(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、無線通信において例えば移動局との通信を行うときは、通信相手となる移動局を探索する必要がある。ミリ波による無線通信の場合、指向性が高いアンテナを用いて探索を行うため、探索に時間がかかり通信開始までに待ち時間が発生する。また、通信相手の移動局を探索するのに電波を出しながら探索することになるため、通信の秘匿性の低下や自分の位置情報の漏洩が発生する。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる通信
システム及び通
信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
通信システムは、移動局と、前記移動局を制御する移動可能な基地局と、を備え、前記基地局は、前記移動局が発信した電波を受信する受信部と、前記受信部が受信した電波に基づいて電波受信時における前記
移動局の位置を特定する位置算出部と、前記位置算出部が特定した位置と、前記電波受信時からの経過時間及び前記電波受信時からの前記
移動局の移動速度と、
現在の自局の位置情報とに基づいて前記
移動局の自局に対する位置範囲を推定する移動範囲推定部と、前記推定した位置範囲に基づいてスキャンする探索部と、を備える
通信装置を有し、前記基地局が前記移動局へ制御情報を送信するにあたり、前記通信装置は、前記スキャンを行って探索電波を送信し、前記移動局は、前記探索電波を受信すると応答電波を送信し、前記通信装置は、前記応答電波を受信することにより通信リンクが確立すると、前記移動局へ制御情報を送信するとともに、前記位置算出部が前記応答電波に基づいて前記移動局の位置を特定し、特定した前記位置を自局の記憶部へ記録する。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、前記位置算出部は、前記受信部が受信した電波の到来方向に基づいて前記
移動局の位置を特定する。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、前記位置算出部は、さらに前記受信部が受信した電波の強度に基づいて前記
移動局の位置を特定する。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、前記位置算出部は、前記受信部が受信した電波に含まれる位置情報に基づいて前記
移動局の位置を特定する。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、前記位置算出部は、さらに前記受信部が受信した電波に含まれる前記
移動局の移動速度及び移動方向に基づいて前記
移動局の位置を特定する。
【0012】
本発明の第6の態様によれば、前記通信装置は、前記
移動局との通信が必要な場合に、前記
移動局の存在する位置に基づいてスキャンを開始するタイミングを決定する探索開始決定部、をさらに備える。
【0013】
本発明の第7の態様によれば、前記探索開始決定部は、前記
移動局が予め定められた移動経路を移動する場合であって、前記
移動局が前記移動経路から外れたことを検出するとスキャンの開始を決定する。
【0014】
本発明の第8の態様によれば、前記探索開始決定部は、前記
移動局が所定の目標位置に到着したと判定したときにスキャンの開始を決定する。
【0015】
本発明の第9の態様によれば、前記探索開始決定部は、前記
移動局が前記自局から所定の距離内に存在すると判定したときにスキャンの開始を決定する。
【0016】
本発明の第10の態様によれば、前記探索部は、指向性の高いアンテナを介してスキャンを行う。
【0017】
本発明の第11の態様によれば、前記自局と前記
移動局とは、ミリ波によって通信を行う。
【0018】
本発明の第12の態様によれば、前記
通信システムにおいて、前記移動局は、前記基地局が発信した電波を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した電波に基づいて電波受信時における前記基地局の位置を特定する位置算出手段と、前記位置算出手段が特定した位置と、前記電波受信時からの経過時間及び前記電波受信時からの前記基地局の移動速度とに基づいて前記基地局の自局に対する位置範囲を推定する移動範囲推定手段と、前記推定した位置範囲に基づいてスキャンする探索手段と、を有し、前記移動局が前記基地局へデータを送信するにあたり、前記移動局は、前記スキャンを行って探索電波を送信し、前記基地局は、前記移動範囲推定部が推定した位置範囲に基づいて、アンテナの方向を調整して前記探索電波を受信して受信準備完了情報を送信し、前記移動局は、前記受信準備完了情報を受信すると、前記基地局へデータを送信する。
【0020】
本発明の第
13の態様によれば
、通信方法は、移動局と、前記移動局を制御する移動可能な基地局とを備える通信システムの通信方法であって、前記基地局は、前記移動局へ制御情報を送信するにあたり、前記移動局からの前回の電波受信時に当該電波に基づいて特定した前記移動局の位置情報と、前記電波受信時からの経過時間及び前記電波受信時からの前記移動局の移動速度と、現在の自局の位置情報とに基づいて前記移動局の自局に対する位置範囲を推定し、前記推定した位置範囲に基づいてスキャンを行って探索電波を送信し、前記移動局は、前記探索電波を受信すると応答電波を送信し、前記基地局は、前記応答電波を受信することにより通信リンクが確立すると、前記移動局へ制御情報を送信するとともに、前記応答電波に基づいて前記移動局の位置を特定し、特定した前記位置を自局の記憶部へ記録する処理を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、通信相手の探索時間を短縮し、不要な通信を削除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による通信システムを
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、本発明に係る第一実施形態における基地局のブロック図である。
図1が示すように基地局2は、通信装置10と、制御装置20と、GPS受信機30と、アンテナ40を備える。通信装置10は、制御装置20による移動局1との通信指示に基づいて、移動局1との通信を行う。制御装置20は、通信装置10を介して移動局1に制御情報を送信し、移動局1の制御を行う。GPS受信機30は、基地局2の位置を測位する。アンテナ40は、ミリ波無線通信に適した指向性の高いアンテナである。
【0024】
図1が示すように通信装置10は、送受信部11と、位置算出部12と、移動範囲推定部13と、探索部14と、記憶部15とを備える。
送受信部11は、アンテナ40を介して後述する移動局1など他局との通信を行う。
位置算出部12は、送受信部11が受信した電波に基づいて、電波受信時における他局の位置情報を算出する。
移動範囲推定部13は、位置算出部12が算出した電波受信時における他局の位置情報と、電波受信時からの経過時間及び他局の自局に対する移動速度と、に基づいて他局の自局に対する位置範囲を推定する。
探索部14は、他局との通信を開始する際に、移動範囲推定部13が推定した位置範囲をスキャンし、他局を検出する。
記憶部15は、種々のデータを記憶する。
【0025】
図2は、本発明に係る第一実施形態における基地局の探索方法の説明を行う図である。
図2を用いて、本実施形態における通信装置10が通信相手を探索する処理について説明する。
図2(a)は、移動局1が電波を送信し、基地局2がその電波を受信する様子を示している。移動局1と基地局2は、例えばミリ波などの指向性の強い電波を介して通信を行う。本実施形態において、移動局1と基地局2の通信は、基地局2が主導して行い、移動局1は、基地局2からの通信要求に応じる形で通信を行うものとする。移動局1は、例えば、無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle)である。移動局1には、移動局1の位置する周囲の世界の情報を検出するセンサが搭載されている。基地局2は、例えば、車両である。基地局2は、移動しながら、または、停止した状態で移動局1と通信を行う。例えば、基地局2は、移動局1に制御情報を送信し、移動局1を所定の位置に移動させる。また、例えば、基地局2は、移動局1に搭載したセンサ類によって、移動局1の周囲の状況を検出させる。また、例えば、基地局2は、移動局1から検出した情報を受信する。
【0026】
ここで、基地局2が移動局1と通信を開始する状況を考えると、基地局2及び移動局1は共に移動している可能性があり、基地局2は、通信開始時に移動局1が存在する方向を検出しなければならない。基地局2は、移動局1の存在する方向を検出するためにアンテナ40から広範囲に探索電波を送信し、その探索電波を受信した移動局1から送信される応答電波の到来方向によって、移動局1の存在する方向を検出するいわゆるスキャンを行う。ここで、基地局2が、全方位スキャンを行うこととなると、その電波を傍受されて、基地局2及び移動局1の位置情報が漏えいしてしまう可能性がある。また、第三者に電波が傍受されることにより、通信の秘匿性が低下する可能性がある。また、移動局1と基地局2が通信に用いるミリ波は、空間減衰が大きいため、基地局2や移動局1は、ミリ波を指向性の高い電波にして送信する必要がある。その為、スキャンする範囲が広いと、ビーム幅の狭い電波によってある範囲をスキャンしなければならない為、それだけスキャンに時間がかかり、例えば、適切な通信のタイミングを逃してしまうことも起こり得る。そこで、本実施形態では、スキャンする範囲を絞ることで、探索時間を短縮し、不要な通信を削減する。
【0027】
本実施形態では、まず位置算出部12が、基地局2が移動局1と通信を行った際に、基地局2に対する移動局1の位置情報を算出する。また、移動範囲推定部13が、位置算出部12が算出した位置情報にその後の移動局1の移動範囲を加え、さらに基地局2との位置関係を算出することで、スキャン時に基地局2に対して移動局1が存在する位置範囲を推定する。探索部14は、移動範囲推定部13が推定した位置範囲をスキャンする。
【0028】
図2(b)は、基地局2がスキャンする様子を示した図である。位置範囲100は、
図2(a)の状態で位置算出部12が算出した位置情報を用いて、移動範囲推定部13が推定した移動局1の位置範囲である。探索部14は、移動範囲推定部13が推定した位置範囲100をカバーする区間101をスキャンする。
【0029】
図3は、本発明に係る第一実施形態における通信装置の処理フローの一例を示す図である。
まず、基地局2が移動局1と通信を行う。この最初の通信においては、基地局2が移動局1の位置を把握しており、スキャンを行わなくても基地局2は、移動局1との無線リンクを確立することができるものとする。送受信部11は、移動局1から電波を受信する。送受信部11は、受信した電波強度を検出する。送受信部11は、その電波の到来方向と電波強度を電波の受信時刻情報とともに位置算出部12へ出力する。電波の到来方向とは、電波を受信したときのアンテナ40の方向である。位置算出部12は、取得した電波強度を用いて移動局1から基地局2までの距離を算出する。例えば、電波強度と通信距離の関係を定めたテーブルなどが記憶部15に記憶されており、位置算出部12は、このテーブルに基づいて基地局2から移動局1までの距離を推定する。次に位置算出部12は、GPSによる基地局2の位置情報と、取得した電波の到来方向及び算出した距離の情報を用いて移動局1の絶対位置を算出する。位置算出部12は、算出した移動局1の位置情報を電波の受信時刻情報と対応付けて記憶部15に記録する(ステップS11)。
【0030】
次に、送受信部11は、制御装置20からデータ送信要求があるかどうかを判定する(ステップS12)。データ送信要求が無い場合(ステップS12;No)、送受信部11は、データ送信要求があるまでステップS12の判定を繰り返す。データ送信要求がある場合(ステップS12;Yes)、送受信部11は、無線リンクが切断されていないかどうかを判定する(ステップS13)。無線リンクが切断されている場合(ステップS13;Yes)、送受信部11は、無線リンクの確立のため、移動局1のスキャンを探索部14に指示する。探索部14は、移動範囲推定部13に移動局1の存在する位置を問い合わせる。移動範囲推定部13は、前回移動局1との通信時に記録した移動局1の位置情報と電波の受信時刻情報とを記憶部15から読み出す。移動範囲推定部13は、読み出した受信時刻情報に基づいて、受信時刻から現在時刻までの経過時間を算出する。次に、移動範囲推定部13は、移動局1の最大速度と算出した経過時間を積算して、経過時間における移動局1の移動範囲を算出する。移動局1の最大速度は、記憶部15に記録されており、移動範囲推定部13は、最大速度を記憶部15から読み出すものとする。このとき移動範囲推定部13は、移動範囲の算出を、前回の通信時(ステップS11)に記録した移動局1の位置情報が示す位置を中心に全方位について行う。次に、移動範囲推定部13は、読み出した前回通信時の移動局1の位置情報に算出した移動範囲を加算して、移動局1が取り得る現在の位置範囲(絶対位置)を算出する。次に、基地局2自身の移動を考慮して、移動局1の基地局2に対する相対位置範囲を算出する(ステップS14)。例えば、移動範囲推定部13は、GPS受信機30から現在の位置情報を取得して、移動局1の絶対位置から基地局2の絶対位置を減算し、基地局2から見た移動局1の相対位置範囲を算出する。移動範囲推定部13は、算出した位置範囲の情報を探索部14へ出力する。
【0031】
次に探索部14は、アンテナ40の方向を変化させて、移動範囲推定部13から取得した位置範囲についてスキャンを行う(ステップS15)。なお、このとき、探索部14は、移動局1と基地局2の距離に応じて、探索電波の強度を調整してもよい。探索部14から発信された探索電波を受信した移動局1は、基地局2へ応答電波を返し、無線リンクが確立する。無線リンクが確立すると、あるいは、無線リンクが切断されていない場合(ステップS13;No)、送受信部11は、移動局1へデータを送信する(ステップS16)。送受信部11は、移動局1から応答電波を受信すると、その受信電波の到来方向と電波強度情報を受信時刻情報とともに位置算出部12へ出力する。位置算出部12は、ステップS11と同様にして移動局1の位置情報を算出し、記憶部15に記録した移動局1の位置情報と時刻情報を更新する(ステップS17)。
【0032】
本実施形態によれば、通信相手となる移動局1の自局に対する位置範囲を推定し、その位置範囲に対してスキャンを行うので探索時間の低減、及び、不要な通信を削減することができる。これにより、移動局1や基地局2の位置情報漏えいや通信の秘匿性低下を防ぐことができる。
【0033】
なお、上記の説明では、位置算出部12が電波の到来方向と電波強度によって移動局1の位置を算出する場合を例に説明を行ったが、位置算出部12は、電波の到来方向によって、移動局1が存在する方向だけを推定してもよい。
【0034】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による通信システムを
図4〜
図5を参照して説明する。
図4は、本発明に係る第二実施形態における基地局の探索方法の説明を行う図である。
図4を用いて、本実施形態における通信装置10が通信相手を探索する処理について説明する。
図4(a)は、移動局1が電波を送信し、基地局2がその電波を受信する様子を示している。移動局1は、GPS衛星3から位置情報を取得している。移動局1は、基地局2と通信を行ったときに、基地局2へ自分自身の位置情報を送信する。
図4(b)は、基地局2が移動局1をスキャンする様子を示した図である。第一実施形態では、位置算出部12は、移動局1からの受信電波の到来方向や電波強度によって移動局1と基地局2との位置関係を算出した。本実施形態では、位置算出部12は、受信電波に含まれる位置情報に基づいて移動局1の位置情報を特定する。また、移動範囲推定部13は、位置算出部12が算出した移動局1の位置に、その後の移動局1の移動範囲を加え、さらに基地局2の位置情報を考慮して基地局2に対する移動局1の位置範囲100を算出する。探索部14は、移動範囲推定部13が推定した位置範囲100をカバーする区間101をスキャンする。
【0035】
図5は、本発明に係る第二実施形態における通信装置の処理フローの一例を示す図である。
まず、基地局2が、移動局1と通信を行う。送受信部11は、移動局1から電波を受信する。送受信部11は、その電波に含まれる移動局1の位置情報を受信時刻とともに位置算出部12へ出力する。位置算出部12は、GPSによる移動局1の位置情報を電波の受信時刻と対応付けて記憶部15に記録する(ステップS21)。
【0036】
次に、送受信部11は、制御装置20からデータ送信要求があるかどうかを判定する(ステップS22)。データ送信要求が無い場合(ステップS22;No)、送受信部11は、データ送信要求があるまでステップS22の判定を繰り返す。データ送信要求がある場合(ステップS22;Yes)、送受信部11は、無線リンクが切断されていないかどうかを判定する(ステップS23)。無線リンクが切断されている場合(ステップS23;Yes)、送受信部11は、移動局1のスキャンを探索部14に指示する。探索部14は、移動範囲推定部13に移動局1の存在する位置を問い合わせる。移動範囲推定部13は、前回移動局1との通信時に記録した移動局1の位置情報と電波の受信時刻情報とを記憶部15から読み出す。移動範囲推定部13は、読み出した受信時刻から現在時刻までの経過時間を算出する。次に、移動範囲推定部13は、移動局1の最大速度と算出した経過時間を積算して、経過時間における移動局1の移動範囲を算出する。次に、移動範囲推定部13は、読み出した前回通信時の移動局1の位置情報に算出した移動範囲を加算して、移動局1が取り得る現在の位置範囲(絶対位置)を算出する。次に、基地局2自身の移動を考慮して、移動局1の基地局2に対する相対位置範囲を算出する(ステップS24)。例えば、移動範囲推定部13は、GPS受信機30から現在の位置情報を取得して、移動局1の絶対位置から基地局2の絶対位置を減算し、基地局2に対する移動局1の位置範囲を算出する。移動範囲推定部13は、算出した位置範囲の情報を探索部14へ出力する。
【0037】
次に探索部14は、アンテナ40の方向を変化させて、移動範囲推定部13から取得した位置範囲についてスキャンを行う(ステップS25)。探索部14から発信された探索電波を受信した移動局1は、基地局2へ応答電波を返し、無線リンクが確立する。無線リンクが確立すると、あるいは、無線リンクが切断されていない場合(ステップS23;No)、送受信部11は、移動局1へデータを送信する(ステップS26)。送受信部11は、移動局1からの受信電波に含まれる位置情報を受信時刻情報とともに位置算出部12へ出力する。位置算出部12は、記憶部15に記録した移動局1の位置情報と時刻情報を、送受信部11から新たに取得した位置情報と受信時刻情報で更新する(ステップS27)。
【0038】
基地局2は、GPSによる測位を行うと誤差数mの精度で移動局1の位置を特定することができる。本実施形態によれば、第一実施形態に比べ、さらに精度よく移動局1の位置範囲を推定することができ、スキャン範囲の精度を高めることができる。これにより、第一実施形態の効果を、より安定して得ることができる。
【0039】
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態による通信システムを
図6を参照して説明する。
図6は、本発明に係る第三実施形態における通信装置の処理フローの一例を示す図である。
本実施形態では、移動局1は、GPSによる位置情報に加え、自分自身の移動速度情報と移動方向情報を基地局2に送信する。移動速度及び移動方向については、例えば、予め定められているものとする。移動範囲推定部13は、GPSによる位置情報と移動速度情報と移動方向情報とを用いて移動局1の位置範囲を算出する。他の構成については、第二実施形態と同様である。
【0040】
まず、基地局2が、移動局1と通信を行う。送受信部11は、移動局1から電波を受信する。送受信部11は、その電波に含まれる移動局1のGPSによる位置情報、移動方向情報、移動速度情報を受信時刻とともに位置算出部12へ出力する。位置算出部12は、取得した移動局1の位置情報、移動方向情報、移動速度情報を電波の受信時刻情報と対応付けて記憶部15に記録する(ステップS31)。
【0041】
次に、送受信部11は、制御装置20からデータ送信要求あるかどうかを判定する(ステップS32)。データ送信要求が無い場合(ステップS32;No)、データ送信要求があるまでステップS32の判定を繰り返す。データ送信要求がある場合(ステップS32;Yes)、送受信部11は、無線リンクが切断されていないかどうかを判定する(ステップS33)。無線リンクが切断されている場合(ステップS32;Yes)、送受信部11は、移動局1のスキャンを探索部14に指示する。探索部14は、移動範囲推定部13に移動局1の存在する位置を問い合わせる。移動範囲推定部13は、前回移動局1との通信時に記録した移動局1の位置情報、移動方向情報、移動速度情報と電波の受信時刻情報とを記憶部15から読み出す。移動範囲推定部13は、読み出した受信時刻から現在時刻までの経過時間を算出する。次に、移動範囲推定部13は、読み出した移動局1の移動速度と算出した経過時間を積算して、経過時間中における移動局1の移動距離を算出する。移動範囲推定部13は、記憶部15から読み出した位置情報から、読み出した移動方向へ、算出した移動距離分だけ離れた位置の位置情報を算出し、その絶対位置を移動局1の位置範囲とする。次に、移動範囲推定部13は、基地局2の現在位置から、算出した移動局1の位置範囲への相対位置範囲を算出する(ステップS34)。移動範囲推定部13は、算出した相対位置範囲の情報を探索部14へ出力する。
【0042】
次に探索部14は、アンテナ40の方向を変化させつつ、移動範囲推定部13から取得した位置範囲についてスキャンを行い(ステップS35)、無線リンクを確立する。無線リンクが確立すると、あるいは、無線リンクが切断されていない場合(ステップS33;No)、送受信部11は、移動局1へデータを送信する(ステップS36)。送受信部11は、移動局1からの受信電波に含まれる位置情報、移動方向情報、移動速度情報を受信時刻とともに位置算出部12へ出力する。位置算出部12は、新たに取得した位置情報、移動方向情報、移動速度情報、電波の受信時刻情報で、記憶部15に記録した移動局1の位置情報、移動方向情報、移動速度情報、時刻情報を更新する(ステップS37)。
【0043】
本実施形態によれば、移動局1から受信した位置情報、移動速度情報、移動方向情報に基づき、移動局1の位置範囲を推定するので、移動局1の最大移動速度を用いて全方位について位置範囲を推定する場合と比較して、推定する移動局1の位置範囲を狭くすることができる。これにより、探索時間をより短縮し、不要な通信をより削減することができる。
【0044】
<第四実施形態>
以下、本発明の第四実施形態による通信システムを
図7〜
図9を参照して説明する。
本実施形態は、第一実施形態から第三実施形態のうちの何れとも組み合わせ可能であるが、
図7では第一実施形態と組み合わせた場合を例に説明を行う。
図7は、本発明に係る第四実施形態における基地局のブロック図である。
図7が示すように本実施形態における通信装置10は、送受信部11と、位置算出部12と、移動範囲推定部13と、探索部14と、記憶部15、探索開始決定部16とを備える。
探索開始決定部16は、移動局1との通信が必要な場合に、移動局1の存在する位置に基づいてスキャンを開始するタイミングを決定する。例えば、移動局1が予め定められた移動経路上を移動する場合、探索開始決定部16は、移動局1が移動経路から外れたことを検出するとスキャンの開始を決定する。
他の構成は、第一実施形態と同様である。
【0045】
図8は、本発明に係る第四実施形態における基地局の探索方法の説明を行う図である。
図8を用いて、本実施形態における基地局による探索方法について説明する。
図8は、移動局1が経路102に沿って移動する様子を示している。経路102は、移動局1が通過すべき経路として予め定められたものである。移動局1は、決められた時間にこの経路102上の決められた地点を通過するよう計画されているものとする。(a)〜(c)は、移動中のある時点における移動局1と経路102との位置関係を示している。目標通過位置103〜105は、(a)〜(c)の各時点において、移動局1が通過することが想定されている経路102上の位置である。(a)の場合、移動局1と目標通過位置103との距離は近い位置関係にある。基地局2は、アンテナ40を経路102上の目標通過位置103へ向けて電波を発信すれば移動局1との通信を行うことができる。同様に(b)の場合、基地局2は、アンテナ40を目標通過位置104へ向けて電波を発信すれば移動局1との通信を行うことができる。ところで、基地局2のアンテナ40は、指向性が高いため、移動局1がアンテナ方向から外れた位置にあるときは、基地局2が受信する電波強度は弱くなったり、電波が届かなくなったりする可能性がある。その為、移動局1と経路102が(c)のような関係のとき、基地局2は、アンテナ40を目標通過位置105へ向けて通信を行っても(a)や(b)のときのように移動局1との通信が可能とは限らない。本実施形態では、移動局1が経路102上を通過している場合、基地局2は、目標通過位置に対してアンテナ40を向け通信を行う。しかし、受信する電波強度が所定の閾値よりも弱くなったときには、移動局1が計画された経路102から外れたとみなす。その場合、基地局2は、直前の移動局1の位置情報などから、移動局1の自局に対する位置範囲を算出し、その位置範囲をスキャンすることで、アンテナ40の方向を正しく移動局1へ向け、移動局1との通信品質を確保する。このときのスキャン対象となる位置範囲の算出には、第一実施形態〜第三実施形態の方法を適用することが可能である。
【0046】
図9は、本発明に係る第四実施形態における通信装置の処理フローの一例を示す図である。
まず、基地局2が、移動局1の目標通過位置に対し電波を発信し移動局1と通信を行う。目標通過位置は、絶対位置であって、例えば、移動局1の移動開始からの経過時間と対応付けて記憶部15に記録されており、送受信部11は、経過時間に応じた目標通過位置を記憶部15から読み出すものとする。送受信部11は、移動局1から電波を受信する。このとき、送受信部11が受信した電波強度は所定の強度以上であって、移動局1は予め定められた経路102上を通過しているものとする。送受信部11は、既知の移動経路に基づく移動局1の位置情報を時刻情報とともに記憶部15に記録する(ステップS41)。
【0047】
次に、送受信部11は、制御装置20からデータの送信要求あるかどうかを判定する(ステップS42)。データ送信要求が無い場合(ステップS42;No)、データ送信要求があるまでステップS42の判定を繰り返す。データ送信要求が有る場合(ステップS42;Yes)、送受信部11は、既知の移動経路における移動局1の目標通過位置に基づいて方向を制御されたアンテナ40を介して電波を移動局1へ送信する。次に、基地局2は、移動局1からの応答電波を受信する。送受信部11は、受信電波の電波強度を検出し、電波強度情報を探索開始決定部16へ出力する。探索開始決定部16は、電波強度が所定の値より低下していないかどうかを判定する(ステップS43)。なお、電波強度の判定に用いる閾値は、記憶部15に記録されており、探索開始決定部16は、この値を記憶部15から読み込むものとする。
【0048】
電波強度が低下している場合(ステップS42;Yes)、移動局1が経路102を外れたと可能性が高いと判定し、送受信部11は、移動局1のスキャンを探索部14に指示する。探索部14は、移動範囲推定部13に移動局1の存在する位置を問い合わせる。移動範囲推定部13は、前回移動局1との通信時に記録した移動局1の位置情報と電波の受信時刻情報とを記憶部15から読み出す。移動範囲推定部13は、読み出した受信時刻から現在時刻までの経過時間を算出する。次に、移動範囲推定部13は、例えば、移動局1の最大速度と算出した経過時間を積算して、経過時間における移動局1の移動範囲を算出する。次に、移動範囲推定部13は、読み出した前回通信時の移動局1の位置情報に算出した移動範囲を加算して、移動局1の現在の位置範囲を算出する。次に、移動範囲推定部13は、GPS受信機30から取得した基地局2の位置情報を用いて、移動局1の基地局2に対する相対位置範囲を算出する(ステップS44)。移動範囲推定部13は、算出した位置範囲の情報を探索部14へ出力する。
【0049】
次に探索部14は、移動範囲推定部13から取得した位置範囲についてスキャンを行う(ステップS45)。スキャンを行って、アンテナ40の方向と移動局1との位置関係を調整すると、あるいは、電波強度が低下していない場合(ステップS43;No)、送受信部11は、移動局1へデータ送信する(ステップS46)。送受信部11は、記憶部15に記録した移動局1の位置情報と時刻情報を更新する(ステップS17)。具体的には、ステップS43で電波強度が低下していないと判定した場合、移動局1の位置情報は、前回通信を行うときに用いた目標通過位置の位置情報である。送受信部11は、目標通過位置と電波の受信時刻情報とを位置算出部12へ出力する。位置算出部12は、取得した情報で記憶部15に記録した移動局1の位置情報と時刻情報を更新する。一方、ステップS43で電波強度が低下したと判定した場合、送受信部11は、移動局1からの受信電波の到来方向と電波強度を受信時刻とともに位置算出部12へ出力する。位置算出部12は、第一実施形態のステップS11と同様にして移動局1の位置情報を算出し、記憶部15に記録した移動局1の位置情報と時刻情報を更新する。
【0050】
本実施形態によれば、移動局1が予め定められた経路に沿って移動する場合に、その経路を外れたときでも、移動局1の位置範囲をスキャンすることで通信品質を確保できる。また、そのときの移動局1の位置範囲は限定された範囲であるため、スキャンにおける探索時間の低減、不要な通信削減による秘匿性低下や位置情報漏えいを防ぐことができる。
【0051】
これまで、移動局1が予め定められた移動経路を外れたときに、探索開始決定部16がスキャンの開始を決定する場合を例に説明を行った。探索開始決定部16がスキャンの開始を決定する他の例として以下のような場合が考えられる。
【0052】
例えば、移動局1をある目標位置に移動させ、移動局1に搭載した画像センサ(カメラ)で目標位置周辺を撮影し、撮影した画像を基地局2へ送信させるとする。基地局2は、移動局1の移動方向や移動速度を制御し、目標位置に移動させる。すると、探索開始決定部16は、移動局1の出発時からの経過時間を計測し、その経過時間が目標位置への到達に要する時間に達すると、スキャンの実行を決定する。移動範囲推定部13は、第一実施形態〜第三実施形態の方法で、基地局2に対する移動局1の存在する位置範囲を推定する。探索部14は、移動範囲推定部13の算出した位置範囲をスキャンし、移動局1と通信を行い、画像の送信を指示する。このようにすれば、探索部14によるスキャンに用いる電波の傍受を最小限にとどめ移動局1との通信を開始することができる。また、スキャン時間を短縮することで、基地局2は、移動局1が撮影した画像を直ぐに受信することができる。
【0053】
また、探索開始決定部16は、移動局1が基地局2から所定の距離内に存在すると判定したときにスキャンの開始を決定してもよい。例えば、基地局2が、移動局1が撮影した画像を、移動局1が基地局2の近くに戻ってきてから受信するような場合を考える。基地局2は、移動局1が目標位置へ到着し画像を撮影すると上記の方法でスキャンを行い移動局1と通信を開始する。そして基地局2は、移動局1に基地局2から所定の距離内に相当するある位置まで移動するよう制御情報を送信する。あるいは、基地局2が移動局1から所定の距離内まで移動してもよい。探索開始決定部16は、制御情報を送信してから移動局1が例えば平均速度で移動した場合に指示した位置まで移動できる時間、または、基地局2が移動する場合、基地局2の移動速度に基づいて、基地局2が移動局1から所定の距離内に到着するのに要する時間、が経過するとスキャンの開始を指示する。移動範囲推定部13は、第一実施形態〜第三実施形態の方法で、基地局2に対する移動局1の存在する位置範囲を推定する。探索部14は、位置範囲に対してスキャンを行い、無線リンクを確立する。無線リンクが確立すると、送受信部11が画像の送信を移動局1に指示し、移動局1から画像を受信する。このようにすれば、比較的近距離でのスキャンに留めることができるので探索電波の強度をある値以下に抑えることができ、位置を推定されたり通信傍受を受けたりするリスクを低減することができる。また、アンテナ40を「+X°〜−X°」まで変化させて探索電波を発信する場合であっても、比較的近距離でのスキャンであれば実際にスキャンする区間が狭くて済むため、やはり、通信の秘匿性の低下などのリスクを低減することができる。また、スキャンだけでなく無線リンク確率後の実際のデータ通信においても電波強度を弱めることで通信傍受などのリスクを低減することができる。
【0054】
<第五実施形態>
以下、本発明の五実施形態による通信システムを
図10を参照して説明する。
第一実施形態〜第四実施形態は、基地局2が指向性の高いアンテナを有しており、基地局2がスキャンして移動局1を検出し、基地局2が主導して通信を行う構成であった。この第五実施形態では、移動局1も指向性の高いアンテナ及び第一実施形態〜第四実施形態のスキャン機能を有し、移動局1から通信を開始することができる。
【0055】
図10は、本発明に係る第五実施形態における処理フローの一例を示す図である。
移動局1が基地局2との通信の際に、基地局2が存在する位置の位置情報を算出し、受信時刻とともに移動局1が備える記憶部に記録する(ステップS51)。基地局2の位置の算出は、例えば、受信電波の到来方向及び受信電波の電波強度に基づいて行う。次に、移動局1から基地局2へデータを送信する必要が生じると、移動局1は、ステップS51で記録した受信時刻情報が示す時刻から現在までに移動局1が移動した距離や方向、及び、基地局2の移動範囲を用い、移動局1に対する基地局2の相対位置範囲を算出する(ステップS52)。基地局2の移動範囲は、例えば、基地局2の最大速度に記憶部に記録した受信時刻から現在までの経過時間を乗じて求める。次に移動局1は、算出した基地局2の位置範囲に探索電波を送信し、スキャンを実行する(ステップS53)。一方、基地局2も指向性の高いアンテナを有しているので、アンテナを移動局1に向けなければ、探索電波を受信できない。基地局2は、移動局1の相対位置範囲を第一実施形態〜第三実施形態の方法で算出し(ステップS54)、その位置範囲から送信される移動局1の探索電波を受信できるようアンテナの方向を変化させながら、移動局1から送信される探索電波を待機する(ステップS55)。基地局2は、待機中に移動局1からの探索電波を受信する(ステップS56)。基地局2は、移動局1からの探索電波を受信すると、最も良く探索電波を受信できる方向にアンテナの方向を調整する。アンテナの方向を調整すると基地局2は、受信準備完了情報を移動局1に送信する(ステップS57)。受信準備完了情報を受信すると、移動局1は、データを送信する(ステップS58)。
【0056】
本実施形態によれば、移動局と基地局が指向性の高いアンテナを有する場合でも、スキャン範囲を最小限に抑えた通信を行うことができる。これにより、スキャン時間の短縮、位置情報漏えいなどのリスクを低減できる。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、第一実施形態と、第二実施形態または第三実施形態とを組み合わせて、GPSによる測位誤差が無視できるほど移動局1と基地局2の距離が長い場合は、第二実施形態または第三実施形態の方法でスキャンを行い、移動局1と基地局2の距離が短い場合は、第一実施形態の方法でスキャンを行ってもよい。なお、第一実施形態〜第四実施形態において、移動局1は他局の一例であり、基地局2は自局の一例である。また、第五実施形態において基地局2は他局の一例であり、移動局1は自局の一例である。送受信部11は、受信部の一例である。