合がある。そこで、上記の通り、測定装置103の第2の流路105
1〜105
nに開閉可能な弁が設けられてもよい点を説明した。ここで、同一の抗原であっても、全ての抗原における抗原抗体反応が一律に30分〜60分程度がかかるわけではなく、一部の抗原は即座に抗原抗体反応を起こす可能性もある。そこで、上述したスマートブラシシステム1では、ユーザが洗浄機101を利用した直後に「体内に抗原が含まれるか否か」を予測し、抗原抗体反応に要する十分な時間(例えば、30分〜60分)が経過した後に「体内に含まれる抗原の量」を予測してもよい。
【0102】
図15は、第1の実施形態における表示例を示す図である。
図15に示した例では、ユーザによって、7時に洗浄機101が利用されたものとする。この場合、測定装置103は、洗浄機101から流入した洗浄水に抗体及び磁気ビーズが混合されてから任意の時間が経過した後に(例えば、混合直後や、1分経過後や、5分経過後)、上述した磁界の測定処理を行う。そして、宅内サーバ50は、この測定結果に基づいて、ユーザ体内に抗原が含まれるか否かを予測し、予測結果(例えば、「虫歯原因菌が発見されました。危険な菌の量か・・・」)を表示装置60aに表示させる。さらに、測定装置103は、前述の任意の時間よりも長い時間(例えば、30分)が経過した後に、上述した磁界の測定処理を再度行う。そして、宅内サーバ50は、この測定結果に基づいて、ユーザ体内に含まれる抗原の量を予測し、予測結果に基づく情報(例えば、「・・・危険な量ではありません。」)を表示装置60aに表示させる。このように、スマートブラシシステム1では、抗原抗体反応に時間を要する場合であっても、病気の原因菌の有無をユーザに即座にフィードバックすることができる。
【0103】
〔変形例(予測処理)〕
また、上述した測定装置103は、第2の流路105
1〜105
nのうち、所定の第2の流路を比較用として抗体及び磁気ビーズを注入しないように制御してもよい。この場合、宅内サーバ50は、抗体及び磁気ビーズが注入されない第2の流路において測定される比較用の磁界と、抗体及び磁気ビーズが注入される第2の流路において測定される磁界とを比較することで、高精度かつ素早く予測結果を得ることができる。具体的には、予測部55は、比較用の磁界と、予測対象の第2の流路に対応する磁界との差異が所定値以上になった時点で、体内に抗原が含まれていると予測する。このように、予測部55は、比較用の磁界を用いることで、極力早く抗原の有無を予測することができる。また、予測部55は、抗原抗体反応に要する時間が経過した後にも、双方の磁界の差異に基づくことで、抗原の量を高精度に予測することができる。
【0104】
〔変形例(他のシステム)〕
また、上述した第1の実施形態では、洗浄機101を含むスマートブラシシステム1を例に挙げて説明した。しかし、上述した第1の実施形態は、スマートシンクシステム2やスマートトイレシステム3にも適用することができる。
【0105】
図16は、第1の実施形態に係るスマートシンクシステム2の一例を示す図である。
図16に示すように、スマートシンクシステム2には、シンク201と、濃縮装置202と、測定装置203とが含まれる。シンク201は、ユーザの排出物が排出され、その排出物を排水する什器である。例えば、シンク201は、ユーザがうがい時に吐き出した水や、ユーザが歯磨き時に吐き出した水や、ユーザが手や顔の洗浄に用いた水を濃縮装置202に排水する。また、高圧水流や空圧によって口腔内(歯や歯間や歯ぐき)を洗浄する口腔洗浄器も知られている。この場合、シンク201は、口腔洗浄器の使用時に出る水や、口腔洗浄器を洗浄する洗浄水を排水する。このようなシンク201により排水される水は、体内物質が含まれることがある。濃縮装置202は、
図3に示した濃縮装置102と同様の処理を行う。測定装置203は、
図3に示した測定装置103と同様の処理を行う。また、シンク201に設けられる認証部201aは、
図3に示した認証部101aと同様の処理を行う。ここでは、濃縮装置202、測定装置203、認証部201aによる処理の説明を省略する。
【0106】
このようなスマートシンクシステム2によれば、「うがい」、「歯磨き」、「手洗い」、「洗顔」といった行為を行う日常生活において、口腔内細菌や、手や顔に付着している細菌を検出することができる。
【0107】
なお、口腔内細菌は、起床直後のユーザの口腔内に多く含まれていることが知られている。このため、スマートシンクシステム2では、
図16に示すように、「歯磨きの前にうがいをしてください」といったメッセージを洗面台の鏡に表示してもよい。これにより、起床直後のうがい水をシンク201に吐き出すことをユーザに促すことができるので、口腔内細菌を効率的に検出することができる。
【0108】
図17は、第1の実施形態に係るスマートトイレシステム3の一例を示す図である。
図17に示すように、スマートトイレシステム3には、便器301と、濃縮装置302と、測定装置303とが含まれる。便器301は、ユーザから排出される物質を排水する。便器301には、肛門等を洗浄するためのノズルが設けられ、ノズルの先端には受け皿301bが設けられる。スマートトイレシステム3では、ユーザの肛門等を洗浄した洗浄水を受け皿301bにより受け、受けた洗浄水を真空吸引法等により採取して濃縮装置302に排水する。濃縮装置302は、
図3に示した濃縮装置102と同様の処理を行う。測定装置303は、
図3に示した測定装置103と同様の処理を行う。また、便器301に設けられる認証部301aは、
図3に示した認証部101aと同様の処理を行う。ここでは、濃縮装置302、測定装置303、認証部301aによる処理の説明を省略する。
【0109】
このようなスマートトイレシステム3によれば、ユーザの日常生活において、腸内細菌を検出することができる。腸内細菌の中に感染症に繋がる細菌も知られているが、スマートトイレシステム3では、検出された腸内細菌を宅内の表示装置に表示することで、感染症の拡大防止を図ることができる。なお、スマートトイレシステム3によって検出される腸内細菌の例としては、現代社会で発生率が高いノロウイルスやカンピロバクター、現代社会で発生率が低いサルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などが挙げられる。
【0110】
〔変形例(予測対象)〕
また、第1の実施形態では、体内の生体物質と反応する反応物質として抗体を洗浄水等に注入する例を示した。しかし、上述した測定装置103、203及び303は、抗体ではなく、反応物質として抗原を注入してもよい。そして、宅内サーバ50は、測定装置103、203及び303による磁界の測定結果に基づいて、体内に含まれる抗体(例えば、タンパク質等の免疫物質)を予測してもよい。この場合、宅内サーバ50は、体内に含まれる抗体が正常値であればユーザが健康であると予測し、予測結果を各種表示装置に表示させてもよい。
【0111】
〔効果〕
第1の実施形態によれば、混合物から発生する磁界を上述した磁界センサ110によって精度良く測定することができるので、ユーザの体内に含まれる生体物質を精度良く検出することができる。さらに、第1の実施形態によれば、第2の流路毎に異なる抗体や抗原を注入するので、1回の処理で複数項目の抗原や抗体等を検出することができる。上述してきた日常人間ドックでは、歯ブラシの洗浄機等にセンサが設けられるので、多項目を検出可能な測定装置103を用いることで、この日常人間ドックを実現することが可能になる。
【0112】
(第2の実施形態)
〔スマートトイレシステム〕
第2の実施形態では、生体管理システムによる熱的手法の処理について説明する。まず、生体管理システムのうち、スマートトイレシステムを例に挙げて熱的手法の処理について説明する。
図18は、第2の実施形態に係るスマートトイレシステム4の一例を示す図である。
図18に示すように、スマートトイレシステム4には、便器401と宅内サーバ50と表示装置60とが含まれる。
【0113】
便器401には、認証部401aと、測定装置410とが設けられる。認証部401aは、
図3に示した認証部101aと同様に、ユーザの指紋等を読み取るセンサに該当する。
【0114】
測定装置410は、便器401の便座の裏側又は便座の中に設置される。また、測定装置410には、内部が空洞の筒状に形成されたアーム410aが取り付けられる。アーム410aの一端は、測定装置410に取り付けられる。また、アーム410aの他端には、受け皿が設けられるとともに、液体との接触を検知するための液体検知センサが受け皿上に設けられる。また、アーム410aは、
図18に示すように、測定装置410に取り付けられる一端を支点として搖動可能である。なお、アーム410aは、ユーザによって便器401が利用されていない場合には、便座の裏側又は便座の中に収納される。
【0115】
このような測定装置410は、ユーザによって便器401が利用される場合(例えば、便座の蓋が開かれた場合や、認証部401aを介した認証が成功した場合)、アーム410aを搖動させることで、ユーザから排出される尿とアーム410aとを接触させる。例えば、測定装置410は、アーム410aの液体検知センサが液体との接触を検知するまでアーム410aを搖動させ、液体との接触が検知された場合に、アーム410aを停止させる。これにより、アーム410aの受け皿にはユーザから排出された尿が入る。そして、受け皿が受けた尿は、アーム410a内を介して測定装置410に流入する。測定装置410は、このような尿と所定の酵素とを触媒反応させ、触媒反応における発熱量を測定し、測定結果を宅内サーバ50に送信する。宅内サーバ50は、発熱量の測定結果に基づいて、尿に含まれる基質(例えば、グルコース:尿糖)等である生体物質を予測する。そして、宅内サーバ50は、PHR処理装置20や各種の表示装置60に予測結果を送信する。これにより、PHR処理装置20は、各個人の生体情報を蓄積する。また、表示装置60は、宅内サーバ50から受信した予測結果等を表示する。
【0116】
〔測定装置〕
次に、
図18に示した測定装置410について説明する。
図19は、第2の実施形態に係る測定装置410の一例を示す図である。
図19に示すように、測定装置410は、通信部411と、センサチップ420と、測定制御部430とを有する。
【0117】
通信部411は、宅内サーバ50との間で無線通信又は有線通信を行う。例えば、通信部411は、認証部401aによって取得された認証用の指紋画像や、後述する測定制御部430によって測定された発熱量の測定結果を宅内サーバ50に送信する送信部に該当する。
【0118】
センサチップ420は、アーム410aを介して流入されるユーザの尿と、所定の酵素との触媒反応による温度変化を計測する。例えば、センサチップ420は、測定装置410に固定されてもよいし、測定装置410に対して取り外し可能であってもよい。センサチップ420については後述する。
【0119】
測定制御部430は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現される。また、例えば、測定制御部430は、CPUやMPU等によって、各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0120】
このような測定制御部430は、測定装置410による処理を制御する測定部に該当する。具体的には、測定制御部430は、宅内サーバ50から通知される認証結果が成功を示す場合には、便座に収納されているアーム410aを搖動させることで、ユーザから排出される尿とアーム410aとを接触させる。この場合、測定制御部430は、センサチップ420によって検出された温度変化に基づいて、尿と酵素との触媒反応による発熱量を算出し、算出した発熱量を通信部411を介して宅内サーバ50に送信する。
【0121】
一方、測定制御部430は、認証結果が失敗を示す場合には、アーム410aを搖動させずに便座に収納させたままとすることで、ユーザから排出される尿とアーム410aとを接触させない。この場合、測定制御部430は、発熱量の算出処理や、発熱量を宅内サーバ50に送信する処理を行わない。
【0122】
また、測定制御部430は、センサチップ420を洗浄する処理を行う。例えば、
図18に示した便器401には、水を放出する放水部403が設けられる。そして、測定制御部430は、ユーザによって便器401が使用されてから所定時間が経過した場合や、アーム410aの液体検知センサが液体との接触を検知してから所定時間が経過した場合に、放水部403からアーム410aの受け皿に水が放出されるよう放水部403を制御する。これにより、放水部403から放出された水は、アーム410aを介してセンサチップ420に流入する。この結果、センサチップ420は、放水部403からの水によって洗浄される。
【0123】
〔センサチップ〕
次に、
図19に示したセンサチップ420について説明する。センサチップ420は、生体物質と酵素等との熱反応による温度変化を利用して、常温かつ低消費電力であっても、生体物質の種類や量を特定可能にするカロリメトリックセンサである。
図20は、第2の実施形態に係るセンサチップ420の一例を示す図である。
図20に示すように、センサチップ420は、基板421と、第1の温度センサとしての絶対温度センサ422と、試料注入孔423と、流路424
1〜424
3と、反応部425
1〜425
3と、第2の温度センサとしての温度センサ426
1〜426
3と、電極427
1〜427
3と、共通電極428とを有する。
【0124】
基板421は、例えば、半導体のシリコン単結晶基板である。絶対温度センサ422は、例えばpn接合ダイオードであり、基板421上に設けられる。絶対温度センサ422は、基板421の絶対温度を計測する。
【0125】
試料注入孔423は、アーム410aを介して尿等の試料が注入される。流路424
1〜424
3は、試料注入孔423から分岐した分岐流路であって、試料注入孔423から排出部まで延伸する。流路424
1〜424
3は、例えばマイクロキャピラリやマイクロチャネルに該当し、試料注入孔423に注入された尿等を毛細管現象により排出部に向かって移動させる。なお、この例に限られず、流路424
1〜424
3は、電気泳動法もしくは誘電泳動法により、試料注入孔423に注入された尿等を排出部に向かって移動させてもよい。排出部は、便器401の排水路と連結されており、試料注入孔423に注入された尿や水等を排水路に排出する。この試料注入孔423は、便器401から排出された尿を受け付ける受付部に該当する。
【0126】
このように、第2の実施形態に係るセンサチップ420では、試料注入孔423に注入された試料が流路424
1〜424
3から排出部へ排出されるので、容易に洗浄することができる。具体的には、上述した測定制御部430は、放水部403を制御することでセンサチップ420を洗浄する。このとき、センサチップ420に注入済みの尿は、放水部403からの洗浄水によって排出部へ洗い流される。この結果、センサチップ420は、容易に洗浄可能であり、繰り返し何度も利用することが可能となる。
【0127】
反応部425
1〜425
3は、流路424
1〜424
3のうち、試料注入孔423と、排出部との間の位置にそれぞれ設けられる。反応部425
1〜425
3には、流路424
1〜424
3を移動する尿が入る試料ホルダが形成される。また、反応部425
1〜425
3には、特定の基質に対して触媒活性機能部位がある酵素が固定される。例えば、反応部425
1〜425
3には、酵素溶液と光架橋性ポリビニルアルコール樹脂との混合物が添付されることで、特定の酵素が固定される。なお、反応部425
1〜425
3には、酵素とともに、触媒反応を活性化させる補酵素が固定されてもよい。
図21に、第2の実施形態における酵素や補酵素の一例を示す。
図21では、各種基質と、基質に対応する酵素や補酵素等の具体例を示す。例えば、
図21に示すように、基質「グルコース」と酵素「グルコースオキシダーゼ」とは触媒反応することが知られている。なお、反応部425
1〜425
3としては、例えば、反応部425
1〜425
3と反応部425
1〜425
3の前後における流路424
1〜424
3の一部とに対向する基板421に空洞が形成される架橋構造を採用することができる。また、センサチップ420の洗浄を要しない場合には、反応部425
1〜425
3としては、例えば、特許文献5に開示されているカンチレバ構造を採用することができる。また、反応部425
1〜425
3には、試料ホルダを所定温度(例えば、38[℃])に保つ加熱部(例えば、薄膜ヒータ)が設けられてもよい。加熱部が設けられることにより、試料ホルダを触媒反応に適した温度(例えば、38[℃])に保つことができ、かつ、試料ホルダを同一環境に保つことができるので、発熱量を精度良く測定することができる。
【0128】
ここで、反応部425
1〜425
3には、それぞれ異なる酵素が固定される。すなわち、流路424
1〜424
3を移動する尿に含まれる各種基質のうち、特定の基質のみが反応部425
1〜425
3に固定された酵素と触媒反応する。一例を挙げて説明すると、反応部425
1には、基質SU1と触媒反応する酵素E1が固定され、反応部425
2には、基質SU2と触媒反応する酵素E2が固定され、反応部425
3には、基質SU3と触媒反応する酵素E3が固定されているものとする。そして、流路424
1〜424
3を移動する尿には基質SU1、SU2及びSU3が含まれるものとする。この場合、反応部425
1では基質SU1のみが酵素E1と触媒反応し、反応部425
2では基質SU2のみが酵素E2と触媒反応し、反応部425
3では基質SU3のみが酵素E3と触媒反応する。このように、センサチップ420では、反応部毎(すなわち、流路毎)に、特定の基質を選択的に酵素と触媒反応させることができる。
【0129】
温度センサ426
1〜426
3は、絶対温度センサ422と同様に、基板421上に設けられる。具体的には、温度センサ426
1〜426
3は、反応部425
1〜425
3にそれぞれ設けられる。例えば、温度センサ426
1〜426
3は、薄膜熱電対などである。すなわち、温度センサ426
1〜426
3は、反応部425
1〜425
3における温度変化に応じた電圧を発生させる。電極427
1〜427
3は、測定制御部430による制御に従って、温度センサ426
1〜426
3のそれぞれからの熱反応に基づく熱起電力を取り出すためのものである。なお、絶対温度センサ422及び温度センサ426
1〜426
3(または、絶対温度センサ422と、温度センサ426
1〜426
3と、電極427
1〜427
3)は、反応部425
1〜425
3へ移動した体内物質と酵素との熱反応に基づく温度変化を計測する温度計測部であると言える。
【0130】
なお、センサチップ420に形成される流路の数は、
図20に示した例に限られない。例えば、センサチップ420には、1又は2個の流路が形成されてもよいし、4個以上の流路が形成されてもよい。センサチップ420に多数の流路が形成されるほど、多種の基質を検出することが可能になる。
【0131】
図19に示した測定制御部430は、絶対温度センサ422によって計測される温度を基準として、電極427
1〜427
3によって取り出された温度センサ426
1〜426
3の出力電圧から得られる温度差(すなわち、触媒反応による上昇温度)を測定する。そして、測定制御部430は、測定結果である温度変化に基づいて、各反応部における発熱量を測定する。そして、測定制御部430は、反応部毎の測定結果を宅内サーバ50に送信する。例えば、測定制御部430は、反応部に固定される酵素を識別する酵素情報(または、反応部を識別する情報)と、発熱量の測定結果との組合せを宅内サーバ50に送信する。宅内サーバ50は、発熱量の測定結果に基づいて、ユーザの体内に含まれる基質を予測する。このように、反応部における発熱量は、絶対温度センサ422による計測温度を基準として、温度センサ426
1〜426
3による計測結果から測定される。このため、絶対温度センサ422は、温度センサ426
1〜426
3の近傍に設けられることが好ましい。これにより、絶対温度センサ422と温度センサ426
1〜426
3とを同様の環境下に設けることができるので、測定制御部430は、発熱量を精度良く測定することができる。
【0132】
ここで、
図22を用いて、測定制御部430による処理の一例について説明する。
図22の横軸は時間経過を示し、
図22の縦軸は温度センサ426
1〜426
3からの出力電圧を示す。また、波形W11は、試料である尿内の基質濃度が高い場合における出力電圧の例を示し、波形W12は、波形W11に対応する試料よりも基質濃度が低い場合における出力電圧の例を示す。
図22に示すように、基質濃度が高いほど温度センサからの出力電圧は高い値となり、基質濃度が低いほど温度センサからの出力電圧は低い値となる。測定制御部430は、温度センサの出力電圧におけるピーク値(波形W11では電圧P11、波形W12では電圧P12)に基づいて、各反応部における発熱量を測定してもよいし、出力電圧の波形の積分値に基づいて、各反応部における発熱量を測定してもよい。
【0133】
また、触媒反応による発熱量の一例について説明する。ここでは、基質「グルコース」と酵素「グルコースオキシダーゼ」を例に挙げて説明する。また、反応部において触媒反応する尿の体積(すなわち、試料ホルダの体積)V0は、16×10
−5[cm
3]≒1.0×10
−7[l]であるものとする。また、グルコース濃度Nsは、100[mg/dl]=1[g/l]=1/180[mol]であるものとする。この場合、触媒反応する尿体積V0中のグルコース量Nmは、V0・Ns=5.5×10
−10[mol]となる。そして、グルコースのモル質量は180[g/mol]であり、発熱量H=80[kJ/mol]であるので、触媒反応による発熱量Pは、H・Nm=44×10
−6[J]となる。すなわち、測定制御部430は、0.44[℃]の温度上昇を検出した場合には、発熱量として44×10
−6[J]を求める。
【0134】
〔宅内サーバ〕
次に、第2の実施形態に係る宅内サーバ50について説明するが、宅内サーバ50の構成は
図9に示した例と同様である。ただし、第2の実施形態に係るユーザ情報記憶部52は、
図10に示した抗原の代わりに基質(グルコース、尿酸、シュウ酸など)を記憶する。以下では、同様の処理を行う部位については処理を省略する。
【0135】
第2の実施形態に係る認証部53は、測定装置410から受信した認証用の指紋画像に基づいてユーザの認証処理を行い、認証結果を測定装置410に通知する。また、受信部54は、通信部51を介して、測定装置410から発熱量の測定結果を受信する。例えば、受信部54は、測定装置410から、酵素を識別する酵素情報と、発熱量の測定結果との組合せを受信する。
【0136】
予測部55は、受信部54によって受信された発熱量の測定結果に基づいて、ユーザの体内に含まれる基質を予測する。例えば、予測部55は、測定装置410から送信される酵素情報に基づいて、基質の種類を特定する。また、例えば、予測部55は、予め定められている発熱量と基質の量との関係から、基質の量や濃度を予測する。このようにして、予測部55は、ユーザ体内に含まれる基質(ここの例では、尿内物質)の種類及び量を予測する。そして、予測部55は、予測結果である基質の量や濃度を、ユーザIDに対応付けてユーザ情報記憶部52に格納する。なお、予測部55は、ユーザの体内に所定の基質が所定値よりも多く含まれるか否かを予測してもよいし、予測結果である基質の量や濃度に基づいてユーザの健康状態を予測してもよい。
【0137】
表示制御部56は、
図11に示した例と同様に、各種態様で予測結果を表示装置に表示制御する。例えば、表示制御部56は、基質の名称や、基質の量や、ユーザの健康状態や、時系列の予測結果を表示装置に表示制御する。
図23に、第2の実施形態における表示例を示す。
図23では、タブレット端末である表示装置60cに、尿糖(グルコース)の予測結果を時系列に表示する例を示す。
【0138】
図23の例では、表示制御部56は、ユーザ情報記憶部52から過去20日間に収集された尿糖の量を取得し、取得した尿糖の量とセンシング日時との関係を示すグラフに関する情報を表示装置60cに送信する。このとき、表示制御部56は、グラフ上に尿糖が異常値であることを示す警告メッセージ(例えば、「尿糖異常発現」)を含める。この場合、表示装置60cは、
図23に示すように、20日前から今日までの尿糖値の濃度を時系列に表示する。これにより、ユーザは、時系列に表示される尿糖値や警告メッセージを把握することで、これまでの生活を振り返り、今後の生活習慣を改善することができる。
【0139】
なお、一般に、尿糖値は、血糖値と対応することが知られている。例えば、血糖値が正常の基準値(例えば、109[mg/dl])以下である人は、尿糖が10[mg/dl]程度であるが、血糖値が正常の基準値を超えると、尿糖値が急激に上昇すると言われている。この急激な尿糖値の上昇が糖尿病の指標となるので、尿糖値に基づいて、いわゆる隠れ糖尿病患者を発見することができる。予測部55は、このような指標値に基づいて、上記の警告メッセージを表示させる。
【0140】
また、一般に、尿糖検査は、食後2時間後が適していると言われている。このため、表示装置60cは、ユーザに食後2時間後に排尿する旨のメッセージを表示してもよい。または、予測部55は、食後2時間後と想定される時間帯(例えば、午前9時〜10時、午後2時〜3時、午後8時〜9時)に排出された尿から、体内に含まれる尿糖の濃度を予測してもよい。
【0141】
また、
図23では、タブレット端末に予測結果が表示される例を示したが、
図2に示した例のように、表示制御部56は、宅内のモニタ、携帯端末装置、装着型情報端末、ウェアラブル端末などの表示装置に予測結果を表示させてもよい。また、表示制御部56は、
図23の例に限られず、ユーザの体内に所定の基質が所定値よりも多く含まれるか否かを表示装置に表示させたり、ユーザの体内に所定の基質の量を表示装置に表示させたりしてもよい。
【0142】
〔変形例(洗浄処理)〕
上述した第2の実施形態では、放水部403によりセンサチップ420を洗浄する例を示した。ここで、センサチップ420には、流路424
1〜424
3を移動する試料を排出部側に吸引する吸引部が設けられてもよい。この場合、測定制御部430は、センサチップ420を洗浄する場合に、吸引部を制御することで、試料を素早く排出部側に移動させることができる。また、吸引することで流路424
1〜424
3に残存する試料を除去できるので、流路424
1〜424
3を素早く乾燥させたり、洗浄液やバッファ液で充填させたりすることができる。
【0143】
また、スマートトイレシステム4は、センサチップ420の洗浄状態を予測する予測処理を行ってもよい。具体的には、測定制御部430は、上述した洗浄処理を行った後に、絶対温度センサ422による計測温度と、温度センサ426
1〜426
3による計測温度とに基づいて、各反応部における発熱量を測定する。これにより、宅内サーバ50の予測部55により洗浄後の反応部425
1〜425
3に残存する基質の量が予測される。このとき、予測部55は、予測した基質の量が所定の閾値以下である場合には、センサチップ420の洗浄が十分であると予測し、基質の量が所定の閾値よりも多い場合には、センサチップ420の洗浄が不十分であると予測する。この場合、表示制御部56は、洗浄状態の予測結果に関する情報を表示装置60c等に表示制御してもよい。
【0144】
〔変形例(補正処理)〕
また、上記第2の実施形態において、反応部425
1〜425
3等が劣化することにより、反応部425
1〜425
3において測定される発熱量には誤差が生じる可能性がある。そこで、測定制御部430は、基質濃度や基質の含有量が既知である試料(以下、「標準液」と表記する場合がある)を試料注入孔423に注入することで測定される発熱量に基づいて、実際にユーザによって尿等が試料注入孔423に注入されることで測定される発熱量を補正してもよい。具体的には、標準液は、基質濃度や基質の含有量が既知であるので、標準液が注入された場合における発熱量も既知である。したがって、測定制御部430は、標準液を注入することで測定される発熱量と、標準液に対応する既知の発熱量との誤差に基づく補正係数を求める。そして、測定制御部430は、実際にユーザによって尿等が注入されることで測定される発熱量を補正係数によって補正する。これにより、測定制御部430は、基質濃度に対応する発熱量を精度良く測定することができる。
【0145】
なお、上記の通り、センサチップ420は、測定装置410に取り外し可能であってもよい。ここで、測定制御部430は、標準液を注入することで測定される発熱量と既知の発熱量との差異が所定値よりも大きい場合には、センサチップ420を交換する旨を表示装置に表示させてもよい。
【0146】
〔変形例(センサチップ)〕
また、上記第2の実施形態では、基質と酵素との反応熱に基づく温度変化を計測することにより、ユーザの体内に含まれる基質を予測する例を示した。しかし、センサチップには、反応熱に基づく温度変化を計測する手法以外の他の手法によって、ユーザの体内に含まれる基質の特性を示す情報を計測する機構が設けられてもよい。例えば、センサチップには、基質の特性を示す情報として、試料が流れる流路の振動に関する情報を計測する機構が設けられてもよい。以下、この点について説明する。なお、
図20に示したセンサチップ420によれば、「尿蛋白」、「尿糖」、「尿潜血反応」、「尿ウロビリノーゲン」などの検査項目に対応することができる。第2の実施形態では、この種の検査項目に限らず、「尿比重」などの検査項目に対応可能なセンサチップの例について説明する。
【0147】
図24は、第2の実施形態の変形例に係るセンサチップ520の一例を示す図である。
図25は、
図24のB−B線に沿った矢視の概略断面図である。なお、以下では、
図19に示した測定装置410が、センサチップ420の代わりに、
図24に示すセンサチップ520を有するものとする。
図24に示すように、変形例に係るセンサチップ520は、基板521と、第1の温度センサとしての絶対温度センサ522と、試料注入孔523と、流路524
1〜524
5と、反応部525
1〜525
4と、第2の温度センサとしての温度センサ526
1〜526
4と、電極527
1〜527
4と、共通電極528と、排出部529と、励振部531と、振動周波数検出部532と、電極533とを有する。
【0148】
基板521は、例えば、半導体のシリコン単結晶基板であり、中央部に空洞530が形成される。このため、センサチップ520のうち、基質等をセンシングするためのセンシング部530
1〜530
5は、架橋構造となる。なお、
図24では、センシング部530
1及び530
5のみを図示する。
【0149】
絶対温度センサ522は、
図20に示した絶対温度センサ422と同様の構成である。また、試料注入孔523は、試料注入孔423と同様の構成である。流路524
1〜524
4は、流路424
1〜424
3と同様の構成である。反応部525
1〜525
4は、反応部425
1〜425
3と同様の構成である。温度センサ526
1〜526
4は、温度センサ426
1〜426
3と同様の構成である。電極527
1〜527
4は、電極427
1〜427
3と同様の構成である。すなわち、センサチップ520は、
図20に示したセンサチップ420と同様に、酵素が固定される反応部525
1〜525
4を有する。これにより、センサチップ520は、「尿蛋白」、「尿糖」、「尿潜血反応」、「尿ウロビリノーゲン」などの検査に用いられることができる。さらに、センサチップ520には、「尿比重」などの検査に対応できるように、流路524
5と、励振部531と、振動周波数検出部532と、電極533とが設けられる。
【0150】
流路524
5は、プラスチック(例えば、ポリイミド樹脂)等により形成され、試料注入孔523に注入された尿等を排出部529に向かって移動させる。流路524
5は、流路524
1〜524
4と異なり酵素が固定される部位が設けられない。その代わりに、流路524
5には、励振部531と振動周波数検出部532とが設けられる。この点について、
図25を用いて説明する。
図25に示すように、励振部531は、シリコン(Si)薄膜531aと、シリコン酸化膜(SiO2)531bの二重層により形成される。シリコン薄膜531a及びシリコン酸化膜531bは、基板521上の形成されるシリコン酸化膜534に積層される。なお、シリコン酸化膜531bの厚さは、極めて薄く、シリコン酸化膜534と比較しても薄い。また、振動周波数検出部532は、例えば、架橋構造であるセンシング部530
5におけるシリコン薄膜531aの架橋構造支持部付近に形成されるピエゾ抵抗である。ピエゾ抵抗は、n型のSOI層であるシリコン薄膜531aに対して、p型の不純物であるホウ素(B)を熱拡散することで容易に形成される。
【0151】
上述したシリコン薄膜531aの熱膨張係数は大きいが、シリコン酸化膜531bの熱膨張係数は極めて小さい。このため、架橋構造のセンシング部530
5のシリコン薄膜531aに交流電流を流して加熱(ジュール加熱)すると、励振部531は、熱膨張係数の違いによるバイメタル効果によりバイモルフ振動を引き起こして、空洞530上のセンシング部530
5を励振する。そして、ピエゾ抵抗である振動周波数検出部532の抵抗値は、センシング部530
5の振動によるひずみに基づき変化する。
【0152】
上述した測定制御部430は、振動周波数検出部532の抵抗値の変化から、センシング部530
5の振動周波数を検出する。ここで、励振部531に対する1回の加熱及び冷却を1サイクルとすると、その繰り返しサイクルと、センシング部530
5の固有振動数と一致する共振周波数は、流路524
5を流れる試料(例えば、尿)の質量に依存する。具体的には、その質量が大きいほど、共振周波数は、低周波側にシフトする。測定制御部430は、電極533からシリコン薄膜531aに流す交流電流を制御することにより、この共振周波数やシフト量(すわなち、位相)を計測し、計測結果から尿等の質量の変化を計測する。すなわち、センサチップ520を有する測定装置410は、ユーザの体内に含まれる基質を予測する「尿蛋白」、「尿糖」、「尿潜血反応」、「尿ウロビリノーゲン」などの検査項目に加えて、「尿比重」などの検査項目の場面でも用いることができる。
【0153】
なお、上記のジュール加熱は、他の架橋構造のセンシング部と同様に形成する架橋構造の基質と酵素との熱反応の温度計測に使用する第2の温度センサである熱電対526
5(
図25に一例を図示)をジュール加熱用ヒータとして利用することもできる。この熱電対526
5としては、例えば、架橋構造のシリコン薄膜531aと、薄いシリコン酸化膜531bを介した金属薄膜とが熱電材料として使用される。また、圧電性薄膜を架橋構造に形成することにより、励振部531として利用することもできる。
【0154】
また、センサチップ520に形成される流路の数は、
図24に示した例に限られない。例えば、センサチップ520には、反応部が設けられる流路が3個以下、又は、5個以上形成されてもよい。
【0155】
また、上述したセンサチップ520は、基板521に形成された空洞である排出部529が形成される。
図24の例の場合、流路524
1〜524
5を流れる尿等の試料は、排出部529を介して、センサチップ520の外部に排出される。このような構造を有するセンサチップ520であっても、洗浄可能であるので繰り返し利用されることが可能である。
【0156】
また、
図24に示した例において、測定制御部430は、絶対温度センサ522によって計測される環境温度に応じて、反応部525
1〜525
4における発熱量、又は、反応部525
1〜525
4に設けられる温度センサ526
1〜526
4の出力電圧を補正してもよい。すなわち、宅内サーバ50の予測部55は、絶対温度センサ522によって計測される環境温度に応じて温度センサ526
1〜526
4による計測結果が補正された後の値に基づいて、ユーザの体内に含まれる基質を予測する。この点について
図26を用いて説明する。
図26は、環境温度と出力電圧との関係の一例を示す図である。
図26の横軸は時間経過を示し、
図26の縦軸は温度センサ526
1〜526
4からの出力電圧を示す。また、波形W21は、環境温度が高い場合における出力電圧の例を示し、波形W22は、波形W21よりも環境温度が低い場合における出力電圧の例を示す。なお、波形W21及びW22は、環境温度以外の条件(例えば、試料など)は同一であるものとする。
図26に示すように、環境温度が低いほど出力電圧がピークとなる時間が遅くなり、かつ、そのピーク値は低くなる。上記の通り、測定制御部430は、温度センサ526
1〜526
4からの出力電圧におけるピーク値、又は、出力電圧の波形の積分値に基づいて、各反応部における発熱量を測定する。このとき、測定制御部430は、
図26に例示する関係と、絶対温度センサ522によって測定される環境温度とに応じて、出力電圧のピーク値、又は、出力電圧の波形の積分値を補正してもよい。すなわち、測定制御部430は、環境温度に応じて反応部525
1〜525
4における発熱量を補正してもよい。これにより、宅内サーバ50の予測部55は、ユーザ体内に含まれる基質の量や濃度を高精度に予測することができる。
【0157】
また、
図24に示したセンサチップ520の排出部529には、流路524
1〜524
5を移動する試料を、試料注入孔523から排出部529に向かう方向に吸引する吸引部が設けられてもよい。この場合、測定制御部430は、センサチップ520を洗浄する場合に、吸引部を制御することで、試料を素早く排出部529側に移動させることができる。
【0158】
〔変形例(ハンディタイプ)〕
また、上述した第2の実施形態では、スマートトイレシステム4を例に挙げて説明した。しかし、上述したセンサチップ420は、持ち運び可能な小型タイプであるハンディタイプの測定装置に組み込まれてもよい。
図27は、第2の実施形態に係るハンディタイプのセンサを説明するための図である。
図27に示したハンディタイプのカロリメトリックセンサ500には、試料注入孔501が設けられ、上述したセンサチップ420(または、センサチップ520)及び測定制御部430が内部に搭載される。これに加えて、カロリメトリックセンサ500には、宅内サーバ50やPHR処理装置20と通信可能な通信部411が搭載されてもよい。また、カロリメトリックセンサ500には、排水部に対応する排水口が設けられてもよい。なお、カロリメトリックセンサ500に搭載される測定制御部430は、予測部55と同様に基質の種類や量や濃度の予測処理を行ってもよいし、宅内サーバ50やPHR処理装置20等の他のサーバ装置によって予測された予測結果を受信してもよい。
【0159】
カロリメトリックセンサ500は、上述した測定装置410と同様に、多項目の基質等を検出することができる。また、カロリメトリックセンサ500は、尿検査や血液検査等に用いることができる。このようなカロリメトリックセンサ500は、健康診断等の集団検診や、医療機関での検査に用いることができるだけでなく、家庭内で携帯用検査機として用いることができる。
【0160】
〔変形例(他のシステム)〕
また、上述した第2の実施形態では、スマートトイレシステム4を例に挙げて説明した。しかし、上述した第2の実施形態は、スマートブラシシステムやスマートシンクシステムにも適用することができる。
【0161】
例えば、上述した第2の実施形態がスマートブラシシステムに適用される場合、
図3に示した測定装置103の代わりに測定装置410が採用される。すなわち、センサチップ420の試料注入孔423には、ユーザを洗浄する洗浄器具(歯ブラシ等)を洗浄した洗浄水が注入される。また、上述した第2の実施形態がスマートシンクシステムに適用される場合、
図16に示した測定装置203の代わりに測定装置410が採用される。すなわち、センサチップ420の試料注入孔423には、ユーザから排出された物質(うがい後の水など)や、ユーザを洗浄した洗浄水(洗顔時の水など)が注入される。
【0162】
〔変形例(予測対象)〕
また、第2の実施形態では、体内の生体物質と反応する反応物質として酵素を反応部425
1〜425
3に固定する例を示した。しかし、反応部425
1〜425
3には、酵素ではなく、特定の抗体や抗原が固定されてもよい。そして、宅内サーバ50は、測定装置410による発熱量の測定結果に基づいて、体内に含まれる酵素や抗原や抗体を予測してもよい。この場合、試料注入孔423に注入される体内物質は、上述した尿に限られず、唾液、血液、汗、人体を洗浄した洗浄水などであってもよい。
【0163】
〔効果〕
上述してきたように、第2の実施形態によれば、酸化還元電流に基づくセンサと比較して、生体由来物質等の生体物質を精度良く検出することができる。この点について
図28を用いて説明する。
図28は、酸化還元電流による尿糖検査の例を示す図である。
図28に示すように、従来の尿糖センサでは、例えば、酸化酵素であるグルコースオキシダーゼによりグルコースが酸化する際に生成される過酸化水素の酸化還元電流を計測することで、グルコースの量を検出する。しかし、尿に含まれる尿酸やアスコルビン酸や、酸化時に生成されるグルコン酸等の妨害物質も酸化還元電流に影響を与えるので、検出精度は高いと言えない。また、過酸化水素のみを透過させる選択透過膜を設けることで、妨害物質による酸化還元電流への影響を低下させることも考えられるが、センサの構造が複雑になるとともに製造コストの増大に繋がる。一方、第2の実施形態に係るセンサチップ420は、酵素や補酵素の触媒反応による熱反応を利用した温度変化を計測するが、この温度変化の計測に妨害物質の影響を受けることがない。このため、第2の実施形態に係るセンサチップ420では、センサの構造が複雑になることがなく、また、製造コストが増大することもない。
【0164】
また、第2の実施形態に係るセンサチップ420によれば、注入された体内物質が排出部に排出されるので、洗浄できるとともに繰り返し利用されることが可能である。さらに、第2の実施形態に係るセンサチップ420によれば、異なる酵素が固定された各反応部において体内物質を触媒反応させるので、1回の処理で多項目の生体物質を検出することができる。上述してきた日常人間ドックでは、トイレの便器等にセンサが設けられるので、洗浄可能かつ繰り返し利用可能かつ多項目を検出可能なセンサチップ420を用いることで、この日常人間ドックを実現することが可能になる。
【0165】
(その他の実施形態等)
〔什器〕
上記実施形態では、什器の例として、歯ブラシ洗浄機やトイレ(便器)やシンク(洗面台)等を例に挙げて説明したが、什器はこれらの例に限られない。例えば、什器としては、ユーザが尿等を排出するコップ等であってもよい。また、上記実施形態では、什器に設けられたセンサにより、什器から排水又は排出されるユーザの体内物質から、ユーザの生体物質の特性を示す情報を測定する例を示した。例えば、第1の実施形態では、洗浄機101に設けられた磁界センサ110により、ユーザの生体物質の特性を示す情報として、洗浄機101からの排水物質と抗体と磁気ビーズとが混合された混合物から発生する磁界を測定する例を示した。また、第2の実施形態では、便器401に設けられたセンサチップ420により、ユーザの生体物質の特性を示す情報として、便器401から排出される体内物質と所定の基質との熱反応に基づく温度変化を測定する例を示した。しかし、この例に限られず、上述した各実施形態は、什器から取り出される、又は、什器から採取されるユーザの体内物質から、生体物質の特性を示す情報を各種センサにより測定してもよい。例えば、病院や集団検診、更には、家庭などにおいて、ユーザや医師が、什器であるコップに排出した尿等を、測定装置103の第1の流路104や、センサチップ420の試料注入孔423に注入してもよい。
【0166】
〔ハードウェア構成〕
図29は、実施形態に係る宅内サーバ50のハードウェア構成を示す図である。宅内サーバ50は、CPU1100と、ROM1200と、RAM1300と、表示部1400と、入力部1500とを備える。また、宅内サーバ50では、CPU1100、ROM1200、RAM1300、表示部1400、及び入力部1500が、バスライン1010を介して接続されている。
【0167】
宅内サーバ50による各種処理を実現するプログラムは、ROM1200内に格納されており、バスライン1010を介して、RAM1300へロードされる。CPU1100は、RAM1300内にロードされたプログラムを実行する。例えば、宅内サーバ50では、操作者による入力部1500からの指示入力に従って、CPU1100が、ROM1200内からプログラムを読み出してRAM1300内のプログラム格納領域に展開し、各種処理を実行する。CPU1100は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM1300内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
【0168】
宅内サーバ50で実行されるプログラムは、認証部53、受信部54、予測部55、表示制御部56、送信部57を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0169】
〔構成〕
上述した実施形態では、クラウド上にPHR処理装置20が構築される構成を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。PHR処理装置20は、その機能の全部若しくは一部を、例えば、データ信託会社内のネットワーク上に構築することもできる。また、PHR処理装置20は、必ずしも1つの拠点に構築されなければならないものではない。複数の拠点に分散配置された機能が連携することで、PHR処理装置20を実現してもよい。
【0170】
また、上述した実施形態では、宅内サーバ50が予測処理を行う例を示したが、この例に限られない。例えば、PHR処理装置20が、予測部55を有し、上述してきた予測処理を行うことで、宅内の各ユーザに関する各種情報を管理する管理装置であってもよい。また、例えば、測定装置103、203、303、410が予測部55を有し、上述してきた予測処理を行ってもよい。
【0171】
また、実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。例えば、上述してきた各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0172】
また、上述した実施形態で例示した物理的な構成は、あくまで一例に過ぎない。上述した実施形態で例示した各部は、運用の形態や負荷に応じて適宜統合若しくは分散される。
【0173】
これまで説明してきた実施形態によれば、半導体・通信・エネルギー・素材・医療技術の創意を結集して、生きることへのモチベーションを取戻すための日常人間ドックを実現することができる。すなわち、実施形態によれば、
図30に示すように、病気及び病気の萌芽をいち早く検出し、健康への回帰をサポートし、未病の人の健康への回帰、及び、病人の早期の社会復帰を助けることで、QOL(Quality of Life)の向上を図り、結果として医療費の削減が果たされ、かつ健康年齢の増加を図ることができる。
【0174】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。